説明

ボンディング構造、アクチュエータ装置及び液体噴射ヘッド

【課題】 ボンディングワイヤを用いたデバイスの配線を高密度化することができる最適なボンディング部のピッチPの配置状況を特定する。
【解決手段】 径がAのボンディングワイヤ120をボンディングパッドに接続し、接続部であるボンディング部を一直線上に配置し、施工のばらつきをσとしたとき、ボンディング部のピッチPを、XA+σ以上(1.80≦X≦2.1)とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディングパッドに接続されるボンディングワイヤのボンディング構造に関し、振動板と圧電素子とを備えたアクチュエータ装置への適用、特に、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板の表面に圧電素子を形成して、圧電体層の変位によりインク滴を吐出させる液体噴射ヘッドに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
電圧を印加することにより変位する圧電素子を具備するアクチュエータ装置は、例えば、液滴を噴射する液体噴射ヘッド等に搭載される。このような液体噴射ヘッドとしては、例えば、ノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドが知られている。そして、インクジェット式記録ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータ装置を搭載したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータ装置を搭載したものの2種類が実用化されている。
【0003】
ここで、後者のインクジェット式記録ヘッドとしては、圧力発生室が形成された流路形成基板に接合される基板、例えば、リザーバ形成基板に駆動ICが搭載され、各圧電素子から引き出されたリード電極の端子部と駆動ICとをワイヤボンディングを用いたボンディングワイヤにより電気的に接続する構造が採用されている(例えば、特許文献1参照)。このようなインクジェット式記録ヘッドの製造において行われるワイヤボンディングは、キャピラリを用いて、駆動ICの端子部に接続配線の一端を接続した後に、そのボンディングワイヤの他端をリード電極の端子部であるボンディングパッドに接続することで行われる。
【0004】
インクジェット式記録ヘッドでは、実装部品の小型化や振動子の高密度化が図られており、ボンディングワイヤを用いたデバイスの配線も高密度化が求められている。ボンディングワイヤを斜めに張る場合、部品を小さくするためには大きな角度で配置することが好ましく、振動子の高密度化の点からもボンディングワイヤのピッチを高密度化することが好ましい。
【0005】
このため、従来から、ボンディングワイヤを斜めに張って小型化を図る技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかし、従来の技術では、最適なピッチや角度に関しては規定されておらず、最適な配置状況の特定が望まれているのが実情である。また、従来の技術では、ボンディング点を千鳥状に配置して隣接するワイヤとの接触を防止することでピッチを狭くしている。しかし、実装部品の小型化の点を考えると、ボンディング点は一直線上に配置されることが好ましい。
【0006】
尚、上述した問題は、インクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドだけでなく、LSIやIC等の半導体素子を用いたボンディングワイヤの接続構造を有するデバイスなどにおいても同様に存在する。
【0007】
【特許文献1】特開2002−160366号公報(第3頁、図2)
【特許文献2】特開2003−31610号公報(図1、図4、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたもので、ボンディングワイヤを用いたデバイスの配線を高密度化することができる最適な配置状況を特定したボンディング構造を提供することを課題とする。
【0009】
また、本発明はこのような状況に鑑みてなされたもので、ボンディングワイヤを用いたデバイスの配線を高密度化することができる最適な配置状況を特定したボンディング構造を採用したアクチュエータ装置及び液体噴射ヘッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、径がAのボンディングワイヤをボンディングパッドに接続し、接続部であるボンディング部を一直線上に配置し、施工のばらつきをσとしたとき、前記ボンディング部のピッチPを、XA+σ以上(1.80≦X≦2.1)としたことを特徴とするボンディング構造にある。
かかる第1の態様では、ボンディングワイヤを用いたデバイスの配線を高密度化することができる最適なボンディング部のピッチPの配置状況を特定することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、径がAのボンディングワイヤをボンディングパッドに接続し、接続部であるボンディング部を一直線上に配置し、前記ボンディング部の配置方向に直交する方向に対して前記ボンディングワイヤを角度θ傾けて配置し、施工のばらつきをσとしたとき、前記ボンディング部のピッチPを、(XA+σ)/cosθ以上(1.80≦X≦2.1)としたことを特徴とするボンディング構造にある。
