説明

ホールダウン金物

【課題】 アンカーボルトの設置の誤作業を吸収して該ボルトに組付けられ、緊締ナットの螺合操作に支障のないホールダウン金物を提供する。
【解決手段】 柱に当接して止着する背当板1の表面に、アンカーボルト23を挿通する緊締受筒2を突設して構成するホールダウン金物に係り、前記緊締受筒2の内部2´の前記背当板1側に、緊締ナット24の肉厚分より大きな突出量にして前記背当板1の表面より前記内部2´に突出する突出部4を設ける。そして、前記アンカーボルト23の先端に螺合する前記緊締ナット24の受座3を、前記緊締受筒2の、前記突出部4と上方において重なり合う部分を含む上端で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、木造家屋において、柱を基礎コンクリートに緊締するために用いているホールダウン金物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
柱(構造材)に固定する背当板と、アンカーボルトを挿通する、溝型材で成る緊締受筒から成るホールダウン金物は、柱を基礎コンクリートに緊締するものとして一般に用いられ、柱に固定する平板状の背当板に、緊締受筒を構成する溝型材で成る両端を熔接して構成されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】2002−294869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来構造のものは、緊締受筒に下側からアンカーボルトを挿通させ、緊締受筒より突出するアンカーボルトの先端にナットを螺合して締付けて、緊締受筒と一体的の背当板を固着した柱(構造材)を、アンカーボルトを突設した基礎コンクリートに、引寄せ、緊締するものであるが、アンカーボルトは基礎コンクリートの所定の位置に必ずしも配されるとは限らず、柱側に必要以上に接近した位置に配されたときは緊締受筒に挿通させた先端部にナットを螺合できないことがある。
【0005】
本発明は、従来例の、このような欠点に着目して、アンカーボルトの設置の誤作業をできるだけ吸収してアンカーボルトに組付けられ、該ボルトに対する緊締ナットの螺合操作に支障のないホールダウン金物を提供するために創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
柱に当接して止着する背当板の表面に、アンカーボルトを挿通する緊締受筒を突設したホールダウン金物において、前記緊締受筒の内部の前記背当板側に、緊締ナットの肉厚分より大きな突出量にして前記背当板の表面より前記内部に突出する突出部を設け、前記アンカーボルトの先端に螺合する前記緊締ナットの受座を、前記緊締受筒の、前記突出部と上方において重なり合う部分を含む上端で構成した構造のものとする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アンカーボルトが柱側に必要以上に近接していても、突出部によって柱から離開する方向にアンカーボルト位置を矯正しつつ該アンカーボルトに組付け、組付け後も、緊締ナットを螺合するに充分な空間が確保され、アンカーボルトに対する緊締ナットの螺合操作を円滑に行うことができ、従って、アンカーボルトの設置の誤作業をできるだけ吸収することができるホールダウン金物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一部欠截正面図。
【図2】図1のx−x線断面図。
【図3】ホールダウン金物の正面図。
【図4】図3の一部欠截左側面図。
【図5】図3の右側面図。
【図6】図3の平面図。
【図7】第二実施例のホールダウン金物の一部欠截正面図。
【図8】図7の平面図。
【図9】第三実施例のホールダウン金物の一部欠截正面図。
【図10】図9の平面図。
【実施例】
【0009】
図面は本発明に係るホールダウン金物の実施例を示し、実施例のホールダウン金物Aは、主体板1aの長手(縦)方向に沿う両端に側板1b,1bを相対設して構成した背当板1の前記側板1b,1b間の表面に前記長手方向に沿う緊締受筒2を突設して構成する。そして、背当板1の前記主体板1aの上部には、木造建物の柱(構造材)20に固着する止着杆(実施例はねじ釘)21を挿通する所要数の透孔22を設け、また、ホールダウン金物Aを構成する前記緊締受筒2は、溝状枠の両端を、背当板1の前記側板1b,1b間に係合して該背当板1の表面に熔接して設けたもので、アンカーボルト23を挿通できる内径を備え、上端をアンカーボルト23に螺合する緊締ナット24の受座(受圧縁)3としたもので、この緊締受筒2の内部2´の、前記背当板1の主体板1a側の部分には、該内部2´に突出する突出部4を設けてある。
