説明

ホログラフィックセンサの使用

【課題】サンプル中の検体の量を測定する方法、及び、その方法において使用されるデバイスの提供。
【解決手段】サンプル中の検体の量を測定する方法であって、a)ホログラフィックセンサ内、又は、ホログラフィックセンサ上の流路にサンプルを通過させる工程;ここで、検体はセンサと相互作用し、センサに保持され、且つ、検体の相互作用によってセンサの光学特性が変化する;及び、b)検体相互作用をモニターする工程;ここで、検体相互作用が生じた流路の距離又は検体相互作用が生じた流路の面積はサンプル中の検体量を示す;を含む方法。また、サンプル中の検体を検知する方法であって、a)ホログラフィックセンサ内、又は、ホログラフィックセンサ上の流路にサンプルを通過させる工程;ここで、検体はセンサと相互作用することによってセンサの光学特性が変化し、また、流路はあるシンボルの形状に象られている;及び、b)上記シンボルの出現、消滅、又は、表示上の変化を観察することで、検体を検知する工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル中の検体の量を測定する方法、及び、その方法において使用されるデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィックセンサは、例えば、特許文献1及び特許文献2により公知であり、様々な検体の検知に使用され得る。センサと検体とが相互作用した結果、センサの光学特性が変化するため、光学特性の変化として検体の有無が示される。定量的な結果を得るために、分光器を用いて光学特性の変化の程度が測定される。
【特許文献1】国際公開第95/26499号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/087899号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の第一の態様によれば、
サンプル中の検体の量を測定する方法は、
(a)ホログラフィックセンサ内、又は、ホログラフィックセンサ上の流路に上記サンプルを通過させる工程;ここで、上記検体は上記センサと相互作用し、上記センサに保持され、且つ、上記検体の相互作用によって上記センサの光学特性が変化する;及び、
(b)検体相互作用をモニターする工程;ここで、上記検体相互作用が生じた上記流路の距離又は上記検体相互作用が生じた上記流路の面積は上記サンプル中の検体量を示す;
を含む。
【0004】
本発明の第二の態様によれば、
本発明の第一の態様に係る方法で使用するデバイスは、検体が相互作用可能な領域を有するホログラフィックセンサ;上記センサは、上記検体を含有するサンプルが通過可能な集積流路を有する;
を含む。
【0005】
第三の態様によれば、
サンプル内の検体を検知する方法は、
(a)ホログラフィックセンサ内、又は、ホログラフィックセンサ上の流路に上記サンプルを通過させる工程;ここで、上記検体は上記センサと相互作用することによって上記センサの光学特性が変化し、また、上記流路はあるシンボルの形状に象られている;及び、
(b)上記シンボルの出現、消滅、又は、表示上の変化を観察することで、上記検体を検知する工程
を含む。
【0006】
本発明の方法では、流路を利用することにより、形状を定められた経路における所定の領域で、サンプルがセンサと確実に接触するようにしている。サンプルが流路を進むにつれて、サンプル中の検体がセンサの支持媒体と相互作用して、さらに結合するので、流体中に残存する検体量は減少する。支持媒体は、検体が相互作用する領域に関わる領域、通常は検体が相互作用する領域のセンサの光学特性を変化させて、検体との相互作用に応答する。
【0007】
サンプル中に当初存在していた実質的にすべての検体がセンサと相互作用するので、流路のある地点で、サンプルが実質的に検体を含まなくなる。この地点まで、検体との相互作用によりセンサの光学特性が変化することとなる。この地点以降は相互作用が生じないので、光学特性の変化は見られない。流路に沿ってセンサの光学特性をモニターすることで、この境界、すなわち、「反応フロント」を観察することができる。光学フィルタを用いて、観察されたセンサの応答を検知し易いように修正することができる。
【0008】
応答が見られた領域、すなわち、反応フロントの位置は、サンプル中の検体量によって決まる(すなわち、用いる流体の量、及び、流体中の検体の初期濃度の結果である)。従って、流路における反応フロントの位置によって、サンプル中の検体量が定量的に表示される。いずれの用途においても、検知対象である検体と相互作用するホログラフィックセンサが用いられ、反応フロントがセンサの適切なスケール上に確実にあるようにすることで最適な結果が得られるように、サンプル中の検体量が選択されている。
【0009】
