説明

ホログラム素子、ホログラム素子作製装置、ホログラム素子作製方法、およびホログラム再生装置

【課題】再生参照光光学系の調整を容易にするホログラム素子、ホログラム素子作製装置、ホログラム素子作製方法、およびホログラム再生装置を提供する。
【解決手段】参照光RLは、角度回転ミラー25で偏向され、設定された入射角度でホログラム記録媒体30に照射される。当該照射された参照光RLは、ホログラム記録媒体30内で信号光SLと重なり、その結果発生する干渉縞の光強度分布がホログラムとして記録される。ホログラム記録媒体30に入射した参照光RLは、一部がホログラム記録媒体30を透過する。当該透過した参照光RLは、1/4波長板41を通ってホログラム素子40に入射する。当該入射した参照光RLは、ホログラム素子40によって、入射角度に関わらずその進行方向を逆向きに変えられ、往路と同一の光路を通ってホログラム記録媒体30に再び照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホログラム素子、ホログラム素子作製装置、ホログラム素子作製方法、およびホログラム再生装置に関し、特に、角度多重方式で記録された情報の再生に用いられるホログラム素子、ホログラム素子作製装置、ホログラム素子作製方法、およびホログラム再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ホログラム技術を利用して大容量のデータを記録および/または再生するホログラム記録再生装置が提案されている(たとえば、特許文献1および非特許文献1参照)。このようなホログラム記録再生装置では、記録密度向上のために多重記録という手法が採られている。
【0003】
図7は、従来の角度多重記録方式のホログラム記録再生装置100の記録時の構成を示した図である。
【0004】
図7を参照して、従来のホログラム記録再生装置100は、レーザ光源101と、スペイシャルフィルタ102と、シャッター103と、コリメートレンズ104と、半波長板105,113と、信号光/参照光分離用の偏光ビームスプリッタ(PBS)106と、ビームエキスパンダ107と、記録光/再生光分離用の偏光ビームスプリッタ108と、空間光変調器(SLM)109と、撮像素子110と、リレーレンズ111,116と、ポリトピックアパーチャ112と、対物レンズ114と、角度回転ミラー115とを備える。ホログラム記録再生装置100は、ホログラム記録媒体120内に信号光SLと参照光RLとを干渉させて干渉縞を記録し、参照光RLの入射角を変化させてホログラムを角度多重方式で記録する。
【0005】
次に、ホログラム記録再生装置100の記録時の動作について説明する。
レーザ光源101から出射されたレーザ光PLは、スペイシャルフィルタ102により点光源にされた後、シャッター103を通り、コリメートレンズ104により所望のビーム径に変換される。当該変換光は、偏光ビームスプリッタ106で信号光SLと参照光RLとに分割される。信号光SLと参照光RLとの分割比率は、半波長板105の回転により調整される。
【0006】
参照光RLは、角度回転ミラー115で偏向され、テレセントリックレンズ2枚で構成されたリレーレンズ116を通り、設定された入射角度でホログラム記録媒体120に照射される。ホログラム記録媒体120への参照光RLの入射角は、X軸を中心に回転する角度回転ミラー115の回転角が変化することで変更される。
【0007】
ホログラム記録媒体120への参照光RLの入射位置は、リレーレンズ116がテレセントリックレンズ2枚で構成されているため、角度回転ミラー115を回転させても変化しないようになっている。参照光RLは、角度回転ミラー115が回転ミラー115aの位置にあるときは実線の経路をたどってホログラム記録媒体120へ入射し、角度回転ミラー115が回転ミラー115bの位置にあるときは破線の経路をたどってホログラム記録媒体120へ入射する。そのため、図7に示すように、いずれの経路であっても、ホログラム記録媒体120への参照光RLの入射位置は変化しない。
【0008】
信号光SLは、空間光変調器109の全面を照射するようにビームエキスパンダ107によって光束径が調整され、空間光変調器109によって振幅変調または位相変調を受ける。変調された信号光SLは、偏光ビームスプリッタ108で反射され、ホログラム記録媒体120の方向に導かれる。空間光変調器109で発生する不要回折光は、ポリトピックアパーチャ112により遮光される。偏光ビームスプリッタ108で反射された信号光SLは、リレーレンズ111および半波長板113を通り、対物レンズ114によってホログラム記録媒体120内に集光される。集光された信号光SLは、ホログラム記録媒体120内で上記の参照光RLと重なり、その結果発生する干渉縞の光強度分布がホログラムとして記録される。
