説明

ホログラム記録再生装置

【課題】ページデータの再生像に重畳されるモアレパターンを低減して、該再生像のSN比を大幅に改善し得るホログラム記録再生装置を提供する。
【解決方法】ページデータ情報の再生を行う際に、再生像取得手段20により、任意のページデータの第1再生像と第2再生像を取得し、再生像加算手段21により、これら2つの再生像を加算して再生像に重畳されたモアレパターンを相殺する。再生像取得手段20は、フーリエ変換レンズ13とCCD14により構成される。また、これら2つの再生像は、再生像上のモアレパターンが互いに反転したものとなっており、CCD14を、入射するレーザ光束に対して、その入射角度が変更されるようにして撮像されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高密度多重記録が可能なホログラム記録再生装置に関し、特に、離散的なデジタルデータ(例えば大容量の保存用アーカイブデータ)のホログラフィックメモリへの記録再生を行う装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報記録において光ディスクなどの光情報記録媒体が普及しつつある。また、より高速・大容量を目指した次世代光情報記録媒体の研究・開発が活発に行われている。
その中でも、記録容量を大幅に高めることができるという観点から、ホログラム記録再生方式を利用した種々の多重記録再生装置が提案されている(例えば、下記特許文献1)。
【0003】
以下、従来のホログラム記録再生装置を図10を用いて説明する。
【0004】
レーザ光源301から出射されたコヒーレントなレーザ光束は、発散レンズ302およびコリメートレンズ303からなるビームエキスパンダにより光束径を拡大され、偏光ビームスプリッタ305等よりなるビームスプリッタにより2系の光束に分岐され、それぞれ信号光(物体光:実際には空間光変調素子309により信号光とされる)および参照光として機能せしめられる。
偏光ビームスプリッタ305により分岐された信号光は、偏光ビームスプリッタ308を介して空間光変調素子309に照射される。
【0005】
記録すべきデジタル情報はページデータと称される2次元配列に整列され、空間光変調素子309に順次表示され、これにより通過する(反射する)光を空間的に変調する。空間光変調素子309から出射された信号光は、入射した状態とは偏光方向が変化しており、偏光ビームスプリッタ308において反射され、フーリエ変換レンズ311によって光学的にフーリエ変換されてホログラム記録媒体312へ照射される。このときホログラム記録媒体312中の信号光が通過する場所へ、別角度から、偏光ビームスプリッタ305で分岐した参照光を同時に照射すると記録媒体312内部の体積中に干渉縞が生じ、この縞分布を屈折率分布などの形態で記録媒体312の記録領域に転写することによりホログラム記録を行う。そして、異なるページデータを空間光変調素子309に表示させつつ、参照光のホログラム記録媒体312への入射角度を少しずつ変化させることにより、互いに異なるページデータを記録媒体312中の同一領域へ多重記録することが可能となり、高密度な情報格納が可能となる。
【0006】
なお、上記光路中には、光束を偏向するための反射ミラー304、306および光束を適宜通過/遮断するためのシャッタ307、310が配設されている。
【0007】
一方、ホログラム記録媒体312に記録されたページデータを再生する場合には、上記の如くして記録した際の入射角度と同一角度で参照光を記録媒体312に照射せしめることにより、同一の記録領域に複数のページデータが多重記録されていても、所望するページデータのみを選択的に取り出し、フーリエ変換レンズ(結像レンズ)312を介してCCD(撮像素子)314にて撮像することができる。
【0008】
【特許文献1】特開2004−272268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、レーザ光は可干渉性が極めて高いため、光路中のミラーやレンズの表面での反射による干渉によってモアレ干渉縞(以下、単にモアレと称する)が発生しやすい。また、受光素子内部でも反射によって干渉が起こり、モアレが発生しやすいことが知られている。このようなモアレが発生すると、モアレパターンが重畳したページデータの再生像が撮像されることになり、再生像が極めて劣化してしまう。
