説明

ホスフェートを含む芳香族化合物およびラマン分光法を用いる有機体および酵素反応を検出するための方法

本開示は、サンプル中の有機体および分子の迅速且つ高感度の検出システムを提供する。ラマン活性生成物を生成する反応物を、ラマン光散乱と組み合わせて使用する。かかる化合物は、ホスファターゼの検出を可能にするホスフェートを含むことができる。本開示を使用して、酵素反応速度を測定することもできる。本開示は、従来技術よりも高い感度および特異性で生物有機体および生物学的成分を同定および定量するためのラマン分光法と生物学的標識技術との組み合わせを使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願への相互参照
本願は、仮出願第60/836,936号(2006年8月11日に出願)および仮出願第60/727,328号(2005年10月17日に出願)に対する優先権を主張する出願第11/580,845号(2006年10月16日に出願)の一部継続出願である、出願第12/081,496号(2008年4月16日に出願)の一部継続出願である米国特許出願第12/372,490号(2009年2月17日に出願)に対する優先権を主張する。これらの米国特許出願、仮出願はその全体が参考として援用される。
【0002】
発明の説明
発明の分野
本開示は、一般に、生物学的診断装置および試験方法の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
生物有機体または生物学的成分(例えば、タンパク質、DNA、または他の遺伝子材料)を検出するためのシステムが必要な分野が現在多数存在する。これらの領域には、以下が含まれる:食品安全性、医学的診断および獣医学的診断、病原体検出、法医学、および国土防衛。現在の検出方法には、免疫化学および分子生物学、ならびに生物学的技術(ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびリガーゼ連鎖反応(LCR)など)が含まれる。これらの方法および技術は、しばしば、正確性、特異性、および感度が制限される。さらに、かかる方法は、しばしば、大規模なサンプル調製(核酸の単離および精製など)が必要である。
【0004】
検出方法の特異性を、免疫学的技術の使用によって強化することができる。例えば、医学的診断には、サンプルの生物学的成分の検出において特異性を得るための抗体ベースの技術を使用する。特定の化合物に対して開発された抗体は、これらの成分に対して高い親和性および特異性を有することが公知である。しかし、抗体は検出が困難であり、典型的には、検出を増強する標識およびタグで化学修飾する。不運なことに、抗体検出は、サンプル中の他の材料(サンプルマトリックス、洗浄成分、および他の化学的および生物学的作用因子が含まれる)からの干渉を受ける傾向がある。さらに、現在の技術は、低濃度または少数の抗体(すなわち、低濃度または少数のターゲティングした生物学的成分)での感度を欠く。
【0005】
ラマン光散乱技術(ラマン分光法)は、従来、特定の化学成分を検出するために使用されていた。ラマン散乱は、分子との光の相互作用の基本的性質である。光が分子に衝突する場合、光は分子の原子を振動させることができる。次いで、この振動は、分子から散乱したさらなる光のエネルギーを変化させるであろう。この散乱光は、測定可能であり、且つ振動分子の構造に固有の特徴を有する。したがって、ラマンスペクトルを使用して、分子を固有に同定することができる。
【0006】
ラマン分光法は、既存の検出方法(定量化可能なデータの簡潔な適用および作成が含まれる)を超えるいくつかの利点を有する。しかし、ラマン分光法自体は、生物有機体および生物学的成分の検出のための特異性および感度を欠く。したがって、有機体および生物学的成分の検出のためにラマン分光法を使用可能な試薬および方法が当該分野で必要である。
【0007】
本開示は、従来技術よりも高い感度および特異性で生物有機体および生物学的成分を同定および定量するためのラマン分光法と生物学的標識技術との組み合わせを使用する方法に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本開示の1つの実施形態は、サンプル中の少なくとも1つの酵素の活性を検出する方法であって、
a)サンプルおよび以下:
i.(任意選択的に)少なくとも1つの芳香族化合物
ii.少なくとも1つのアミン含有化合物、および
iii.少なくとも1つの電子供与化合物
を含む混合物を調製する工程、
b)前記混合物をインキュベートして少なくとも1つのラマン活性生成物を形成する工程、および
c)ラマン分光法を使用して少なくとも1つのラマン活性生成物を検出する工程
を含む、方法である。
【0009】
1つの実施形態では、少なくとも1つのアミン含有化合物は、4−アミノアンチピレンおよび5−アミノサリチル酸から選択される。
【0010】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、2−ヒドロキシベンジルアルコール、4−クロロ−3,5−ジメチルフェノール、2−ナフトール、4−ヒドロキシ−4−ビフェニル−カルボン酸、5,7−ジクロロ−8−ヒドロキシキノリン、4−クロロ−1−ナフトール、フェノール、および4,5−ジヒドロキシ−ナフタレン(naphthelene)−2,7−ジスルホン酸から選択される。
【0011】
別の実施形態では、少なくとも1つのアミン含有化合物は、
【0012】
【化1】

(式中、Xは、H、NH、Cl、Br、ニトロ、およびベンジルから選択され、Yは、H、Cl、Br、およびニトロから選択され、Zは、H、ベンジル、およびNHから選択される)を含む。1つの実施形態では、XはNHであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XはClであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XはBrであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、Xはニトロであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XおよびZはHであり、YはClである。別の実施形態では、XおよびZはHであり、YはBrである。別の実施形態では、XおよびZはHであり、Yはニトロである。別の実施形態では、XおよびZはベンジルであり、YはHである。別の実施形態では、XおよびZはNHであり、YはHである。
【0013】
別の実施形態では、少なくとも1つのアミン含有化合物は、
【0014】
【化2】

(式中、Xは、H、OH、Cl、Br、およびニトロから選択される)を含む。
【0015】
別の実施形態では、少なくとも1つのアミン含有化合物は、
【0016】
【化3】

(式中、Xは、H、Cl、Br、およびニトロから選択される)を含む。
【0017】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0018】
【化4】

(式中、W、X、Y、およびZは、HおよびOHから選択される)を含む。1つの実施形態では、YはOHであり、X、Y、およびZはHである。別の実施形態では、WはOHであり、X、Y、およびZはHである。別の実施形態では、WおよびXはOHであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、WおよびYはOHであり、XおよびZはHである。別の実施形態では、WおよびZはOHであり、XおよびYはHである。
【0019】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0020】
【化5】

(式中、X、Y、およびZは、HおよびOHから選択される)を含む。1つの実施形態では、XはOHであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XおよびYはOHであり、ZはHである。別の実施形態では、XおよびZはOHであり、YはHである。別の実施形態では、ZはOHであり、XおよびYはHである。
【0021】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0022】
【化6】

(式中、XおよびYはHおよびOHから選択される)を含む。1つの実施形態では、XはOHであり、YはHである。別の実施形態では、XはHであり、YはOHである。
【0023】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0024】
【化7】

(式中、XおよびYはHおよびOHから選択される)を含む。1つの実施形態では、XはOHであり、YはHである。別の実施形態では、XはHであり、YはOHである。
【0025】
別の実施形態では、少なくとも1つのアミン含有化合物は芳香族アミンを含む。別の実施形態では、芳香族アミンは、以下のオルト−フェニレンジアミン、メタ−フェニレンジアミン、またはパラ−フェニレンアミンを含む。
【0026】
【化8】

別の実施形態では、少なくとも1つの電子供与化合物は過酸化水素である。別の実施形態では、過酸化水素は、芳香族過酸化水素、過酸化水素尿素、および過酸化水素(H)から選択される。別の実施形態では、少なくとも1つの酵素はペルオキシダーゼである。
【0027】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は2−ヒドロキシベンジルアルコールであり、少なくとも1つのアミン含有化合物は5−アミノサリチル酸であり、少なくとも1つの電子供与化合物は過酸化水素尿素であり、少なくとも1つの酵素はペルオキシダーゼである。
【0028】
別の実施形態では、混合物を塩基の存在下でインキュベートする。
【0029】
別の実施形態では、ラマン分光法は共鳴ラマン分光法である。
【0030】
別の実施形態は、サンプル中の少なくとも1つの酵素の活性を検出する方法であって、
a)サンプル、5−アミノサリチル酸、ならびに芳香族過酸化水素、過酸化水素尿素、および過酸化水素Hから選択される過酸化水素を含む混合物を調製する工程、
b)前記混合物をインキュベートして少なくとも1つのラマン活性生成物を形成する工程、および
c)ラマン分光法を使用して少なくとも1つのラマン活性生成物を検出する工程を含む、方法である。
【0031】
1つの実施形態では、混合物はビオチンをさらに含む。
【0032】
別の実施形態は、サンプル中の少なくとも1つの酵素の活性を検出する方法であって、
a)サンプル、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、またはm−フェニレンジアミンを含む芳香族アミン、ならびに芳香族過酸化水素、過酸化水素尿素、およびHから選択される過酸化水素を含む混合物を調製する工程、
b)前記混合物をインキュベートして少なくとも1つのラマン活性生成物を形成する工程、および
c)ラマン分光法を使用して少なくとも1つのラマン活性生成物を検出する工程、を含む方法である。
【0033】
別の実施形態は、サンプル中の少なくとも1つの標的を検出する方法であって、
a)標的を含む混合物を調製する工程、
b)混合物を標的に特異的な少なくとも1つのリガンドとインキュベートする工程であって、少なくとも1つのリガンドが酵素を含む、工程、
c)混合物に、
i.任意選択的に少なくとも1つのアミン含有化合物;
ii.少なくとも1つの芳香族化合物、および
iii.少なくとも1つの電子供与化合物
を与える工程、
d)前記混合物をインキュベートして少なくとも1つのラマン活性生成物を形成する工程、および
e)ラマン分光法を使用して少なくとも1つのラマン活性生成物を検出する工程
を含む、方法である。
【0034】
1つの実施形態では、少なくとも1つのアミン含有化合物は、4−アミノアンチピレンおよび5−アミノサリチル酸から選択される。別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、2−ヒドロキシベンジルアルコール、4−クロロ−3,5−ジメチルフェノール、2−ナフトール、4−ヒドロキシ−4−ビフェニル−カルボン酸、5,7−ジクロロ−8−ヒドロキシキノリン、4−クロロ−1−ナフトール、フェノール、および4,5 ジヒドロキシ−ナフタレン(naphthelene)−2,7−ジスルホン酸から選択される。
【0035】
別の実施形態では、少なくとも1つのアミン含有化合物は、
【0036】
【化9】

(式中、Xは、H、NH、Cl、Br、ニトロ、およびベンジルから選択され、Yは、H、Cl、Br、およびニトロから選択され、Zは、H、ベンジル、およびNHから選択される)を含む。1つの実施形態では、XはNHであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XはClであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XはBrであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、Xはニトロであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XおよびZはHであり、YはClである。別の実施形態では、XおよびZはHであり、YはBrである。別の実施形態では、XおよびZはHであり、Yはニトロである。別の実施形態では、XおよびZはベンジルであり、YはHである。別の実施形態では、XおよびZはNHであり、YはHである。
【0037】
別の実施形態では、少なくとも1つのアミン含有化合物は、
【0038】
【化10】

(式中、Xは、H、OH、Cl、Br、およびニトロから選択される)を含む。
【0039】
別の実施形態では、少なくとも1つのアミン含有化合物は、
【0040】
【化11】

(式中、Xは、H、Cl、Br、およびニトロから選択される)を含む。
【0041】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0042】
【化12】

(式中、W、X、Y、およびZは、HおよびOHから選択される)を含む。1つの実施形態では、YはOHであり、X、Y、およびZはHである。別の実施形態では、WはOHであり、X、Y、およびZはHである。別の実施形態では、WおよびXはOHであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、WおよびYはOHであり、XおよびZはHである。別の実施形態では、WおよびZはOHであり、XおよびYはHである。
【0043】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0044】
【化13】

(式中、X、Y、およびZは、HおよびOHから選択される)を含む。1つの実施形態では、XはOHであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XおよびYはOHであり、ZはHである。別の実施形態では、XおよびZはOHであり、YはHである。別の実施形態では、ZはOHであり、XおよびYはHである。
【0045】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0046】
【化14】

(式中、XおよびYはHおよびOHから選択される)を含む。1つの実施形態では、XはOHであり、YはHである。別の実施形態では、XはHであり、YはOHである。
【0047】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0048】
【化15】

(式中、XおよびYはHおよびOHから選択される)を含む。1つの実施形態では、XはOHであり、YはHである。別の実施形態では、XはHであり、YはOHである。
【0049】
別の実施形態では、少なくとも1つのアミン含有化合物は、芳香族アミン(以下のオルト−フェニレンジアミン、メタ−フェニレンジアミン、またはパラ−フェニレンアミンを含む)を含む。
【0050】
【化16】

別の実施形態では、少なくとも1つの電子供与化合物は、芳香族過酸化水素、過酸化水素尿素、および過酸化水素(H)から選択される。
【0051】
別の実施形態では、酵素はペルオキシダーゼである。
【0052】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は2−ヒドロキシベンジルアルコールであり、アミン含有化合物は5−アミノサリチル酸であり、電子供与化合物は過酸化水素尿素であり、酵素はペルオキシダーゼである。
【0053】
別の実施形態は、サンプル中の酵素活性を検出する方法であって、
a)サンプルおよび
i.任意選択的に少なくとも1つの芳香族化合物、
ii.少なくとも1つのアミン含有化合物、および
iii.少なくとも1つの電子供与化合物
を含む混合物を調製する工程、
b)混合物をインキュベートして少なくとも1つの電荷移動複合体を形成させる工程、および
c)ラマン分光法を使用して少なくとも1つの電荷移動複合体を検出する工程、
を含む、方法である。
【0054】
別の実施形態は、少なくとも1つの酵素活性を検出するためのキットであって、
a)(任意選択的に)少なくとも1つの芳香族化合物、
b)少なくとも1つのアミン含有化合物、
c)少なくとも1つの電子供与化合物、および
d)(任意選択的に)少なくとも1つの酵素に適切なバッファ
を含む、キットである。
【0055】
1つの実施形態では、少なくとも1つのアミン含有化合物は、4−アミノアンチピレン、5−アミノサリチル酸、およびo−フェニレンジアミンから選択され、少なくとも1つの芳香族化合物は、2−ヒドロキシベンジルアルコール、4−クロロ−3,5−ジメチルフェノール、2−ナフトール、4−ヒドロキシ−4−ビフェニル−カルボン酸、5,7−ジクロロ−8−ヒドロキシキノリン、4−クロロ−1−ナフトール、フェノール、および4,5ジヒドロキシ−ナフタレン(naphthelene)−2,7−ジスルホン酸から選択され、少なくとも1つの電子供与化合物は、有機過酸化水素、過酸化水素尿素、および過酸化水素(H)から選択される。
【0056】
別の実施形態では、少なくとも1つのアミン含有化合物は、
【0057】
【化17】

(式中、Xは、H、NH、Cl、Br、ニトロ、およびベンジルから選択され、Yは、H、Cl、Br、およびニトロから選択され、Zは、H、ベンジル、およびNHから選択される)を含む。1つの実施形態では、XはNHであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XはClであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XはBrであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、Xはニトロであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XおよびZはHであり、YはClである。別の実施形態では、XおよびZはHであり、YはBrである。別の実施形態では、XおよびZはHであり、Yはニトロである。別の実施形態では、XおよびZはベンジルであり、YはHである。別の実施形態では、XおよびZはNHであり、YはHである。
【0058】
別の実施形態では、少なくとも1つのアミン含有化合物は、
【0059】
【化18】

(式中、Xは、H、OH、Cl、Br、およびニトロから選択される)を含む。
【0060】
別の実施形態では、少なくとも1つのアミン含有化合物は、
【0061】
【化19】

(式中、Xは、H、Cl、Br、およびニトロから選択される)を含む。
【0062】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0063】
【化20】

(式中、W、X、Y、およびZは、HおよびOHから選択される)を含む。1つの実施形態では、YはOHであり、X、Y、およびZはHである。別の実施形態では、WはOHであり、X、Y、およびZはHである。別の実施形態では、WおよびXはOHであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、WおよびYはOHであり、XおよびZはHである。別の実施形態では、WおよびZはOHであり、XおよびYはHである。
【0064】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0065】
【化21】