【0009】
ホログラム記録媒体120にいったん情報が記録された後、次に記録されるデータページが空間光変調器109に表示される。これとともに、角度回転ミラー115がわずかに回転して、参照光RLの入射角度が変更される。その後、シャッター113が開くと、次に記録されるデータページがホログラム記録媒体120の同一記録領域に多重角度で記録される。これを繰り返して所定の多重度になると、ホログラム記録媒体120をX方向またはY方向に移動させ、次の記録領域に上記と同様の多重記録が行なわれる。
【0010】
図8は、従来の角度多重記録方式のホログラム記録再生装置100Aの再生時の構成を示した図である。
【0011】
図8のホログラム記録再生装置100Aの構成は、レンズ141と固定反射ミラー142とからなる再生参照光光学系140が付加された以外は、図7のホログラム記録再生装置100と同じである。よって、重複する部分の説明はここでは繰り返さない。
【0012】
ホログラム記録再生装置100Aは、装置の小型化に有利な位相共役再生方式と呼ばれる方式を採用している。レンズ141は、ホログラム記録媒体120のホログラムが記録されている領域から焦点距離だけ離れた位置に配置されている。固定反射ミラー142は、レンズ141から焦点距離だけ離れた、レンズ141を挟んでホログラム記録媒体120の反対側に設置されている。
【0013】
次に、ホログラム記録再生装置100Aの再生時の動作について説明する。
再生時には、半波長板105を回転させて、レーザ光PLがS偏光となるように調整する。S偏光のレーザ光PLは偏光ビームスプリッタ106ですべて反射されるため、再生参照光CRLのみが発生する。再生参照光CRLは、角度回転ミラー115およびリレーレンズ116を経て、ホログラム記録媒体120をいったん透過する。当該透過した再生参照光CRLは、レンズ141により偏向されて、固定反射ミラー142に垂直に入射する。当該垂直入射した再生参照光CRLは、反射されて往路と同じ経路を逆にたどってホログラム記録媒体120に入射する。
【0014】
再生参照光CRLのホログラム記録媒体120への照射により、対物レンズ114の方向に再生光CLが発生する。再生光CLは、対物レンズ114、リレーレンズ111などを通って、撮像素子110に結像される。当該結像された再生光CLに基づいて、再生画像データが生成される。次に、角度回転ミラー115を回転させて、再生参照光CRLのホログラム記録媒体120への入射角度を変化させる。これにより、ホログラム記録媒体120の同一領域から別のデータページに対応する再生光CLを発生させ、撮像素子110により次の再生画像データが生成される。
【0015】
上記の再生動作において、再生参照光CRLは隣接するホログラムにも照射されるため、その隣接するホログラムからも再生光CLが発生する。しかしながら、その隣接ホログラムからの再生光CLは、上述のポリトピックアパーチャ112で遮光することができる。そのため、図8のホログラム記録再生装置100Aでは、ホログラム記録媒体120の面内方向(X方向およびY方向)の記録間隔を詰めても、クロストークの少ない再生動作が可能となる。
【0016】
図9は、従来の角度多重記録方式のホログラム記録再生装置100Bの再生時の構成を示した図である。
【0017】
図9のホログラム記録再生装置100Bの構成は、再生参照光光学系140が角度回転ミラー143に置き換えられた以外は、図8のホログラム記録再生装置100Aと同じである。よって、重複する部分の説明はここでは繰り返さない。ホログラム記録再生装置100Bもまた、位相共役再生方式と呼ばれる方式を採用している。
【0018】
次に、ホログラム記録再生装置100Bの再生時の動作について説明する。
図9を参照して、再生参照光CRLは、ホログラム記録媒体120をいったん通過した後、角度回転ミラー143によって反射される。角度回転ミラー143は、入射される再生参照光CRLに対して垂直な角度に設定されている。そのため、再生参照光CRLは、往路と同じ経路を逆にたどってホログラム記録媒体120に入射する。これにより、上述したように、再生光CLが発生し、この再生光CLが撮像素子110に導かれることで再生画像データが得られる。
【0019】
次に、角度回転ミラー115,143を回転させて、再生参照光CRLのホログラム記録媒体120への入射角度を変化させる。これにより、ホログラム記録媒体120の同一の記録領域から別のデータページに対応する再生光CLを発生させ、撮像素子110により次の再生画像データを得る。
【特許文献1】特開2006−317886号公報
