ホログラム及び露光装置
【課題】入射光を使用して所定面に光強度分布を形成するホログラムを提供する。
【解決手段】ホログラム1100は、入射光ILの第1の偏光方向の第1の偏光成分IL1の位相、及び第1の偏光方向に対して垂直な第2の偏光方向の第2の偏光成分IL2の位相の双方を制御して、第1の偏光成分IL1の位相分布と第2の偏光成分IL2の位相分布との間の位相差分布を形成するように構成された複数のセルを含む。複数のセルは、位相差分布の位相差のレベル数が第1の偏光成分IL1の位相分布の位相のレベル数より少なくなるように設計されている。
【解決手段】ホログラム1100は、入射光ILの第1の偏光方向の第1の偏光成分IL1の位相、及び第1の偏光方向に対して垂直な第2の偏光方向の第2の偏光成分IL2の位相の双方を制御して、第1の偏光成分IL1の位相分布と第2の偏光成分IL2の位相分布との間の位相差分布を形成するように構成された複数のセルを含む。複数のセルは、位相差分布の位相差のレベル数が第1の偏光成分IL1の位相分布の位相のレベル数より少なくなるように設計されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム及び露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、投影露光装置は、フォトリソグラフィ(焼き付け)を使用して半導体メモリ又は論理回路等の微細なパターン化された半導体素子を製造するために採用されている。投影露光装置は、投影光学系を介してレチクル(マスク)上に形成された回路パターンをウエハ等の基板上に投影して転写する。
【0003】
投影露光装置の解像度Rは、次式により与えられる:
式中、λは露光光の波長であり、NAは投影光学系の開口数であり、k1は例えば現像プロセスにより決定されるプロセス定数である。
【0004】
露光光の波長を短くするか又は投影光学系のNAを上げるほど、解像度は高くなる。しかし、一般に露光光の波長が短くなると硝材の透過率が低下するため、現在の露光光の波長を更に短くすることは困難である。また、投影光学系のNAの二乗に反比例して焦点深度が減少すること、並びに高NAの投影光学系を形成するためのレンズの設計及び製造が困難であることから、現在利用可能な投影光学系のNAを増大することも困難である。
【0005】
プロセス定数k1を小さくすることにより解像度を向上するために、解像度向上技術(Resolution Enhanced Technology:RET)の適用が提案されている。そのようなRETの1つは、いわゆる変形照明法(斜入射照明法又は軸外照明法)である。
【0006】
一般に、変形照明法は、均一な面照明を形成するオプティカルインテグレータの射出面近傍に光学系の光軸上に遮光板を有する開口絞りを挿入することにより、レチクルに対して露光光を斜めに入射させる。
【0007】
変形照明法は、例えば輪帯照明法及び四重極照明法を含む。これらは開口絞りの開口の形状(すなわち、光強度分布の形状)が異なる。また、露光光の利用効率(照明効率)を向上するために、開口絞りの代わりに計算機ホログラム(Computer Generated Hologram:CGH)を使用する別の変形照明法も提案されている。
【0008】
投影光学系の高NA化に伴い、投影露光装置を高解像度化するために露光光の偏光状態を制御する偏光照明法が更に必要とされる。偏光照明法は、例えば、光軸を中心とする周方向に電界成分を有するS偏光のみを用いてレチクルを照明する。形成される像のコントラストは、S偏光のみを使用することにより向上される。
【0009】
近年、変形照明法(所望の形状、例えば四重極形状を有する光強度分布の形成)及び偏光照明法(すなわち、偏光状態の制御)の双方を利用する技術が提案されている。
【0010】
例えば特許文献1(特開2006−196715号公報)は、構造複屈折領域及び回折領域の種々の組み合わせにより構成される光束変換素子を使用して変形照明法及び偏光照明法の双方を実現する技術を開示する。特許文献1(特開2006−196715号公報)には、構造複屈折領域を使用して偏光状態を制御し回折領域を使用して所定面における光強度分布の形状(すなわち、再構成画像)を制御することが記載されている。組み合わせの数は、所定面上に形成される偏光状態の種類に依存する。
【0011】
特許文献2(米国特許第7,265,816号公報)又は特許文献3(特開2006−5319号公報)は、一般に変形照明法及び偏光照明法により形成される四重極光強度分布の4つの極の間のバランスを制御できる技術を開示する。特許文献2(米国特許第7,265,816号公報)において、1/4波長板(QWP)を用いて4つの円偏光を互いに異なる4つの直線偏光に変換した後に、各直線偏光に対応する回折光学素子として機能する4つの別個のCGHを使用してバランスを制御することにより所定面における光強度分布を変化させることが述べられている。
【0012】
CGH設計技術は、非特許文献1(「Iterative method applied to image reconstruction and to computer-generated holograms」、OPTICAL ENGINEERING、第19巻、第3号、1980年5月/6月、297〜305頁)に開示されている。従来技術は、複数の偏光状態から構成される再構成画像を形成するために複数の別個のCGHを使用し、別個のCGHの数は種々の偏光状態の数に依存する。
【0013】
互いに組み合わされた複数の別個のCGHが使用される場合、再構成画像に照度ムラが生じる場合がある。オプティカルインテグレータが入射光の強度分布を充分に補正できない場合、光は複数のCGHの一部にしか入射しない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−196715号公報
【特許文献2】米国特許第7,265,816号公報
【特許文献3】特開2006−5319号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「Iterative method applied to image reconstruction and to computer-generated holograms」、OPTICAL ENGINEERING、第19巻、第3号、1980年5月/6月、297〜305頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様によると、入射光を使用して所定面に光強度分布を形成するホログラムが提供される。ホログラムは、入射光の第1の偏光方向の第1の偏光成分の位相と第1の偏光方向に対して垂直な第2の偏光方向の第2の偏光成分の位相との双方を制御して、第1の偏光成分の位相分布と第2の偏光成分の位相分布との間の位相差分布を形成するように構成された複数のセルを含む。複数のセルは、位相差分布の位相差のレベル数が第1の偏光成分の位相分布の位相のレベル数より少なくなるように設計されている。
【0017】
本発明の別の態様によると、光源と上述のようなホログラムを含む照明光学系とを含む装置が提供される。
【0018】
本発明の別の態様によると、照明光学系と投影光学系とを含む露光装置が提供される。照明光学系は、光源を用いてレチクルを照明するように構成される。照明光学系は、上述のようなホログラムを含む。投影光学系は、レチクルのパターンを基板上に投影するように構成される。
【0019】
本発明の更なる特徴は、添付の図面を参照して好適な実施形態の以下の説明を読むことにより明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】図1Aは、ホログラム及び所定面上の光強度分布を示す図である。
【図1B】図1Bは、ホログラムの複数のセルを示す図である。
【図2A】図2Aは、構造複屈折を発生させる3次元構造を有するセル構造を示す斜視図である。
【図2B】図2Bは、位相のレベル数が2であるセル構造を示す斜視図である。
【図2C】図2Cは、3次元構造を有するセル構造を示す別の斜視図である。
【図3】図3は、位相のレベル数が4であるセル構造を示す斜視図である。
【図4A】図4Aは、目標画像の一例を示す図である。
【図4B】図4Bは、X偏光に対する計算機ホログラムの位相分布を示す図である。
【図4C】図4Cは、Y偏光に対する計算機ホログラムの位相分布を示す図である。
【図4D】図4Dは、図4B及び図4Cに対応する計算機ホログラムの位相差分布を示す図である。
【図4E】図4Eは、図2Aに基づく異方性媒質の厚さ分布を示す図である。
【図4F】図4Fは、図2Aの異方性媒質により生じる位相シフトを補償する位相分布を示す図である。
【図4G】図4Gは、異方性媒質間の相対位相シフトを考慮して図2Aに基づく等方性媒質に対する位相分布を示す図である。
【図4H】図4Hは、図2Aに基づく等方性媒質の厚さ分布を示す図である。
【図5】図5は、本発明の一態様に係る露光装置の構成を示す図である。
【図6】図6は、複屈折材料を有するセル構造を示す斜視図である。
【図7A】図7Aは、図6に基づく異方性媒質の厚さ分布を示す図である。
【図7B】図7Bは、図6に基づく等方性媒質の厚さ分布を示す図である。
【図8】図8は、補償器を含む装置を示す図である。
【図9A】図9Aは、X軸に対して0°の方向の検光子を使用して再構成画像を示す図である。
【図9B】図9Bは、X軸に対して45°の方向の検光子を使用して再構成画像を示す図である。
【図9C】図9Cは、X軸に対して90°の方向の検光子を使用して再構成画像を示す図である。
【図9D】図9Dは、X軸に対して135°の方向の検光子を使用して再構成画像を示す図である。
【図10A】図10Aは、位相差の状態を示す図である。
【図10B】図10Bは、目標画像の一例を示す図である。
【図10C】図10Cは、X偏光に対する計算機ホログラムの位相分布を示す図である。
【図10D】図10Dは、Y偏光に対する計算機ホログラムの位相分布を示す図である。
【図10E】図10Eは、図10C及び図10Dに対応する計算機ホログラムの位相差分布を示す図である。
【図10F】図10Fは、異方性媒質の厚さ分布を示す図である。
【図10G】図10Gは、等方性媒質の厚さ分布を示す図である。
【図10H】図10Hは、X偏光及びY偏光に対する計算機ホログラムの位相差分布の別の例を示す図である。
【図11A】図11Aは、ホログラム平面におけるX偏光及びY偏光に対して分離された領域を示す図である。
【図11B】図11Bは、X偏光に対する計算機ホログラムの位相分布を示す図である。
【図11C】図11Cは、Y偏光に対する計算機ホログラムの位相分布を示す図である。
【図11D】図11Dは、図11B及び図11Cに基づいて組み合わされた位相分布を示す図である。
【図11E】図11Eは、X’偏光に対する計算機ホログラムの位相分布を示す図である。
【図11F】図11Fは、Y’偏光に対する計算機ホログラムの位相分布を示す図である。
【図11G】図11Gは、異方性媒質の厚さ分布を示す図である。
【図11H】図11Hは、等方性媒質の厚さ分布を示す図である。
【図12A】図12Aは、入射光の偏光方向を示す図である。
【図12B】図12Bは、入射光の偏光方向を示す図である。
【図12C】図12Cは、光学軸の方向を示す図である。
【図12D】図12Dは、光学軸の方向を示す図である。
【図12E】図12Eは、ホログラムから射出した光の偏光方向を示す図である。
【図12F】図12Fは、ホログラムから射出した光の偏光方向を示す図である。
【図13】図13は、設計方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態を以下に説明する。図中、同一の図中符号は同一部材を示し、重複する説明を省略する。
【0022】
図1Aは、複数の別個のCGHの代わりに本発明に係る実施形態に使用されるホログラム1100を示す。再構成画像は、ホログラム1100により生成される。ホログラム1100は、例えば計算機ホログラムであってもよい。
【0023】
図1Aに示すように、ホログラム1100は、入射光ILの波面の位相分布を変調することにより所定面PS上に光強度分布(すなわち、再構成画像)LIを形成する。ホログラムは、リソグラフィ装置の照明系のアパーチャの位置に配置可能である。光強度分布LIの形状は図1Aに示す形状に限定されない。ホログラム1100への入射光ILの入射方向を図中符号500で示す。
【0024】
ホログラム1100は、入射光ILの第1の偏光方向(例えば、X偏光)の第1の偏光成分(例えば、第1の直線偏光成分IL1)の位相を制御するように設計可能である。第1の直線偏光成分IL1は、所定面PS上に第1の光強度分布LI1を形成できる。
【0025】
ホログラム1100は、第1の偏光方向に対して垂直な第2の偏光方向(例えば、Y偏光)の第2の偏光成分(例えば、第2の直線偏光成分IL2)の位相を制御するように更に設計可能である。第2の直線偏光成分IL2は、所定面PS上に第2の光強度分布LI2を形成できる。
【0026】
