説明

ホース抜け止め機構付き管継手

【課題】所定のホース若しくは配管に他のホースを抜け止め状態で迅速に接続できる、ホース抜け止め機構付き管継手を提供する。
【解決手段】この管継手10は、雄部材20及び雌部材50を有し、両部材を係合させる係合手段を備える。雄部材20の一端はホースHが外挿されるニップル21をなし、その基部側からニップル21の外周に向けて軸方向に延出された一対の押え片27,27が設けられ、この押え片27の外周にスライドリング70が装着されている。雌部材50には、両部材20,50の接続時に、スライドリング70を押圧して押え片27のニップル外周に位置する部分まで移動させる押圧部58が設けられている。また、スライドリング70の内径は、ニップル21にホースHが接続された状態で押え片27のニップル外周に位置する部分に移動したとき、押え片27をホース外周に押圧させることができる径とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ホースどうしや、ホースと配管とを接続する際に、ホースバンドを用いることなくホースの抜け止めを図ることができる、ホース抜け止め機構付き管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のラジエータや、ヒーターユニット、燃料供給系には、複数のホースが用いられている。これらのホースどうしや、ホースと配管とを接続するために、パイプ状の継手が用いられている。この継手には、ホースの端部内周に挿入されるニップルが設けられており、このニップルにホースを外挿して、ホース外周を別体のホースバンドで締め付け固定することにより、ホースを抜け止めしている。
【0003】
上記のように、従来は、ホースバンドを用いてホースを締め付け固定することが一般的である。例えば、下記特許文献1には、一端がホースの開口端に挿入されるホース挿入部となる管状体と、該ホース挿入部が挿入される一端部分で該ホース挿入部を同軸的に覆うホースと、該ホース挿入部を覆う該ホースの外周面に取付けられ該ホースを該ホース挿入部に対して軸心方向に付勢するクランプ(ホースバンド)とからなるホース締結構造が開示されている。また、特許文献1におけるホースバンドは、その端部にネジによる締付手段が設けられており、ネジを緩めたり締付けたりすることにより、ホースバンドが拡径・縮径するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−158680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来のホースの接続では、ホースバンドが必要であると共に、ホースバンドを拡径させてホース外周にセットした後、ホースバンド自身の弾性力、或いは、ネジによる締付手段によりホースバンドを縮径させて、ホースを締め付け固定するという作業が必要となり、ホースの接続作業が煩雑であった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、ホースバンドを装着して締め付け固定する作業を省略できるようにしたホース抜け止め機構付き管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、一端がホース又は配管に対する接続部をなし他端が差込部をなす筒状の雄部材と、一端が前記雄部材の受入れ部をなし他端がホース又は配管に対する接続部をなす雌部材と、前記雄部材の差込部を前記雌部材の受入れ部に挿入したとき、両者を抜け止めさせる係合手段とを備えた管継手において、
前記雄部材及び前記雌部材の少なくとも一方の接続部は、ホースが外挿されるニップルからなっており、
前記ニップルを有する雄部材又は雌部材には、前記ニップルの基部側から前記ニップルの外周に向けて軸方向に延出された少なくとも一対の押え片が設けられ、この押え片の外周にはスライドリングが装着されており、
該ニップルを有する雄部材又は雌部材に接続される相手方の雌部材又は雄部材には、接続の際に前記スライドリングを押圧して前記押え片のニップル外周に位置する部分まで移動させる押圧部が設けられており、