【非特許文献1】イアン・レッドモンド(Ian Redmond)著、「インフェイズ社の職業的アーカイブドライブOMA:デザインと機能(The InPhase Professional Archive Drive OMA: Design and Function)」、光データ記憶の時事的会議2006(Optical Data Storage Topical Meeting 2006(ODS2006)、テクニカルダイジェスト(招待講演))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
図8のホログラム記録再生装置100Aでは、ホログラム記録媒体120から焦点距離だけ離れた位置にレンズ141を配置し、さらにレンズ141から焦点距離だけ離れた位置に固定反射ミラー142を正確に配置する必要がある。そのため、光学系の調整が難しい。また、長時間の稼動により再生参照光光学系140の位置関係が崩れる可能性があり、耐久性に不安があるという問題があった。また、図9に示したホログラム記録再生装置100Bにおいては、角度回転ミラー115,143の回転角度を連動して制御する必要があるという問題があった。
【0021】
それゆえに、この発明の目的は、再生参照光光学系の調整を容易にするホログラム素子、ホログラム素子作製装置、ホログラム素子作製方法、およびホログラム再生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この発明のある局面によれば、入射された光束を偏向させるためのホログラム素子であって、ホログラム素子の外にある基点を通りホログラム素子へ入射する光束を受けるホログラムを含み、ホログラムは、光束を入射方向と逆向きに進む回折光として基点を通るように出射する。
【0023】
好ましくは、光束の各々および回折光の各々は、いずれも平行光である。
好ましくは、ホログラムは多重記録されている。
【0024】
好ましくは、ホログラムは、ホログラム素子に対する光束の入射角度を変えて多重記録されており、光束の入射角度によらず一定の回折効率で回折光を出射する。
【0025】
この発明の他の局面によれば、入射された光束を偏向させるためのホログラム素子を作製するホログラム素子作製装置であって、ホログラム素子作製用の作製参照光がホログラム素子に入射する角度および位置を調整する偏向部と、偏向部に合わせて円弧状に移動し、ホログラム素子を透過した後の作製参照光を垂直に受けて、ホログラム素子作製用の作製信号光として、作製参照光のホログラム素子への入射位置に反射する反射部とを備える。
【0026】
好ましくは、偏向部の角度を調整して作製参照光と作製信号光とをホログラム素子の所定の位置で干渉させることにより多重記録する。
【0027】
この発明の他の局面によれば、入射された光束を偏向させるためのホログラム素子を作製するホログラム素子作製方法であって、ホログラム素子作製用の作製参照光がホログラム素子に入射する角度および位置を調整するステップと、ホログラム素子を透過した後の作製参照光を、ホログラム素子作製用の作製信号光として、作製参照光のホログラム素子への入射位置に垂直に反射するステップと、作製参照光と作製信号光とをホログラム素子の所定の位置で干渉させることにより多重記録するステップとを含む。
【0028】
この発明の他の局面によれば、ホログラム記録媒体から情報を再生するホログラム再生装置であって、再生参照光がホログラム記録媒体に入射する角度および位置を調整する偏向部と、ホログラム記録媒体を透過した再生参照光を、入射角度に関わらず進行方向の逆向きに回折光として反射するホログラム素子とを備える。
【0029】
好ましくは、ホログラム素子は、ホログラム素子の外にある基点を通りホログラム素子へ入射する光束を受けるホログラムを含み、ホログラムは、光束を入射方向と逆向きに進む回折光として基点を通るように出射する。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、再生参照光光学系の調整が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0032】
図1は、この発明の実施の形態によるホログラム記録再生装置10の構成を示した図である。
【0033】
図1を参照して、この発明の実施の形態によるホログラム記録再生装置10は、レーザ光源11と、スペイシャルフィルタ12と、シャッター13と、コリメートレンズ14と、半波長板15,23と、信号光/参照光分離用の偏光ビームスプリッタ(PBS)16と、ビームエキスパンダ17と、記録光/再生光分離用の偏光ビームスプリッタ18と、空間光変調器(SLM)19と、撮像素子20と、リレーレンズ21,26と、ポリトピックアパーチャ22と、対物レンズ24と、角度回転ミラー25と、ホログラム素子40と、1/4波長板41とを備える。