再構成画像LIは、IL1及びIL2に加え、必要に応じて偏光及びY偏光から構成される光強度分布LI3を含むことができる。ホログラム1100は、IL1及びIL2がX偏光及びY偏光の合成により形成される光強度分布LI3を形成するようにX偏光及びY偏光の双方の位相を制御できる。光強度分布LI3において所定の偏光状態を得るため、所定面PSにおける光の振幅及び/又は位相が制御されてもよい。
【0027】
例えば、入射光ILがX軸に対して+45°の偏光方向の直線偏光である場合、所定面PSにおけるX偏光とY偏光との振幅比(強度比)を制御することにより、直線偏光の偏光方向は、X軸に対して0°〜+90°(0°及び+90°を含まない)の範囲で変更される。また、直線偏光の偏光方向がこの範囲で変更される場合、振幅比の制御に加えてX偏光とY偏光との間の位相差(例えば、π)が制御されてもよい。
【0028】
ホログラム1100は、第1の直線偏光成分及び第2の直線偏光成分の位相を制御するために、図1Bに示すような複数のセル1110(例えば、セル1110の集合)を含む。複数のセルは、再構成画像が目標画像に対応するように設計される。互いに異なる位相分布を得るために、X偏光及びY偏光の波面は、ホログラム1100により別々に制御されてもよい。
【0029】
セル1110は、異方性媒質及び等方性媒質を含むことができる。異方性媒質はX偏光とY偏光との間の位相差を制御でき、等方性媒質はX偏光及びY偏光の位相を均等に制御できる。セル内の等方性媒質の一部のZ方向の厚さは0であってもよい。異方性媒質の構造を形成するプロセスは、等方性媒質の構造を形成するプロセスより困難である。従って、製造上の観点から、本明細書中の説明は、異方性媒質の厚さのレベル数が等方性媒質の厚さのレベル数より少ないという条件を使用する。この条件を実現するために、X偏光とY偏光との間の位相差のレベル数は、X偏光及びY偏光の位相のレベル数より少なくなるように設計可能である。換言すると、複数のセル1110は、位相差分布の位相差のレベル数がX偏光又はY偏光の位相分布の位相のレベル数より少なくなるように設計可能である。
【0030】
CGHを用いてより高い回折効率(DE)を得るために、位相のレベル数を増やしてもよい。従来、CGHは位相のレベル数と同様の位相差のレベル数を有するように設計されるが、位相差のレベル数は位相のレベル数と等しくなくてもよい。
【0031】
図2Aは、構造複屈折を発生させる回折格子から形成された異方性媒質112を有するセル構造100を示す斜視図である。0次以外の回折光成分の発生を防止するため、格子のピッチPは入射光の波長より小さい。各セル110a〜110h(まとめて110と称する)の例を図2Aに示す。異方性媒質の光学軸(OA)は、複屈折が発生ない方向を示す。入射光が光学軸の方向に伝搬する場合、その方向と垂直な全ての偏光成分に対する屈折率は一定である。換言すると、常光線及び異常光線は、互いに一致するか又は偏差が最小限である。
【0032】
図2Aは、異方性媒質112の厚さのレベル数が1であり且つ等方性媒質114の厚さのレベル数がゼロの厚さを含めて4である例を示す。π/2の位相差を形成するため、異方性媒質の厚さはh112’である。等方性媒質の厚さh114(h114f、h114g、h114h)については詳細に後述する。セル110h(110d)における等方性媒質の厚さh114hは、セル110f(110b)における厚さの3倍である。セル110g(110c)における等方性媒質の厚さh114gは、セル110f(110b)における等方性媒質の厚さの2倍である。例えばh114f、h114g及びh114hの厚さは、3π/2、π及びπ/2の位相遅延をそれぞれ与えるように設計可能である。異方性媒質112の厚さのレベル数が1である場合、X軸に沿う溝を有するSWS(Sub-Wavelength Structure:入射光の波長以下の微細な周期を持つ構造)がX偏光の位相を遅延させ且つY軸に沿う溝を有するSWSがY偏光の位相を遅延させるため、位相差のレベル数は2である。等方性媒質114の厚さのレベル数が4である場合、位相の数は4である。異方性媒質として複屈折材料を使用できる。
【0033】
X偏光及びY偏光に対する位相分布が位相差に関する条件を用いずに等しく量子化された既定のレベルを使用して設計される場合、位相差のレベル数は位相のレベル数と同一であってもよい。位相の値に関してπは−πと同等であると考えられ、位相差の値に関してもπは−πと同等であると考えられる。
【0034】
図2Bは、位相差のレベル数及び位相のレベル数がそれぞれ2であるセル構造101を示す斜視図である。セル構造101は、セル111a、セル111b、セル111c及びセル111dを含むセル111を含む。位相差のレベル数が2であるため、異方性媒質112の溝の方向が異なる2種類のセルが存在する。位相のレベル数が2であるため、等方性媒質114のセルの厚さは2種類存在する。円偏光が入射光として使用される場合、入射光の位相差を相殺するために、π/2の位相シフトが使用される。この目的(すなわち、位相シフト)のため、第1の等方性媒質114aに別の第2の等方性媒質114bを追加できる。その場合、実際は等方性媒質114のセルの厚さは4種類存在する。
【0035】
図2Cは、セル構造102の別の例を示す。第1の等方性媒質114aは、X偏光及びY偏光の位相を均等に制御できる。第2の等方性媒質114bは、π/2の位相差を有する入射光の位相差を相殺できる。第1の等方性媒質(114a)及び第2の等方性媒質(114b)は分離しているものとして示されるが、それらは互いに組み合わされてもよい。入射光が第1の直線偏光成分(IL1)と第2の直線偏光成分(IL2)との間に位相差を有さない場合、あるいは入射光の双方の位相を等しくする必要がない場合、第2の等方性媒質114bは省略されてもよい。
【0036】
図2Cのセル110aの第1の等方性媒質(114a)及び第2の等方性媒質(114b)の厚さは、2πの位相シフトに対応するため、図2Aに示すように取り除くことができる。図2A及び図2Cのホログラムのセル構造が4つの位相レベルを有し且つセル110fの等方性媒質114aの最小ステップがπ/2に対応する場合、図2Cに示すように等方性媒質114bを追加しても等方性媒質の厚さの数は変更されない。換言すると、図2A及び図2Cの等方性媒質の厚さの数は同一である。従って、図2Bの異方性媒質及び等方性媒質の厚さの数は図2Aと同一である。製造工程が更に困難になることを防止する一方、本発明を使用することにより回折効率が低下する場合がある。特に、目標画像が非対称である場合、図2Bの等方性媒質114aから構成される2つの位相レベルにより得られる回折効率は50%未満であるが、図2Aに示すような2つの位相差レベル及び4つの位相レベルにより得られる回折効率は50%を上回る。
【0037】
図3は、位相差のレベル数及び位相のレベル数の双方が4であるセル構造を示す斜視図である。異方性媒質の数は2であり、これは図2Aより多い。セル310a〜310pを含むセル構造103内の異方性媒質112は、2種類の厚さ112a及び112bを有する。位相のレベル数を4とすることにより、位相レベル数が2のものよりも高い回折効率を得ることができる。
【0038】
位相差のレベル数が位相のレベル数より少ないという条件で位相分布が生成される場合、ホログラム設計の自由度を向上できる。位相差分布は、0及びPiの位相差値を交互に含むことができる。また、位相差分布は、インターレース分布又は市松模様の分布を有することができる。複数のセルは、交互に配置される第1の偏光成分(X偏光)の列及び第2の偏光成分(Y偏光)の列に分割できる。
【0039】
(例1:SWSを用いる位相差のランダム分布)
図1Aのホログラム1100としての計算機ホログラムの詳細な例を以下に説明する。
【0040】
光強度分布(目標画像)の設計の一例を図4Aに示す。この目標画像はS偏光から構成される。S偏光は、所定面PS上の各画素が直線偏光により形成され且つ各画素に対する偏光の方向が同心円の周方向に沿うことを意味する。所定面PS上での各偏光状態を図4Aの矢印で示す。
【0041】
図4Bはホログラムデータとして設計されたX偏光の位相分布を示し、図4Cはホログラムデータとして設計されたY偏光の位相分布を示す。セル数は16×16である。これらの位相分布は、X偏光とY偏光との間の位相差のレベル数がX偏光及びY偏光の位相のレベル数より少ないという条件で設計される。本例において、位相差のレベル数は図4Dに示すように2であり、位相のレベル数は実質的に無限大である。ホログラムデータは、ホログラム1100を通過する光が図4Bに示すようなX偏光の位相分布及び図4Cに示すようなY偏光の位相分布を有するように設計される。位相差のレベル数は3以上に設計可能であり、位相のレベル数は位相差の数が位相の数より少ないという条件で3以上無限大未満(例えば、4、8又は16)に設計可能である。
【0042】
上述のように、図4Dは、図4Cのセルに対応する位相の値から図4Bの各セルの位相の値を減算することにより得られるX偏光とY偏光との間の位相差分布を示す。図4Dにおける値は0又はπであり、これは位相差のレベル数が2に設計されることを意味する。
【0043】
図4Eは、図2Aに示すセル構造に基づいて生成された異方性媒質のZ方向の厚さ(単位:μm)の例を示し、図4Hは、同様に生成された等方性媒質のZ方向の厚さの例を示す。色の濃度は各セルの厚さを表す。色が白色に近いほど厚さが厚く、黒色に近いほど厚さが薄いことを示す。本明細書において、異方性媒質112は構造複屈折を発生させる回折格子から形成される。
【0044】
位相差φdを形成するため、異方性媒質112のz方向の厚さh112は次式を満たす必要がある:
式中、λは波長であり、nO及びnEは異方性媒質の屈折率である。本例において、λ = 193nm、nO = 1.31及びnE = 1.19である。nOは、SWSの溝の方向に沿う屈折率である。nEは、溝の方向に対して垂直な屈折率である。
【0045】
円偏光が入射光として使用される場合、厚さh112は次式で示すように半分にすることができる:
【0046】
この厚さはQWPの機能の実行に対応する。このh112’は位相差の数が2である場合に使用可能である。
【0047】
特許文献1(特開2006−196715号公報)は、構造複屈折を発生させる回折格子の一例として石英ガラスから作成された回折格子を開示している。特許文献1(特開2006−196715号公報)によると、石英ガラスが193nmの波長に対して1.56の屈折率を有し且つ構造複屈折領域における回折格子のデューティ比が1:1(=0.5)である場合、ピッチ方向における回折格子の屈折率nEは1.19であり、ピッチに対して垂直な方向における回折格子の屈折率nOは1.31である。
【0048】
本例において、図4Eの垂直溝領域と水平溝領域との間にはπ/2の相対位相シフトが存在する。この相対位相シフトは、等方性媒質114により補償可能である。X偏光に関して、高屈折率の媒質における波面は低屈折率の媒質における波面より進行速度が遅いため、水平溝領域の波面は、垂直溝領域の波面と比較してπ/2遅延する。図4Fは、この位相シフトを補償する位相分布を示す。各セルに対して、図4Bの値と図4Fの値との和は、位相シフトを考慮して図2Aに基づく等方性媒質によりX偏光を制御する位相分布を形成できる。図4Gは、等方性媒質により得られた位相分布φを示す。
【0049】
位相分布φを形成するため、等方性媒質の厚さh114は次式を満たす必要がある:
【0050】
式中、nは等方性媒質の屈折率である。本例において、n = 1.56である。図4Hは、この補償を含む等方性媒質の厚さの例を示す。
【0051】
SWSにより生成された位相分布は、各セルの内側に位相分布を有する場合がある。この現象はDEを低下させる場合がある。より小さいピッチPを使用することにより、各セルの内側の位相分布を減少できる。更に、各セルの内側の位相分布を考慮してホログラムの位相分布を設計することにより、各セルの内側の位相分布を減少できる。
【0052】
例1では、セル構造100のセル構造のみを説明し、回折格子は宙に浮いているものとして図示したが、異方性セル及び等方性セルは、石英ガラス等の基板上に形成可能である。
【0053】
例1では、計算機ホログラムが複数のセルを含む例を説明したが、光強度分布(目標画像)を分割する画素のサイズを小さくすることにより、計算機ホログラムのセル数を増加できる。画素が小さいほど、光強度分布は均一になる。
【0054】
関連技術の説明において別個のCGHとして説明した複数のCGHを組み合わせることによりホログラムが形成される場合、オプティカルインテグレータが入射光の強度分布を充分に補正できない場合(例えば、光がそれらCGHの一部にしか入射しない場合)に再構成画像に照射ムラが生じることがある。例1によると、照明ムラを減少できる。
【0055】
複数の別個のCGHが組み合わされる場合、別個のCGH間の境界における構造が不連続であることにより、不要な回折光が発生する場合がある。例1によると、不要な回折光により生じる再構成画像の劣化を減少できる。
【0056】
異方性媒質のレベルが多いほど、異方性媒質の構造を形成するプロセスは困難となる。例1によると、異方性媒質のレベル数は1であり、等方性媒質のレベル数は実質的に無限大である。従って、高いDEを実現しつつ、異方性媒質の処理の面で製造をより容易にできる。
【0057】