(式中、X、Y、およびZは、HおよびOHから選択される)を含む。1つの実施形態では、XはOHであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XおよびYはOHであり、ZはHである。別の実施形態では、XおよびZはOHであり、YはHである。
【0066】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0067】
【化22】

(式中、XおよびYはHおよびOHから選択される)を含む。1つの実施形態では、XはOHであり、YはHである。別の実施形態では、XはHであり、YはOHである。
【0068】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0069】
【化23】

(式中、XおよびYはHおよびOHから選択される)を含む。1つの実施形態では、XはOHであり、YはHである。別の実施形態では、XはHであり、YはOHである。
【0070】
別の実施形態では、少なくとも1つのアミン含有化合物は、芳香族アミン(以下のオルト−フェニレンジアミン、メタ−フェニレンジアミン、またはパラ−フェニレンアミンを含む)を含む。
【0071】
【化24】

別の実施形態は、サンプル中の少なくとも1つの酵素の活性を検出する方法であって、
a)サンプルおよび少なくとも1つのリン酸基を含む少なくとも1つの芳香族化合物を含む混合物を調製する工程、
b)前記混合物をインキュベートして少なくとも1つのラマン活性生成物を形成する工程であって、
i)任意選択的に酸化剤を添加し、
ii)任意選択的に塩基を添加する、
工程、
c)ラマン分光法を使用して少なくとも1つのラマン活性生成物を検出する工程
を含む方法である。
【0072】
1つの実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0073】
【化25】

(式中、
Xは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択され、
Yは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、およびCOOHから選択され、
Zは、H、OH、Cl、Br、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択される)を含む。
【0074】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0075】
【化26】

(式中、
Xは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択され、
Yは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、COOHから選択され、
Zは、H、OH、Cl、Br、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択される)を含む。
【0076】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0077】
【化27】

(式中、
Xは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択され、
Yは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、およびCOOHから選択される)を含む。
【0078】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0079】
【化28】

(式中、
Xは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択され、
Yは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、およびCOOHから選択される)を含む。
【0080】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0081】
【化29】

(式中、X、Y、Z、およびWのぞれぞれは、HおよびOHからそれぞれ独立して選択される)を含む。
【0082】
別の実施形態では、少なくとも1つの酵素はホスファターゼを含む。
【0083】
別の実施形態では、ホスファターゼはアルカリホスファターゼである。
【0084】
別の実施形態では、アルカリホスファターゼは抗体に抱合している。
【0085】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、4−アミノ−1−フェニル−1−ホスフェートを含む。
【0086】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、4−ヒドロキシ−1−ナフチル−1−ホスフェートを含む。
【0087】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、4−アミノ−1−ナフチル−1−ホスフェートを含む。
【0088】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、ヒドロキノンジホスフェートを含む。
【0089】
別の実施形態では、塩基は水酸化ナトリウムである。
【0090】
別の実施形態では、酸化剤はメタ過ヨウ素酸ナトリウムである。
【0091】
別の実施形態では、ラマン分光法は共鳴ラマン分光法である。
【0092】
別の実施形態は、サンプル中の少なくとも1つの標的を検出する方法であって、
a)少なくとも1つの標的を含む混合物を調製する工程、
b)混合物を少なくとも1つの標的に特異的な少なくとも1つのリガンドとインキュベートする工程であって、少なくとも1つのリガンドがホスファターゼを含む、工程、
c)ホスフェートを含む少なくとも1つの芳香族化合物に混合物を与える工程、
d)混合物をインキュベートして少なくとも1つのラマン活性生成物を形成する工程であって、
i)任意選択的に酸化剤を添加し、
ii)任意選択的に塩基を添加する、
インキュベートする工程、および
e)ラマン分光法を使用して少なくとも1つのラマン活性生成物を検出する工程
を含む、方法である。
【0093】
1つの実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0094】
【化30】

(式中、
Xは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択され、
Yは、H、OH、Cl、Br、NO、およびNH、SOH、およびCOOHから選択され、
Zは、H、OH、Cl、Br、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択される)を含む。
【0095】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0096】
【化31】

(式中、
Xは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択され、
Yは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、およびCOOHから選択され、
Zは、H、OH、Cl、Br、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択される)を含む。
【0097】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0098】
【化32】

(式中、
Xは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択され、
Yは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、およびCOOHから選択される)を含む。
【0099】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0100】
【化33】

(式中、
Xは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択され、
Yは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、およびCOOHから選択される)を含む。
【0101】
別の実施形態では、少なくとも1つの芳香族化合物は、
【0102】
【化34】

(式中、X、Y、Z、およびWのぞれぞれは、HおよびOHからそれぞれ独立して選択される)を含む。
【0103】
別の実施形態では、以下:
【0104】
【化35】

(式中、
Xは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択され、
Yは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、およびCOOHから選択され、
Zは、H、OH、Cl、Br、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択される)を含む芳香族化合物を提供する。
【0105】
別の実施形態では、以下:
【0106】
【化36】

(式中、
Xは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択され、
Yは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、およびCOOHから選択され、
Zは、H、OH、Cl、Br、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択される)を含む芳香族化合物を提供する。
【0107】
別の実施形態では、以下:
【0108】
【化37】

(式中、
Xは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択され、
Yは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、およびCOOHから選択される)を含む芳香族化合物を提供する。
【0109】
別の実施形態では、以下:
【0110】
【化38】

(式中、
Xは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択され、
Yは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、およびCOOHから選択される)を含む芳香族化合物を提供する。
【0111】
別の実施形態では、以下:
【0112】
【化39】