前記スライドリングの内径は、前記ニップルにホースが接続された状態で前記押え片のニップル外周に位置する部分に移動したとき、前記押え片を該ホース外周に押圧させることができる径とされていることを特徴とするホース抜け止め機構付き管継手を提供する。
【0008】
本発明の好ましい態様としては、前記ニップルを有する雄部材又は雌部材に接続される相手方の雌部材又は雄部材には、前記ニップルを有する雄部材又は雌部材方向に向けて突出された突起が設けられ、この突起が前記スライドリングの押圧部をなしている。
【0009】
本発明の好ましい別の態様としては、前記スライドリングには、前記ニップルを有する雄部材又は雌部材に接続される相手方の雌部材又は雄部材に向けて突出された突起が設けられ、この突起が前記相手方の雌部材又は雄部材の前記押圧部に当接するように構成されている。
【0010】
本発明の更に好ましい態様としては、前記ニップルを有する雄部材又は雌部材にはフランジ部が形成され、該フランジ部から前記押え片が延出されており、前記ニップルを有する雄部材又は雌部材に接続される相手方の雌部材又は雄部材の前記突起は、前記フランジ部に形成された切欠き部を通して突出されている。
【0011】
本発明の更に好ましい態様においては、前記スライドリングのそれ以上の移動を規制するストッパ突部が設けられ、このストッパ突部に対して前記スライドリングの幅がほぼ適合する距離だけ手前の部分には、前記スライドリングの戻りを規制する戻り規制突起が形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ニップルを有する雄部材又は雌部材のニップルにホースを外挿し、この雄部材又は雌部材に、相手方の雌部材又は雄部材を接続すると、該相手方の雌部材又は雄部材の押圧部が、ニップルを有する雄部材又は雌部材に装着されたスライドリングを押圧して、押え片のニップル外周に位置する部分に移動して、押え片をホース外周に押圧させる。その結果、管継手の接続と同時に、スライドリングを移動させて、押え片でホース外周を押圧することが可能となる。このため、ホースバンドでホース外周を締め付ける作業が必要なくなり、作業性が改善されると共に、押え片の外周に装着されたホースバンドに相当するスライドリングと、雌部材や雄部材とを一体化できるので、部品管理を容易にし、コスト低減を図ることができる。
【0013】
また、相手方の雌部材又は雄部材の押圧部が、ニップルを有する雄部材又は雌部材に装着されたスライドリングを押圧して、押え片のニップル外周に位置する部分に移動させるので、スライドリングの移動量を常に一定にして、スライドリングを適正な位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るホース抜け止め機構付き管継手の、第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】同管継手を構成する雌部材を示し、(a)は図1のIIa−IIa矢示線における断面図、(b)は図1のIIb−IIb矢示線における断面図である。
【図3】同管継手を構成する雄部材を示し、図1のIII−III矢示線における断面図である。
【図4】同管継手において、雄部材と雌部材とを接続する前の断面図である。
【図5】同管継手において、雄部材と雌部材とを接続した後の断面図である。
【図6】同管継手において、フランジ部に設けた切欠き部の一例を示す部分拡大斜視図である。
【図7】本発明に係るホース抜け止め機構付き管継手の、第2実施形態を示す要部拡大斜視図である。
【図8】同管継手において、雄部材と雌部材とを接続した後の断面図である。
【図9】本発明に係るホース抜け止め機構付き管継手の、第3実施形態を示す斜視図である。
【図10】同管継手において、雄部材と雌部材とを接続した後の断面図である。
【図11】本発明に係るホース抜け止め機構付き管継手の、第4実施形態を示す斜視図である。
【図12】同管継手において、雄部材と雌部材とを接続した後を示しており、図11のXII−XII矢示線で切断した場合の断面図である。
【図13】同管継手において、雄部材と雌部材とを接続した後を示しており、図11のXIII−XIII矢示線で切断した場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1〜6を参照して、本発明のホース抜け止め機構付き管継手の第1実施形態について説明する。