図5を参照して、ホログラム1100が適用される露光装置1を以下に説明する。図5は、露光装置1の構成の一例を示す。
【0058】
露光装置1は、ステップ・アンド・スキャン方式でウエハ40上にレチクル20のパターンを転写する投影露光装置である。しかし、露光装置1はステップ・アンド・リピート方式又は別の露光方式を採用してもよい。
【0059】
図5に示すように、露光装置1は照明装置10、レチクル20を支持するレチクルステージ(不図示)、投影光学系30及びウエハ40を支持するウエハステージ(不図示)を含む。
【0060】
照明装置10は、転写用回路パターンが形成されたレチクル20を照明し、光源16及び照明光学系18を含む。
【0061】
光源16は、例えば、波長約193nmのArFエキシマレーザ又は波長約248nmのKrFエキシマレーザ等のエキシマレーザである。しかし、光源16は、エキシマレーザに特に限定されず、例えば波長約157nmのF2レーザ又は波長範囲の狭い水銀ランプであってもよい。
【0062】
照明光学系18は、光源16からの光を用いてレチクル20を照明し、所定の照度を確保しつつ所定の偏光状態でレチクル20を変形照明する。本例において、照明光学系18は、引き回し光学系181、ビーム整形光学系182、偏光制御部183、位相制御部184、射出角度保存光学素子185、リレー光学系186、多光束発生部187、偏光状態調整部194及びホログラム1100を含む。照明光学系18は、リレー光学系188、開口189、ズーム光学系190、多光束発生部191、開口絞り192及び照射部193を更に含む。
【0063】
引き回し光学系181は、光源16からの光を偏向してビーム整形光学系182に導光する。ビーム整形光学系182は、光源16からの光の断面の縦横比率を所望の値に変換することにより(例えば、断面形状を長方形から正方形に変化させることにより)光源16からの光の断面を所望の形状に整形する。ビーム整形光学系182は、多光束発生部187を照明するのに必要な大きさ及び発散角度を有する光束を形成する。
【0064】
偏光制御部183は、例えば直線偏光子を含み、不要な偏光成分を除去する機能を有する。偏光制御部183により除去(遮光)された偏光成分を最小限にすることにより、光源16からの光を所望の直線偏光に効率よく変換できる。
【0065】
位相制御部184は、偏光制御部183により得られた直線偏光にλ/4の位相差を与えて、この直線偏光を円偏光に変換する。
【0066】
射出角度保存光学素子185は、例えばオプティカルインテグレータ(例えば、複数の微小レンズを含むフライアイレンズ又はファイバ束)を含み、所定の発散角度で光を射出する。
【0067】
リレー光学系186は、射出角度保存光学素子185から射出した光を多光束発生部187上に集光する。リレー光学系186は、フーリエ変換の関係(物体面と瞳面との間の関係又は瞳面と像面との間の関係)を保持するために射出角度保存光学素子185の射出面及び多光束発生部187の入射面を調整する。
【0068】
多光束発生部187は、偏光状態調整部194及び計算機ホログラム1100を均一に照明するためのオプティカルインテグレータ(例えば、複数の微小レンズを含むフライアイレンズ又はファイバ束)を含む。多光束発生部187の射出面は、複数の点光源を含む光源面を形成する。多光束発生部187から射出した光は、円偏光として偏光状態調整部194に入射する。
【0069】
偏光状態調整部194は、位相制御部184により得られた円偏光にλ/4の位相差を与えることにより、その円偏光を所望の偏光方向を有する直線偏光に変換する。偏光状態調整部194から射出した光は、直線偏光として計算機ホログラム1100に入射する。
【0070】
更に詳細には、1つの例において、光源16から生成された入射光はX偏光及びY偏光を含んでもよく、X偏光の振幅はY偏光の振幅と等しくてもよい。
【0071】
ホログラム1100は、リレー光学系188を介して開口189の位置に光強度分布(例えば、図1Aに示すような光強度分布LI)を形成する。ホログラム1100は上述の形態のうちのいずれであってもよく、本明細書中での詳細な説明を省略する。
【0072】
開口189は、ホログラム1100により形成される光強度分布のみを通過させる機能を有する。計算機ホログラム1100及び開口189は、フーリエ変換の関係を保持するように設定される。
【0073】
ズーム光学系190は、ホログラム1100により形成された光強度分布を所定の倍率で拡大して多光束発生部191上に投影する。
【0074】
多光束発生部191は照明光学系18の瞳面上に挿入され、その射出面上に開口189の位置に形成された光強度分布に対応する光源像(有効光源分布)を形成する。本例において、多光束発生部191は、フライアイレンズ又はシリンドリカルレンズアレイ等のオプティカルインテグレータを含む。開口絞り192は、多光束発生部191の射出面近傍に挿入される。
【0075】
照射部193は、例えば集光光学系を含み、多光束発生部191の射出面上に形成された有効光源分布を用いてレチクル20を照明する。
【0076】
レチクル20は、回路パターンを有し、レチクルステージ(不図示)により支持及び駆動される。レチクル20により生成された回折光は、投影光学系30を介してウエハ40上に投影される。露光装置1はステップ・アンド・スキャン方式であるため、レチクル20のパターンを走査することによりパターンをウエハ40上に転写する。
【0077】
投影光学系30は、レチクル20のパターンをウエハ40上に投影する。投影光学系30は屈折光学系であってもよく、反射屈折光学系であってもよく、あるいは反射光学系であってもよい。
【0078】
ウエハ40は、レチクル20のパターンが投影(転写)される基板であり、ウエハステージ(不図示)により支持及び駆動される。しかし、ウエハ40の代わりにガラスプレート又は別の基板を使用することもできる。ウエハ40にはレジストが塗布される。
【0079】
上述のように、計算機ホログラム1100は、単一方向に偏光された光の波面には位相分布を与えず、X偏光及びY偏光の双方の波面に異なる位相分布を2次元で与える。これにより、光量損失を殆ど発生させずに光強度分布LIを形成できる。
【0080】
露光において、光源16により放射された光は、照明光学系18によりレチクル20を照明する。レチクル20のパターンの情報を搬送する光は、投影光学系30によりウエハ40上に像を形成する。露光装置1に使用される照明光学系18は、照明ムラ及び光量損失を抑制でき、ホログラム1100により所望の形状及び偏光状態を有する光強度分布を形成できる。従って、露光装置1は、高いスループットで経済的に効率よく高品質のデバイス(例えば、半導体素子、LCD素子、撮像素子(例えば、CCD)及び薄膜磁気ヘッド)を提供できる。
【0081】
(例2:複屈折材料を用いる位相差のランダム分布)
図6は、異方性媒質が複屈折材料であるセル構造104を示す斜視図である。610a〜610hは各セルの例を示す。異方性媒質又は等方性媒質の一部の厚さはゼロである。図6は、位相差の数が2である例を示す。図6の構造は、入射光としての直線偏光に対して設計される。本例において、X軸に対する入射光の偏光方向は、図12Aに示すように+45°である。図6の空間113には、屈折率整合媒質を使用してもよい。空間113が異方性媒質の屈折率の一方と同一の屈折率を有する屈折率整合媒質で満たされる場合、異方性媒質及び屈折率整合媒質の組み合わせは、一方の偏光に対しては平面ガラスのように見え、他方の偏光に対しては半波長板(HWP)の格子のように見える。
【0082】
図4Aの目標画像を本例においても使用する。図7Aは図6に基づく異方性媒質の厚さの例を示し、図7Bは図6に基づく等方性媒質の厚さの例を示す。X偏光に対するホログラムデータを図4Bに示し、Y偏光に対するホログラムデータを図4Cに示す。
【0083】
図7Aは、λ = 193nm、nO = 1.31及びnE = 1.19であるパラメータを使用して計算された異方性媒質の厚さを示す。この厚さは、HWPの機能の実行に対応する。
【0084】
図6の空間113が異方性媒質の屈折率の一方と同一の屈折率を有する屈折率整合媒質で満たされる場合、図4B及び図4Cに示す位相分布の一方は、等方性媒質に対するホログラムデータとして使用可能である。本例において、nEが屈折率整合媒質の屈折率に使用される。その場合、異方性媒質及び屈折率整合媒質の組み合わせは、X偏光に対しては平面ガラスのように見え、Y偏光に対してはHWPの格子のように見える。従って、本例における等方性媒質に対する位相分布は、図4Bに示す位相分布である。屈折率整合媒質が使用される場合、厚みの誤差により生じる感度を1/nEに減少できる。図7Bは、屈折率n=1.56である等方性媒質の厚さを示す。
【0085】
本実施形態ではホログラム1100のセル構造のみを説明したが、上述の異方性セル及び等方性セルは基板上に形成されてもよい。
【0086】
図6において、各セルの異方性媒質の光学軸OAの方向は一致している。従って、ホログラム1100における全ての異方性媒質は、同一の異方性媒質の基板上に形成されてもよく、全ての等方性媒質は同一の等方性媒質の基板上に形成されてもよい。更に詳細には、異方性媒質から作成された基板は、複数のセル1110の上側に配置され、等方性媒質から作成された基板は複数のセル1110の下側に配置される。図6において、異方性媒質及び等方性媒質は互いに接するが、これらはZ方向に沿って互いに分離していてもよい。更に、4f系が異方性媒質と等方性媒質との間に存在してもよく、異方性媒質及び等方性媒質は4f系の共役面に配置されてもよい。
【0087】
4f系は結像系の1つを意味する。結像系において使用されるフーリエ変換(FT)レンズの焦点距離がfであるため、結像系の長さは4fである。物体面、FTレンズ、FT面、FTレンズ及び像面は結像系の端部から規則的な間隔で配置される。本例において、異方性媒質は物体面に、等方性媒質は像面に存在しているとしてよい。
【0088】
入射光の伝播方向に対して垂直な全ての偏光方向に対する屈折率が一定となるため、異方性媒質の光学軸は複屈折が発生しない方向を意味する。換言すると、常光線及び異常光線は互いに一致するか又は偏差が最小限である。
【0089】
異方性基板により不測の位相差を発生させないため、異方性基板は、平坦であり且つHWPの機能の実行に対応する厚さと2n(nは整数を表す)とを乗算して得られる厚さを有するのが理想的である。しかし、基板の両面が平坦であるが平行ではないというウェッジ誤差が存在する場合がある。また、厚さが理想値とは異なるという厚さ誤差が存在する場合もある。これらの誤差は、入射光を調整することにより補償してもよい。
【0090】
クイックルックテスト装置(QLTS)は、光源とホログラムを含む照明光学系とを含む装置である。
【0091】
図8を参照して、異方性媒質112及び等方性媒質114を含むホログラム1100が適用されるQLTS115を以下に説明する。QLTSは、ホログラムが所定面PSに再構成画像を形成できるかを確認するために使用される。
【0092】
光源116は、波長約633nmのHeNeレーザである。光のX偏光及びY偏光の強度比は偏光子117で制御される。本例において、補償器120がX偏光及びY偏光の強度比を変化させない場合、X軸に対する偏光方向は+45°である。
【0093】
補償器120は、ホログラム1100に対する入射光を調整する。補償器120は、偏光ビームスプリッタ(PBS)122a及び122b、第1の傾斜ミラー124、並びに圧電材料126を用いる第2の傾斜ミラーを含む。補償器120は、異方性基板のウェッジ誤差及び厚さ誤差又は結像系の他の偏光特有の収差が相殺されるようにホログラム1100に対する入射光を調整する。等方性基板812及び異方性基板814は別個に説明される。図8の図中符号130は4f系のレンズを示す。
【0094】
ここで、例えば直線偏光の作成方法及びX軸に対する偏光方向が入射光として図12Aに+45°で示される方法を説明する。第1のPBS122aは、光源から射出した光をホログラムに対するX偏光(磁気的横波:TM波)及びY偏光(電気的横波:TE波)に分割する。X偏光はPBSにより反射され、Y偏光はPBSを通過する。第2のPBS122bは、双方の偏光を合体してホログラムに対する入射光を作成する。X偏光及びY偏光に対する光路が、双方の光路の長さが互いに同一であることを含めて対称である場合、並びに補償器120がX偏光及びY偏光の強度比を変化させない場合、偏光子117を通過後と同一の偏光状態がホログラムに対する入射光として形成される。一般に、偏光子117を通過後の偏光状態は、ホログラムに対する期待された入射光と同一であってもよい。第1の傾斜ミラー124及び圧電材料を用いる第2の傾斜ミラー126を調整することにより、偏光状態は偏光子117を通過後の偏光状態から変化され、それにより、入射光は、異方性基板814又は偏光収差を発生させる偏光子117と等方性基板812との間の他の光学素子(図8には不図示)により生じるウェッジ誤差及び厚さ誤差を相殺するように較正される。偏光補償器の他の形態は、例えば機械アドレス型異方性材料及び/又は電気アドレス型異方性材料を含むことができる。
【0095】