本発明の方法には、分光器を用いずに定量計測が可能であるという利点がある。分光器は高価であり、運搬が不便であるので、適さない場合が多い。対照的に、本発明は特殊な検知装置を必要としない定量分析法を提供するので、例えば、家庭で使用されるキット等、幅広い用途での使用に適している。さらに、上記方法では迅速に結果が得られ、使い易い。
【0010】
発明の詳細な説明
本発明は、サンプル中の検体の有無を示すためのホログラフィックセンサの使用に関し、上記センサには流路が組み込まれているため、検体量を検知することができる。
【0011】
通常、本発明で使用するタイプのホログラフィックセンサは、支持媒体、及び、媒体の容積全体にわたって配置されたホログラムを有する。上記支持媒体は検体と相互作用し、結果として媒体の物性が変化する。この変化はホログラフィックセンサの分極率、反射率、屈折率、又は、吸光度等の光学特性に変化をもたらす。上記変化は、例えば色又は強度の変化等の光学特性の変化を引き起こし、この変化は、検体が相互作用する領域に関わる領域において観察され得る。通常、検体が相互作用する領域又はその周辺において、光学特性は変化する。
【0012】
支持マトリックスは、2種以上の検体と結合し、各検体との相互作用がセンサの光学特性に特有の変化をもたらすように構成されることが可能である。従って、光学応答は、サンプル中の検体の定量化だけでなく、同定にも利用可能である。
【0013】
物性を変化させることで光学特性を変化させる基本的な方法は多く存在する。変化する物性が支持媒体の体積、延いては、ホログラフィック素子のホログラフィック干渉縞の間隔であることが好ましい。支持マトリックスに特定の基を導入することにより、この変化が生じる(この支持マトリックスにおいて、検体との相互作用の中、上記基の、例えば、立体構造、電荷、又は、架橋度が変化し、支持媒体が拡張又は収縮する)。そのような基は、検体種に特有の共役結合体であることが好ましい。
【0014】
本発明において、少なくとも検体がサンプル上に存在する間は、検体がセンサにより保持されている。これは、支持媒体と検体との間の化学的又は物理的相互作用によって成し得る。相互作用が化学反応である場合、検体はマトリックス上の特定の基と反応し、それと結合する。一方、物理的相互作用であれば、検体がセンサ内、又は、センサ上に吸収、又は、吸着される。
【0015】
サンプル中の検体量の測定後、特定の試薬を用いたり、又は、センサをある物理的条件に暴露したりすることにより、センサ上に検体が保持された状態を元に戻してもよい。このように、検体除去処理を行った後、所望によりセンサを再利用することができる。
【0016】
支持媒体の組成を変更するだけで、ホログラフィックセンサを様々な検体の検知に用いることができる。本発明において、検体の例としては、水、グルコース、乳酸塩、金属イオン、酵素、抗体、アルコール、又は、アルデヒドが挙げられる。あるいは、RNA又はDNAが検体であってもよい。検体を含むサンプルは水溶液であってもよく、1種類以上の有機溶媒を含んでもよい。あるいは、サンプルは気体であってもよい。本発明は、灯油サンプル中の水分量、又は、血液等の生理流体中のグルコース量の測定に使用できる。
【0017】
上記支持媒体は、ポリマーマトリックスを含むことが好ましく、その組成は、高品質フィルム、すなわち、ホログラフィック干渉縞を形成可能な、均一なマトリックスを有するフィルムを得るために最適化されている必要がある。アクリルアミド系モノマーを含むモノマーを(共)重合して媒体を得ることが好ましい。
【0018】
ポリマーマトリックスは実質的に均一であることが好ましい。このことは、ポリマーマトリックス全体にわたって、架橋レベルが同一又は略同一であることを意味し、従って、ポリマーのどの領域においても、実質的に同じ特徴を示すこととなる。
【0019】
ホログラフィック支持媒体の他の例としては、ゼラチン、K−カラギーナン、寒天、アガロース、ポリビニルアルコール(PVA)、ゾル−ゲル(粗分類による)、ヒドロゲル(粗分類による)、及び、アクリレートが挙げられる。さらなる材料としては、多糖類、タンパク質及びタンパク性物質、オリゴヌクレオチド、RNA、DNA、セルロース、酢酸セルロース、ポリアミド、ポリイミド、並びに、ポリアクリルアミドが挙げられる。ゼラチンは、ハロゲン化銀粒子等の感光性種を担持する標準的なマトリックス材料である。ゼラチンは、ゲル鎖上のカルボキシル基間をクロム(III)イオンによって光架橋することも可能な材料である。
【0020】