かかる第2の態様では、角度θ傾けて配置したボンディングワイヤを用いたデバイスの配線を高密度化することができる最適なボンディング部のピッチPの配置状況を特定することができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、径がAのボンディングワイヤをボンディングパッドに接続し、接続部であるボンディング部を一直線上に配置し、施工のばらつきをσとしたとき、前記ボンディング部のピッチPを、XA+σ以上(1.80≦X≦2.1)とすると共に、前記ボンディング部の配置方向に直交する方向に対して前記ボンディングワイヤを角度θ傾けて配置し、施工のばらつきをσとしたとき、角度θを、cos-1{(XA+σ)/ピッチP}より小さく(1.80≦X≦2.1)したことを特徴とするボンディング構造にある。
かかる第3の態様では、角度θ傾けて配置したボンディングワイヤを用いたデバイスの配線を高密度化することができる最適なボンディング部のピッチPの配置状況及び角度θを特定することができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、少なくとも前記ボンディングパッドの前記ボンディングワイヤと接続する表面が金からなることを特徴とするボンディング構造にある。
かかる第4の態様では、金からなるボンディングパッドを用いることで、金からなるボンディングワイヤを最適な配置状況に特定して確実に接合することができる。
【0014】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記ボンディングパッドは、アクチュエータ装置の駆動部を駆動するための駆動ICの端子部に接続されていることを特徴とするボンディング構造にある。
かかる第5の態様では、駆動IC側のボンディングパッドに対してボンディングワイヤを最適な配置状況に特定して確実に接合することができる。
【0015】
本発明の第6の態様は、第5の態様において、一端が駆動ICの端子部に接続されたボンディングワイヤの他端部は、ボンディング方向の後ろ側でリード電極の端子部に接続されることを特徴とするボンディング構造にある。
かかる第6の態様では、他端側のボンディング部の形状も考慮して最適な配置を特定することができる。
【0016】
本発明の第7の態様は、基板の一方面側に設けられる振動板と、該振動板を介して設けられる下電極、圧電体層及び上電極からなる複数の圧電素子と、前記圧電素子を駆動させる駆動ICと、前記駆動ICの端子部に接続されるボンディングパッドとを具備するアクチュエータ装置であって、請求項1〜6の何れかに記載のボンディング構造によってボンディングパッドにボンディングワイヤが接続されることを特徴とするアクチュエータ装置にある。
かかる第7の態様では、ボンディングワイヤを用いたデバイスの配線を高密度化することができる最適なボンディング部の配置状況を特定することができるボンディング構造とされたアクチュエータ装置とすることができる。
【0017】
本発明の第8の態様は、第7の態様のアクチュエータ装置と、ノズル開口に連通する圧力発生室が形成され、前記アクチュエータ装置を一方の面に具備した流路形成基板とを備えていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第8の態様では、ボンディングワイヤを用いたデバイスの配線を高密度化してボンディングパッドの幅を狭くすることができ、ノズル開口を高密度に配列できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る液体噴射ヘッドを示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及び断面図である。
【0019】
液体噴射ヘッドを構成する流路形成基板10は、本実施形態では、シリコン単結晶基板からなり、その一方面には予め熱酸化により形成した二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。この流路形成基板10には、その他方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12が形成されている。また、各列の圧力発生室12の長手方向外側には、後述するリザーバ形成基板30に設けられるリザーバ部32と連通し、各圧力発生室12の共通の液体室となるリザーバ100を構成する連通部13が形成されている。また、連通部13は、液体供給路14を介して各圧力発生室12の長手方向一端部とそれぞれ連通されている。また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12の液体供給路14とは反対側で連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。なお、ノズルプレート20は、厚さが例えば、0.01〜1mmで、線膨張係数が300℃以下で、例えば2.5〜4.5[×10-6/℃]であるガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又は不錆鋼などからなる。
【0020】
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、厚さが例えば約1.0μmの弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、厚さが例えば、約0.4μmの絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1.0μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、下電極膜60を圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室毎に圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせて圧電アクチュエータと称する。
