説明

ホログラム記録材料及びホログラム記録媒体

【課題】緑色レーザのみならず青色レーザを用いたホログラフィックメモリ記録においても、高い屈折率変化、柔軟性、高感度、低散乱、耐環境性すなわち保存安定性、耐久性、低寸法変化(低収縮性)、及び高多重度が達成される、体積型ホログラム記録に適したホログラム記録材料及び媒体を提供する。
【解決手段】光ラジカル重合性化合物と、前記光ラジカル重合性化合物の分散媒であるマトリックスとを含むホログラム記録材料であって、前記光ラジカル重合性化合物として、一般式(I): CH2 =CR1 −CONR2 −CH2 −O−R3 (ここで、R1 は、H、又はCH3 基を表し、R2 は、H、又は有機基を表し、R3 は、総炭素数3以上の有機基を表す)で表される(メタ)アクリルアミド誘導体を含むホログラム記録材料。
ホログラム記録層21を有するホログラム記録媒体11。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積型ホログラム記録に適したホログラム記録材料、及び前記ホログラム記録材料からなるホログラム記録層を有するホログラム記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量、高速転送を可能とする記録技術として、ホログラフィックメモリーの研究開発が進められている。ホログラム記録材料に求められる特性として、記録の際の高い屈折率変化、高感度、低散乱、耐環境性すなわち保存安定性、耐久性、低寸法変化、及び高多重度等が挙げられる。
【0003】
ホログラム記録材料として、無機マトリックスと光重合性モノマーとを主成分とする有機−無機ハイブリッド材料が注目され検討されている。無機マトリックスは、耐環境性、耐久性に優れる。
【0004】
例えば、特許2953200号公報(特許文献1)には、無機物質ネットワークの膜中に、光重合性モノマー又はオリゴマー、及び光重合開始剤を含む光記録用膜が開示されている。光重合性モノマーとしては、単官能性(メタ)アクリル酸エステル、多官能性(メタ)アクリル酸エステル等が開示されている(段落[0017])。
【0005】
特開平11−344917号公報(特許文献2)には、有機−無機ハイブリッドマトリックス中に光活性モノマーを含む光記録媒体が開示されている。光活性モノマーとしては、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレートなどのアクリル酸エステルモノマーが開示されている(段落[0018])。
【0006】
特開2002−236439号公報(特許文献3)には、主鎖構成成分としてエチレン性不飽和二重結合を含有する有機金属化合物とエチレン性不飽和二重結合を有する有機モノマーとを共重合させてなる有機−無機ハイブリッドポリマー及び/又はその加水分解重縮合物からなるマトリックス、光重合性化合物、及び光重合開始剤を含むホログラム記録材料が開示されている。光重合性化合物としては、光ラジカル重合性化合物や光カチオン重合性化合物が挙げられ(段落[0041])、光ラジカル重合性化合物として、(メタ)アクリル酸エステルモノマーが開示されている(段落[0042]〜[0043])。
【0007】
特開2005−77740号公報(特許文献4)には、金属酸化物粒子と、重合性モノマーと、光重合開始剤とを含むホログラム記録材料が開示されている。重合性モノマーとして、(メタ)アクリル酸エステルモノマーが開示されている(段落[0020])。
【0008】
特開2005−99612号公報(特許文献5)には、重合性官能基を1つ以上有する化合物と、光重合開始剤と、コロイダルシリカ粒子を含むホログラム記録材料が開示されている。重合性官能基として、アクリル酸エステルモノマーが開示されており(段落[0019]〜[0022])、その他の例示としてアクリルアミド類(エチレンビスアクリルアミド)が開示されている(段落[0023])。
【0009】
特開2005−321674号公報(特許文献6)には、少なくとも2種の金属(Si、Ti)、酸素、及び芳香族基を少なくとも有し、且つ2つの芳香族基が1つの金属(Si)に直接結合している有機金属単位を有している有機金属化合物と、光重合性化合物とを含むホログラム記録材料が開示されている。光重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物やカチオン重合性化合物が挙げられ(段落[0039])、ラジカル重合性化合物として、(メタ)アクリル酸エステルが開示されている(段落[0041])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許2953200号公報
【特許文献2】特開平11−344917号公報
【特許文献3】特開2002−236439号公報
【特許文献4】特開2005−77740号公報
【特許文献5】特開2005−99612号公報
【特許文献6】特開2005−321674号公報
【特許文献7】特開2006−225446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1〜6においては、光重合性モノマーとして、(メタ)アクリル酸エステルが開示されている。しかしながら、(メタ)アクリル酸エステルは、酸性又は塩基性条件下で容易に加水分解を受ける。また、金属酸化物マトリックス形成用材料である金属アルコキシド化合物又はその多量体との相互作用によるエステル交換反応も受けやすい。従って、金属酸化物マトリックスに対して光重合性モノマーとして(メタ)アクリル酸エステルを適用すると、(メタ)アクリル酸エステルは徐々に分解していき、結果的にホログラム記録特性の劣化を招く。
【0012】
上記特許文献5においては、光重合性モノマーとして、アクリルアミド類(エチレンビスアクリルアミド)が例示されている。しかしながら、エチレンビスアクリルアミドは親水性が低く、金属酸化物マトリックス中での均一分散は達成されない。
【0013】
さらに、光重合性モノマーとして、上記特許文献1〜6に開示されている(メタ)アクリル酸エステルや、エチレンビスアクリルアミドを用いると、ホログラム記録露光時及び/又はポストキュア(後露光)時に光重合性モノマーの重合に起因するホログラム記録材料の収縮が起こる。ポストキュアとは、記録露光後に、残留する未反応モノマー成分を反応させるために行われる露光である。ホログラム記録材料の収縮が大きければ、記録された情報の再生に悪影響がある。
【0014】
また、上記いずれの特許文献1〜6においても、緑色レーザを用いたホログラフィックメモリ記録については開示されているが、青色レーザを用いたホログラフィックメモリ記録については開示がない。
【0015】
記録/再生レーザの波長が短くなるほど、ホログラム記録層の高い機械的強度、高い柔軟性、高い均質性、及びそれらの耐環境性(保存安定性)が要求される。ホログラム記録層の機械的強度が不十分であると、記録に際しての収縮の増大や、保存信頼性の低下を招く。特に短波長領域の記録/再生レーザで十分な屈折率変調のコントラストを得るためには、微視的な機械的強度をある程度高め、記録露光後のモノマー移動及び暗反応を抑えることが好ましい。ホログラム記録層の柔軟性が不十分であると、記録時の光重合性モノマーの移動が阻害され感度低下を招き、また均質性が不十分であると、記録時/再生時の散乱が起こり記録/再生自体の信頼性の低下を招く。記録層の不均質化による散乱の影響は、短波長領域の記録/再生レーザにおいてより顕在化しやすい。
【0016】
本発明の目的は、緑色レーザのみならず青色レーザを用いたホログラフィックメモリ記録においても、高い屈折率変化、柔軟性、高感度、低散乱、耐環境性すなわち保存安定性、耐久性、低寸法変化(低収縮性)、及び高多重度が達成される、体積型ホログラム記録に適したホログラム記録材料及び媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは鋭意検討し、光重合性モノマーとして、特定構造の(メタ)アクリルアミド誘導体を用いると、ホログラム記録露光時及び/又はポストキュア(後露光)時におけるホログラム記録材料の収縮を非常に抑制できることを見いだした。
【0018】
本発明には、以下の発明が含まれる。
(1) 光ラジカル重合性化合物と、前記光ラジカル重合性化合物の分散媒であるマトリックスとを含むホログラム記録材料であって、