センサの検体との相互作用(応答と称する)に起因する光学特性の変化は、ホログラムの色や像における、好ましくは、電磁スペクトルの可視領域における、明白で、曖昧性のない変化であることが望ましい。これにより、裸眼で観察可能な、正確且つ信頼性のある測定情報が得られる。このことを確実に実現しやすいように、センサは光学フィルタを有することが好ましい。検体の相互作用をモニターするための観察対象である、センサの表面の一部又は全体が、光学フィルタによって覆われていることが望ましい。フィルタは、ローパスフィルタ(ある波長以下の放射線が透過可能)、ハイパスフィルタ(ある波長以上の放射線が透過可能)、又は、バンドパスフィルタ(ある一つの帯域内の波長の放射線、又は、マルチバンドフィルタの場合、ある複数の帯域内の波長の放射線が透過可能)であってよい。従って、そのようなフィルタを用いることで、センサに到達する光の周波数を制御することができる。センサのホログラムは帯域反射器のように機能するので、ホログラムの反射波長はフィルタを透過した光の波長の領域にあり、センサから観察者又は検知器に対して透過され返されるはずである。
【0021】
高波長、低波長、又は、その両方の波長の光に対し、遮断の境界点を有するようにフィルタが選択されているので、いずれの応答も、例えば可視領域内等、確実に特定の領域内にある。フィルタを用いると、異なる波長で起きる異なる応答(例えば、検体の異なり、又は、検体濃度の異なり)を区別することができる。また、フィルタを用いると、センサを最適でない光条件下(例えば、単色光)で使用したとき、応答が曖昧になることを防止することができる。特定の検体に対して観察される応答を最適化するように、光学フィルタを特別に設計することができる。
【0022】
本発明のセンサにおけるホログラムは、光の回折によって生成される。ホログラムは、拡大下でのみ視認できてもよく、白色光、UV光若しくは赤外線下で、又は、特定の温度、磁力若しくは圧力条件下で視認することができてもよい。ホログラフィック画像は物体像であるか、又は、2次元若しくは3次元効果を奏するものであることが好ましい。センサは、レーザー光を照射されたときに干渉効果を生み出す手段を更に備えていてもよく、上記手段は偏光解消層を有することが好ましい。
【0023】
上記センサは、例えば、特許文献1、国際公開第99/63408号パンフレット、又は国際公開第03/087789号パンフレットに開示されている方法で作成することができる。これらの記載内容を本願に引用して援用する。
【0024】
本発明のセンサは、集積流路を含む。本発明に係るセンサは2つ以上の流路を有していてもよく、多くの流路を備えることができる。流路は、いずれも、センサ上、センサ内、又は、センサを介して構成される、形状を定められた経路であり、その経路に沿ってサンプルが通過できる。
【0025】
流路は、ホログラム自体の物理的特徴によって形状を定められていてもよい。これは、センサの機材に溝を形成したり、多孔性センサ又は穿孔されたセンサを用いたりすることで成し得る。センサが多孔性である場合、又は、穿孔されている場合、各流路は穿孔、若しくは、細孔、又は、一連の連結した細孔によって構成されており、流路がセンサを介してその片側からもう一方まで走行していてもよい。
【0026】
あるいは、異なる実施形態において、流路は、マイクロ流体チップ、成形したプラスチックチャンバー、又は、多孔質材等の、センサと接触した外部流体デバイスによって構成されてもよい。多孔質材は、ビード、フレーク、又は、繊維で構成され、ホログラフィックセンサを含んでいてもよく、又は、ホログラフィックセンサと接触していてもよい。
【0027】
いずれの実施形態においても、流路は任意の大きさの線状の溝であってもよいが、0.1から50mmの間の寸法であることが多く、例えば、10×0.5×20mm等、幅1から20mm、高さ0.1から1mm、長さ10から50mmであることが好ましい。流路がマイクロ流体である場合、例えば、幅1から20μm、高さ0.1から1μm、長さ10から50μm等、マイクロメーターオーダーの寸法となる。
【0028】
一実施形態において、流路の寸法は、サンプルが毛管現象によって通過できる寸法である。好適な寸法は検査するサンプルによって異なるが、例えば約0.5mm等、0.1から5mmのオーダーが典型的である。この場合、センサは、使用時には流路の入口がサンプルに浸漬され、サンプルが毛管現象により流路へ侵入、上昇していくように構成されることとなる。これは通称「ディップスティック(dipstick)」法として知られており、手で持って操作できるので、非常に使い易く、流路内のサンプルの流れを制御するための特別な装置を必要としないので、家庭で使用できる。このような「ディップスティック」デバイスの有益な用途の例としては、飲料のアルコール度数、又は、血液等の生理流体中のグルコース等の検体濃度を検査するためにセンサを使用することが挙げられる。
【0029】