【0010】
図2は、全画面を白色表示した場合に撮像された再生像を示すものであるが、画面全体にモアレパターンが重畳されている。
【0011】
図3は、モアレパターンが重畳したページデータの再生像を示すものである。モアレパターンが重畳されたことにより、本来白になる画素が黒になってしまう現象が発生しており、再生画像が極めて劣化している。このように、モアレパターンは再生したページデータのSNR(Signal to Noise Ratio : SN比)を低下させてしまう。そのためホログラム記録再生技術において、記録情報の高密度化および大記録容量化を達成するためには、モアレパターンを低減することが重要な課題となる。
【0012】
光路中に配された反射ミラーやレンズ、さらには撮像素子内部の保護ガラス等にARコート(Anti Reflection Coating:反射防止コート)をコーティングすることにより、レーザ光の反射を低減することができ、これによりモアレの発生をある程度抑制することができるが、レーザ光の反射を完全に防止することはできないため、やはりある程度のモアレは生じてしまう。
【0013】
また、撮像素子の直前にすりガラスを挿入しレーザ光を拡散させて干渉が起こらないようにすることが考えられるが、すりガラスの拡散効果により再生像がぼやけてしまう。
【0014】
さらに、撮像した再生像を信号処理してモアレ成分を取り除くことが考えられるが、モアレパターンがさまざまな周波数成分を含んでいるため、現実には困難である。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、ページデータの再生像に重畳されるモアレパターンを低減して、該再生像のSN比を大幅に改善し得るホログラム記録再生装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明のホログラム記録再生装置は、以下のような特徴を備えている。
すなわち、本発明のホログラム記録再生装置は、データ情報を担持した信号光と、参照光とを干渉させてホログラム記録媒体に干渉光による干渉縞をページデータとしてホログラフィック記録し、記録された該ページデータ情報を再生するホログラム記録再生装置において、
前記ページデータ情報の再生を行う際に、任意の該ページデータの第1再生像と、該第1再生像に重畳されたモアレパターンを相殺し得る反転モアレパターンが重畳された第2再生像を取得する再生像取得手段と、該第1再生像と該第2再生像を加算してこれらの再生像に重畳されたモアレパターンを相殺する再生像加算手段とを、備えたことを特徴とするものである。
【0017】
なお、再生像加算手段は、再生像取得手段と同一部材またはその一部を用いて構成される場合を含むものとする。
【0018】
また、前記再生像取得手段は撮像素子を備えており、前記第1再生像と前記第2再生像を撮像する場合に、前記ホログラム記録媒体から該撮像素子に入射する再生光束の入射角度を変化させて、互いに反転するモアレパターンが重畳した該第1再生像と該第2再生像を撮像するように構成することができる。
【0019】
また、前記再生像取得手段は撮像素子を備えており、前記第1再生像と前記第2再生像を撮像する場合に、前記ホログラム記録媒体から該撮像素子に入射する再生光束の入射角度、および該入射する再生光束に対する撮像素子の位置を変化させて、互いに反転するモアレパターンが重畳した該第1再生像と該第2再生像を撮像するように構成することができる。
【0020】
また、前記再生像取得手段は、前記ホログラム記録媒体側から順に、結像レンズ、反射ミラーおよび撮像素子、を備えており、前記第1再生像と前記第2再生像を撮像する場合に、前記ホログラム記録媒体から該反射ミラーに入射し出射される再生光束の当該出射角度、および該撮像素子に入射する再生光束に対する撮像素子の位置を変化させて、互いに反転するモアレパターンが重畳した該第1再生像と該第2再生像を撮像するように構成することができる。
【0021】
さらに、前記再生像取得手段は、前記ホログラム記録媒体側から順に、結像レンズ、複数の反射ミラーおよび撮像素子、を備えており、前記第1再生像と前記第2再生像を撮像する場合に、前記ホログラム記録媒体から該複数の反射ミラーに入射し出射される再生光束の当該出射角度を各々変化させて、互いに反転するモアレパターンが重畳した該第1再生像と該第2再生像を撮像するように構成することができる。