前記光ラジカル重合性化合物として、下記一般式(I):
CH2 =CR1 −CONR2 −CH2 −O−R3 (I)
(ここで、R1 は、H、又はCH3 基を表し、R2 は、H、又は有機基を表し、R3 は、総炭素数3以上の有機基を表す)
で表される(メタ)アクリルアミド誘導体を含むホログラム記録材料。
【0019】
(2) 前記一般式(I)で表される(メタ)アクリルアミド誘導体は、前記ホログラム記録材料中に含まれる全ての光ラジカル重合性化合物のラジカル重合性C=C二重結合の全数を基準として、[CH2 =CR1 −CONR2 −CH2 −O−]の構造を有するラジカル重合性C=C二重結合の数が少なくとも30%となるように含まれている、上記(1) に記載のホログラム記録材料。
【0020】
(3) 前記一般式(I)において、R2 及び/又はR3 は、下式で表されるポリアルキレングリコールユニット:
−(RO)n −
(ここで、Rは炭素数1〜4の低級アルキレン基を表し、nはアルキレンオキシドの繰り返し単位数を表す)
を有するものである、上記(1) 又は(2) に記載のホログラム記録材料。
【0021】
(4) 前記一般式(I)において、R2 及び/又はR3 は、下式で表されるポリエチレングリコールユニット:
−(CH2 CH2 O)n −
(ここで、nはエチレンオキシドの繰り返し単位数を表す)
を有するものである、上記(3) に記載のホログラム記録材料。
【0022】
(5) 前記繰り返し単位数nが3以上である、上記(3) 又は(4) に記載のホログラム記録材料。
【0023】
(6) さらに光重合開始剤を含む、上記(1) 〜(5) のうちのいずれかに記載のホログラム記録材料。
【0024】
(7) 前記マトリックスは、金属アルコキシド化合物及び/又はその多量体を含むマトリックス形成用材料から形成された有機金属マトリックスである、上記(1) 〜(6) のうちのいずれかに記載のホログラム記録材料。
【0025】
(8) 前記有機金属マトリックスは、Siアルコキシド化合物及び/又はその多量体を含むマトリックス形成用材料から形成されたものである、上記(7) に記載のホログラム記録材料。
【0026】
(9) 前記有機金属マトリックスは、Siアルコキシド化合物及び/又はその多量体と、
Tiアルコキシド化合物、Zrアルコキシド化合物、Taアルコキシド化合物、Snアルコキシド化合物、Znアルコキシド化合物、及びAlアルコキシド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属アルコキシド化合物、及び/又は前記金属アルコキシド化合物の多量体と、
を含むマトリックス形成用材料から形成されたものである、上記(7) 又は(8) に記載のホログラム記録材料。
【0027】
(10) 上記(1) 〜(9) のうちのいずれかに記載のホログラム記録材料からなるホログラム記録層を有する、ホログラム記録媒体。
【0028】
(11) ホログラム記録層は、少なくとも100μmの厚みを有する、上記(10)に記載のホログラム記録媒体。
【0029】
(12) 波長350〜450nmのレーザ光によって記録/再生される、上記(10)又は(11)に記載のホログラム記録媒体。
【発明の効果】
【0030】
本発明のホログラム記録材料は、光重合性モノマーとして、前記一般式(I)で表される特定構造の(メタ)アクリルアミド誘導体を含んでいる。
【0031】
前記特定構造の光重合性化合物は、光ラジカル反応性基として加水分解に対して安定な(メタ)アクリルアミド基を有するため、ホログラム記録層の形成段階(分散媒であるマトリックスの形成段階)、及びホログラム記録媒体の作製後の記録露光前の保存段階のいずれの段階においても安定である。そのため、所望のホログラム記録特性が得られる。さらに、記録露光後の保存段階においても、生成したポリマーは安定であり、所望の再生特性が得られる。
【0032】
特定構造の(メタ)アクリルアミド誘導体を用いると、ホログラム記録露光時及び/又はポストキュア(後露光)時におけるホログラム記録材料の収縮が特異的に抑制される。記録収縮が特異的に抑制される機構は明らかではないが、以下の機構に基づくものと推測される。すなわち、前記特定構造の(メタ)アクリルアミド誘導体は、ホログラム記録露光時及び/又はポストキュア(後露光)の際に、光ラジカル重合反応の他に、光照射により2分子への開裂反応を受けやすいと考えられ、それにより自由体積が増加する。自由体積の増加が、光ラジカル重合反応による重合収縮(記録収縮)を補填する。その結果、ホログラム記録露光時及び/又はポストキュア(後露光)時におけるホログラム記録材料の収縮は非常に抑制される。
【0033】
このようにして、本発明のホログラム記録材料を用いたホログラム記録媒体は、緑色レーザのみならず青色レーザを用いた記録/再生において十分な感度、屈折率変調を得ることができ、記録後の保存安定性にも優れており、記録/再生の信頼性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例で作製されたホログラム記録媒体の概略断面を示す図である。
【図2】実施例で用いられたホログラム記録光学系の概略を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明のホログラム記録材料は、光ラジカル重合性化合物(モノマー)と、前記光ラジカル重合性化合物の分散媒であるマトリックスとを含む組成物である。本発明のホログラム記録媒体は、前記ホログラム記録材料からなるホログラム記録層を有する。本明細書において、ホログラム記録層をホログラム記録材料層ということもある。
【0036】
マトリックス材料は、光ラジカル重合性化合物を分散できる材料であれば、特に制限されることはない。例えば、ホログラム記録材料における公知の材料を用いてもよい。好ましくは、以下に述べるように、光ラジカル重合性化合物を均一に分散できる有機金属マトリックスを用いるとよい。
【0037】
有機金属マトリックスは、金属アルコキシド化合物及び/又はその多量体(部分的加水分解縮合物)を含むマトリックス形成用材料からゾル−ゲル反応(すなわち、加水分解・重縮合)によって形成することができ、ゲル状もしくはゾル状の有機金属化合物微粒子から構成されている。前記有機金属マトリックスは、ホログラム記録材料層において光重合性化合物の分散媒として機能する。すなわち、液相の光重合性化合物がゲル状もしくはゾル状の有機金属マトリックス中に均一に相溶性良く分散される。
【0038】
ホログラム記録材料層に干渉性のある光を照射すると、露光部では光ラジカル重合性有機化合物(モノマー)が重合反応を起こしポリマー化すると共に、未露光部から光重合性有機化合物が露光部へと拡散移動し、さらに露光部のポリマー化が進む。この結果、光強度分布に応じて光重合性有機化合物から生じたポリマーの多い領域とポリマーの少ない領域とが形成される。この際、前記ポリマーの多い領域から前記有機金属化合物微粒子が前記ポリマーの少ない領域に移動して、前記ポリマーの多い領域は前記微粒子の少ない領域となり、前記ポリマーの少ない領域は前記微粒子の多い領域となる。このようにして、露光により前記ポリマーの多い領域と前記有機金属化合物微粒子の多い領域とが形成され、前記ポリマーと前記微粒子との間に屈折率差があるとき、光強度分布に応じて屈折率変化が記録される。
【0039】
ホログラム記録材料においてよりよい記録特性を得るためには、光重合性化合物から生じた前記ポリマーの屈折率と、前記有機金属化合物微粒子の屈折率との差が大きいことが必要である。前記ポリマーと前記微粒子の両者の屈折率の高低については、どちらを高くしてどちらを低く設計してもよい。
【0040】
ホログラム記録材料の設計において、前記有機金属化合物微粒子を光重合性化合物から生じた前記ポリマーよりも低い屈折率とする場合には、Siを比較的大きな含有割合で用いるとよい。一方、前記有機金属化合物微粒子を光重合性化合物から生じた前記ポリマーよりも高い屈折率とする場合には、Ti、Zr、Ta、Sn、Zn、Al等を比較的大きな含有割合で用いるとよい。
【0041】
