説明

ホウ素又はアルミニウム錯体

本発明は、ホウ素及びアルミニウム錯体、その製造方法及びイオン性化合物を可溶性にするためのその使用に関する。前記錯体は、次式を有する。


ここで、DはB又はAlを表わし;R1はR、RF、NO2、CN、C(=O)OR、RSO2又はRFSO2を表わし;−X1−、−X2−、−X3−及びX4はぞれぞれ二価基>C=O、>C=NC≡N、>C=C(C≡N)2、>CR23又は>SO2を表わし;−Y1−、−Y2−及び−Y3−はぞれぞれ二価基−O−、>N(C≡N)、>N(CORF)、>N(SO24)、>NR4、>N(COR4)又は>N(SO2F)を表わし;R、R2及びR3はそれぞれH、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、オキサアルキル基又はアルケニル基を表わし;R4はアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、オキサアルキル基、アルケニル基又はRFCH2−基を表わし;RFはペルフルオロアルキル基、一部フッ素化アルキル基、又は一部若しくは完全フッ素化フェニル基を表わし;R'2及びR'3基はそれぞれR又はFを表わす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ素錯体及びアルミニウム錯体、その製造方法並びにイオン性化合物を可溶性にするためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
無機化学及び有機化学において材料及び分子を変性することを可能にする求核置換を達成するのに有用な多くの化合物が知られている。特に、F-、OCN-、O2-、O22-、O2・-、OH-、RO-、N3-、CN-、HNCN-又はNCN2-アニオンを有する化合物を挙げることができる。フッ素化化合物及びイソシアネートは、ポリマー若しくは冷却剤産業、表面処理、又は製薬若しくは農薬製品にとって特に有利である。
【0003】
しかしながら、これらの化合物を用いる求核置換反応は、上記のアニオンの塩を溶解させることができるプロトン性溶媒中、例えばH2O、CH3OH、ホルムアミド及びN−メチルホルムアミド等の中では、不可能である。と言うのも、上記のアニオンの非常に強い溶媒和作用がそれらの求核性性状を低下させてしまうからである。
【0004】
さらに、上記のアニオンの内の1つの化合物をFeOCl又はTiNClタイプの層状無機構造体と接触させた場合、溶媒和された形のイオンがシートの間に入り込むせいで、剥離が起こる危険性が高い。
【0005】
極性非プロトン性溶媒中では、上記のアニオンの反応性は、対応するアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩の溶解性が非常に低いことによって制限される。
【0006】
別の問題点は、前記アニオンの塩基性に由来するものであり、その電荷は小さい容量に集中し、
【数1】

そのため有機化学反応においてα位のプロトンが除去される反応が促進され、それにより敏感な基質上の置換が妨げられる。β位における除去(ホフマン分解)は、充分長い鎖上の第四級アンモニウムカチオンの安定性を制限して、非プロトン性溶媒中における溶解性を誘導する。
【0007】
第四級アンモニウムより熱安定性が高い触媒が、特に米国特許第7217842号明細書中に又はA. Pleschkeら、Roeschenthaler Journal of Fluorine Chemistry, Volume 125, No. 6, June 2004, pages 1031-1038に、提唱されている。これらのオニウム塩は、ハレックス(Halex)反応を実施する温度を少し下げるだけであり、敏感な基質上の除去の問題は解決されない。
【0008】
非プロトン性溶媒中における前記のアニオンのアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩の溶解性を高めるための1つの提唱されている解決策は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属カチオンを、例えばジグリム、トリグリム、テトラグリム、クラウンエーテル及びクリプタートから選択される錯化剤により錯化することから成る。これらの錯化剤を使用することにより、実際に非プロトン性溶媒中における前記の塩の溶解性を高めることができる。しかしながら、除去反応の速度が大いに増加するので、結果としてこれらの錯化剤は余り興味深いものではない。さらに、溶解性を高めるための最も効果的な錯化剤は、高価な化合物、特にクラウンエーテル及びクリプタートである。結果として、錯化剤の使用は産業上の大きな発展をもたらさなかった。
【0009】
実際、塩素とフッ素との間の交換反応は、スルホラン(テトラメチレンスルホラン)のような溶媒中で非常に高い温度において実施される。例えば、フッ化カリウムについては(ハレックス法)、交換反応は200℃〜300℃の温度において実施され、材料に関する収率は低く、エネルギーコストは高い。
【0010】
金属シアン酸塩からのイソシアネートの工業的調製又はO2-、O22-、O2・-、HNCN-及びNCN2-アニオンからの工業的調製は、知られていない。OH-、RO-、CN-及びN3-アニオンは求核置換反応用に用いられるが、しかし競合する除去反応のせいで収率は低い。
【0011】
BF3及びPF5のようなルイス酸はフッ素イオンを錯化して配位アニオンBF4-及びPF6-を与えることができることが知られており、その対応する金属塩は極性非プロトン性溶媒中に易溶性である。しかしながら、BF4-及びPF6-アニオンの塩は、ルイス酸と塩基との間の相互作用のエネルギーが大きいせいで、例えば塩素原子のフッ素原子による置換を達成するための求核力を持たない。逆に、これらのアニオンの塩は、厳密に非求核性で非錯化性のアニオンが要求される場合に、不安定なカチオン種を安定化させるために又は電気化学における支持電解質として、用いられる。
【0012】
また、トリフェニルホウ素誘導体、特にフッ素化誘導体(C65)3Bは、この塩の高い格子エネルギー(reticular energy)にも拘らず、LiFを錯化することができる強力なルイス酸であるということも知られている。(C65)3BF-アニオンは、BF4-及びPF6-と同様に、フッ素交換を可能にする求核試薬ではない。さらに、これらの化合物は得るのが難しく、極めて高価である。
【0013】
米国特許第2909560号明細書には、1,1,1−トリメチロールエタン(I)とホウ酸H3BO3(II)とを反応させることによる環状ホウ素化合物の2,6,7−トリヘキサ−1−ボラ−4−メチルビシクロビシクロ[2.2.2]オクタンの調製方法及びポリエチレンの安定剤としてのこの環状化合物の使用が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7217842号明細書
【特許文献2】米国特許第2909560号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】A. Pleschke et. al., Roeschenthaler, Journal of Fluorine Chemistry, Volume 125, No. 6, June 2004, pages 1031-1038
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、塩との付加物を形成することができる錯体であって、この付加物が求核性アニオン性部分を有していて極性非プロトン性溶媒中に可溶のものである前記錯体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、予期しなかったことに、ホウ素から又はアルミニウムから誘導されたルイス酸によって形成された錯体は、F-、OCN-、O2-、O22-、O2・-、OH-、RO-、RN2-、R2-及びCN-、HNCN-、NCN2-及びN3-から選択されるZ'アニオンとの錯体を形成することができるという事実に本質的に基づく。その塩のカチオンがアルカリ金属カチオン(Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+)、アルカリ土類金属カチオン(Mg++、Ca++、Sr++、Ba++)、Ag+若しくはPb++カチオン又はオニウムカチオン(アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、ヨードニウム、ピリジニウム若しくはイミダゾリウム)であることができる。こうして形成される付加物は、有機又は無機基質上を置換させることができる顕著な求核性性状を有する上に、低い塩基性を有するので特に除去に対して敏感な基質を処理することが可能となる。前記付加物は、極性非プロトン性溶媒中で高い溶解性を有する。さらに、該付加物のカチオンがオニウムカチオンである場合、この付加物は100℃より低い融点を有することができ、イオン性液体として用いることができる。
【0018】
本発明の主題は、ホウ素又はアルミニウム錯体、該錯体とイオン性化合物とから形成された付加物、並びに該錯体及び付加物の様々な使用にある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、例1のホウ素錯体及び例2のアルミ錯体のKF付加物に対して、炭酸エチル/炭酸ジメチル(EC/DMC)混合物中で実施した25℃における導電性の測定結果を示すグラフである。
【図2】図2は、例1のホウ素錯体及び例2のアルミ錯体のKF付加物に対して、ジメチルホルムアミド(DMF)中で実施した25℃における導電性の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に従うホウ素又はアルミニウム錯体は、次の一般式の内の1つに相当する三環式化合物である。
【化1】

[ここで、Dはホウ素B又はアルミニウムAlを表わし;
1はR、RF、NO2、CN、C(=O)OR、RSO2又はRFSO2を表わし;
−X1−、−X2−、−X3−及びX4基は互いに独立してそれぞれ>C=O、>C=NC≡N、>C=C(C≡N)2、>CR23又は>SO2二価基を表わし;
−Y1−、−Y2−及び−Y3−基は互いに独立してそれぞれ−O−、>N(C≡N)、>N(CORF)、>N(SO24)、>NR4、>N(COR4)又は>N(SO2F)二価基を表わし;
R、R2及びR3は互いに独立してそれぞれH、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、オキサアルキル基又はアルケニル基を表わし;
4はアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、オキサアルキル基、アルケニル基又はRFCH2−基を表わし;
Fはペルフルオロアルキル基若しくは一部フッ素化アルキル基(水素原子の少なくとも60%がフッ素原子で置換されているのが好ましい)、好ましくは1〜8個の炭素原子を有するもの、又は一部若しくは完全フッ素化フェニル基を表わし;
R'2及びR'3基はそれぞれR又はFを表わし;
複数のR又はRF基が互いに結合してオリゴマー又はポリマーのセグメントを形成することもでき;
ID及びIID錯体において−X1−、−X2−及び−X3−の内の2個の基がそれぞれ>C=Oを表わす場合には、3つ目の基は>CR23基を表わし;
IB錯体(Dがホウ素BであるID錯体)においてX1、X2及びX3基がそれぞれCH2基であり且つY基がそれぞれOである場合には、R1はCH3以外である。]
【0021】
本明細書の残りの部分において:
「X基」とは集合的に基X1、X2、X3及びX4を指し、「Xi」基は基X1、X2、X3及びX4の内の任意のものを指し;
「Y基」とは集合的に基Y1、Y2及びY3を指し、「Yi」基はY基の内の任意のものを指す:
ものとする。
【0022】
1〜R4及びR置換基について選択することができるアルキル又はアルケニル基は最大22個の炭素原子を有するのが好ましく、アリール基はフェニル基であるのが好ましく、このフェニル基は、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基1個以上、CF3若しくはOCF3基1個以上、CN基又はNO2基を随意に有していてよい。
【0023】
4について選択することができるヘテロアリー基はピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル又はピリミジル基であるのが好ましく、これらの基は1〜12個の炭素原子を有するアルキル基1個以上、CF3若しくはOCF3基1個以上、CN基又はNO2基を随意に有していてよい。
【0024】
本発明の化合物のルイス酸性状は、R1基、X基及びY基を適宜選択することによって調節することができる。各種の基は、以下において、降順に次のように分類される:
【化2】

【0025】
Dがホウ素を表わす場合、I−D、II−D、III−D及びIV−D錯体はそれぞれI−B、II−B、III−B及びIV−Bで表わされる。ホウ素錯体は水及びアルコールに対して安定であり、ほとんどの極性有機溶媒中に可溶である。
【0026】
DがAlを表わす場合、I−D、II−D、III−D及びIV−D錯体はそれぞれI−Al、II−Al、III−Al及びIV−Alで表わされる。アルミニウム錯体は、3個の−X−基が>CR12以外のものであるもの以外は、水加水分解性である。
【0027】
本発明に従うホウ素又はアルミニウム錯体は、Mz'Z'm塩(ここで、Mは原子価nが1〜3であるカチオンであり、Z'は原子価z'が1又は2であるアニオンである)についての錯化剤として有利に用いることができる。Z'が一価である場合、これは次のZアニオンから選択される:F-、OCN-、O2・-、OH-、RO-、N3-、R2-、CN-、HNCN-、[O2-M'+]-、[O22-M'+]-及び[NCN2-M'+]。Z'が二価である場合、これは次のZ''アニオンから選択される:O2-、O22-及びNCN2-。Mはアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、Ag+、Pb2+、イットリウムカチオン、ランタンカチオン又は有機カチオンを表わす。有機カチオンは、アンモニウム、ホスホニウム、テトラキス(ジアルキルアミノ)ホスホニウム、ビス[トリス(ジアルキルアミノ)]ジホスホニオアゼニウム、スルホニウム、ピリジニウム、アミジニウム、グアニジウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム及びトリアゾリウムカチオンから選択することができ、前記有機カチオンは、アルキル、オキサアルキル、アリール(特にフェニル)、アルキルアリール(特にアルキルフェニル)及びアリールアルキル(特にフェニルアルキル)基から選択される置換基を随意に有していてもよく、該カチオンは、有機リンカーを介して互いに結合してオリゴマー又はポリマーを形成することもできる。M'はH及びMについて挙げた一価カチオンから選択される。本明細書の残りの部分において、「I/MZ'」、「IID/MZ'」、「IIID/MZ'」及び「IVD/MZ'」は、それぞれ本発明のID、IID、IIID又はIVDで錯化されたMz'Z'm塩を指す。アルミニウム錯体は、前記のアニオンの塩との付加物を形成することができるだけではなく、Cl-、Br-、S2-又はS22-アニオンの塩との付加物を形成することもできる。
【0028】
単核アルミニウム錯体ID又はIIDは、[(Al)−Z]-+の形の付加物を形成するだけではなく、ホウ素の場合には存在しないアルミニウムの「d」軌道が関与して、Al−Z−Alの序列を有する[(Al)−Z(Al)]-+タイプの三核形態の付加物をも形成する。III−B、IV−B、III−Al及びIV−Al錯体は二核であり、B−Z−B及びAl−Z−Al結合は60〜150°Cの範囲の角度を作る。
【0029】
本発明に従う付加物は、次の式の内の1つによって表わすことができ、ここで、各種の要素は上記の意味を持つ。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【0030】
本発明の錯体の中で、各Y基がOを表わすものは、トリオールから容易に得ることができるという事実のせいで、有利である。これらを以下においては、ホウ素錯体についてはB−aと表わし、Al錯体についてはAl−aと表わす。Y基について選択される3個のO原子によってもたらされる比較的弱い酸性状は、もっと強い酸性状をもたらすX基、例えば>C=O、>C=NC≡N、>C=C(C≡N)2又はSO2を選択することによって、高めることができる。X基の内の1個だけがSO2基であるのが好ましい。酸性状はまた、強電子求引性のR1基、例えばRFSO2−、NO2、RSO2−、−CN又は−C(=O)ORを選択することによっても、高めることができる。
【0031】
3個のY基が窒素含有基である錯体を、以下においては、ホウ素錯体についてはB−cと表わし、そしてAl錯体についてはAl−cと表わし、窒素含有Y基を少なくとも1個含有し且つ少なくとも1個のY基が酸素であるものを、ホウ素錯体についてはB−bと表わし、Al錯体についてはAl−bと表わす。
【0032】
少なくとも1個のY基がNR4基である本発明の錯体、特に3個のY基がNR4基である本発明の錯体は、>C=O、>C=NC≡N及び>C=C(C≡N)2基から選択されるX基を有するのが好ましい。
【0033】
少なくとも1個のY基がNR4基以外であって窒素を含有する本発明の錯体、及び少なくとも1個のY基がNR4基であって且つR4が少なくとも1個の電子求引性基(例えば、CN、NO2、CF3)を有するアリール又はヘテロアリール基である錯体は、強いルイス酸性状を有し、結果として、同様の錯体であってしかしすべてのY基がOであるものより、非プロトン性溶媒中における溶解性が高い。それらのルイス酸性状は、
・窒素原子を含有するY基の特別な選択;
・X基及び/又はR基の選択;
・窒素原子を含有するY基の数:
によって調節することができる。
【0034】
3個のY基が窒素原子含有基である錯体は、最も強い酸性状を有する。
【0035】
従って、B−b、B−c、Al−b及びAl−c錯体並びにそれらの付加物は、バッテリーの電解質の添加剤として特に有利である。
【0036】
本発明のホウ素錯体及びアルミニウム錯体の中で、各X基がCH2を表わすものは、ホルムアルデヒドH2C=Oを−CH結合中に挿入して−CCH2OHを形成させることによって容易に得られ、これら、特に3個のX基がそれぞれCH2を表わすものは、最小の立体障害をもたらすだけである。XがCHR2である錯体は、アルデヒドR2CH=Oから同じ方法で得られる。
【0037】
X基について選択される3個のCH2基によってもたらされる比較的劣った電子求引性性状は、より強い酸性状をもたらすY基{例えば>N(SO2CF3)、>N(COCF3)、>N(SO2R)若しくは>N(C≡N)基、又はR4基が少なくとも1個の電子求引性基(例えば、CN、NO2、CF3、OCF3)を有するアリール若しくはヘテロアリールである>NR4基}を選択し、且つ/或は強電子求引性のR1基(例えばRFSO2−、NO2、RSO2−、−CN又は−C(=O)OR)を選択することによって、高めることができる。
【0038】
特定的な類の錯体及び付加物としては、各>X基が>CH2を表わし且つY基が同一であってそれぞれ窒素原子を含有するものが含まれる。窒素原子の存在は、錯体及び対応する付加物に、YがOである錯体及び付加物と比較して、上記の極性溶媒中、低極性溶媒(例えばアセトニトリル、ケトン類、グリム類又はベンゾニトリル、並びにオニウム塩についてはジクロロメタン及びα,α,α−トリフルオロトルエン)中、並びにイオン性液体中におけるより大きい溶解性を付与する。
【0039】
−X1−及び−X2−が>CH2を表わし且つ>X3が>C=O、C=NCN又はC=C(CN)2を表わす錯体は、Z−アニオンとNa及びK等のアルカリ金属のカチオンとの塩との付加物、さらにはオニウムの塩との付加物をも形成することができ、しかもこの付加物は、極性溶媒{ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)又はスルホラン}及び極性イオン性液体{例えばエチルメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロスルホンイミド)(EMI−TFSI)等}中に可溶であり、そして脱離性基を有する基質の存在下にある時にZ−アニオンを容易に交換するので、有利である。
【0040】
少なくとも1個のX基がC=NCN及びC=C(CN)2等の窒素含有基である錯体は、リチウムバッテリーの電解質中の添加剤として有用である。と言うのも、これらの錯体は、LiFの多量の格子エネルギーにも拘らず、この塩との付加物を容易に形成することができるからである。
【0041】
別の類の錯体及び付加物としては、R1がC25であるものであってC25C(CH2OH)3から誘導されるものが含まれる。エチル基によってもたらされる非対称性は、極性溶媒中、特に前記の溶媒中における錯体及び付加物の溶解性を高める。
【0042】
Al−a錯体(即ち各Y基がOであるもの)においてX基のいずれか1個が>COであり且つ他の2個の>X基がそれぞれ>CH2であるもの又は1個の>X基がCH2であり且つ他の2個の>X基がそれぞれ>COであるものは、アルミニウムが5〜6の範囲の配位数を引き受けるオリゴマー種と平衡状態にあり、それによってモノマー種IAlの溶解性を下げる傾向がある。
【0043】
X基がCR23基であり且つR2及びR3の一方がH以外であるアルミニウム錯体は、立体障害のせいで、より可溶性であり、モノマー状となる傾向がある。X又はY基が窒素原子を含有するアルミニウム錯体についても、同じことが言える。
【0044】
本発明のホウ素及びアルミニウム錯体は、様々な用途にとって有用である。本発明に従う錯体は、直接的に電解質の添加剤として、又はMZ塩との付加物を調製するために、用いることができ、前記付加物は特に様々な求核置換反応において有用である。
【0045】
非プロトン性又は非プロトン生成性溶媒(一般的に非プロトン性溶媒と称される)中におけるB/MZ及びAl/MZ付加物の溶解性は、Mz'Z'化合物、特にリチウムバッテリーに用いられるMz'Z'化合物のものより大きい。この特性は、Z'がF-、O2-又はO22-である時に特に有用である。1つの類の非プロトン性溶媒は、ポリエーテル{特にポリ(エチレンオキシド)}等の溶媒和用ポリマーから成る。
【0046】
リチウムバッテリーにおいて、電解質はリチウム塩を含有し、カソードは遷移金属の化合物を含有する。鉄及びマンガンは、対応する酸化物Fe34、Fe23、MnO及びMn34として自然界に豊富に存在するので、特に有用である。フッ化物CuF2は、リチウムとの反応によって与える非常な陽電位のために、有利である。
【0047】
リチウム化合物LiF、Li2O及びLi22の溶解性が高くなると、次の反応式に従って作動する変位電極の再充電性を改善することができる。
【化7】

