説明

ボンディング方法およびボンディング装置

【課題】電極パッドの出来栄えに影響されることなくボンディングを行なうことができ、フリップチップ接続時の接続不良等を回避することができる、スタッドバンプのボンディング形成方法を提供する。
【解決手段】基板の電極上にバンプをボンディングにより形成する方法であり、予め設定されたボンディング位置座標と、そのボンディング位置座標における想定バンプ接合領域を、データ記憶部に記憶させる工程と、電極の画像を撮影し処理して電極のボンディング可能領域を識別する工程と、識別されたボンディング可能領域と、データ記憶部に記憶された想定バンプ接合領域との重複率を算出する工程と、算出された重複率が設定された値以上であるか否かを判定する工程と、前記重複率が設定値以上であると判定された場合に前記ボンディング位置座標にボンディングを行なう工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディング方法およびボンディング装置に係り、特に、基板の電極上にボールボンディング法によりバンプ(スタッドバンプ)を形成するボンディング方法と、ボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高密度実装が可能な半導体装置として、多層配線板のような実装基板の電極に半導体チップをフリップチップ接続して成る半導体装置が知られている。フリップチップ接続は、例えば、実装基板の電極パッド上にボールボンディング法により金バンプ(スタッドバンプ)を形成し、このバンプに半導体チップ側の電極パッドをはんだ等を介して接合することにより行なわれている。
【0003】
そして、このバンプ(スタッドバンプ)のボールボンディング法による形成において、ボンディング位置(座標)の補正は、従来から、実装基板の四隅に形成された位置合わせ用のパターンを用いて、ボンディング対象である電極パッドと、この電極パッドに対応するボンディング座標の設定値との位置合わせを行なう方法が採られていた。
【0004】
すなわち、まずティーチング工程において、座標の基準点とボンディング座標の設定値を作成した後、基板の基準点と座標の基準点とを任意の許容範囲内で一致させることで、X軸方向および/またはY軸方向に移動、または回転、あるいは拡大または縮小させる補正を行い、ボンディング座標の設定値とボンディング対象である電極パッドとを合わせ込んでいる。このとき、基板の電極パッドのパターン作成の際の位置精度や基板の熱膨張等に起因するボンディング対象電極パッドとボンディング座標の設定値との間の誤差(ずれ)を補正するために、実際のボンディング対象電極パッドをカメラで撮影して画像処理を行い、得られた画像を基にして作成されたボンディング対象電極パッドの中心座標に、ボンディング位置座標の設定値を補正するティーチングを行なっている。
【0005】
次いで、ボンディング時には、ティーチング工程で設定された基板の基準点を画像認識し、ボンディング座標の仮合わせを行った後、ティーチング時と同様にボンディング対象電極パッドをカメラで撮影して画像処理を行い、得られた画像を基にして作成されたボンディング対象電極パッドの中心座標に、ボンディング座標を補正する。そして、こうして補正されたボンディング座標にボールボンディングを行い、バンプを形成している。
【0006】
このように、従来からのボンディング位置の補正では、ボンディング対象となる電極パッドを個別に検出し、検出・識別された実際のボンディング対象電極パッドの出来栄え(形成位置)に合わせるように、ボンディング座標を補正しているため、最終的にボールボンディングされてバンプが形成される位置(座標)は、予め設定されたボンディング座標とは異なる座標となる。
【0007】
そして、次工程であるフリップチップ接続工程では、こうしてボールボンディングされて形成されたバンプ(スタッドバンプ)に、予め設定されたボンディング座標に基づいて半導体チップ側に配置されている導電性接合材(はんだボール等)が接合されるため、バンプとはんだボール等の接合材との間に大きな位置ずれが生じ、導通不良を招くことがあった。
【0008】