このように、前記有機金属マトリックスは、Siアルコキシド化合物及び/又はその多量体(部分的加水分解縮合物)を含むマトリックス形成用材料から形成することができる。また、前記有機金属マトリックスは、Siアルコキシド化合物及び/又はその多量体の他に、Tiアルコキシド化合物、Zrアルコキシド化合物、Taアルコキシド化合物、Snアルコキシド化合物、Znアルコキシド化合物、及びAlアルコキシド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属アルコキシド化合物、及び/又は前記金属アルコキシド化合物の多量体(部分的加水分解縮合物)を含むマトリックス形成用材料から形成することができる。
【0042】
マトリックス形成用材料としての金属アルコキシド化合物は、下記一般式:
(R12)j M(OR11)k
で表される。R12はアルキル基又はアリール基を表し、R11はアルキル基を表し、Mは金属を表し、jは0、1、2又は3を表し、kは1以上の整数を表し、ただし、j+kは金属Mの原子価数である。R12はjにより異なっていてもよく、R11はkにより異なっていてもよい。ただし、金属アルコキシド化合物のうちの少なくとも1種として、j=1、2、又は3であるものを用いて、金属−炭素(M−C)直接結合を有機金属化合物微粒子に導入する。
【0043】
12が表すアルキル基は通常、炭素数1〜4程度の低級アルキル基であり、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基等が挙げられる。R12が表すアリール基としては、フェニル基が挙げられる。アルキル基、アリール基は置換基を有していてもよい。
【0044】
11が表すアルキル基は通常、炭素数1〜4程度の低級アルキル基であり、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。アルキル基は置換基を有していてもよい。
【0045】
Mが表す金属原子としては、Si、Ti、Zr、Ta、Sn、Zn、Alが挙げられ、その他に、Ge等が挙げられる。本発明においては、金属Mの異なる少なくとも2種の金属アルコキシド化合物(上記一般式)を用いることが好ましく、金属Mのうちの1種はSiであり、Si以外の他の金属Mは、Ti、Zr、Ta、Sn、Zn、及びAlからなる群から選ばれることが好ましい。2種の金属の組み合わせとしては、SiとTi、SiとTa、SiとZrの各組み合わせが例示される。もちろん、3種の金属の組み合わせとしてもよい。2種以上の金属を構成元素として含むことにより、有機金属マトリックスの屈折率等の特性制御が容易となり、記録材料の設計上好ましい。
【0046】
金属MがSiのアルコキシド化合物(上記一般式)の具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン(以上、j=0、k=4);メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン(以上、j=1、k=3);ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン(以上、j=2、k=2)等が挙げられる。
【0047】
これらのケイ素化合物のうち、好ましいものとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0048】
さらに、ジフェニルジメトキシシランが好ましい。2つのフェニル基(Ph)が1つのSiに直接結合している有機金属単位(Ph−Si−Ph)が有機金属マトリックスに導入されると、有機金属マトリックスの柔軟性が向上し、また、後述する光ラジカル重合性化合物やそれの重合により生成する有機ポリマーとの相溶性が良好となるため好ましい。また、前記有機金属化合物の屈折率も高くなる。Siのジフェニルアルコキシド化合物は、原料として入手が容易であり、加水分解及び重合の反応性も良好である。また、フェニル基は置換基を有していてもよい。
【0049】
トリメチルメトキシシラン等のモノアルコキシシラン(j=3、k=1)が存在すると、重合反応は停止されるので、モノアルコキシシランを分子量の調整に用いることができる。
【0050】
Si以外の金属Mのアルコキシド化合物(上記一般式)の具体例としては、特に限定されることなく、例えば、テトラn−プロポキシチタン[Ti(O−nPr)4 ]、テトライソプロポキシチタン[Ti(O−iPr)4 ]、テトラn−ブトキシチタン[Ti(O−nBu)4 ]等のチタンのアルコキシド化合物; ペンタエトキシタンタル[Ta(OEt)5 ]、テトラエトキシタンタルペンタンジオナート[Ta(OEt)4 (C5 7 2 )]等のタンタルのアルコキシド化合物; テトラt−ブトキシジルコニウム[Zr(O−tBu)4 ]、テトラn−ブトキシジルコニウム[Zr(O−nBu)4 ]等のジルコニウムのアルコキシド化合物; テトラt−ブトキシスズ[Sn(O−tBu)4 ]、テトラn−ブトキシスズ[Sn(O−nBu)4 ]等のスズのアルコキシド化合物; ジエトキシ亜鉛[Zn(OEt)2 ]、ジメトキシエトキシ亜鉛[Zn(OC2 4 −OCH3 2 ]等の亜鉛のアルコキシド化合物; トリi−プロポキシアルミニウム[Al(O−iPr)3 ]、トリt−ブトキシアルミニウム[Al(O−tBu)3 ]、トリs−ブトキシアルミニウム[Al(O−sBu)3 ]、トリn−ブトキシアルミニウム[Al(O−nBu)3 ]等のアルミニウムのアルコキシド化合物が挙げられる。これらの他にも、金属のアルコキシド化合物を用いることができる。
【0051】
また、金属アルコキシド化合物(上記一般式)の多量体(該金属アルコキシド化合物の部分的加水分解縮合物に相当する)を用いてもよい。例えば、チタンブトキシド多量体(テトラブトキシチタンの部分的加水分解縮合物に相当する)を用いてもよい。金属アルコキシド化合物(上記一般式)と該金属アルコキシド化合物の多量体とを併用してもよい。
【0052】
また、有機金属マトリックスには、上記した以外のその他の微量の元素が含まれていてもよい。
【0053】
本発明のホログラム記録材料は、光ラジカル重合性化合物として、下記一般式(I): CH2 =CR1 −CONR2 −CH2 −O−R3 (I)
で表される(メタ)アクリルアミド誘導体を含んでいる。ここで、R1 は、H、又はCH3 基を表し、R2 は、H、又は有機基を表し、R3 は、総炭素数3以上の有機基を表す。なお、(メタ)アクリルアミドとは、メタクリルアミド、及びアクリルアミドを総称する表記である。
【0054】
前記特定構造の光ラジカル重合性化合物は、[−NR2 −CH2 −O−]というN−メチレンオキシド単位を有している。N−メチレンオキシド単位により、ホログラム記録露光時及び/又はポストキュア(後露光)の際に、C=C二重結合が関与する光ラジカル重合反応の他に、次の反応スキームで示される開裂反応が起こりやすい。本開裂反応は、光照射によって直接的及び/又は間接的に(例えば、共存する光重合開始剤などを介して)誘起される、ラジカル的開裂(ホモリシス)機構を経由していると考えられる。なお、反応スキームには、R1 がHの場合が示されている。
【0055】
【化1】

【0056】
開裂反応が起こると、前記特定構造の光ラジカル重合性化合物1分子から、CH2 =CR1 −CONR2 CH2 OH分子とHOR3 分子の2分子が生成し、自由体積が増加する。ホログラム記録露光時及び/又はポストキュア時に、CH2 =CR1 −CONR2 −CH2 −O−R3 、及び/又はCH2 =CR1 −CONR2 CH2 OH分子は、光ラジカル重合反応によりポリマー化され、体積減少し、ホログラム記録材料として重合収縮(記録収縮)が起こる。この重合収縮は、上記自由体積の増加により補填される。その結果、ホログラム記録露光時及び/又はポストキュア時におけるホログラム記録材料の収縮は非常に抑制される。
【0057】
上記反応スキームで示される光ラジカル開裂反応の起こりやすさは、中間体として生成する炭素ラジカル[CH2 =CR1 −CONR2 CH2 ・]の安定性に依存すると考えられる。この中間体ラジカルは、次の(A)に示すように、炭素ラジカル電子が隣接する窒素原子上の非共有電子対によって安定化されるため、より安定に存在し得ると考えられる。このため、[−NR2 −CH2 −O−]なるN−モノメチレンオキシド単位(メチレン炭素数が1)を有している前記特定構造の光ラジカル重合性化合物は、光ラジカル開裂反応を起こしやすい。
【0058】
【化2】

【0059】