ここで、TMは原子価qが2〜6である遷移金属であり、z'はZ'アニオンの原子価である。Li22の溶解性は、陽電極の反応が
【化8】

と書かれるリチウム−空気バッテリーにおいて、特に有利である。これらのバッテリーは、単位容量及び重量当たりに非常に高い能力(最大出力)を有するが、しかし放電(2.8V)と充電(4.5V)との間で1ボルトより大きい過剰分極の問題を有する。本発明の化合物で錯化することによって過酸化物Li22を可溶化することにより、この過電圧を減らして充電において3.5Vにすることができる。従って、本発明のホウ素又はアルミニウム錯体は、リチウムバッテリーの電解質用の添加剤として有用である。この錯体は、直接用いることもでき、塩(好ましくはF-、O2-又はO22-アニオンを有するもの)との付加物の形で用いることもできる。
【0048】
本発明に従う付加物は、液状若しくは固体状の無機化合物又は有機化合物に対する様々な求核置換反応に用いることができる。1つの実施態様に従えば、該付加物は、反応媒体中に直接導入される。別の実施態様に従えば、ホウ素又はアルミニウム錯体及びMZ反応成分を反応媒体中に導入し、その場で付加物を形成させる。両方の場合において、前記付加物又は錯体は化学量論的量又は触媒量で導入することができる。基質が塩基に対して敏感な場合には、溶液はZ又はZ''アニオンを遊離のアニオンより塩基性が低い形である付加物の形のみで含有するので、化学量論的割合で用いることが推奨される。
【0049】
もう一方の場合において、触媒量での使用は、経済上の利点及び原子節約に関する利点である。本発明のホウ素又はアルミニウム錯体は、「穏やかな化学」プロセスによる求核置換によって無機固体浄化後を変性するのに有用である。これらは、様々な無機化合物においてCl-又はBr-イオンを原子価z'が1又は2であるZ'アニオンであってF-、OCN-、O2-、[O2-M'+]-、O22-、[O22-M'+]-、O2・-、OH-、RO-、N3-、CN-、NCN2-及び[NCN2-M'+]-から選択されるものに置き換えるのに特に有用である。
【0050】
FeOCl、VOCl、BiOCl、BiONO3、TiNCl、TiNBr、ZrNCl又はZrNBr等の層状構造を持つ無機化合物におけるCl-又はBr-のF-による置換は、上記のプロトン性溶媒のようなフッ化物を溶解させることができる媒体中では、不可能である。と言うのも、溶媒和されたF-の求核性性状が弱いことに加えて、層状構造はこれらの溶媒の作用によって剥離してしまうからである。MZ反応成分と本発明の錯体との間で形成される付加物の使用は、求核置換による上記層状化合物(特にFeOCl及びBiONO3)の容易な変性を可能にする手段である。非プロトン性有機溶媒中で塩素化又は臭素化された無機化合物を、本発明のIB若しくはIAl錯体の存在下でMZ反応成分と、又はMZと前記錯体との間で形成される付加物と、反応させることから成る方法は、本発明の別の主題を構成する。
【0051】
求核置換反応成分が一価カチオンMのMzZ塩である場合、変性反応はそれぞれ次のようになるだろう。
【化9】

【0052】
Cl又はBrをZで置換することによって得られる無機化合物、特にZ-がF-、CN-又はOCN-であるFeOZは、次の反応:
【化10】

に従い、リチウムについてのホスト構造である。従ってこれらは、電気化学蓄電(storage)分野において有用である。特に、FeOFは電位2.5V対Li+/Li°において非常に高い単位重量当たりの容量(284Ah/kg)を有するため、極性有機液体中又はポリエーテルタイプの溶媒和用ポリマー中のリチウム塩の溶液から成る電解質を有するリチウムバッテリー用の有利な候補となる。
【0053】
さらに、Z-がF-、CN-又はOCN-であるFeOZ化合物、特にフェロセン、N,N,N’N’−テトラメチルフェニレンジアミン、テトラキス(ジメチルアミノエチレン)又はピリジンについての挿入化合物の形にあるものは、情報記憶分野において有用である。
【0054】
BiOF化合物は、次の反応式に従う3電子レドックス法に従って作用する電極材料として有用である。
【化11】

【0055】
本発明に従う付加物はまた、S−L又はP−L結合を含有する無機化合物をS−F、P−F、S−CN又はP−CNを含有する化合物に転化させるのにも有用であり得る。この用途は、イオン性液体の成分として及びリチウムバッテリー用の電解質として有用な塩{[CF3SO2NSO2F]-}nn+、{[(FSO2)2N]-}nn+及び{[(F2PO)2N]-}nn+の有利な供給源となる化合物{[CF3SO2NSO2Cl]-}nn+、{[(ClSO2)2N]-}nn+及び{[(Cl2PO)2N]-}nn+について、特に有利である。Mの塩は、例えばMFnに対して[(ClSO2)2N]Hを作用させることによってその場で生成させることができる。
【0056】
有機化学、製薬化学又はマクロ分子化学において、本発明の錯体及び付加物の使用は、C−L結合{ここで、Cは炭素であり、Lは(Cl、Br及びIから選択される)ハロゲン、擬ハロゲン(例えばSCN)、エステル基−OSO2R'又は−N(SO2R')2基(ここで、R'はアルキル基、アルキルアリール基又はペルフルオロアルキル基である)である}を有する脂肪族又は芳香族有機化合物(以下、「基質」と称する)を変性するのに特に有利である。この変性は、C−L結合をC−F、C−NCO、C−OCN、C−O-、C−O−C(エーテル)、C−OO-、C−O−O−C、C−OH、C−OR、C−N3又はC−CN結合に転化させることから成る。本発明に従う化合物を使用することにより、従来技術の交換方法において必要だった活性化用基を存在させることが回避でき、従ってこれらの活性化用基を除去する追加の工程が取り除かれる。ハレックス法と比較して、塩素−フッ素交換を実施するための本発明の化合物の使用は、低沸点溶媒、特にDMF、N−メチルピロリジノン、N−メチルイミダゾール又はアセトニトリルまでもを使用することを可能にする上、収率も改善されるので、非常に有利である。従って、本発明のホウ素又はアルミニウム錯体は、基質のLアニオンをZアニオンに置き換えることが意図される反応成分を錯化するための試薬として有用である。この用途については、ホウ素化合物IBが特に好ましい。高温において使用する場合や、特に反応生成物が揮発性である時に使用する場合については、それ自体では蒸気圧を示さないイオン性液体が、容易な分離又は連続プロセスさえをも可能にするので、有利である
【0057】
ZがFであるB/MZ付加物又はAl/MZ付加物中のFの強求核性性状は、トリアルキルシラン基が基質分子中に存在する場合の脱保護反応のための有機化学において、有利に用いることができる。この用途に一般的に用いられてきたフッ化テトラブチルアンモニウム三水和物は高価である上、高疎水性のカチオンを導入し、反応混合物の精製を難しくしてしまい、しかも加水分解に対して敏感な化合物の場合に有害な水を導入してしまうが、上記の付加物は有利なことにこれに取って代わるものである。従って、本発明に従う付加物は、トリアルキルシリル基の脱保護剤として有用である。この用途については、アルカリ金属フッ化物の付加物又は低分子量のオニウム塩の付加物、特にテトラメチルアンモニウム若しくはテトラエチルアンモニウム塩及びエチルメチルイミダゾリウム塩の付加物を、化学量論的量又は触媒量で用いるのが特に有利である。
【0058】
本発明の別の主題は、本発明の錯体を調製するための方法、及びD/MZ付加物から成る。
【0059】
一般的に、I−D、II−D、III−D又はIV−D錯体は、元素Dの供給源である化合物と結合−Y−H又は−Y−M1(これはアルカリ金属である)を含む錯体の有機前駆体とを混合することによって得ることができる。
【0060】
ホウ素源化合物は、ホウ酸B(OH)3、エステルB(OR5)3(R5はアルキル基)、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属ホウ酸塩M2(BO2)n又はM22(B47)n/4、ハロゲン化ホウ素、酢酸ホウ素、又はハロゲン化ホウ素の付加物、例えばM2(BF4)n(nはM2が一価であるか二価であるかに応じて1又は2である)から選択されるのが有利である。
【0061】
第1の実施態様においては、エステルB(OR5)3(R5はアルキル基)又はホウ酸B(OH)3と−Y−H結合を含む錯体の有機前駆体とを混合し、アルコールR''OH又は水が取り除かれると共にIB錯体を得る。例えば、トリオールR1C[CR23OH]3とホウ酸B(OH)3又は低級アルキルホウ酸エステルとを極性プロトン性溶媒、例えばエタノール又はメタノール中で反応させることによって、3個のX基がCR23基であるIB−a錯体が得られる。R1はアルキル基、ニトロ基、ペルフルオロアルキルスルホニル基又はペルフルオロアシル基であることができる。
【0062】
第2の実施態様においては、−Y−H結合を含む錯体の前駆体とホウ酸塩M2(BO2)n又はM22(B47)n/4とを酸の存在下で混合して−Y−B結合を形成させて、IB錯体と前記の酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を得る。
【0063】
第3の実施態様においては、Yが−YM''の形で存在する錯体の前駆体をホウ酸、ホウ素エステル又はホウ酸塩M2(BO2)n若しくはM22(B47)n/4の存在下で計算量の酸と混合する。前記の酸は、M''と共に形成される塩が反応媒体中に不溶となるように選択するのが有利である。1つの特定的な実施態様において、酸のアニオンは、M''と共に形成する塩が本発明の付加物を直接形成するように選択される。
【0064】
第4の実施態様においては、−YH結合を含む錯体の前駆体と、ハロゲン化ホウ素、塩基の存在下の酢酸ホウ素、又はM2(BF4)nのようなハロゲン化ホウ素の付加物とを混合する。
【0065】
第5の実施態様においては、−Y−M1結合を含む錯体の前駆体と、ハロゲン化ホウ素、酢酸ホウ素又はM2(BF4)nとを混合する。
【0066】
アルミニウム源化合物は、以下のものから選択するのが有利である。
・アルミニウムアルコキシドAl(OR6)3(ここで、R6はアルキル基であり、このアルキル基は、これらのアルコキシドの重合度を抑制してそれらの溶解性及び反応性を促進するために分岐鎖状のものであるのが好ましい);
・化合物AR73(ここで、R7は好ましくはエチル、プロピル、ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、ヘキシル又はオクチル基(アルキルアルミニウム)又はフェニル基(アリールアルミニウム)である);
・ジアルキルアミドアルミニウムAl(NR82)3(ここで、R8はアルキル基、好ましくはCH3又はC25である;
・ハロゲン化アルミニウム、好ましくはAlCl3、AlF3又はAlBr3
・水酸化アルミニウム。
【0067】
第1の実施態様において、アルミニウム錯体は、無水極性溶媒中で、−YH基を含む該錯体の前駆体とアルミニウムアルコキシドAl(OR6)3とを反応させることによって、調製される。アルミニウムイソプロポキシド及びアルミニウムt−ブトキシドが特に好ましい。
【0068】
第2の実施態様において、アルミニウム錯体は、−YH結合を有する該錯体の前駆体とアルキルアルミニウム又はアリールアルミニウムAR73(ここで、R7は好ましくはエチル、プロピル、ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、オクチル又はフェニル基である)とを反応させることによって、調製される。
【0069】
第3の実施態様において、アルミニウム錯体は、−YH結合を有する該錯体の前駆体とジアルキルアミドアルミニウムAl(NR82)3(ここで、R8はCH3又はC25である)とを反応させることによって、調製される。
【0070】
第4の実施態様において、アルミニウム錯体は、−Y−M1結合(M1はアルカリ金属であるのが好ましい)を有する該錯体の前駆体とアルミニウム塩、特にハロゲン化アルミニウムAlCl3及びAlBr3とを反応させることによって、調製される。この実施態様において、反応副生成物M1Cl又はM1Brは、非プロトン性溶媒中に不溶性なので、容易に除去される。
【0071】
第5の実施態様において、すべてのX基が>CR23基以外のものであるアルミニウム錯体は、可溶性アルミニウム源又は水酸化アルミニウムAl(OH)3から出発して水の存在下で、Y−Al結合の形成が保証されるようにpHを調節しながら、調製される。
【0072】
一般的に、ホウ素又はアルミニウム錯体の有機前駆体、特にトリオール、ジオール−モノ酸、モノアルコール−二酸及びトリ酸(その1個以上のC=O基は随意にC=NCN、C=C(CN)2又はC=S基に置き換えられていてよい)は、当業者の範囲内の反応によって得ることができ、これらの前駆体の内の一部はそれら自体が新規の化合物である。例えば、CR23基は特にアルドールタイプの付加によって得ることができる。C(=O)R9脱離基(ここで、R9はOMe、OEt、OCH2CF3、R9COO、OC65、OC65、OC64NO2、Cl、Br、イミダゾリル又はヒドロキシスクシンイミジル基である)は、目標分子の他の反応性基を随意に保護しながら、>NCN又は>C(CN)2基に置き換えることができる。ここに与えられる一般的方法は、本発明の特に代表的な分子であってより一層広範な特性を示すものを得ることを可能にする。
【0073】
3個のY基がそれぞれOであるID錯体を以下においてはID−a錯体と称する。
【0074】
3個のY基がそれぞれOであり且つ3個のX基がそれぞれCR23であるID−a錯体の前駆体であって次式に相当するものは、トリオールR1C[CR23OH]3である。
【化12】

【0075】
1がペルフルオロスルホニル基である場合、トリオールRFSO2C−[CHR2OH]3は、次の反応によって得ることができる:
・ペルフルオロアルカンスルホン酸カリウムKRFSO2とメチル化剤、例えばトルエンスルホン酸メチルCH364SO3CH3との反応;
・立体障害強塩基の存在下におけるスルホンRFSO2CH3とアルデヒドとの反応。
【0076】
2がHである場合には、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)又はテトラメチルグアニジンを強塩基として存在させた下で、p−ホルムアルデヒドのようなホルムアルデヒド源を用いることができる。R2がH以外である場合には、対応するアルデヒドR2CHOを同じ塩基又はホスファゼンタイプのリン含有塩基と共に用いることができる。
【0077】
2及びR3がそれぞれHを表わす場合には、アルデヒドRCH2CHOのヒドロキシメチル化及び還元剤としての働きをするホルムアルデヒドを作用させることによって、次の反応に従って1工程で容易にトリオールR1C(CH2OH)3を生成させることができる。
【化13】

【0078】
1が電子求引性基(例えばNO2、CN、CF3CO又はCF3SO2)である場合には、塩基性触媒の存在下で、次の反応式に従って、酸化還元反応なしで直接付加反応が起こる。
【化14】