(式中、
Xは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択され、
Yは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、およびCOOHから選択され、
Zは、H、OH、Cl、Br、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択される)を含む芳香族化合物を提供する。
【0113】
別の実施形態では、混合物を塩基の存在下でインキュベートする。
【0114】
別の実施形態では、ラマン分光法は共鳴ラマン分光法である。
【0115】
別の実施形態では、リガンドは、受容体および抗体から選択される。別の実施形態では、リガンドは抗体である。
【0116】
別の実施形態では、少なくとも1つの標的は有機体である。別の実施形態では、有機体は、バクテリオファージ、細菌(大腸菌、リステリア、サルモネラ、ビブリオ、Camphelbacter、およびブドウ球菌が含まれる)、およびウイルス(HIVウイルス、肝炎ウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、ヒト乳頭腫ウイルスなど)から選択される。
【0117】
別の実施形態では、標的は、有機体の成分である。1つの実施形態では、成分はタンパク質である。別の実施形態では、タンパク質はインターロイキンである。1つの実施形態では、インターロイキンはIL−2である。別の実施形態では、タンパク質は、C反応性タンパク質、腫瘍壊死因子受容体II、およびヒト心筋トロポニンIから選択される。別の実施形態では、標的は、アミノ酸、核酸、ヌクレオチド、代謝産物、炭水化物、ホルモン、および代謝中間体から選択される有機体の成分である。
【0118】
別の実施形態は、少なくとも1つの酵素活性を検出するためのキットであって、
a)ホスフェートを含む少なくとも1つの芳香族化合物、
b)任意選択的に酸化剤、
c)任意選択的に塩基、および
d)任意選択的に少なくとも1つの酵素に適切なバッファ
を含むキットである。
図面の簡単な説明
特許書類または出願書類は、少なくとも1つのカラー図面を含む。カラー図面を含む特許および特許出願公開書類の副本は、請求および必要な料金の納付の上で特許庁によって提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、生物有機体または生物学的成分の検出のための典型的な先行技術の免疫アッセイ技術(ELISA)の流れ図である。
【図2】図2は、開示の装置の実施形態の線図である。
【図3】図3は、生物有機体および/または生物学的成分の検出のための開示の技術の実施形態の流れ図である。
【図4】図4は、化学成分のラマン活性化合物への変換についての酵素系のブロック線図である。
【図5】図5は、特定の標的分子を励起するためのレーザー光周波数の選択技術の流れ図である。
【図6】図6は、ラマン活性化合物が検出されるようにデザインされたマイクロ流体チャネルの説明図である。
【図7】図7は、カスタム集積回路などに組み込むことができる一連のマイクロ流体チャネルの説明図である。
【図8】図8は、リステリアを含むサンプル(a)およびリステリアを含まないサンプル(b)についてのペルオキシダーゼに結合した抗体を使用した病原性細菌(リステリア)の酵素結合免疫アッセイ由来のラマンスペクトルのプロットを、横座標にプロットしたシフト数(cm−1)および縦座標にプロットしたシグナルの規模(任意の単位)と共に示す。
【図9A】図9Aは、3回の実験においてラマン試薬処方物A−1を使用して得られた3260cm−1で測定したラマンスペクトルのプロットであり、図9Bは、3回の実験においてラマン試薬A−1を使用して得られた3500〜4000cm−1で測定したSQRラマンスペクトルのプロットである。
【図9B】図9Aは、3回の実験においてラマン試薬処方物A−1を使用して得られた3260cm−1で測定したラマンスペクトルのプロットであり、図9Bは、3回の実験においてラマン試薬A−1を使用して得られた3500〜4000cm−1で測定したSQRラマンスペクトルのプロットである。
【図10】図10は、ラマン試薬A−1(菱形)、ラマン試薬A−2(三角)、およびA−3(四角)を使用して得られた3260cm−1で測定したラマンスペクトルのプロットである。
【図11】図11は、ラマン試薬処方物A−1(菱形)およびラマン試薬A−2(四角および三角)を使用して得られた3500−4000cm−1で測定したSQRラマンスペクトルのプロットである。
【図12】図12は、ラマン試薬処方物A−2(四角)および新鮮なHPROを含むBSA希釈物を用いたA−2(菱形)を使用して得られた3260cm−1で測定したラマンスペクトルのプロットである。
【図13】図13は、ラマン試薬B−1(菱形)、B−2(四角)、B−3(三角)、およびB−4(「X」)を使用して得られた3260cm−1で測定したラマンスペクトルのプロットである。
【図14】図14は、ラマン試薬B−2(四角)および新鮮なHPROを含むBSA希釈物を用いたB−2(菱形)を使用して得られた3260cm−1で測定したラマンスペクトルのプロットである。
【図15A】図15Aは、ラマン試薬C−1を使用して得られた3260cm−1で測定したラマンスペクトルのプロットであり、図15Bは、3500〜4000cm−1で測定した対応するSQRラマンスペクトルのプロットである。
【図15B】図15Aは、ラマン試薬C−1を使用して得られた3260cm−1で測定したラマンスペクトルのプロットであり、図15Bは、3500〜4000cm−1で測定した対応するSQRラマンスペクトルのプロットである。
【図16A】図16Aは、ラマン試薬D−1を使用して得られた3260cm−1で測定したラマンスペクトルのプロットであり、図16Bは、3500〜4000cm−1で測定した対応するSQRラマンスペクトルのプロットである。
【図16B】図16Aは、ラマン試薬D−1を使用して得られた3260cm−1で測定したラマンスペクトルのプロットであり、図16Bは、3500〜4000cm−1で測定した対応するSQRラマンスペクトルのプロットである。
【図17】図17は、ビオチン−ASA−UPおよびASA−UPを使用して得られた3500〜4000cm−1で測定したSQRラマンスペクトルのプロットである。
【図18】図18は、試験試薬の相対感度を示す棒グラフである。
【図19】図19は、BASH−UPおよびTMBを使用したIL−2免疫アッセイにおいて3500〜4000cm−1で測定したSQRラマンスペクトルおよび450nmで測定した吸収スペクトルのプロットである。
【図20A】図20Aは、BASH−UP反応の吸収スペクトルのプロットであり、図20Bは、OPD反応の吸収スペクトルである。
【図20B】図20Aは、BASH−UP反応の吸収スペクトルのプロットであり、図20Bは、OPD反応の吸収スペクトルである。
【図21A】図21Aおよび21Bは、ペルオキシダーゼを使用しないBASH−UP反応の蛍光スペクトルのプロットであり、図21Cおよび21Dは、ペルオキシダーゼを使用したBASH−UP反応の蛍光スペクトルのプロットである。
【図21B】図21Aおよび21Bは、ペルオキシダーゼを使用しないBASH−UP反応の蛍光スペクトルのプロットであり、図21Cおよび21Dは、ペルオキシダーゼを使用したBASH−UP反応の蛍光スペクトルのプロットである。
【図21C】図21Aおよび21Bは、ペルオキシダーゼを使用しないBASH−UP反応の蛍光スペクトルのプロットであり、図21Cおよび21Dは、ペルオキシダーゼを使用したBASH−UP反応の蛍光スペクトルのプロットである。
【図21D】図21Aおよび21Bは、ペルオキシダーゼを使用しないBASH−UP反応の蛍光スペクトルのプロットであり、図21Cおよび21Dは、ペルオキシダーゼを使用したBASH−UP反応の蛍光スペクトルのプロットである。
【図22A】図22Aおよび22Bは、ペルオキシダーゼを使用しないOPD反応の蛍光スペクトルのプロットであり、図22Cおよび22Dは、ペルオキシダーゼを使用したOPD反応の蛍光スペクトルのプロットである。
【図22B】図22Aおよび22Bは、ペルオキシダーゼを使用しないOPD反応の蛍光スペクトルのプロットであり、図22Cおよび22Dは、ペルオキシダーゼを使用したOPD反応の蛍光スペクトルのプロットである。
【図22C】図22Aおよび22Bは、ペルオキシダーゼを使用しないOPD反応の蛍光スペクトルのプロットであり、図22Cおよび22Dは、ペルオキシダーゼを使用したOPD反応の蛍光スペクトルのプロットである。
【図22D】図22Aおよび22Bは、ペルオキシダーゼを使用しないOPD反応の蛍光スペクトルのプロットであり、図22Cおよび22Dは、ペルオキシダーゼを使用したOPD反応の蛍光スペクトルのプロットである。
【図23A】図23Aおよび23Bは、BASH−UP反応およびOPD反応によってそれぞれ得られたラマンシグナルのプロットである。
【図23B】図23Aおよび23Bは、BASH−UP反応およびOPD反応によってそれぞれ得られたラマンシグナルのプロットである。
【図24A】図24Aは、ペルオキシダーゼを使用しないOPD反応についての時間に対するラマンシグナルのプロットであり、図24B〜Eは、漸減量のペルオキシダーゼを使用したOPD反応の時間に対するラマンシグナルのプロットである。
【図24B】図24Aは、ペルオキシダーゼを使用しないOPD反応についての時間に対するラマンシグナルのプロットであり、図24B〜Eは、漸減量のペルオキシダーゼを使用したOPD反応の時間に対するラマンシグナルのプロットである。
【図24C】図24Aは、ペルオキシダーゼを使用しないOPD反応についての時間に対するラマンシグナルのプロットであり、図24B〜Eは、漸減量のペルオキシダーゼを使用したOPD反応の時間に対するラマンシグナルのプロットである。
【図24D】図24Aは、ペルオキシダーゼを使用しないOPD反応についての時間に対するラマンシグナルのプロットであり、図24B〜Eは、漸減量のペルオキシダーゼを使用したOPD反応の時間に対するラマンシグナルのプロットである。
【図24E】図24Aは、ペルオキシダーゼを使用しないOPD反応についての時間に対するラマンシグナルのプロットであり、図24B〜Eは、漸減量のペルオキシダーゼを使用したOPD反応の時間に対するラマンシグナルのプロットである。
【図25A】図25A〜Dは、OPD反応についての時間に対するSQRスペクトルのプロットである。
【図25B】図25A〜Dは、OPD反応についての時間に対するSQRスペクトルのプロットである。
【図25C】図25A〜Dは、OPD反応についての時間に対するSQRスペクトルのプロットである。
【図25D】図25A〜Dは、OPD反応についての時間に対するSQRスペクトルのプロットである。
【図26A】図26Aは、ベンゾキノンのラマンシグナルのプロットであり、図26Bは、ピロガロールのラマンシグナルのプロットである。両図は、水酸化ナトリウムの添加の際のラマンシグナルの増強を示す。図26A(a)は、NaOHを添加したベンゾキノンのラマンシグナルのプロットであり、図26A(b)は、NaOHを使用しないベンゾキノンのラマンシグナルのプロットである。図26B(a)は、NaOHを添加したピロガロールのラマンシグナルのプロットであり、図26B(b)は、NaOHを使用しないピロガロールのプロットである。
【図26B】図26Aは、ベンゾキノンのラマンシグナルのプロットであり、図26Bは、ピロガロールのラマンシグナルのプロットである。両図は、水酸化ナトリウムの添加の際のラマンシグナルの増強を示す。図26A(a)は、NaOHを添加したベンゾキノンのラマンシグナルのプロットであり、図26A(b)は、NaOHを使用しないベンゾキノンのラマンシグナルのプロットである。図26B(a)は、NaOHを添加したピロガロールのラマンシグナルのプロットであり、図26B(b)は、NaOHを使用しないピロガロールのプロットである。
【図27A】図27Aは1,4−ナフタキノンのラマンシグナルのプロットであり、図27Bは1,4−イミノナフタキノンのラマンシグナルのプロットである。両図は、過ヨウ素酸塩および水酸化ナトリウムの依存を示す。図27A(a)は、過ヨウ素酸塩またはNaOHを使用しない1,4−ナフタキノンのラマンシグナルのプロットである。図27A(b)は、過ヨウ素酸塩を使用するがNaOHを使用しない1,4−ナフタキノンのラマンシグナルのプロットである。図27A(c)は、過ヨウ素酸塩を使用しないがNaOHを使用した1,4−ナフタキノンのラマンシグナルのプロットである。図27A(d)は、過ヨウ素酸塩およびNaOHを使用した1,4−ナフタキノンのラマンシグナルのプロットである。図27B(a)は、NaOHを使用した1,4−イミノナフタキノンのラマンシグナルのプロットである。図27B(b)は、1,4−イミノナフタキノンを含むホウ酸緩衝液のラマンシグナルのプロットである。図27B(c)は、過ヨウ素酸塩およびNaOHを使用した1,4−イミノナフタキノンのラマンシグナルのプロットである。図27B(d)は、過ヨウ素酸塩を使用するがNaOHを使用しない1,4−イミノナフタキノンのラマンシグナルのプロットである。
【図27B】図27Aは1,4−ナフタキノンのラマンシグナルのプロットであり、図27Bは1,4−イミノナフタキノンのラマンシグナルのプロットである。両図は、過ヨウ素酸塩および水酸化ナトリウムの依存を示す。図27A(a)は、過ヨウ素酸塩またはNaOHを使用しない1,4−ナフタキノンのラマンシグナルのプロットである。図27A(b)は、過ヨウ素酸塩を使用するがNaOHを使用しない1,4−ナフタキノンのラマンシグナルのプロットである。図27A(c)は、過ヨウ素酸塩を使用しないがNaOHを使用した1,4−ナフタキノンのラマンシグナルのプロットである。図27A(d)は、過ヨウ素酸塩およびNaOHを使用した1,4−ナフタキノンのラマンシグナルのプロットである。図27B(a)は、NaOHを使用した1,4−イミノナフタキノンのラマンシグナルのプロットである。図27B(b)は、1,4−イミノナフタキノンを含むホウ酸緩衝液のラマンシグナルのプロットである。図27B(c)は、過ヨウ素酸塩およびNaOHを使用した1,4−イミノナフタキノンのラマンシグナルのプロットである。図27B(d)は、過ヨウ素酸塩を使用するがNaOHを使用しない1,4−イミノナフタキノンのラマンシグナルのプロットである。
【図28A】図28Aは、酸化剤を添加したアルカリホスファターゼ−抗体抱合体濃度の関数としての4−アミノフェニルホスフェートについて記録した3300cm−1でのラマンスペクトル値の対数プロットであり、図28Bは直線プロットを示す。
【図28B】図28Aは、酸化剤を添加したアルカリホスファターゼ−抗体抱合体濃度の関数としての4−アミノフェニルホスフェートについて記録した3300cm−1でのラマンスペクトル値の対数プロットであり、図28Bは直線プロットを示す。
【図29A】図29Aは、酸化剤を添加した0〜1000ng/mLの範囲のアルカリホスファターゼ抱合体濃度の関数としての4−アミノフェニルホスフェートのラマンスペクトルを示し、図29Bは0〜10ng/mLの範囲のものを示す。図29A(a〜f)は、以下のアルカリホスファターゼ抱合体の濃度の関数としての4−アミノフェニルホスフェートのラマンスペクトルを示す:(a)1000ng/ml、(b)100ng/ml、(c)10ng/ml、(d)1ng/ml、(e)0.1ng/ml、および(f)0ng/ml。図29B(a〜e)は、以下のアルカリホスファターゼ抱合体濃度の関数としての4−アミノフェニルホスフェートのラマンスペクトルを示す:(a)10ng/ml、(b)1ng/ml、(c)0.1ng/ml、(d)0.01ng/ml、および(e)0ng/ml。
【図29B】図29Aは、酸化剤を添加した0〜1000ng/mLの範囲のアルカリホスファターゼ抱合体濃度の関数としての4−アミノフェニルホスフェートのラマンスペクトルを示し、図29Bは0〜10ng/mLの範囲のものを示す。図29A(a〜f)は、以下のアルカリホスファターゼ抱合体の濃度の関数としての4−アミノフェニルホスフェートのラマンスペクトルを示す:(a)1000ng/ml、(b)100ng/ml、(c)10ng/ml、(d)1ng/ml、(e)0.1ng/ml、および(f)0ng/ml。図29B(a〜e)は、以下のアルカリホスファターゼ抱合体濃度の関数としての4−アミノフェニルホスフェートのラマンスペクトルを示す:(a)10ng/ml、(b)1ng/ml、(c)0.1ng/ml、(d)0.01ng/ml、および(e)0ng/ml。
【図30A】図30Aは、アルカリホスファターゼ濃度の関数としての4−アミノフェニルホスフェートについて記録した3300cm−1でのラマンスペクトル値の対数プロットであり、図30Bは直線プロットを示す。
【図30B】図30Aは、アルカリホスファターゼ濃度の関数としての4−アミノフェニルホスフェートについて記録した3300cm−1でのラマンスペクトル値の対数プロットであり、図30Bは直線プロットを示す。
【図31A】図31Aは、0〜2500mU/mLの範囲のアルカリホスファターゼ濃度の関数としての4−アミノフェニルホスフェートのラマンスペクトルを示し、図31Bは、0〜25mU/mLの範囲のものを示す。図31A(a〜f)は、以下のアルカリホスファターゼ濃度の関数としての4−アミノフェニルホスフェートのラマンスペクトルを示す:(a)2500mU/mL、(b)250mU/mL、(c)25mU/mL、(d)2.5mU/mL、(e)0.25mU/mL、および(f)0mU/mL。図31B(a〜e)は、以下のアルカリホスファターゼ濃度の関数としての4−アミノフェニルホスフェートのラマンスペクトルを示す:(a)25mU/mL、(b)2.5mU/mL、(c)0.25mU/mL、(d)0.025mU/mL、および(e)0mU/mL。
【図31B】図31Aは、0〜2500mU/mLの範囲のアルカリホスファターゼ濃度の関数としての4−アミノフェニルホスフェートのラマンスペクトルを示し、図31Bは、0〜25mU/mLの範囲のものを示す。図31A(a〜f)は、以下のアルカリホスファターゼ濃度の関数としての4−アミノフェニルホスフェートのラマンスペクトルを示す:(a)2500mU/mL、(b)250mU/mL、(c)25mU/mL、(d)2.5mU/mL、(e)0.25mU/mL、および(f)0mU/mL。図31B(a〜e)は、以下のアルカリホスファターゼ濃度の関数としての4−アミノフェニルホスフェートのラマンスペクトルを示す:(a)25mU/mL、(b)2.5mU/mL、(c)0.25mU/mL、(d)0.025mU/mL、および(e)0mU/mL。
【発明を実施するための形態】
【0120】
発明の詳細な説明
食品安全性、医学的診断、獣医学的診断、病原体検出、法医学、および国土防衛などの領域には、生物有機体(汚染細菌など)および生物学的成分(タンパク質、DNA、または他の遺伝子材料など)の迅速且つ特異的な同定が必要である。細菌の迅速且つ感度の高い検出方法が当該分野で特に必要である。
【0121】
サンプル中の細菌を同定するための一般的なアッセイは免疫アッセイであり、このアッセイは細菌に結合した抗体の検出に依存する。典型的には、抗体を標識し、標識の存在をアッセイすることによって抗体の存在を検出する。あるいは、抗体を酵素に抱合し、抗体−酵素抱合体の存在を酵素活性のアッセイによって検出する。酵素−抗体抱合体を使用する一般的に使用されているアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)である。標準的アッセイでは、酵素活性を、酵素によって比色手段、蛍光発生手段、および化学発光手段によって検出可能な生成物に変換される反応物の存在下での酵素−抗体抱合体のインキュベーションによって測定することができる。
【0122】
しかし、比色手段、蛍光発生手段、および化学発光手段による検出は、制限されたダイナミックレンジ、制限された感度、およびバックグラウンドからの干渉などのいくつかの欠点に悩まされている。
【0123】
ラマン分光法はこれらの方法を超えるいくつかの利点を有するが、一般に、ラマン分光法を、一般的に使用されている比色試薬、蛍光発生試薬、および化学発光試薬と組み合わせて使用することができない。なぜならば、これらは、典型的には、有用なラマンスペクトルを生じないからである。例えば、比色試薬である3,3’,5,5’−テトラメチル(tetramethelene)ベンジジン(TMB)およびアジノビスエチル(ethly)ベンズチアゾリンスルホン酸(ABTS)は、有機体の検出に有用なラマンスペクトルを生じない。したがって、有機体の検出に有用なラマン活性生成物を生じる試薬(酵素−抗体抱合体を使用した免疫アッセイ形式で使用することができる試薬が含まれる)が望まれる。
【0124】
ラマン分光法を使用した免疫アッセイ形式での細菌の検出に有用な試薬は、一定の好ましい特徴を有する。第1に、試薬は、細菌によって生じたバックグラウンドシグナルを事前に持たないラマンスペクトル領域中にラマンシグナルを生じるべきである。第2に、試薬によって生じたラマンシグナルは定量可能で、広範な濃度範囲にわたる検出が可能であるべきである。
【0125】
本開示は、その一部が、一定のアミン含有化合物を免疫アッセイ形式で使用して有機体および成分(核酸およびタンパク質など)を検出することができるという発見に基づく。これらの試薬を酵素的に変換して、細菌由来のラマンシグナルを事前に含まないスペクトル領域でラマンシグナルを有するイミノキノンまたは他の生成物を生成する。ラマンシグナルの検出は酵素の存在を示す。酵素がELISAアッセイで使用した抗体抱合体の一部である場合、ラマンシグナルの検出は、ELISAの標的の存在を示す。あるいは、ラマン活性試薬を酵素と共にインキュベートして、これらの試薬を試薬と異なるラマンスペクトルを有する生成物に変換することができる。ラマンシグナルの変化は酵素の存在を示す。したがって、これらの試薬の使用により、迅速、特異的、且つ定量的な酵素活性の検出が可能である。
【0126】
本開示はまた、一定の組み合わせおよび量の本開示の試薬が優れた感度を示すという発見に一部基づく。この感度を、多波数スペクトル分析を使用する開示の定量可能な単一の結果(SQR)法の使用によってさらに増強することができる。
【0127】
本開示はまた、他の比色試薬と対照的に、比色試薬o−フェニレンジアミン(OPD)を使用してラマン活性生成物を生成することができるという発見に一部基づく。OPDをラマン分光法と組み合わせて使用して、酵素活性のリアルタイム反応速度を測定することができる。
【0128】
本開示はまた、少なくとも1つのリン酸基を有する化合物をホスファターゼ基質として使用してラマン活性生成物またはラマン活性生成物の前駆体を生成することができるという発見に一部基づく。ホスファターゼ基質は、ホスファターゼの存在下で酵素的に脱リン酸化されて対応するフェノールまたはアミノフェノールを形成し、次いで、酸化剤を使用するか使用しないで酸化されて対応するラマン活性キノンまたはイミノキノンを生成することができる芳香族化合物であり得る。ホスファターゼ基質を、免疫アッセイ形式で使用することができる。ホスファターゼはアルカリホスファターゼであり得る。ラマン活性生成物の前駆体を、塩基への曝露によってラマン活性生成物に変換することができる。塩基はNaOHであり得る。
【0129】
いかなる理論にも拘束されないが、本開示は一定の化合物がラマン分光法によって検出することができる電荷移動複合体を形成する能力に基づくと考えられる。かかる複合体の存在は、これらの化合物が電荷移動複合体の形成と一致する広いラマンピークを生じるという発見によって支持される。例えば、Rathoreら,“Direct Observation and Structural Characterization of the Encounter Complex in Bimolecular Electron Transfers with Photoactivated Acceptors,” J.Am.Chem.Soc.119:11468−11480(1997)を参照のこと。一定の化合物がラマン検出可能な電荷移動複合体を生成するという発見は、かかる複合体を生成する反応物を選択するための手段を提供する。
【0130】
定義
「抗体」は、本明細書中で使用する場合、免疫グロブリンまたはその一部を意味し、供給源、産生方法、および他の特徴と無関係に抗原結合部位を含む任意のポリペプチドを含む。本用語には、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単一特異性抗体、多特異性抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組換え抗体、ハイブリッド抗体、変異抗体、およびCDRグラフティング抗体が含まれる。抗体の一部には、依然として抗原に結合することができる任意のフラグメント(例えば、Fab、F(ab’)、Fv、scFv)が含まれ得る。抗体の起源は、産生方法と無関係にゲノム配列によって定義される。
【0131】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、任意の長さのアミノ酸の多量体形態をいうために交換可能に使用され、天然に存在するアミノ酸、コードおよび非コードアミノ酸、化学的または生物学的に修飾されたアミノ酸、誘導体化アミノ酸、またはデザイナーアミノ酸、アミノ酸アナログ、ペプチド模倣物、デプシペプチド、および修飾、環状、二環式、デプシ環式、またはデプシ二環式のペプチド骨格を有するポリペプチドが含まれ得る。本用語は、単鎖タンパク質および多量体が含まれる。
【0132】
用語「アミノ酸」は、アミノ酸の単量体形態をいい、天然に存在するアミノ酸、コードおよび非コードアミノ酸、化学的または生化学的に修飾されたアミノ酸、誘導体化アミノ酸、またはデザイナーアミノ酸、アミノ酸アナログ、ペプチド模倣物、およびデプシペプチドが含まれ得る。
【0133】
用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド配列」、および「ヌクレオチド配列」は、本明細書中で、任意の長さのヌクレオチドの多量体形態をいうために交換可能に使用される。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、および/またはそのアナログまたは誘導体を含むことができる。
【0134】
用語「ヌクレオチド」は、単量体ヌクレオチドをいい、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、および/またはそのアナログまたは誘導体が含まれる。
【0135】
用語「リガンド」は、別の分子(受容体が含まれる)に結合する分子をいう。
【0136】
免疫アッセイ形式
本開示を、種々の形式で実施することができる。1つの実施形態では、形式は免疫アッセイである。一定の免疫アッセイ実施形態では、標的生体物質を、固体表面に結合した抗体に最初に結合させる。次いで、試験サンプルの非結合成分を任意選択的に洗い流して結合した生体物質/抗体結合体(biologic/antibody combination)のみを残し、これらを紫外線のラマン散乱によって検出することができる。
【0137】
他の免疫アッセイ実施形態では、標的生体物質を、抗体または抗体−酵素抱合体に最初に結合させる。この生体物質/抗体結合体または生体物質/抗体−酵素結合体は、生体物質/抗体結合体または生体物質/抗体−酵素結合体の抗体部分を介して、基質化合物(少なくとも1つのリン酸基を有する芳香族有機化合物など)と反応する。次いで、基質化合物を、ラマン活性生成物にさらに酸化させる。かかる実施形態では、したがって、標的生体物質を、ラマン活性生成物の検出によって定量する。
【0138】
1つの実施形態では、ラマン分光法と生体標識技術との組み合わせを使用して、生物学的成分(タンパク質またはペプチド(疾患に関連する特定の高次構造または条件の任意の翻訳後修飾物(例えば、プリオンタンパク質)が含まれる)など)を同定および定量する。
【0139】
感度を増大させるために、その後に1つまたは複数の新規の反応物を導入し、生体物質/抗体結合体に結合するようになるさらなる工程を想定する。ここで、新規の反応物の生体物質/抗体結合体との結合体を、ラマン散乱光を使用して検出することができる。かかる反応物の例には、表1に列挙した試薬が含まれるが、これらに限定されない。
【0140】
【表1】