一方、N−ジメチレンオキシド単位(メチレン炭素数が2)となると、次の(B)に示すように、中間体炭素ラジカルでは、窒素原子上の非共有電子対による安定化は働かないため、このような炭素ラジカルは中間体として生成しにくい。結果として、メチレン炭素数が2以上の場合には、光ラジカル開裂反応は進行しないか、非常に進行しにくい。
【0060】
【化3】

【0061】
前記一般式(I)において、R2 は、H、又は有機基を表す。R2 が表す有機基としては、特に限定されず、直鎖状又は分岐状の有機基、又は環状有機基のいずれでもよく、任意の置換基及び/又はヘテロ原子(例えば、N、O)を含んでいてもよい。
【0062】
また、R2 が、
−CH2 −O−R5
で表される有機基であってもよい。ここで、R5 は、直鎖状又は分岐状の有機基、又は環状有機基のいずれでもよく、任意の置換基及び/又はヘテロ原子(例えば、N、O)を含んでいてもよい。このように、N原子に結合しているR2 が、[−N−CH2 −O−]なるN−モノメチレンオキシド単位を形成していると、ホログラム記録露光時及び/又はポストキュア時における開裂反応により、さらにHOR5 分子が生成する。そのため、さらなる自由体積の増加が起こるので、ホログラム記録材料の収縮抑制の観点から好ましい。
【0063】
前記一般式(I)において、R3 は、総炭素数3以上の有機基を表す。R3 が表す総炭素数3以上の有機基としては、特に限定されず、直鎖状又は分岐状の有機基、又は環状有機基のいずれでもよく、任意の置換基及び/又はヘテロ原子(例えば、N、O)を含んでいてもよい。
【0064】
また、R2 又はR3 が、(メタ)アクリルアミドN−メチルエーテル基をさらに有していてもよい。その他、上記以外の(メタ)アクリルアミド基や、(メタ)アクリル酸エステル基、ビニルエーテルなど、任意のラジカル重合性炭素−炭素二重結合を有していても差し支えない。例えば、遊離したR3 が記録済み信号の経時安定性に悪影響を与えることが懸念される場合は、R3 に(メタ)アクリルアミドN−メチルエーテル基以外の(光開裂性をもたない)ラジカル重合性炭素−炭素二重結合を導入することが好ましい。
【0065】
前記一般式(I)において、R2 及び/又はR3 は、下式で表されるポリアルキレングリコールユニット:
−(RO)n −
を有するものであることが好ましい。ここで、Rは炭素数1〜4の低級アルキレン基を表し、nはアルキレンオキシドの繰り返し単位数(重量平均重合度)を表す。
【0066】
Rが表す前記低級アルキレン基は、具体的には、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,2−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,3−ブチレン基等が挙げられる。これらのうち、エチレン基、1,3−プロピレン基が親水性の観点から適切であり、エチレン基が好ましい。すなわち、R2 及び/又はR3 は、好ましくはポリエチレングリコールユニット:
−(CH2 CH2 O)n −
を有するものである。
【0067】
また、親水性、記録収縮抑制の観点から、前記繰り返し単位数nが3以上であることが好ましく、nが4以上50以下がより好ましく、nが5以上30以下がさらに好ましい。
【0068】
一般式(I)の(メタ)アクリルアミド誘導体が、親水的なポリアルキレングリコールユニットを有していると、有機金属マトリックス、及びその形成段階における金属アルコキシド化合物及び部分縮合体である多量体のいずれとも相溶性が良好であり、有機金属マトリックス中におけるより均一な分散が達成される。
【0069】
以上述べた開裂反応の機構に従い、マトリックス材料との相溶性、記録特性(ダイナミックレンジなど)、保存安定性、及び化合物合成の難易度などを考慮し、一般式(I)の(メタ)アクリルアミド誘導体の分子設計を行えばよい。
【0070】
光ラジカル重合性化合物として、前記特定構造の(メタ)アクリルアミド誘導体の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
前記特定構造の(メタ)アクリルアミド誘導体は、分子内に1つの(メタ)アクリルアミド基を有するものの場合、例えば、1当量のN−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド化合物と、1当量のR3 OH化合物とから脱水して、R3 と(メタ)アクリルアミドメチルとのエーテルとすることにより調製できる。
【0072】
例えば、分子内に1つの(メタ)アクリルアミド基を有するものの場合、例えば、1当量のN−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド化合物と、1当量のポリアルキレングリコール化合物とから脱水して、ポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリルアミドメチルエーテルとすることにより調製できる。
【0073】
ポリアルキレングリコール化合物は、そのモノアルキルエーテルであっても差し支えない。ポリアルキレングリコール化合物のモノアルキルエーテルを用いる場合、化合物中の前記アルキル基は、例えば炭素数1〜20までのアルキル基が好ましいが、置換基を有していても構わない。ポリアルキレングリコール化合物として、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0074】
また、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド化合物の代わりに、次式(II)で表されるN−ヒドロキシメチル−N−アルキル(メタ)アクリルアミド化合物:
CH2 =CHCON(R2 )−CH2 OH (II)
を用いてもよい。アルキル基R2 としては、例えば炭素数1〜20までのアルキル基が好ましいが、置換基を有していても構わない。さらに、R2 がヒドロキシル基を有していても構わない。R2 がヒドロキシル基を有する場合、前記(メタ)アクリルアミド化合物(II)の1当量に対して、1当量のポリアルキレングリコール化合物を用いることによって、1つのポリアルキレングリコール鎖を有する化合物が得られる。また、前記(メタ)アクリルアミド化合物(II)の1当量に対して、2当量のポリアルキレングリコール化合物を用いることによって、2つのポリアルキレングリコール鎖を有する化合物が得られる。
【0075】
前記特定構造の(メタ)アクリルアミド誘導体は、分子内に2つの(メタ)アクリルアミド基を有するものの場合、例えば、2当量のN−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド化合物と、1当量のポリアルキレングリコール化合物とから脱水して、ポリアルキレングリコールのビス(メタ)アクリルアミドメチルエーテルとすることにより調製できる。N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド化合物としては、例えば、上記の分子内に1つの(メタ)アクリルアミド基を有する化合物の場合と同じものを使用できる。また、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド化合物の代わりに、上記と同様のN−ヒドロキシメチル−N−アルキル(メタ)アクリルアミド化合物(II)を用いてもよい。
【0076】
前記特定構造の(メタ)アクリルアミド誘導体は、分子内に3つ以上の(メタ)アクリルアミド基を有するものの場合、例えば、グリセロール、エリスリトール、ジペンタエリスリトールなどのポリオール化合物のポリエチレンオキサイド付加物を予め合成しておき、この付加物とN−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド化合物とから脱水して、対応する(メタ)アクリルアミドメチルエーテルとすることにより調製できる。
【0077】
本発明において、前記有機金属マトリックスを高屈折率とし、有機ポリマーを低屈折率とする場合には、上記特定構造の(メタ)アクリルアミド誘導体のうちで芳香族基を有していない低屈折率(例えば、屈折率1.5以下)のものが好ましい。
【0078】
本発明において、光ラジカル重合性化合物として、上記特定構造の(メタ)アクリルアミド誘導体に加えて、それ以外のラジカル重合性化合物、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、ビニルモノマーを併用してもよい。