【0034】
ポリトピックアパーチャ22は一例であって、他のアパーチャであってもよい。ホログラム記録再生装置10は、ホログラム記録媒体30内に信号光SLと参照光RLとを干渉させて干渉縞を記録し、参照光RLの入射角を変化させてホログラムを角度多重方式で記録する。
【0035】
図2は、図1のホログラム記録再生装置10の記録時の動作を説明するための部分拡大図である。
【0036】
図2では、説明を簡単にするために、図1のホログラム記録再生装置10のうち、参照光RLがホログラム記録媒体30に入射される部分について、拡大して示している。なお、図2に示さないその他の光学系の記録時の動作は、前述した従来のホログラム記録再生装置100と同様であるので、ここでは説明を繰り返さない。
【0037】
信号光SLは、記録時、前述した従来のホログラム記録再生装置100と同様にホログラム記録媒体30に照射される。一方、参照光RLは、角度回転ミラー25で偏向され、リレーレンズ26を通り、設定された入射角度でホログラム記録媒体30に照射される。当該照射された参照光RLは、ホログラム記録媒体30内で信号光SLと重なり、その結果発生する干渉縞の光強度分布がホログラムとして記録される。なお、ホログラム記録媒体30への参照光RLの入射角は、X軸を中心に回転する角度回転ミラー25の回転角が変化することで変更される。
【0038】
なお、ホログラム記録媒体30に入射した参照光RLは、一部がホログラム記録媒体30を透過する。当該透過した参照光RLは、1/4波長板41を通ってホログラム素子40に入射する。当該入射した参照光RLは、ホログラム素子40によって、入射角度に関わらずその進行方向を逆向きに変えられ、往路と同一の光路を通ってホログラム記録媒体30に再び照射される。
【0039】
このとき、参照光RLは、1/4波長板41を2回通ったことによって、その偏光方向がP偏光からS偏光に変えられる。信号光SLはS偏光であるため、ホログラム素子40から戻った参照光RLと信号光SLとでは干渉が起こらず、ホログラムの記録に影響を与えない。なお、1/4波長板41の代わりにシャッターを用いてもよい。この場合、記録時にはシャッターを閉じておき、再生の際には開いておけばよい。
【0040】
図3は、図1のホログラム記録再生装置10の再生時の動作を説明するための部分拡大図である。
【0041】
図3では、図2と同様に、図1のホログラム記録再生装置10のうち、再生参照光CRLがホログラム記録媒体30に入射される部分について、拡大して示している。なお、図3に示さないその他の光学系の再生時の動作は、前述した従来のホログラム記録再生装置100A,100Bと同様であるので、ここでは説明を繰り返さない。
【0042】
再生参照光CRLは、再生時、前述した従来のホログラム記録再生装置100A,100Bと同様に、ホログラム記録媒体30に照射される。再生参照光CRLは、記録されていたホログラムにより一部が直接の再生光CLとして信号光SLの進行方向に回折し、他の一部はホログラム記録媒体30を透過する。当該透過した再生参照光CRLは、1/4波長板41を通ってホログラム素子40に入射する。
【0043】
当該入射した再生参照光CRLは、ホログラム素子40によって、入射角度に関わらずその進行方向を逆向きに変えられ、往路と同一の光路を通ってホログラム記録媒体30に再び照射される。その結果、記録されていたホログラムにより再生光CLが発生し、記録時の信号光SLと同一の光路をたどって撮像素子110に導かれることで、再生画像データが得られる。なお、ホログラム記録再生装置10は、ホログラム記録装置とホログラム再生装置とに分けて構成することも可能である。
【0044】
ホログラム素子40の材料としては、光の干渉縞、すなわちホログラムを記録できるような材料、具体的には感光性のポリマー材料などを用いることができる。ホログラム素子40の作製および動作原理について、以下で詳しく説明する。
【0045】
図4は、この発明の実施の形態によるホログラム素子作製装置90の構成を示した図である。
【0046】
図4を参照して、この発明の実施の形態によるホログラム素子作製装置90は、レーザ光源91と、スペイシャルフィルタ92と、シャッター93と、コリメートレンズ94と、半波長板95と、偏光ビームスプリッタ(PBS)96と、1/4波長板97と、角度回転ミラー98と、反射ミラー99とを備える。ホログラム素子作製装置90は、ホログラム素子40の材料に多重記録でホログラムを記録することにより、ホログラム素子40を作製する。
【0047】