【0021】
なお、上述した例では、圧電素子300の下電極膜60、弾性膜50及び絶縁体膜55が振動板として作用する。また、圧電素子300の上電極膜80の長手方向一端部近傍から流路形成基板10の圧力発生室12の端部近傍まで引き出された引き出し配線として、例えば、金(Au)又はアルミニウム(Al)の配線金属層と当該金の下側にチタンタングステン(TiW)、ニッケルクロム(NiCr)などの密着性金属層を設けてなるリード電極90が延設されている。
【0022】
そして、このリード電極90の先端部で金からなる端子部90aは、貫通孔33で後述する駆動IC110とボンディングワイヤ120を介して電気的に接続されている。
【0023】
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上には、リザーバ100の少なくとも一部を構成するリザーバ部32を有するリザーバ形成基板30が接着剤35を介して接合されている。このリザーバ部32は、本実施形態では、リザーバ形成基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通の液体室となるリザーバ100を構成している。
【0024】
また、リザーバ形成基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部31が設けられている。さらに、リザーバ形成基板30のリザーバ部32と圧電素子保持部31との間の領域には、リザーバ形成基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出された引き出し配線であるリード電極90は、その端部近傍が貫通孔33内で露出されている。なお、このようなリザーバ形成基板30の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス材料、金属、樹脂等が挙げられるが、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料で形成されていることがより好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
【0025】
さらに、リザーバ形成基板30上には、各圧電素子300を駆動するための駆動IC110が設けられている。この駆動IC110の各端子部111には、ボンディングワイヤ120の一端が接続され、第1ボンディング部201とされている。ボンディングワイヤ120の他端は、ボンディングパッドであるリード電極90の端子部90aに接続され、第2ボンディング部202(後述する図4参照)とされている。なお、ボンディングワイヤ120のワイヤ径は、例えば、φ20μmの金(Au)からなるボンディングワイヤ120を用いた。
【0026】
図1、図2に示すように、このようなリザーバ形成基板30上には、コンプライアンス基板40が接合されており、コンプライアンス基板40のリザーバ100に対向する領域の液体導入口44以外の領域は、厚さ方向に薄く形成された可撓部43となっており、リザーバ100は、可撓部43により封止されている。この可撓部43により、リザーバ100内にコンプライアンスを与えている。
【0027】
ここで、ボンディングパッドである駆動IC110の端子部111と、リード電極90の端子部90aとをボンディングワイヤ120で接続するワイヤボンディング構造について図3乃至図5に基づいて説明する。
【0028】
図3は、本発明の一実施形態に係るワイヤボンディング構造を示す要部断面図、図4は、本発明の一実施形態に係るワイヤボンディング構造を示す要部平面図、図5は、キャピラリの状況を示す断面図である。なお、図中のボンディングワイヤ120の径やキャピラリ130の外径の表示は、説明をわかりやすくするために、割合等は実際の状態と異なった状態で示してある。
【0029】
図3(a)に示すように、ボンディングワイヤ120は、ワイヤボンディング装置を構成するキャピラリ130に挿通された状態で保持されており、駆動IC110の端子部111にボールボンディングにより第1ボンディング部201とされて接続されている。このボールボンディングによる接続方法としてはボンディングワイヤ120の先端を溶融することで球体を形成し、この球体を駆動IC110の端子部111に押しつけることで行われる。
【0030】
次に、図3(b)に示すように、ボンディングパッドであるリード電極90の端子部90aにボンディングワイヤ120を接続する。このとき、ボンディングワイヤ120を加熱すると共に超音波を印加しながらキャピラリ130によってボンディングワイヤ120をリード電極90の端子部90aに押圧することで、ステッチ幅を有する第2ボンディング部202(図4参照)とされて接続されている。
【0031】
図4に示すように、ワイヤ径A(例えば、φ20μm)のボンディングワイヤ120の第1ボンディング部201は、所定のピッチPで一直線上に配置されている。第1ボンディング部201は図中上から下に向かって順にボンディングされ、ボンディング方向が図中上から下に向かう方向となっている。
【0032】