【0079】
他の光ラジカル重合性化合物を併用する場合には、前記一般式(I)で表される特定構造の(メタ)アクリルアミド誘導体を、前記ホログラム記録材料中に含まれる全ての光ラジカル重合性化合物のラジカル重合性C=C二重結合の全数を基準として、[CH2 =CR1 −CONR2 −CH2 −O−]の構造を有するラジカル重合性C=C二重結合の数が少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%となるように用いる。また、[CH2 =CR1 −CONR2 −CH2 −O−]の構造を有するラジカル重合性C=C二重結合の数が少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%となるように用いてもよく、もちろん、前記特定構造の(メタ)アクリルアミド誘導体を単独で用いることも好ましい。
【0080】
上述した開裂反応による自由体積の増加によって、重合収縮(記録収縮)を補填するという本発明の目的を損なわないためには、前記特定構造の(メタ)アクリルアミド誘導体を上記の範囲で用いることが好ましい。有機基R2 及び/又はR3 が、該有機基中に[CH2 =CR1 −CONR’−CH2 −O−]の構造(ここで、R’は、H、又は有機基を表す)を有する場合には、それらのラジカル重合性C=C二重結合の数もカウントされる。それらR2 及び/又はR3 も、開裂反応による自由体積の増加に寄与するからである。前記特定構造の(メタ)アクリルアミド誘導体による自由体積の増加度合いを考慮して、他の光ラジカル重合性化合物を併用する場合の使用量を決定するとよい。
【0081】
組み合わせて用いられる(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス〔4-(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン等の多官能(メタ)アクリレート;
が挙げられる。
【0082】
また、ビニルモノマーとしては、モノビニルベンゼン(スチレン)、エチレングリコールモノビニルエーテル等の単官能ビニル化合物; ジビニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等の多官能ビニル化合物が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0083】
他の光ラジカル重合性化合物の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明において、前記有機金属マトリックスを高屈折率とし、有機ポリマーを低屈折率とする場合には、上記のラジカル重合性化合物のうちで芳香族基を有していない低屈折率(例えば、屈折率1.5以下)のものが好ましい。また、前記有機金属マトリックスとの相溶性をより向上させるために、より親水的なポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のグリコール誘導体が好ましい。
【0084】
本発明において、光ラジカル重合性化合物全体は、前記有機金属マトリックス全体の重量(不揮発分)に対して、例えば5〜1000重量%程度、好ましくは10〜300重量%用いるとよい。光重合性化合物が5重量%未満では、記録の際に大きな屈折率変化を得られにくく、1000重量%を超えた場合も、記録の際に大きな屈折率変化を得られにくい。
【0085】
本発明において、ホログラム記録材料には、さらに記録光の波長に対応する光重合開始剤が含まれている。光重合開始剤によって、記録の際の露光により光重合性化合物の重合が促進され、より高感度が得られる。
【0086】
本発明において、光ラジカル重合性化合物を用いるので、光ラジカル開始剤を用いる。光ラジカル開始剤としては、例えば、ダロキュア1173、イルガキュア784 、イルガキュア651 、イルガキュア184 、イルガキュア907 (いずれもチバスペシャルティ・ケミカルズ社製)が挙げられる。光ラジカル開始剤の含有量は、例えば、光重合性化合物を基準として0.1〜10重量%程度、好ましくは0.5〜5重量%程度である。
【0087】
光重合開始剤の他に記録光波長に対応した光増感剤として機能する色素などが含有されていてもよい。光増感剤としては、例えば、チオキサンテン−9−オン、2,4−ジエチル−9H−チオキサンテン−9−オン等のチオキサントン類、キサンテン類、シアニン類、メロシアニン類、チアジン類、アクリジン類、アントラキノン類、及びスクアリリウム類等が挙げられる。光増感剤の使用量は、光ラジカル開始剤の5〜50重量%程度、例えば10重量%程度とするとよい。
【0088】
また、ホログラム記録材料に、マトリックスの三次元架橋構造に関与せず、且つ、記録再生光での重合反応にも寄与しない可塑剤を含ませてもよい。マトリックスの剛性が高くなり過ぎると、記録露光時に光ラジカル重合性モノマーが移動しにくくなる。一方、マトリックスの剛性が低くなり過ぎると、記録済み信号の経時安定性が低下する。従って、マトリックスの三次元架橋構造を所望レベルに維持しながら、光ラジカル重合性モノマーの移動度を確保するため、流動性の高い可塑剤成分を含ませてもよい。可塑剤成分の添加により、マトリックスと光ラジカル重合性モノマーとの相溶性も向上する。可塑剤成分としては、例えば、ジメチルシロキサン、フェニルメチルシロキサン、長鎖アルキルエステル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールのアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールのアルキルエーテル、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合体(ランダム、又はブロック)等が挙げられる。
【0089】
次に、ホログラム記録材料の製造について説明する。
有機金属マトリックスの調製は、金属アルコキシド化合物及び/又はその多量体を加水分解及び重合反応(いわゆるゾル−ゲル反応)することにより行うとよい。
【0090】
加水分解及び重合反応は、公知のゾル−ゲル法におけるのと同様の操作及び条件で実施することができる。例えば、所定割合の金属アルコキシド化合物原料を好適な有機溶媒に溶かして均一溶液として、その溶液に適当な酸触媒を滴下し、水の存在下で溶液を攪拌することにより、反応を行うことができる。溶媒の量は、限定されないが、金属アルコキシド化合物全体100重量部に対して10〜1000重量部とするとよい。
【0091】
酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸; ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸等が挙げられる。
【0092】
加水分解重合反応は、金属アルコキシド化合物の反応性にもよるが、一般に室温(20〜30℃程度)にて、0.5時間以上5時間以下、好ましくは0.5時間以上3時間以下で行うとよい。また、反応は、窒素ガス等の不活性雰囲気下で行ってもよく、0.5〜1気圧程度の減圧下で、重合反応で生成するアルコールを除去しながら行ってもよい。
【0093】
本発明において、前記Si以外の他の金属のアルコキシド化合物の加水分解の前に、前記Si以外の他の金属のアルコキシド化合物に有機多座配位子を配位させる工程を行うことが好ましい。
【0094】
多座配位子はいわゆるキレート配位子であり、例えば、β−ジカルボニル化合物、ポリヒドロキシ化配位子、及び、α−又はβ−ヒドロキシ酸、エタノールアミン類等が挙げられる。β−ジカルボニル化合物としては、アセチルアセトン(AcAc)、ベンゾイルアセトン等のβ−ジケトン、エチルアセトアセテート(EtAcAc)等のβ−ケトエステルが挙げられる。ポリヒドロキシ化配位子としては、グリコール(特に1,3−ジオールタイプのもの、例えば、1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール)、α−又はβ−ヒドロキシ酸としては、乳酸、グリセリン酸、酒石酸、クエン酸、トロパ酸、ベンジル酸等が挙げられる。その他の配位子としては、シュウ酸が挙げられる。