生体物質/抗体結合体からの出発の代わりに、ラマン検出法は抗体を使用せずに生体物質と相互作用する化学物質を使用することができることも想定される。
【0141】
ラマンベースの方法を、多数の免疫アッセイ(ヒトIL−11、ラットC反応性タンパク質、可溶性腫瘍壊死因子受容体II、およびヒト心筋トロポニンIの検出が含まれるが、これらに限定されない)に適用することができる。
【0142】
ラマンベースの方法を、種々の有機体および成分の検出に適用することができる。1つの実施形態では、バクテリオファージを検出する。別の実施形態では、細菌(大腸菌、リステリア、サルモネラ、ビブリオ、Camphelbacter、およびブドウ球菌が含まれる)を検出する。別の実施形態では、ウイルス(HIVウイルス、肝炎ウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、ヒト乳頭腫ウイルスなど)を検出する。別の実施形態では、成分(タンパク質、アミノ酸、核酸、ヌクレオチド、代謝産物、ホルモン、および代謝中間体が含まれる)を検出する。
【0143】
抗体以外の標的生体物質に特異的な結合パートナーまたはリガンド(例えば、生物学的受容体(タンパク質))を使用することができるということも想定される。
【0144】
本明細書中に開示の多数の技術が生物有機体および生物学的成分の検出に関連しているにもかかわらず、本開示はサンプル中の無機成分、有機成分、夾雑物、または毒素の検出に適用可能である。開示の検出技術を、共鳴ラマン光散乱を示す反応物の使用によって増強することができる。一定の反応物について、これらの反応物の構造に特異的なより高い強度の散乱光の周波数が存在する。本開示の一定の実施形態における共鳴現象は、標的分子の化学構造および相互作用にのみ関連し、表面増強共鳴ラマン散乱(SERRS)として公知の技術などで見出される任意の固体表面相互作用に関連しない。
【0145】
定量可能な単一の結果(SQR)
ラマンスペクトルを、定量可能な単一の結果(SQR)を得ることによって分析することができる。SQR数は、サンプル中で測定されたターゲティングされた分析物に対応するラマンスペクトルと測定過程で認められた任意のバックグラウンドラマンシグナル/スペクトルとの間の相違である。SQR過程の工程を表2に示す。
【0146】
【表2】

SQR過程は、サンプル由来のラマンシグナルおよびバックグラウンドの評価が適切(すなわち、「妥当」)であり、サンプル中のターゲティングした分析物の存在を示すのに十分である(すなわち、「正値」)であるかどうかの評価を含むことができる。SQR過程を、手作業またはデザインされたコンピュータソフトウェアを使用して行うことができる。バックグラウンドおよび試験スペクトルについての複数の波数のラマンシグナルを、表にしている。1つの実施形態では、バックグラウンドおよび試験スペクトルの両方について、1つおきの波数毎に表にしている。別の実施形態では、バックグラウンドおよび試験スペクトルの両方について、波数毎に表にしている。1つの実施形態では、波数範囲は2000〜4000cm−1である。別の実施形態では、波数範囲は3500〜4000cm−1である。試験シグナルとバックグラウンドシグナルとの間の差を波数範囲について決定し、この差の二乗を保存する。二乗の和を決定し、この和の平方根がSQR値である。
【0147】
SQRを使用する場合、ラマンスペクトルが意図する意味を有するように確実にネガティブおよび/またはサンプル運転を適切に運転する(不正確にアッセイされる系統誤差がない)ことによってその妥当性を検証することができる。バックグラウンドを測定する場合、バックグラウンドサンプルは、試験サンプル中の代表的なバックグラウンドシグナルでなければならず、装置のサンプル管を使用することなくラマン読み取りを行った場合に得られるシグナルなどの無作為なシグナルに起因しない。サンプルスペクトルは、ネガティブコントロールのスペクトルの下(未満)で一貫して運転してはならない。数学的には、より低い運転サンプルとバックグラウンドとの間の差を正値に変換し、潜在的に「正の」SQRシグナルと解釈する。
【0148】
以下の「妥当性」分析を行うことができる。波数(例えば、3260cm−1)でのバックグラウンドサンプル(「ネガティブコントロール」)のラマン値を、予想されるように運転すべきである(最小値超且つ最大値未満)。この決定は、確実に正確なサンプルをネガティブコントロールとして運転し、アッセイを正確に運転するための助けとなるであろう。ポジティブコントロールのSQR値は、予想値未満で運転すべきではない。これは、正確なサンプルをポジティブコントロールとして運転し、アッセイを正確に運転するための助けとなるであろう。各試験サンプルの「差の和」は、予想値未満で運転すべきではない。これらの分析は、確実にサンプルスペクトルがネガティブコントロールのスペクトルの下(未満)で一貫して運転されないための助けとなる。予想される最小値および最大値を、繰り返して行った実験で得られた値から最小値および最大値を確立することによって経験的に決定することができる。
【0149】
SQR法を、手作業またはコンピュータを用いて行うことができる。開示の1つの実施形態は、SQR計算用の装置操作可能な言語を有するコンピュータである。
【0150】
器具類
マイクロまたはナノファブリケーションテクノロジーを使用して、結合パートナーがカスタム集積回路(ラマン分光法のためのレーザーおよび検出器も含むであろう)中の1つまたは複数のマイクロ流体チャネル中に固定されたマイクロ流体チャネル(またはウェル)集積回路上で本開示の実施形態を実行することができることも想定される。かかる実行により、単一の生物学的成分(病原性細菌、タンパク質、または遺伝子材料など)を検出することができる。
【0151】
したがって、本開示の一定の実施形態の目的は、化学的相互作用(結合が含まれる)とラマン光散乱の最終工程との組み合わせを使用する成分の標的生物有機体の検出システムを得ることである。
【0152】
本開示の一定の実施形態の別の目的は、化学的相互作用(結合が含まれる)とラマン光散乱の最終工程との組み合わせを使用する無機または有機の標的成分の検出システムを得ることである。
【0153】
本開示の一定の実施形態の別の目的は、免疫アッセイとラマン光散乱を使用した検出とを組み合わせることである。
【0154】
本開示の一定の実施形態のさらに別の目的は、共鳴ラマン光散乱を生じる化学反応物の使用によって検出感度を増大させることである。
【0155】
本開示の一定の実施形態のさらに別の目的は、結合とラマン光散乱測定との組み合わせを実施することができるマイクロ流体チャネルまたはウェルを有する集積回路デザインを得ることである。
【0156】
本開示のこれらおよび他の目的および利点は、関連する図面を含む本開示を読んだ際に当業者に明らかとなるであろう。
【0157】
図1は、生物有機体または生物学的成分の検出のための典型的な先行技術の免疫アッセイ技術(ELISA)(10)の流れ図である。この過程は、標的生体物質を含む液体サンプルの調製工程(11)から開始される。例えば、サンプルを、成長培地(ハーフフレーザーブロスまたは他の適切な細菌成長培地など)中での前培養によって調製することができる。あるいは、試験用の液体サンプルを任意の液体供給源から得ることができる。固体材料を、適切な溶液に浸漬し、潜在的な標的有機体または分子を溶液に入れ、次いで、液体中でサンプリングすることができる。次の工程(12)では、調製した液体サンプルを、固体表面に結合させた結合パートナーと組み合わせる(または混合する)。典型的な結合パートナーには、抗体、バクテリオファージ、およびバクテリオファージタンパク質が含まれる。例えば、プラスチック製のマイクロタイタープレート、ラテックスビーズ、または磁性微粒子を使用することができる。他の固体支持体(ニトロセルロース、濾紙、ナイロン、および他のプラスチックなど)も使用することができる。次いで、抗体/生体物質結合体を、工程(13)で生体物質および抗体を相互に結合可能な時間インキュベートする。一旦これが起こると、結合させた結合パートナー/生体物質をデカントし(注ぎ出し)、洗浄して非結合の生体物質および他の望ましくない材料を除去する。新規の反応物を工程(15)で添加して、種々の方法によるシグナル分子の検出に対する混合物の感度を増強させる。かかる反応物の例には、表3に列挙した反応物が含まれる。
【0158】
【表3】

結合した結合パートナー/生体物質および新規の反応物を含む混合物を、工程(13)で反応を起こす時間インキュベートする。多くの場合、この時点で、過程(10)の反応部分は完全であり、工程(11)〜(15)(両端の工程を含む)中で産生されたか含まれる分子の測定工程(16)を行うことができる。さらなる反応物が必要である場合、工程(14)、(15)、および(13)を、適切なシグナル分子が存在するまで、1回または複数回連続して反復することができる。
【0159】
シグナル分子の測定によって定量的結果が得られ、次いで、この結果を分析し、工程(17)で既知濃度の標的生体物質の較正反応の既知の組と比較することができる。この比較によって工程(18)に進み、ここで、結果を定量し、工程(11)で調製したサンプル中の標的生体物質の濃度の報告と関連づける。
【0160】
図1の過程(10)の説明が生物有機体または生物学的成分の検出に関係していたにもかかわらず、過程(10)は抗体または他の結合パートナーが反応し得る多数の分子型の検出にも適用可能である。
【0161】
図2は、本開示の検出サブシステム(20)の実施形態の線図である。レーザー(21)はレーザー・ビーム(22)を生じ、これが焦点レンズ(23)によって収束レーザー・ビーム(24)に収束し、これが標的サンプル(25)に当たる。サンプル(25)由来の後方散乱光(26)は、焦点レンズ(27)によってビーム(28)に収束する。ビーム(28)は、検出器(31)を有する分光計(30)に向かう。検出器(31)からの出力はシグナル(32)であり、このシグナルは、分析、保存、および/またはプリンター(42)を使用した印刷のためのパーソナルコンピュータ(40)によって受信される。レーザー(21)は、典型的には、可視領域で出力される連続波長(CW)レーザーである。例えば、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザーポンプ波長可変性色素レーザー、またはダイオードレーザー(緑色、赤色、または他の周波数)。焦点レンズ(23)および(27)は、ミラー、レンズ、絞り、シャッター、回折格子、および/または偏光子を含む。標的サンプル(25)は液体、気体、または固体であってよく、一定の実施形態では、標的サンプルは、液体または沈殿した固体を使用するであろう。分光計(30)は、波長に基づいて、散乱光を空間的に分離する。本開示に有用な分光計の例は、Lambda SolutionsモデルPS−1である。検出器(31)は、分光計(30)によって空間的に分離された光の振幅を測定し、電気信号(アナログまたはデジタル)に変換する。一定の実施形態では、検出器は、標準化されたコンピュータインターフェース(RS−232、USB、パラレル、IEEE1394など)を使用して電気信号を生じるであろう。本開示に有用な検出器(30)の例は、Lambda Solutions PS−1である。パーソナルコンピュータ(40)は、検出器(31)への適切なインターフェースならびに分光計(30)から受信した後方散乱光(26)のスペクトルを分析、保存、および/または印刷するようにデザインされたソフトウェアを有する任意のデスクトップPCまたはラップトップPCであり得る。
【0162】
図3は、生物有機体および/または生物学的成分の検出のための本開示の実施形態の流れ図(30)である。この過程は、標的生体物質を含む液体サンプルの調製工程(31)から開始される。例えば、サンプルを、成長培地(ハーフフレーザーブロスまたは他の適切な細菌成長培地など)中での前培養によって調製することができる。あるいは、試験用の液体サンプルを任意の液体供給源から得ることができる。固体材料を、適切な溶液に浸漬し、潜在的な標的有機体または分子を溶液に入れ、次いで、液体中でサンプリングすることができる。次の工程(32)では、調製した液体サンプルを、固体表面に結合させた抗体と組み合わせる(または混合する)。例えば、プラスチック製のマイクロタイタープレート、ラテックスビーズ、または磁性微粒子を使用することができる。次いで、抗体/生体物質結合体を工程(33)でインキュベートして、生体物質および抗体を相互に結合させる。一旦これが起こると、組み合わせた抗体/生体物質をデカントし(注ぎ出し)、洗浄して非結合の生体物質および他の望ましくない材料を除去する。新規の反応物を工程(35)で添加して、ラマン光散乱による検出に対する混合物の感度を増強させる。かかる反応物の例を、表1に列挙する。
【0163】
結合した抗体/生体物質および新規の反応物を含む混合物を、工程(33)で反応を起こす時間インキュベートする。多くの場合、この時点で、過程(30)の反応部分は完全であり、工程(31)〜(35)(両端の工程を含む)によって産生されたラマン活性分子由来のラマン光散乱の測定工程(36)を行うことができる。さらなる反応物が必要である場合、工程(34)、(35)、および(33)を、適切なラマン活性分子が存在するまで、1回または複数回連続して反復することができる。
【0164】
ラマン光散乱の測定はスペクトルであり、次いで、このスペクトルを分析し、工程(37)で既知濃度の標的生体物質の較正反応の既知の組と比較することができる。この比較によって工程(38)に進み、ここで、結果を定量し、工程(31)で調製したサンプル中の標的生体物質の濃度の報告と関連づける。
【0165】
リステリアを、(酵素結合免疫吸着アッセイ)ELISA形式で測定することができる。100マイクロリットルの種々の濃度の細菌(100,000、50,000、25,000、12,500、6,250、および0コロニー形成単位(cfu)/ml)を、抗リステリア抗体でコーティングしたマイクロウェルに添加する。37℃で30分間と60分間との間のインキュベーション後、ウェルをデカントし、穏やかな洗浄液で3回洗浄する。100μlのペルオキシダーゼ抱合抗リステリア抗体をウェルに添加し、37℃で1〜4時間インキュベートする。ウェルをデカントし、穏やかな洗浄液で3回洗浄した。4−ヒドロキシルベンジルアルコール(80.6mM)、4−アミノアンチピレン(24mM)、過酸化水素尿素(10.6mM)の混合物を含む125mM MES緩衝液(pH 6.0)を添加し、30〜60分間発色させる。各ウェル由来の発色のラマンスペクトルに展開し、応答を定量する。
【0166】
図3の過程(30)の説明が生物有機体または生物学的成分の検出に関連しているにもかかわらず、過程(30)は、無機分子または有機分子、夾雑物、または毒素の検出にも適用可能である。
【0167】
図4は、化学成分のラマン活性化合物への変換のために酵素を使用する化学変換系(40)のブロック線図である。例えば、(41)、(42)、および(43)と命名した1つまたは複数の反応物を、生物学的触媒(44)と混合する。生物学的触媒(44)は、提供した反応物または1つまたは複数の反応物(41)、(42)、および(43)と相互作用するようにデザインされたRNA構造の代謝に特異的な酵素であり得る。反応物の変換または組み合わせが反応(45)で起こり、測定可能な生成物(46)が形成される。例えば、反応物および表4中の反応物を、ペルオキシダーゼ(44)および過酸化水素尿素(UP)(43)の存在下で混合する。
【0168】
ペルオキシダーゼアッセイで有用な反応物
【0169】
【表4】

共に混合する場合、これらの反応物から、ラマン分光法を使用して検出可能なイミノキノン化合物が得られるであろう。HBA、ASA、およびUPを使用した反応を、BASH−UPという。
【0170】
ラマン活性生成物を生成することができるさらなる反応物を、開示の方法で使用することができる(ベンゼンまたはナフタレン中の1位および4位に少なくとも1つのヒドロキシル基および1つのアミノ基を含む化合物など)。さらなる基(カルボキシル、アミン、塩素、臭素、ニトロ、および他の官能基など)を含めることにより、ラマンシグナルを増大させることができる。かかる化合物には、
【0171】
【化40】

(式中、Xは、H、NH、Cl、Br、ニトロ、およびベンジルから選択され、Yは、H、Cl、Br、およびニトロから選択され、Zは、H、ベンジル、およびNHから選択される)が含まれる。1つの実施形態では、XはNHであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XはClであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XはBrであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、Xはニトロであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XおよびZはHであり、YはClである。別の実施形態では、XおよびZはHであり、YはBrである。別の実施形態では、XおよびZはHであり、Yはニトロである。別の実施形態では、XおよびZはベンジルであり、YはHである。別の実施形態では、XおよびZはNHであり、YはHである。
【0172】
かかる化合物には、
【0173】
【化41】