【0022】
また、上述した各ホログラム記録再生装置において、前記再生像加算手段は、対応する前記第1再生像と前記第2再生像を互いに光学的に加算する、またはこれら対応する前記第1再生像と前記第2再生像を各々画像処理した後に加算するように構成することができる。
【0023】
さらに、前記再生像取得手段は、対応する前記第1再生像と前記第2再生像を互いに光学的に加算するものであり、前記撮像素子における各フレーム期間内で、前記第1再生像と前記第2再生像の撮像の切替えを行い、互いに同一時間撮像するように構成することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のホログラム記録再生装置においては、ページデータ情報の再生を行う際に、再生像取得手段により、任意のページデータの第1再生像と、第1再生像に重畳されたモアレパターンを相殺し得る反転モアレパターンが重畳された第2再生像を取得し、再生像加算手段により、第1再生像と第2再生像とを加算してこれら再生像に重畳されたモアレパターンを相殺するようにしているので、ページデータの再生像に重畳されるモアレパターンを低減して、該再生像のSN比を大幅に改善することができる。これにより、記録情報の高密度化および大記録容量化を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係るホログラム記録再生装置を図面を参照しつつ、情報記録機能と情報再生機能に分けて説明する。
【0026】
≪実施例1≫
図1は、本発明の実施例1に係るホログラム記録再生装置の主要光学系を示す平面図(A)および一部側面図(B)である。なお、図1において、光学系等制御のための部材は一部図示を省略されている。
【0027】
<情報記録機能>
図1(A)、(B)に示すように、レーザ光源1から出射されたコヒーレントなレーザ光束は、発散レンズ2およびコリメートレンズ3からなるビームエキスパンダにより光束径を拡大され、反射ミラー4により反射された後、偏光ビームスプリッタ5等よりなるビームスプリッタにより2系の光束に分岐され、それぞれ信号光(物体光:実際には空間光変調素子により信号光とされる)および参照光として機能せしめられる。
【0028】
上記参照光(本実施例では縦の直線偏光:以下同じ)は、反射ミラー6により反射され、シャッタ7を介してホログラム記録媒体12上の所定の領域に照射される。
一方、上記信号光(本実施例では横の直線偏光:以下同じ)は、偏光ビームスプリッタ8を介して空間光変調素子9に照射される。
【0029】
空間光変調素子9としては、液晶表示パネルやDMD(デジタルマイクロミラーデバイス:Digital Micromirror Device)等のライトバルブが用いられる。空間光変調素子9上の各ピクセルがページデータ上の2値のデジタル情報に応じて光を通過(図1の例では反射)/遮断することで、空間的に光を変調する。この変調処理によりページデータ情報を担持した信号光が生成される。
【0030】
空間光変調素子9から出射された信号光は、入射した状態とは偏光方向が変化しており(横の直線偏光→縦の直線偏光)、偏光ビームスプリッタ8において反射され、シャッタ7を通過した後フーリエ変換レンズ(FTL:Fourier Transform Lens)11によって光学的にフーリエ変換されてホログラム記録媒体12へ照射される。このときホログラム記録媒体12中の信号光が通過する場所へ、別角度から、上記参照光が同時に照射されるので、記録媒体12内部の体積中に干渉縞が生じ、この縞分布を屈折率分布などの形態で記録媒体12の記録領域に転写することによりホログラム記録が行われる。そして、異なるページデータを空間光変調素子9に表示させつつ、参照光のホログラム記録媒体12への入射角度を少しずつ変化させることにより、互いに異なるページデータを記録媒体12中の同一領域へ多重記録することが可能となり、高密度な情報格納が可能となる。
【0031】
<情報再生機能>
また、情報再生時において、シャッタ7を通過した参照光は、情報記録時と同様の入射角度および位置において、ホログラム記録媒体12の所定の領域に照射される。なお、シャッタ10は閉じた状態とされる。