【0095】
また、芳香族カルボン酸も配位子として好ましい。芳香族カルボン酸とは、芳香族環(Ar)に直接的に1つ又は複数のカルボキシル基(−COOH)が結合している化合物である。芳香族カルボン酸としては、安息香酸、o−,m−,又はp−トルイル酸、o−,m−,又はp−メトキシ安息香酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
【0096】
前記Si以外の他の金属(Ti、Zr、Ta、Sn、Al、Zn等)のアルコキシド化合物をゾル−ゲル反応に供すると、その加水分解及び重合反応の速度は一般に大きいので、反応条件によっては生成した金属の酸化物が凝集してしまう場合がある。有機配位子を配位させておくことによって、その加水分解及び重合反応の速度を抑制できるので、より均質なゾル−ゲル反応生成物が得られる。
【0097】
また、前記Si以外の他の金属のアルコキシド化合物に有機配位子を配位させると、生成する複合金属化合物微粒子に有機基が導入される。有機基に導入により、複合金属化合物微粒子マトリックスと、光重合性化合物との相溶性がより向上する。
【0098】
前記加水分解の前、加水分解している時、又は加水分解の後において、光ラジカル重合性有機化合物を混合する。光重合性有機化合物と金属アルコキシド化合物は、加水分解後混合しても良いし、加水分解している時あるいは加水分解前に混合しても良い。加水分解後に混合する場合には、均一に混合するために、有機金属化合物あるいはその前駆体を含むゾル−ゲル反応系がゾルの状態で、光重合性有機化合物を添加混合することが好ましい。また、光ラジカル重合開始剤や光増感剤の混合も、前記加水分解の前、加水分解している時、又は加水分解の後において行うことができる。
【0099】
光重合性化合物が混合された有機金属化合物前駆体の重縮合反応を進行させ、ゾル状態の有機金属化合物微粒子マトリックス中に光重合性化合物が均一に混合されたホログラム記録材料液が得られる。ホログラム記録材料液を基板上に塗布し、溶媒乾燥及びゾル−ゲル反応をさらに進行させることにより、フィルム状のホログラム記録材料層が得られる。このようにして有機金属マトリックス中に光ラジカル重合性化合物が均一に含有されたホログラム記録材料層が作製される。
【0100】
本発明のホログラム記録媒体は、少なくとも上記ホログラム記録材料層を含んでなる。通常は、ホログラム記録媒体は、支持基体(すなわち基板)とホログラム記録材料層とを含んでなるが、支持基体を有さずホログラム記録材料層のみから構成されることもある。例えば、基板上に塗布によりホログラム記録材料層を形成し、その後、ホログラム記録材料層を基板から剥離することにより、ホログラム記録材料層のみから構成される媒体を得ることができる。この場合、ホログラム記録材料層は、例えばmmオーダーの厚膜のものである。
【0101】
ホログラム記録媒体は、用いる光学系装置によって、透過光によって再生を行う構成の媒体(以下、透過光再生タイプという)、又は反射光によって再生を行う構成の媒体(以下、反射光再生タイプという)のいずれかである。
【0102】
本発明のホログラム記録媒体は、緑色レーザ光のみならず波長350〜450nmの青色レーザ光による記録/再生にも好適である。透過光によって再生を行う場合、波長405nmにおいて50%以上の光透過率を有することが好ましく、反射光によって再生を行う場合、波長405nmにおいて25%以上の光反射率を有することが好ましい。
【0103】
上記ホログラム記録材料を用いることで、データストレージに適した100μm以上の記録層厚みをもつホログラム記録媒体を得ることができる。ホログラム記録媒体は、基板上にフィルム状のホログラム記録材料を形成したり、あるいは、フィルム状のホログラム記録材料を基板間に挟み込むことにより作製できる。
【0104】
透過光再生タイプの媒体においては、基板には、ガラスや樹脂などの記録再生波長に対して透明な材料が用いられることが好ましい。ホログラム記録材料層とは反対側の基板の表面には、ノイズ防止のため記録再生波長に対する反射防止膜が施され、またアドレス信号等が付与されていることが好ましい。ホログラム記録材料の屈折率と基板の屈折率とは、ノイズとなる界面反射を防止するため、ほぼ等しいことが好ましい。また、ホログラム記録材料層と基板との間に、記録材料や基板とほぼ同等の屈折率を有する樹脂材料やオイル材料からなる屈折率調整層を設けてもよい。基板間のホログラム記録材料層の厚みを保持するために、前記基板間の厚みに適したスペーサを設けてもよい。また、記録材料媒体の端面は、記録材料の封止処理がなされていることが好ましい。
【0105】
反射光再生タイプの媒体においては、再生レーザ光の入射側に位置する基板には、ガラスや樹脂などの記録再生波長に対して透明な材料が用いられることが好ましい。再生レーザ光の入射側とは反対側に位置する基板としては、反射膜付き基板を用いる。具体的には、ガラス又は樹脂製の剛性基板(透光性は必要ではない)の表面に、例えばAl、Ag、Au、又はこれら金属を主成分とする合金などからなる反射膜を、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の各種成膜法によって成膜し、反射膜付き基板を得る。この基板の反射膜表面にホログラム記録材料層を所定厚みで設け、さらにこの記録材料層表面に、透光性基板を貼り合わせる。ホログラム記録材料層と前記反射膜との間、及び/又はホログラム記録材料層と前記透光性基板との間に接着剤層、平坦化層等が設けられてもよいが、それらの層もレーザ光透過の妨げになってはならない。それら以外のことは、上記の透過光再生タイプの媒体におけるのと同様である。
【0106】
データストレージ用途に用いられホログラム記録材料においては、ホログラム記録露光時及び/又はポストキュア(後露光)の際に起こる記録収縮率は、0.5%(正値が収縮方向である)以下とすることが好ましく、0.3%以下とすることがより好ましく、0.2%以下とすることがさらに好ましい。収縮が起こらないことが最も好ましい。
【0107】
本発明のホログラム記録材料からなるホログラム記録層を有するホログラム記録媒体は、緑色レーザ光によって記録・再生されるシステムのみならず、波長350〜450nmの青色レーザ光によって記録・再生されるシステムにも好適に用いることができる。
【実施例】
【0108】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0109】
[実施例1]
(アクリルアミド誘導体モノマーの合成)
N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミドと、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルとから、特開2006−225446号公報に記載の方法に従って、下式のポリエチレングリコールのモノアクリルアミドメチルエーテル・モノメチルエーテル(a)を合成した。
【0110】
CH2 =CHCONHCH2 OH + HO(C2 4 O)n CH3
→ CH2 =CHCONHCH2 O(C2 4 O)n CH3 ..... (a)
【0111】
N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド(和光純薬工業製)100重量部、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(英国Alfa Aesar社製、重量平均分子量Mw=350)266重量部、p−トルエンスルホン酸0.3重量部、及びヒドロキノン0.2重量部の混合液を、窒素気流下で60℃に昇温し、10時間反応させた。次いで、揮発成分を40℃で減圧留去した後、分取液体クロマトグラフィーにより未反応のN−(ヒドロキシメチル)アクリルアミドを除去し、生成物を分取した。分取した生成物を減圧乾燥し、目的の化合物(a)を得た。 1H−NMRにより構造を同定した。
【0112】
(マトリックス材料の合成)
テトラn−ブトキシチタン(日本曹達(株)製、B−1)2.72gに、n−ブチルアルコール0.49gと、2−メチル−2,4−ヒドロキシペンタン0.95gとを加えて室温で撹拌し、テトラn−ブトキシチタン1分子当り2分子の2−メチル−2,4−ヒドロキシペンタンが配位したチタン化合物溶液4.16gを調製した.