(式中、Xは、H、OH、Cl、Br、およびニトロ(NO)から選択される)も含まれる。
【0174】
かかる化合物には、
【0175】
【化42】

(式中、Xは、H、Cl、Br、およびNOから選択される)も含まれる。
【0176】
開示の方法でラマン活性生成物を生成することができるさらなる化合物には、ベンゼン環またはナフタレン環中の1,2位または1,4位に少なくとも2つのヒドロキシル官能基を含む化合物が含まれる。
【0177】
かかる化合物には、
【0178】
【化43】

(式中、W、X、Y、およびZは、HおよびOHから選択される)が含まれる。1つの実施形態では、YはOHであり、X、Y、およびZはHである。別の実施形態では、WはOHであり、X、Y、およびZはHである。別の実施形態では、WおよびXはOHであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、WおよびYはOHであり、XおよびZはHである。別の実施形態では、WおよびZはOHであり、XおよびYはHである。
【0179】
かかる化合物には、ポリフェノール(
【0180】
【化44】

(式中、X、Y、およびZは、HおよびOHから選択される)など)が含まれる。1つの実施形態では、XはOHであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XおよびYはOHであり、ZはHである。別の実施形態では、XおよびZはOHであり、YはHである。別の実施形態では、ZはOHであり、XおよびYはHである。
【0181】
開示の方法でラマン活性生成物を生成することができるさらなる化合物には、ベンゼンまたはナフタレン中のヒドロキシメチレン(hydroxymethlene)(−CHOH)基を含む化合物が含まれる。1位、4位、および6位にさらなるヒドロキシル基を含めることにより、ラマンシグナルを増大させることができる。
【0182】
かかる化合物には、
【0183】
【化45】

(式中、XおよびYはHおよびOHから選択される)が含まれる。1つの実施形態では、XはOHであり、YはHである。別の実施形態では、XはHであり、YはOHである。
【0184】
かかる化合物には、
【0185】
【化46】

(式中、XおよびYはHおよびOHから選択される)も含まれる。1つの実施形態では、XはOHであり、YはHである。別の実施形態では、XはHであり、YはOHである。
【0186】
かかる化合物には、芳香族アミン(オルト−フェニレンジアミン、メタ−フェニレンジアミン、およびパラ−フェニレンアミンを含む化合物が含まれる)も含まれる。
【0187】
かかる化合物には、2,4−ジアミノベンジルアルコール、2−アミノ−1−ナフトール、および4−アミノアンチピレンも含まれる。
【0188】
【化47】

反応(45)の生成物を、反応を定量的または定性的に報告する分子として使用することができ、そのようなものとして、例えば、特異的な抗体または生物学的もしくは化学的結合パートナーと結合した場合の特異的な生物学的標的の存在についてのプローブとして使用することができる。
【0189】
リン酸基を含む反応物
一定の化合物は、空気への曝露の際にラマン活性生成物を自発的に形成することができる(「自動酸化」)。かかる化合物は、一定のアッセイ形式(ELISAなど)での使用に適していない。何故なら、かかる化合物は酵素によって活性化されることなくラマンシグナルを示すからである。本開示は、ラマンベースアッセイで使用可能なこれらの反応物の修飾バージョンを提供する。具体的には、自発的に酸化し得る本開示の化合物中に存在するヒドロキシル基をリン酸基で修飾して自発的酸化を防止することができる。そのようなものとして、これらの化合物により、本明細書中に開示の方法で使用することができる化合物型をさらに拡大される。さらに、本開示は、ホスファターゼ活性の検出に基づいたラマン分光法の使用方法を提供する。
【0190】
ラマン活性生成物を生成するさらなる反応物を、本明細書中に開示の方法で使用することができる(少なくとも1つのリン酸基を含む化合物など)。かかる化合物には、少なくとも1つのリン酸基を含む芳香族有機化合物(例えば、置換基として少なくとも1つのリン酸基を有するベンゼン環またはナフタレン環を含む化合物)が含まれる。さらなる置換基(カルボキシル、アミン、塩素、臭素、ニトロ、および/または他の官能基など)を含めることにより、ラマン活性生成物のラマンシグナルを増大させることができる。本開示のかかる化合物は、例えば、相互にオルト(1,2)および/またはパラ(1,4)である官能基を有することができる。
【0191】
ヒドロキシフェニルホスフェート
4−ヒドロキシフェニルホスフェートは、触媒的に脱リン酸化されて4−ヒドロキシフェノール(ヒドロキノン)を生成することが公知である。次いで、これは空気によって急速に酸化されてベンゾキノンを形成する。これが電気化学的免疫アッセイで使用されている(Jenkinsら,Anal.Biochem.,168,292,1988)。
【0192】
オルト(1,2)位および/またはパラ(1,4)位でヒドロキシル化される化合物は、空気中で急速に酸化されて対応するキノン化合物を生成することができる。カテコール(1,2−ジヒドロキシベンゼン)、ヒドロキノン(1,4−ジヒドロキシベンゼン)、およびピロガロール(1,2,3−トリヒドロキシベンゼン)などの化合物は、空気中で急速に酸化されて対応するキノンを形成することが認められており、このキノンは、塩基(強水酸化ナトリウム溶液)での処理によってラマン分光法を使用して定量される高いラマンシグナルを生じた。NaOH依存性シグナルは可逆性であった(反応物の酸性化の際に消滅し、NaOHの添加の際に再出現した)。
【0193】
本開示のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのリン酸基を含む芳香族有機化合物は、以下の構造:
【0194】
【化48】

(式中、Xは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、およびCOOHから選択され、Yは、H、OH、Cl、Br、NO、SOH、およびNHから選択され、WはOHまたはPOから選択され、Zは、H、OH、Cl、Br、SOH、PO、およびNHから選択される)を有する。1つの実施形態では、X、Y、およびZはHである。別の実施形態では、XはOHであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XはNOであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XはClであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XはBrであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XはCOOHであり、YはOHであり、ZはNHである。別の実施形態では、XはClであり、YはOHであり、ZはNHである。別の実施形態では、XはSOHであり、YはOHであり、ZはNHである。
【0195】
いかなる特定の理論にも拘束されないが、かかる化合物は、アルカリホスファターゼ(ALP)との反応によって触媒的に脱リン酸化され、次いで、酸化されてラマン活性キノン化合物を形成することができる。以下の反応によってこれを例示する:
【0196】
【化49】

オルト(1,2)位またはパラ(1,4)位で酸化されたかかる化合物(例えば、カテコール(1,2−ジヒドロキシ−ベンゼン)、ヒドロキノン(1,4−ジヒドロキシベンゼン)、およびピロガロール(1,2,3−トリヒドロキシベンゼン)が含まれる)が空気中で急速に酸化されて対応するキノンを形成することができる。
【0197】
本開示のいくつかの実施形態では、キノン生成物のラマンシグナルを、塩基(強水酸化ナトリウム(NaOH)溶液など)での処理の際に増強させる。このシグナルの増強は、酸の添加の際にラマンシグナルが減少し、塩基添加の際に増加する(ラマンシグナル増強の回復)ように、pH依存性(すなわち、NaOH依存性)であり得る。例えば、自動酸化およびNaOH添加の際のラマンシグナル増強は、カテコール、ピロガロール、および1,2,4−ベンゼントリオール(1,2,4−benezenetriol)について認められており、これらは以下の構造を有する:
【0198】
【化50】

アミノフェニルホスフェート
4−アミノフェニルホスフェートが触媒的に脱リン酸化されて4−アミノフェノールを生成し、これがアルカリ条件下で空気によって急速に酸化されて1,4−イミノキノンを形成することも公知である(Tangら,Anal.Chim.Acta,214,197,1988)。このイミノキノン化合物は、電気化学的免疫アッセイによるアルカリホスファターゼの高感度検出で使用されている(Thompsonら,Anal.Chim.Acta,271,223,1993)。
【0199】
4−アミノフェノール、4−アミノ−2−クロロフェノール、および2,4−ジアミノフェノールなどの化合物は空気中で急速に酸化されて対応するイミノキノン化合物を形成し、塩基(強水酸化ナトリウム溶液)での処理によってラマン分光法を使用して定量することができる高ラマンシグナルを生じることが認められた。4−アミノフェノール、4−アミノ−2−クロロフェノール、および2,4−ジアミノフェノール由来の水酸化ナトリウム処理したイミノキノンのラマンスペクトルは、上記の水酸化ナトリウム処理したベンゾキノンと類似する。
【0200】
本開示の他の実施形態では、少なくとも1つのリン酸基を含む芳香族有機化合物は、少なくとも1つのアミン基をさらに含み、以下の構造:
【0201】
【化51】

(式中、Xは、H、OH、Cl、Br、NO、SOH、PO、およびNHから選択され、Yは、H、OH、Cl、Br、NO、SOH、およびNHから選択され、Zは、H、OH、Cl、Br、SOH、PO、およびNHから選択される)を有する。1つの実施形態では、X、Y、およびZはHである。別の実施形態では、XはOHであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XはNOであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XはClであり、YおよびZはHである。別の実施形態では、XはBrであり、YおよびZはHである。
【0202】
いかなる特定の理論にも拘束されないが、かかる化合物は、アルカリホスファターゼ(ALP)との反応によって触媒的に脱リン酸化され、次いで酸化されて対応するラマン活性イミノキノン化合物を形成することができる。以下の反応によってこれを例示する:
【0203】
【化52】

塩基(例えば、強NaOH溶液)での処理の際、イミノキノンは、定量することができる増強されたラマンシグナルを生じることができる。
【0204】
ナフチルホスフェート
別のリン酸含有化合物(4−ヒドロキシナフチルホスフェート)は、触媒的に脱リン酸化されて1,4−ジヒドロキシナフタレンを生成することが公知である。次いで、これは空気によって急速に酸化されて1,4−ナフタキノンを形成する。これが検出感度の高い電流測定免疫アッセイで使用されている(Massonら,Anal.Chim.Acta,402,29−35,1999)。1位、2位、または両方の位置が官能基で置換されたナフチル化合物は、空気中で同様に急速に酸化されて対応するキノンを生成することができる。例えば、1,4−ジヒドロキシナフタレンは、空気中で急速に酸化されて1,4−ナフタキノンを形成することが認められたのに対して、1,3−ジヒドロキシナフタレンは自動酸化を示さなかった。さらに、1,4−ナフタキノンは、酸化剤を使用するか使用せずに高いラマンシグナルを生じることが見出された。強塩基(NaOHなど)の添加により、スペクトルパターンが変化することも見出された。
【0205】
本開示の他の実施形態では、少なくとも1つのリン酸基を含む芳香族有機化合物は、少なくとも1つのヒドロキシル基をさらに含み、以下の構造:
【0206】
【化53】

(式中、Xは、H、OH、Cl、Br、NO、SOH、PO、およびNHから選択され、Yは、H、OH、Cl、Br、NO、SOH、およびNHから選択される)を有する。1つの実施形態では、XおよびYはHである。別の実施形態では、XはOHであり、YはHである。別の実施形態では、XはNOであり、YはHである。別の実施形態では、XはClであり、YはHである。別の実施形態では、XはBrであり、YはHである。
【0207】
いかなる特定の理論にも拘束されないが、かかる化合物は、触媒的に脱リン酸化されて対応するジヒドロキシナフタレンを生成することができ、これが空気中でさらに酸化されてラマン活性ナフタキノンを形成することができる。反応を以下に例示する:
【0208】
【化54】

アミノナフチルホスフェート(aminonapthyl phosphate)
別のリン酸含有化合物(4−アミノナフチルホスフェート)は、触媒的に脱リン酸化されて4−アミノ−1−ナフトールを生成することが公知である。次いで、これは空気によって急速に酸化されて1,4−イミノナフタキノンを形成する。これが検出感度の高い電流測定免疫アッセイで使用されている(Massonら,Talanta,64,174−180,2004)。
【0209】
1,4−イミノナフタキノンは、酸化剤を使用するか使用せずに強いラマンシグナルを生じることが認められており、これを使用してラマン分光法によって標的生体物質を定量することができる。ラマンスペクトルパターンは、強塩基(NaOHなど)を添加して変化させることができる。
【0210】
本開示の他の実施形態では、少なくとも1つのリン酸基を含む芳香族有機化合物は、少なくとも1つのアミン基をさらに含み、以下の構造:
【0211】
【化55】

(式中、Xは、H、OH、Cl、Br、NO、SOH、およびPOおよびNHから選択され、Yは、H、OH、Cl、Br、NO、SOH、およびNHから選択される)を有する。1つの実施形態では、XおよびYはHである。別の実施形態では、XはOHであり、YはHである。別の実施形態では、XはNOであり、YはHである。別の実施形態では、XはClであり、YはHである。別の実施形態では、XはBrであり、YはHである。
【0212】
いかなる特定の理論にも拘束されないが、かかる化合物は、触媒的に脱リン酸化されて対応するアミノ−ナフトールを生成することができ、これがさらに酸化されてラマン活性イミノナフタキノンを形成することができる。反応を以下に例示する:
【0213】
【化56】