このような導通不良を防止するには、ボンディング位置の補正を行わずにバンプを形成することが考えられるが、その方法では、バンプをボンディング形成する際の位置ずれが大きくなり、電極パッドの幅によっては接合領域が確保されない。そのため、電極パッドに対するバンプの接合不良や、バンプの配置ミスなどの不良を引き起こしてしまうという問題があった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−315389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、基板に形成された電極の出来栄えに影響を受けることなくバンプのボールボンディングによる形成を行なうことができ、フリップチップ接続時の接続不良等を回避することが可能であるボンディング方法およびボンディング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様のボンディング方法は、基板の電極上にバンプをボンディングにより形成する方法であり、設定されているボンディング位置の座標と、このボンディング位置座標において想定される前記バンプの接合領域を、データ記憶部に記憶させる工程と、前記電極の画像を撮影し、撮影された画像を処理して前記電極のボンディング可能領域を識別する工程と、識別された前記電極のボンディング可能領域と、前記データ記憶部に記憶された前記バンプの接合領域との重なりの割合である重複率を算出する工程と、算出された前記重複率が予め設定された値以上であるか否かを判定する工程と、前記重複率が設定値以上であると判定された場合に、前記ボンディング位置座標にボンディングを行なう工程とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の態様のボンディング装置は、基板の電極上にバンプをボンディングにより形成する装置であり、設定されているボンディング位置の座標およびこのボンディング位置座標において想定される前記バンプの接合領域を記憶するデータ記憶部と、前記電極の画像を撮影し、撮影された画像を処理して前記電極のボンディング可能領域を識別する画像処理部と、識別された前記電極のボンディング可能領域と、前記データ記憶部に記憶された前記バンプの接合領域との重なりの割合である重複率を算出し、算出された前記重複率が予め設定された値以上であるか否かを判定する演算処理部と、算出された前記重複率が予め設定された値以上となるように、前記ボンディング位置座標を補正する補正処理部と、前記ボンディング位置座標にボンディングを行なうボンディング機構とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のボンディング方法および装置によれば、実装基板のような基板に形成された電極の出来栄えに影響を受けることなく、電極上にバンプを接合不良等を生じることなく形成することができる。また、こうして形成されるバンプと半導体チップ側に形成されるはんだボールなどの接合材とのフリップチップ接続時に、位置ずれを発生させることがないので、接続不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るボンディング装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるティーチング処理の工程を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態におけるボンディング方法を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施形態において、ボンディング位置の補正前の基板上の電極パッドと想定バンプ接合領域との重なりの状態を示す平面図である。
【図5】第1の実施形態において、ボンディング位置の補正後の電極パッドと想定バンプ接合領域との重なりの状態を示す平面図である。
【図6】第2の実施形態におけるボンディング方法を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施形態において、ボンディング位置の補正前の電極パッドと想定バンプ接合領域との重なりの状態を示す平面図である。
【図8】第2の実施形態において、ボンディング位置の補正後の電極パッドと想定バンプ接合領域との重なりの状態を示す平面図である。
【図9】第3の実施形態におけるボンディング方法を示すフローチャートである。
【図10】第3の実施形態において、ボンディング位置の補正前の電極パッドと想定バンプ接合領域との重なりの状態を示す平面図である。
【図11】第3の実施形態において、拡大・縮小補正またはX,Y,θ補正を組み合わせた補正を行なった後の電極パッドと想定バンプ接合領域との重なりの状態を示す平面図である。