【0079】
アルデヒドR2CHOによっても同じタイプの反応が起こり、R1CH3C(CHR2OH)3が得られる。
【0080】
ID−a2錯体は、ID−a錯体において3個のYがそれぞれOであり、X1及びX2がぞれぞれCR23(特にCH2)を表わし且つX3がCOを表わすものであり、以下においてはこれをR1C{[CR23O−]2CO2−}Bと記す。
【0081】
ID−a2錯体の前駆体は、R1C[CR23OH]2CO2H化合物であり、これは、
・極性プロトン性溶媒中、例えば低級アルコール中、又はアセトニトリル等の極性非プロトン性溶媒中のホウ酸アルキルと反応させることによって、IB−a2錯体を与えることができ、
・アルミニウムアルコキシド、アルキルアルミニウム又はジアミノアルキルアルミニウムと反応させることによって、IAl−a2アルミニウム錯体を形成することができ、アルコキシドが好ましい。
【0082】
1がアルキル基である場合、前駆体R1C[CH2OH]2CO2Hは、対応するトリオールR1C(CH2OH)3の調節された酸化、特に酵素酸化によって、得ることができる。
【0083】
1がHである場合、前駆体HC(CHR2OH)2COOHは、アルデヒドR2CHOをマロン酸(メチル、エチル)エステルと縮合させ、次いで脱カルボキシルすることによって、得られる。
【0084】
3個のYがOであり、X1がCR23(特にCH2)を表わし且つX2及びX3がそれぞれC=OであるID−a錯体を、以下においてはID−a3と記す。ID−a3錯体の前駆体は、化合物R1C(CH2OH)(CO2H)2であり、これは、
・極性溶媒中、例えば1〜4個の炭素原子を有するアルコール中でホウ酸アルキル又はホウ酸と反応させることによって、ホウ素錯体を形成することができ;
・アルミニウムアルコキシド、アルキルアルミニウム又はジアミノアルキルアルミニウムと反応させることによって、IAl−a3アルミニウム錯体を形成することができ、アルコキシドが好ましい。
【0085】
前駆体R1C(CH2OH)(CO2H)2は、エステルR1C(H)(CO2Et)2とのホルムアルデヒドの異性体の1つの縮合、及び続いての脱カルボキシルを回避するような適度な温度におけるR1C(CH2OH)(CO2H)2を与えるためのエステル官能基の加水分解によって、得られる。
【0086】
YがそれぞれOであり、2個のXiがCR23(特にCH2)を表わし且つ1個のXiがC=NCNを表わすID−a錯体を、以下においてはID−a4と記す。ID−a4錯体の前駆体は化合物R1C(CH2OH)2[C(NCN)OM1](ここで、M1は例えばアルカリ金属である)であり、これは、
・−C(NCN)OH基を脱離することが意図される酸の存在下でホウ酸アルキル又はホウ酸のようなホウ素源と反応させることによって、IB−a4錯体を形成することができ;
・−C(NCN)OH基を脱離することができる酸を添加した後にアルミニウムアルコキシド又は水酸化アルミニウムと反応させることによって、アルミニウム錯体IAl−a4を形成することができ;また、
・2当量の塩基Nuの存在下でAlCl3、AlBr3、AlF3又はAl2(SO4)3と反応させることによって、IAl−a4アルミニウム錯体を形成することができる[ここで、NuはNuH+-(Xはアルミニウム塩によって最初に提供されるアニオンの1つを表わす)を形成することによってアルコールタイプの水酸化物が2つの結合−CR12O−Alを形成することを可能にする塩基である]。
【0087】
化合物R1C(CH2OH)2[C(NCN)OM1]は、次の工程を含む方法によって得ることができる。
・R1C(CH2OH)2(CO2Me)又はR1C(CH2OH)2(CO2Et)を得るためのR1C(CH2OH)2(CO2H)のエステル化;
・R1C(CH2OH)2[C(NCN)OM1]を形成させるための塩M1HNCNの作用(ここで、Mは例えばアルカリ金属である)。
【0088】
CR23(特にCHR2及びCH2)であり且つX2及びX3がそれぞれC=NCNを表わすID−a錯体X1を、以下においてはID−a5と記す。
【0089】
ID−a5錯体の前駆体は、式R1C(CR2HOH)[C(NCN)OM1]2に相当する化合物であり、これは、R2CHO又はHCHOとマロン酸エステルR1C(H)(CO2Me)2又はR1C(H)(CO2Et)2とを反応させ、次いで2当量の塩M1HNCNを反応させてR1C(CR2HOH)[C(NCN)OM1]2(M1はアルカリ金属であることができる)にすることによって得ることができる。
【0090】
前駆体R1C(CR2HOH)[C(NCN)OM1]2は、
・2個のC(NCN)OH基を遊離させるための2当量の酸の存在下でホウ酸アルキル又はホウ酸のようなホウ素源と反応させることによって、錯体IB−a5を形成することができ;
・−C(NCN)OHを遊離させることができる酸を添加した後にアルミニウムアルコキシド又は水酸化アルミニウムと反応させることによって、アルミニウム錯体IAl−a5を形成することができ;
・2当量の塩基Nuの存在下でAlCl3、AlBr3、AlF3又はAl2(SO4)3と反応させることによって、IAl−a5アルミニウム錯体を形成することができる[ここで、NuはNuH+-(Xはアルミニウム塩によって最初に提供されるアニオンの1つを表わす)を形成することによってアルコールタイプの水酸化物が2つの結合−CR12O−Alを形成することを可能にする塩基である]。
【0091】
各Y基がOであり且つ各X基がC=NCN基を表わすID−a錯体を、以下においてはID−a6と記す。
【0092】
ID−a6錯体の前駆体は化合物R1C[C(NCN)OM1]3であり、これは、メタントリカルボン酸トリエステルHC(CO2Me)3又はHC(CO2Et)3のアルカリ金属塩のエステル化によってR1C(CO2Me)3又はR1C(CO2Et)3を与え、次いで少なくとも3当量の塩M1HNCNを作用させることによって、得ることができる。
【0093】
前駆体R1C[C(NCN)OM1]3は、
・3当量の酸の存在下でホウ酸アルキル若しくはホウ酸のようなホウ素源と反応させることによって、又はBF3若しくはBCl3のようなハロゲン化ホウ素を作用させることによって、又は三酢酸ホウ素B(CH3CO2)3を作用させることによって、錯体IB−a6を形成し;
・≡C(NCN)OHを遊離させることができる酸を添加した後にアルミニウムアルコキシド又は水酸化アルミニウムと反応させることによって、アルミニウム錯体IAl−a6を形成し、或は
・AlCl3、AlBr3、AlF3又はAl2(SO4)3と反応させることによって、対応するM1塩の沈殿を得て、アルミニウム錯体IAl−a6を形成する。
【0094】
各Y基がOであり、2個のXi基がそれぞれCR23基であり且つ1個のXi基がC=C(CN)2基を表わすID−a錯体を、以下においてはID−a7と記す。
【0095】
ID−a7錯体の前駆体は、式R1C(CH2OH)2[C[(C(CN)2]OM1]に相当する化合物であり、これは、R1C(CH2OH)2(CO2H)をエステル化してR1C(CH2OH)2(CO2Me)又はR1C(CH2OH)2(CO2Et)を得て、次いでマロノニトリルから誘導された塩M1HC(CN)2を作用させることによって、得ることができる。
【0096】
前駆体R1C(CH2OH)2[C[(C(CN)2]OM1]は、
・−C[C(CN)2]OH基を遊離させるための1当量の酸の存在下でホウ酸アルキル又はホウ素のようなホウ素源と反応させることによって、錯体IB−a7を形成することができ;
・−C(NCN)OHを遊離させることができる酸を添加した後に、アルミニウムアルコキシド又は水酸化アルミニウムと反応させることによって、アルミニウム錯体IAl−a7を形成することができ;或は
・2当量の塩基Nuの存在下でAlCl3、AlBr3、AlF3又はAl2(SO4)3と反応させることによってIAl−a7アルミニウム錯体を形成することができる[ここで、NuはNuH+-(Xはアルミニウム塩によって最初に提供されるアニオンの1つを表わす)を形成することによってアルコールタイプの水酸化物が2つの結合−CR12O−Alを形成することを可能にする塩基である]。
【0097】
各YがOであり、1個のXi基がCR2H又はCH2基であり且つ2個のXi基がそれぞれC=C(CN)2基であるID−a錯体を、以下においてはID−a8と記す。
【0098】
ID−a8錯体の前駆体はR1C(CR2HOH)[{C[(CN)2OM1]}2であり、これは、R2CHO(又はHCHO)とエステルR1C(H)(CO2Me)2又はR1C(H)(CO2Et)2とを反応させ、2当量の塩M1HC(CN)2を反応させて塩R1C(CR2HOH)[{C[(CN)2OM1]}2とすることによって、得ることができる。
【0099】
前駆体R1C(CR2HOH)[{C[(CN)2OM1]}2は、
・2個の−C[C(CN)2OH]基を遊離させるための2当量の酸の存在下でホウ酸アルキル又はホウ素のようなホウ素源と反応させることによって、錯体IB−a8を形成することができ、前記の酸のアニオン及びカチオンMは、本発明の付加物を生成させるために随意に用いることができるものであり;
・−C(NCN)OHを遊離させることができる酸を添加した後にアルミニウムアルコキシド又は水酸化アルミニウムと反応させることによって、アルミニウム錯体IAl−a8を形成することができ;或は
・2当量の塩基Nuの存在下でAlCl3、AlBr3、AlF3又はAl2(SO4)3と反応させることによってIAl−a8アルミニウム錯体を形成することができる[ここで、NuはNuH+-(Xはアルミニウム塩によって最初に提供されるアニオンの1つを表わす)を形成することによってアルコールタイプの水酸化物が2つの結合−CR12O−Alを形成することを可能にする塩基である]。
【0100】
各YがOであり且つ3個のX基がそれぞれC=(CN)2基を表わすID−a錯体を、以下においてはID−a9と記す。
【0101】
ID−a9錯体の前駆体は化合物R1C{[C[C(CN)2OM1]}3であり、これは、メタントリカルボン酸トリエステルHC(CO2Me)3又はHC(CO2Et)3のアルカリ金属塩のエステル化によってR1C(CO2Me)3又はR1C(CO2Et)3を与え、次いで少なくとも3当量の塩M1HC(CN)2を作用させてR1C{[C[C(CN)2OM1]}3を生成させることによって、得ることができる。
【0102】
前駆体R1C{[C[C(CN)2OM1]}3は、
・3個の−C[C(CN)2OHを遊離させるための3当量の酸の存在下でホウ酸アルキル若しくはホウ酸のようなホウ素源と反応させることによって、錯体IB−a9を得ることができ、後者はまた、BF3若しくはBCl3のようなハロゲン化ホウ素又は三酢酸ホウ素B(CH3CO2)3を作用させることによって得ることもでき;
・−C(NCN)OHを遊離させることができる酸を添加した後にアルミニウムアルコキシド又は水酸化アルミニウムと反応させることによって、アルミニウム錯体IAl−a9を形成することができ;或は
・AlCl3、AlBr3、AlF3又はAl2(SO4)3と反応させることによって、対応するM1塩の沈殿を得て、アルミニウム錯体IAl−a9を形成することができる。
【0103】
別の類の錯体としては、各Y基が窒素原子を含み且つ3個のX基がCR23基である錯体(以下、ID−bと記す)、特に各X基がCH2基である錯体がある。これらの錯体は、次式に相当する。
【化15】

【0104】
このY基は、次のものである;>N(C≡N)、>N(CORF)、>N(SO24)、>N(SO2NR42)、>NR4、>N(COR4)及び>N(SO2F)。
【0105】
一般的に、窒素原子含有Y基を少なくとも1個有する有機前駆体は、≡C−CN基又は−CR23(OH)基を有する化合物から得ることができる。
【0106】
第1の実施態様に従えば、触媒の存在下において水素によって又はLiAlH4によって≡C−CN基を水素化することによって、−CH2−NH2基が得られる。得られた−CH2NH2基は、アミン基の窒素原子に結合するR''CO、RFCO、R''SO2、RFSO2又はCN基の親電子基で変性することによって、本発明のリガンドを与えることができる。
【0107】
別の実施態様に従えば、ある種のID−a錯体の調製について挙げた少なくとも1個のOH基を有する前駆体の1つが用いられ、−CR23(OH)基のOH基が脱離基R10に置き換えられて、−CR2310{ここで、R10はCl、Br、I、R11SO3、R34NSO3及びRFSO3(ここで、RF、R3及びR4は上で定義した通りであり、R11はRについて上で定義した基から選択される)から選択される}を与え、次いでこれを窒素含有求核性化合物、例えばNH3、又は求核性アニオンの塩、例えばC64(CO)2-、(HCO)2-、R''CONH-、RFCONH-、R''SO2NH-、RFSO2NH-、NCNH-及びNCN2-の塩と反応させる。NH3の作用によってアミンが得られ、これはニトリル基の水素化によって得られるアミンと同様に処理することができる。C64(CO)2-又は(HCO)2-のような求核性アニオンの塩を作用{ガブリエル(Gabriel)法}させた後に、加水分解することにより、NH2基が放出される。上に挙げた他の求核性アニオンの塩を作用させることにより、所望のY基が直接得られる。
【0108】
3個のX基がそれぞれCH2基を表わし且つ3個のY基がそれぞれNCOCF3であるID−b錯体は、次式に相当する。
【化16】

ここで、GはCOCF3である。
【0109】
ID−b1錯体の前駆体は、R1C[CH2N(H)COCF3]3化合物であり、これは、
・低炭素原子数のアルコール、アセトニトリル、アセトン又はTHFのような溶媒中でホウ酸アルキルと反応させることによってIB−b1錯体を与えることができ;
・アルミニウムアルコキシド、アルキルアルミニウム、トリス(ジアルキル)アルミニウム又は水酸化アルミニウムと反応させることによってアルミニウム錯体IAl−b1を形成することができ;又は
・3当量の塩基Nuの存在下でAlCl3、AlBr3、AlF3又はAl2(SO4)3と反応させることによって、IAl−b1アルミニウム錯体を形成することができる(ここで、Nuは2つの結合−CH2−N(COCF3)−Alの形成を可能にする塩基である)。
【0110】
前駆体R1C[CH2N(H)COCF3]3は、次の反応によって得ることができる。
・W. Stetter及びH. Bockmannによって報告された方法(Chemische Berichte, (1951), 84 834-9)に従った次式:
【化17】

の反応;
・THF中でのLiHとCF3CONH2との反応;
・水素を排出させた後の周囲温度におけるCH3C(CH2OSO264CH3)3の添加。
【0111】
1がCH3又はC25である場合、ホウ素錯体は次式に相当する。
【化18】

ここで、Gは−COCF3である。
【0112】
1がHである化合物ID−b1は、化合物HC[CH2NH2]3とCF3CO225とを反応させることによって調製された前駆体HC[CH2NH(COCF3)]3から得られる。
【0113】
前記前駆体を、
・非プロトン性溶媒中でホウ酸アルキルと接触させることによって、IB−b1タイプのホウ素錯体を得ることができ;
・アルミニウム源と接触させることによって、IAl−b1タイプのアルミニウム錯体を得ることができる。
【0114】
トリアミンHC[CH2NH2]3は、商品として入手できるトリシアノメチドK[C(CN)3]と水素化リチウムアルミニウムLiAlH4との反応させ、次いで水酸化リチウムの水溶液中に取り出すことによって、得ることができる。
【0115】
3個のY基がNCNであるID−b錯体は次式:
【化19】

に相当し、様々有機前駆体から得ることができ、前駆体をホウ素源と反応させることによってIB−b2錯体が得られ、アルミニウム源と反応させることによってIAl−b2錯体が得られる。
【0116】
第1の実施態様において、前記有機前駆体は、トリアミンR1C(CH2NH2)3(上に示したようにR1C(C≡N)3の還元によって得られる)とシアノイミダゾール(3当量)とを反応させることによって調製される。
【0117】
第2の実施態様において、有機前駆体は、3当量の窒素含有求核性化合物(M1)+[HNCN]-(M1が一価の場合)又は(M1)2+[NCN]2-(M1が二価の場合)と塩化物R1C(CH2Cl)3とを反応させることによって調製される。前記塩化物は、R1=CH3については商品として入手できる物質である。R1≠CH3の時、塩化物R1C(CH2Cl)3は、トリオールR1C(CH2OH)3を塩素化剤、例えばPCl3で処理することによって得ることができる。この第2の実施態様において、塩化物の代わりに臭化物又はヨウ化物を用いることができる。臭化物及びヨウ化物はもっと反応性が高く、R1C(CH2OH)3と臭素化剤又はヨウ素化剤とを反応させることによって得ることができる。塩素置換反応は、DMF中又は軽質アルコール(MeOH若しくはEtOH)中で65℃程度の媒体温度において実施される。
【0118】
第3の実施態様において、化合物R1C(CH212SO3)3(ここで、R12はR、R34N又は上で与えた意味を持つRFである)は、第3級塩基の存在下でR1C(CH2OH)3にR12SO3F、R12SO3Cl又は(R12SO2)2を作用させ、次いで得られた化合物をM+[HNCN]-(ここで、MはLi、Na、K、オニウムである)又はCaNCNと反応させることによって有機前駆体を得ることによって、調製される。
【0119】
3個のY基がNSO2R''であるID−b錯体は次式:
【化20】

(ここで、G''はR''SO2であり、R''はR、R34N又はRFである)
に相当し、様々有機前駆体から得ることができ、有機前駆体をホウ素源(例えばホウ酸又はそのエステル)と反応させることによってIB−b3錯体が得られ、アルミニウム源と反応させることによってIAl−b3錯体が得られる。
【0120】
第1の実施態様において、有機前駆体は、3当量の親電子源R''SO2E(ここで、EはCl、Im、R''SO3である)と前記のトリアミンR1C(CH2NH2)3とを反応させることによって調製される。
【0121】
第2の実施態様において、有機前駆体は、次の反応:
【化21】

に従い、化合物R1C(CH214)3{ここで、R14はCl、Br、I又はRESO3(REは好ましくはCH3、CF3又はCH364である)を表わす}とアルカリ金属塩又はオニウム塩の形の窒素含有アニオン(3当量)R''SO2NH-とを反応させることによって調製される。
【0122】
別の類の錯体としては、少なくとも1個のY基がOであり且つ少なくとも1個のY基が窒素原子を含む錯体(以下、ID−cと記す)がある。
【0123】
1個のYi基がOであり且つ2個のYi基が2NCOCF3であるID−c錯体は、次式に相当する。
【化22】

【0124】
ID−c1錯体の前駆体は、ジアミンHOCH2C(R1)(CH2NH2)2(ここで、R1はアルキルである)とトリフルオロ酢酸エチルとをアセトニトリル中で反応させることによって、得ることができる。
【0125】
前駆体とホウ素源(又はアルミニウム源)とを反応させることによって、錯体IB−c1(IAl−c1)が得られる。
【0126】
ジアミンは、次の工程を含む方法によって、得ることができる。
・J. Dunhamらによって発表された方法[Synthesis, (2006), 680-686]により、ホウ水素化ナトリウムNaBH4をアルデヒドO=CHR1とマロノニトリルとの混合物と反応させることによる、アルキルマロノニトリルR1HC(CN)2の調製;
・R1C(CHR2OH)(CN)2(ここで、R2は上に与えた定義を有する)を得るための、DBUのような強塩基を触媒として用いたアルキルマロノニトリルR1HC(CN)2とアルデヒドO=CHR2との反応;
・ジアミンHOCH2C(R1)(CH2NHR2)2を得るためのR1C(CHR2OH)(CN)2とLiAlH4との反応、又は水素による還元。
【0127】
2個のYi基がそれぞれOであり且つ1個のYi基がNCOCF3であるID−c錯体は次式:
【化23】

に相当し、様々な有機前駆体から、これをホウ素源[例えばB(OCH3)3]又はアルミニウム源と反応させることによって、得ることができる。
【0128】
第1の実施態様において、前記有機前駆体は、次の工程を含む方法によって得られる。
・トリス(ヒドロキシメチル)アルカン(その2個のOHが例えばカーボネートの形で保護されたもの)とOHを脱離基に置き換える試薬との反応(R13はCl-、Br-、I-又はR''SO3を表わす)、及びガブリエル反応(例えばビス(ホルミル)イミドのアルカリ金属塩に対するもの)、
・アミノジオールを得るためのカーボネート及びホルミル結合の加水分解、
・トリフルオロアセチル基をアミンに結合させるためのCF3COOC25との反応。
【0129】
別の実施態様において、R1がHであるアミノジオールは、シアノ酢酸メチル又はエチルNCC(CH2OH)2CO2Me又はNCC(CH2OH)2CO2Etをヒドロキシメチル化し、次いで加水分解−脱カルボキシルによってHC(CH2OH)2(CN)を得て、そして水素又はLiAlH4で還元してHC(CH2OH)2(CH2NH2)を得ることによって、調製することができる。
【0130】
2個のYi基がそれぞれOであり且つYi基がNCNであるID−c錯体は、次式:
【化24】