さらなるフェニルホスフェート
本開示の他の実施形態では、少なくとも1つのリン酸基を含む芳香族有機化合物は、以下の構造:
【0214】
【化57】

(式中、XおよびZは、H、OH、SOH、NH、POからそれぞれ選択され、YおよびWは、H、OH、SOH、およびNHからそれぞれ選択される)を有する。1つの実施形態では、X、Y、Z、およびWはHである。別の実施形態では、XはHであり、Y、Z、およびWはOHである。別の実施形態では、XおよびYはHであり、ZおよびWはOHである。
【0215】
適切なレーザー光周波数の選択
図5は、共鳴ラマン検出のために特定の標的分子を励起するための1つまたは複数のレーザー光周波数の選択技術(50)の流れ図である。ラマン活性生成物(51)(図4の反応(45)によって生成された生成物(46)など)は、ラマン活性な構造を保有する化学物質である。生成物(51)の吸収スペクトルを、工程(52)において吸光度または透過率分光光度法などの技術を使用して測定する。工程(53)では、生成物(51)が工程(52)で測定したスペクトルで認められた光を吸収する時点の1つまたは複数の波長を同定する。工程(54)では、次いで、工程(53)で同定した1つまたは複数の波長の1つに対応する波長で発光するレーザーを選択する。かかるレーザー波長は、可視領域、紫外線領域、または赤外領域に存在し得る。例えば、図3に記載のリステリア検出反応(30)のために、選択したレーザー波長は532nmである。
【0216】
最後に、工程(55)では、工程(54)で選択したレーザーを使用して、工程(51)で作製したラマン活性生成物を照射する。これにより、検出に適切なシグナルを得るための工程(51)で作製したラマン活性生成物の有意なラマン散乱が存在することが確認されるであろう。
【0217】
図6は、ラマン活性化合物が検出されるようにデザインしたマイクロ流体チャネル(60)の説明図である。標的生物有機体または生物学的成分を含む供給源の液体(または気体)サンプル(61)は、チャネル(62)を流れる。標的生物有機体または生物学的成分は、反応して活性表面(64)に結合した反応物に結合するであろう。レーザー(65)からの光(68)によりラマン散乱光(69)を生じ、これを光検出器(66)によって検出する。光検出器を、反応物と生物有機体または生物学的成分との結合体のラマンスペクトルに対応する1つまたは複数の特異的波長が測定されるようにデザインする。表面(64)への生物有機体または生物学的成分の結合の代わりに、反応物を表面から放出することができ、ラマン散乱レーザー(65)および検出器(66)を表面から下流に配置することができることも想定される。
【0218】
図7は、ラマン活性化合物が検出されるようにデザインされた一連のマイクロ流体チャネル(70)の説明図である。標的生物有機体または生物学的成分を含む1つまたは複数の供給源の液体(または気体)サンプル(71A)、(71B)〜(71N)がチャネル(72A)、(72B)〜(72N)を流れる。標的生物有機体または生物学的成分は、反応して活性表面(74A)、(74B)〜(74N)に結合した反応物に結合するであろう。レーザー(75A)〜(75N)からの光(78A)〜(78N)によりラマン散乱光(79A)〜(79N)を生じ、これを光検出器(76A)〜(76N)によって検出する。光検出器を、反応物と表面に結合した生物有機体または生物学的成分との結合体のラマンスペクトルに対応する1つまたは複数の特異的波長が測定されるようにデザインする。
【0219】
上限Nによって制限される一連のマイクロ流体チャネル中のマイクロ流体チャネル数は、2〜100,000の範囲である。異なる反応物およびレーザー波長の多様性を異なるチャネルで使用することができることも想定される。これにより、同一の生物有機体または生物学的成分からの散乱の複数の波長が検出可能であるか、複数の異なる生物有機体および生物学的成分の同時検出が可能であろう。最後に、一連のマイクロ流体チャネル(70)の代わりに、一連のマイクロ流体ウェルを使用して一連の二次元ラマン散乱検出器を作製することができることが想定される。
【0220】
本開示を、以下の実施例でより具体的に記載する。実施例は、実施例の多数の修正形態および変更形態が当業者に明らかであるので、例示のみを目的とする。当業者は、本明細書中に記載の方法で使用した装置のパラメーターを本開示にしたがって変更することができると認識するであろう。種々の実施形態をここに詳述する。当業者は以下を意図するであろう。説明中および以下の特許請求の範囲を通して使用する場合、「a」、「an」、および「the」の意味には、文脈上そうでないと明確に示されない限り、複数が含まれる。また、説明中および以下の特許請求の範囲を通して使用する場合、「in」の意味には、文脈上そうでないと明確に示されない限り、「in」および「on」が含まれる。本明細書中に引用され、本明細書中で考察された全ての引例は、その全体および各引例が個別に参考として援用されるのと同一の範囲で本明細書中で参考として援用される。
【実施例】
【0221】
実施例1:BASH−UPを使用したリステリアの検出
図8は、2成分BASH−UP化学、酵素結合抗体、および以下の緩衝液および試薬を使用した下記のラマン検出手順を使用した酵素結合免疫アッセイから得た病原性細菌リステリアについてのラマンスペクトルを示す。
【0222】
作業塩類緩衝液(プロトコールで洗浄のための使用):
10mM リン酸ナトリウム(pH6.0)
137mM 塩化ナトリウム
2.67mM 塩化カリウム
0.09mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)
0.05% Bronidox−L
最終化学試薬(BASH):
0.588mM 5−アミノサリチル酸
0.145mM 2−ヒドロキシベンジルアルコール
0.005mM L−アスコルビン酸
0.09% ツウィーン−20
UP成分:
1.063mM 過酸化尿素
作業塩類緩衝液
さらなる試薬:
1.微粒子−抗リステリア(抗体)コーティングした磁性微粒子(添加の際、200万微粒子/サンプル)。
2.抱合体溶液−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)を抱合した抗リステリア(抗体)(添加の際、2μg/サンプル)
加熱死リステリアまたはネガティブブロス(1ml)のいずれかのサンプルを、以下の手順に供した。1mlサンプルは、培養物、コントロール、スワブ、スポンジなどに由来し得ることに留意のこと。
【0223】
手順:
1.100μlの微粒子をサンプルに添加する。
2.室温で30分間インキュベートする。
3.磁石を使用して微粒子を10分間捕捉する。
4.サンプル体積を除去する。
5.500μlの作業塩類緩衝液を添加し、1000rpmで2分間混合する。
6.磁石を使用して微粒子を2分間捕捉する。
7.洗浄体積を除去する。
8.工程3〜7をさらに2回繰り返す(全部で3回の洗浄)。
9.200μl抱合体溶液を添加する。
10.溶液を30分間混合する。
11.洗浄工程3〜7を繰り返す(全部で3回の洗浄)。
12.200μl最終化学試薬を添加する。
13.1000rpmで混合しながら20分間インキュベートする。
14.40μlの0.5N NaOHを添加する。
15.1000rpmで2分間混合する。
16.磁石を使用して微粒子を2分間捕捉する。
17.一定体積をラマンシグナル検出用キュベットに移す。
【0224】
この手順では、最終化学試薬は2成分BASH−UP化学であった。ラマンシグナルは、一般に、約1時間以上安定であった。化学(BASH)中の第1の成分は、2−ヒドロキシベンジルアルコール(0.02mg/ml)、5−アミノサリチル酸(0.1mg/ml)、0.1%ツウィーン−20、およびアスコルビン酸(1μg/ml)を作業塩類緩衝液(pH6.0)中に含んでいた。第2の成分(UP)は、過酸化尿素添加物(1mg/ml)、作業塩類緩衝液(pH6.0)(EDTA(1mM)を含む)を含んでいた。これらの処方物は、直接照明を避けて1ヶ月超冷蔵した場合に活性を維持していた。UP:BASH=1:10の比での2成分の混合により、BASH−UPの作業溶液を作製した。これは一般に1作業日で安定であった。
【0225】
BASH−UPのアリコートを、加熱死リステリアまたはネガティブブロスのいずれかを含むサンプルに添加し、30分間反応させた。適切な期間は、必要とする検出感度に基づいて変化するであろう。40μlの0.5N NaOHを200μlのBASH−UP反応体積に添加して反応を停止させ、生成物をラマン検出可能にする。NaOHの体積および濃度の変更により、特定のアッセイに必要なより高いシグナル安定性を得ることができる。
【0226】
高倍率設定で操作した532nmレーザーを備えたラマンシステムR−3000ラマン分光計を使用して、240μlサンプル由来のラマン散乱を観察した。
【0227】
実施例2:西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)の比色アッセイ
西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)活性の比色アッセイを実施して、ラマンベースの方法と比較することができるデータを得た。TMBは、西洋ワサビペルオキシダーゼと反応した場合に濃青色の可溶性生成物を生じる。ABTSは、西洋ワサビペルオキシダーゼと反応した場合に青緑色生成物を生じる。
【0228】
比色アッセイを、以下の2つの異なる方法を使用したTMB反応およびABTS反応を使用して行った。
【0229】
方法A(TMB):0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)(pH7.4)を含むリン酸緩衝化生理食塩水中(PBS)で1000pg〜0.0125pg/50μlサンプルが測定されるようにHRPO希釈物を作製した。50μlのHRPOサンプル/希釈物を200μlのTMB試薬に添加し、15分間または30分間反応させ、この時点で、200μl停止溶液(KPL Laboratories)を添加した。各サンプルについて450nmにおける吸光度を測定した。
【0230】
方法B(ABTS):PBS(pH7.4)中で1000pg〜0.0125pg/50μlサンプルが可能なようにHRPO希釈物を作製した。50μlのHRPOサンプル/希釈物を200μlのABTS試薬に添加し、15分間または30分間反応させ、この時点で、200μl停止溶液(1%SDS水溶液)を添加した。各サンプルについて405nmにおける吸光度を測定した。
【0231】
TMBについてのHRPOの検出限度は8pg/mlであり、ダイナミックレンジは5〜5000pg/mlであった。ABTSについて、検出限度は32pg/mlであり、ダイナミックレンジは32〜5000pg/mlであった。
【0232】
実施例3:HRPOの蛍光発生アッセイおよび化学発光アッセイ
以下のいくつかの試薬を試験した:Sigmaの化学発光ペルオキシダーゼ基質、Pierceの蛍光発生(Chemifluorescent)基質キット、AnaSpec SensolyteのADHP蛍光発生基質、Invitrogen Molecular ProbesのAmplex Red蛍光発生基質、およびKPL LaboratoriesのLumiGLO。SigmaおよびPierceの基質は、HRPOを含むPBSやBSA含有緩衝液を使用して作用しなかった。
【0233】
A.AnaSpecの蛍光発生ADHPアッセイ
AnaSpecの蛍光発生キットは、溶液中のペルオキシダーゼを分析するためにADHP(10−アセチル−3,7−ジヒドロキシフェノキサジン)を使用する。これにより、ADHPがペルオキシダーゼおよび過酸化水素の存在下で酸化される。ADHPの酸化生成物(レゾルフィン(resozufin))は、桃色蛍光を生じ、これは、励起波長530〜560nmを使用して発光波長590nmで測定することができる。アッセイにおける過剰量のペルオキシダーゼにより、蛍光レゾルフィンが非蛍光レゾルフィン(resozurin)にさらに変換されて、蛍光シグナルが減少するであろう。1,000,000pg〜0.0625pg/50μlサンプルが検出されるように作製されたHRPO希釈物をPBS(pH7.4)で調製した。手順は、前述のTMBアッセイおよびABTSアッセイと同一であり、2つの方法を使用した。
【0234】
方法A:ADHP試薬および過酸化水素を、製造者の説明書にしたがって調製した。500μlのペルオキシダーゼ溶液を、1.5mlのプラスチック製のマイクロキュベット中の500μlADHP試薬に添加した。反応混合物を穏やかに混合し、光に曝露することなく室温で30分間インキュベートした。蛍光シグナルを、Ocean Optics蛍光分光計にて、550nmの励起を使用して590nmの発光について測定した。
【0235】
方法B:400μlの各ペルオキシダーゼおよびADHP試薬を使用したこと以外は、方法Aに類似の方法を使用した。
【0236】
AnaSpec ADHP蛍光アッセイの感度(検出下限)は、HRPOについて12.5pg/mlであることが見出された。アッセイ範囲は、HRPOの250pg/ml〜0pg/mlまで線形であった。
【0237】
B.Molecular Probes−Invitrogen Amplex Red蛍光発生アッセイ
Molecular Probes蛍光発生アッセイキットは、Amplex Red(10−アセチル−3,7−ジヒドロキシフェノキサジン)を使用し、このアッセイはAnaSpec ADHPアッセイに類似している。ペルオキシダーゼおよび過酸化水素を使用したアッセイの酸化最終生成物はレゾルフィンである。アッセイクレームは1×10−5U/mlであり、これは10pg/ml(1×10−5ml)と等価である。
【0238】
1,000,000pg〜0.0625pg/50μlサンプルが検出されるように作製したHRPO希釈物をPBS(pH7.4)で調製した。Amplex Red試薬および過酸化水素を、製造者の説明書にしたがって調製した。400μlのペルオキシダーゼ溶液を、1.5mlのプラスチック製のマイクロキュベット中の400μl ADHP試薬に添加した。反応混合物を穏やかに混合し、暗所にて室温で30分間インキュベートした。蛍光シグナルを、Ocean Optics蛍光分光計にて、550nmの励起を使用して590nmの発光について30分および35分で測定した。
【0239】
Molecular Probes Amplex Red蛍光アッセイの感度(検出下限)は、HRPOについて25pg/mlであることが見出された。アッセイ範囲は、HRPOについて直線で250pg/ml〜0pg/mlであった。
【0240】
C.LumiGLO(登録商標)
LumiGLOは、ペルオキシダーゼ標識レポーター分子との使用のためにデザインされたルミノールベースの化学発光基質である。過酸化水素の存在下で、HRPOは、ルミノールを励起中間体ジアニオンに変換する。このジアニオンは、その基底状態へ戻る際に発光する。HRPO抱合体との反応後、LumiGLOからの発光は5分以内に最大強度に到達し、およそ1〜2時間持続する。
【0241】
各実験におけるLumiGLOの感度(検出下限)は、HRPOについて11pg/mlであることが見出された。
【0242】
ラマンベースのアッセイ
種々の異なる組み合わせおよび量のラマン活性生成物を生成する試薬を、それぞれについての最適な反応条件を見出すために試験した。これらのアッセイのために、50μl HRPOサンプル/希釈物を、150μlの選択したラマン試薬(A〜E)および体積比9:1の尿素ペルオキシダーゼに添加し、サンプルを30分間反応させた。試薬A〜Eの処方物を、以下の表に示す。次いで、50μlの0.5N NaOHを各サンプルに添加し、30分間インキュベートした。PBS(pH7.4)で希釈したHRPOサンプルにおいてラマンベースのアッセイも行った。ラマンスペクトルを、Diagnostics Raman Systems INC QE 65000ラマン検出器を使用して記録した。スペクトル分析は、波長3260cm−1でのラマンシグナルの測定および3500cm−1と4000cm−1との間の1つおきの波数を使用したSQRに基づいた。
【0243】
実施例4:ラマン試薬A(BASH−UP)
この研究のために使用した処方物を表5に列挙する。
【0244】
【表5】

HRPOを、0.1% BSA(pH7.4)を含むPBSで希釈したラマン試薬A−1と反応させた。ラマンスペクトルを、0(「ブランク」)〜100pg/mlのHRPO希釈物について記録した。図9Aは、HRPO濃度に対するシングルピーク(3260cm−1)依存を示し、図9Bは、SQR分析への適用後のその結果を示す(3500〜4000cm−1)。表6は異なる実験由来のHRPOの検出限界を比較し、シングルピークに基づいた測定と比較したSQR法由来の感度の増大を示す。
【0245】
【表6】

HRPOをラマン試薬A−1、A−2、およびA−3中で反応させ、0(「ブランク」)〜5pg/mlのHRPO希釈物についてのラマンスペクトルを記録した。図10は、HRPO濃度に対するシングルピーク(3260cm−1)依存を示す。図11は、ラマン試薬A−1およびA−2(3500〜4000cm−1)のSQR分析を示す。
【0246】
HRPOを、ラマン試薬A−2および新鮮なHPROを含むBSA希釈物と反応させた。図12は、HRPO濃度に対するシングルピーク(3260cm−1)依存を示す。
【0247】
表7は異なるラマン試薬A処方物由来の検出限界を比較し、SQR法によって提供された感度の増大を示す。
【0248】
【表7】

実施例5:ラマン試薬B
本研究のために使用したラマン試薬処方物を、表8に列挙する。
【0249】
【表8】

HRPOを、ラマン試薬B−1、B−2、B−3、およびB−4中で反応させた。0(「ブランク」)〜1000pg/mlのHRPO希釈物についてのラマンスペクトルを記録した。図13は、HRPO濃度に対するシングルピーク(3260cm−1)依存を示す。図14は、HRPO濃度に対するシングルピーク依存を示し、新鮮なHRPOを含むBSA希釈物および処方物B−2を比較している。
【0250】
表9は、いくつかの異なるラマン試薬B処方物由来の検出限界を比較し、SQR法によって提供された感度の増大を示す。
【0251】
【表9】

実施例6:ラマン試薬C
本研究のために使用したラマン試薬処方物を、表10に列挙する。
【0252】
【表10】

HRPOをラマン試薬C−1中で反応させた。0(「ブランク」)〜1000pg/mlのHRPO希釈物のスペクトルを記録した。図15AはHRPO濃度に対するシングルピーク(3260cm−1)依存を示し、図15Bは対応するSQRスペクトルを示す。表11はシングルピークおよびSQR法の検出限界を比較し、SQR由来の感度の増大を示している。
【0253】
【表11】

実施例7:ラマン試薬D
本研究のために使用したラマン試薬処方物を、表12に列挙する。
【0254】
【表12】

HRPOをラマン試薬D−1中で反応させた。0(「ブランク」)〜1000pg/mlのHRPO希釈物のスペクトルを記録した。図16AはHRPO濃度に対するシングルピーク(3260cm−1)依存を示し、図16Bは対応するSQRスペクトルを示す。
【0255】
【表13】