補償された入射光は、ホログラム800を照明する。ホログラム800により回折された光は、フーリエ変換レンズ132を通過し、所定面PSに再構成画像を形成する。再構成画像の偏光方向を解析するため、検光子134がホログラム800と所定面との間に配置される。
【0096】
図9A〜図9Dは、実験においてX軸に対して0°、45°、90°及び135°の方向の検光子を使用して再構成画像を示す。実験において、λ = 633nm、nO = 1.656、nE = 1.485及びn = 1.598を使用した。複屈折材料の材料は、方解石(CaCO3)であり、厚さは1.85(μm)である。これは、式2(上記)により計算可能である。マッチングオイルはnEに等しい。セル数は512×512である。位相差のレベル数は2であり、位相のレベル数は128である。図9A〜図9Dの各々において、光軸を中心とする同心円の周方向の成分が観察される。従って、再構成画像は主にS偏光により形成される。
【0097】
(例3:位相差のインターレース分布I)
ホログラム1100としての計算機ホログラムの別の詳細な例を以下に説明する。
【0098】
製造の観点から、位相差のアレイ分布はランダム分布(例えば、図4D)より好ましい。本例において、図10Aの位相差のインターレース分布がアレイ分布として使用される。複数のセルを含むホログラムの位相差は0及びπを交互に含む。
【0099】
本例において使用される目標画像を図10Bに示す。この目標画像はS偏光から構成される。
【0100】
図10Cは、ホログラムデータとして設計されたX偏光の位相分布を示し、図10Dは同様に設計されたY偏光の位相分布を示す。これらの位相分布は、図10Aの位相差分布が維持された状態で設計される。
【0101】
図10Eは、図10Dのセルに対応する位相の値から図10Cの各セルの位相の値を減算することにより得られる、X偏光とY偏光との間の位相差を示す。この分布は図10Aの状態と同一であり、これは設計の反復ループにおいて状態が正確に維持されたことを意味する。
【0102】
図10Fは、図6に基づく異方性媒質の厚さの例を示し、図10Gは、図6に基づく等方性媒質の厚さの例を示す。本例において、λ = 193nm、nO = 1.31、nE = 1.19及びn = 1.56である。異方性媒質における光学軸はX軸に沿い、マッチングオイルの屈折率はnEに等しい。図10Gの厚さ分布は図10Cの位相分布に対応する。
【0103】
図10Fは、複数のセルを含むホログラムの位相差が交互に0及びπであることを示す。
【0104】
位相差のアレイ分布は、図10Aに示すインターレース分布に限定されない。図10Hはアレイ分布の別の例を示す。図10Hは、位相差分布が市松模様のパターンであることを示す。
【0105】
(例4:位相差のインターレース分布II)
ホログラム1100としての計算機ホログラムの他の詳細な例を以下に説明する。この例は、例3の別の設計方法であると考えられる。
【0106】
本例において、ホログラム平面におけるX偏光及びY偏光に対する領域は、図11Aに示すように分離される。例えば、1列目及び2列目はX偏光110xに対するセルであり、3列目及び4列目はY偏光110yに対するセルであるというように続く。
【0107】
本例において、図10Aのインターレース分布をアレイ分布として更に使用する。図10Bの目標画像を更に使用する。
【0108】
図11Bは、ホログラム設計のための反復におけるX偏光の位相分布の一例を示し、図11Cは同様のY偏光の位相分布の一例を示す。それらは各反復ループにおいて図11Dに示すように組み合わされる。図11Eは、設計されたホログラムの一例を示す。
【0109】
設計方法のフローチャートを図13に示す。これはGerchberg-Saxton法を修正したものである。S100において、初期共通ディフューザが[−π,π]にわたる均一なランダム位相のアレイ(配列)として定義される。ディフューザは、所定面上の位相分布がランダム位相から構成されることを意味する。換言すると、ディフューザは位相分布が多数の空間周波数を有することを意味する。計算ループの第1のステップS102において、計算に使用するため、式5及び式6(上記)により定義される理想の像にディフューザを乗算して、ディフューザを乗算した2つの目標画像(x及びy)を作成する。第2のステップS104において、フーリエ変換を各像に適用し、これにより計算はホログラム平面に変換される。第3のステップS106において、各変換の絶対値は1に設定される。換言すると、変換された各複素振幅は1に設定される。第4のステップS108において、逆フーリエ変換が第3のステップS106の結果の位相分布に適用され、これにより計算が所定面に戻される。次に第5のステップS110において、理想の物体の位相
及び
が像の推定値
及び
から除去される。第6のステップS112において、結果として得られた複素振幅を平均して
を生成する。第7のステップS114において、共通ディフューザの位相
が抽出される。共通ディフューザの位相
は、単に
の偏角である。次のループ(j=2)において、
が第1のステップS102のディフューザの始点として使用される。図13に示す処理は、ループを複数回、通常は50回実行した後、ディフューザが像の推定値
及び
の許容可能な特性を生成するように収束し、第3のステップS106で計算された位相がPCGH(Polarization computer generated hologram: 偏光CGH)の個々の成分として使用される時点で終了する。計算中の第3のステップS106において、例えば、DOE(Diffractive optical element: 回折光学素子)に対する開口関数の適用又は位相量子化の導入等のオプションの動作が実行されてもよい。
【0110】
【0111】
図11Aのような状態のホログラムを照明するため、図11Gに示す異方性媒質が使用可能である。光学軸は、図12Dに示すようにX軸に対して+45°の方向に沿う。
【0112】
入射光は直線偏光であり、偏光方向は図12Bに示すようにX軸に沿う。
【0113】
図11Gは、図6に基づく異方性媒質の厚さの例を示し、図11Hは、図6に基づく等方性媒質の厚さの例を示す。本例において、λ = 193nm、nO = 1.31、nE = 1.19及びn = 1.56である。異方性媒質における光学軸はX軸に沿い、マッチングオイルの屈折率はnEと等しい。
【0114】
図12Aは例3における入射光の偏光方向を示し、図12Bは例4における入射光の偏光方向を示す。図12Cは例3における光学軸の方向を示し、図12Dは図4における光学軸の方向を示す。図12Eは例3におけるホログラムから射出した光の偏光方向を示し、図12Fは例4におけるホログラムから射出した光の偏光方向を示す。
【0115】
本例における全ての角度は例3における角度から45°回転される。ここで、X’は図11Eに示すようにX軸に対して+45°の方向を有すると定義する。Y’は図11Eに示すようにY軸に対して+45°の方向を有すると定義する。X軸に沿う直線偏光であるX’偏光は第3の偏光成分であると考えられ、Y軸に沿う直線偏光であるY’偏光は第4の偏光成分であると考えられる。この回転により、図11Fに示す位相分布が図10Aに示す位相分布及び図11Eに示す位相分布を加算することにより得られる。図11E及び図11Fは、X’偏光及びY’偏光の位相分布であると考えられる。図10Aは、X’偏光とY’偏光との間の位相差分布であると考えられる。
【0116】
QLTSを用いて図11G及び図11Hのホログラムをテストする場合、ホログラムは図11E及び図11FのX’軸及びY’軸が図8のX軸及びY軸に重なるように回転される。
【0117】
本例におけるX’及びY’は例3におけるX及びYであると考えられる。従って、本例は別の設計方法であると考えられる。また、例3はX’偏光及びY’偏光に対して生成されたCGHが組み合わされたものであると見なされる。
【0118】
本例において、ホログラム平面におけるX偏光及びY偏光に対する領域は、図11Gに示す異方性媒質を使用して分離される。異方性媒質を使用する代わりに、2つのロンキー格子を使用できる。ロンキー格子は、透過率が1である領域及び透過率が0である領域が交互に配列されたものである。一方のロンキー格子は、図8の補償器の一方の光路(例えば、TM波に対する光路)に配置されてもよい。他方のロンキー格子は、図8の補償器の他方の光路(例えば、TE波に対する光路)に配置されてもよい。
【0119】
好適な実施形態を参照して本発明に係る実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されないことが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲の範囲は、そのような変更、並びに等価の構造及び機能の全てを含むように広範に解釈されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム及び露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、投影露光装置は、フォトリソグラフィ(焼き付け)を使用して半導体メモリ又は論理回路等の微細なパターン化された半導体素子を製造するために採用されている。投影露光装置は、投影光学系を介してレチクル(マスク)上に形成された回路パターンをウエハ等の基板上に投影して転写する。
【0003】
投影露光装置の解像度Rは、次式により与えられる:
式中、λは露光光の波長であり、NAは投影光学系の開口数であり、k1は例えば現像プロセスにより決定されるプロセス定数である。
【0004】
露光光の波長を短くするか又は投影光学系のNAを上げるほど、解像度は高くなる。しかし、一般に露光光の波長が短くなると硝材の透過率が低下するため、現在の露光光の波長を更に短くすることは困難である。また、投影光学系のNAの二乗に反比例して焦点深度が減少すること、並びに高NAの投影光学系を形成するためのレンズの設計及び製造が困難であることから、現在利用可能な投影光学系のNAを増大することも困難である。
【0005】
プロセス定数k1を小さくすることにより解像度を向上するために、解像度向上技術(Resolution Enhanced Technology:RET)の適用が提案されている。そのようなRETの1つは、いわゆる変形照明法(斜入射照明法又は軸外照明法)である。
【0006】
一般に、変形照明法は、均一な面照明を形成するオプティカルインテグレータの射出面近傍に光学系の光軸上に遮光板を有する開口絞りを挿入することにより、レチクルに対して露光光を斜めに入射させる。
【0007】
変形照明法は、例えば輪帯照明法及び四重極照明法を含む。これらは開口絞りの開口の形状(すなわち、光強度分布の形状)が異なる。また、露光光の利用効率(照明効率)を向上するために、開口絞りの代わりに計算機ホログラム(Computer Generated Hologram:CGH)を使用する別の変形照明法も提案されている。
【0008】
投影光学系の高NA化に伴い、投影露光装置を高解像度化するために露光光の偏光状態を制御する偏光照明法が更に必要とされる。偏光照明法は、例えば、光軸を中心とする周方向に電界成分を有するS偏光のみを用いてレチクルを照明する。形成される像のコントラストは、S偏光のみを使用することにより向上される。
【0009】
近年、変形照明法(所望の形状、例えば四重極形状を有する光強度分布の形成)及び偏光照明法(すなわち、偏光状態の制御)の双方を利用する技術が提案されている。
【0010】
例えば特許文献1(特開2006−196715号公報)は、構造複屈折領域及び回折領域の種々の組み合わせにより構成される光束変換素子を使用して変形照明法及び偏光照明法の双方を実現する技術を開示する。特許文献1(特開2006−196715号公報)には、構造複屈折領域を使用して偏光状態を制御し回折領域を使用して所定面における光強度分布の形状(すなわち、再構成画像)を制御することが記載されている。組み合わせの数は、所定面上に形成される偏光状態の種類に依存する。
【0011】
特許文献2(米国特許第7,265,816号公報)又は特許文献3(特開2006−5319号公報)は、一般に変形照明法及び偏光照明法により形成される四重極光強度分布の4つの極の間のバランスを制御できる技術を開示する。特許文献2(米国特許第7,265,816号公報)において、1/4波長板(QWP)を用いて4つの円偏光を互いに異なる4つの直線偏光に変換した後に、各直線偏光に対応する回折光学素子として機能する4つの別個のCGHを使用してバランスを制御することにより所定面における光強度分布を変化させることが述べられている。
【0012】
CGH設計技術は、非特許文献1(「Iterative method applied to image reconstruction and to computer-generated holograms」、OPTICAL ENGINEERING、第19巻、第3号、1980年5月/6月、297〜305頁)に開示されている。従来技術は、複数の偏光状態から構成される再構成画像を形成するために複数の別個のCGHを使用し、別個のCGHの数は種々の偏光状態の数に依存する。
【0013】