【図12】第3の実施形態において、個別に補正を行なう方法を説明するために、図11におけるA部を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下の記載では実施形態を図面に基づいて説明するが、それらの図面は図解のために供されるものであり、本発明はそれらの図面に限定されるものではない。
【0016】
(第1の実施形態)
本発明に係るボンディング方法の第1の実施形態は、以下に示す装置を使用して行なわれる。
【0017】
図1に示すボンディング装置10は、データ記憶部1と演算処理部2と補正処理部3を有する制御部4と、画像撮影部5、および画像処理部6を備えたボンディング位置補正装置を有している。また、このボンディング装置10は、基板を載置するボンディングステージSと、バンプボンディングツール7と、XYテーブル8およびバンプボンディングツール7を駆動する機構9を備えている。
【0018】
データ記憶部1は、予め設定されたボンディングの目標となるボンディング位置座標(以下、目標ボンディング座標と示す。)と、この目標ボンディング座標の基準点の座標と、目標ボンディング座標において想定されるバンプの接合領域をはじめとする各種のデータを記憶する。
【0019】
画像撮影部5は、実際にボンディングを行なう電極パッドを撮影する。画像処理部6は、画像撮影部5により撮影された画像を処理し、電極パッドのボンディング可能な領域を識別し検出する。画像撮影部5と画像処理部6とは一体に構成することができる。
【0020】
演算処理部2は、データ記憶部1に記憶されている、目標ボンディング座標において想定されるバンプ接合領域と、画像処理部6で識別・検出された電極パッドのボンディング可能領域とのデータから、それらの領域の重複率を算出する。ここで、重複率は、想定バンプ接合領域とボンディング可能領域との重なり部の面積の、想定バンプ接合領域の面積に対する割合とする。また、演算処理部2は、算出された重複率が予め設定された値以上であるか否かを判定する。
【0021】
補正処理部3は、演算処理部2で算出された重複率の値が、予め設定された値以上となるように、ボンディング位置の補正を行なう。ボンディング位置の補正は、目標ボンディング座標を補正することにより行なわれる。そして、この補正されたボンディング位置の座標に基づいて、基板の電極パッド上へのボールボンディングによるバンプ(スタッドバンプ)の形成が行なわれる。すなわち、補正されたボンディング座標が、バンプボンディングツール7を駆動するXYテーブル8に入力され、補正された位置へのボールボンディングが行なわれる。
【0022】
第1の実施形態においては、まず1枚目の基板に対してティーチング処理を行った後、このティーチングを基にして2枚目以降の基板に対してボンディング位置(座標)の補正を行ない、補正された位置(座標)にボールボンディングを行なう。図2にティーチング処理のフローチャートを示し、図3にボンディングのフローチャートを示す。
【0023】
ティーチング処理においては、図2に示すように、まず、目標ボンディング座標とこの座標の基準点の座標とを、入力装置(図示を省略。)を介して前記補正装置10のデータ記憶部1に入力する。
【0024】
次いで、目標ボンディング座標に仮想的に想定されたバンプのサイズ(面積)を、想定バンプ接合領域としてデータ記憶部1に入力する。また、ボンディングが行われる電極パッド(以下、ボンディング対象パッドと示す。)のサイズ(面積)を、ボンディング可能領域として入力する。
【0025】
次いで、想定バンプ接合領域とボンディング可能領域との重なり部の面積の割合である重複率の閾値を設定し、その値をデータ記憶部1に入力する。重複率の閾値は、例えば50%とすることができるが、70%とすることがより好ましい。
【0026】
次に、ボールボンディング装置に1枚目の基板を搬送し、この基板の基準点に座標の基準点を目合わせで合わせ込む。そして、実際にボンディングが行なわれる電極パッド(ボンディング対象パッド)と目標ボンディング座標の仮合わせを行なう。この仮合わせでは、ボンディング対象パッドを、画像撮影部2で撮影した後、画像処理部3で画像処理を行ない、各ボンディング対象パッドのボンディング可能な領域を識別し検出する。また、ボンディング可能領域の中心座標を算出する。そして、このボンディング可能領域の中心座標と目標ボンディング座標を仮合わせする。
【0027】