HRPOをラマン試薬D−1中で反応させた。ラマン試薬処方物Dの検出限界は50pg/mlであった。
【0256】
実施例8:感度試験
異なるラマン試薬を使用したペルオキシダーゼの感度試験を、BSAを含むPBS(pH7.4)中で行った。本研究は、BSAを使用しないPBSにおける感度を評価することを意図していた。以下の試薬を本研究で使用した。
ラマン試薬A−1:500μg/ml ASA;20μg/ml HBA;20μg/ml AA
ラマン試薬B−3:250μg/ml ASA;25μg/ml CDMP
ラマン試薬C−1:400μg/ml ASA;150μg/ml NAP
1000pg〜0.0125pg/50μlサンプルが許容されるように作製したHRPO希釈物をPBS(pH7.4)で調製した。50μl HRPOサンプル/希釈物を150μl試薬に添加し、30分間反応させた。次いで、50μlの0.5N NaOHを添加した。30分間のインキュベーション後、ラマンスペクトルを、Sword Diagnostics Raman Systems INC QE 65000ラマン検出器を使用して記録した。SQRを使用してデータを分析した。各実験由来の結果を、表14〜18に示す。
【0257】
実施例9:ビオチン−ASA−UP、ASA−UP、および抗酸化剤の存在下でのASA−UP
これらの研究の目的は、ビオチン−ASA−UPおよびASA−UPを使用してペルオキシダーゼの感度を評価すること、およびASA−UPに及ぼす種々の抗酸化剤の影響を調査することであった。
【0258】
使用材料は、ビオチン(125μg/ml)、ASA(125μg/ml)を含むPBS−EDTA(pH6.0)、およびASA(125μg/ml)を含むPBS−EDTA(pH6.0)であった。図17中の結果は、ビオチン−ASA−UP結合体によって0.00625pgサンプルもの低濃度を検出することができる高感度アッセイが得られることを示す。HBAを使用しないASA−UPも2pgもの低濃度のHRPOの検出が可能である。
【0259】
ラマンベースのアッセイの比較の代表的な結果を、表14〜18に示す。ラマン試薬A(100〜250または500μg/mlのASAの増加)、試薬B、およびビオチン−ASAにより、試薬A−1および試薬C処方物と比較して超高感度のペルオキシダーゼアッセイが得られる。ラマンベースのアッセイは溶液中のペルオキシダーゼを高感度に検出し、図18にグラフで示している。
【0260】
興味深いことに、ASAのみで非常に良好な感度が得られる。この感度は、CDMP、ビオチンの添加によって増加し、NAPの添加によってさえも増加する。アスコルビン酸塩およびHBAを省略したA−1に基づく反応では、ペルオキシダーゼの検出限度は、500μg/mlのASAを使用し、ラマンシグナルを波数3,300cm−1およびSQRを使用して分析した場合、それぞれ3.9および4.4pg/mlであった。750μg/mlのASAを使用した場合、検出限度は、ラマンシグナルを波数3,300cm−1およびSQRを使用して分析した場合にそれぞれ2.3および1.9であった。
【0261】
新鮮なHRPO(調製後約3時間以内で使用されるHPRO)の使用によってより高い感度が得られ、より高い感度が必要である場合、2〜8℃で一晩の保存後でさえ、サンプルを使用すべきではない。以下の表(表14〜18)は、代表的な実験由来の先行例と比較した検出限界のまとめである。
【0262】
【表14】

【0263】
【表15−1】

【0264】
【表15−2】

【0265】
【表16】

【0266】
【表17−1】

【0267】
【表17−2】

Amplex Readペルオキシダーゼアッセイは25pg/50μlと250pg/50μlのサンプルとの間で比例し(ベンダーの主張による)、このアッセイは、1×10−5U/mlもの低さで検出することができることに留意のこと。本研究で使用したSigma HRPOの活性は、1080U/mg固体であった。これに基づいて、1×10−5U/mlのHRPOは10pg/mlに等価である(0.5pg/50μl)。
【0268】
表18は、ラマンベースの検出、ならびに吸光度、化学発光、および蛍光による検出の代表的な比較をまとめている。
【0269】
【表18】

ラマンベースの検出アッセイに及ぼす種々の抗酸化剤の影響を試験した。代表的実験における750μg/ml ASAを使用したペルオキシダーゼ反応に及ぼす抗酸化剤の影響を表19にまとめている。
【0270】
【表19】

実施例10:ラマンベースの検出を使用した免疫アッセイ
R&D Systems Inc.(D2050)、BD Biosciences(5506111)、BD Biosciences(557825)、R&D Systems Inc.(DRT200)、およびBioCheck Inc(BC−1105)から利用可能な免疫アッセイ形式に対してラマンベースの方法を使用した。アッセイプロトコールは、ラマン活性化合物を生成する基質をTMBの代わりに使用したことを除いて、製造者の説明書に従った。ラマン活性化合物を使用した実験を以下のように行った。
試薬A
1.5−アミノサリチル酸:250μg/mL
2.2−ヒドロキシベンジルアルコール:20μg/mL
3.アスコルビン酸:0.2μg/mL
上記の3つの試薬を、1mM EDTAを含む10mMリン酸緩衝化生理食塩水(pH6.0)(PBS−EDTA)に溶解し、滅菌0.45ミクロンニトロセルロース濾紙で濾過し、琥珀色のポリエチレンボトル中にて2〜8℃で保存した。
試薬B
1.過酸化尿素:360μg/mL過酸化水素を含む1000μg/mL
試薬を2mM EDTAを含む10mMリン酸緩衝化生理食塩水(pH6.0)(PBS−EDTA)に溶解し、滅菌0.45ミクロンニトロセルロース濾紙で濾過し、琥珀色のポリエチレンボトル中にて2〜8℃で保存した。
ラマン基質
ラマン基質を、使用前に試薬Aおよび試薬Bを9:1の体積比で混合することによって調製した。基質を、同一の調製で使用すべきである。
代表的実験由来の結果を表20にまとめている。
【0271】
【表20】

ヒトIL−2アッセイへのラマン活性生成物を生成する基質の導入により、アッセイ感度がおよそ5〜20倍に改善された。図19。図19で証明したIL−2用量反応曲線の左側へのシフトは、この感度の改善を例示している。
【0272】
実施例11:HRPOを使用したBASH−UP反応およびOPD反応の吸光度、蛍光、およびラマン検出
ペルオキシダーゼ基質としてo−フェニレンジアミンを使用した研究により、OPDがペルオキシダーゼ依存性のラマンシグナルを生じ、NaOHを添加する必要がなく、広範な波数にわたって検出することができることが明らかとなった。シグナルはNaOHの非存在下でより顕著であるが、NaOHまたはHSOのいずれかで反応を停止させた場合に異なる形態で存在する。
【0273】
o−フェニレンジアミン(OPD)およびBASH−UP基質溶液を使用したラマンペルオキシダーゼ反応の蛍光および吸収の特徴を評価するための研究を行った。OPD反応およびBASH−UP反応を、以下の手順にしたがって調製した。
【0274】
OPDプロトコール:
1.SIGMAFAST(商標)OPDの説明にしたがってOPD基質溶液を調製する。
2.4,000pg/mlのHRPOペルオキシダーゼ希釈物を緩衝液(PBS−BSA)で調製する。
3.OPD/ペルオキシド基質溶液を調製する(基質溶液を調製後1時間以内に使用すべきである)。
4.250μlの希釈ペルオキシダーゼサンプルを各反応管に添加する。
5.750μlのOPD/ペルオキシド基質を各管に添加する。
6.混合し、暗所にて室温で15分間インキュベートする。
【0275】
BASH−UPプロトコール:
1.BASH−UP基質溶液(BASH:UP=9:1、v/v)を調製する。
2.200μlの希釈ペルオキシダーゼ溶液を各反応管に添加する。
3.600μlのBASH−UP基質溶液を各管に添加する。
4.混合し、室温で30分間インキュベートする。
5.200μlの0.5N NaOH停止溶液を各反応管に添加する。
6.混合し、室温で30分間インキュベートする。
【0276】
BASH−UPまたはOPD−ペルオキシド試薬のいずれかを使用した反応を、以下のように0または2,000pg/mlペルオキシダーゼのいずれかを含むサンプル溶液に対して行った。
【0277】
OPD反応
1.250μlの2,000pg/mlペルオキシダーゼ+750μlのOPD−ペルオキシド基質溶液を混合する。
2.250μlの1X PBS−BSA 緩衝液+750μlのOPD−ペルオキシド基質溶液を混合する。
3.ペルオキシダーゼを添加し、暗所で反応を進行させる。
4.反応完了から30分後にスペクトルを読み取る。
【0278】
BASH反応
1.200μlのペルオキシダーゼ(濃度2,000pg/ml)+600μlのBASH−UP+200μlの0.5N NaOH
2.200μlの1×PBS−BSA緩衝液+600μlのBASH−UP+200μlの0.5N NaOH
3.ペルオキシダーゼおよびBASHを添加し、30分間反応させ、NaOHで反応停止させる。
4.反応停止から30分後にスペクトルを読み取る。
【0279】
吸光度。Digilab Hitachi U−2800分光光度計を使用してスキャンし、シングルビームモードを使用して0.750mlの各反応サンプルを用いてスペクトルを記録した。バックグラウンドサンプル(0pg/mlペルオキシダーゼ)をベースラインとして使用した。スペクトル(340〜650nm;スキャン速度1200nm/分;2nm間隔)を、図20Aおよび20Bに示す。BASH反応の吸収スペクトルは可視波長範囲に広く及び(500nmあたりを中心とする)、固有の吸収種に関連する明確なピークを欠く(図20A)。OPD反応の吸収スペクトルはより明確であり(図20B)、440nm付近に広いピークが存在する(黄色波長範囲)。
【0280】
蛍光。200nmスプリットを有し、Spectrasuiteソフトウェアを備えたOcean Optics USB2.0光ファイバーレンズを使用してスキャンした。514nmまたは532nmのいずれかの励起波長を使用して、スペクトルを生成した。発光スペクトルを、12秒の積分およびボックス幅30を使用して収集した。発光スペクトルを、図21A〜Dに示す。ネガティブ(0pg/mlペルオキシダーゼ)および反応性(2,000pg/mlペルオキシダーゼ)BASH反応の両方の蛍光発光スペクトルは類似しており(図21AおよびB)、低レベルの固有の蛍光を伴う。OPD反応の蛍光スペクトルは類似していた(図22A〜D)。
【0281】
ラマン。532nmレーザーを備えたSword Diagnostics Raman Systems INC QE 65000ラマン検出器でスペクトルを収集し、各反応のスペクトルを図30および31に示す。BASH反応により、巨大なラマンシグナルが得られた(図23A)。このBASH反応物は、巨大なペルオキシダーゼ含有サンプルに関連する特徴的な淡桃色を有していた。OPD反応により、巨大なラマンシグナルも得られ(図23B)、巨大なペルオキシダーゼ含有サンプルにも関連する特徴的な黄色も有していた。ラマンシグナルの増加に対応する蛍光シグナルの増加は認められなかった。実際、ペルオキシダーゼが存在する場合に認められる蛍光シグナルのわずかな低下は認められた。これらの所見は、514nmおよび532nmの発光波長で一貫していた。
【0282】
これらの結果は、巨大なペルオキシダーゼ依存性ラマンシグナルを生じるBASH反応およびOPD反応はいずれも巨大なペルオキシダーゼ依存性蛍光シグナルを示さなかったことを示す。したがって、蛍光は、BASH反応またはOPD反応におけるペルオキシダーゼ活性の結果として検出されたラマンシグナルを説明することができない。
【0283】
実施例12:OPD−ペルオキシダーゼ反応のラマン感度および酵素反応速度の測定
OPD−ペルオキシダーゼ反応に関連するラマンシグナルを評価し、特徴づけるための研究を行った。サンプル調製のために以下の手順を使用した。
【0284】
OPD反応:
1.SIGMAFAST(商標)OPDの説明書にしたがってOPD基質溶液を調製する。
2.3M HSO停止溶液を調製する。
3.4,000pg/mlのペルオキシダーゼ希釈物を緩衝液(PBS BSA)で調製する。
4.OPD/ペルオキシド基質溶液を調製する(基質溶液を調製後1時間以内に使用すべきである)。
5.50μlの希釈ペルオキシダーゼサンプルを各反応管に添加する。
6.150μlのOPD/ペルオキシド基質を各管に添加する。
7.混合し、暗所にて室温で30分間インキュベートする。
8.50μlの3M HSO停止溶液、50μlの0.5N NaOH、または50μlの1×PBS−BSA溶液を各反応管に添加する。
【0285】
以下の反応混合物を、5×60mmキュベット中で調製した。各混合物を調製し、次の反応物の調製の30分前に測定した。1時間毎に新鮮なOPD基質を調製した。使用した反応を表21に示す。
【0286】
【表21】