第1ボンディング部201の他端側である第2ボンディング部202の方向(ボンディングワイヤ120の方向)は、第1ボンディング部201の配置方向(図中上下方向)に直交する方向(図中左右方向)に対してボンディングワイヤ120が角度θ傾けられている。角度θの方向は、ボンディング方向の後ろ側(図中下側)となっている。ピッチP及び角度θは、キャピラリ130とボンディングワイヤ120とが接触しない最小限の隙間xが保たれるように設定されている。
【0033】
ここで、ワイヤ径Aが、例えば、20μmの場合、キャピラリ130の外径Dは、2.60A〜3.20Aの範囲で実用的とされる。キャピラリ130の外径Dが2.60Aよりも小さくなると、ワイヤ径Aに対してキャピラリ130が小さくなりすぎて、ボンディングワイヤ120を十分に加熱すると共に超音波を印加しながら押圧することができなくなり、ステッチ幅を有する第2ボンディング部202を形成することが困難になる。キャピラリ130の外径Dが3.20Aよりも大きくなると、ワイヤ径Aに対してキャピラリ130が大きくなりすぎて、的確に超音波を印加しながら確実にボンディングワイヤ120を押圧することができなくなり、ステッチ幅を有する第2ボンディング部202を形成することが困難になる。
【0034】
第1ボンディング部201のピッチPは、基準位置からの第1ボンディング部201までのそれぞれの距離、角度θの余弦の値、隙間xの関係により設定することができる。
即ち、隙間xを最適に保つためのピッチPは、図4より
ピッチP=(1/cosθ)・{x+(A+D)/2}
となる。
【0035】
例えば、2.65A〜3.18Aの範囲の外径Dのキャピラリ130を用いた場合、
ピッチP×cosθ=x+(1.82〜2.09)Aとなる。
施工のばらつきをσとしたとき、x−σ>0で隣接するキャピラリ130とワイヤ120が接触しない関係となり、
ピッチP×cosθ−(1.82〜2.09)A−σ=x−σ>0で成立する。
ばらつきσは、3σ(99.7%)で10μ程度である。製品として成立するには3σ以上を考慮し、σ=10μとして、
ピッチP×cosθ−(1.82〜2.09)A>σ
から
ピッチP×cosθ−(1.82〜2.09)A>10 となり、
ピッチP>〔{(1.82〜2.09)A}+10〕/cosθとあらわされる。
0<θ<90では、
0<cosθ<1なので、ワイヤ径Aで角度θのとき、
ピッチPを、(1.82〜2.09)A+10以上とすることで、キャピラリ130とボンディングワイヤ120とが接触しない最小限の隙間xが保たれるように設定することができる。
また、ワイヤ径Aで角度θのとき、
ピッチPを、{(1.82〜2.09)A+10}/cosθ以上とすることで、最小限の隙間xが保たれるように設定することができる。
更に、角度θを、〔cos-1{(1.82〜2.09)A+10}/ピッチP〕以下とすることで、最小限の隙間xが保たれるように設定することができる。
【0036】
従って、径がAのボンディングワイヤ120の第1ボンディング部201のピッチPを、施工のばらつきをσとしたとき、XA+σ以上(1.80≦X≦2.1)としたことで、ボンディングワイヤ120を用いたデバイスの配線を高密度化することができる最適なボンディング部のピッチPの配置状況を特定することができる。
【0037】
また、径がAのボンディングワイヤ120の第1ボンディング部201を一直線上に配置し、ボンディング部201の配置方向に直交する方向に対してボンディングワイヤ120を角度θ傾けて配置し、施工のばらつきをσとしたとき、第1ボンディング部201のピッチPを、(XA+σ)/cosθ以上(1.80≦X≦2.1)としたことで、角度θ傾けて配置したボンディングワイヤ120を用いたデバイスの配線を高密度化することができる最適な第1ボンディング部201のピッチPの配置状況を特定することができる。
【0038】
また、径がAのボンディングワイヤ120の第1ボンディング部201を一直線上に配置し、施工のばらつきをσとしたとき、第1ボンディング部201のピッチPを、XA+σ以上(1.80≦X≦2.1)とすると共に、第1ボンディング部201の配置方向に直交する方向に対してボンディングワイヤ120を角度θ傾けて配置し、施工のばらつきをσとしたとき、角度θを、cos-1{(XA+σ)/ピッチP}より小さく(1.80≦X≦2.1)したことで、角度θ傾けて配置したボンディングワイヤ120を用いたデバイスの配線を高密度化することができる最適な第1ボンディング部201のピッチPの配置状況及び角度θを特定することができる。
【0039】
ところで、図6に示すように、ボンディング方向の前側(図中上側)に第2ボンディング部202の方向(ボンディングワイヤ120の方向)を設定することにより、キャピラリ130の外径とボンディングワイヤ120の隙間xを考慮する必要がなく第2ボンディング部202に対するキャピラリ130の外径だけを考慮すればよい。このため、第1ボンディング部201のピッチPxを小さくしてもキャピラリ130がボンディングワイヤ120に干渉することがなくなる。
【0040】
しかし、この場合、第2ボンディング部202とキャピラリ130の外径との関係を考慮する必要がある。第2ボンディング部202は幅広のステッチ部を有しているので、第1ボンディング部201のピッチPxを小さくしても、ステッチ部分にキャピラリ130が干渉してしまい、第2ボンディング部202のピッチを大きくする必要がある。従って、結果として第1ボンディング部201のピッチPxを大きくしなければならず、前述した第1ボンディング部201のピッチPよりも大きなピッチPxが必要となる。もしくは、隣接する第2ボンディング部202が干渉しないような配置(たとえば千鳥状の配置や、第2ボンディング部202の配置されるピッチがPxよりも大である配置)をしなければならず、相当するスペースを確保する必要がある。