【0016】
本発明のホース抜け止め機構付き管継手10(以下、「管継手10」という)は、例えば、自動車のラジエータ、ヒーターユニット、燃料供給系等において用いられる、ホースどうし、或いは、ホースとラジエータ等の装置に設けられた配管とを接続するために用いられるもので、図1に示すように、雄部材20と雌部材50とを有している。この実施形態における管継手10は、図5に示すように、雄部材20の一端の接続部及び雌部材50の他端の接続部に、それぞれホースHが接続されるようになっているが、ラジエータ等の装置に設けられた配管の一端部に、雄部材20の一端又は雌部材50の他端を、直接接続させるようにしてもよい。また、雄部材20及び雌部材50は、ナイロン等のポリアミド系や、ポリアセタール等の樹脂などにより形成される。なお、ホースHとしては、ゴム、ポリウレタン等の弾性樹脂材料や、軟質塩化ビニル樹脂等の可撓性樹脂材料が好ましく使用される。
【0017】
まず、図1,2,4,5を参照して雄部材20について説明する。この雄部材20は、所定長さで伸びると共に軸方向両端が開口した略円筒状をなし、その一端のホースHに対する接続部は、ホースHが外挿されるニップル21をなしている。ニップル21は、ホースHへの挿入方向に沿って次第に拡径する複数の環状突部21aを有している。一方、雄部材20のニップル21とは反対側の他端は、雌部材50の受入れ部51(後述)に差込まれる差込部23をなしている。この差込部23の軸方向途中の外周には、リング装着溝23aが形成され、シールリング75が装着されるようになっている。
【0018】
前記ニップル21の基部側外周からは、環状のフランジ部25が突設されている。このフランジ部25の周方向に対向する2箇所からは、板状をなすと共に撓み可能とされた一対の押え片27,27が、前記ニップル21の先端部外周に向けて軸方向に延出されている。また、一対の押え片27,27の先端部内側からは、ニップル21の内径方向に向けて、抜け止め突部28,28が対向してそれぞれ突設されている。この抜け止め突部28は、図5に示すように、後述するスライドリング70が押え片27の先端外周にスライドして、同押え片27が押圧されたときに、弾性のホースHの外周に食い込むように強く圧接して、抜け止めを図る部分となっている。
【0019】
また、抜け止め突部28は、押え片27先端部から基端部に向かって次第に高くなるテーパ面28aと、最も高く突出した頂部28bとを有し、頂部28bがニップル21の2つの環状突部21a,21aの間に配置されている。その結果、ホースHの内周に、2つの環状突部21a,21aが食い込むと共に、ホースHの外周に抜け止め突部28が食い込んで、ホースHの内外周に複数の突部が交互に食い込むように圧接して、抜け止め効果の向上が図られている(図5参照)。
【0020】
なお、押え片27に抜け止め突部28を設ける代わりに、あるいは抜け止め突部28を設けると共に、押え片27を先端に向かって次第に厚くなるように形成してもよい。この場合には、スライドリング70を押え片27の先端部側にスライドさせることにより、押え片27の外周がスライドリング70によって押圧されて、押え片27の内側がホースHの外周に圧接されるようにすることができる。
【0021】
更に、一対の抜け止め突部28,28の内面どうしの間隔S1(図2(a)参照)は、ニップル21に外挿されたホースHの上記抜け止め突部28,28に対応する位置の外径D1(図4参照)よりも小さくなるように設定されている。したがって、ニップル21にホースHが外挿されると、抜け止め突部28,28がホースHにより押圧されて、一対の押え片27,27が押し広げられるようになっている。
【0022】
また、図1及び図2(b)に示すように、上記フランジ部25の外周には、一対の押え片27,27の間であって、同一対の押え片27,27に直交した位置に、一対の切欠き部25a,25aが対向して設けられている。これらの切欠き部25a,25aを、後述する雌部材50の突起56が通って、同突起56が後述するスライドリング70を押圧すると共に、同突起56が切欠き部25aに入り込むことにより、雄部材20に対する雌部材50の相対回動が防止されて、雌部材50の回り止めがなされるようになっている。