【0113】
このチタン化合物溶液に、ジフェニルジメトキシシラン(信越化学工業(株)製、LS−5300)2.05gと、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミド(アヅマックス(株)製、SIT8189.0)の50wt%エタノール溶液0.51gとを加え、金属アルコキシド溶液とした。すなわち、Ti/Siのモル比は0.8/1であった.
【0114】
純水0.15g、2N塩酸0.06g、エタノール1.49gからなる溶液を、前記金属アルコキシド溶液に撹拌しながら室温で滴下し、2時間撹拌を続け、加水分解及び縮合反応を行った。すなわち、反応溶液全体に占める金属アルコキシド出発原料の割合は、64重量%であった。このようにして、有機金属ゾル溶液を得た。
【0115】
(光重合性化合物)
光重合性化合物として上記で合成したポリエチレングリコールのモノアクリルアミドメチルエーテル・モノメチルエーテル(a)100重量部に、光重合開始剤としてイルガキュアIRG−907(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)3重量部及び光増感剤としてチオキサンテン−9−オン 0.3重量部を加え、光重合性化合物を含む混合物とした。
【0116】
(ホログラム記録材料溶液)
マトリックス材料(出発原料基準の不揮発分として)の割合が85重量部、光重合性化合物の割合が15重量部となるように、前記ゾル溶液と前記光重合性化合物の混合物とを室温にて混合し、ほぼ無色透明なホログラム記録材料溶液を得た。
【0117】
(ホログラム記録材料)
ホログラム記録媒体の概略断面を示す図1を参照して説明する。
片面に反射防止膜(22a) が設けられた1mm厚のガラス基板(22)を準備した。ガラス基板(22)の反射防止膜(22a) が設けられていない面上に、所定厚みのスペーサ(24)をおき、得られたホログラム記録材料溶液を塗布し、室温で1時間乾燥し、次いで40℃で48時間乾燥し、溶媒を揮発させた。この乾燥工程により、有機金属化合物のゲル化(縮合反応)を進行させ、有機金属化合物と光重合性化合物とが均一に分散した乾燥膜厚450μmのホログラム記録材料層(21)を得た。
【0118】
(ホログラム記録媒体)
ガラス基板(22)上に形成されたホログラム記録材料層(21)上を片面に反射防止膜(23a) が設けられた別の1mm厚のガラス基板(23)でカバーした。この際、ガラス基板(23)の反射防止膜(23a) が設けられていない面がホログラム記録材料層(21)面と接するようにカバーした。このようにして、ホログラム記録材料層(21)を2枚のガラス基板(22)(23)で挟んだ構造をもつホログラム記録媒体(11)を得た。
【0119】
(特性評価)
実施例1のホログラム記録媒体サンプルについて、図2に示すようなホログラム記録光学系において、特性評価を行った。図2の紙面の方向を便宜的に水平方向とする。
【0120】
図2において、ホログラム記録媒体サンプル(11)は、記録材料層が水平方向と垂直となるようにセットされている。
【0121】
図2のホログラム記録光学系において、シングルモード発振の半導体レーザ(405nm)の光源(101) を用い、この光源(101) から発振した光を、ビーム整形器(102) 、光アイソレータ(103) 、シャッター(104) 、凸レンズ(105) 、ピンホール(106) 、及び凸レンズ(107) によって空間的にフィルタ処理しコリメートし、約10mmφのビーム径に拡大した。拡大されたビームを、ミラー(108) 及び1/2波長板(109) を介して45°(deg)偏光の光を取り出し、偏光ビームスプリッター(110) でS波/P波=1/1に分割した。分割されたS波をミラー(115) 、偏光フィルタ(116) 、虹彩絞り(117) を介して、及び分割されたP波を1/2波長板(111) を用いてS波に変換しミラー(112) 、偏光フィルタ(113) 、虹彩絞り(114) を介して、ホログラム記録媒体サンプル(11)に対する2光束の入射角合計θが37°となるようにし、サンプル(11)で2光束の干渉縞を記録した。
【0122】
ホログラムはサンプル(11)を水平方向に回転させて多重化(角度多重:Angle multiplexing,サンプル角度−21°〜+21°,角度間隔0.6°)して記録した。多重度は71であった。記録時には虹彩絞り(114) 、同(117) を直径4mmにして露光した。なお、2光束が成す角θの2等分線(図示されていない)に対して、サンプル(11)面が90°となる位置を、上記サンプル角度±0°とした。
【0123】
ホログラム記録後、残留する未反応成分を反応させるため、サンプル(11)面全体に、波長400nmの青色LEDで十分な光を照射した。この際、照射光がコヒーレント性をもたないよう、透過率80%のアクリル樹脂製拡散板を介して露光した(ポストキュアと呼ぶ)。再生の際には、シャッター(121) により遮光し、虹彩絞り(117) を直径1mmにして1光束のみ照射して、サンプル(11)を水平方向に−23°〜+23°まで連続的に回転させ、それぞれの角度位置において回折効率をパワーメータ(120) で測定した。記録前後において記録材料層の体積変化(記録収縮)や平均屈折率の変化がない場合には、前記水平方向の回折ピーク角度は記録時と再生時とで一致する。しかしながら、実際には、記録収縮や平均屈折率の変化が起こるため、再生時の水平方向の回折ピーク角度は、記録時の水平方向の回折ピーク角度から僅かにずれる。このため、再生時においては、水平方向の角度を連続的に変化させ、回折ピークが出現した時のピーク強度から回折効率を求めた。なお、図2において、(119) はこの実施例では用いられていないパワーメータである。
【0124】
このとき、ダイナミックレンジ:M/#(回折効率の平方根の和)は35.1(ホログラム記録材料層の厚みを1mmとした時に換算した値)と高い値が得られた。
【0125】
(記録収縮率の測定)
上記特性評価と同じ光学系を用い、角度多重記録を行った。但し、記録時のサンプル角度は−21°〜+21°とし、角度間隔は3.0°とした。すなわち、多重度は15であった。また、再生時の各回折ピーク強度が1%に近い値となるように、露光条件を調節した。
【0126】
上記と同様にポストキュアを行った後、上記特性評価と同じ方法で再生を行い、その際の各回折ピークの記録角度からのずれ量を測定した。この角度ずれがすべて、記録層厚み方向の収縮によって生じたものと仮定し、記録収縮率を見積もった。見積り方法は、リサ・ダー (Lisa Dhar)らが Applied Physics Letters Vol.73 (No.10), 1998 年,pp.1337-1339において開示している方法に従った。
【0127】
その結果、本記録媒体サンプルにおける記録収縮率は、0.1%(正値が収縮方向)となり、極めて低く抑えられていることが確認された。
【0128】
[実施例2]
光重合性化合物として、前記ポリエチレングリコールのモノアクリルアミドメチルエーテル・モノメチルエーテル(a)100重量部の代わりに、前記化合物(a)90重量部と、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(共栄社化学(株)製、ライトアクリレート130A)10重量部との混合物を用いた以外は、実施例1と同様にしてホログラム記録材料溶液及びホログラム記録媒体を得た。
【0129】
得られたホログラム記録媒体サンプルについて、実施例1と同様にして特性評価として角度多重記録を行ったところ、ダイナミックレンジ:M/#は34.9(ホログラム記録材料層の厚みを1mmとした時に換算した値)であった。
【0130】
実施例1と同様にして、記録収縮率を測定した結果、記録収縮率は、0.1%であった。
【0131】