次いで、以下に示す拡大または縮小の倍率の範囲を設定する。すなわち、後述するティーチング後のボンディング位置の補正においては、基板の全ての電極パッドにおいて、そのボンディング可能領域と想定バンプ接合領域との重複率の値が予め設定された閾値(例えば50%、好ましくは70%)以上となるように、それぞれの目標ボンディング座標を座標系の原点を中心として相似形に拡大または縮小させる補正を行なうことがある(第2の実施形態)。そして、このような拡大または縮小補正を行なう場合には、バンプのボンディング後のフリップチップ接続工程で、拡大または縮小補正がなされた位置にボンディングされたバンプに、半導体チップ側に配置されている導電性接合材(はんだボール等)が十分に位置合わせされて接合されるように、拡大倍率の上限値または縮小倍率の下限値が設定される。
【0028】
その後、必要に応じて以下に示すX,Y,θ補正を行ない、ティーチングを終了する。ティーチング時のX,Y,θ補正では、1枚目の基板の全ての電極パッドにおいて、ボンディング可能領域と想定バンプ接合領域との重複率の値が予め設定された閾値(例えば50%、好ましくは70%)以上となるように、目標ボンディング座標相互の(相対的な)位置関係は保持したままで、座標系全体をX軸方向および/またはY軸方向に移動させるか、あるいは座標系全体を原点を中心にしてθだけ回転させる補正の少なくとも一方を行なう。なお、1枚目の基板の全ての電極パッドにおいて、重複率の値が設定された閾値以上である場合には、X,Y,θ補正を行なうことなくティーチングを終了する。
【0029】
このようなティーチングにより補正がなされた場合、補正された目標ボンディング座標は、ティーチング後の目標ボンディング座標としてデータ記憶部1に入力される。そして、先に記憶された目標ボンディング座標を補正し、新たな目標ボンディング座標としてデータ記憶部1に記憶される。
【0030】
第1の実施形態においては、図3に示すフローチャートにしたがい、以下に示すようにボンディングが行なわれる。ボンディング位置の補正を行なう前後の電極パッドと想定バンプ接合領域との重なりの状態を、図4および図5にそれぞれ示す。図4および図5において、符号11は基板の基準点を示し、符号12はボンディング対象パッドを示す。また、符号13は目標ボンディング座標における想定バンプ接合領域を示し、符号14はフリップチップ接続時の位置検出用バンプの接合領域を示す。
【0031】
まず、基板を搬送し、図4に示すように、基板の基準マーク11を画像認識により認識した後、基板全体を画像撮影部で撮影し画像処理部で画像処理して、各ボンディング対象パッド12のボンディング可能領域を識別し検出する。また、ボンディング可能領域の中心座標を算出する。
【0032】
次いで、こうして識別・検出されたボンディング可能領域と、データ記憶部に記憶されている目標ボンディング座標における想定バンプ接合領域13との重複率を、演算処理部により算出する。そして、全てのボンディング対象パッド12について、算出された重複率の値が予め設定されている重複率の閾値(例えば50%、より好ましくは70%)以上であれば合格と判定し、ボールボンディングを開始する。
【0033】
算出された重複率の値が閾値未満であるボンディング対象パッド12がある場合は、以下に示すX,Y,θ補正を行なう。X,Y,θ補正においては、図5に示すように、全てのボンディング対象パッド12について、ボンディング座標相互の相対的な位置関係は保持したままの状態で、座標系全体をX軸方向および/またはY軸方向に移動させる補正、あるいは座標系全体を原点を中心にしてθだけ回転させる補正の少なくとも一方を行なう。
【0034】
このようなX,Y,θ補正を繰り返して行なう。全てのボンディング対象パッド12についての重複率の値が閾値以上となれば、ボンディング位置の補正を終了し、ボールボンディングを開始する。X,Y,θ補正をn回(例えば5回)繰り返しても、重複率の値が閾値未満となるボンディング対象パッド12が1個でもある場合には、補正不可能と判定し、ボールボンディング工程には移行しないようにする。
【0035】
図4および図5に示す補正では、座標系全体をX軸の−側に移動させ、かつ半時計周りにθだけ回転させることにより、全てのボンディング対象パッド12について重複率70%以上の重なりが達成された。なお、図4および図5において、補正前の座標枠を細線で示し、補正後の座標枠を太線で示す。また、X,YおよびOは、補正前のX軸,Y軸および原点を示し、X´,Y´およびO´は、補正後のX軸,Y軸および原点を示す。
【0036】