【0023】
上記押え片27に関連して説明すると、一対の押え片27,27の外周には、スライドリング70が装着されている。このスライドリング70は、ナイロン等のポリアミド系やポリアセタール等の樹脂又は金属で形成され、円環状をなしており、その内径D2(図5参照)が次のように設定されている。すなわち、スライドリング70の内径D2は、ニップル21にホースHが接続された状態で、押え片27のニップル21外周に位置する部分に移動したとき、押え片27を該ホース外周に押圧させることができる径とされている。
【0024】
また、各押え片27の先端部外側からは、上記スライドリング70のそれ以上の移動を規制するストッパ突部30が突設されている。同押え片27の先端部外側であって、前記ストッパ突部30に対して、スライドリング70の幅がほぼ適合する距離だけ手前の部分には、同スライドリング70の押え片27基部側への戻りを規制する戻り規制突起32が突設されている。戻り規制突起32は、その先端が押え片27の外面に対して垂直な面をなすと共に、その頂部から押え片27の基部側に向かって次第に低くなるテーパ面32aが形成され、スライドリング70を押え片27の基部側へ戻りにくく、かつ、押え片27の先端部側へスライドさせやすくなっている。
【0025】
一方、フランジ部25の各押え片27が突設された部分と反対側には、一対の支持片34,34が差込部23側へ向けて延出されている。各支持片34は、押え片27と同じ外径でやや伸びた後、外方に折曲されて拡径した形状をなしている。一対の支持片34,34の先端部には、差込部23に対して所定の間隙を設けて撓み可能とされた、長径及び短径を有する楕円状の係合リング36が連結されている(図1,2参照)。
【0026】
楕円状の係合リング36は、その短径部分に前記一対の支持片34,34が連結され、この短径部分の内周に、後述する雌部材50の係合突部54に係合する係合爪部38,38が対向して設けられている(図1及び図2(a)参照)。この実施形態では、係合突部54及び係合爪部38が本発明における係合手段をなしている。なお、各係合爪部38の内側面は、差込部先端に向けて次第に高さが低くなるテーパ面をなしている。
【0027】
また、係合リング36の長径部分の外周には、凹凸状をなす把持部36a,36aが対向して設けられ、この把持部36a,36aを把持して互いに近接する方向に押し付けることにより、差込部23外周と係合爪部38内周との隙間が広がるように、係合リング36が弾性変形して、環状の係合突部54と各係合爪部38との係合が解除されるようになっている。
【0028】
次に、図1,3,4,5を参照して雌部材50について説明する。この雌部材50は、前記雄部材20と同様に、所定長さで伸びると共に軸方向両端が開口した略円筒状をなし、その一端が、雄部材20の差込部23が挿入される受入れ部51となっている。一方、雌部材50の受入れ部51とは反対側の端部は、ホースHが外挿されるニップル53をなし、ホースHへの挿入方向に沿って次第に拡径する複数の環状突部53aを有している。
【0029】
筒状の受入れ部51の軸方向途中には、前記雄部材20の係合リング36に設けられた各係合爪部38に係合する、環状の係合突部54が突設されている。この係合突部54の外側面は、受入れ部51先端に向けて次第に高さが低くなるテーパ面をなしている。
【0030】
そして、受入れ部51の先端面の対向する位置から、板状をなした一対の突起56,56が、雄部材20に向けて所定長さで突出されている。各突起56の先端は、略L字状をなすように外方に向けて直角に折曲されていて、押圧部58をなしている。この押圧部58は、雄部材20と雌部材50との接続の際に、スライドリング70を押圧して、押え片27における、ニップル21の先端部外周に位置する部分まで移動させる役割をなす(図5参照)。
【0031】
なお、突起56の長さは、雌部材50の係合突部54に雄部材20の係合爪部38が係合して、雄部材20と雌部材50とが接続されたときに、スライドリング70を押え片27におけるニップル21の先端部外周に位置する部分まで移動させることができる長さとされている。この実施形態では、突起56は、押え片27に突設された戻り規制突起32の先端垂直面をやや超えた位置まで延出されている(図5参照)。