[実施例3]
光重合性化合物として、前記ポリエチレングリコールのモノアクリルアミドメチルエーテル・モノメチルエーテル(a)100重量部の代わりに、前記化合物(a)70重量部と、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(共栄社化学(株)製、ライトアクリレート130A)30重量部との混合物を用いた以外は、実施例1と同様にしてホログラム記録材料溶液及びホログラム記録媒体を得た。
【0132】
得られたホログラム記録媒体サンプルについて、実施例1と同様にして特性評価として角度多重記録を行ったところ、ダイナミックレンジ:M/#は37.0(ホログラム記録材料層の厚みを1mmとした時に換算した値)であった。
【0133】
実施例1と同様にして、記録収縮率を測定した結果、記録収縮率は、0.14%であった。
【0134】
[比較例1]
光重合性化合物として、前記ポリエチレングリコールのモノアクリルアミドメチルエーテル・モノメチルエーテル(a)100重量部の代わりに、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(共栄社化学(株)製、ライトアクリレート130A)100重量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてホログラム記録材料溶液及びホログラム記録媒体を得た。
【0135】
得られたホログラム記録媒体サンプルについて、実施例1と同様にして特性評価として角度多重記録を行ったところ、ダイナミックレンジ:M/#は37.9(ホログラム記録材料層の厚みを1mmとした時に換算した値)であった。
【0136】
実施例1と同様にして、記録収縮率を測定した結果、記録収縮率は、0.6%と高い値であった。
【0137】
[比較例2]
(アクリルアミド誘導体モノマーの合成)
N−(ヒドロキシエチル)アクリルアミド(東京化成工業製)と、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(英国Alfa Aesar社製、重量平均分子量Mw=350)とから、実施例1における方法と同様にして、下式のポリエチレングリコールのモノアクリルアミドエチルエーテル・モノメチルエーテル(b)を合成した。化合物(b)は、本発明で用いられる前記一般式(I)の(メタ)アクリルアミド誘導体ではない。
【0138】
CH2 =CHCONHCH2 CH2 OH + HO(C2 4 O)n CH3
→ CH2 =CHCONHCH2 CH2 O(C2 4 O)n CH3 ..... (b)
【0139】
光重合性化合物として、前記ポリエチレングリコールのモノアクリルアミドメチルエーテル・モノメチルエーテル(a)100重量部の代わりに、上記で合成した化合物(b)100重量部を用いた以外は、実施例1と同様にしてホログラム記録材料溶液及びホログラム記録媒体を得た。
【0140】
得られたホログラム記録媒体サンプルについて、実施例1と同様にして特性評価として角度多重記録を行ったところ、ダイナミックレンジ:M/#は36.8(ホログラム記録材料層の厚みを1mmとした時に換算した値)であった。
【0141】
実施例1と同様にして、記録収縮率を測定した結果、記録収縮率は、0.5%と高い値であった。
【0142】
各実施例及び比較例で用いた光重合性モノマーの分子量(Mw)は以下のとおりである。
前記アクリルアミド誘導体(a)のMw:432
前記アクリルアミド誘導体(b)のMw:446
ライトアクリレート130AのMw:483
従って、全ての光重合性モノマー中に存在するラジカル重合性C=C二重結合の全数を基準として、各モノマー中に存在するラジカル重合性C=C二重結合の数の割合は、表1に示すとおりである。
【0143】
以上の結果を表1に示す。実施例1〜3においては、比較例1〜2に比べ、記録収縮率が極めて低く抑えられた。
【0144】
【表1】

【符号の説明】
【0145】
(11):ホログラム記録媒体
(21):ホログラム記録材料層
(22a) (23a) :反射防止膜
(22)(23):ガラス基板
(24):スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ラジカル重合性化合物と、前記光ラジカル重合性化合物の分散媒であるマトリックスとを含むホログラム記録材料であって、
前記光ラジカル重合性化合物として、下記一般式(I):
CH2 =CR1 −CONR2 −CH2 −O−R3 (I)
(ここで、R1 は、H、又はCH3 基を表し、R2 は、H、又は有機基を表し、R3 は、総炭素数3以上の有機基を表す)
で表される(メタ)アクリルアミド誘導体を含むホログラム記録材料。
【請求項2】
前記一般式(I)で表される(メタ)アクリルアミド誘導体は、前記ホログラム記録材料中に含まれる全ての光ラジカル重合性化合物のラジカル重合性C=C二重結合の全数を基準として、[CH2 =CR1 −CONR2 −CH2 −O−]の構造を有するラジカル重合性C=C二重結合の数が少なくとも30%となるように含まれている、請求項1に記載のホログラム記録材料。
【請求項3】
前記一般式(I)において、R2 及び/又はR3 は、下式で表されるポリアルキレングリコールユニット:
−(RO)n −
(ここで、Rは炭素数1〜4の低級アルキレン基を表し、nはアルキレンオキシドの繰り返し単位数を表す)
を有するものである、請求項1又は2に記載のホログラム記録材料。
【請求項4】
前記一般式(I)において、R2 及び/又はR3 は、下式で表されるポリエチレングリコールユニット:
−(CH2 CH2 O)n −
(ここで、nはエチレンオキシドの繰り返し単位数を表す)
を有するものである、請求項3に記載のホログラム記録材料。
【請求項5】
前記繰り返し単位数nが3以上である、請求項3又は4に記載のホログラム記録材料。
【請求項6】
さらに光重合開始剤を含む、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載のホログラム記録材料。
【請求項7】
前記マトリックスは、金属アルコキシド化合物及び/又はその多量体を含むマトリックス形成用材料から形成された有機金属マトリックスである、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載のホログラム記録材料。
【請求項8】
前記有機金属マトリックスは、Siアルコキシド化合物及び/又はその多量体を含むマトリックス形成用材料から形成されたものである、請求項7に記載のホログラム記録材料。
【請求項9】
前記有機金属マトリックスは、Siアルコキシド化合物及び/又はその多量体と、
Tiアルコキシド化合物、Zrアルコキシド化合物、Taアルコキシド化合物、Snアルコキシド化合物、Znアルコキシド化合物、及びAlアルコキシド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属アルコキシド化合物、及び/又は前記金属アルコキシド化合物の多量体と、
を含むマトリックス形成用材料から形成されたものである、請求項7又は8に記載のホログラム記録材料。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか1項に記載のホログラム記録材料からなるホログラム記録層を有する、ホログラム記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−113341(P2010−113341A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190531(P2009−190531)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】