説明

ホースおよびホースの製造方法

【課題】接着力不足による層間の剥離が生じることがなく、且つ、製造時の溶剤使用量を削減可能な、生産性の高いホースおよび該ホースの製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂からなる内層1と、該内層1の外側に設けられた補強層3と、樹脂からなり、且つ、該補強層3の外側に設けられた外層2とを備えるホース10において、内層1と補強層3、または、外層2と補強層3、或いは、その両方が無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤により接着されていることを特徴とする、ホース10およびその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造時の環境負荷が低い、生産性を向上したホース、および該ホースの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内層と、該内層の外側に設けられた補強層と、該補強層の外側に設けられた外層とからなるホースが、一般に広く使用されている。そして、このようなホースにおいて内層や外層と補強層とを一体接着する方法としては、内層または外層と補強層との間に溶剤で希釈した接着剤を介在させる方法や、補強層の表面に樹脂を直接被覆して外層とする方法等が用いられている。
【0003】
具体的には、内側に熱可塑性樹脂からなる内面層を積層した繊維補強層の外側に、熱可塑性樹脂からなる外面層を積層したホースであって、該外側層が予熱した繊維補強層の表面に溶融状態の熱可塑性樹脂を直接被覆して成形されていることを特徴とするホースや(例えば、特許文献1参照)、ナイロンチューブ、有機繊維補強層、熱可塑性樹脂カバーを有する樹脂ホースであって、該ナイロンチューブと該有機繊維補強層とが、ウレタンプレポリマーからなる一液性湿気硬化型接着剤を溶剤で希釈した接着剤で接着されていることを特徴とするホース(例えば、特許文献2参照)、等が知られている。
【特許文献1】特開平6−55658号公報
【特許文献2】特公平6−15913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、接着剤を使用することなく、補強層に対して溶融させた樹脂を直接被覆することで外層を形成した従来のホースでは、外層と補強層との間の接着力が十分でなく、外層が剥離する恐れがあった。
【0005】
一方、溶剤で希釈した接着剤を用いた従来のホースでは、層間の十分な接着力を確保することができるものの、製造時に溶剤を使用するため環境へ与える負荷が大きかった。また、溶剤の揮発前に外層を形成すると外層樹脂の発泡が発生してしまうため、溶剤を揮発させた後に外層を形成する必要があり、生産性が低かった。更に、溶剤で希釈された液状の接着剤が補強繊維に含浸するため、補強繊維自体の硬さが増してホースの曲げ剛性が高くなってしまうという問題もあった。
【0006】
そのため、接着力不足による層間の剥離が生じることがなく、且つ、製造時の溶剤使用量を削減可能な、生産性の高いホースおよび該ホースの製造方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のホースは、樹脂からなる内層と、該内層の外側に設けられた補強層と、樹脂からなり、且つ、該補強層の外側に設けられた外層とを備えるホースにおいて、前記内層と前記補強層、または、前記外層と前記補強層、或いは、その両方が無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤により接着されていることを特徴とする。このように、内層と補強層との接着や、外層と補強層との接着に無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤を使用すれば、製造時に使用する溶剤の量を削減できるので、層間の十分な接着力を確保しつつ、製造時に環境に与える負荷を低減することができる。また、無溶剤型の接着剤を使用しているため、接着剤の塗布直後に外層等を接着しても未揮発の溶剤により外層樹脂に発泡を生じる恐れがなく、製造工程において接着剤の塗布後に溶剤を揮発させるための乾燥時間(乾燥工程)を設ける必要が無いので、生産性を高めることができる。更に、補強層への接着剤の含浸に起因するホースの曲げ剛性の不要な増加も防止することができる。ここで、環境への負荷低減および生産性の向上の観点からは、内層と補強層との接着および外層と補強層との接着の双方に無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤を用いることが好ましい。なお、本発明において、無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤とは、常温(25℃)では固体であるが、加熱溶融することにより液状化して被着体に塗布可能となるものであって、且つ、塗布後には冷却および吸湿により固化して被着体間の接合を形成可能であるウレタン系の熱可塑性接着剤を指す。
【0008】
ここで、本発明のホースは、前記無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤が、軟化温度が130℃以下であり、且つ、110〜130℃での溶融粘度が5000〜10000mPa・sであることが好ましい。軟化温度(軟化点)が130℃以下、好ましくは110〜130℃であれば、無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤の塗布時に内層や補強層が熱による影響を受け難く、また、温度110〜130℃での溶融粘度が5000〜10000mPa・sであれば、無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤を均一に塗布することが容易となる。なお、溶融粘度とは、JIS K6862に準拠して測定した値をいう。
【0009】
本発明のホースは、前記無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤が、0.01〜0.1mmの厚みで塗布されることが好ましい。無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤の塗布厚みを0.01mmより薄くすると、塗布作業が困難となり、0.1mmより厚くするとホースの層間の剥離強度が低下してしまうからである。また、無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤を0.01〜0.1mmの厚みで均一に塗布することにより、ホースの柔軟性を確保することができるからである。
【0010】