【0032】
次に上記構成からなる管継手10の使用方法について説明する。
【0033】
まず、雄部材20の一対の押え片27,27の基部外周(戻り規制突起32よりも基部側の外周)にスライドリング70を装着しておく(図1参照)。そして、雌部材50のニップル53にホースHを外挿して、ホースHの内周に環状突部53aを食い込むように圧接させて、ホースHをニップル53に接続する。
【0034】
同様に、雄部材20のニップル21にもホースHを外挿し、ホースHの内周に環状突部21aを食い込むように圧接させて、ホースHをニップル21に接続する。その結果、押え片27,27の抜け止め突部28,28が、ホースHの外周に押圧されてやや押し広げられた状態になる。
【0035】
上記状態で、雄部材20と雌部材50とを接続する。まず、図1に示すように、雄部材20の一対の切欠き部25a,25aに、雌部材50の一対の突起56,56を整合させる。この実施形態の場合、雄部材20の一対の押え片27,27に対して、雌部材50の一対の突起56,56が直交した位置に配置されている。
【0036】
上記状態で、雌部材50の受入れ部51内周に雄部材20の差込部23を挿入していくと共に、雌部材50の受入れ部51を雄部材20の差込部23と係合リング36との間隙に挿入していく。すると、雄部材20の係合リング36内周の係合爪部38に、雌部材50の係合突部54が当接し、同係合突部54により係合リング36が押圧されて押し広げられていく。それと共に、雌部材50の一対の突起56,56が、雄部材20の一対の切欠き部25a,25aを通ってニップル21の先端側へ移動し、その先端の押圧部58がスライドリング70の基端面に当接して、同スライドリング70が押され、ニップル21の先端部側へ徐々にスライドする。
【0037】
そして、雌部材50に対して雄部材20を完全に押し込むと、係合リング36の係合爪部38が雌部材50の係合突部54を乗り越え、係合リング36が弾性復帰して係合爪部38と係合突部54とが互いに係合し、雌部材50と雄部材20とが抜け止め状態で接続される(図5参照)。また、差込部23外周のシールリング75が受入れ部51内周に当接して、差込部23外周と受入れ部51内周との隙間が気密的にシールされる。こうして、管継手10を介して一対のホースH、Hを連結することができる。
【0038】
また、上記の雌部材50と雄部材20との接続の際に、突起56により押されたスライドリング70が押え片27,27の戻り規制突起32のテーパ面32a上に乗り上がり、戻り規制突起32を押圧して一対の押え片27,27を内方に撓ませつつ、ニップル21先端側へスライドしていく。そして、スライドリング70が戻り規制突起32を乗り越えると、ストッパ突部30に当接してスライドリング70のそれ以上の移動が規制され、押え片27の、ニップル21の先端部外周に位置する部分に、スライドリング70が保持される。
【0039】
このとき、図5に示すように、スライドリング70の内径D2は、押え片27をホースH外周に押圧させることができる径とされているので、押え片27がスライドリング70によって外周を押圧されて、押え片27の先端部内側の抜け止め突部28が、ホースHの外周に食い込むように圧接されて、ニップル21に外挿されたホースHをしっかりと抜け止めして保持することができる。
【0040】
以上説明したように、この管継手10においては、雄部材20又は雌部材50に、相手方の雌部材50又は雄部材20を接続すると、押圧部58がスライドリング70を押圧して、押え片27のニップル21外周に位置する部分に移動して、押え片27をホースH外周に押圧させるように構成されている。
【0041】
その結果、雌部材50と雄部材20との接続と同時に、スライドリング70を自動的に移動させて、押え片27でホース外周を押圧して、しっかりと抜け止め保持することができるので、ホースバンドが不要となると共に、ホースバンドでホースHの外周を締め付ける作業が必要なくなり、ホースHの接続作業性を大幅に改善することができる。
【0042】
また、ホースバンドに相当するスライドリング70は、押え片27の外周に予め装着されていて、スライドリング70と、雌部材50や雄部材20とを一体化できるので、部品管理を容易にし、コスト低減を図ることができる。