に相当し、N−シアノイミダゾールとID−c2錯体の調製について上記したアミノジオールとの反応によって得られる有機前駆体から調製することができる。
【0131】
前記前駆体を次いで、ホウ素源[例えばB(OCH3)3]又はアルミニウム源と接触させる。
【0132】
1個のYi基がOであり且つ2個のYi基がそれぞれNCNであるID−c錯体は、次式:
【化25】

に相当し、次の工程を含む方法によって調製された有機前駆体から得ることができる。
・アルキルマロノニトリルR1HC(CN)2をメタノール源H2C=Oによってヒドロキシメチル化し;
・得られたヒドロキシメチル化モノアルキルマロノニトリルをH又はLiAlH4によって還元してジアミノアルコールを得て;
・このジアミノアルコールを、N−シアノイミダゾール(2当量)(これ自体は、CNBrとイミダゾールとの反応によってその場で得られる)と反応させる。
【0133】
前記前駆体を次いで、ホウ素錯体を得るために、ホウ素源[例えば1当量のB(OCH3)3]と又はアルミニウム源と接触させる。
【0134】
別の下位の類のID−c錯体としては、2個のYi基がそれぞれOであり且つ1個のYi基がNSO2R''(ここで、R''はR、R34N又はRFである)である錯体があり、これは、次式に相当する。
【化26】

【0135】
第1の実施態様において、ID−c5錯体の有機前駆体は、2当量の親電子源R''SO2E(ここで、Eはクロリド及びイミダゾリルC332−又はR''SO3−である)と次式:
【化27】

に相当するアミノジオールとを反応させることによって、得ることができる。
【0136】
第2の実施態様に従えば、ID−c5錯体の有機前駆体は、次の工程を含む方法によって、調製することができる。
・化合物R1C(CH2OH)2[CH213](ここで、R13はCl-、Br-、I-又はR''SO3を表わす)を調製する;
・化合物R1C(CH2OH)2[CH213]と化合物MJ(ここで、JはアニオンR''SO2NH-を表わし、Mはアルカリ金属カチオン又はオニウムカチオンであり、このオニウムカチオンは、アミドR''SO2NH2と第3級塩基とを接触させることによって得られるカチオンである)と反応させる。
【0137】
1C(CH2OH)2[CH213]のOH基を慣用の反応成分、例えばヒンダードシラン、環状若しくは非環状アセタール、環状カーボネート、t−ブトキシカーボネート基、及びボロン酸で保護するのが好ましいだろう。
【0138】
1個のYi基がOであり且つ2個のYi基がそれぞれNSO2R''(ここで、R''はR、R34N又はRFである)を表わすID−c錯体は、次式:
【化28】

に相当し、上記のジアミンモノアルコールR1H(CH2OH)(CH2NH2)2と化合物R''SO2E(ここで、EはCl、Im又はR''SO3である)とを反応させることによって得られる有機前駆体から、得ることができる。
【0139】
得られた化合物を、B(OH)3若しくはそのエステルのようなホウ素源又はアルミニウム源と接触させる。
【0140】
II−D錯体の前駆体(PTEと記す)は、式R1C(COOR14)2(CR23−COOR15)(ここで、ZはCl、I又はBrであり、R14及びR15は低級アルキル基であり、これらは好ましくは同一のものであり、より特定的にはメチル又はエチル基である)に相当するトリエステル(TE)から、得ることができる。トリエステルTEは、次の反応式に従って、得ることができる。ここでNuは塩基である。
【化29】

【0141】
TE化合物は、Xii対が同じである様々な錯体についての前駆体を調製することを可能にする。各Y基がOであるIID錯体を、IID−aと記す。これらのPTE前駆体は、TE化合物と反応成分QHM1(ここで、M1はアルカリ金属であり、Qは>O、>NCN及びC(CN)2から選択される基である)とを反応させることによって、得られる。得られるPTE前駆体の一般式を、下記の表に示す。
【表1】

【0142】
II−D錯体の他の前駆体(PDLと記す)は、モノアルコールジエステル(DL)R1C(COOR14)2(CR'2R'3−CR23OH)(2個のR14基は同じ低級アルキル基、より特定的にはメチル又はエチル基である)から、得ることができる。PDL前駆体は、IID−aタイプの錯体を調製するのにも有用である。
【0143】
2及びR3基のいずれかがHである場合、DL化合物は、下記の反応式に従って、塩基Nu及び触媒Catの存在下で、調製することができる。
【化30】

【0144】
2及びR3基がH以外のものであるDL化合物は、オキシランを適当な環状カーボネート(特にエチレンカーボネート又はプロピレンカーボネート)に置き換えることによって、得ることができる。
【0145】
DL化合物は、2つのXii対が同じものである各種錯体についての前駆体を調製することを可能にする。これらの前駆体は、DL化合物と反応成分QHM1(ここで、M1はアルカリ金属であり、Qは>O、>NCN及びC(CN)2から選択される基である)とを反応させることによって得られる。得られるPTE前駆体の一般式を、下記の表に与える。
【表2】

【0146】
IID錯体の他の前駆体(PDMと記す)は、モノアミン二酸(DM)R1C(COOR14)2(CR'2R'3−CR23NH2)(ここで、2個のR14基は同じ低級アルキル基、より特定的にはメチル又はエチル基である)から、得ることができる。R2及びR3基がそれぞれHである場合、DM化合物は、次の反応式(ここで、ZはI、Br又はClである)に従って、塩基Nuの存在下で調製することができる。R2及びR3基の少なくとも1つがH以外のものであるDM化合物は、式Z−CR'2R'3−CR23NH2の好適なハロゲン化アミンを選択することによって、得ることができる。
【化31】

【0147】
DM化合物は、2つのXii対が同じものである各種錯体についての前駆体を調製することを可能にする。これらの前駆体は、DM化合物と反応成分QHM1(ここで、M1はアルカリ金属であり、Qは>O、>NCN及びC(CN)2から選択される基である)とを反応させることによって得られる。得られるPTE前駆体の一般式を、下記の表に与える。Y基の少なくとも1つがOであり且つY基の少なくとも1つがN原子を含むIID錯体を、IID−cと記す。
【表3】

【0148】
一般的に、IIID錯体の前駆体は、対応するID錯体の前駆体2分子をカップリングすることによって、得ることができる。同様に、IVD錯体の前駆体は、対応するIID錯体の前駆体2分子をカップリングすることによって、得ることができる。
【0149】
例えば、IIID錯体の前駆体は、次の反応式に従って、得ることができる。
【化32】

【0150】
IIID錯体の前駆体は、次の反応式に従って得ることができる。
【化33】

【0151】
上記の2つの反応式において、
・X4は>C=O、>C=NCN又は>C=C(CN)2、>SO2又は>C=Sを表わす;
・Lは脱離基、例えばCl、Br、又はイミダゾリル、トリアゾリル若しくはスクシンイミジル基基を表わす。LがCl又はBrである場合には、塩基Nuを加えて除去が容易なNuH+Cl-又はNuH+Nu-を形成させるのが有利である;
・R'2、R'3及びX3は上で与えた意味を持つ;
・P1及びP2はそれぞれ、セグメントX11及びX22の前駆体基、例えばプロトン化された形X11H及びX22Hを表わす。
【0152】
>X1又は>X2が>Oである場合、対応する基P1又はP2は、C(=O)OM''、C(=O)OCH3又はC(=O)OC55であることができる。
【0153】
>X1又は>X2が>C=NCNである場合、対応する基P1又はP2は、C(=NCN)OM''、C(=O)OCH3又はC(=O)OC55であることができる(それから出発するNCNへの変換は、HNCN−、C(=NCN)OCH3又はC(=NCN)OC55との反応によって成される)。
【0154】
>X1又は>X2が>N−C(CN)2である場合、対応する基P1又はP2は、C[=C(CN)2]OM''、C(=O)OCH3、C(=O)OC55であることができる(それから出発するC(CN)2への変換は、HC(CN)2-、C[=C(CN)2]OCH3又はC[=C(CN)2]OC55との反応によって成される)。
【0155】
3がCH2であるIIID及びIVD錯体は、それぞれ下記の反応式に従ったアミドメチル化反応によって、調製することができる。
【化34】

ここで、R1、R'2、R'3、P1、P2及びX4は上に与えた意味を持ち、X4は>CR23以外のものである。
【実施例】
【0156】
以下、実施例によって本発明を例示するが、しかし本発明はそれらに限定されるものではない。
【0157】
例1
【化35】

【0158】
商品として入手できるトリメチロールエタンCH3C(CH2OH)315gにホウ酸B(OH)37.72gを加え、この混合物をエタノール60ミリリットル中に電磁式で撹拌しながら溶解させて、化合物CH3C(CH2O−)3B(IB−1)を生成させる。フッ化カリウム7.253gを添加する。このフッ化物はエタノール中に不溶性であるが、CH3C(CH2O−)3B錯体の存在下では素早く溶解して付加物[CH3C(CH2O−)3BF]-+を生成する。回転式蒸発器を用いて溶媒を除去して、白色結晶質粉体を得た。この付加物の溶解度は、ジメチルホルムアミド(DMF)中で2.7g/リットルだった。
【0159】
例2
【化36】

【0160】
商品として入手できる2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(1,1,1−トリメチロールプロパン)C25C(CH2OH)320gに、メタノール75ミリリットル中のホウ酸メチルB(OCH3)315.49gを、電磁式で撹拌しながら加える。かなりの冷却が観察され、トリオールが溶解する。溶媒を蒸発させて除去した後に、三環式錯体C25C(CH2O−)3B(IB−2)が白色固体の形で得られた。無水エタノール60ミリリットル中のこの錯体10gにフッ化カリウム4.09gを加え、このフッ化カリウムを素早く溶解させて付加物K+[C25C(CH2O−)3BF]-を生成させる。回転式蒸発器を用いて溶媒を除去して、白色結晶質粉体が得られた。IB−2/KF付加物の溶解度は、ジメチルホルムアミド(DMF)中で17g/リットルだった。
【0161】
例3
【化37】

【0162】
商品として入手できる2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸CH3C(CH2OH)2CO2H12gに、95%エタノール75ミリリットル中のホウ酸エチルB(OC25)313.061gを、電磁式で撹拌しながら加える。得られた透明溶液を回転式蒸発器を用いて真空下で蒸発させ、プライマリ真空下で75℃において乾燥を続ける。シロップ状の塊が白色固体になる。これを単離する(定量的収率)。これは式CH3C[(CH2O−)2(CO2−)]B(IB−3)に相当するものだった。この錯体6gを無水ジメチルホルムアミド(DMF)25ミリリットル中に溶解させて、透明溶液を得る。プライマリ真空下で150℃において乾燥させたフッ化カリウム2.46gを添加する。DMF中に完全に不溶性のKFが素早く溶解し、付加物K+{CH3C[(CH2O−)2(CO2−)BF}-を形成した。
【0163】
例4
【化38】

【0164】
商品として入手できる2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸C25C(CH2OH)2CO2H15gに、メタノール75ミリリットル中のホウ酸メチルB(OCH3)310.52gを、電磁式で撹拌しながら加える。得られた透明溶液を回転式蒸発器を用いて真空下で蒸発させる。シロップ状の塊が白色固体になる。これを単離する(定量的収率)。これは式C25C[(CH2O−)2(CO2−)]B(IB−4)に相当するものだった。この錯体8gを無水ジメチルホルムアミド(DMF)25ミリリットル中に溶解させて、透明溶液を得る。プライマリ真空下で150℃において乾燥させたフッ化カリウム2.98gを添加する。付加物K+{C25C[(CH2O−)2(CO2−)]BF}-の無色透明溶液が得られた。
【0165】
例5
【化39】

【0166】
メタノール65ミリリットル中にホウ酸8.183gを含有させた溶液に、商品として入手できるトリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタンNO2C(CH2OH)320gを加える。黄色溶液を蒸発させて、式NO2C(CH2O−)3B(IB−5)のベージュ色の固体を得る。メタノール60ミリリットル中の個の化合物12gに、商品として入手できるフッ化テトラエチルアンモニウム二水和物(C25)4NF・2H2O13.99gを加え、生成する水と反応させるための2,2−ジメトキシプロパンCH3C(OCH3)2CH316gも加える。透明黄色溶液を蒸発させて、無水固体の形の付加物(C25)4+[NO2C(CH2O−)3BF]-を得る。この塩は、ジクロロメタン、アセトニトリル、DMF、ジメチルアセトアミド、DMSO、N−メチルピロリジノン(NMP)又はα,α,α−トリフルオロトルエン等の極性溶媒中に可溶だった。
【0167】
例6
【化40】

【0168】
Stetter及びBockmannの方法(W. Stetter and H. Bockmann, Chemische Berichte, (1951), 84 834-9)に従い、トリメチロールエタン及びピリジン中の塩化トルエンスルホニルから出発して、スルホン酸エステルCH3C(CH2OSO264CH3)3を調製する。テトラヒドロフラン400ミリリットル中にトリフルオロアセトアミドCF3CONH244gを含有させた溶液に、LiH6.2gを加える。水素を排出させた後に、この懸濁液に、上で調製したスルホン酸エステル75gを、常温において電磁式で撹拌しながら、少しずつ添加する。さらに水素を排出させる。2時間後に、この懸濁液を蒸発させ、混合物を硫酸水素アンモニウム60gを添加した水500ミリリットル中に取り出す。この溶液を、300ミリリットルずつのエチルエーテルで3回抽出する。抽出液を一緒にして蒸発させ、トルエン−アセトニトリルの混合物から再結晶して、錯化剤CH3C(CH2N(H)COCF3)342gが得られた(収率80%)。この錯化剤8gをメタノール30ミリリットル中に溶解させ、ホウ酸エチル2.88g及びLiF512mgを加える。フッ化リチウムは、式{CH3C[CH2−N(COCF3)−]3BF}-Li+の(IB−6/LiF)錯体塩の形で溶解した。
【0169】
例7
【化41】

【0170】
商業的入手源からのカリウムトリシアノメチドK[C(CN)3]3gをTHF200ミリリットル中に溶解させ、これに水素化リチウムアルミニウムLiAlH412gを加えた。2時間後に、回転式蒸発器を用いてTHFを除去し、形成した固体を水50ミリリットル中に取り出し、水酸化リチウム10gを加える。この懸濁液を濾過し、減圧下で水を蒸発させて除去する。ペースト状固体を50ミリリットルずつのジクロロメタンCH2Cl2で2回抽出し、溶媒を蒸発させて除去する。NMR分析は、得られた生成物が先行技術に開示されていないトリアミンHC(CH2NH2)3であることを示した。
【0171】
このアミン10g、トリフルオロ酢酸エチルCF3CO22541.4g、ホウ酸トリエチル14.2g及びLiF2.52gを、アセトニトリル125ミリリットル中に導入した。透明溶液により、式HC[CH2N(CF3CO)−]3Bのホウ素錯体IB−7とLiFとの付加物IB−7/LiFが、該錯体塩の高い格子エネルギーにも拘らず、形成したことが確認される。
【0172】
例8
【化42】

【0173】
Dunhamらの方法(J. Dunham, A. Richardson, R. Sammelson, Synthesis, (2006), 680-686)により、ホウ水素化ナトリウムNaBH420gを、アセトン60ミリリットルとイソプロパノール200ミリリットル中のマロノニトリル50gとの混合物と、0℃において撹拌しながら反応させることによって、イソプロピルマロノニトリルを調製する。溶媒を蒸発させて除去し、反応混合物を、硫酸50gで酸性にした水400ミリリットルで取り出す。イソプロピルマロノニトリルを100ミリリットルずつのエーテルで3回抽出する。画分を一緒にし、エーテルを蒸発させて除去する。イソプロピルマロノニトリルは、85〜86℃/7ミリバールにおいて蒸留される。
【0174】
商品として入手できる水中37%ホルムアルデヒド溶液15ミリリットル及び塩基性触媒1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)10滴を、イソプロピルマロノニトリル20gに加える。加熱下での素早い反応によりC37C(CH2OH)(CN)2(2−プロピル−2−ヒドロキシメチルマロノニトリル)が得られ、真空下で水を蒸発させて除去した。THF(100ミリリットル)中の水素化リチウムアルミニウムLiAlH4(8g)で還元することによって、ジアミンHOCH2C(C37)(CH2NH2)2(10g)が得られる。酸性にし、エーテルで抽出した後に、NaOHペレット添加後の蒸留によって、ジアミンが得られる。
【0175】
このジアミン4gに、アセトニトリル中のトリフルオロ酢酸エチル7.7gを加え、次いでホウ酸トリエチル4g及びCsF4.15gを加える。得られた溶液を蒸発させて、式i−C37C{[CH2O−][CH2−N(COCF3)2−]}BF-Cs+の付加物IB−8/CsFが白色固体の形で得られた。この化合物は、CsFとは違って、極性非プロトン性溶媒中に可溶だった。
【0176】
例9
【化43】

【0177】
アセトニトリル100ミリリットル中に溶解させたトリフルオロメタンスルフィン酸カリウムKCF3SO220gを、60℃においてトルエンスルホン酸メチル21.6gで48時間処理する。トルエンスルホン酸カリウムの沈殿を遠心分離によって回収し、この固体を20ミリリットルずつのアセトニトリルで2回洗浄する。得られた生成物はスルホンCF3SO2CH3であり、これは単離しなかった。液状ペーストを一緒にし、次いでパラホルムアルデヒド10.6g及びDBU5滴を加える。この溶液を周囲温度において撹拌し、不溶性のパラホルムアルデヒドが徐々に溶解した。こうして得られた僅かに濁った懸濁液を濾過し、アセトニトリルを蒸発させて除去した後に、トリオールCF3SO2C(CH2OH)3をトリエン−ニトロメタン混合物から白色固体の形で再結晶した。このトリオール10gに、ホウ酸トリエチルB(OC25)36.12gを加え、エタノール中の無色溶液を得た。蒸発により、錯体CF3SO2(CH2O−)3B(IB−9)が白色粉体の形で得られた。
【0178】
この錯体(IB−9)は、KF、KNCO、KCN及びNaCNと共に、アセトニトリル、アセトン及びエチルメチルケトン等の低沸点極性溶媒中に可溶であり、DMF、DMSO、NMP及びスルホランのようなもっと高極性の溶媒中にはなおさら可溶だった。
【0179】
例10
【化44】