互いに組み合わされた複数の別個のCGHが使用される場合、再構成画像に照度ムラが生じる場合がある。オプティカルインテグレータが入射光の強度分布を充分に補正できない場合、光は複数のCGHの一部にしか入射しない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−196715号公報
【特許文献2】米国特許第7,265,816号公報
【特許文献3】特開2006−5319号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「Iterative method applied to image reconstruction and to computer-generated holograms」、OPTICAL ENGINEERING、第19巻、第3号、1980年5月/6月、297〜305頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様によると、入射光を使用して所定面に光強度分布を形成するホログラムが提供される。ホログラムは、入射光の第1の偏光方向の第1の偏光成分の位相と第1の偏光方向に対して垂直な第2の偏光方向の第2の偏光成分の位相との双方を制御して、第1の偏光成分の位相分布と第2の偏光成分の位相分布との間の位相差分布を形成するように構成された複数のセルを含む。複数のセルは、位相差分布の位相差のレベル数が第1の偏光成分の位相分布の位相のレベル数より少なくなるように設計されている。
【0017】
本発明の別の態様によると、光源と上述のようなホログラムを含む照明光学系とを含む装置が提供される。
【0018】
本発明の別の態様によると、照明光学系と投影光学系とを含む露光装置が提供される。照明光学系は、光源を用いてレチクルを照明するように構成される。照明光学系は、上述のようなホログラムを含む。投影光学系は、レチクルのパターンを基板上に投影するように構成される。
【0019】
本発明の更なる特徴は、添付の図面を参照して好適な実施形態の以下の説明を読むことにより明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】図1Aは、ホログラム及び所定面上の光強度分布を示す図である。
【図1B】図1Bは、ホログラムの複数のセルを示す図である。
【図2A】図2Aは、構造複屈折を発生させる3次元構造を有するセル構造を示す斜視図である。
【図2B】図2Bは、位相のレベル数が2であるセル構造を示す斜視図である。
【図2C】図2Cは、3次元構造を有するセル構造を示す別の斜視図である。
【図3】図3は、位相のレベル数が4であるセル構造を示す斜視図である。
【図4A】図4Aは、目標画像の一例を示す図である。
【図4B】図4Bは、X偏光に対する計算機ホログラムの位相分布を示す図である。
【図4C】図4Cは、Y偏光に対する計算機ホログラムの位相分布を示す図である。
【図4D】図4Dは、図4B及び図4Cに対応する計算機ホログラムの位相差分布を示す図である。
【図4E】図4Eは、図2Aに基づく異方性媒質の厚さ分布を示す図である。
【図4F】図4Fは、図2Aの異方性媒質により生じる位相シフトを補償する位相分布を示す図である。
【図4G】図4Gは、異方性媒質間の相対位相シフトを考慮して図2Aに基づく等方性媒質に対する位相分布を示す図である。
【図4H】図4Hは、図2Aに基づく等方性媒質の厚さ分布を示す図である。
【図5】図5は、本発明の一態様に係る露光装置の構成を示す図である。
【図6】図6は、複屈折材料を有するセル構造を示す斜視図である。
【図7A】図7Aは、図6に基づく異方性媒質の厚さ分布を示す図である。
【図7B】図7Bは、図6に基づく等方性媒質の厚さ分布を示す図である。
【図8】図8は、補償器を含む装置を示す図である。
【図9A】図9Aは、X軸に対して0°の方向の検光子を使用して再構成画像を示す図である。
【図9B】図9Bは、X軸に対して45°の方向の検光子を使用して再構成画像を示す図である。
【図9C】図9Cは、X軸に対して90°の方向の検光子を使用して再構成画像を示す図である。
【図9D】図9Dは、X軸に対して135°の方向の検光子を使用して再構成画像を示す図である。
【図10A】図10Aは、位相差の状態を示す図である。
【図10B】図10Bは、目標画像の一例を示す図である。
【図10C】図10Cは、X偏光に対する計算機ホログラムの位相分布を示す図である。
【図10D】図10Dは、Y偏光に対する計算機ホログラムの位相分布を示す図である。
【図10E】図10Eは、図10C及び図10Dに対応する計算機ホログラムの位相差分布を示す図である。
【図10F】図10Fは、異方性媒質の厚さ分布を示す図である。
【図10G】図10Gは、等方性媒質の厚さ分布を示す図である。
【図10H】図10Hは、X偏光及びY偏光に対する計算機ホログラムの位相差分布の別の例を示す図である。
【図11A】図11Aは、ホログラム平面におけるX偏光及びY偏光に対して分離された領域を示す図である。
【図11B】図11Bは、X偏光に対する計算機ホログラムの位相分布を示す図である。
【図11C】図11Cは、Y偏光に対する計算機ホログラムの位相分布を示す図である。
【図11D】図11Dは、図11B及び図11Cに基づいて組み合わされた位相分布を示す図である。
【図11E】図11Eは、X’偏光に対する計算機ホログラムの位相分布を示す図である。
【図11F】図11Fは、Y’偏光に対する計算機ホログラムの位相分布を示す図である。
【図11G】図11Gは、異方性媒質の厚さ分布を示す図である。
【図11H】図11Hは、等方性媒質の厚さ分布を示す図である。
【図12A】図12Aは、入射光の偏光方向を示す図である。
【図12B】図12Bは、入射光の偏光方向を示す図である。
【図12C】図12Cは、光学軸の方向を示す図である。
【図12D】図12Dは、光学軸の方向を示す図である。
【図12E】図12Eは、ホログラムから射出した光の偏光方向を示す図である。
【図12F】図12Fは、ホログラムから射出した光の偏光方向を示す図である。
【図13】図13は、設計方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付の図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態を以下に説明する。図中、同一の図中符号は同一部材を示し、重複する説明を省略する。
【0022】
図1Aは、複数の別個のCGHの代わりに本発明に係る実施形態に使用されるホログラム1100を示す。再構成画像は、ホログラム1100により生成される。ホログラム1100は、例えば計算機ホログラムであってもよい。
【0023】
図1Aに示すように、ホログラム1100は、入射光ILの波面の位相分布を変調することにより所定面PS上に光強度分布(すなわち、再構成画像)LIを形成する。ホログラムは、リソグラフィ装置の照明系のアパーチャの位置に配置可能である。光強度分布LIの形状は図1Aに示す形状に限定されない。ホログラム1100への入射光ILの入射方向を図中符号500で示す。
【0024】
ホログラム1100は、入射光ILの第1の偏光方向(例えば、X偏光)の第1の偏光成分(例えば、第1の直線偏光成分IL1)の位相を制御するように設計可能である。第1の直線偏光成分IL1は、所定面PS上に第1の光強度分布LI1を形成できる。
【0025】
ホログラム1100は、第1の偏光方向に対して垂直な第2の偏光方向(例えば、Y偏光)の第2の偏光成分(例えば、第2の直線偏光成分IL2)の位相を制御するように更に設計可能である。第2の直線偏光成分IL2は、所定面PS上に第2の光強度分布LI2を形成できる。
【0026】
再構成画像LIは、IL1及びIL2に加え、必要に応じて偏光及びY偏光から構成される光強度分布LI3を含むことができる。ホログラム1100は、IL1及びIL2がX偏光及びY偏光の合成により形成される光強度分布LI3を形成するようにX偏光及びY偏光の双方の位相を制御できる。光強度分布LI3において所定の偏光状態を得るため、所定面PSにおける光の振幅及び/又は位相が制御されてもよい。
【0027】
例えば、入射光ILがX軸に対して+45°の偏光方向の直線偏光である場合、所定面PSにおけるX偏光とY偏光との振幅比(強度比)を制御することにより、直線偏光の偏光方向は、X軸に対して0°〜+90°(0°及び+90°を含まない)の範囲で変更される。また、直線偏光の偏光方向がこの範囲で変更される場合、振幅比の制御に加えてX偏光とY偏光との間の位相差(例えば、π)が制御されてもよい。
【0028】
ホログラム1100は、第1の直線偏光成分及び第2の直線偏光成分の位相を制御するために、図1Bに示すような複数のセル1110(例えば、セル1110の集合)を含む。複数のセルは、再構成画像が目標画像に対応するように設計される。互いに異なる位相分布を得るために、X偏光及びY偏光の波面は、ホログラム1100により別々に制御されてもよい。
【0029】
セル1110は、異方性媒質及び等方性媒質を含むことができる。異方性媒質はX偏光とY偏光との間の位相差を制御でき、等方性媒質はX偏光及びY偏光の位相を均等に制御できる。セル内の等方性媒質の一部のZ方向の厚さは0であってもよい。異方性媒質の構造を形成するプロセスは、等方性媒質の構造を形成するプロセスより困難である。従って、製造上の観点から、本明細書中の説明は、異方性媒質の厚さのレベル数が等方性媒質の厚さのレベル数より少ないという条件を使用する。この条件を実現するために、X偏光とY偏光との間の位相差のレベル数は、X偏光及びY偏光の位相のレベル数より少なくなるように設計可能である。換言すると、複数のセル1110は、位相差分布の位相差のレベル数がX偏光又はY偏光の位相分布の位相のレベル数より少なくなるように設計可能である。
【0030】
CGHを用いてより高い回折効率(DE)を得るために、位相のレベル数を増やしてもよい。従来、CGHは位相のレベル数と同様の位相差のレベル数を有するように設計されるが、位相差のレベル数は位相のレベル数と等しくなくてもよい。
【0031】
図2Aは、構造複屈折を発生させる回折格子から形成された異方性媒質112を有するセル構造100を示す斜視図である。0次以外の回折光成分の発生を防止するため、格子のピッチPは入射光の波長より小さい。各セル110a〜110h(まとめて110と称する)の例を図2Aに示す。異方性媒質の光学軸(OA)は、複屈折が発生ない方向を示す。入射光が光学軸の方向に伝搬する場合、その方向と垂直な全ての偏光成分に対する屈折率は一定である。換言すると、常光線及び異常光線は、互いに一致するか又は偏差が最小限である。
【0032】
図2Aは、異方性媒質112の厚さのレベル数が1であり且つ等方性媒質114の厚さのレベル数がゼロの厚さを含めて4である例を示す。π/2の位相差を形成するため、異方性媒質の厚さはh112’である。等方性媒質の厚さh114(h114f、h114g、h114h)については詳細に後述する。セル110h(110d)における等方性媒質の厚さh114hは、セル110f(110b)における厚さの3倍である。セル110g(110c)における等方性媒質の厚さh114gは、セル110f(110b)における等方性媒質の厚さの2倍である。例えばh114f、h114g及びh114hの厚さは、3π/2、π及びπ/2の位相遅延をそれぞれ与えるように設計可能である。異方性媒質112の厚さのレベル数が1である場合、X軸に沿う溝を有するSWS(Sub-Wavelength Structure:入射光の波長以下の微細な周期を持つ構造)がX偏光の位相を遅延させ且つY軸に沿う溝を有するSWSがY偏光の位相を遅延させるため、位相差のレベル数は2である。等方性媒質114の厚さのレベル数が4である場合、位相の数は4である。異方性媒質として複屈折材料を使用できる。
【0033】
X偏光及びY偏光に対する位相分布が位相差に関する条件を用いずに等しく量子化された既定のレベルを使用して設計される場合、位相差のレベル数は位相のレベル数と同一であってもよい。位相の値に関してπは−πと同等であると考えられ、位相差の値に関してもπは−πと同等であると考えられる。
【0034】
図2Bは、位相差のレベル数及び位相のレベル数がそれぞれ2であるセル構造101を示す斜視図である。セル構造101は、セル111a、セル111b、セル111c及びセル111dを含むセル111を含む。位相差のレベル数が2であるため、異方性媒質112の溝の方向が異なる2種類のセルが存在する。位相のレベル数が2であるため、等方性媒質114のセルの厚さは2種類存在する。円偏光が入射光として使用される場合、入射光の位相差を相殺するために、π/2の位相シフトが使用される。この目的(すなわち、位相シフト)のため、第1の等方性媒質114aに別の第2の等方性媒質114bを追加できる。その場合、実際は等方性媒質114のセルの厚さは4種類存在する。
【0035】
図2Cは、セル構造102の別の例を示す。第1の等方性媒質114aは、X偏光及びY偏光の位相を均等に制御できる。第2の等方性媒質114bは、π/2の位相差を有する入射光の位相差を相殺できる。第1の等方性媒質(114a)及び第2の等方性媒質(114b)は分離しているものとして示されるが、それらは互いに組み合わされてもよい。入射光が第1の直線偏光成分(IL1)と第2の直線偏光成分(IL2)との間に位相差を有さない場合、あるいは入射光の双方の位相を等しくする必要がない場合、第2の等方性媒質114bは省略されてもよい。