【0032】
すなわち、所望のページデータを再生する場合には、この所望のページデータを記録した情報記録時と同一の参照光入射条件となるように設定することにより、所望のページデータ情報を担持した回折光がホログラム記録媒体12から出力され、この回折光がフーリエ変換レンズ13を介してCCD14からなる撮像素子に入射し撮像される。
【0033】
ところで、レーザ光は可干渉性が極めて高いため、光路中のミラーやレンズの反射により、さらには、撮像素子内部における反射によってモアレが発生しやすい。このようなモアレが発生すると、モアレパターンが重畳したページデータの再生像が撮像されることになり、再生像が極めて劣化したものとなる。そこで、本実施形態においては、ページデータ情報の再生を行う際に、任意の該ページデータの第1再生像と、この第1再生像に重畳されたモアレパターンを相殺し得る反転モアレパターンが重畳された第2再生像とを取得する再生像取得手段20、および第1再生像と第2再生像を画像処理により加算して再生像に重畳されたモアレパターンを相殺する再生像加算手段21とを備えている。すなわち、ページデータ情報の再生を行う際に、再生像取得手段20により、任意のページデータの第1再生像と、第2再生像を取得し、再生像加算手段21により、これら第1再生像と第2再生像とを加算して再生像に重畳されたモアレパターンを相殺するようにしている。
【0034】
なお、フーリエ変換レンズ(結像レンズ)13とCCD14により再生像取得手段20が構成される。
【0035】
また、上述した第1再生像と第2再生像を取得する際には、図1(B)に示すように、CCD14を、入射するレーザ光束に対して、その入射角度(回転角度)が変更(aとaの間で変更)されるように、また、必要に応じてその入射位置(シフト位置)が変更(zとzの間で変更)されるように撮像して各々上記2つの再生像を取得する。
【0036】
なお、このCCD14へのレーザ光束の入射角度調整および入射位置調整は、CCD14を、その回転移動および平行移動が調整可能となるような調整台(図示されていない)に設置した後、手動または自動にてこの調整台上におけるCCD14の姿勢調整を行うことによりなされる。
【0037】
以下、上記調整を、より詳細に説明する。
【0038】
なお、第1再生像が得られるときのCCD14の回転角度をa1、シフト位置をz1とし、第2再生像が得られるときのCCD14の回転角度をa2、シフト位置をz2とする。
ここで「回転角度」とは、対象となる入射面の面法線と入射光束軸を含む平面に垂直な軸を回転軸とし、再生光束の入射角が0度の場合を基準としたときの該回転軸の回転角によって表されるものとする(以下の説明においても同じ)。また、「シフト位置」とは、対象となる入射面の面法線と入射光束軸を含む平面内にあって、図1(B)中の上下方向の位置をいうものとし、再生光束の軸とCCD14の中心軸との相対的な位置ずれによって表されるものとする(以下の説明においても同じ)。
【0039】
まず、時刻t0においてCCD14の角度をa1、位置をz1に設定する。
次に、時刻t1においてシャッタ7を開放して、あらかじめページデータが記録されたホログラム記録媒体12に参照光を照射する。この状態で、CCD14において第1再生像を撮像する。なお、シャッタ10は閉状態としておく。
【0040】
次に、時刻t2においてシャッタ7を閉じ、CCD14の角度をa2、位置をz2に設定する。
この後、時刻t3においてシャッタ7を開放してホログラム記録媒体12に参照光を再び照射する。この状態で、CCD14において第2再生像を撮像する。
【0041】
第1再生像と第2再生像とは、上述したように、再生像上のモアレパターンが互いに反転したものとなっているので、この後、再生像加算手段21において、撮像した2枚の再生像を画像処理を用いて加算することにより、モアレパターンを低減したページデータの再生像が得られる。
【0042】
また、上記再生像の加算は、画像処理に限らず光学的にも行うことができる。光学的に行う場合には、実質的にCCD14が再生像加算手段21としての機能を担うのに対し、画像処理により行う場合には、CCD14とは別個の加算手段(通常はコンピュータ)が再生像加算手段21としての機能を担うことになる。
【0043】