本発明のホースは、前記外層がポリウレタン樹脂からなることが好ましく、また、前記内層がポリエステル樹脂またはポリアミド樹脂からなることが好ましい。なお、無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤との相性の観点からは、内層がポリエステル樹脂からなることが特に好ましい。
【0011】
また、本発明のホースの製造方法は、樹脂を管状に成形して内層とする工程と、前記内層の外側に補強層を設ける工程と、前記補強層の外側に樹脂からなる外層を設ける工程とを含むホースの製造方法において、前記補強層または前記外層、或いは、その両方は、無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤を用いて接着することで設けられ、前記接着は、接着面への前記無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤の塗布直後に行うことを特徴とする。このように、内層と補強層との接着や、外層と補強層との接着に無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤を使用すれば、接着剤の塗布後に溶剤を揮発させるための乾燥時間を設けることなく補強層や外層を設けることができるので、溶剤で希釈した接着剤を使用するホースの製造方法と比較して、ホースの製造に要する時間を削減して生産性を高めることができる。更に、製造工程で使用する溶剤量を削減できるので、ホースの層間の十分な接着力を確保しつつ、製造時に環境に与える負荷を低減することができる。また、本製造方法に従い製造したホースは、補強層への接着剤の含浸に起因するホースの曲げ剛性の不要な増加を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤を使用することにより、接着力不足による層間の剥離が生じることがなく、且つ、製造時の溶剤使用量を削減可能な、生産性の高いホースを提供することができる。また、そのようなホースの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明のホースを詳細に説明する。このホースは、内層と補強層、または、外層と補強層、或いは、その両方が無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤により接着されていることを特徴とする。なお、本発明のホースは、環境負荷低減および生産性向上の観点から、内層と補強層、外層と補強層の両方が無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤により接着されていることが好ましい。
【0014】
<内層および外層>
本発明に用いる内層および外層には、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂およびその組成物のような通常のホース用配合物を常法に従い管状に成形したものを用いることができる。ここで、外層としてはポリウレタン樹脂を用いることが好ましく、内層としてはポリエステル樹脂またはポリアミド樹脂を用いることが好ましい。
【0015】
<補強層>
また、本発明に用いる補強層には、ナイロン、ポリエステル、ビニロン、アラミド、レーヨン、芳香族ポリアミド、綿等の繊維材料を常法に従い編組したものを用いることができ、特に、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維を用いることが好ましい。
【0016】
<無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤>
本発明に用いる無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤には、溶剤で希釈していない任意のホットメルトウレタン接着剤を用いることができ、特に、軟化温度が130℃以下で、且つ、110〜130℃での溶融粘度が5000〜10000mPa・sのものを好適に使用できる。具体的には、大日本インキ化学工業株式会社製のディックタイトH−930(軟化温度:125℃、軟化温度における粘度:3000〜9000mPa・s)、タイフォースH−1041(軟化温度:125℃、軟化温度における粘度:5000〜10000mPa・s)、タイフォースFH−110(軟化温度:125℃、軟化温度における粘度:8000〜12000mPa・s)等の市販品を含む、ポリオールとポリイソシアネートとを既知の反応方法、例えば、塊状反応、溶液反応、非水ディスパージョン反応、水性ディスパージョン反応を用いて反応させて得られたポリウレタン組成物からなるホットメルトウレタン接着剤を用いることができる。なお、溶剤を用いた反応系でポリウレタン組成物を作製した場合、反応後に脱溶剤することにより、無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤を得ることができる。
【0017】
ここで、上記ポリオールとしては、特に限定されることなく、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール及びこれらの混合物などを用いることができる。具体的には、前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトリオール、ソルビトール、メチルグリコシドなどの多価アルコールの1種または2種以上とコハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水グルタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの多塩基酸あるいは酸無水物の1種または2種以上との縮合物などを用いることができ、前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、前記ポリオールの1種または2種以上を開始剤とするエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、テトラヒドロフランなどの単独あるいは2種以上の開環重合物などを用いることができ、前記ポリエステルエーテルポリオールとしては、例えば、前記ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールの1種または2種以上から選ばれるポリオールの共重合物などを用いることができる。
【0018】
また、前記ポリイソシアネートとしては、特に限定されることなく、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート類、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート、カルボジイミド基を有するポリイソシアネート、アロファネート基を含むポリイソシアネート、イソシアヌレート基を含むポリイソシアネートなどを用いることができる。