【0180】
アセトニトリル100ミリリットル中にトリフルオロメチルメチルスルホンCF3SO2CH320gを含有させた溶液に、プロピオンアルデヒドC25CHO15g及びホスファゼン塩基[CH3)2N]3P=N−P(NC25)N(CH3)2]2(Fluka社より参照番号79417の下で販売)240mgを加える。反応器を密閉して水浴中で20℃に保つ。24時間後に、回転式蒸発器を用いて蒸発させることによって溶媒を除去して、粘性オイルCF3SO2C[CH(C25)OH]3を得る。この化合物15gに、ホウ酸トリメチルB(OCH3)34.83gを加える。反応式は次の通りである。
【化45】

【0181】
IB−11錯体が同時に生成するメタノール中の透明溶液の形で得られる。メタノールを蒸発させて除去することにより、錯体を回収する。
【0182】
例11
【化46】

【0183】
商品として入手できるメチルマロン酸のジエチルエステルCH3CH(CO225)217.4gに、商品として入手できる水中37%ホルムアルデヒド溶液8.2ミリリットル、95%エタノール10ミリリットル及び塩基性触媒としてのDBU8滴を、加える。2つの不混和性相から出発して、加熱下での素早い反応により、2−メチル2−ヒドロキシメチルマロン酸エチルCH3C(CH2OH)(CO225)2が得られる。得られた無色の単一相溶液を、95% エタノール60ミリリットル及び水10ミリリットルで希釈する。Ca(OH)28gを分散させ、この混合物を35℃において72時間撹拌する。得られた白色懸濁液に、過剰分のCa(OH)2を除去するために、酢酸2.5gを添加する。鹸化から得られた不溶性のカルシウム塩を濾過によって分離し、95%エタノールで洗浄し、乾燥させる。その式はCa[CH3C(CH2OH)(CO2)2]に相当する。このカルシウム塩8g及び無水シュウ酸3.5gを、無水エタノール50ミリリットル中に、電磁式で撹拌しながら分散させる。2時間後に、得られた白色懸濁液を遠心分離し、固体を12ミリリットルずつのエタノールで3回抽出する。画分を一緒にし、ホウ酸エチルB(OC25)35.6gを加える。溶媒を蒸発させて除去した後に、二酸−アルコールホウ素錯体CH3C[(CH2O−)(CO2−)2]B(IB−11)が得られた。
【0184】
例12
【化47】

【0185】
商品として入手できるブチルマロン酸のジエチルエステルC49CH(CO225)221.6gに、パラホルムアルデヒド3.1g及びDBU20滴を加える。パラホルムアルデヒドの懸濁液が消失することによって示される漸次反応により、2−ブチル−2−ヒドロキシメチルマロン酸エチルC49C(CH2OH)(CO225)2が無色液体の形で得られ、次いでこれを95%エタノール70ミリリットル及び水10ミリリットルで希釈する。水酸化カルシウムCa(OH)28gを分散させ、この混合物を35℃において72時間撹拌する。得られた白色懸濁液に酢酸4gを添加し、形成されたカルシウム塩の沈殿を濾過によって分離し、95%エタノールで洗浄し、乾燥させる。その式はCa[C49C(CH2OH)(CO2)2]に相当する。
【0186】
このカルシウム塩10g及び無水シュウ酸3.8gを、無水エタノール60ミリリットル中に、電磁式で撹拌しながら分散させる。2時間後に、形成された白色懸濁液を遠心分離し、固体を12ミリリットルずつのエタノールで3回抽出する。画分を一緒にし、ホウ酸メチルB(OCH3)34.35gを加える。溶媒を蒸発させて除去した後に、二酸−アルコールホウ素錯体C49C[(CH2O−)(CO2−)2]B(IB−12)が無色の固体の形で得られた。
【0187】
例13
【化48】

【0188】
DMF100ミリリットル中の例11に従って調製した式CH3C(CH2OH)(CO225)2の2−メチル2−ヒドロキシメチルマロン酸ジエチル20.4gに、グローブボックス中でアルゴン下で、マロノニトリル13.8g及びナトリウムメトキシド11gを加えた。この溶液をグローブボックス中で撹拌して、白色沈殿が形成した。24時間撹拌を保ち、沈殿を遠心分離によって分離し、アセトニトリルで2回洗浄した。乾燥後に、二塩基性塩Na2{CH3C(CH2OH)[COC(CN)2]2}が単離された。塩10g、三フッ化ホウ素エーテラート3.28g及びホウ酸トリエチル1.69gをアセトニトリル50ミリリットル中で混合した。次の反応が起こる。
【化49】

【0189】
NaF及びIB−13ホウ素錯体の付加物は、アセトニトリル、THF、グリム類、DMF、NMP及びスルホラン等の極性非プロトン性溶媒並びにポリ(エチレンオキシド)及びそのコポリマー等の溶媒和用コポリマー中に可溶だった。
【0190】
リチウム塩は、合成の際にCH3ONaを同じモル量のリチウムアルコキシド若しくはLiHに置き換えることによって、又はLiClを用いたイオン交換によりNaClが不溶性である上記のいずれかの溶媒中にNaClを沈殿させることによって、得ることができる。同じ方法で、適切な塩化オニウムの反応によって、上記のオニウム塩を得ることができる。より重質のアルカリ金属(K、Rb、Cs)の塩は、対応する金属フッ化物を反応させると共にNaFを沈殿させることによって、得られる。
【0191】
2−メチル2−ヒドロキシメチルマロン酸ジエチルを2−ブチル−2−ヒドロキシメチルマロン酸ジエチルに置き換えることによって、C49C{(CH2O−){C[=C(CN)2]O−}2}BF-Na+が得られ、これは次いで様々なカチオン交換反応に付すことができる。
【0192】
例14
【化50】

【0193】
無水エタノール150ミリリットル中の例12におけるように調製したC49C(CH2OH)(CO225)224.6gに、商品として入手できるNaHNCN13gを加えた。この溶液を50℃に加熱し、撹拌しながらこの温度に24時間保った。形成した沈殿を遠心分離し、次いで無水エタノールで2回洗浄した。乾燥後に、二塩基性塩Na2[C49C(CH2OH)(CONCN)2]が白色粉体の形で得られた。
【0194】
この塩11.75gをアセトニトリル100ミリリットル中に懸濁させ、この懸濁液を0℃に冷却し、1,4−ジオキサン20ミリリットル中に98%H2SO42.08gを含有させた溶液を滴下した。生成した硫酸ナトリウムを除去するために、この懸濁液を濾過した。残留物をアセトニトリルで2回洗浄し、濾液にB(OC25)36.08gを添加した。溶媒を回転式蒸発器を用いて除去し、残った無色固体をプライマリ真空下で50℃において乾燥させた。式C49C{[CH2O−][C(=NCN)−O−]2}Bのホウ素錯体(IB−14)9.38gが得られた(収率94%)。
【0195】
49C(CH2OH)(CO225)2をCH3C(CH2OH)(CO225)220.4gに置き換えることによって、錯体CH3C{[CH2O−][C(=NCN)−O−]2}IB−14''が得られる。
【化51】

【0196】
得られたホウ素錯体は、アルカリ金属フッ化物又はオニウムフッ化物との付加物を形成し、また、Li22、LiOCN、NaOCN、NaCN、KCN及びNaN3との付加物も形成する。例えば、IB−14錯体2.04g及びLiF280mgをアセトニトリル中に分散させる。LiFの大部分が溶解する。僅かに濁った溶液を遠心分離し、残留物を蒸発させて、付加物Li{CH3C(CH2O−)[C(=NCN)O−]2BF}IB−14/LiF2.05gが得られる(収率89%)。
【0197】
例15
【0198】
THF85ミリリットル中の商品として入手できるトリメチロールエタンCH3C(CH2OH)320gに、商品として入手できるカルボニルジイミダゾールCO(C332)226gを加える。この混合物を常温において撹拌し、次いでスルファミン酸35gを加え、この混合物を再び24時間撹拌し、濾過する。得られた化合物は、2個の官能基が環状カーボネートの形成によって保護されたトリオールである。
【0199】
濾液を塩化トルエンスルホニル31.5g及びピリジン12.6gで処理する。反応生成物を濾過して塩化ピリジニウム沈殿を除去する。濾液を蒸発させ、DMF中に取り出し、ビスホルミルイミドのナトリウム塩(HCO)2NNa15.8gを加える。この溶液を撹拌しながら80℃に2時間保つ。冷却後に、この混合物を水300ミリリットル中に希釈し、この溶液を50ミリリットルずつのエチルエーテルで3回抽出し、抽出物を一緒にする。蒸発後に、化合物CH3C{[(CH2O)2]CO}CH2N(CHO)224.1g(72%)が得られた。
【化52】

【0200】
この化合物15gを水150ミリリットル中に可溶化させ、水酸化カルシウム11gを加える。この溶液を3時間還流する。形成された白色沈殿を濾過し、水を蒸発させて除去する。固体をジクロロメタン50ミリリットルで抽出し、溶媒を除去する。CH3C(CH2OH2)2CH2NH27.7g(84%)が粘性液体の形で得られる。このアミノアルコールを、本発明に従うホウ素錯体を形成させるための前駆体として、アセトニトリル中で常温において用いた。反応成分が(CH3)2NSO2Clである場合には、1当量のDABCO(ジアザ−1,4−ビシクロ[2.2.2]オクタン)塩基を用いる。
【0201】
この前駆体から得られる本発明の化合物の例を、下記の表に与える。
【表4】

【0202】
こうして調製される4種のホウ素錯体は、少なくともK+と同じ寸法のアルカリ金属(即ちRb及びCs)のフッ化物と共に、そしてすべてのオニウム塩フッ化物と共に、付加物を形成する。
【0203】
例16
【0204】
Dunhamらによって報告された方法(Synthesis, (2006), 680-686)に従い、ブタナールとマロノニトリルとから、ブチルマロノニトリルを調製した。THF100ミリリットル中のブチルマロノニトリル12.2gに、パラホルムアルデヒド3.0g及びDBU8滴を加えた。反応するにつれてパラホルムアルデヒドが徐々に消失し、マロノニトリルをヒドロキシメチル化して化合物C49C(CH2OH)(CN)2となる。得られた溶液に、LiAlH411gを撹拌しながら加える。2時間後に、回転式蒸発器を用いてTHFを除去する。水100ミリリットルを加える(最初の10ミリリットルは滴下)ことによって乾燥固体を取り出し、LiOH5gを加える。再び溶媒を除去し、ペースト状固体を50ミリリットルずつのα,α,α−トリフルオロトルエンで2回抽出し、溶媒を蒸留によって除去する。NMR分析は、得られた化合物がジアミノアルコールC49C(CH2NH2)2(CH2OH)であることを示した。これをアセトニトリル中で常温において様々な反応成分と共に用いて、本発明に従う錯体を調製した。反応成分がC25SO2Clである場合には、1当量のDABCO(ジアザ−1,4−ビシクロ[2.2.2]オクタン)塩基を加える。
【0205】
【表5】

【0206】
例17
【化53】

【0207】
水とエタノールとの20/80(v/v)混合物150ミリリットル中に商品として入手できるビス(ヒドロキシメチル)酪酸25gを溶解させ、炭酸水素ナトリウム14.2gを撹拌しながら加える。CO2放出が止まったら、溶液を濾過して減圧下で塩を蒸発させる。Na[C25C(CH2OH)2CO2]塩が白色固体の形で回収される。この塩17gをメタノール80ミリリットル中に懸濁させ、硫酸ナトリウム15gを加える。25℃において2時間撹拌した後に、溶液を蒸発させ、ペースト状固体を50ミリリットルずつのジクロロメタンで2回抽出し、抽出物を一緒にする。濾過後に、溶媒を蒸発させて除去して、ビス(ヒドロキシメチル)酪酸のエチルエステルC25C(CH2OH)2CO225が得られた。
【0208】
グローブボックス中でアルゴン雰囲気下においてプロセスを実施する。無水THF50ミリリットル中にマロノニトリル6.5g及びナトリウムメトキシド5gを溶解させ、前もって生成させておいたエステル16gを加える、24時間撹拌した後に、酢酸2ミリリットルを加え、次いでこの溶液をグローブボックスから取り出し、溶媒を蒸発させて除去する。残渣をジクロロメタンで洗浄し、次いで生成した塩が可溶なアセトニトリル(ACN)で抽出する。この溶液を濾過してACN中に不溶性の酢酸ナトリウムを除去し、次いで減圧下で蒸発させてNa[C25C(CH2OH)2COC(CN)2]塩を得て、これをアセトニトリル/トルエン混合物から再結晶する。
【0209】
エタノール50ミリリットル中の前に調製した塩10g、ホウ酸B(OH)32.834g及び水中40%フッ化水素酸溶液2.9gをポリプロピレンビーカー中で反応させることによって、ホウ素及びNaFの錯体を形成させる。得られた溶液を蒸発させて、IB−17錯体及びNaFの付加物を得る。
【化54】

【0210】
NaFはすべての非プロトン性溶媒中に不溶性であるのに対して、この塩はDMF、NMP、DMSO、アセトニトリル、THF、1,2−ジメトキシエタン(グリム)、ジグリム又はトリグリム等の極性溶媒中に可溶である。KFの作用及びアセトニトリル中でのカチオン交換によってカリウム塩が得られ、これもまたアセトニトリル、THF又はグリム等の溶媒中に不溶性である。
【0211】
例18
【化55】

【0212】
例17で調製したビス(ヒドロキシメチル)酪酸C25C(CH2OH)2CO225のエチルエステル17.6gをTHF100ミリリットル中に溶解させ、商品として入手できるTHF中の塩化メチルマグネシウムの2M溶液160ミリリットルを、機械的に撹拌しながら加える。気体(CH4)の発生が起こり、白色沈殿が形成する。24時間後に、スルファミン酸微粉末25gを加え、撹拌を48時間続ける。この反応混合物を濾過し、THFを蒸発させて除去し、残ったトリオールC25C(CH2OH)2[C(CH3)2OH]の粘性液体をクロマトグラフィーによって精製する。アセトニトリル50ミリリットル中のこのトリオール10gに、ホウ酸B(OH)33.81gを加える。得られた透明溶液を蒸発させて、次の構造に相当する無色の固体を得た。
【化56】

【0213】
この錯体4.97gをDMF40ミリリットル中に溶解させ、フッ化カリウムKF1.70gを加える。この塩は素早く溶解し、錯体K+{C25C(CH2O−)2[C(CH3)2O−]BF}-を与えた。この溶液をジメチルホルムアミド中のポリ(エピクロルヒドリン)(商品として入手できるポリマー、Mw≒106)2.5gに添加し、この混合物を85℃にする。2時間後にKClの沈殿が形成する。反応を24時間続ける。反応混合物を水100ミリリットル中に注ぎ、沈殿したポリマーを濾別し、水で洗浄する。元素分析は、ポリマーの塩素原子の86%が、鎖が分解することなく、フッ素原子に置換されたことを示した。HClの除去に由来するビニルエーテル結合がないことが、IRによって確認された。DMF中で85℃における同じ置換の試みは、100%の除去を与えた。
【0214】
例19
【化57】

【0215】
無水メタノール50ミリリットル中にマロン酸ジメチルCH2(CO2CH3)213.2g及びナトリウムメトキシド0.4gを含有させた溶液に、アセトアルデヒドCH3CHO8.8gを加え、撹拌しながら5℃に温度調節し、次いでこの混合物を放置して1時間反応させる。次いでこの溶液にNaOH4gを加え、次いでこの混合物を撹拌しながら30℃に2時間保つ。次に、スルファミン酸HSO3NH29.71gを加え、30℃において1時間撹拌を保つ。濾過して生成したNaSO3NH2を除去した後に、この溶液を沸騰させてCO2を排出させた。こうして得られたジオールエステルHC[CH(CH3)OH]2CO2CH3を含有する溶液を窒素で脱ガスし、不活性雰囲気下においてマロノニトリル3.3g及びナトリウムメトキシド2.7gを加える。この溶液を窒素雰囲気下において12時間撹拌する。次いで酢酸3ミリリットルを加え、次いでメタノールを蒸発させて除去し、残留溶液をアセトニトリル50ミリリットルで抽出し、次いで濾過する。
【0216】
抽出物をジクロルメタン100ミリリットルから沈殿させて、Na{HC[CH(CH3)OH]2COC(CN)2}9.6gが白色粉体の形で得られた。
【0217】
容量比50/50のエタノール/アセトニトリル混合物中で、Na{HC[CH(CH3)OH]2COC(CN)2}7.27g、スルファミン酸HSO3NH23.24g及びホウ酸2.06gを混合し、次いで溶媒を蒸発させて除去する。IB−19錯体が得られる。
【0218】
2回目の試みにおいては、ホウ酸2.06g及びNa{HC[CH(CH3)OH]2COC(CN)2}7.27gをメタノール中で混合し、次いでこのメタノールを除去し、IB−19錯体及びOH-アニオンから成るIB−19/NaOH付加物が得られた。
【化58】

【0219】
3回目の試みにおいては、Na{HC[CH(CH3)OH]2COC(CN)2}7.27g及び商品として入手できる40%HF溶液1.67gを水に加え、錯体とF-アニオンとから成る付加物が得られた。
【化59】

【0220】
4回目の試みにおいては、10℃に冷却しながらエタノールにNa{HC[CH(CH3)OH]2COC(CN)2}7.27g、アルミニウムトリス(イソプロポキシド)6.8g及び商品として入手できる98%硫酸1.64gを加える。この混合物を次いで濾過して生成したNa2SO4を除去して、IAl−19アルミニウム錯体が得られた。
【0221】
5回目の試みにおいては、Na{HC[CH(CH3)OH]2COC(CN)2}7.27g、アルミニウムトリス(t−ブトキシド)8.21g及び商品として入手できる40%HF溶液5gを水中で混合し、この混合物を濾過して生成したNaHF2を除去して、IAl−19/NaF付加物の溶液が得られた。
【化60】

【0222】
例20
【化61】

【0223】
トリオールCF3SO2C[CH(C25)OH]311g[DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)のような塩基性触媒の存在下でプロパノールとスルホンCF3SO3CH3とを縮合させることによって得られ、このプロセスはグローブボックス中で実施される]を乾燥DMF60ミリリットル中に溶解させ、アルミニウムイソプロポキシド[CCH3)2CHO]3Al6.97gを加えた。得られた透明溶液に乾燥KF2.1gを加える。この乾燥KFはほとんど完全に溶解して、溶液状の付加物K+{CF3SO2C[CH(C25)O]3AlF-}が生成した。過剰分のKFを遠心分離によって除去した。
【化62】