このように構成される第1の実施形態によれば、基板の電極パッド上にバンプをボールボンディングする位置が、全てのボンディング対象パッドにおいて十分な接合領域が確保されるように補正されるので、電極パッドの出来栄えに影響を受けることなく良好な接合を達成することができ、バンプの接合不良や配置ミスなどの不良を防止することができる。また、全てのボンディング対象パッドについて、ボンディング座標の間の相対的な位置関係は変えずに、ボンディング位置の補正が行なわれるので、こうして形成されるバンプと半導体チップ側に形成されるはんだボールなどの接合材とのフリップチップ接続時に、位置ずれを発生させることがなく、接続不良を防止することができる。
【0037】
次に、本発明の第2および第3の実施形態について説明する。
【0038】
(第2の実施形態)
第2の実施形態においては、第1の実施形態と同様に構成されたボンディング装置10が使用される。そして、第1の実施形態と同様に、図2に示すフローチャートにしたがってティーチング処理を行なった後、図6に示すフローチャートにしたがってボンディングを行なう。ボンディング位置の補正を行なう前後の電極パッドと想定バンプ接合領域との重なりの状態を、図7および図8にそれぞれ示す。図7および図8において、図4および図5と同一の部分には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0039】
第2の実施形態においては、基板の基準マーク11を画像認識した後、基板全体を画像撮影部で撮影し画像処理部で画像処理して、各ボンディング対象パッド12のボンディング可能領域を識別し検出する。また、ボンディング可能領域の中心座標を算出する。
【0040】
次いで、こうして算出されたボンディング可能領域の中心座標と、目標ボンディング座標とのずれ量を試算する。そして、試算されたずれ量から、図7に示すように、全てのボンディング対象パッド12について、目標ボンディング座標がボンディング可能領域の中心の座標に対して原点に向かう方向にあるいは外側に向かう方向に一様にずれていると判定した場合、ティーチング時に設定された拡大または縮小の倍率の範囲内で、図8に示すように、目標ボンディング座標を原点を中心として相似形に拡大または縮小させる補正を行なう。
【0041】
次に、こうして拡大または縮小補正を行なった後のボンディング座標における想定バンプ接合領域13と、先に識別・検出されたボンディング可能領域との重複率を、演算処理部により算出する。そして、全てのボンディング対象パッド12について、算出された重複率の値が予め設定されている閾値(例えば50%、より好ましくは70%)以上であれば合格と判定し、ボールボンディングを開始する。
【0042】
算出された重複率の値が閾値未満であるボンディング対象パッド12がある場合は、X,Y,θ補正を行なう。X,Y,θ補正においては、図8に示すように、全てのボンディング対象パッド12について、ボンディング座標相互の相対的な位置関係は保持したままの状態で、座標系全体をX軸方向および/またはY軸方向に移動させる補正、あるいは座標系全体を原点を中心にしてθだけ回転させる補正の少なくとも一方を行なう。
【0043】
このようなX,Y,θ補正と前記した拡大または縮小補正を組み合わせた補正を繰り返して行なう。全てのボンディング対象パッド12について、重複率の値が閾値以上となれば、ボンディング位置の補正を終了し、ボールボンディングを開始する。X,Y,θ補正と拡大または縮小補正を組み合わせた補正をn回繰り返しても、重複率の値が閾値未満となるボンディング対象パッド12が1個でもある場合には、補正不可能と判定し、ボールボンディング工程には移行しないようにする。
【0044】
図7および図8に示す補正では、原点を中心として5%以下の倍率で座標系を拡大した後、座標系全体をX軸の−側に移動させ、かつ半時計周りにθだけ回転させることにより、全てのボンディング対象パッド12について重複率70%以上の重なりが達成された。
【0045】
このように構成される第2の実施形態によれば、ボンディング可能領域の中心座標に対して目標ボンディング座標が一様に座標系の原点に向かう方向にあるいは外側に向かう方向にずれている場合に、バンプの接合不良や配置ミスなどの不良をできるだけ少なくして、良好な接合を達成することができるうえに、バンプと半導体チップ側のはんだボールなどの接合材とのフリップチップ接続時の位置ずれを防止し、接続不良を回避することができる。
【0046】
(第3の実施形態)