流路は、得られた結果を表示する特定の形状であることが好ましい。具体的には、流路はあるシンボルの形状に象られたものであることが望ましい。シンボルは、文字、番号、又は、チェックマーク若しくは十字形等の陽性又は陰性を表すシンボル等、任意の二次元の模様であってよい。このような流路は、サンプル中の検体を検知する方法に有利に用いることができる、又は、サンプル中の検体量を測定する方法に用いることができる。
【0030】
本発明の第三の態様によれば、上記方法はサンプル中の検体の検知に使用される。この場合、検体がセンサと相互作用してセンサの光学特性が変化すれば、検体がサンプルに保持されている必要はない。検体がサンプル中に存在する場合、流路の領域においてセンサの光学特性が変化することとなる。従って、検体の有無はシンボルの出現、消滅、又は、表示上の変化として観察される。この例としては、妊娠検査が挙げられ、結果が陽性であれば、チェックマークが示される。
【0031】
本発明の第一実施形態において、上記シンボルは、例えば1から5等の英数字の文字列であってもよく、観察された検体相互作用のレベルを表す最大数によって検体量を求めることができる。
【0032】
測定情報が視覚的に使用者にわかりやすいので、この実施形態は非常に有益である。
【0033】
サンプルが流路を通過するので、検体がセンサと相互作用することができる。サンプルが浅い又は狭い流路をゆっくりと通過する場合には、サンプルが深く広い流路を速く通過する場合よりも、サンプル中の検体がセンサの特定の相互作用領域と相互作用する可能性が高くなるというように、検体の相互作用のレベルは流路を通過するサンプルの流れ特性によって異なる。従って、サンプルの流れ特性を制御することによって、上記方法の感度を較正、又は、調整することができる。
【0034】
上述したように、流路は、毛管現象によりサンプルが通過するようなものであってもよい。あるいは、重力の作用により、サンプルが流路を通過するように、センサを構成してもよい。一実施形態においては、ポンプの使用により、強制的にサンプルを流路に沿わせる。
【0035】
検体相互作用は、流路を通過するサンプルの流速の関数としてモニターされるので、センサの感度の変更手段が用意される。本実施形態においては、検体量が既知で流速が異なるサンプルを用いて、センサを検査する。このように、センサは流速に基づいて較正されるので、検体相互作用が生じた流路の相対的距離又は検体相互作用が生じた流路の面積が、サンプルの流速の関数として、サンプル中の検体量を示す。
【0036】
検体相互作用は、検体との相互作用の結果として変化する、センサの光学特性を観察することによりモニターされる。これは、肉眼で行われてもよく、検知用デバイスを用いて行われてもよい。上記デバイスは、光学データを記憶、送信、又は、処理するために用いられてもよい。
【0037】
上記デバイスは、光学式リーダー、携帯電話、コンピュータ、及び、デジタルカメラの中から選択されるのが好ましい。ラップトップ、デスクトップ、自己管理デバイスである携帯情報端末(PDA)等の携帯用デバイス等のコンピューターがいずれも使用可能であると想定できる。光学変化は、画像解析ソフトウェアにより定量化されてもよい。
【0038】
本発明に係るデバイスを有する物品は、様々な分野において使用可能であり、特にセキュリティ及びメディアに関する分野において有益である。そのような物品の例としては、トランザクション・カード、銀行券、パスポート、身分証明証、スマートカード、運転免許証、株券、債務証書、小切手、チェックカード(cheque card)、タックス・バンダロール(tax banderole)、商品券、郵便切手、鉄道チケット、航空チケット、テレホンカード、福引券、イベントチケット、クレジットカード、デビットカード、業務用名刺、又は、正規品と偽造品とを区別したり、盗品を識別したりする目的で消費者保護、ブランド保護若しくは製品保護において使用される商品が挙げられる。
【0039】
あるいは、上記物品はインテリジェントパッケージ(Intelligent packaging)であってもよい。「インテリジェントパッケージ」とは、容器、包装紙若しくは筐体の一部又はそれらの付属物が、製品の情報若しくは品質、又は、環境条件(製品の品質、シェルフライフ若しくは安全性に影響を及ぼす)を監視、表示又は検査するシステムを指し、典型的な実用例としては、経時的な温度、鮮度、水分量、アルコール度数、ガス量、物理的損傷度などを示すインジケーターなどが挙げられる。
【0040】