【0224】
同じ条件下で、同じトリオール6.45g及びアルミニウムイソプロポキシド4.08gに、フッ化セシウム1.52gを加えた。この塩は溶解した。19F及び27Al−NMRは、三核錯体の形成を示した。
【化63】

【0225】
例21
【0226】
マロン酸ジエチルCH2(CO225)216g及びジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン5滴をアセトニトリル75ミリリットル中に含有させた溶液に、10℃に温度調節して撹拌しながら、ブタナールC37CHO14.6gを加え、次いでこの混合物を2時間反応させる。次いで真空下でアセトニトリルを除去し、透明粘性溶液に水50ミリリットル及び水酸化リチウム一水和物8.4gを加えた。この溶液を40℃に3時間保ち、次いで硫酸6gを加え、この混合物を素早く沸騰させて、気体(CO2)を排出させた。この溶液を蒸発乾固させ、得られたジオールモノ酸HC[CH(C37)OH]2CO2Hを50ミリリットルずつのジクロロメタンで2回抽出した。
【0227】
ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム、DG)60ミリリットル中のこの酸10.2gに、THF中1Mトリイソブチルアルミニウム[(CH3)2CHCH2]3Al50ミリリットルを、グローブボックス中で撹拌しながら、加えた。気体(イソブタン)が激しく排出し、透明溶液が得られた。この溶液にKOCN4.055gを加え、このKOCNが溶解して、錯体との付加物を形成した。
【0228】
別の試みにおいて、KF2.9gを加えたところ、これも溶解して、錯体との付加物を形成した。錯体及び2つの付加物の式を下に与える。
【化64】

【0229】
例22
【0230】
商品として入手できるシアノ酢酸エチル(a)とパラホルムアルデヒドとを1%のジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセンの存在下で反応させて、化合物(b)NCC(CH2OH)2CO225を得た。このエチルエステルを塩基性媒体中で加水分解し、次いで酸の形を遊離させ、脱カルボキシルし、OH基をカルボニルジイミダゾールCO(C332)2で保護した後に、化合物(d)を得た。
【0231】
次いで、CS-273050-B1に記載された方法に従い、(d)をエタノール中のHClと反応させて化合物(e)のエチルアミジン基を得て、これを化合物(f)中のジシアノアミジン基−C(NCN)2−に転化させることによって、N,N’−ビスシアノアミジンを調製する。
【0232】
プロセス全体の反応式を下に与える。
【化65】

【0233】
OH基をCa(OH)2で脱保護し、次いでこの化合物をHSO2NH2及びB(OH)3で処理してIB−22ホウ素錯体を得る。その反応式を下に与える。
【化66】

【0234】
このIB−22錯体は、アセトニトリル、THF、グリム類、DMF、DMAc、NMP、DMSO及びスルホラン等の極性溶媒中に可溶だった。これは、NaF、KF、NaCN、KCN、KNCO、NaNCO及びNaN3との付加物を形成し、アニオンO2-、O22-、O2・-、OH-、RO-、N3-、CN-、HNCN-又はNCN2-等のアニオンのオニウム塩との付加物を形成する。
【0235】
例23
【化67】

【0236】
ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン5滴を含有させたピリジン75ミリリットル中のマロン酸モノエチルHO2CCH2CO22516gの溶液を調製し、撹拌しながら60℃に温度調節した。ヘキサナールC511CHO20gを加え、この混合物を2時間反応させる。酸のH原子を置換すると同時に脱カルボキシルすることによって、化合物HC[CH(C511)OH]2CO225が生成する。この溶液を10℃に冷却し、窒素を吹き込みながら、KOCH37g及びマロノニトリルCH2(CN)26.6gを加える。1時間後に、ピリジンを蒸発させて除去して、化合物K{HC[CH(C511)OH]2COC(CN)2}を固体の形で回収した。この化合物を、アセトニトリル中に溶解させ、トルエンから沈殿させることによって、精製した。
【0237】
この塩3.46gを無水エタノールに加え、次いでスルファミン酸HSO3NH2971mg及びB(OH)3970mgを加える。次いで溶媒を蒸発させて除去して、IB−23ホウ素錯体を回収した。
【0238】
例24
【化68】

【0239】
D. Preliczらの方法[Akad. Med. Wroclaw, Wroclaw, Pol. Roczniki Chemii (1970), 44(1), 49-59]に従い、n−ブチルアミンと商品として入手できるトリエチル(メタントリカルボキシレート)とを反応させることによって、トリス(N−n−ブチルメタントリカルボキサミド)HC[CON(C49)H]3を調製した。この生成物をDMSO−D6中でのNMRによって特徴付けした。その融点は文献値(182℃)に相当していた。このトリアミド3.13gを無水メタノール20ミリリットル中に溶解させ、これにホウ酸618mgを加えたところ、これは溶解した。溶媒を蒸発させて除去した後に、IB−24錯体を得た。
【0240】
この錯体は、KF、KOCN、NaCN、KCN、NaOH及びKOHとの付加物を形成し、これらの付加物は、DMF、DMAc、NMP、スルホラン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロペンタノン及びアセトニトリル等の極性溶媒中に可溶だった。このIB−24錯体はオニウム塩との付加物を形成し、この付加物は、上記の極性溶媒中に可溶であり、ジクロロメタン、クロロホルム及びα,α,α−トリフルオロトルエン中にも可溶だった。
【0241】
商品として入手できるトリエチル(メタントリカルボキシレート)をメチル化誘導体CH3C(CO225)3(KFと硫酸メチルとを反応させ、4−シアノアニリンで処理することによって調製)に置き換えて、上記の手順を再現して、IB−24'錯体を得た。
【化69】

【0242】
例25
【化70】

【0243】
商品として入手できるエチルマロン酸ジエチルCH(C25)(CO225)218.82gに、パラホルムアルデヒド3g及びDBU15滴を加える。発熱反応が起こり、パラホルムアルデヒドが溶解し、化合物C25C(CH2OH)(CO225)2が得られた。次いでイソプロピルアミン12gを加え、容器を密閉し、40℃に72時間保つ。過剰分のイソプロピルアミン及びエタノールを真空下で蒸発させて除去して、リガンド、C25C(CH2OH)[CON(i−C37)H]2を得て、これをトルエン−エタノール混合物から再結晶する。
【0244】
この錯体12.2gとホウ酸トリエチルB(OC25)37.3gとを混合し、反応によって液体が形成した。これは同時に生成したエタノール中のIB−25錯体錯体の濃厚溶液だった。
【0245】
グローブボックス中で中性雰囲気下で、無水DMF25ミリリットル中のリガンドC25C(CH2OH)[CON(i−C37)H]25gに、アルミニウムイソプロポキシド4.18g及びKF1.18gを加え、次いでこの混合物を2時間撹拌する。錯体の濃厚溶液が得られた。これは、IAl−25−KF付加物の溶液である。
【0246】
例26
【化71】

【0247】
商品として入手できるシアノ酢酸エチル11.31gを、触媒量の1%(モル)DBUの存在下で、2当量(6g)のパラホルムアルデヒドによってヒドロキシメチル化して、ジオールエステルエステルNCC(CH2OH)2CO225を得る。同じ容器中で、商品として入手できる40%メチルアミン含有水溶液9ミリリットルを加える。数分かけて熱の放出をもたらし、12時間撹拌を保つ。ホウ酸6.18gを加えたところ、溶解した。溶媒(アミン溶液の水+反応の際に生成したエタノール)を蒸発させて除去して、IB−26錯体を無色の固体の形で得た。この錯体は、KF、KOCN、NaCN、KCN、NaOH、KOH及びオニウムフッ化物との付加物を形成した。
【0248】
例27
【0249】
商品として入手できるテトラクロロテレフタロニトリル10.5gを、フッ化カリウムKF10gと共に、DMF75ミリリットル中に分散させる。この懸濁液にIB−4錯体3.1gを加える。B/F比=1/7。この懸濁液を65℃において25時間撹拌する。この混合物を濾過し、固体を15ミリリットルずつのDMFで2回洗浄し、濾液を水1リットルから沈殿させ、遠心分離によって分離する。得られた生成物をNMRで測定したところ、これは純度98%のテトラフルオロテレフタロニトリルだった。濾過残渣は、X線分光分析で測定したところ、これは純KClから成っていた。同様の条件下で、テトラクロロテレフタロニトリル+KF混合物は、65℃において25時間後にKClのX線ピークを示さなかった。
【0250】
例28
【0251】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製容器を含ませたParr(登録商標)反応器を窒素スパージングによって洗浄して密閉し、50gのペンタクロロピリジン、60gのKF及び7.3gのIB−3錯体を250ミリリットルのN−メチルピロリジノン(NMP)中に導入する(B/F比=1/20)。この反応器を180℃にし、この温度に3時間保ち、次いで加熱を停止し、常温に戻した後に、反応器を開く。反応混合物を濾過し、30ミリリットルずつのNMPで2回洗浄する。得られた固体は、KClだった(74g、X線分析によって特徴付け)。濾液を蒸留して、ペンタフルオロピリジン28.3g(収率84%)が得られた(Bp=84℃)。
【0252】
例29
【0253】
本例は、カルボキシレート基が持つ負電荷のせいで容易に活性化される基質へのハレックス反応に関する。
【0254】
商品として入手できるテトラブロモテレフタル酸55gを水150ミリリットル中に撹拌しながら懸濁させ、これに22.9gのKHCO3を加える。CO2放出が終わった後に得られた透明溶液を、100℃のオーブン中で蒸発させる。得られたテトラブロモテレフタル酸カリウムC8Br442の溶解度は、25℃のDMF中で7g/リットルだった。
【0255】
20ミリリットルのDMF中のC8Br442塩10gに、4.5gのKF及び0.55gのIB−2錯体を加え、この混合物をN2加圧下で50ミリリットルのParr(登録商標)実験室用反応器中に導入し、この反応器を密閉する。B/F比は1/20とする。200℃において5時間反応を実施する。冷却後に、反応器を開き、懸濁液を濾過する。濾液を75ミリリットルのジクロロメタンから沈殿させる。テトラフルオロテレフタル酸カリウムC8442の収量は5.2g(理論収量の92%)だった。
【0256】
例30
【0257】
50ミリリットルのDMF中の15gの商品として入手できるテトラクロロテレフタル酸ジメチルエステルに、11gのKF及び2.4gのIB−4錯体を加える(B/F比=1/10)。この混合物を常温において24時間撹拌する。得られた懸濁液を200ミリリットルの水中に注ぎ、非水性相を30ミリリットルずつのヘキサンで4回抽出する。これらのアリコート部分(抽出物)を混合し、溶媒を蒸発させて除去し、残渣を常圧下で146℃において蒸留する。8.6g(72%収率)のテトラフルオロテレフタル酸ジメチルエステルが得られた。
【0258】
例31
【0259】
70ミリリットルのスルホラン(テトラメチレンスルホン)中の20gの商品として入手できる1,2,4−トリクロロベンゼンに、20gのフッ化カリウム及び3.25gのIB−2錯体(B/F比=1/15)を加える。この混合物をParr(登録商標)反応器中に導入し、窒素でスパージングして洗浄した後に密閉し、次いで245℃にし、この温度に3時間保つ。次いで反応器を常温まで冷まして開き、反応生成物を濾過する。24.2gのKClが得られた。濾液を、30ミリリットルずつのペンタン(スルホランと不混和性)で5回抽出し、これらアリコート部分を混合し、溶媒を減圧下で蒸発させて除去する。10.5g(収率78%)の1,2,4−トリフルオロベンゼン(Bp=90℃)が得られた。
【0260】
例32
【0261】
15ミリリットルのDMF中の2.65gのテトラクロロテレフタロニトリルに、2.4gのKF及び140mgのIB−2錯体(1/40のB/F比に相当)を加えた。この懸濁液を30℃において24時間撹拌し、次いでこの反応媒体を100ミリリットルの水中に注いだ。形成した黄色粉体を濾過によって回収した。テトラフルオロテレフタロニトリル収率は95%だった。
【0262】
比較として、ハレックス反応に基づく国際公開WO2002/028822に記載された方法は、同じ基質に対して、しかしもっと厳しい条件下、即ち130℃の温度において、100ppmの水を有する乾燥DMF及び噴霧乾燥によって乾燥させたKFを用いて、実施されている。本発明の錯体を用いる場合には、これらの過酷な条件は必要ない。
【0263】
例33
【0264】
この例及び下記の2つの例は、「ハレックス」タイプの塩素→フッ素交換のための本発明の錯体の使用を例示する。錯体は化学量論的量で用いられ、先行技術においては除去反応に対する基質の敏感さのせいで不可能だった反応が可能になる。
【0265】
150ミリリットルのDMFに、20gのエピクロロヒドリン及び44gのK+[C25C(CH2O)3BF]-(これはIB−2化合物とKFとから形成される付加物である)を加え、85℃にする。徐々にKClが生成する。2時間撹拌した後に、この反応混合物を濾過する。500ミリリットルの水から沈殿させて濾過することによって、14gのエピフルオロヒドリン(収率88%)が得られた。
【0266】
例34
【0267】
50ミリリットルのDMFに、6.9gのK+[C25C(CH2O−)2(CO2−)BF]-(これは、KFとIB−4錯体との間で形成される付加物である)及び2gの商品として入手できるポリ(塩化ビニル)(Mw45000)を加える。この懸濁液を撹拌しながら75℃に加熱する。前記ポリマーが溶解し、KClの白色沈殿が徐々に現れる。24時間の反応の後に、混合物を濾過し、ポリマーを200ミリリットルの水で沈殿させる。得られた綿状粉体を濾別し、水で洗浄し、乾燥させる。元素分析は、96%の塩素がフッ素で置換されたことを示した。ポリマーに色がないことから、KF及びDMFの存在下で且つ本発明の錯体の不在下における主要反応であって黒色が発現する脱塩化水素が起こっていないことが証明される。
【0268】
例35
【0269】
15ミリリットルのDMF中の2.65gのテトラクロロテレフタロニトリルに1.7gのNaFを加え、形成された懸濁液を密閉フラスコ中で65℃に48時間加熱した。反応媒体の小画分(即ち一部)を採取し、固体を遠心分離し、次いで洗浄した。この粉体のX線分析から、この粉体が100%NaFであることが示された。これは、65℃において反応しなかったことを示す。
【0270】
150mgのIB−11錯体を加えた(1/41.5のB/F比を得た)。得られた懸濁液をさらに24時間撹拌し、その時間の後に小画分を分析したところ、NaClが生成したことが示された。反応を続け、さらに5日間の後に、テトラクロロテレフタロニトリルがテトラフルオロテレフタロニトリルに完全に転化したことが観察された。
【0271】
非プロトン性溶媒中に完全に不溶性であるという事実のせいで、NaFはハレックス反応についての先行技術ではほとんど挙げられていない。しかしながら、KFと比較して非吸湿性の性状であること及び低価格であることのため、NaFを用いるのが有利である。KFの代わりにNaFを用いる場合には、溶媒を乾燥させる注意をする必要はない。本発明の錯体についてNaFを錯化することによって、Cl−F交換のためにNaFを使用することが可能になる。
【0272】
モノ酸の錯体[CH3C(CH2O−)2(CO2−)]B(IB−3)の活性を、二酸の錯体[CH3C(CH2O−)(CO2−)2]B(IB−11)の活性と比較した。NaFを用いて実施されるハレックス反応及びKF(その格子エネルギーはNaFのものより低い)を用いて実施されるハレックス反応を触媒するために、2つの錯体を用いた。モノ酸は、KFを用いる場合には有効だが、NaFを用いる場合には有効ではないように思われる。二酸の錯体を触媒量で存在させた場合には、熱安定性に限りがあるので比較的低温(100℃)においてのことであるが、NaFの使用が可能になる。
【0273】
例36
【0274】
40ミリリットルのDMF中に5gのIB−18錯体を溶解させ、1.70gのKFを加える。この塩は、K+{C25C(CH2O−)2[C(CH3)2O−]BF}-錯体の形で素早く溶解する。この溶液を50ミリリットルのDMF中の2.5gのポリ(エピクロロヒドリン)(商品として入手できるポリマー、Mw≒106)に添加し、この混合物を85℃にする。2時間後にKCl沈殿が形成する。反応を24時間続ける。次いで反応混合物を100ミリリットルの水中に注ぎ、沈殿したポリマーを濾別し、水で洗浄する。元素分析はポリマーの塩素原子の86%が、鎖が分解することなく、フッ素原子に置換されたことを示した。HClの除去に由来するビニルエーテル結合がないことが、IRによって確認された。DMF中で85℃でのKFによる置換における同じ試みは、100%の除去を与える。この例は、本発明の付加物の求核性だが非塩基性の性状を示す。
【0275】
例37
【0276】
100ミリリットルのジメチルアセトアミド中に15.7gの商品として入手できるジクロロ酢酸エチルを溶解させ、12gのKF及び3.1gのIB−4錯体をF/B比=4、即ち触媒モードで、加えた。この混合物を密閉反応器中に導入して75℃において撹拌し、次いで周囲温度まで冷ます。形成されたKCl沈殿を濾過によって除去し、残った溶液を150ミリリットルの水中に注ぎ、次いで20ミリリットルずつのジエチルエーテルで3回抽出した。次いでエーテルを真空下で除去し、ジフルオロ酢酸エチルを周囲圧力下で蒸留した。沸点97℃。
【0277】
ジフルオロ酢酸エチルは、農薬及び製薬製品の調製のための重要な出発物質である。これはさらに、リチウムバッテリー用のリチウム金属の付着の際の樹枝状結晶の形成及びインピーダンスを減らすための添加剤として、有用である。
【0278】
本発明の方法は、クロロジフルオロ酢酸エチルと亜鉛とをアルコール中で反応させることから成る産業上用いられている方法に取って代わるものである。
【0279】
例38
【0280】
ハレックス反応における相間移動触媒作用のために、IB−23錯体を用いる。
【0281】
20gの4−クロロ−m−ジニトロベンゼン(NO2)263Clを100ミリリットルのα,α,α−トリフルオロトルエン中に溶解させ、500mgのIB−23錯体、500mgの臭化テトラプロピルアンモニウム及び7gのKFを含有させた水溶液を、80℃において撹拌しながら加えた。2相系を12時間反応させ、次いでトリフルオロトルエンを減圧下で蒸発させることによって除去した。
【0282】
15.6g(収率84%)の4−フルオロ−1,3−ジニトロベンゼン(NO2)263Fが得られた。
【0283】
ホウ素錯体を用いずに、手順を再現した。反応は観察されなかった。
【0284】
例39
【化72】