【0043】
更に、スライドリング70は、該スライドリング70が設けられた部材の相手方(この実施形態の場合は雌部材50)に押圧部58によって押し込むようにしているので、スライドリング70の移動量を常に一定にして、スライドリング70を適正な位置に配置することができる。
【0044】
また、この実施形態の場合、上記押圧部58を、スライドリング70が設けられた部材の相手方(この実施形態の場合は雌部材50)から延出された突起56の先端に設けたことにより、スライドリング70をニップル21の先端部まで移動させやすくすることができる。
【0045】
また、この実施形態においては、スライドリング70が設けられた部材の相手方(この実施形態の場合は雌部材50)の突起56が、スライドリング70が設けられた部材(この実施形態の場合は雄部材20)に形成されたフランジ部25の切欠き部25aを通して挿入されるようになっているので、雄部材20と雌部材50との間で回り止めがなされ、接続後の回転を規制してシールリング75の摩耗を防止できる。
【0046】
更に、この実施形態においては、スライドリング70のそれ以上の移動を規制するストッパ突部30と、スライドリング70の戻りを規制する戻り規制突起32とを設けたことにより、スライドリング70がストッパ突部30と戻り規制突起32との間に保持されるので、スライドリング70を適正な位置に配置することができる。
【0047】
なお、図6に示すように、雄部材20のフランジ部25に設けた各切欠き部25aの両側面25b,25bは、雌部材50側に向かって次第に幅広となるテーパ状をなしていてもよい。これに対応して、雌部材50の各突起56の突出方向先端部分及び押圧部58の両側面は、雄部材20側に向かって次第に幅狭となるテーパ面57,57をなしていることが好ましい。これによれば、雌部材50と雄部材20とを接続させて、スライドリング70を押し込むべく、突起56をスライドリング70側へ向けて押し込んでいくとき、切欠き部25aにスムーズに挿入させることができ、両部材50,20の接続作業性を向上させることができる。
【0048】
図7,8には、本発明のホース抜け止め機構付き管継手の第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0049】
この実施形態におけるホース抜け止め機構付き管継手10a(以下、「管継手10a」という)は、図7に示すように、スライドリング70の基端側端面の対向した位置から、一対の突起71,71が雌部材50側へ向けて所定長さで突出している。各突起71の先端は、内方に向けて略L字状に折曲されて、当接部73をなしている。なお、この実施形態では、雌部材50の受入れ部51の先端面51a(図8参照)が、本発明における押圧部をなしている。
【0050】
そして、両部材50,20を接続すべく、雌部材50の受入れ部51に、雄部材20の差込部23を挿入していくと、受入れ部51の先端面51aが、スライドリング70の当接部73に当接して、スライドリング70がニップル21の先端側へとスライドし、押え片27の戻り規制突起32を乗り越えてストッパ突部30の位置で停止し、押え片27の先端部外周に配置される。その結果、押え片27が内方に押圧されて、抜け止め突部28がホースHの外周に食い込むように圧接されて、ホースHがニップル21に対して抜け止め保持される(図8参照)。
【0051】
このように、この実施形態においては、スライドリング70に設けた突起71が、相手方の部材(この実施形態では雌部材50)の押圧部に当接するようにしたので、スライドリング70をニップルの外周まで移動させやすくなる。
【0052】
また、スライドリング70に、相手方の部材(この実施例では雌部材50)に向けて伸びる突起71を設けたことにより、相手方の部材にスライドリング70を押圧する突起を設ける必要がなくなり、相手方の部材として汎用品を用いることができるので、利便性が向上する。
【0053】
更に、スライドリング70側に突起71を設けたことにより、相手方の部材(この実施例では雌部材50)に突起を設ける必要がなく、フランジ部25等に該突起を挿通させるための切欠きを設ける必要もなくなるので、両部材の組付け角度に規制がなくなり、組付け作業が容易になると共に、両部材を相対回転可能に接続することができる。