2分毎にラマンスペクトルを回収して各反応についての動力学的研究を行った。図24A〜Eは、およそ5〜6分間隔で収集したスペクトルを示す。
【0287】
SQR分析を、以下の波長範囲について収集したスペクトルに適用した: 2,000〜2,500cm−1;2,500〜3,000cm−1;3,000〜3,500cm−1;および3,500〜4,000cm−1。SQRスペクトル対OPD−ペルオキシダーゼ反応時間のラマン動力学的プロットを図25A〜Dに示す。これらの結果は、動力学的速度情報を単一管のOPD−ペルオキシダーゼ反応から収集することができる(単一の反応管由来の反応の行程の間の複数のラマンスペクトルの収集)ことを示す。
【0288】
反応30分後に得たSQR値を、SQRによって計算した推定反応速度と比較した。これにより、広範な波数にわたるこれらの値の間の良好な相関関係が明らかとなった。
【0289】
実施例13:ホスファターゼ基質のラマン検出
リン酸置換基を有する異なる芳香族有機化合物とのアルカリホスファターゼの反応から得た生成物のラマンシグナルを研究するための実験を行った。酸化剤としてのメタ過ヨウ素酸ナトリウムの添加および/または水酸化ナトリウムの添加の影響も研究した。以下の手順に従った。
(a)アルカリホスファターゼおよび酵素基質としてのリン酸含有芳香族化合物を含む混合物を調製する。
(b)混合物をインキュベートしてラマン活性生成物を形成する。
【0290】
(i)(任意選択的に)酸化剤としてのメタ過ヨウ素酸ナトリウムを添加する。
【0291】
(ii)(任意選択的に)水酸化ナトリウムを添加する。
(c)ラマン分光法を使用してラマン活性生成物を検出する。
【0292】
532nmレーザーを備えたSword Diagnostics Raman Systems INC QE 65000ラマン検出器を使用して、0〜4000cm−1の範囲のラマンスペクトルを収集した。試験した化合物は、ベンゾキノン、ピロガロール、1,4−ナフタキノン、および1,4−イミノナフタキノンであった。
【0293】
図26Aは、強NaOH溶液(0.5N)の添加の関数としてのベンゾキノンのラマンスペクトルを示し、このスペクトルはNaOHの添加によってラマンシグナルが増強される。この増強は、可逆的であることが見出され、酸の添加によってシグナルが減少し、NaOHの再添加によってシグナルが再度増加した。図26Bは、NaOH添加の関数としてのピロガロール(1,2,3−トリヒドロキシベンゼン)のラマンスペクトルを示す。ピロガロールは、オルト(1,2)位でヒドロキシル化された芳香族(フェニル)構造を例示している。
【0294】
メタ過ヨウ素酸ナトリウム添加の影響も研究した。図27Aは、NaOHおよび過ヨウ素酸塩の両方の関数としての1,4−ナフタキノンのラマンスペクトルを示す。図27Bは、同様に、1,4−イミノナフタキノンのラマンスペクトルを示す。これらのプロットは、かかる化合物が急速に自動酸化されてラマンシグナルを生じることを示す。1,4−ナフタキノン(図27A)は、NaOHの非存在下で過ヨウ素酸塩を使用するか使用しないで非常に高いシグナルを示す。NaOHの添加と共にスペクトルパターンが変化し、シグナルの減少が認められた。他方では、1,4−イミノナフタキノン(図27B)は、NaOHの存在下で過ヨウ素酸塩を使用することなくラマンシグナルの増強が認められた。この化合物は、NaOHの存在下での過ヨウ素酸塩の使用によってシグナルの減少が認められ、これはおそらくこの化合物中のイミノ官能基のさらなる酸化に起因する。1,4−イミノキノンのラマンシグナルを、NaOHを使用しないで得ることができなかった(図27B(dおよびe)。
【0295】
実施例14:例示的なホスファターゼベースのラマン免疫アッセイ試薬および手順
以下に、ホスファターゼベースの免疫アッセイで使用することができる例示的な試薬および手順を記載する。
ラマン基質
・4−アミノ−1−フェニル−1−ホスフェート
・4−ヒドロキシ−1−ナフチル−1−ホスフェート
・4−アミノ−1−ナフチル−1−ホスフェート
・ヒドロキノンジホスフェート
酵素
・仔ウシ腸由来のアルカリホスファターゼ(Sigma)
・ヤギ抗ヒトIgG(H+L)アルカリホスファターゼ抱合体(KPL)(タンパク質安定剤および防腐剤としてのアジ化ナトリウムを含む)
基質緩衝液
・0.2M TRIS(4−アミノ−2−ヒドロキシメチルプロパン−1,3−ジオール)(5mM MgCl(pH9.8)を含む)
・1M ジエタノールアミン(0.50mM MgClを含む)(pH9.8)
酵素保存緩衝液:10mM TRIS緩衝液、50mM KCl、1mM MgCl、0.1mM ZnCl、50%グリセロール(pH8.2)。
コーティング緩衝液:50mM炭酸ナトリウム−重炭酸緩衝液(pH9.4)
ブロッキング緩衝液:2%BSA(ウシ血清アルブミン)および0.05%ツウィーン20(pH8.0)を含む50mM TRIS緩衝液(pH8.0)
アッセイ緩衝液:50mM TRIS緩衝化生理食塩水(0.1%BSAおよび1mM MgClを含む)(pH9.0)
洗浄緩衝液:50mM TRIS緩衝化生理食塩水(0.05%ツウィーン20を含む)(pH8.0)
手順A:4−アミノフェニルホスフェートの免疫アッセイを、以下のように調製する。
1.アルカリホスファターゼ(0〜1000pg/ml)をアッセイ緩衝液で希釈する。
2.50μLの希釈アルカリホスファターゼを取る。
3.150μLの基質溶液(200μg/mL)を添加する。
4.室温で1時間インキュベートする。
5.50μLの0.5N NaOHを添加する。
6.室温で30分間インキュベートする。
7.ラマンスペクトルを記録する。
【0296】
手順B:ヒドロキノンジホスフェート、4−ヒドロキシナフチルホスフェート、および4−アミノナフチルホスフェートの免疫アッセイを、以下のように調製する。
1.アルカリホスファターゼ(0〜1000pg/ml)をアッセイ緩衝液で希釈する。
2.50μLの希釈アルカリホスファターゼを取る。
3.150μLの基質溶液(100〜200μg/mL)を添加する。
4.室温で1時間インキュベートする。
5.50μLの0.5mg/mlの新たに調製したメタ過ヨウ素酸ナトリウム溶液を水に添加する。
6.室温で30分間インキュベートする。
7.50μLの0.5N NaOHを添加する。
8.室温で30分間インキュベートする。
9.ラマンスペクトルを記録する。
【0297】
実施例15:マイクロタイタープレート免疫アッセイ
一般的抗原「A」のためのマイクロタイタープレート免疫アッセイの調製手順を、以下に記載する。
1.コーティング:一般的抗原Aに特異的な100μL/mL/ウェルの捕捉抗体を5〜10μg/mLの濃度で96ウェルELISAプレートに添加し、室温で2〜3時間インキュベートする。
2.ブロッキング:プレートを空にする。200μLのブロッキング緩衝液を添加し、室温で1時間インキュベートする。プレートを空にし、重ねた紙タオル上でプレートをブロットする。さらなる使用のためにプレートを4℃で保存するか、直ちに使用することができる。
3.洗浄:プレートを300μLの洗浄緩衝液/ウェルで5回洗浄する。最後の洗浄後に重ねた紙タオル上でプレートをブロットする。
4.サンプルの添加:ウェルあたり50〜100μLの抗原Aを含むサンプルを添加する(標準および試験すべきサンプル)。プレート震盪器上にて室温で1時間インキュベートする。サンプルを、プレートへの添加前にアッセイ緩衝液で新たに希釈すべきである。
5.洗浄:工程(3)を繰り返す。
6.酵素抱合二次抗体の添加:抗原Aに特異的なアルカリホスファターゼ抱合抗体をアッセイ緩衝液で約1μg/mLに希釈する。各ウェルに100μLを添加する。プレート震盪器上にて室温で1時間インキュベートする。
7.洗浄:工程(3)を繰り返し、各ウェルを7回洗浄する。
8.基質の添加:150μLの基質溶液を各ウェルに添加する。プレート震盪器上にて室温で30分間インキュベートする。
9.基質の酸化(任意選択的):50〜100μLの新たに調製したメタ過ヨウ素酸ナトリウム(0.5mg/ml水溶液)を添加する。プレート震盪器上にて室温で1時間インキュベートする。
10.ラマン活性トリガーまたはエンハンサーの添加(任意選択的):50μlの0.5N水酸化ナトリウムを各ウェルに添加する。プレート震盪器上にて室温で30分間インキュベートする。
11.ラマンスペクトルを記録する。
【0298】
実施例16:酸化剤でのアルカリホスファターゼ抱合体の比色検出
アルカリホスファターゼを、基質としてp−ニトロフェニルホスフェートを使用した比色分析によって分析した。
【0299】
材料
・アルカリホスファターゼ抱合体:
−アルカリホスファターゼ(KPL INC.,Gaithersburg,MD)に抱合したヤギ抗ヒトIgG(H&L)、精製抗体=0.10mg;酵素/抗体のモル比=1.7:1
−1mLの蒸留水に溶解する(100μg/mL)。
−50μLアリコートにて−20℃で凍結保存する。
・DEA緩衝液(0.5mM MgClを含む1.0Mジエタノールアミン(pH9.8))
・p−ニトロフェニルホスフェート(Sigma Chemical,St.Louis,MO)
試薬の調製
・DEA緩衝液で濃度0.001〜100ng/mLに調製したアルカリホスファターゼ抱合体希釈物。
・DEA緩衝液で調製したp−ニトロフェニルホスフェート溶液(1mg/ml)。
【0300】
比色アッセイ手順
1.50μLのアルカリホスファターゼ抱合体をプラスチック製のマイクロキュベットに添加する。
2.200μLのp−ニトロフェニルホスフェート溶液を添加する。
3.ボルテックスミキサーで混合する。
4.室温で30分間インキュベートする。
5.分光光度計で405nmの吸光度を読み取る。
【0301】
アルカリホスファターゼ抱合体に対する吸光度の線形従属性が低濃度で認められた(0〜10ng/mL)。検出限度は、およそ0.25ng/mLであった。
【0302】
実施例17:酸化剤を使用したアルカリホスファターゼ抱合体のラマン検出
アルカリホスファターゼを、酸化剤(メタ過ヨウ素酸ナトリウム)と共に基質として4−アミノフェニルホスフェートを使用したラマン分光法で分析した。
【0303】
材料
・アルカリホスファターゼ抱合体(実施例16を参照のこと)
・DEA緩衝液
・メタ過ヨウ素酸ナトリウム
・4−アミノフェニルホスフェートナトリウム塩(Alexis Biochemicals,San Diego,CA)
試薬の調製
・実施例15に従って調製したアルカリホスファターゼ抱合体希釈物
・水で調製したメタ過ヨウ素酸ナトリウム(5mg/ml)
・DEA緩衝液で調製した4−アミノフェニルホスフェート溶液(1mg/ml)
ラマンアッセイ手順
1.50μLアルカリホスファターゼ抱合体をガラス製キュベットに添加する。
2.200μLの4−アミノフェニルホスフェート溶液を添加する。
3.ボルテックスミキサーで混合する。
4.室温で30分間インキュベートする。
5.50μLのメタ過ヨウ素酸ナトリウム溶液を添加する。
6.ボルテックスミキサーで混合する。
7.室温で30分間インキュベートする。
8.ラマンスペクトル(0〜4000cm−1)を記録する。
【0304】
ラマンデータを表22に示す。
【0305】
【表22】

「ポジティブ」は、3300cm−1で記録されたその平均ラマンシグナルが3300cm−1で記録されたネガティブ平均シグナルを超えた(+2SD)サンプルをいう。CV=変動係数:SD=標準偏差;S/N=シグナル対ノイズ比。
【0306】
図28Aは、酸化剤を添加したアルカリホスファターゼ抱合体濃度の関数としての4−アミノフェニルホスフェートについて記録した3300cm−1でのラマンスペクトル値の対数プロットであり、図28Bは直線プロットを示す。
【0307】
図29Aは、酸化剤を添加した0〜1000ng/mLの範囲のアルカリホスファターゼ抱合体濃度の関数としての4−アミノフェニルホスフェートのラマンスペクトルを示し、図29Bは0〜10ng/mLの範囲のものを示す。検出限度はおよそ0.25ng/mLであった。
【0308】
実施例18:酸化剤を使用しないアルカリホスファターゼの比色検出
アルカリホスファターゼを、基質としてp−ニトロフェニルホスフェートを使用した比色分析によって分析した。
【0309】
材料
・アルカリホスファターゼ:
−仔ウシ腸(Sigma Chemical,St.Louis,MO)
濃度:10,000単位/mL
−保存緩衝液(10mM TRIS、50mM KCl、1mM MgCl、0.1mM ZnClを含む50%グリセロール(pH8.2))
−全2.0mL保存緩衝液中で保存した500単位/50μL
−−20℃で凍結保存した100μLアリコート
−各アリコートの濃度:250U/mL
・DEA緩衝液
・p−ニトロフェニルホスフェート
試薬の調製
・DEA緩衝液で濃度0.0025〜2,500mU/mLに調製したアルカリホスファターゼ希釈物
・DEA緩衝液で調製したp−ニトロフェニルホスフェート溶液(1mg/mL)
比色アッセイ
1.50μLのアルカリホスファターゼをプラスチック製のマイクロキュベットに添加する。
2.200μLのp−ニトロフェニルホスフェート溶液を添加する。
3.ボルテックスミキサーで混合する。
4.室温で30分間インキュベートする。
5.分光光度計で405nmの吸光度を読み取る。
【0310】
アルカリホスファターゼに対する吸光度の線形従属性が低濃度で認められた(0〜25mU/mL)。検出限度は、およそ0.10mU/mLであった。
【0311】
実施例19:酸化剤を使用しないアルカリホスファターゼのラマン検出
アルカリホスファターゼを、酸化剤を使用しないで基質として4−アミノフェニルホスフェートを使用したラマン分光法で分析した。
【0312】
材料
・アルカリホスファターゼ(実施例18を参照のこと)
・DEA緩衝液
・メタ過ヨウ素酸ナトリウム
・4−アミノフェニルホスフェートナトリウム塩(Alexis Biochemicals,San Diego,CA)
試薬の調製
・実施例18に従って調製したアルカリホスファターゼ希釈物
・DEA緩衝液で調製した4−アミノフェニルホスフェート溶液(2.0mg/mL)
ラマンアッセイ手順
1.50μLアルカリホスファターゼをガラス製キュベットに添加する。
2.150μLの4−アミノフェニルホスフェート溶液を添加する。
3.ボルテックスミキサーで混合する。
4.室温で30分間インキュベートする。
5.ラマンスペクトル(0〜4000cm−1)を記録する。
【0313】
ラマンデータを表23に示す。
【0314】
【表23】

「ポジティブ」は、3300cm−1で記録されたその平均ラマンシグナルが3300cm−1で記録されたネガティブ平均シグナルを超えた(+2SD)サンプルをいう。CV=変動係数:SD=標準偏差;S/N=シグナル対ノイズ比。
【0315】
図30Aは、アルカリホスファターゼ濃度の関数としての4−アミノフェニルホスフェートについて記録した3300cm−1でのラマンスペクトル値の対数プロットであり、図30Bは直線プロットを示す。図31Aは、0〜2500mU/mLの範囲のアルカリホスファターゼ濃度の関数としての4−アミノフェニルホスフェートのラマンスペクトルを示し、図31Bは0〜25mU/mLの範囲のものを示す。検出限度はおよそ1mU/mLであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の少なくとも1つの酵素の活性を検出するための方法であって、
a)該サンプル、および少なくとも1つの芳香族化合物を含む混合物を調製する工程であって、該芳香族化合物は、少なくとも1つのリン酸基を含む、工程、
b)該混合物をインキュベートして少なくとも1つのラマン活性生成物を形成する工程であって、
i)任意選択的に酸化剤を添加し、
ii)任意選択的に塩基を添加する、
工程、
c)ラマン分光法を使用して少なくとも1つのラマン活性生成物を検出する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの芳香族化合物が、
【化58】

(式中、
Xは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択され、
Yは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、およびCOOHから選択され、
Zは、H、OH、Cl、Br、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択される)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの芳香族化合物が、
【化59】

(式中、
Xは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択され、
Yは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、およびCOOHから選択され、
Zは、H、OH、Cl、Br、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択される)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの芳香族化合物が、
【化60】

(式中、
Xは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択され、
Yは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、およびCOOHから選択される)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの芳香族化合物が、
【化61】

(式中、
Xは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択され、
Yは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、およびCOOHから選択される)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの芳香族化合物が、
【化62】

(式中、X、Y、Z、およびWのぞれぞれは、HおよびOHからそれぞれ独立して選択される)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの酵素がホスファターゼを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ホスファターゼがアルカリホスファターゼである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アルカリホスファターゼが抗体に抱合している、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの芳香族化合物が4−アミノ−1−フェニル−1−ホスフェートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの芳香族化合物が4−ヒドロキシ−1−ナフチル−1−ホスフェートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの芳香族化合物が4−アミノ−1−ナフチル−1−ホスフェートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの芳香族化合物が、ヒドロキノンジホスフェートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記塩基が水酸化ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記酸化剤がメタ過ヨウ素酸ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ラマン分光法が共鳴ラマン分光法である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
サンプル中の少なくとも1つの標的を検出するための方法であって、
a)該少なくとも1つの標的を含む混合物を調製する工程、
b)該混合物を該少なくとも1つの標的に特異的な少なくとも1つのリガンドとインキュベートする工程であって、該少なくとも1つのリガンドがホスファターゼを含む、工程、
c)ホスフェートを含む少なくとも1つの芳香族化合物に該混合物を与える工程、
d)該混合物をインキュベートして少なくとも1つのラマン活性生成物を形成する工程であって、
i)任意選択的に酸化剤を添加し、
ii)任意選択的に塩基を添加する、
工程、および
e)ラマン分光法を使用して該少なくとも1つのラマン活性生成物を検出する工程を含む、方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの芳香族化合物が請求項2に記載の芳香族化合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの芳香族化合物が請求項3に記載の芳香族化合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの芳香族化合物が請求項4に記載の芳香族化合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの芳香族化合物が請求項5に記載の芳香族化合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの芳香族化合物が請求項6に記載の芳香族化合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記ラマン分光法が共鳴ラマン分光法である、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの標的が有機体である、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記有機体が、大腸菌、リステリア、サルモネラ、ビブリオ、Camphelbacter、ブドウ球菌、HIVウイルス、肝炎ウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、およびヒト乳頭腫ウイルスから選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記標的が、タンパク質、アミノ酸、核酸、ヌクレオチド、炭水化物、代謝産物、ホルモン、および代謝中間体から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記タンパク質が、IL−2、C反応性タンパク質、腫瘍壊死因子受容体II、およびヒト心筋トロポニンIから選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つのリガンドが抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1つの酵素活性を検出するためのキットであって、
a)ホスフェートを含む少なくとも1つの芳香族化合物、
b)任意選択的に酸化剤、
c)任意選択的に塩基、および
d)任意選択的に該少なくとも1つの酵素に適切なバッファ
を含む、キット。
【請求項30】
芳香族化合物であって、
【化63】

(式中、
Xは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択され、
Yは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、COOHから選択され、
Zは、H、OH、Cl、Br、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択される)を含む、
芳香族化合物。
【請求項31】
芳香族化合物であって、
【化64】

(式中、
Xは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、PO、およびCOOHから選択され、
Yは、H、OH、Cl、Br、NO、NH、SOH、およびCOOHから選択される)を含む、芳香族化合物。
【請求項32】
芳香族化合物であって、
【化65】

(式中、X、Y、Z、およびWのぞれぞれは、HおよびOHからそれぞれ独立して選択される)を含む、芳香族化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図21D】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図22D】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図24D】
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【図24E】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図25D】
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【図26A】
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【図26B】
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【図27A】
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【図27B】
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【図28A】
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【図28B】
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【図29A】
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【図29B】
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【図30A】
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【図30B】
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【図31A】
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【図31B】
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【公表番号】特表2012−517807(P2012−517807A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550153(P2011−550153)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/022809
【国際公開番号】WO2010/096260
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(511196869)ソード ダイアグノスティクス, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】