【0285】
その場で調製したIAl−39/KF付加物を用いて、接触ハレックス反応を実施した。
【0286】
グローブボックス中で不活性雰囲気下において操作を実施して、15ミリリットルの無水DMF中の1.34gの2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールC25C(CH2OH)3に、2.03gのアルミニウムイソプロポキシド、2.34gのフッ化カリウム及び2.65gのテトラクロロテレフタロニトリルを加えた。F/Al比は4/1である。この懸濁液を75℃において24時間撹拌する。X線スペクトルは、KFの不在及びハレックス交換から由来するKClの存在を示し、テトラフルオロテレフタロニトリルが得られたことを示した。
【0287】
同じ条件下で、アルミニウムとビス(ヒドロキシメチル)酪酸との錯体は、75℃において48時間後に、100%の交換を与えた。この錯体の付加物は、IAl-39/KF付加物と同じ条件下で、C25C(CH2OH)3をC25C(CH2OH)2COOHに置き換えて、得られる。
【0288】
例40
【0289】
商品として入手できるN−メチルピロールをアセトニトリル中で塩化スルフリルSOCl2で塩素化することによって、テトラクロロ−N−メチルピロールを調製する。
【0290】
DMF中に2.19gのN−メチルピロールを含有させた溶液に、1.4gのIB−2錯体及び2.7gの乾燥KCNをCN/B比が4/1となるように加える。この混合物を電磁式で撹拌しながら65℃において8時間反応させる。次いで820gのNaSCNを加え、反応媒体の撹拌を65℃において24時間続ける。
【0291】
冷却後に、反応混合物を100ミリリットルの水中に注ぎ、換気フード中で硫酸を加えることによってpHを0に調節する。この溶液を20ミリリットルずつのジエチルエーテルで4回抽出する。画分を一緒にし、溶媒を蒸発させて除去する。1.23g(収率73%)のテトラシアノピロールが得られた。反応式は次の通りである。
【化73】

【0292】
テトラシアノピロールは強ブレンステッド酸であり、そのリチウム塩は有機非プロトン性溶媒中及び繰返し単位の大部分がエチレンオキシド単位であるポリエーテルのような溶媒和用ポリマー中で強解離性である。テトラシアノピロールのリチウム塩は、単独でも他の塩との混合物としても、リチウムバッテリーの電解質の塩として特に有用である。
【0293】
例41
【0294】
N−メチルピロリジンと1−ブロモブタンとのMenshutkin反応によって、臭化プロピルメチルピロリジニウムを調製した。IB−4錯体とKFとから形成された付加物21.5gを、100ミリリットルのアセトン中の20.8gの[C48N(CH3)C37]Brに加えた。この懸濁液を、電磁式撹拌機によって48時間撹拌した。この反応の際に精製したKBrを濾過によって除去し、沈殿を20ミリリットルずつのアセトンで2回洗浄した。溶媒を除去し、次式に相当する粘性液体を回収した。
【化74】

【0295】
この塩は、高い熱安定性及び低い蒸気圧のおかげで、ハレックス反応に従うフッ素化用の反応性媒体として用いることができる。この塩はまた、アルカリ金属フッ化物、特にKFの存在下で、様々な基質の脱ハロフッ素化をもたらすこともできる。
【0296】
例42
【0297】
120ミリリットルのアセトニトリル中の塩化エチルメチルイミダゾリウム14.7gに、例17のフッ化ナトリウム付加物Na+{[C25C(CH2O−)2C[C(CN)2]O−]BF}-24.6gを加える。この混合物を周囲温度において4時間撹拌し、次いで得られた懸濁液を濾過する。溶媒を除去して、次の化合物に相当する無色の粘性液体が得られた。
【化75】

【0298】
このイオン性液体は、285℃において安定であり、重量損失は5%未満だった。これは、例36におけるようなハレックス反応用の溶媒として用いることができる。
【0299】
例43
【0300】
FeOClの調製
【0301】
ガラス瓶中で、グローブボックス中で操作を実施して、10gのナノメートル寸法のFe23[シュウ酸第二鉄Fe(C24)2・2H2Oを空気中で400℃において熱分解することによって得られる]と11.2gの無水FeCl3(10%過剰量)とを混合し、ガラス瓶に蓋をし、グローブボックスから取り出し、ブロートーチを用いて真空下にシールした。ガラス瓶をオーブン中で300℃に24時間保ち、次いで冷まして開いた。得られたFeOClをフィルター上でギ酸メチルで洗浄して、赤紫色の粉体が得られた。この粉体のX線特徴付けは、これが斜方晶系構造を持つFeOClであることを示し、a=3.75Å、b=3.3Å、c=7.95Å;SG:Pmmn(59)だった。
【0302】
FeOClのIB−11/LiFによるフッ素化
【0303】
グローブボックス中で中性雰囲気下において13ミリリットルのDMF中で、214mgのFeOCl、52mgのフッ化リチウムLiF及び22gのホウ素錯体[CH3C(CH2O−)(CO2−)2]B(IB−11)を混合する。この混合物を75℃において23時間撹拌する。得られた生成物のX線分析は、FeOClが消失し、FeOFの斜方晶系層が発現したことを示した。a=6.6039(0)Å、b=12.8946(0)Å、c=4.67223(0)。これは従来報告されていないものだった。
【0304】
FeOClのIB−3/Et4NFによるフッ素化
【0305】
25ミリリットルのエタノールに、1.85g(1ミリモル)の商品として入手できる二水和物の形のフッ化テトラエチルアンモニウム及び1.42gのIB−3錯体を加えることによって、IB−3/Et4NF付加物を調製した。次に、回転式蒸発器を用いて溶媒を蒸発させて除去し、得られた生成物を真空下で60℃において25時間乾燥させる。
【0306】
グローブボックス中でアルゴン雰囲気下で操作を実施して、Parr(登録商標)ボンベ中でFeOCl0.54g(5ミリモル)と60ミリリットルのDMF中のIB−3/Et4NF付加物1.635mg(5ミリモル)とを混合する。反応混合物を150℃において48時間撹拌し、次いで濾過し、ギ酸メチル20ミリリットルで洗浄する。得られた化合物は、IB−11/LiF付加物について得られたものと同じ構造特徴を有していた。
【0307】
例44
【0308】
IB−14ホウ素錯体とLiFとの付加物2.3gを、炭酸メチルとエチレンカーボネートとの容量比50/50の混合物10ミリリットル中に溶解させることによって、液状電解質を調製した。この電解質の導電性は、3mScm-1だった。
【0309】
リチウム金属箔(厚さ200μm、直径1.8cmのもの)、同じ直径を有するガラス繊維セパレータ並びにCuF275重量%、アセチレンブラック15重量%及びポリ(フッ化ビニリデン)PVF210重量%を含む複合陽極を用いて、バッテリーを製造する。この組成を有する懸濁液を、NMP中のPVDFの溶液を用いて、アルミニウムコレクター上に塗布する。CuF2の活動量は18mgである。バッテリーをボタン型電池の形で組み立てる。セパレータに電解質10滴を含浸させ、次いでグローブボックス中でスタンピングによってシールする。
【0310】
このバッテリーは、25℃において10μAの直流下で放電し、2.5Vの低いカットオフ電位において8.46mAhの容量(理論容量の86%)を示した。このバッテリーは、2.5〜3.8V対Li+:Li°でサイクル可能であり、50サイクル後の1回目の充電において容量の65%を維持する。
【0311】
例45
【0312】
次のもの:
・リチウム金属箔(厚さ200μm、直径1.8cmのもの)から成るアノード;
・カーボンブラック48重量%、ジリチウムフタロシアニン2重量%、カーボンナノチューブ10重量%及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ラテックス30重量%をエチレン/プロピレンランダムコポリマー(10%)をバインダーとして含有する多孔質複合材料から成るアノード(この複合材料は、シクロヘキサン中の溶液を用いて、Exmet(登録商標)拡張アルミニウムから作られたコレクター上に塗布される);
・N−メチル−N−プロピルピロリジニウム(MePrPy)+のビス(フルオロスルホンイミド)塩[(FSO2)2N]-に0.3MのIB−19ホウ素錯体が加えられて成るイオン性液体中のLi[(CF3SO2)2N]の0.8M溶液を含浸させたセパレータ(前記ホウ素錯体は、空気電極において酸素還元の生成物との錯体を形成させることが意図される):
を用いて、リチウム−空気バッテリーを製造した。
【0313】
このバッテリーは、2.8Vの放電電位で作動し、100μmA・cm-2の電流密度で3.5Vの電位において再充填される。同様のバッテリーであってしかし錯体を含有しないものの再充填電位は4.5Vである。
【0314】
ホウ素錯体を含有するバッテリーの電解質中に存在する可溶性種を以下に示す。
【化76】

【0315】
例46
【0316】
リチウムアノード、セパレータ及び複合カソードを用いてバッテリーを製造した。
【0317】
アノードは、厚さ60μmのリチウム金属箔を25μmの銅箔上に巻いて直径1.8cmに切ったものを用いて得た。セパレータは、同じ直径を有する微孔質ポリオレフィン(Celgard(登録商標))から成る。複合陽極は、25μmアルミニウム集電体上に、グラファイトフッ化物CFy(y≒0.25)75重量%、アセチレンブラック15重量%及びカルボキシメチルセルロース(CMC)10重量%を水中に懸濁させた組成物を塗布し、次いで水を蒸発させて除去することによって、得られたものである。カソード中のCFxの活動量は7.5mgである。
【0318】
電解質は、IB−14''錯体とLiFとから形成されたIB−14''/LiF付加物の溶液から成る。
【化77】

【0319】
付加物の濃度は、エチレンカーボネート/炭酸ジメチルの容量比50/50混合物中に1モル/リットルである。
【0320】
バッテリーをボタン型電池の形で組み立てる。セパレータに電解質8滴を含浸させ、次いでグローブボックス中でスタンピングによってシールする。これは、次の反応:
【化78】

に従って、2.5〜4.2Vの範囲でサイクルされ、サイクリングは330mAh/gCFyの容量で実施される。
【0321】
同じ態様で、しかし付加物を用いずに、バッテリーを組み立てた。上記の反応は不可逆的であることがわかった。これはホウ素錯体の不在下でのLiFの不溶性の結果である。
【0322】
例47
【0323】
0℃に冷却した無水THF75ミリリットル中の商品として入手できる(メチル)マロン酸ジエチルCH(CH3)(CO225)217.4gに、5.4gのナトリウムメトキシドを加える。得られた透明溶液に、クロロ酢酸エチルClCH2CO22512.2gを1時間かけて滴下する。この反応混合物を常温において24時間撹拌する。形成した塩化ナトリウム沈殿を濾別し、THFを回転式蒸発器を用いて除去する。1,2,2−トリ(エトキシカルボニル)プロパン(CH3)C(CH2CO225)(CO225)2の収率は96%だった。
【0324】
無水エタノール40ミリリットル中のこのトリエスエル13gを、撹拌しながら6.4gの水酸化ナトリウムで処理する。24時間後に、(CH3)C(CH2CO2Na)(CO2Na)2の白色沈殿を濾別し20ミリリットルずつのエタノールで3回洗浄し、真空下で乾燥させる。この塩8.07gを20ミリリットルの水中に溶解させ、硫酸4.9g及びホウ酸2.06gを加える。この溶液を樹発乾固させ、残渣を15ミリリットルの無水エタノールで取り出し、濾過する。乾燥後に、IIBタイプのCH3C(CH2CO2−)(CO2−)2B錯体4.4gが得られた。
【0325】
例48
【0326】
例1のトリエステル1,2,2−トリ(エトキシカルボニル)プロパン(CH3)C(CH2CO225)(CO225)213gを、温度を10℃に保ちながら、50ミリリットルのメタノール中の9gの水酸化カリウムで加水分解する。カリウム塩(CH3)C(CH2CO2K)(CO2K)2の沈殿を濾別し、20ミリリットルずつのイソプロパノールで3回洗浄し、真空下で乾燥させる。
【0327】
イソプロパノールとアセトニトリルとの比50/50の混合物20ミリリットル中で、前記の塩2.90g、塩化アルミニウム六水和物AlCl3・6H2O2.41g及びフッ化カリウム600mgを反応させる。KCl沈殿及び過剰分のKFを濾過によって除去し、溶媒を蒸発させて除去して、IIAl/KFタイプの付加物{CH3C(CH2CO2−)(CO2−)2AlF}-+を得た。この塩はDMF中に非常に可溶であり、50/50のEC−DMCカーボネート混合物中に一部可溶性だった。
【0328】
例49
【0329】
例1のホウ素錯体及び例2のアルミ錯体のKF付加物に対して、最初に炭酸エチル/炭酸ジメチル(EC/DMC)混合物中で、二度目はジメチルホルムアミド(DMF)中で、25℃における導電性の測定を実施した。結果を図1及び図2に示す。図1は、EC/DMC中の溶液から得られた結果に相当し、図2は、DMF中の溶液から得られた結果に相当する。各図において、Scm-1で表わされる導電性σがy軸に沿って与えられ、
・「ブランク」の欄には、印●で溶媒の導電性を与え、
・「B」の欄には、印△(中を黒塗りしたもの。以下同じ。)にホウ素錯体の1M溶液の導電性を与え、
・LiFの欄には、印▽(中を黒塗りしたもの。以下同じ。)にLiFを飽和させた溶液の導電性、そして印◆にLiFを飽和させた1M錯体溶液の導電性を与え、
・NaFの欄には、印▽にNaFを飽和させた溶液の導電性、そして印◆にNaFを飽和させた1M錯体溶液の導電性を与え、
・KFの欄には、印▽にKFを飽和させた溶液の導電性、印◆にKFを飽和させた1M錯体溶液の導電性、そして印