なお、この後、従来より周知の方法を用いてページデータを復号することになる。
【0044】
ここで、実施例1における上述したCCD14の角度、位置の決定方法の一例を詳細に説明する。
例えば、CCD14の回転角度が0に設定されて撮像された第1再生像に対して、第2再生像を得るときのCCD14の設定角度は以下のようにして求める。まず、CCD14の回転角度を様々に変えて、モアレパターンが重畳した仮再生像を撮像する。このとき、第1再生像と仮再生像の各ページデータの位置が一致するようにCCD14のシフト位置を決定する。
【0045】
次に、第1再生像と仮再生像を加算した仮加算画像のモアレコントラストCmを以下のようにして求める。
まず、画面水平方向のi番目のラインについてのモアレコントラストCmhiを求める。すなわち、水平方向の1ラインの輝度レベルを昇順に配列したとき、全体の95%番目に配列される輝度レベル(配列の要素数をNとしたとき小さい方から0.95N番目の値)をImax、全体の5%番目に配列される輝度レベル(配列の要素数をNとしたとき小さい方から0.05N番目の値)をIminとすると、モアレコントラストCmhiは下記の如き演算式により求められる。
【0046】
【数1】

【0047】
上記演算式による演算を全ての水平方向のラインについて行い、それらの平均値を水平方向の平均モアレコントラストCmhとする。
同様にして、画面垂直方向のラインの平均モアレコントラストCmvを求める。
【0048】
この後、水平方向の平均モアレコントラストCmhと垂直方向の平均モアレコントラストCmvのうち、値の大きい方をモアレコントラストCとする。
【0049】
モアレパターンが相殺されるとモアレコントラストは小さくなる。ここで、図11に仮再生像を撮像するときのCCD14の回転角度と、この仮再生像と第1再生像を加算した仮加算画像のモアレコントラストの関係を示す。角度が6 mradのときコントラストが最小なり、このときモアレが最も低減されているので、このときの仮再生像を第2再生像とする。
【0050】
なお、後述する実施例2および3についても同様にして、CCD14(あるいは、CCDおよび反射ミラー)の角度、位置を設定することができる。
【0051】
以下、本実施例により、得られた結果を図2〜図7を用いて説明する。なお、ここでは、画像処理を用いて加算演算を行った例を示す。
【0052】
図2は、前述したように、全画面を白色表示した場合に撮像された再生像を示すものであり、第1再生像の一例を示すものである。画面全体にモアレパターンが重畳されていることが明らかである。図3も、前述したように、モアレパターンが重畳したページデータの第1再生像を示すものである。モアレパターンが重畳されたことにより、本来白になる画素が黒になってしまう現象が発生しており、再生画像が極めて劣化したものとなっている。
【0053】
一方、図4は、図2に示す第1再生像のモアレパターンを反転したモアレパターンが重畳された第2再生像の一例を示すものである。この第2再生像は、上述した如く、第1再生像が得られた状態から、CCD14に対するレーザ光束の入射角度を変更(aからaに変更)するように、また、必要に応じてその入射位置を変更(zからzに変更)するようにして撮像し、取得したものである。
【0054】
図5は、図2に示す第1再生像と図4に示す第2再生像を、再生像加算手段21において加算して得られた再生画像を示すものである。互いに反転した状態となるモアレパターンが加算され、モアレパターンが略相殺された状態となっていることが明らかである。
【0055】
また、図6は、図4に示すモアレパターンが重畳されたページデータの第2再生像を示すものであり、図7は、図3に示すモアレパターンが重畳されたページデータの第1再生像と、図6に示すモアレパターンが重畳されたページデータの第2再生像を、再生像加算手段21において加算して得られた再生画像を示すものである。互いに反転した状態となるモアレパターンが加算され、モアレパターンが略相殺された状態となっている。図3および図6においては、モアレパターンが重畳されたことにより、本来白になる画素が黒になってしまう現象が発生しており、再生画像が極めて劣化したものとなっているが、図7においては、本来白となるべき画素は白、黒となるべき画素は黒となっており、所望とする再生画像を得ることができる。これにより、ページデータの再生画像のSNR(SN比)を大幅に向上させることができる。