【0036】
図2Cのセル110aの第1の等方性媒質(114a)及び第2の等方性媒質(114b)の厚さは、2πの位相シフトに対応するため、図2Aに示すように取り除くことができる。図2A及び図2Cのホログラムのセル構造が4つの位相レベルを有し且つセル110fの等方性媒質114aの最小ステップがπ/2に対応する場合、図2Cに示すように等方性媒質114bを追加しても等方性媒質の厚さの数は変更されない。換言すると、図2A及び図2Cの等方性媒質の厚さの数は同一である。従って、図2Bの異方性媒質及び等方性媒質の厚さの数は図2Aと同一である。製造工程が更に困難になることを防止する一方、本発明を使用することにより回折効率が低下する場合がある。特に、目標画像が非対称である場合、図2Bの等方性媒質114aから構成される2つの位相レベルにより得られる回折効率は50%未満であるが、図2Aに示すような2つの位相差レベル及び4つの位相レベルにより得られる回折効率は50%を上回る。
【0037】
図3は、位相差のレベル数及び位相のレベル数の双方が4であるセル構造を示す斜視図である。異方性媒質の数は2であり、これは図2Aより多い。セル310a〜310pを含むセル構造103内の異方性媒質112は、2種類の厚さ112a及び112bを有する。位相のレベル数を4とすることにより、位相レベル数が2のものよりも高い回折効率を得ることができる。
【0038】
位相差のレベル数が位相のレベル数より少ないという条件で位相分布が生成される場合、ホログラム設計の自由度を向上できる。位相差分布は、0及びPiの位相差値を交互に含むことができる。また、位相差分布は、インターレース分布又は市松模様の分布を有することができる。複数のセルは、交互に配置される第1の偏光成分(X偏光)の列及び第2の偏光成分(Y偏光)の列に分割できる。
【0039】
(例1:SWSを用いる位相差のランダム分布)
図1Aのホログラム1100としての計算機ホログラムの詳細な例を以下に説明する。
【0040】
光強度分布(目標画像)の設計の一例を図4Aに示す。この目標画像はS偏光から構成される。S偏光は、所定面PS上の各画素が直線偏光により形成され且つ各画素に対する偏光の方向が同心円の周方向に沿うことを意味する。所定面PS上での各偏光状態を図4Aの矢印で示す。
【0041】
図4Bはホログラムデータとして設計されたX偏光の位相分布を示し、図4Cはホログラムデータとして設計されたY偏光の位相分布を示す。セル数は16×16である。これらの位相分布は、X偏光とY偏光との間の位相差のレベル数がX偏光及びY偏光の位相のレベル数より少ないという条件で設計される。本例において、位相差のレベル数は図4Dに示すように2であり、位相のレベル数は実質的に無限大である。ホログラムデータは、ホログラム1100を通過する光が図4Bに示すようなX偏光の位相分布及び図4Cに示すようなY偏光の位相分布を有するように設計される。位相差のレベル数は3以上に設計可能であり、位相のレベル数は位相差の数が位相の数より少ないという条件で3以上無限大未満(例えば、4、8又は16)に設計可能である。
【0042】
上述のように、図4Dは、図4Cのセルに対応する位相の値から図4Bの各セルの位相の値を減算することにより得られるX偏光とY偏光との間の位相差分布を示す。図4Dにおける値は0又はπであり、これは位相差のレベル数が2に設計されることを意味する。
【0043】
図4Eは、図2Aに示すセル構造に基づいて生成された異方性媒質のZ方向の厚さ(単位:μm)の例を示し、図4Hは、同様に生成された等方性媒質のZ方向の厚さの例を示す。色の濃度は各セルの厚さを表す。色が白色に近いほど厚さが厚く、黒色に近いほど厚さが薄いことを示す。本明細書において、異方性媒質112は構造複屈折を発生させる回折格子から形成される。
【0044】
位相差φdを形成するため、異方性媒質112のz方向の厚さh112は次式を満たす必要がある:
式中、λは波長であり、nO及びnEは異方性媒質の屈折率である。本例において、λ = 193nm、nO = 1.31及びnE = 1.19である。nOは、SWSの溝の方向に沿う屈折率である。nEは、溝の方向に対して垂直な屈折率である。
【0045】
円偏光が入射光として使用される場合、厚さh112は次式で示すように半分にすることができる:
【0046】
この厚さはQWPの機能の実行に対応する。このh112’は位相差の数が2である場合に使用可能である。
【0047】
特許文献1(特開2006−196715号公報)は、構造複屈折を発生させる回折格子の一例として石英ガラスから作成された回折格子を開示している。特許文献1(特開2006−196715号公報)によると、石英ガラスが193nmの波長に対して1.56の屈折率を有し且つ構造複屈折領域における回折格子のデューティ比が1:1(=0.5)である場合、ピッチ方向における回折格子の屈折率nEは1.19であり、ピッチに対して垂直な方向における回折格子の屈折率nOは1.31である。
【0048】
本例において、図4Eの垂直溝領域と水平溝領域との間にはπ/2の相対位相シフトが存在する。この相対位相シフトは、等方性媒質114により補償可能である。X偏光に関して、高屈折率の媒質における波面は低屈折率の媒質における波面より進行速度が遅いため、水平溝領域の波面は、垂直溝領域の波面と比較してπ/2遅延する。図4Fは、この位相シフトを補償する位相分布を示す。各セルに対して、図4Bの値と図4Fの値との和は、位相シフトを考慮して図2Aに基づく等方性媒質によりX偏光を制御する位相分布を形成できる。図4Gは、等方性媒質により得られた位相分布φを示す。
【0049】
位相分布φを形成するため、等方性媒質の厚さh114は次式を満たす必要がある:
【0050】
式中、nは等方性媒質の屈折率である。本例において、n = 1.56である。図4Hは、この補償を含む等方性媒質の厚さの例を示す。
【0051】
SWSにより生成された位相分布は、各セルの内側に位相分布を有する場合がある。この現象はDEを低下させる場合がある。より小さいピッチPを使用することにより、各セルの内側の位相分布を減少できる。更に、各セルの内側の位相分布を考慮してホログラムの位相分布を設計することにより、各セルの内側の位相分布を減少できる。
【0052】
例1では、セル構造100のセル構造のみを説明し、回折格子は宙に浮いているものとして図示したが、異方性セル及び等方性セルは、石英ガラス等の基板上に形成可能である。
【0053】
例1では、計算機ホログラムが複数のセルを含む例を説明したが、光強度分布(目標画像)を分割する画素のサイズを小さくすることにより、計算機ホログラムのセル数を増加できる。画素が小さいほど、光強度分布は均一になる。
【0054】
関連技術の説明において別個のCGHとして説明した複数のCGHを組み合わせることによりホログラムが形成される場合、オプティカルインテグレータが入射光の強度分布を充分に補正できない場合(例えば、光がそれらCGHの一部にしか入射しない場合)に再構成画像に照射ムラが生じることがある。例1によると、照明ムラを減少できる。
【0055】
複数の別個のCGHが組み合わされる場合、別個のCGH間の境界における構造が不連続であることにより、不要な回折光が発生する場合がある。例1によると、不要な回折光により生じる再構成画像の劣化を減少できる。
【0056】
異方性媒質のレベルが多いほど、異方性媒質の構造を形成するプロセスは困難となる。例1によると、異方性媒質のレベル数は1であり、等方性媒質のレベル数は実質的に無限大である。従って、高いDEを実現しつつ、異方性媒質の処理の面で製造をより容易にできる。
【0057】
図5を参照して、ホログラム1100が適用される露光装置1を以下に説明する。図5は、露光装置1の構成の一例を示す。
【0058】
露光装置1は、ステップ・アンド・スキャン方式でウエハ40上にレチクル20のパターンを転写する投影露光装置である。しかし、露光装置1はステップ・アンド・リピート方式又は別の露光方式を採用してもよい。
【0059】
図5に示すように、露光装置1は照明装置10、レチクル20を支持するレチクルステージ(不図示)、投影光学系30及びウエハ40を支持するウエハステージ(不図示)を含む。
【0060】
照明装置10は、転写用回路パターンが形成されたレチクル20を照明し、光源16及び照明光学系18を含む。
【0061】
光源16は、例えば、波長約193nmのArFエキシマレーザ又は波長約248nmのKrFエキシマレーザ等のエキシマレーザである。しかし、光源16は、エキシマレーザに特に限定されず、例えば波長約157nmのF2レーザ又は波長範囲の狭い水銀ランプであってもよい。
【0062】
照明光学系18は、光源16からの光を用いてレチクル20を照明し、所定の照度を確保しつつ所定の偏光状態でレチクル20を変形照明する。本例において、照明光学系18は、引き回し光学系181、ビーム整形光学系182、偏光制御部183、位相制御部184、射出角度保存光学素子185、リレー光学系186、多光束発生部187、偏光状態調整部194及びホログラム1100を含む。照明光学系18は、リレー光学系188、開口189、ズーム光学系190、多光束発生部191、開口絞り192及び照射部193を更に含む。
【0063】
引き回し光学系181は、光源16からの光を偏向してビーム整形光学系182に導光する。ビーム整形光学系182は、光源16からの光の断面の縦横比率を所望の値に変換することにより(例えば、断面形状を長方形から正方形に変化させることにより)光源16からの光の断面を所望の形状に整形する。ビーム整形光学系182は、多光束発生部187を照明するのに必要な大きさ及び発散角度を有する光束を形成する。
【0064】
偏光制御部183は、例えば直線偏光子を含み、不要な偏光成分を除去する機能を有する。偏光制御部183により除去(遮光)された偏光成分を最小限にすることにより、光源16からの光を所望の直線偏光に効率よく変換できる。
【0065】
位相制御部184は、偏光制御部183により得られた直線偏光にλ/4の位相差を与えて、この直線偏光を円偏光に変換する。
【0066】
射出角度保存光学素子185は、例えばオプティカルインテグレータ(例えば、複数の微小レンズを含むフライアイレンズ又はファイバ束)を含み、所定の発散角度で光を射出する。
【0067】
リレー光学系186は、射出角度保存光学素子185から射出した光を多光束発生部187上に集光する。リレー光学系186は、フーリエ変換の関係(物体面と瞳面との間の関係又は瞳面と像面との間の関係)を保持するために射出角度保存光学素子185の射出面及び多光束発生部187の入射面を調整する。
【0068】
多光束発生部187は、偏光状態調整部194及び計算機ホログラム1100を均一に照明するためのオプティカルインテグレータ(例えば、複数の微小レンズを含むフライアイレンズ又はファイバ束)を含む。多光束発生部187の射出面は、複数の点光源を含む光源面を形成する。多光束発生部187から射出した光は、円偏光として偏光状態調整部194に入射する。
【0069】
偏光状態調整部194は、位相制御部184により得られた円偏光にλ/4の位相差を与えることにより、その円偏光を所望の偏光方向を有する直線偏光に変換する。偏光状態調整部194から射出した光は、直線偏光として計算機ホログラム1100に入射する。
【0070】
更に詳細には、1つの例において、光源16から生成された入射光はX偏光及びY偏光を含んでもよく、X偏光の振幅はY偏光の振幅と等しくてもよい。
【0071】
ホログラム1100は、リレー光学系188を介して開口189の位置に光強度分布(例えば、図1Aに示すような光強度分布LI)を形成する。ホログラム1100は上述の形態のうちのいずれであってもよく、本明細書中での詳細な説明を省略する。
【0072】
開口189は、ホログラム1100により形成される光強度分布のみを通過させる機能を有する。計算機ホログラム1100及び開口189は、フーリエ変換の関係を保持するように設定される。
【0073】
ズーム光学系190は、ホログラム1100により形成された光強度分布を所定の倍率で拡大して多光束発生部191上に投影する。
【0074】
多光束発生部191は照明光学系18の瞳面上に挿入され、その射出面上に開口189の位置に形成された光強度分布に対応する光源像(有効光源分布)を形成する。本例において、多光束発生部191は、フライアイレンズ又はシリンドリカルレンズアレイ等のオプティカルインテグレータを含む。開口絞り192は、多光束発生部191の射出面近傍に挿入される。
【0075】
照射部193は、例えば集光光学系を含み、多光束発生部191の射出面上に形成された有効光源分布を用いてレチクル20を照明する。
【0076】
レチクル20は、回路パターンを有し、レチクルステージ(不図示)により支持及び駆動される。レチクル20により生成された回折光は、投影光学系30を介してウエハ40上に投影される。露光装置1はステップ・アンド・スキャン方式であるため、レチクル20のパターンを走査することによりパターンをウエハ40上に転写する。
【0077】