にKFとアルミ錯体との付加物の1M溶液の導電性を与え、
・Li2Oの欄には、印▽にLi2Oを飽和させた溶液の導電性、そして印◆にLi2Oを飽和させた1M錯体溶液の導電性を与え、
・Li22の欄には、印▽にLi22を飽和させた溶液の導電性、そして印◆にLi22を飽和させた1M錯体溶液の導電性を与える。
【0330】
これらの結果は、本発明に従う錯体を存在させることによって様々な塩の導電性がかなり改善されることを示しており、この導電性の増大は溶解性の増大の結果として得られるものである。この特徴は、化合物をバッテリーや燃料電池のような電気化学的発電装置の電解質中に用いた時に、重要である。
【0331】
例50
【0332】
無水エタノール75ミリリットル中の1,2,2−トリ(エトキシカルボニル)プロパン(CH3)C(CH2CO225)(CO225)213gに、商品として入手できるナトリウムモノシアナミドNaHNCN10gを加える。この反応混合物を撹拌しながら40℃に48時間保ち、形成した白色沈殿を遠心分離し、25ミリリットルずつのイソプロパノールで3回洗浄し、次いで真空下で60℃において乾燥させる。得られた(CH3)C[CH2C(NCN)ONa][C(NCN)ONa]2塩3.14g、スルファミン酸NH2SO3H2.92g及びホウ酸トリエチルB(OC25)31.46gをエタノール15ミリリットル中に分散させる。この反応混合物を常温において24時間撹拌し、濾過し、蒸発させ、次いでプライマリ真空下で75℃において乾燥させる。
【0333】
IIBタイプの錯体{(CH3)C[CH2C(NCN)O−][C(NCN)O−]2}Bが88%の収率で得られた。この錯体は、LiF、NaF、KF、LiCl、NaCl、KCl、Li2O、Li22、Na22、NaOCN、KOCN、NaN3、KN3、NaCN及びKCNとの付加物を形成し、これらは極性非プロトン性溶媒中に可溶だった。
【0334】
例51
【0335】
75ミリリットルの無水エタノール中の13gの1,2,2−トリ(エトキシカルボニル)プロパン(CH3)C(CH2CO225)(CO225)2に、窒素雰囲気下で、10.5gのマロノニトリルCH2(CN)2、16gのトリエチルアミン及び20gの無水トリフルオロ酢酸カルシウムCa(CF3CO2)2を加える。この混合物を常温において撹拌し、24時間で白色沈殿が形成した。沈殿を遠心分離し、25ミリリットルずつのイソプロパノールで3回洗浄し、次いで真空下で60℃において乾燥させる。
【0336】
得られた7.3gの{(CH3)C[CH2C(C(CN)2)O][C(C(CN)2)O]2}2Ca3塩を25ミリリットルのエタノール中に分散させ、この反応媒体に4.62gの硫酸アルミニウム水和物Al2(SO4)2・12H2Oを加え、次いでこれを常温において12時間撹拌し、濾過して硫酸カルシウムを除去し、蒸発させ、次いでプライマリ真空下で60℃において乾燥させる。錯体{(CH3)C[CH2C(C(CN)2)O−][C(C(CN)2)O−]2}Al(IIAlタイプ)が82%の収率で得られた。
【0337】
この錯体は、LiF、NaF、KF、LiCl、NaCl、KCl、Li2O、Li22、Na22、NaOCN、KOCN、NaN3、KN3、NaCN、KCN、LiCl、NaCl及びKClとの付加物を形成し、これらは極性非プロトン性溶媒中に可溶だった。
【0338】
例52
【0339】
0℃に冷却したメタノール30ミリリットルに、3.96gの商品として入手できるマロン酸ジエチルCH2(CO2CH3)2及び6.5gのナトリウムメトキシドを少量ずつ加える。得られた透明溶液に、10ミリリットルのメタノール中に3.67gのクロロイソ酪酸Cl(CH3)2CCO2Hを含有させた溶液を、1時間かけて滴下する。この反応混合物を常温において24時間撹拌する。形成した塩化ナトリウム沈殿を濾別し、3ミリリットルの水を加える。1時間後に、HC[C(CH3)2CO2Na][CO2Na]2沈殿が形成し、これをエタノール中で洗浄後に抽出する。この塩2.56gを15ミリリットルのイソプロパノール中に懸濁させ、ジクロロメタン中の三塩化ホウ素の商品として入手できる1M溶液10ミリリットルを加える。沈殿したNaClを濾別し、錯体HC[C(CH3)2CO2−][CO2−]2-(IIBタイプ)が得られた。この溶液を蒸発させて結晶質の固体を得た。この固体はKF、NaF、NaOCN、NaCN、KCN及びNaN3との付加物を形成し、この付加物はDMF中に可溶だった。
【0340】
例53
【0341】
0℃に冷却した無水エタノール30ミリリットルに、5.22gの商品として入手できるメチルマロン酸ジエチルCH3CH(CO225)2及び5gのナトリウムエトキシドを少量ずつ加える。次いで、10ミリリットルのエタノール中に3.67gのブロモジフルオロ酢酸BrF2CCO2Hを含有させた溶液を1時間かけて滴下する。この反応混合物を常温において24時間撹拌し、次いで3ミリリットルの水を加える。1時間後に、CH3C[CF2CO2Na][CO2Na]2沈殿が形成し、これをエタノール中で洗浄後に抽出して生成したNaBrを除去する。この塩2.78gを15ミリリットルのイソプロパノール中に懸濁させ、2.41gの塩化アルミニウム水和物を加える。NaCl沈殿を濾別し、アルミニウム錯体(IIA1タイプ)と塩化ナトリウムとの付加物{HC[CF2CO2−][CO2−]2AlCl}-Na+を得た。アセトニトリル中でNaFで処理した時に、この付加物は{HC[C(CH3)2CO2−][CO2−]2AlF}-Na+及びNaCl沈殿を与えた。
【0342】
例54
【0343】
0℃に冷却したアセトニトリル80ミリリットル中の商品として入手できるメチルマロン酸ジエチルCH(CH3)(CO225)217.42gに、撹拌しながら、アセトニトリル25ミリリットル中のプロピレンオキシド6g及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)20滴を、滴下漏斗によって滴下する。反応生成物を回転式蒸発器で処理し、商品として入手できる塩酸5ミリリットルで酸性にした水100ミリリットルで取り出し、次いでジクロロメタンで抽出し、次いでジクロロメタンを蒸発させて除去する。1−ヒドロキシ−2−メチル−3,3−ジ−(エトキシカルボニル)ブタン(CH3)C[CH(CH3)CH2OH](CO225)2が88%の収率で得られた。
【0344】
このアルコールジエステル10gを、イソプロパノール40ミリリットル中でLiOH・H2O4g(1:2.2の割合)で、常温において12時間加水分解する。得られた白色沈殿を遠心分離し、20ミリリットルずつのイソプロパノールで3回洗浄し、次いでプライマリ真空下で60℃において乾燥させる。得られた塩(CH3)C[CH(CH3)CH2OH](CO2Li)23.76gをTHF中に懸濁させ、次いで1.96gの硫酸及び2.91gのホウ酸トリエチルで処理する。形成したLi2SO4沈殿を遠心分離によって除去して、錯体(CH3)C[CH(CH3)CH2O−](CO2−)2B(IIBタイプ)が無色固体の形で得られた。
【0345】
例55
【0346】
商品として入手できるエチルマロン酸ジエチルCH(C25)(CO225)218.8gに、20滴の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン及び9gのエチレンカーボネートを加える。この混合物を窒素雰囲気下で撹拌しながら165℃に加熱し、CO2を放出させる。気体の放出が止まったら(約2時間)、混合物を冷却し、150ミリリットルの水中に注ぎ、式C25C[C24OH](CO225)2の1−ヒドロキシ−3,3−ジ−(エトキシカルボニル)ペンタンアルコールジエステルをヘキサンで抽出する。収率75%。
【0347】
このアルコールジエステル11.6gを、50ミリリットルのメタノール中で6gの塩化カルシウム、4.4gのシアナミド及び12.5gのテトラメチルグアニジンにより、60℃において48時間処理する。形成した白色沈殿を遠心分離し、20ミリリットルずつのメタノールで3回洗浄し、プライマリ真空下で60℃において乾燥させて、カルシウム塩[(C25)C[C24OH](CONCN)2]Caを得た。
【0348】
この塩2.48gをエタノール中に懸濁させ、無水シュウ酸900mg及びホウ酸トリメチル1.04gで処理する。CaC24沈殿を遠心分離によって除去し、蒸発後に錯体C25C(C24O−)[C(NCN)O−]2B(IIBタイプ)が無色固体の形で得られた。KF、KOCN、NaOCN又はNaCNを加えて得られた付加物は、DMF中及びアセトニトリル中に非常に可溶だった(>10g/リットル)。
【0349】
例56
【0350】
0℃に冷却した50ミリリットルの無水THF中に水素化ナトリウム4.8gを含有させた懸濁液に、50ミリリットルのTHF中に希釈した17.4gのメチルマロン酸ジエチルを滴下し、次いで撹拌しながら11.6gの2−クロロエチルアミン塩酸塩を少量ずつ加える。24時間の反応後に、水素がもはや放出されなくなったら、懸濁液を濾過して生成したNaClを除去し、生成物を、120ミリリットルの1M−HCl中に溶解させ、エーテルで抽出し、15gの炭酸水素ナトリウムを加え、ジクロロメタンで抽出し、次いでジクロロメタンを蒸発させて除去することによって精製する。
【0351】
得られたアミノジエステルCH3C[C24NH2](CO225)24.34gを、25ミリリットルのTHF中で、4gのトリフルオロメタンスルホニルイミダゾールCF3SO2(C323)で処理し、次いで2.0gの水酸化ナトリウム及び15ccのエタノールを加える。24時間後に、沈殿を遠心分離し、15ミリリットルずつの無水エタノールで3回洗浄する。20ミリリットルのジメチルホルムアミド中のCH3C[C24N(Na)CF3SO2](CO2Na)2塩3.6gに、1.42gの三フッ化ホウ素エーテラートBF3O(C25)2を加えて、次の反応式に従って反応させる。
【化79】

【0352】
次いで、フッ化ナトリウムを濾過によって除去する。
【0353】
例57
【0354】
商品として入手できるブチルマロン酸ジエチルC49CH(CO225)2から、例1の方法によって、1,2,2−トリ(エトキシカルボニル)ヘキサン(C49)C(CH2CO225)(CO225)2を調製する。この化合物30.2gを100ミリリットルのイソプロパノール中で40℃において19.5gのナトリウムモノシアナミドによって24時間処理する。沈殿したナトリウム塩(C49)C[CH2C(NCN)ONa][C(NCN)ONa]2を遠心分離し、30ミリリットルずつのイソプロパノールで3回洗浄し、次いで真空下で50℃において乾燥させる。
【0355】
エタノール中で6gの硫酸アルミニウム水和物Al2(SO4)2・12H2Oと前記ナトリウム塩9.24gとを反応させることによって、アルミニウム錯体{(C49)C[CH2C(NCN)O−][C(NCN)O−]2}Al(IIAlタイプ)を調製する。硫酸ナトリウム沈殿を遠心分離によって除去し、溶液を蒸発させてアルミニウム錯体を得て、これをプライマリ真空下で75℃において乾燥させる。
【0356】
この錯体は、ほとんどの極性非プロトン性溶媒中、例えばアセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、環状アルキル又はフルオロアルキルカーボネート(例えば炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート又はフルオロメチルエチレンカーボネート等)、エステル類(例えばギ酸メチル及び及びγ−ブチロラクトン等)、エーテル類[例えばTHF、グリコールオリゴエステル及びポリ(エチレンオキシド)等]、オン性リガンド(例えばエチルメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等)及びそれらの混合物等の中で可溶だった。こうして調製されたルイス酸は、LiF、NaF、KF、LiCl、NaCl、KCl、Li2O、Li22、Na22、NaOCN、KOCN、NaN3、KN3、NaCN及びKCNとの錯体を形成し、それら自体も同様の溶媒中に可溶である。
【0357】
例58
【0358】
次の反応式に従って、2−メチルアミノ−1,3−プロパンジオールを調製する。
・次の反応に従って触媒塩基(テトラメチルグアニジン)の存在下で商品として入手できるシアノ酢酸エチルを2当量のパラホルムアルデヒドで処理:
【化80】

・次の反応に従う脱カルボキシル:
【化81】

・次の反応に従う接触脱水素:
【化82】

【0359】
得られたアミノグリコールNH2CH2CH(CH2OH)210.5gを30ミリリットルのアセトニトリル中に溶解させ、30ミリリットルのACN中の商品として入手できるスルホニルジイミダゾールSO2(C323)29.9gを滴下することによって処理し、次いで9.7gのスルファミン酸で処理する。沈殿したスルファミン酸イミダゾリウムを濾別し、溶液を蒸発させる。スルファミド(HOCH2)2C(H)CH2N(H)SO2N(H)CH2C(H)(CH2OH)2をイソプロパノール/トルエン混合物から再結晶して、分析上純粋な生成物が得られた。
【0360】
このスルファミド5g及びホウ酸トリエチルB(OC25)35.36gを10ミリリットルのアセトニトリル中で混合し、得られた透明溶液を蒸発させる。
【0361】
こうして形成された次式:
【化83】

の二核錯体は、塩LiF、NaF、KF、NH4F、BaF2、Li2O、Li22、Na22、NaOCN、KOCN及びNaN3との付加物を形成し、これらは極性非プロトン性溶媒中に可溶だった。
【0362】
例59
【0363】
商品として入手できる酸及びリチウムから調製したイタコン酸二リチウム塩H2C=C(CO2Li)(CH2CO2Li)18gを、60ミリリットルの商品として入手できるアンモニア溶液中で2時間還流する。過剰分のアンモニアを除発させて除去し、固体残渣の塩NH2CH2CH(CO2Li)(CH2CO2Li)7.94gを30ミリリットルのトリフルオロエタノール中に懸濁させ、4gのカルボニルジイミダゾールCO(C323)2を加えて撹拌する。1時間後に、ジオキサン30モルを加え、沈殿を遠心分離し、20ミリリットルずつのイソプロパノールで3回洗浄し、次いで乾燥させる。得られた生成物を、SO3H官能基を有するDowex(登録商標)マクロ孔質イオン交換樹脂に通した後に、酸(HO2C)2(HO2CCH2)C(H)CH2N(H)CON(H)CH2C(H)(CO2H)(CH2CO2H)が得られる。交換用に用いた溶媒を蒸発させた後に、白色結晶質固体の形の酸が得られた。
【0364】
この固体3.65g及びホウ酸トリメチル2.08gを10ミリリットルのメタノールに加える。得られた透明溶液を蒸発させ、真空下で80℃において乾燥させて、次式の錯体を得た。
【化84】

【0365】
この錯体は、塩LiF、NaF、KF、LiCl、NaCl、KCl、LiOH、Li2O、Li22、Na22及びKO2のアニオンとの付加物を形成する。
【0366】
カルボニルジイミダゾールをチオカルボニルジイミダゾールに置き換えて、上記の手順を再現し、対応するチオ尿素を得た。
【化85】

【0367】
酸化及び二量体化の後に、この錯体は二カチオン性化合物を与え、この化合物はZ及びZ''アニオンについて非常に高い錯化定数を有していた。
【0368】
例60
【0369】
40ミリリットルのジメチルホルムアミド中の17.4gの商品として入手できるメチルマロン酸ジエチルCH(CH3)(CO225)2に、0.7ミリリットルのテトラメチルグアニジン、4.8gのスルファミドSO2(NH2)2及び6gのパラホルムアルデヒド(CH2=O)nを加える。この混合物を50℃において24時間撹拌し、次いで150ミリリットルの水中に注ぐ。このテトラエステルを40ミリリットルずつのエーテルで3回抽出し、抽出物を混合し、蒸発させて、化合物(C252C)2(CH3)CCH2NHSO2NHCH2C(CH3)(CO225)2を得た。
【0370】
テトラエステル4.68gを比50/50のエタノール/水混合物20ミリリットル中でCa(OH)26gで処理して、[(O2C)2(CH3)CCH2NHSO2NHCH2C(CH3)(CO225)2]Ca2を得た。
【0371】
無水シュウ酸910mgと前記カルシウム塩2.45g及びホウ酸1.23gとをメタノール中で反応させ、CaC24を分離し、蒸発させた後に、次式:
【化86】

の二核錯体が結晶の形で得られた。この錯体は、LiF、NaF、KF、LiOH、Li2O、Li22、Na22、KO2・、NaN3、NaCN及びKCNとの付加物を形成する。
【0372】
加水分解剤としてのCa(OH)2をNaHNCN又はLiCH(CN)2に置き換えると、C=OのC=NCN又はC=C(CN)2による置換が得られ、それによって極性非プロトン性溶媒中での対応付加物の溶解性が増す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式の1つに相当する多環式錯体。

(ここで、
Dはホウ素B又はアルミニウムAlを表わし;
1はR、RF、NO2、CN、C(=O)OR、RSO2又はRFSO2を表わし;
−X1−、−X2−、−X3−及びX4基は互いに独立してそれぞれ>C=O、>C=NC≡N、>C=C(C≡N)2、>CR23又は>SO2二価基を表わし;
−Y1−、−Y2−及び−Y3−は互いに独立してそれぞれ−O−、>N(C≡N)、>N(CORF)、>N(SO24)、>NR4、>N(COR4)又は>N(SO2F)二価基を表わし;
R、R2及びR3は互いに独立してそれぞれH、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、オキサアルキル基又はアルケニル基を表わし;
4はアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基、オキサアルキル基、アルケニル基又はRFCH2−基を表わし;
Fはペルフルオロアルキル基若しくは一部フッ素化アルキル基、又は一部若しくは完全フッ素化フェニル基を表わし;
R'2及びR'3基はそれぞれR又はFを表わし;
複数のR又はRF基が互いに結合してオリゴマー又はポリマーのセグメントを形成することもでき;
ID及びIID錯体において−X1−、−X2−及び−X3−の内の2個の基がそれぞれ>C=Oを表わす場合には、3つ目の基は>CR23基を表わし;
IB錯体においてX1、X2及びX3基がそれぞれCH2基であり且つY基がそれぞれOである場合には、R1はCH3以外である。)
【請求項2】
1、Y2及びY3基のそれぞれがOを表わすことを特徴とする、請求項1に記載の錯体。
【請求項3】
1、Y2及びY3基の少なくとも1つがNR4を表わすことを特徴とする、請求項1に記載の錯体。
【請求項4】
1がRFSO2−、NO2、RSO2−、−CN及び−C(=O)ORから選択され、且つ/又は−X1−、−X2−及び−X3−及び適宜にX4基の内の少なくとも1つが>C=O、>C=NC≡N、>C=C(C≡N)2及びSO2から選択される基を表わし、−X1−、−X2−及び−X3−基の内の1つだけがSO2であることを特徴とする、請求項2に記載の錯体。
【請求項5】
−X1−、−X2−及び−X3−及び適宜にX4−基の少なくとも1つが>C=O、>C=NC≡N及び>C=C(C≡N)2から選択される基を表わすことを特徴とする、請求項3に記載の錯体。
【請求項6】
−X1−、−X2−及び−X3−及び適宜にX4基がそれぞれCR23基を表わすことを特徴とする、請求項1に記載の錯体。
【請求項7】
1、Y2及びY3基の少なくとも1つがN(C≡N)、>N(CORF)、>N(SO24)、>N(COR4)、>N(SO2F)又は>NR4基(ここで、R4は少なくとも1個の電子求引性基を有するアリール若しくはヘテロアリールである)から選択され、且つ/又はR1基がRFSO2−、NO2、RSO2−、−CN及び−C(=O)ORから選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の錯体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の錯体で錯化された塩Mz'Z'm(ここで、Mは原子価nが1〜3であるカチオンであり、Z'は原子価z'が1又は2であるアニオンである)によって構成された付加物。
【請求項9】
Z'がアニオンF-、Cl-、Br-、OCN-、O22-、O2・-、OH-、RO-、N3-、CN-、[O2-M'+]-、[O22-M'+]-及び[NCN2-M'+](ここで、M'はH又は一価カチオンである)から選択される一価アニオンであることを特徴とする、請求項8に記載の付加物。
【請求項10】
Z'がアニオンO2-、O22-、S2-、S22-及びNCN2-から選択される二価アニオンであることを特徴とする、請求項8に記載の付加物。
【請求項11】
Mがアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、Ag+、Pb2+、イットリウムカチオン、ランタンカチオン又は有機カチオンを表わすことを特徴とする、請求項8に記載の付加物。
【請求項12】
Mがアンモニウム、ホスホニウム、テトラキス(ジアルキルアミノ)ホスホニウム、ビス[トリス(ジアルキルアミノ)]ジホスホニオアゼニウム、スルホニウム、ピリジニウム、アミジニウム、グアニジウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム及びトリアゾリウムカチオンから選択される有機カチオン(該有機カチオンは、随意にアルキル、オキサアルキル、アリール、アルキルアリール及びアリールアルキル基から選択される置換基を有していてもよく、該カチオンは有機リンカーを介して互いに結合してオリゴマー又はポリマーを形成することもできる)であることを特徴とする、請求項11に記載の付加物。
【請求項13】
リチウムバッテリー中の電解質の添加剤としての、請求項1に記載の錯体の使用。
【請求項14】
1、Y2及びY3基の少なくとも1つがNR4以外の窒素含有基であり、又はX1、X2及びX3基の少なくとも1つがC=NCN又はC=C(CN)2基であることを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
Cl又はBr原子を有する化合物を求核置換反応によって変性する方法であって、反応成分として請求項8に記載の付加物を、随意にその場で調製したものとして、用いることを特徴とする、前記方法。
【請求項16】
前記化合物が層状構造FeOCl、VOCl、BiOCl、BiONO3、TiNCl、TiNBr、ZrNCl若しくはZrNBrを有する無機化合物から選択される固体状化合物、又は{[CF3SO2NSO2Cl]-}nn+、{[(ClSO2)2N]-}nn+及び{[(Cl2PO)2N]-}nn+から選択される液状化合物であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法によって得られた化合物FeOF。
【請求項18】
C−L結合{ここで、Cは炭素であり、LはCl、Br及びIから選択されるハロゲン、擬ハロゲン、エステル基−OSO2R'又は−N(SO2R')2基(ここで、R'はアルキル基、アルキルアリール基又はペルフルオロアルキル基である)である}を有する脂肪族又は芳香族有機化合物を変性する方法であって、前記有機化合物を請求項8に記載の付加物と反応させることを特徴とする、前記方法。
【請求項19】
有機化合物中のトリアルキルシラン基を脱保護する方法であって、該有機化合物をZがFである請求項8に記載の付加物と接触させることから成ることを特徴とする、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−515379(P2011−515379A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500257(P2011−500257)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000290
【国際公開番号】WO2009/122044
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(506369944)サントル ナスィオナル ド ラ ルシェルシュ スィアンティフィク (45)
【出願人】(510252782)ユニベルシテ・ド・ピカルディ・ジュール・ヴェルヌ (4)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE PICARDIE JULES VERNE
【住所又は居所原語表記】33 rue de Saint Leu,F−80039 Amiens,France
【Fターム(参考)】