本発明は、宝石、衣服(履物を含む)、布地、家具、玩具、進物、家庭用品(陶磁器類、ガラス製品を含む)、建造物(ガラス、タイル、塗料、金属、レンガ、セラミック、木材、プラスチック、他の内装及び外装を含む)、美術品(絵画、彫刻、陶器、ライト・インスタレーションを含む)、文具(グリーティングカード、レターヘッド、販促品を含む)及びスポーツ用品から選択される、装飾的要素を有する工業品又は手工芸品である物品に用いてもよく、農学研究、環境学研究、医学若しくは獣医学における予後診断、治療的診断、診断学、治療、化学分析、又は、石油化学分析で使用される製品又はデバイス、特に、テストストリップ、チップ、カートリッジ、綿球、チューブ、ピペット、コンタクトレンズ、結膜下インプラント、皮下インプラント、ブレサライザー、カテーテル、又は、流体サンプリング装置若しくは分析装置である物品に用いてもよい。本発明のデバイスは、転写可能なホログラフィックフィルム上に備えられていてもよい。フィルムはホットスタンプテープ上にあるのが好ましい。デバイスをフィルムから物品上に転写することによって、物品の安全性が向上する。
【0041】
本発明はまた、本発明のデバイスを有し、上記デバイスからデータを生成することができる製品、並びに、そのような製品から生成したデータを、データ保存、データ制御、データ送信、データ報告及び/又はデータモデリングに使用するシステムに関する。
【0042】
以下の実施例により、本発明を説明する。
【0043】
実施例1から3のセンサのためのホログラフィックフィルムの作成
632nmのHeNeの平行ビームにホログラフィックフィルムを暴露した。水酸化ナトリウム(20g)、無水炭酸ナトリウム(NaCO)(60g)、4−(メチルアミノ)フェノール硫酸塩(メトール)(4g)、及び、アスコルビン酸(30g)を総体積が1Lになるように脱イオン水に溶解した現像液で、暴露されたプレートを、2分間、20℃で現像した。
【0044】
現像された銀添プレートを、脱イオン水で軽く洗い流し、脱イオン水で1Lになるように調整した、硫酸水素ナトリウム(3g)、EDTA鉄(III)、ナトリウム塩二水和物(30g)、及び、臭化カリウム(60g)を含む漂白液に浸した。
【0045】
実施例1
本実施例では、ヘキサンに溶解した水分の検知法について説明する。乾燥状態を重要視する、幅広い産業分野において、有機溶媒中の水分量を測定することは重要である。
【0046】
モレキュラーシーブで乾燥させた200mLのヘキサンを周囲湿度と平衡化させ、カール・フィッシャー滴定法で測定すると、その水分量が徐々に増加した。
【0047】
ホログラフィックフィルムを内部に含み、ホログラフィックフィルムが流路の片側幅5mm、深さ75μmを形成する、機械加工された流路を有し、且つ、十字形が形成できるように構成されたセンサデバイスに、上記増加における、10、20、及び、30ppmといった様々な段階で、5mLのヘキサンサンプルを通した。
【0048】
図1に、ヘキサン中の水分の増加レベルに対するセンサ・アセンブリの応答を示す。30ppmで十字形が強く観察された。この場合、応答は十字形であるが、この方法では任意の英数字をシステム中で使用することができる。
【0049】
実施例2
本実施例では、灯油中の全水分量を検知する。燃料供給における水分の混入が重要な問題である石油化学工業において、この分析は非常に重要である。
【0050】
200mLの灯油を周囲湿度と平衡化させた。異なる量の水をこれに加え、混合物を強く振とうし、水分を含む乳濁液を調製して、その水分量をカール・フィッシャー滴定法で測定した。
【0051】
平坦な側面がホログラフィックセンサで構成され、半球状の流路を有するデバイスに、乳濁液中の水分の様々なレベルにおいて、図2に示す本実施例では0、30、及び、120ppmの各レベルにおいて、20mLのサンプルを流した。流路は、半径0.4から0.6mm、長さ50mmであった。
【0052】
応答が見られた流路の距離が、サンプル中に存在する検体の量を半定量的に示すように流路を構成した。この検知方法は、検知器が検体を隔離するので、検体の濃度が高いほど、流路内をより遠くまで移動するという考えに基づいている。
【0053】
実施例3
本実施例では、灯油中の乳化水を検知した。本実施例では、流れ方向に対して垂直に保持されたセンサプレートに流れを向けるための流路を用いて、英数字を表示することができる。
【0054】
200mLの灯油を周囲湿度と平衡化させた。異なる量の水をこれに加え、混合物を剪断混合し、水分を含む乳濁液を調製し、その水分量をカール・フィッシャー滴定法で測定した。
【0055】
円形環を、流れ方向に垂直なホログラフィックプレートとの間隔が0.1mmになるように、プレートのごく近傍に配置した(図3参照)。乳濁液100ppmを流路に流すと、ホログラフィックセンサフィルムにO型の応答が観察された。
【0056】
本発明はまた、応答が観察される領域の空間を象るのに、所望の形状に整えた環を使用できるという概念も包含する。本実施例において、ホログラフィックセンサに対する流路の幾何学的構造により特定の空間領域に検体が集中するので、円形環を使用するとOが表示される。上記環の形状を用い、多数のシンボルを表示することができる。
【0057】
以下、実施例AからEに、採用し得る流路を説明する。
【0058】
実施例A