【0054】
図9,10には、本発明のホース抜け止め機構付き管継手の第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0055】
この実施形態におけるホース抜け止め機構付き管継手10b(以下、「管継手10b」という)は、図1〜6の第1実施形態、図7,8の第2実施形態と異なり、雌部材50a側にスライドリング70が装着されている。
【0056】
これに対応して、雌部材50aのニップル53の基部側外周縁の対向した位置から、一対の押え片60,60がニップル53の先端部外周に向けて軸方向に延出されている。各押え片60は、前記実施形態の押え片27と同様の構造をなし、その先端部内側に抜け止め突部61が突設され、先端部外側にストッパ突部62が突設し、更に押え片60の外側であって、前記ストッパ突部62からスライドリング70の板幅分の手前側の位置から戻り規制突起63が突設されている。
【0057】
スライドリング70には、外周面の対向する位置から、一対の突起71,71が雄部材20側へ向けて所定長さで突出し、その先端が外方に略L字状に折曲されて当接部73をなしている。また、相手方の雄部材20aの、差込部23外周に配設された楕円状の係合リング36の先端面36bが、本発明における押圧部をなしている。なお、この実施形態では、各突起71の先端の当接部73,73は、楕円状の係合リング36の短径側の先端面36bに当接する大きさで折曲されている。
【0058】
そして、両部材50a,20aを接続すべく、雌部材50aの受入れ部51に、雄部材20aの差込部23を挿入していくと、雄部材20aの係合リング36の先端面36bが、スライドリング70の当接部73に当接して、スライドリング70をニップル53の先端側へ移動させる。そして、スライドリング70は、押え片60の戻り規制突起63を乗り越えてストッパ突部62の位置で停止し、押え片27の先端部外周に配置される。その結果、押え片60が内方に押圧されて、抜け止め突部61がホース外周に食い込むように圧接されて、ホースHが抜け止め保持される(図10参照)。
【0059】
図11〜13には、本発明のホース抜け止め機構付き管継手の第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0060】
この実施形態におけるホース抜け止め機構付き管継手10c(以下、「管継手10c」という)は、雄部材20b及び雌部材50bの双方に、スライドリング70,70がそれぞれ装着されていて、両スライドリング70,70によって、雄部材20bのニップル21に外挿されたホースH、及び、雌部材50bのニップル53に外挿されたホースHの両方を、抜け止め保持することができる構造となっている。
【0061】
雄部材20bは、基本的には図1〜6に示す第1実施形態と同様の構造をなしているが相違点として、楕円状をなした係合リング36の短径側の先端面の対向した位置から、一対の突起37,37が雌部材50b側へ向けて所定長さで突出している。そして、各突起37の先端面が、雌部材50bに装着されたスライドリング70をニップル53側へ押し込む押圧部37aをなしている。
【0062】
一方、雌部材50bは、図1〜6に示した雌部材50と、図9,10に示した雌部材50aとを合わせたような形状をなしている。すなわち、受入れ部51の先端面から一対の突起56,56が突出し、この突起56の先端部が外方に向けて折曲されて、雄部材20bに装着されたスライドリング70を押圧する押圧部58をなしている。また、ニップル53の基部近傍である受入れ部51外周から、一対の押え片60,60がニップル53の先端部外周に向けて軸方向に延出され、その先端部内側に抜け止め突部61が形成され、先端部外側には、ストッパ突部62と戻り規制突起63が形成されている。更に、この押え片60、60の外周にスライドリング70が装着されている。
【0063】
この実施形態では、雌部材50bの受入れ部51に、雄部材20bの差込部23を挿入していくと、雌部材50bの押圧部58により、雄部材20bに装着されたスライドリング70がニップル21先端部側へ押されると共に、雄部材20bの突起37の押圧部37aにより、雌部材50bに装着されたスライドリング70がニップル53先端部側へ押される。