レーザ光源91から出射されたレーザ光HLは、スペイシャルフィルタ92により点光源にされた後、シャッター93を通り、コリメートレンズ94により所望のビーム径に変換される。当該変換光は、半波長板95を通って、偏光ビームスプリッタ96で反射される。このとき、半波長板95の回転により、偏光ビームスプリッタ96で反射される光量を調整できる。
【0048】
偏光ビームスプリッタ96で反射された光束は、1/4波長板97を通ってP偏光から円偏光へと変換された後、角度回転ミラー98で反射される。当該反射光は、ホログラム素子作製用の作製参照光HRLとして、所望の角度でホログラム素子40に入射する。作製参照光HRLのホログラム素子40への入射角度および入射位置は、角度回転ミラー98a,98bで示すように角度回転ミラー98を回転させることで変更できる。
【0049】
ホログラム素子40を透過した作製参照光HRLは、反射ミラー99に垂直に入射し、作製参照光HRLと同一光路の反対方向に反射される。当該反射光は、ホログラム素子作製用の作製信号光HSLとして、ホログラム素子40内で作製参照光HRLと干渉した後、角度回転ミラー98で反射される。当該反射された作製信号光HSLは、1/4波長板97を通ってS偏光となり、偏光ビームスプリッタ96を透過して、ホログラム素子作製装置96の光路から外れる。
【0050】
反射ミラー99は、ホログラム素子40を透過する作製参照光HRLの入射角度および入射位置に合うようにその角度および位置が変更される。反射ミラー99の角度および位置は角度回転ミラー98の角度により決まるため、反射ミラー99と角度回転ミラー98とを同期させて動かす機構を設けていることが好ましい。反射ミラー99は、反射ミラー99a,99bのように、角度回転ミラー98の角度に合わせて角度回転ミラー98を中心とした円弧状に動かされる。
【0051】
図5は、図4において説明したホログラム素子40の作製方法について説明するための模式図である。
【0052】
図5では、簡単のために、図4の角度回転ミラー98を基点51として示している。また、図5の矢印で示される光束は、各々が平行光であって収束も発散もせず無限にその光束径を保つ。これは、図4において、コリメートされた作製参照光HRLが角度回転ミラー98で偏向されてホログラム素子40に入射するのと整合する。
【0053】
以下では、例として、基点51を通り、ホログラム素子40に対して角度αで入射する作製参照光HRLaおよび作製信号光HSLaについて説明する。
【0054】
ホログラム素子作製用の作製参照光HRLaは、基点51を通ってホログラム素子40を透過した後、反射ミラー99aに垂直に入射する。当該入射した作製参照光HRLaは、入射方向と反対方向に反射され、ホログラム素子作製用の作製信号光HSLaとして、同一の光路を進んで角度αでホログラム素子40の裏面に照射される。このとき、作製参照光HRLaと作製信号光HSLaとが干渉し、その干渉縞の強度分布がホログラム55aとしてホログラム素子40に記録される。作製信号光HSLaは、基点51を通る。
【0055】
また、ホログラム素子40に対して角度βで入射する作製参照光HRLbと、反射ミラー99bで反射された作製信号光HSLbとの干渉縞が、ホログラム55bとしてホログラム素子40に多重記録される。同様にして、ホログラム素子40にホログラム55c〜55eが多重記録される。なお、5つのホログラム55a〜55eが設けられているのは一例であって、任意の数のホログラムが記録され得る。
【0056】
ホログラム素子40にホログラムを多重記録する場合、図4に示したように、ホログラム素子40を固定しておき、作製参照光HRLの入射角度および反射ミラー99の位置を記録ごとに変化させる。これにより、ホログラム素子40の所望の位置にホログラムを多重記録することができる。または、作製参照光HRLの進行方向および反射ミラー53の位置を固定しておき、基点51に対するホログラム素子40の位置および設置角度を変えて、ホログラムを多重記録してもよい。
【0057】
上述した多重記録とは、ホログラム素子40の同一領域にホログラムが重なって記録されることをいう。多重記録することで、角度αと角度βとの差を細かくとることができ、対応できる角度を増やせる利点がある。
【0058】
ある領域に多重記録できるホログラムの数の上限は、ホログラム素子40のMナンバーおよび各ホログラムの回折効率によって決まる。Mナンバーとは、同一個所に記録することのできる回折効率100%のホログラムの最大数である。Mナンバーがmであるホログラム素子の一箇所に多重記録できる回折効率η%のホログラムの最大数Hは、以下の式により表わされる。
【0059】
H=m/√(η/100)