成型したプラスチック筐体がなす3側面とセンサの表面がなす第4の側面とからなる正方断面の流路と物理的に密接して配置されたセンサホログラムを有するデバイスである。流路は0.5×10×20mmの線状の溝である。検体が移動する距離である「反応フロント」により、検体種の定量化が可能である。
【0059】
実施例B
マイクロ流体チップと物理的に密接して配置されたセンサホログラムを有するデバイスである。マイクロ流体チップと、センサホログラムの表面の両方で流路が形成される。マイクロ流体チップはガラスからなり、互いに並行する流路を有する。流体流路の寸法は、マイクロメーターオーダーであり、幅100μm、高さ50μm、長さ50μmである。検体が移動する距離である「反応フロント」により、検体種の定量化が可能である。
【0060】
実施例C
本実施例では、毛管現象により流路に流体が満たされる。体積が約1cmの成型したプラスチックチャンバーにより、流路が形成される。チャンバーはセンサの表面に装着されており、流体サンプルに浸漬される。毛管現象によって、チャンバーの直径約5mmの開口からチャンバーに流体が進入していく。検体が移動する距離である「反応フロント」により、検体種の定量化が可能である。
【0061】
実施例D
ホログラムセンサ自体を穿孔することによって流路が形成されているので、センサを通って流れが生じる。本実施例において、穿孔は、ホログラフィックセンサフィルムを貫通する直径50μmの球状の穴である。ホログラフィックセンサの構成材料であり、フィルタとして機能するフィルムを検体を含有するサンプルが通過する。検体で覆われた面積である「反応フロント」により、検体種の定量化が可能である。
【0062】
実施例E
本実施例では、ホログラフィックセンサが多孔質材中に、又は、多孔質材と接触して存在しているので、流路は一連の相互に連結した孔によって形成される。このような実施形態では、センサの表面と接触した多孔性流路を形成する役割を果たす、平均孔径が約10μmの繊維性素材で、センサホログラムがコーティングされている。本実施形態において、繊維性素材は、毛管現象により、検体を含む流体をセンサ表面に送る役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1A】図1Aから1Eは、実施例1に関する。図1Aから1Dそれぞれに、ヘキサン中の水分A:0ppm、B:10ppm、C:20ppm、D:30ppmの検知を示す。図1Eは、応答の対象となる場所である十字領域の形状を象るために使用した、マイクロ機械加工した流路の写真である。
【図1B】図1Aから1Eは、実施例1に関する。図1Aから1Dそれぞれに、ヘキサン中の水分A:0ppm、B:10ppm、C:20ppm、D:30ppmの検知を示す。図1Eは、応答の対象となる場所である十字領域の形状を象るために使用した、マイクロ機械加工した流路の写真である。
【図1C】図1Aから1Eは、実施例1に関する。図1Aから1Dそれぞれに、ヘキサン中の水分A:0ppm、B:10ppm、C:20ppm、D:30ppmの検知を示す。図1Eは、応答の対象となる場所である十字領域の形状を象るために使用した、マイクロ機械加工した流路の写真である。
【図1D】図1Aから1Eは、実施例1に関する。図1Aから1Dそれぞれに、ヘキサン中の水分A:0ppm、B:10ppm、C:20ppm、D:30ppmの検知を示す。図1Eは、応答の対象となる場所である十字領域の形状を象るために使用した、マイクロ機械加工した流路の写真である。
【図1E】図1Aから1Eは、実施例1に関する。図1Aから1Dそれぞれに、ヘキサン中の水分A:0ppm、B:10ppm、C:20ppm、D:30ppmの検知を示す。図1Eは、応答の対象となる場所である十字領域の形状を象るために使用した、マイクロ機械加工した流路の写真である。
【図2A−C】図2Aから2Fは、実施例2に関する。図2A、2B及び2Cに、灯油中の水分の定量化(流路中の移動距離を利用して濃度を測定することによる)を示す。灯油に添加された水分量はそれぞれ、A:0ppm、B:30ppm、C:120ppmである。図2Dから2Fに、用いたシステムの図を示す。
【図2D】図2Aから2Fは、実施例2に関する。図2A、2B及び2Cに、灯油中の水分の定量化(流路中の移動距離を利用して濃度を測定することによる)を示す。灯油に添加された水分量はそれぞれ、A:0ppm、B:30ppm、C:120ppmである。図2Dから2Fに、用いたシステムの図を示す。
【図2E】図2Aから2Fは、実施例2に関する。図2A、2B及び2Cに、灯油中の水分の定量化(流路中の移動距離を利用して濃度を測定することによる)を示す。灯油に添加された水分量はそれぞれ、A:0ppm、B:30ppm、C:120ppmである。図2Dから2Fに、用いたシステムの図を示す。