【0019】
<ホース>
図1にその一態様を示す本発明のホースは、上述した内層、外層、補強層および無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤を用いて、特に限定されることなく、例えば以下のようにして製造することができる。
【0020】
最初に、上述した樹脂を押出機で管状に押出して内層1を成形した後、該内層1の外周面に軟化温度以上まで加熱して溶融させた無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤を、例えば0.01〜0.1mmの均一厚みで塗布機を用いて塗布する。そして、無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤を塗布した直後に、内層1の外周面に繊維材料を編組機で編組して補強層3を形成・接着する。次に、軟化温度以上まで加熱して溶融させた無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤を、例えば0.01〜0.1mmの均一厚みで補強層3の外周面に塗布機で塗布して、その直後に補強層3上に外層2を押出機で管状に成形・接着し、ホース10とする。
【0021】
なお、上記一態様においては、内層と補強層との接着および外層と補強層との接着の両方に無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤を用いたが、本発明のホースは、任意に、何れか一方を、溶剤型接着剤や溶着等の他の接着手段を用いて接着しても良い。
【実施例】
【0022】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0023】
(実施例1)
ポリウレタン樹脂を押出機で管状に押出して内層を成形した後、塗布機を用いて、無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、「デックタイトH−930」、軟化温度125℃、125℃での粘度3000〜9000mPa・s)を、内層の外周面に0.05mmの厚みで塗布した。そして、無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤を塗布した直後に、内層の外周面にポリエステル繊維を編組機で編組して補強層を形成・接着した。次に、溶剤希釈ウレタン系接着剤(ロードファーイーストINC製、タイライト7411)を補強層の外周面に塗布機で塗布した後、補強層上にポリエステル樹脂からなる外層を押出機で管状に成形・接着し、ホースを作製した。そして、作製したホースにつき、外層の発泡の有無、接着剤の乾燥に要した時間、曲げ剛性、加工性を下記の方法で評価した。
【0024】
(実施例2)
無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤を、「タイフォースH−1041」(大日本インキ化学工業(株)製、軟化温度125℃、125℃での粘度5000〜10000mPa・s)に変更した以外は実施例1と同様にしてホースを作製し、評価を行った。
【0025】
(実施例3)
無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤の塗布厚みを0.1mmとした以外は実施例1と同様にしてホースを作製し、評価を行った。
【0026】
(比較例1)
無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤の代わりに溶剤希釈ウレタン系接着剤(ロードファーイーストINC製、タイライト7411)を使用した以外は実施例1と同様にしてホースを作製し、評価を行った。
【0027】
(乾燥時間)
ホースの製造中に接着剤の溶剤を乾燥させた場合には、乾燥に要した時間を計測した。
【0028】
(曲げ剛性)
プッシュプルゲージによりホースの曲げ剛性を測定し、評価した。曲げ剛性が良好なものを「○」、中程度のものを「△」とした。
【0029】
(加工性)
ホース製造時の加工性について評価した。加工性が良好なものを「○」、中程度のものを「△」とした。
【0030】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一態様のホースにつき、一部を切欠して示す正面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 内層
2 外層
3 補強層
10 ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂からなる内層と、該内層の外側に設けられた補強層と、樹脂からなり、且つ、該補強層の外側に設けられた外層とを備えるホースにおいて、
前記内層と前記補強層、または、前記外層と前記補強層、或いは、その両方が無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤により接着されていることを特徴とする、ホース。
【請求項2】
前記無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤は、軟化温度が130℃以下であり、且つ、110〜130℃における溶融粘度が5000〜10000mPa・sであることを特徴とする、請求項1に記載のホース。
【請求項3】
前記無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤は、0.01〜0.1mmの厚みで塗布されることを特徴とする、請求項1に記載のホース。
【請求項4】
前記外層がポリウレタン樹脂からなることを特徴とする、請求項1に記載のホース。
【請求項5】
前記内層がポリエステル樹脂またはポリアミド樹脂からなることを特徴とする、請求項1に記載のホース。
【請求項6】
樹脂を管状に成形して内層とする工程と、
前記内層の外側に補強層を設ける工程と、
前記補強層の外側に樹脂からなる外層を設ける工程と、
を含むホースの製造方法において、
前記補強層または前記外層、或いは、その両方は、無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤を用いて接着することで設けられ、
前記接着は、接着面への前記無溶剤型ホットメルトウレタン接着剤の塗布直後に行うことを特徴とする、製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−106930(P2010−106930A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278652(P2008−278652)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】