【0064】
そして、受入れ部51に差込部23が完全に挿入されると、ニップル21,53の先端部外周に移動した両スライドリング70,70により、押え片27,60が内方に押圧されて、それらの抜け止め突部28,61が、ニップル21,53に外挿された両ホースH,Hの外周に食い込むように圧接して、両ホースH,Hを抜け止め保持することができる。このように、この実施形態では、雄部材20b及び雌部材50bの各ニップル21,53にそれぞれ外挿された両ホースH,Hを、雄部材20bと雌部材50bとの接続作業で、両者一度に抜け止め保持することができ、接続作業性をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0065】
10,10a,10b,10c,10d ホース抜け止め機構付き管継手(管継手)
20,20a,20b 雄部材
21,53 ニップル
23 差込部
25 フランジ部
25a 切欠き部
27 押え片
30,62 ストッパ突部
32,63 戻り規制突起
37,56,71 突起
50,50a,50b 雌部材
51 受入れ部
58,37a 押圧部
70 スライドリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端がホース又は配管に対する接続部をなし他端が差込部をなす筒状の雄部材と、一端が前記雄部材の受入れ部をなし他端がホース又は配管に対する接続部をなす雌部材と、前記雄部材の差込部を前記雌部材の受入れ部に挿入したとき、両者を抜け止めさせる係合手段とを備えた管継手において、
前記雄部材及び前記雌部材の少なくとも一方の接続部は、ホースが外挿されるニップルからなっており、
前記ニップルを有する雄部材又は雌部材には、前記ニップルの基部側から前記ニップルの外周に向けて軸方向に延出された少なくとも一対の押え片が設けられ、この押え片の外周にはスライドリングが装着されており、
該ニップルを有する雄部材又は雌部材に接続される相手方の雌部材又は雄部材には、接続の際に前記スライドリングを押圧して前記押え片のニップル外周に位置する部分まで移動させる押圧部が設けられており、
前記スライドリングの内径は、前記ニップルにホースが接続された状態で前記押え片のニップル外周に位置する部分に移動したとき、前記押え片を該ホース外周に押圧させることができる径とされていることを特徴とするホース抜け止め機構付き管継手。
【請求項2】
前記ニップルを有する雄部材又は雌部材に接続される相手方の雌部材又は雄部材には、前記ニップルを有する雄部材又は雌部材方向に向けて突出された突起が設けられ、
この突起の先端が前記スライドリングの押圧部をなしている請求項1記載のホース抜け止め機構付き管継手。
【請求項3】
前記スライドリングには、前記ニップルを有する雄部材又は雌部材に接続される相手方の雌部材又は雄部材に向けて突出された突起が設けられ、
この突起が前記相手方の雌部材又は雄部材の前記押圧部に当接するように構成されている請求項1記載のホース抜け止め機構付き管継手。
【請求項4】
前記ニップルを有する雄部材又は雌部材にはフランジ部が形成され、該フランジ部から前記押え片が延出されており、
前記ニップルを有する雄部材又は雌部材に接続される相手方の雌部材又は雄部材の前記突起は、前記フランジ部に形成された切欠き部を通して突出されている請求項2又は3記載のホース抜け止め機構付き管継手。
【請求項5】
前記押え部材の先端には、前記スライドリングのそれ以上の移動を規制するストッパ突部が設けられ、
このストッパ突部に対して前記スライドリングの幅がほぼ適合する距離だけ手前の部分には、前記スライドリングの戻りを規制する戻り規制突起が形成されている請求項1〜4のいずれか1つに記載のホース抜け止め機構付き管継手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−7267(P2011−7267A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151435(P2009−151435)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】