【0056】
≪実施例2≫
図8に、本発明の実施例2に係るホログラム記録再生装置の主要光学系の平面図(A)および一部側面図(B)を示す。なお、本実施例に係るホログラム記録再生装置は上記実施例1のものと、基本的構成においては共通することから、共通する部材については、上記実施例1に係る図1の符号に100を加えて示し、説明の便宜上その詳細な説明は省略する。
【0057】
実施例2のホログラム記録再生装置は、フーリエ変換レンズ(結像レンズ)113とCCD114との間に、反射ミラー125を備えている点において、実施例1のものとは相違している。すなわち、上記実施例1においては、CCD14へのレーザ光束の入射角度調整は、CCD14を回転移動することにより行われるが、本実施例においては、フーリエ変換レンズ113とCCD114との間に設けた反射ミラー125を、このミラー125の面法線と入射光束軸を含む平面に垂直となる軸を中心として回転移動(aとaの間で変更)せしめることにより、CCD114へのレーザ光束の入射角度調整を行う。なお、本実施例においては、主として、実施例1と同様に、CCD114へのレーザ光束の入射位置調整を、CCD114を平行移動(zとzの間で変更)せしめることにより行う。
【0058】
以下、上記調整を、より詳細に説明する。
なお、第1再生像が得られるときの反射ミラー125の回転角度をa1、CCD114のシフト位置をz1とし、第2再生像が得られるときの反射ミラー125の回転角度をa2、CCD114のシフト位置をz2とする。
【0059】
まず、時刻t0において反射ミラー125の角度をa1、CCD114の位置をz1に設定する。
次に、時刻t1においてシャッタ107を開放して、あらかじめページデータが記録されたホログラム記録媒体112に参照光を照射する。この状態で、CCD114において第1再生像を撮像する。なお、シャッタ110は閉状態としておく。
【0060】
次に、時刻t2においてシャッタ107を閉じ、反射ミラー125の角度をa2、CCD114の位置をz2に設定する。
この後、時刻t3においてシャッタ107を開放してホログラム記録媒体112に参照光を再び照射する。この状態で、CCD114において第2再生像を撮像する。
【0061】
第1再生像と第2再生像とは、上述したように、再生像上のモアレパターンが互いに反転したものとなっているので、この後、再生像加算手段121において、撮像した2枚の再生像を光学的に、または画像処理を用いて加算することにより、モアレパターンを低減したページデータの再生像が得られる。
【0062】
この後、従来より周知の方法を用いてページデータを復号することは実施例1のものと同様である。
【0063】
≪実施例3≫
図9に、本発明の実施例3に係るホログラム記録再生装置の主要光学系の平面図(A)および一部側面図(B)を示す。なお、本実施例に係るホログラム記録再生装置は上記実施例1のものと、基本的構成においては共通することから、共通する部材については、上記実施例1に係る図1の符号に200を加えて示し、説明の便宜上その詳細な説明は省略する。
【0064】
実施例3のホログラム記録再生装置は、フーリエ変換レンズ(結像レンズ)213とCCD214との間に、第1反射ミラー225および第2反射ミラー226を備えている点において、実施例1のものとは相違している。すなわち、上記実施例1においては、CCD14へのレーザ光束の入射角度調整は、CCD14を回転移動および平行移動することにより行われるが、本実施例においては、フーリエ変換レンズ213とCCD214との間に設けた第1反射ミラー225および第2反射ミラー226を各々、これらミラー面の法線と入射光束軸を含む平面に垂直となる軸を回転軸として回転移動(aとaおよびbとbの間で各々変更)せしめることにより、CCD214へのレーザ光束の入射角度調整および入射位置調整を行う。
【0065】
以下、上記調整を、より詳細に説明する。
なお、第1再生像が得られるときの第1反射ミラー225の回転角度をa1、第2反射ミラー226の回転角度をb1とし、第2再生像が得られるときの第1反射ミラー225の回転角度をa2、第2反射ミラー226の回転角度をb2とする。
【0066】