第3の実施形態においては、第1および第2の実施形態と同様に構成されたボンディング装置10が使用される。そして、第1の実施形態と同様に、図2に示すフローチャートにしたがってティーチング処理を行なった後、図9に示すフローチャートにしたがってボンディングを行なう。ボンディング位置の補正を行なう前の電極パッドと想定バンプ接合領域との重なりの状態を、図10に示し、補正を行なった後の電極パッドと想定バンプ接合領域との重なりの状態を、図11および図12にそれぞれ示す。
【0047】
第3の実施形態におけるティーチング処理工程では、重複率の閾値とともに、重複率が閾値に満たないボンディング対象パッド(ボンディング不良パッド)の許容数を設定し、それぞれデータ記憶部1に入力する。
【0048】
ボンディング工程では、まず基板の基準マーク11を画像認識した後、基板全体を画像撮影部で撮影し画像処理部で画像処理して、各ボンディング対象パッド12のボンディング可能領域を識別し検出する。また、ボンディング可能領域の中心座標を算出する。さらに、この識別・検出されたボンディング可能領域に、中心を通る仮想的な線(中心線)mを引き、この中心線mを認識しデータ記憶部1に記憶させる。この中心線mは、ボンディング可能領域の形状に応じて任意に設定することができる。この実施形態では、図12に示すように、ボンディング可能領域の形状が長方形であるので、長方形の短辺の中点を結ぶ直線、すなわち対角線の交点を通り長さ方向に平行な線を中心線(m)としている。
【0049】
次いで、算出されたボンディング可能領域の中心座標と、目標ボンディング座標とのずれ量を試算する。そして、試算されたずれ量から、必要に応じてティーチング時に設定された拡大または縮小の倍率の範囲内で、目標ボンディング座標を原点を中心として相似形に拡大または縮小させる補正を行なう。ボンディング可能領域の中心座標に対して目標ボンディング座標が一様に座標系の原点に向かう方向にあるいは外側に向かう方向にずれていると判定した場合以外は、拡大または縮小させる補正は行なわない。
【0050】
次に、こうして必要に応じて拡大または縮小させる補正を行なった後のボンディング座標における想定バンプ接合領域13と、先に識別・検出されたボンディング可能領域との重複率を、演算処理部により算出する。そして、全てのボンディング対象パッド12について、算出された重複率の値が予め設定されている閾値(例えば50%、より好ましくは70%)以上であれば合格と判定し、ボールボンディングを開始する。
【0051】
算出された重複率の値が閾値未満であるボンディング対象パッド12がある場合は、X,Y,θ補正を行なう。X,Y,θ補正においては、図11に示すように、全てのボンディング対象パッド12について、ボンディング座標相互の相対的な位置関係は保持したままの状態で、座標系全体をX軸方向および/またはY軸方向に移動させる補正、あるいは座標系全体を原点を中心にしてθだけ回転させる補正の少なくとも一方を行なう。このようなX,Y,θ補正と前記した拡大または縮小補正を組み合わせた補正を繰り返して行なう。全てのボンディング対象パッド12について、重複率の値が閾値以上となれば、ボンディング位置の補正を終了し、ボールボンディングを開始する。
【0052】
X,Y,θ補正と拡大または縮小補正を組み合わせた補正をn回繰り返しても、重複率の値が閾値未満となるボンディング不良パッド12aがある場合には、その個数を算出し、設定されている許容値の範囲内の場合、このボンディング不良パッド12aについてだけ、以下に示す個別補正を行なう。ボンディング不良パッド12aにおける想定バンプ接合領域を、符号13aで示す。重複率が閾値以上であるボンディング対象パッド12については、個別補正は行なわない。ボンディング不良パッド12aの個数が許容値を超える場合には、補正不可能としてボールボンディング工程には移行しない。
【0053】
ボンディング不良パッド12aの個別補正においては、図12に拡大して示すように、ボンディング不良パッド12aのボンディング可能領域に設定された中心線mに対して、目標ボンディング座標Pから下ろした線分(垂線)上で任意の長さだけ移動させる補正を行なう。なお、個別補正後の想定バンプ接合領域を符号13bで示す。また、個別補正後の目標ボンディング座標をP´とする。こうして、ボンディング不良パッド12aについても、重複率の値を上げて閾値以上とすることができる。目標ボンディング座標を移動させる長さは任意に設定することができるが、例えば目標ボンディング座標Pから中心線mまでの距離の1/2とすることができる。すなわち、目標ボンディング座標Pを前記線分(垂線)の中点に移動させる補正を行なうことができる。
【0054】