【図2F】図2Aから2Fは、実施例2に関する。図2A、2B及び2Cに、灯油中の水分の定量化(流路中の移動距離を利用して濃度を測定することによる)を示す。灯油に添加された水分量はそれぞれ、A:0ppm、B:30ppm、C:120ppmである。図2Dから2Fに、用いたシステムの図を示す。
【図3A】図3Aから3Cは、実施例3に関する。図3Aに、灯油中で100ppmの水に暴露させたホログラフィックフィルムの応答(1mmの環状のフローヘッドを用いてシンボルOを表示することによる)の写真を示す。図3B及び3Cに、用いたシステムの図を示す。
【図3B−C】図3Aから3Cは、実施例3に関する。図3Aに、灯油中で100ppmの水に暴露させたホログラフィックフィルムの応答(1mmの環状のフローヘッドを用いてシンボルOを表示することによる)の写真を示す。図3B及び3Cに、用いたシステムの図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の検体の量を測定する方法であって、
a)ホログラフィックセンサ内、又は、ホログラフィックセンサ上の流路に前記サンプルを通過させる工程;ここで、前記検体は前記センサと相互作用し、前記センサに保持され、且つ、前記検体の相互作用によって前記センサの光学特性が変化する;及び、
b)検体相互作用をモニターする工程;ここで、前記検体相互作用が生じた前記流路の距離又は前記検体相互作用が生じた前記流路の面積は前記サンプル中の検体量を示す;
を含む方法。
【請求項2】
サンプル中の検体を検知する方法であって、
a)ホログラフィックセンサ内、又は、ホログラフィックセンサ上の流路に前記サンプルを通過させる工程;ここで、前記検体は前記センサと相互作用することによって前記センサの光学特性が変化し、また、前記流路はあるシンボルの形状に象られている;及び、
b)前記シンボルの出現、消滅、又は、表示上の変化を観察することで、前記検体を検知する工程
を含む方法。
【請求項3】
前記シンボルは英数字、チェックマーク、又は、十字形である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記検体相互作用は、前記流路を通過する前記サンプルの流速の関数としてモニターされる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記検体は化学種、生化学種、又は、生物種であり、好ましくは、グルコース、乳酸塩、金属イオン、酵素、抗体、アルコール、又は、アルデヒドから選択される化学種、生化学種、又は、生物種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記検体は水であり、前記サンプルは灯油等の有機溶媒、又は、燃料を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記検体はグルコースであり、前記サンプルは生理流体を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記センサは2種以上の検体と結合可能であって、各検体との相互作用が前記センサの光学特性に特有の変化をもたらす、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記流路は、前記ホログラフィックセンサにおける溝、穿孔、又は、孔である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記流路は、前記ホログラフィックセンサ上のチャンバーである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程a)において、前記センサは前記サンプルに浸漬されており、前記サンプルは毛管現象により前記流路を通過する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記センサは光学フィルタを前記センサ上に有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記光学フィルタはバンドパスフィルタである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ホログラフィックセンサは光の回折によって生成される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記センサの前記ホログラムは拡大下でのみ視認可能である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記センサのホログラフィック画像は、物体像、又は、2次元若しくは3次元効果を奏するものである、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