投影光学系30は、レチクル20のパターンをウエハ40上に投影する。投影光学系30は屈折光学系であってもよく、反射屈折光学系であってもよく、あるいは反射光学系であってもよい。
【0078】
ウエハ40は、レチクル20のパターンが投影(転写)される基板であり、ウエハステージ(不図示)により支持及び駆動される。しかし、ウエハ40の代わりにガラスプレート又は別の基板を使用することもできる。ウエハ40にはレジストが塗布される。
【0079】
上述のように、計算機ホログラム1100は、単一方向に偏光された光の波面には位相分布を与えず、X偏光及びY偏光の双方の波面に異なる位相分布を2次元で与える。これにより、光量損失を殆ど発生させずに光強度分布LIを形成できる。
【0080】
露光において、光源16により放射された光は、照明光学系18によりレチクル20を照明する。レチクル20のパターンの情報を搬送する光は、投影光学系30によりウエハ40上に像を形成する。露光装置1に使用される照明光学系18は、照明ムラ及び光量損失を抑制でき、ホログラム1100により所望の形状及び偏光状態を有する光強度分布を形成できる。従って、露光装置1は、高いスループットで経済的に効率よく高品質のデバイス(例えば、半導体素子、LCD素子、撮像素子(例えば、CCD)及び薄膜磁気ヘッド)を提供できる。
【0081】
(例2:複屈折材料を用いる位相差のランダム分布)
図6は、異方性媒質が複屈折材料であるセル構造104を示す斜視図である。610a〜610hは各セルの例を示す。異方性媒質又は等方性媒質の一部の厚さはゼロである。図6は、位相差の数が2である例を示す。図6の構造は、入射光としての直線偏光に対して設計される。本例において、X軸に対する入射光の偏光方向は、図12Aに示すように+45°である。図6の空間113には、屈折率整合媒質を使用してもよい。空間113が異方性媒質の屈折率の一方と同一の屈折率を有する屈折率整合媒質で満たされる場合、異方性媒質及び屈折率整合媒質の組み合わせは、一方の偏光に対しては平面ガラスのように見え、他方の偏光に対しては半波長板(HWP)の格子のように見える。
【0082】
図4Aの目標画像を本例においても使用する。図7Aは図6に基づく異方性媒質の厚さの例を示し、図7Bは図6に基づく等方性媒質の厚さの例を示す。X偏光に対するホログラムデータを図4Bに示し、Y偏光に対するホログラムデータを図4Cに示す。
【0083】
図7Aは、λ = 193nm、nO = 1.31及びnE = 1.19であるパラメータを使用して計算された異方性媒質の厚さを示す。この厚さは、HWPの機能の実行に対応する。
【0084】
図6の空間113が異方性媒質の屈折率の一方と同一の屈折率を有する屈折率整合媒質で満たされる場合、図4B及び図4Cに示す位相分布の一方は、等方性媒質に対するホログラムデータとして使用可能である。本例において、nEが屈折率整合媒質の屈折率に使用される。その場合、異方性媒質及び屈折率整合媒質の組み合わせは、X偏光に対しては平面ガラスのように見え、Y偏光に対してはHWPの格子のように見える。従って、本例における等方性媒質に対する位相分布は、図4Bに示す位相分布である。屈折率整合媒質が使用される場合、厚みの誤差により生じる感度を1/nEに減少できる。図7Bは、屈折率n=1.56である等方性媒質の厚さを示す。
【0085】
本実施形態ではホログラム1100のセル構造のみを説明したが、上述の異方性セル及び等方性セルは基板上に形成されてもよい。
【0086】
図6において、各セルの異方性媒質の光学軸OAの方向は一致している。従って、ホログラム1100における全ての異方性媒質は、同一の異方性媒質の基板上に形成されてもよく、全ての等方性媒質は同一の等方性媒質の基板上に形成されてもよい。更に詳細には、異方性媒質から作成された基板は、複数のセル1110の上側に配置され、等方性媒質から作成された基板は複数のセル1110の下側に配置される。図6において、異方性媒質及び等方性媒質は互いに接するが、これらはZ方向に沿って互いに分離していてもよい。更に、4f系が異方性媒質と等方性媒質との間に存在してもよく、異方性媒質及び等方性媒質は4f系の共役面に配置されてもよい。
【0087】
4f系は結像系の1つを意味する。結像系において使用されるフーリエ変換(FT)レンズの焦点距離がfであるため、結像系の長さは4fである。物体面、FTレンズ、FT面、FTレンズ及び像面は結像系の端部から規則的な間隔で配置される。本例において、異方性媒質は物体面に、等方性媒質は像面に存在しているとしてよい。
【0088】
入射光の伝播方向に対して垂直な全ての偏光方向に対する屈折率が一定となるため、異方性媒質の光学軸は複屈折が発生しない方向を意味する。換言すると、常光線及び異常光線は互いに一致するか又は偏差が最小限である。
【0089】
異方性基板により不測の位相差を発生させないため、異方性基板は、平坦であり且つHWPの機能の実行に対応する厚さと2n(nは整数を表す)とを乗算して得られる厚さを有するのが理想的である。しかし、基板の両面が平坦であるが平行ではないというウェッジ誤差が存在する場合がある。また、厚さが理想値とは異なるという厚さ誤差が存在する場合もある。これらの誤差は、入射光を調整することにより補償してもよい。
【0090】
クイックルックテスト装置(QLTS)は、光源とホログラムを含む照明光学系とを含む装置である。
【0091】
図8を参照して、異方性媒質112及び等方性媒質114を含むホログラム1100が適用されるQLTS115を以下に説明する。QLTSは、ホログラムが所定面PSに再構成画像を形成できるかを確認するために使用される。
【0092】
光源116は、波長約633nmのHeNeレーザである。光のX偏光及びY偏光の強度比は偏光子117で制御される。本例において、補償器120がX偏光及びY偏光の強度比を変化させない場合、X軸に対する偏光方向は+45°である。
【0093】
補償器120は、ホログラム1100に対する入射光を調整する。補償器120は、偏光ビームスプリッタ(PBS)122a及び122b、第1の傾斜ミラー124、並びに圧電材料126を用いる第2の傾斜ミラーを含む。補償器120は、異方性基板のウェッジ誤差及び厚さ誤差又は結像系の他の偏光特有の収差が相殺されるようにホログラム1100に対する入射光を調整する。等方性基板812及び異方性基板814は別個に説明される。図8の図中符号130は4f系のレンズを示す。
【0094】
ここで、例えば直線偏光の作成方法及びX軸に対する偏光方向が入射光として図12Aに+45°で示される方法を説明する。第1のPBS122aは、光源から射出した光をホログラムに対するX偏光(磁気的横波:TM波)及びY偏光(電気的横波:TE波)に分割する。X偏光はPBSにより反射され、Y偏光はPBSを通過する。第2のPBS122bは、双方の偏光を合体してホログラムに対する入射光を作成する。X偏光及びY偏光に対する光路が、双方の光路の長さが互いに同一であることを含めて対称である場合、並びに補償器120がX偏光及びY偏光の強度比を変化させない場合、偏光子117を通過後と同一の偏光状態がホログラムに対する入射光として形成される。一般に、偏光子117を通過後の偏光状態は、ホログラムに対する期待された入射光と同一であってもよい。第1の傾斜ミラー124及び圧電材料を用いる第2の傾斜ミラー126を調整することにより、偏光状態は偏光子117を通過後の偏光状態から変化され、それにより、入射光は、異方性基板814又は偏光収差を発生させる偏光子117と等方性基板812との間の他の光学素子(図8には不図示)により生じるウェッジ誤差及び厚さ誤差を相殺するように較正される。偏光補償器の他の形態は、例えば機械アドレス型異方性材料及び/又は電気アドレス型異方性材料を含むことができる。
【0095】
補償された入射光は、ホログラム800を照明する。ホログラム800により回折された光は、フーリエ変換レンズ132を通過し、所定面PSに再構成画像を形成する。再構成画像の偏光方向を解析するため、検光子134がホログラム800と所定面との間に配置される。
【0096】
図9A〜図9Dは、実験においてX軸に対して0°、45°、90°及び135°の方向の検光子を使用して再構成画像を示す。実験において、λ = 633nm、nO = 1.656、nE = 1.485及びn = 1.598を使用した。複屈折材料の材料は、方解石(CaCO3)であり、厚さは1.85(μm)である。これは、式2(上記)により計算可能である。マッチングオイルはnEに等しい。セル数は512×512である。位相差のレベル数は2であり、位相のレベル数は128である。図9A〜図9Dの各々において、光軸を中心とする同心円の周方向の成分が観察される。従って、再構成画像は主にS偏光により形成される。
【0097】
(例3:位相差のインターレース分布I)
ホログラム1100としての計算機ホログラムの別の詳細な例を以下に説明する。
【0098】
製造の観点から、位相差のアレイ分布はランダム分布(例えば、図4D)より好ましい。本例において、図10Aの位相差のインターレース分布がアレイ分布として使用される。複数のセルを含むホログラムの位相差は0及びπを交互に含む。
【0099】
本例において使用される目標画像を図10Bに示す。この目標画像はS偏光から構成される。
【0100】
図10Cは、ホログラムデータとして設計されたX偏光の位相分布を示し、図10Dは同様に設計されたY偏光の位相分布を示す。これらの位相分布は、図10Aの位相差分布が維持された状態で設計される。
【0101】
図10Eは、図10Dのセルに対応する位相の値から図10Cの各セルの位相の値を減算することにより得られる、X偏光とY偏光との間の位相差を示す。この分布は図10Aの状態と同一であり、これは設計の反復ループにおいて状態が正確に維持されたことを意味する。
【0102】
図10Fは、図6に基づく異方性媒質の厚さの例を示し、図10Gは、図6に基づく等方性媒質の厚さの例を示す。本例において、λ = 193nm、nO = 1.31、nE = 1.19及びn = 1.56である。異方性媒質における光学軸はX軸に沿い、マッチングオイルの屈折率はnEに等しい。図10Gの厚さ分布は図10Cの位相分布に対応する。
【0103】
図10Fは、複数のセルを含むホログラムの位相差が交互に0及びπであることを示す。
【0104】
位相差のアレイ分布は、図10Aに示すインターレース分布に限定されない。図10Hはアレイ分布の別の例を示す。図10Hは、位相差分布が市松模様のパターンであることを示す。
【0105】
(例4:位相差のインターレース分布II)
ホログラム1100としての計算機ホログラムの他の詳細な例を以下に説明する。この例は、例3の別の設計方法であると考えられる。
【0106】
本例において、ホログラム平面におけるX偏光及びY偏光に対する領域は、図11Aに示すように分離される。例えば、1列目及び2列目はX偏光110xに対するセルであり、3列目及び4列目はY偏光110yに対するセルであるというように続く。
【0107】
本例において、図10Aのインターレース分布をアレイ分布として更に使用する。図10Bの目標画像を更に使用する。
【0108】
図11Bは、ホログラム設計のための反復におけるX偏光の位相分布の一例を示し、図11Cは同様のY偏光の位相分布の一例を示す。それらは各反復ループにおいて図11Dに示すように組み合わされる。図11Eは、設計されたホログラムの一例を示す。
【0109】
設計方法のフローチャートを図13に示す。これはGerchberg-Saxton法を修正したものである。S100において、初期共通ディフューザが[−π,π]にわたる均一なランダム位相のアレイ(配列)として定義される。ディフューザは、所定面上の位相分布がランダム位相から構成されることを意味する。換言すると、ディフューザは位相分布が多数の空間周波数を有することを意味する。計算ループの第1のステップS102において、計算に使用するため、式5及び式6(上記)により定義される理想の像にディフューザを乗算して、ディフューザを乗算した2つの目標画像(x及びy)を作成する。第2のステップS104において、フーリエ変換を各像に適用し、これにより計算はホログラム平面に変換される。第3のステップS106において、各変換の絶対値は1に設定される。換言すると、変換された各複素振幅は1に設定される。第4のステップS108において、逆フーリエ変換が第3のステップS106の結果の位相分布に適用され、これにより計算が所定面に戻される。次に第5のステップS110において、理想の物体の位相
及び
が像の推定値
及び
から除去される。第6のステップS112において、結果として得られた複素振幅を平均して
を生成する。第7のステップS114において、共通ディフューザの位相
が抽出される。共通ディフューザの位相
は、単に
の偏角である。次のループ(j=2)において、
が第1のステップS102のディフューザの始点として使用される。図13に示す処理は、ループを複数回、通常は50回実行した後、ディフューザが像の推定値
及び
の許容可能な特性を生成するように収束し、第3のステップS106で計算された位相がPCGH(Polarization computer generated hologram: 偏光CGH)の個々の成分として使用される時点で終了する。計算中の第3のステップS106において、例えば、DOE(Diffractive optical element: 回折光学素子)に対する開口関数の適用又は位相量子化の導入等のオプションの動作が実行されてもよい。