たとえば、Mナンバーが10のホログラム素子に、各ホログラムの回折効率が100%となるようにホログラムを多重記録する際、ある一定の領域に多重記録できるホログラムの最大数は10個となる。このホログラム素子をホログラム記録再生装置10に用いる場合、記録されるホログラムの回折効率は、50%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。なお、記録されるホログラムの回折効率は、記録する際に照射する作製参照光HRLおよび作製信号光HSLの露光量によって調整することができる。
【0060】
上記の作製方法を用いてホログラム素子40を作製する場合、ある領域に多重記録されるホログラムの数は、作製参照光HRLおよび作製信号光HSLの光束径によって決まるホログラムの大きさと、多重記録する際の作製参照光HRLの入射角度ピッチと、基点51からホログラム素子40までの距離とによって決められる。
【0061】
よって、ホログラム素子40にホログラムを多重記録する際、ホログラムを数多く多重記録するためには、ホログラム素子40のMナンバーおよび求める回折効率に応じて、作製参照光HRLおよび作製信号光HSLの光束径と、作製参照光HRLの入射角度ピッチと、基点51からホログラム素子40までの距離とを調整することが望ましい。
【0062】
ホログラム素子40を使用するホログラム記録再生装置10に必要な仕様、例えば、上記の光束径および入射角度ピッチが定められている場合には、ホログラム素子40を作製する際に、これらを考慮して、用いるホログラム素子40のMナンバーと基点51からホログラム素子40までの距離とを選択する必要がある。
【0063】
また、ホログラム素子40の作製時、常に一定の露光量で多重記録すると、ホログラム素子40に対する作製参照光HRLおよび作製信号光HSLの入射角によって生じるホログラムの大きさが異なる。そのため、再生時、再生参照光CRLをホログラム素子40に照射する角度によって回折効率が異なってしまう。この問題を回避するためには、多重記録時の露光量を調整することが好ましい。
【0064】
以上のようにして作製されたホログラム素子40には、図5に示すように、基点51を中心とする円弧上に、円弧の接線方向に干渉縞が形成されたホログラム55a〜55eが重なって記録されている。
【0065】
図6は、図5において作製されたホログラム素子40の動作原理について説明するための模式図である。
【0066】
上述のように干渉縞が多重記録されたホログラム素子40に対し、ホログラム素子40の作製時と同様に、すなわち、図6に示したように、基点51を通過する参照光RLaを照射する。ホログラムの原理により、干渉縞として記録されているホログラム55aから、図5の作製信号光HSLaと同一の光路をとる回折光FLaが発生する。図5で説明したのと同様に、図6の矢印で示される光束は、各々が平行光であって収束も発散もせず無限にその光束径を保つ。
【0067】
また、参照光RLbを照射すると、図5の作製信号光HSLbと同一の光路をとる回折光FLbが発生する。同様にして、回折光FLc〜FLeが発生する。このようにして発生する回折光FLa〜FLeは、参照光RLa〜RLeがホログラム素子40にどのような角度で入射した場合においても、基点51を通る。
【0068】
上記のように、ホログラム素子40は、入射された参照光RLに対して、その入射角度に関わらず、進行方向が反対向きの回折光FLを発生する。このため、入射する参照光RLの入射角度が変化しても、従来の反射ミラーのようにホログラム素子40の設置角度等を変化させることなく、入射する参照光RLに対して進行方向が反対向きの回折光FLを発生させることができる。
【0069】
また、ホログラム素子40の作製において、多重記録時に記録ごとに露光量を調整しておくことで、どの角度で入射する参照光RLに対しても、一定の回折効率で回折光を派生させることもできる。
【0070】
以上のように、この発明の実施の形態によれば、ホログラム素子40を作製してホログラム記録再生装置10の再生参照光光学系の位置に設置することにより、従来の反射ミラーのように再生参照光光学系の位置や角度を調整することなく、入射する参照光RLに対して進行方向が反対向きの回折光FLを発生させることができる。これにより、小型でかつ光学系の調整が容易なホログラム記録再生装置を構築できる。
【0071】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】この発明の実施の形態によるホログラム記録再生装置10の構成を示した図である。
【図2】図1のホログラム記録再生装置10の記録時の動作を説明するための部分拡大図である。