レーザー光が照射された場合に干渉効果を生み出す手段を更に有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記手段は偏光解消層を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記センサの前記ホログラムは白色光、UV光又は赤外線下で視認可能である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記センサの前記ホログラムは特定の温度、磁力又は圧力条件下で視認可能である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記検体相互作用は、光学式リーダー、携帯電話、コンピュータ、及び、デジタルカメラから選択されるデバイスでモニターされる、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
検体が相互作用可能な領域を有する前記ホログラフィックセンサ;前記センサは、前記検体を含有するサンプルが通過可能な集積流路を有する;を含む、請求項1〜21に記載の方法における使用に適したデバイス。
【請求項23】
前記流路は、あるシンボルの形状に象られている、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
請求項22又は23に記載のデバイスを含む物品。
【請求項25】
トランザクションカード、銀行券、パスポート、身分証明証、スマートカード、運転免許証、株券、債務証書、小切手、チェックカード、タックス・バンダロール、商品券、郵便切手、鉄道チケット、航空チケット、テレホンカード、福引券、イベントチケット、クレジットカード、デビットカード、業務用名刺、又は、正規品と偽造品とを区別したり盗品を識別したりする目的で消費者保護、ブランド保護若しくは製品保護において使用される商品である、請求項24に記載の物品。
【請求項26】
本願で定義されるインテリジェントパッケージである、請求項24に記載の物品。
【請求項27】
宝石;履物を含む衣服;布地;家具;玩具;進物;陶磁器類、ガラス製品を含む家庭用品;ガラス、タイル、塗料、金属、レンガ、セラミック、木材、プラスチック、その他内装及び外装を含む建造物;絵画、彫刻、陶器、ライト・インスタレーションを含む美術品;グリーティングカード、レターヘッド、販促品を含む文具;及びスポーツ用品から選択される、装飾的要素を有する工業品又は手工芸品である、請求項24に記載の物品。
【請求項28】
農学研究、環境学研究、医学若しくは獣医学における予後診断、治療的診断、診断学、治療、化学分析、又は、石油化学分析で使用される、製品又はデバイスである、請求項24に記載の物品。
【請求項29】
テストストリップ、チップ、カートリッジ、綿球、チューブ、ピペット、コンタクトレンズ、結膜下インプラント、皮下インプラント、ブレサライザー、カテーテル、又は、液体サンプリング装置若しくは分析装置である、請求項28に記載の物品。
【請求項30】
請求項22又は23に記載のデバイスを含む転写可能なホログラフィックフィルム。
【請求項31】
ホットスタンプテープの上に存在している、請求項30に記載のフィルム。
【請求項32】
物品の安全性を高める方法であって、前記デバイスを請求項30又は31に記載のフィルムから物品上に転写する工程を含む方法。
【請求項33】
請求項22又は23に記載のデバイスを含む製品であって、前記デバイスからデータを生成することができる製品。
【請求項34】
請求項33に記載の製品から生成した前記データを、保存、制御、送信、報告及び/又はモデリングに使用するシステムの使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2A−C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3A】
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【図3B−C】
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【公表番号】特表2009−510467(P2009−510467A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534067(P2008−534067)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003645
【国際公開番号】WO2007/039717
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(504370977)スマート ホログラムズ リミテッド (12)
【Fターム(参考)】