【0110】
【0111】
図11Aのような状態のホログラムを照明するため、図11Gに示す異方性媒質が使用可能である。光学軸は、図12Dに示すようにX軸に対して+45°の方向に沿う。
【0112】
入射光は直線偏光であり、偏光方向は図12Bに示すようにX軸に沿う。
【0113】
図11Gは、図6に基づく異方性媒質の厚さの例を示し、図11Hは、図6に基づく等方性媒質の厚さの例を示す。本例において、λ = 193nm、nO = 1.31、nE = 1.19及びn = 1.56である。異方性媒質における光学軸はX軸に沿い、マッチングオイルの屈折率はnEと等しい。
【0114】
図12Aは例3における入射光の偏光方向を示し、図12Bは例4における入射光の偏光方向を示す。図12Cは例3における光学軸の方向を示し、図12Dは図4における光学軸の方向を示す。図12Eは例3におけるホログラムから射出した光の偏光方向を示し、図12Fは例4におけるホログラムから射出した光の偏光方向を示す。
【0115】
本例における全ての角度は例3における角度から45°回転される。ここで、X’は図11Eに示すようにX軸に対して+45°の方向を有すると定義する。Y’は図11Eに示すようにY軸に対して+45°の方向を有すると定義する。X軸に沿う直線偏光であるX’偏光は第3の偏光成分であると考えられ、Y軸に沿う直線偏光であるY’偏光は第4の偏光成分であると考えられる。この回転により、図11Fに示す位相分布が図10Aに示す位相分布及び図11Eに示す位相分布を加算することにより得られる。図11E及び図11Fは、X’偏光及びY’偏光の位相分布であると考えられる。図10Aは、X’偏光とY’偏光との間の位相差分布であると考えられる。
【0116】
QLTSを用いて図11G及び図11Hのホログラムをテストする場合、ホログラムは図11E及び図11FのX’軸及びY’軸が図8のX軸及びY軸に重なるように回転される。
【0117】
本例におけるX’及びY’は例3におけるX及びYであると考えられる。従って、本例は別の設計方法であると考えられる。また、例3はX’偏光及びY’偏光に対して生成されたCGHが組み合わされたものであると見なされる。
【0118】
本例において、ホログラム平面におけるX偏光及びY偏光に対する領域は、図11Gに示す異方性媒質を使用して分離される。異方性媒質を使用する代わりに、2つのロンキー格子を使用できる。ロンキー格子は、透過率が1である領域及び透過率が0である領域が交互に配列されたものである。一方のロンキー格子は、図8の補償器の一方の光路(例えば、TM波に対する光路)に配置されてもよい。他方のロンキー格子は、図8の補償器の他方の光路(例えば、TE波に対する光路)に配置されてもよい。
【0119】
好適な実施形態を参照して本発明に係る実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されないことが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲の範囲は、そのような変更、並びに等価の構造及び機能の全てを含むように広範に解釈されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を使用して所定面に光強度分布を形成するホログラムであって、
前記入射光の第1の偏光方向の第1の偏光成分の位相と前記第1の偏光方向に対して垂直な第2の偏光方向の第2の偏光成分の位相との双方を制御して、前記第1の偏光成分の位相分布と前記第2の偏光成分の位相分布との間の位相差分布を形成するように構成された複数のセルを備え、
前記複数のセルは、前記位相差分布の位相差のレベル数が前記第1の偏光成分の前記位相分布の位相のレベル数より少なくなるように設計されている、ことを特徴とするホログラム。
【請求項2】
前記複数のセルは、等方性媒質及び異方性媒質を含む、ことを特徴とする請求項1記載のホログラム。
【請求項3】
前記異方性媒質は、前記入射光の波長よりも周期が細かい構造を含む、ことを特徴とする請求項2記載のホログラム。
【請求項4】
前記異方性媒質は、複屈折材料を含む、ことを特徴とする請求項2記載のホログラム。
【請求項5】
前記位相差分布は、0及びpiの位相差値を交互に含む、ことを特徴とする請求項1記載のホログラム。
【請求項6】
前記位相差分布は、インターレース分布を含む、ことを特徴とする請求項1記載のホログラム。
【請求項7】
前記位相差分布は、0及びpiの値が交互に配置されたインターレース分布を含む、ことを特徴とする請求項1記載のホログラム。
【請求項8】
前記位相差分布は、市松模様分布を含む、ことを特徴とする請求項1記載のホログラム。
【請求項9】
前記複数のセルは、第3の偏光成分の列と前記第3の偏光成分に対して垂直な第4の偏光成分の列とが交互に配置されて分割される、ことを特徴とする請求項1記載のホログラム。
【請求項10】
前記第3の偏光成分の偏光方向は、前記第1の偏光方向を45°回転して得られる方向に対応し、前記第4の偏光成分の偏光方向は、前記第2の偏光方向を45°回転して得られる方向に対応する、ことを特徴とする請求項9記載のホログラム。
【請求項11】
前記位相差のレベル数は2である、ことを特徴とする請求項1記載のホログラム。
【請求項12】
前記位相のレベル数は2以上である、ことを特徴とする請求項1記載のホログラム。
【請求項13】
光源と、入射光を使用して所定面に光強度分布を形成するホログラムを含む照明光学系とを備えた装置であって、
前記ホログラムは、前記入射光の第1の偏光方向の第1の偏光成分の位相と前記第1の偏光方向に対して垂直な第2の偏光方向の第2の偏光成分の位相との双方を制御して、前記第1の偏光成分の位相分布と前記第2の偏光成分の位相分布との間の位相差分布を形成するように構成された複数のセルを備え、
前記複数のセルは、前記位相差分布の位相差のレベル数が前記第1の偏光成分の前記位相分布の位相のレベル数より少なくなるように設計されている、ことを特徴とする装置。
【請求項14】
偏光ビームスプリッタ及び傾斜ミラーを含む入射光補償器を更に備える、ことを特徴とする請求項13記載の装置。
【請求項15】
露光装置であって、
光源を用いてレチクルを照明するように構成され、入射光を使用して所定面に光強度分布を形成するホログラムを含む照明光学系と、
前記レチクルのパターンを基板上に投影するように構成された投影光学系と、を備え、
前記ホログラムは、前記入射光の第1の偏光方向の第1の偏光成分の位相と前記第1の偏光方向に対して垂直な第2の偏光方向の第2の偏光成分の位相との双方を制御して、前記第1の偏光成分の位相分布と前記第2の偏光成分の位相分布との間の位相差分布を形成するように構成された複数のセルを備え、
前記複数のセルは、前記位相差分布の位相差のレベル数が前記第1の偏光成分の前記位相分布の位相のレベル数より少なくなるように設計されている、ことを特徴とする露光装置。
【請求項1】
入射光を使用して所定面に光強度分布を形成するホログラムであって、
前記入射光の第1の偏光方向の第1の偏光成分の位相と前記第1の偏光方向に対して垂直な第2の偏光方向の第2の偏光成分の位相との双方を制御して、前記第1の偏光成分の位相分布と前記第2の偏光成分の位相分布との間の位相差分布を形成するように構成された複数のセルを備え、
前記複数のセルは、前記位相差分布の位相差のレベル数が前記第1の偏光成分の前記位相分布の位相のレベル数より少なくなるように設計されている、ことを特徴とするホログラム。
【請求項2】
前記複数のセルは、等方性媒質及び異方性媒質を含む、ことを特徴とする請求項1記載のホログラム。
【請求項3】
前記異方性媒質は、前記入射光の波長よりも周期が細かい構造を含む、ことを特徴とする請求項2記載のホログラム。
【請求項4】
前記異方性媒質は、複屈折材料を含む、ことを特徴とする請求項2記載のホログラム。
【請求項5】
前記位相差分布は、0及びpiの位相差値を交互に含む、ことを特徴とする請求項1記載のホログラム。
【請求項6】
前記位相差分布は、インターレース分布を含む、ことを特徴とする請求項1記載のホログラム。
【請求項7】
前記位相差分布は、0及びpiの値が交互に配置されたインターレース分布を含む、ことを特徴とする請求項1記載のホログラム。
【請求項8】
前記位相差分布は、市松模様分布を含む、ことを特徴とする請求項1記載のホログラム。
【請求項9】
前記複数のセルは、第3の偏光成分の列と前記第3の偏光成分に対して垂直な第4の偏光成分の列とが交互に配置されて分割される、ことを特徴とする請求項1記載のホログラム。
【請求項10】
前記第3の偏光成分の偏光方向は、前記第1の偏光方向を45°回転して得られる方向に対応し、前記第4の偏光成分の偏光方向は、前記第2の偏光方向を45°回転して得られる方向に対応する、ことを特徴とする請求項9記載のホログラム。
【請求項11】
前記位相差のレベル数は2である、ことを特徴とする請求項1記載のホログラム。
【請求項12】
前記位相のレベル数は2以上である、ことを特徴とする請求項1記載のホログラム。
【請求項13】
光源と、入射光を使用して所定面に光強度分布を形成するホログラムを含む照明光学系とを備えた装置であって、
前記ホログラムは、前記入射光の第1の偏光方向の第1の偏光成分の位相と前記第1の偏光方向に対して垂直な第2の偏光方向の第2の偏光成分の位相との双方を制御して、前記第1の偏光成分の位相分布と前記第2の偏光成分の位相分布との間の位相差分布を形成するように構成された複数のセルを備え、
前記複数のセルは、前記位相差分布の位相差のレベル数が前記第1の偏光成分の前記位相分布の位相のレベル数より少なくなるように設計されている、ことを特徴とする装置。
【請求項14】
偏光ビームスプリッタ及び傾斜ミラーを含む入射光補償器を更に備える、ことを特徴とする請求項13記載の装置。
【請求項15】
露光装置であって、
光源を用いてレチクルを照明するように構成され、入射光を使用して所定面に光強度分布を形成するホログラムを含む照明光学系と、
前記レチクルのパターンを基板上に投影するように構成された投影光学系と、を備え、
前記ホログラムは、前記入射光の第1の偏光方向の第1の偏光成分の位相と前記第1の偏光方向に対して垂直な第2の偏光方向の第2の偏光成分の位相との双方を制御して、前記第1の偏光成分の位相分布と前記第2の偏光成分の位相分布との間の位相差分布を形成するように構成された複数のセルを備え、
前記複数のセルは、前記位相差分布の位相差のレベル数が前記第1の偏光成分の前記位相分布の位相のレベル数より少なくなるように設計されている、ことを特徴とする露光装置。
【図1A】
【図1B】
【図5】
【図8】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図10G】
【図10H】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図11G】
【図11H】
【図13】
【図1B】
【図5】
【図8】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図10G】
【図10H】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図11G】
【図11H】
【図13】
【公開番号】特開2011−191757(P2011−191757A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−48062(P2011−48062)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(511058475)アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティー オブ アリゾナ (3)
【氏名又は名称原語表記】Arizona Board of Regents on behalf of the University of Arizona
【住所又は居所原語表記】Rm. 204, 888 N. Euclid Ave., Tucson, AZ 85721−0158, USA
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48062(P2011−48062)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【出願人】(511058475)アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティー オブ アリゾナ (3)
【氏名又は名称原語表記】Arizona Board of Regents on behalf of the University of Arizona
【住所又は居所原語表記】Rm. 204, 888 N. Euclid Ave., Tucson, AZ 85721−0158, USA
【Fターム(参考)】
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