まず、時刻t0において第1反射ミラー225の回転角度をa1、第2反射ミラー226の回転角度をb1に設定する。
次に、時刻t1においてシャッタ207を開放して、あらかじめページデータが記録されたホログラム記録媒体212に参照光を照射する。この状態で、CCD214において第1再生像を撮像する。なお、シャッタ210は閉状態としておく。
【0067】
次に、時刻t2においてシャッタ207を閉じ、第1反射ミラー225の回転角度をa2、第2反射ミラー226の回転角度をb2とする。
この後、時刻t3においてシャッタ207を開放してホログラム記録媒体212に参照光を再び照射する。この状態で、CCD214において第2再生像を撮像する。
【0068】
第1再生像と第2再生像とは、上述したように、再生像上のモアレパターンが互いに反転したものとなっているので、この後、再生像加算手段221において、撮像した2枚の再生像を光学的に、または画像処理を用いて加算することにより、モアレパターンを低減したページデータの再生像が得られる。
【0069】
この後、従来より周知の方法を用いてページデータを復号することは実施例1のものと同様である。
【0070】
本発明のホログラム記録再生装置としては上記実施形態のものに限られるものではなく、その他の種々の態様の変更が可能である。例えば、上記実施形態のものでは、第1再生像と第2再生像とを取得する間で、対象となる入射面の面法線と入射光束軸を含む平面に垂直な回転軸を中心として、CCD14、あるいは反射ミラー125、225、226を回転させるようにしているが、回転させる方向はこれに限られるものではなく、例えば、上記回転軸とは垂直となるような軸を中心としてCCDあるいは反射ミラーを回転せしめることで、同様にモアレを相殺することが可能である。同様に、CCD14、114を平行移動させる方向としても上記実施例の方向に限られないことは勿論である。
【0071】
さらに、ホログラム記録媒体からの再生光の角度を変化させるため、電気光学素子(EOM)や音響光学素子(AOM)等を用いることも可能である。
【0072】
なお、上記実施形態では、再生像加算手段21において、第1再生像と第2再生像を画像処理により加算して再生像に重畳されたモアレパターンを相殺するようにしているが、第1再生像と第2再生像を光学的に加算する(足し合わせる)場合には、再生像加算手段において、撮像素子の各フレーム期間内で、これら両再生像の撮像の切替えを行い、互いに同一時間撮像するようにして加算することにより、再生像に重畳されたモアレパターンを相殺する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施例1に係るホログラム記録再生装置の主要光学系を示す概略図(A)および一部側面図(B)
【図2】全画面を白色表示した場合にモアレパターンが重畳された状態で撮像された第1再生像の一例を示す図
【図3】図2に示すモアレパターンが重畳されたページデータの第1再生像を示す図
【図4】全画面を白色表示した場合に図2のモアレパターンとは反転したモアレパターンが重畳された状態で撮像された第2再生像の一例を示す図
【図5】図2に示す第1再生像と図4に示す第2再生像を加算した状態の再生像を示す図
【図6】図4に示すモアレパターンが重畳されたページデータの第2再生像を示す図
【図7】図3に示すページデータの第1再生像と、図6に示すページデータの第2再生像を加算した状態のページデータの再生像を示す図
【図8】本発明の実施例2に係るホログラム記録再生装置の主要光学系を示す概略図(A)および一部側面図(B)
【図9】本発明の実施例3に係るホログラム記録再生装置の主要光学系を示す概略図(A)および一部側面図(B)
【図10】従来技術に係るホログラム記録再生装置の主要光学系を示す概略図
【図11】再生像(仮再生像)を撮像するときのCCDの回転角度と、この再生像および他の再生像(第1再生像)を加算した加算画像(仮加算画像)のモアレコントラストの関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0074】
1、101、201、301 レーザ光源
2、102、202、302 発散レンズ
3、103、203、303 コリメートレンズ
4、6、104、106、125、204、206、