【図3】図1のホログラム記録再生装置10の再生時の動作を説明するための部分拡大図である。
【図4】この発明の実施の形態によるホログラム素子作製装置90の構成を示した図である。
【図5】図4において説明したホログラム素子40の作製方法について説明するための模式図である。
【図6】図5において作製されたホログラム素子40の動作原理について説明するための模式図である。
【図7】従来の角度多重記録方式のホログラム記録再生装置100の記録時の構成を示した図である。
【図8】従来の角度多重記録方式のホログラム記録再生装置100Aの再生時の構成を示した図である。
【図9】従来の角度多重記録方式のホログラム記録再生装置100Bの再生時の構成を示した図である。
【符号の説明】
【0073】
10,100,100A ホログラム記録再生装置、11,91,101 レーザ光源、12,92,102 スペイシャルフィルタ、13,93,103 シャッター、14,94,104 コリメートレンズ、15,23,95,105,113 半波長板、16,18,96,106,108 偏光ビームスプリッタ、17,107 ビームエキスパンダ、19,109 空間光変調器、20,110 撮像素子、21,26,111,116 リレーレンズ、22,112 ポリトピックアパーチャ、24,114 対物レンズ、25,98,115、143 角度回転ミラー、30,120 ホログラム記録媒体、40 ホログラム素子、41,97 1/4波長板、51 基点、90 ホログラム素子作製装置、99 反射ミラー、140 再生参照光光学系、141 レンズ、142 固定反射ミラー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射された光束を偏向させるためのホログラム素子であって、
前記ホログラム素子の外にある基点を通り前記ホログラム素子へ入射する光束を受けるホログラムを含み、前記ホログラムは、前記光束を入射方向と逆向きに進む回折光として前記基点を通るように出射する、ホログラム素子。
【請求項2】
前記光束の各々および前記回折光の各々は、いずれも平行光である、請求項1に記載のホログラム素子。
【請求項3】
前記ホログラムは多重記録されている、請求項1に記載のホログラム素子。
【請求項4】
前記ホログラムは、前記ホログラム素子に対する前記光束の入射角度を変えて多重記録されており、前記光束の入射角度によらず一定の回折効率で前記回折光を出射する、請求項1に記載のホログラム素子。
【請求項5】
入射された光束を偏向させるためのホログラム素子を作製するホログラム素子作製装置であって、
前記ホログラム素子作製用の作製参照光が前記ホログラム素子に入射する角度および位置を調整する偏向部と、
前記偏向部に合わせて円弧状に移動し、前記ホログラム素子を透過した後の前記作製参照光を垂直に受けて、前記ホログラム素子作製用の作製信号光として、前記作製参照光の前記ホログラム素子への入射位置に反射する反射部とを備える、ホログラム素子作製装置。
【請求項6】
前記偏向部の角度を調整して前記作製参照光と前記作製信号光とを前記ホログラム素子の所定の位置で干渉させることにより多重記録する、請求項5に記載のホログラム素子作製装置。
【請求項7】
入射された光束を偏向させるためのホログラム素子を作製するホログラム素子作製方法であって、
前記ホログラム素子作製用の作製参照光が前記ホログラム素子に入射する角度および位置を調整するステップと、
前記ホログラム素子を透過した後の前記作製参照光を、前記ホログラム素子作製用の作製信号光として、前記作製参照光の前記ホログラム素子への入射位置に垂直に反射するステップと、
前記作製参照光と前記作製信号光とを前記ホログラム素子の所定の位置で干渉させることにより多重記録するステップとを含む、ホログラム素子作製方法。
【請求項8】
ホログラム記録媒体から情報を再生するホログラム再生装置であって、
再生参照光が前記ホログラム記録媒体に入射する角度および位置を調整する偏向部と、
前記ホログラム記録媒体を透過した再生参照光を、入射角度に関わらず進行方向の逆向きに回折光として反射するホログラム素子とを備える、ホログラム再生装置。
【請求項9】
前記ホログラム素子は、請求項1〜4のいずれかに記載のホログラム素子である、請求項8に記載のホログラム再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−20134(P2009−20134A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180470(P2007−180470)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】