【0010】
突出部4は、背当板1の主体板1aの表面より緊締ナット24の肉厚分より大きな突出量で受筒内部2´に突出し、該突出部4の存在によって、該突出部4と緊締受筒2とで取り囲んで構成する挿通間隙2´aを挿通するアンカーボルト23は、少なくも、該突出部4の突出量分、主体板1a表面より突出し、前記緊締ナット24のボルト23に対する螺合操作が円滑に行われる。
【0011】
ホールダウン金物Aは、基礎コンクリート25上の土台26を通じて土台26上に突出させたアンカーボルト23の先端(上端)を、緊締受筒2に挿通させるようにしてアンカーボルト23と組合わせ、所定の高さ位置において透孔22を通じて止着杆21の先端を柱20に埋入させ、該止着杆21を締め付けることにより、背当板1が柱20に当接されて固着される。そして緊締受筒2より突出するアンカーボルト23の先端に緊締ナット24を螺合、締め付けることによりナット24は受座3に係止され、柱20は土台26方向に引き寄せられ、土台26と安定的に接合される。
【0012】
なお、ホールダウン金物Aの突出部4は、スペーサとなって突出量の範囲で前記アンカーボルト23を柱20の表面から離開させ、前記緊締受筒2とで取り囲む、前記挿通間隙2´aを構成し、ホールダウン金物Aの施工時に、この挿通間隙2´aを通じて緊締受筒2より突出するアンカーボルト23の先端に螺合する緊締ナット24は、前記突出部4によって背当板1の表面から一定の離開位置に規制されたアンカーボルト23に螺合し受座3に係止される。
【0013】
受座3は、前記緊締受筒2内に突出させた突出部4と上方において重なり合う部分を含む、緊締受筒の上端で構成する。
【第一実施例】
【0014】
図1乃至図6で示す第一実施例は、背当板1の主体板1aの下部を折り曲げて主体板1aの表面方向に浮き上がらせ、該浮き上がらせた部分1a´の表面に、緊締受筒2を構成する、相対する側部片2b,2bの自由端中間部に設けた舌状片を折り曲げて設けた屈曲部片2b´,2b´を重ね合わせて熔接して突出部4を構成し、屈曲部片2b´と前記浮き上がらせた部分1a´のそれぞれの板厚および浮き上がらせた部分1a´の浮き上がらせ量(主体板1a表面)に対する突出量の総和を突出量としたもので、この突出量を緊締ナット24の肉厚分より大きくし、緊締受筒2上における緊締ナット24の締付け操作を支障なく行えるようにしてある。
【0015】
なお、第一実施例のホールダウン金物Aは、緊締ナット24側からの荷重の影響を受け易い背当板1の下部を屈曲状にしてある(浮き上がらせた部分1a´を設けてある)ので、これが補強材となって耐荷重性を備え、折り曲げ強度を備えた、耐久的なホールダウン金物を提供できる。
【第二実施例】
【0016】
図7および図8で示す第二実施例は、主体板1aの表面に肉厚のある金属片14を重ね合わせて熔接し、該金属片14の肉厚を突出部4の突出量とし、ナット24の肉厚分より大きくしたもので、製造工程の簡素化を図ったものである。
【第三実施例】
【0017】
図9および図10で示す突出部4は、緊締受筒2を構成する溝状枠の、相対する側部片2b,2bの自由端内側に折り返して設けた折り返し部片2b´´,2b´´で構成するもので、折り返し量が突出部4の緊締ナット24の肉厚分より大きい突出量を構成する。
【符号の説明】
【0018】
1 背当板
2 緊締受筒
3 受座
4 突出部
23 アンカーボルト
24 緊締ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱に当接し止着する背当板の表面に、アンカーボルトを挿通する緊締受筒を突設したホールダウン金物において、前記緊締受筒の内部の前記背当板側に、緊締ナットの肉厚分より大きな突出量にして前記背当板の表面より前記内部に突出する突出部を設け、前記アンカーボルトの先端に螺合する前記緊締ナットの受座を、前記緊締受筒の、前記突出部と上方において重なり合う部分を含む上端で構成した、ホールダウン金物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−7328(P2012−7328A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142532(P2010−142532)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(591027499)株式会社カネシン (49)
【Fターム(参考)】