225、226、304、306 反射ミラー
5、8、105、108、205、208、305、308 偏光ビームスプリッタ
7、10、107、110、207、210、307、310 シャッタ
9、109、209、309 空間光変調素子
11、13、111、113、211、213、311、313 レンズ
12、112、212、312 ホログラム記録媒体
14、114、214、314 CCD
20、120、220 再生像取得手段
21、121、221 再生像加算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ情報を担持した信号光と、参照光とを干渉させてホログラム記録媒体に干渉光による干渉縞をページデータとしてホログラフィック記録し、記録された該ページデータ情報を再生するホログラム記録再生装置において、
前記ページデータ情報の再生を行う際に、任意の該ページデータの第1再生像と、該第1再生像に重畳されたモアレパターンを相殺し得る反転モアレパターンが重畳された第2再生像を取得する再生像取得手段と、該第1再生像と該第2再生像を加算してこれらの再生像に重畳されたモアレパターンを相殺する再生像加算手段とを、備えたことを特徴とするホログラム記録再生装置。
【請求項2】
前記再生像取得手段は撮像素子を備えており、前記第1再生像と前記第2再生像を撮像する場合に、前記ホログラム記録媒体から該撮像素子に入射する再生光束の入射角度を変化させて、互いに反転するモアレパターンが重畳した該第1再生像と該第2再生像を撮像するように構成されていることを特徴とする請求項1記載のホログラム記録再生装置。
【請求項3】
前記再生像取得手段は撮像素子を備えており、前記第1再生像と前記第2再生像を撮像する場合に、前記ホログラム記録媒体から該撮像素子に入射する再生光束の入射角度、および該入射する再生光束に対する撮像素子の位置を変化させて、互いに反転するモアレパターンが重畳した該第1再生像と該第2再生像を撮像するように構成されていることを特徴とする請求項1記載のホログラム記録再生装置。
【請求項4】
前記再生像取得手段は、前記ホログラム記録媒体側から順に、結像レンズ、反射ミラーおよび撮像素子、を備えており、前記第1再生像と前記第2再生像を撮像する場合に、前記ホログラム記録媒体から該反射ミラーに入射し出射される再生光束の当該出射角度、および該撮像素子に入射する再生光束に対する撮像素子の位置を変化させて、互いに反転するモアレパターンが重畳した該第1再生像と該第2再生像を撮像するように構成されていることを特徴とする請求項1記載のホログラム記録再生装置。
【請求項5】
前記再生像取得手段は、前記ホログラム記録媒体側から順に、結像レンズ、複数の反射ミラーおよび撮像素子、を備えており、前記第1再生像と前記第2再生像を撮像する場合に、前記ホログラム記録媒体から該複数の反射ミラーに入射し出射される再生光束の当該出射角度を各々変化させて、互いに反転するモアレパターンが重畳した該第1再生像と該第2再生像を撮像するように構成されていることを特徴とする請求項1記載のホログラム記録再生装置。
【請求項6】
前記再生像加算手段は、対応する前記第1再生像と前記第2再生像を互いに光学的に加算する、またはこれら対応する前記第1再生像と前記第2再生像を各々画像処理した後に加算することを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項記載のホログラム記録再生装置。
【請求項7】
前記再生像取得手段は、対応する前記第1再生像と前記第2再生像を互いに光学的に加算するものであり、前記撮像素子における各フレーム期間内で、前記第1再生像と前記第2再生像の撮像の切替えを行い、互いに同一時間撮像するように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項記載のホログラム記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−129073(P2008−129073A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310441(P2006−310441)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】