このように構成される第3の実施形態によれば、X,Y,θ補正と拡大または縮小補正を組み合わせた補正をn回繰り返しても、重複率の値が閾値未満となるボンディング不良パッド12aがある場合に、そのようなボンディング不良パッド12aについてのみ個別的に補正を行なって閾値以上の重複率を達成することができるので、第1および第2の実施形態に比べてさらにバンプの接合不良を防止することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…データ記憶部、2…演算処理部、3…補正処理部、5…画像撮影部、6…画像処理部、7…バンプボンディングツール、8…XYテーブル、9…駆動機構、10…補正装置、11…基準マーク、12…ボンディング対象パッド、13…想定バンプ接合領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の電極上にバンプをボンディングにより形成する方法であり、
設定されているボンディング位置の座標と、このボンディング位置座標において想定される前記バンプの接合領域を、データ記憶部に記憶させる工程と、
前記電極の画像を撮影し、撮影された画像を処理して前記電極のボンディング可能領域を識別する工程と、
識別された前記電極のボンディング可能領域と、前記データ記憶部に記憶された前記バンプの接合領域との重なりの割合である重複率を算出する工程と、
算出された前記重複率が予め設定された値以上であるか否かを判定する工程と、
前記重複率が設定値以上であると判定された場合に、前記ボンディング位置座標にボンディングを行なう工程と
を備えることを特徴とするボンディング方法。
【請求項2】
前記判定する工程において、前記重複率が設定値未満であると判定された場合に、さらに、算出された前記重複率が予め設定された値以上となるように、前記ボンディング位置座標を補正する工程を有し、
前記ボンディング位置座標を補正する工程において、複数のボンディング位置座標の間の相対的な位置関係を保持した状態で、座標系全体を移動および/または回転させる補正を行なうことを特徴とする請求項1記載のボンディング方法。
【請求項3】
前記判定する工程において、前記重複率が設定値未満であると判定された場合に、さらに、算出された前記重複率が予め設定された値以上となるように、前記ボンディング位置座標を補正する工程を有し、
前記ボンディング位置座標を補正する工程において、設定されている前記ボンディング位置座標を、座標系の原点を中心として予め設定された範囲内の任意の倍率で拡大または縮小させる補正を行なうことを特徴とする請求項1記載のボンディング位置の補正方法。
【請求項4】
前記判定する工程において、前記重複率が設定値未満であると判定された場合に、さらに、算出された前記重複率が予め設定された値以上となるように、前記ボンディング位置座標を補正する工程を有し、
前記ボンディング位置座標を補正する工程は、算出された前記重複率が予め設定された値に満たないボンディング位置座標に対して、識別された前記電極のボンディング可能領域の中心座標あるいは中心線と、前記ボンディング位置座標とを結ぶ直線上の中間点に、ボンディング位置座標を移動させる工程を有することを特徴とする請求項1記載のボンディング方法。
【請求項5】
基板の電極上にバンプをボンディングにより形成する装置であり、
設定されているボンディング位置の座標およびこのボンディング位置座標において想定される前記バンプの接合領域を記憶するデータ記憶部と、
前記電極の画像を撮影し、撮影された画像を処理して前記電極のボンディング可能領域を識別する画像処理部と、
識別された前記電極のボンディング可能領域と、前記データ記憶部に記憶された前記バンプの接合領域との重なりの割合である重複率を算出し、算出された前記重複率が予め設定された値以上であるか否かを判定する演算処理部と、
算出された前記重複率が予め設定された値以上となるように、前記ボンディング位置座標を補正する補正処理部と、
前記ボンディング位置座標にボンディングを行なうボンディング機構と
を備えることを特徴とするボンディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−212527(P2010−212527A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58750(P2009−58750)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】