【0041】
このため、限られたスペースで第1ボンディング部201のピッチPを最小限に設定するためには、第1ボンディング部201のピッチP及びボンディングワイヤ120を傾ける角度θを、図4に示した本実施形態のように設定することが最適な状態となっている。
【0042】
なお、本実施形態では、駆動IC110の端子部111とリード電極90の端子部90aとを、上述したワイヤボンディング構造により接続したボンディングワイヤ120で電気的に接続するようにしたが、液体噴射ヘッドのボンディングワイヤに接続される電極の全てに上述したワイヤボンディング方法及びボンディングワイヤの接続構造を適用することができる。リード電極90の端子部90a以外では、例えば、図示しないが下電極膜60と駆動IC110とを接続するボンディングワイヤや、リザーバ形成基板30の駆動IC110が設けられた面に形成された配線電極の端子部と駆動IC110の端子部とを接続するボンディングワイヤなどが挙げられる。
【0043】
なお、本実施形態では、アクチュエータ装置、特に、液体噴射ヘッドに用いられるワイヤボンディング方法及びこれにより形成されたボンディングワイヤの接続構造を例示したが、特にこれに限定されず、ボンディングワイヤを用いる半導体デバイス等の他のデバイスにおいても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体噴射ヘッドの分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る液体噴射ヘッドの平面図及び断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るワイヤボンディング構造を示す要部断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るワイヤボンディング構造を示す要部平面図である。
【図5】キャピラリの状況を示す断面図である。
【図6】他の実施形態に係るワイヤボンディング構造を示す要部平面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 流路形成基板、20 ノズルプレート、21 ノズル開口、30 リザーバ形成基板、40 コンプライアンス基板、50 弾性膜、60 下電極膜、70 圧電体層、80 上電極膜、90 リード電極、90a 端子部、100 リザーバ、110 駆動IC、111 端子部、120 ボンディングワイヤ、130 キャピラリ、201 第1ボンディング部、202 第2ボンディング部、300 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径がAのボンディングワイヤをボンディングパッドに接続し、接続部であるボンディング部を一直線上に配置し、施工のばらつきをσとしたとき、前記ボンディング部のピッチPを、XA+σ以上(1.80≦X≦2.1)としたことを特徴とするボンディング構造。
【請求項2】
径がAのボンディングワイヤをボンディングパッドに接続し、接続部であるボンディング部を一直線上に配置し、前記ボンディング部の配置方向に直交する方向に対して前記ボンディングワイヤを角度θ傾けて配置し、施工のばらつきをσとしたとき、前記ボンディング部のピッチPを、(XA+σ)/cosθ以上(1.80≦X≦2.1)としたことを特徴とするボンディング構造。
【請求項3】
径がAのボンディングワイヤをボンディングパッドに接続し、接続部であるボンディング部を一直線上に配置し、施工のばらつきをσとしたとき、前記ボンディング部のピッチPを、XA+σ以上(1.80≦X≦2.1)とすると共に、前記ボンディング部の配置方向に直交する方向に対して前記ボンディングワイヤを角度θ傾けて配置し、施工のばらつきをσとしたとき、角度θを、cos-1{(XA+σ)/ピッチP}より小さく(1.80≦X≦2.1)したことを特徴とするボンディング構造。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、少なくとも前記ボンディングパッドの前記ボンディングワイヤと接続する表面が金からなることを特徴とするボンディング構造。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記ボンディングパッドは、アクチュエータ装置の駆動部を駆動するための駆動ICの端子部に接続されていることを特徴とするボンディング構造。
【請求項6】
請求項5において、一端が駆動ICの端子部に接続されたボンディングワイヤの他端部は、ボンディング方向の後ろ側でリード電極の端子部に接続されることを特徴とするボンディング構造。
【請求項7】
基板の一方面側に設けられる振動板と、該振動板を介して設けられる下電極、圧電体層及び上電極からなる複数の圧電素子と、前記圧電素子を駆動させる駆動ICと、前記駆動ICの端子部に接続されるボンディングパッドとを具備するアクチュエータ装置であって、請求項1〜6の何れかに記載のボンディング構造によってボンディングパッドにボンディングワイヤが接続されることを特徴とするアクチュエータ装置。
【請求項8】
請求項7に記載のアクチュエータ装置と、ノズル開口に連通する圧力発生室が形成され、前記アクチュエータ装置を一方の面に具備した流路形成基板とを備えていることを特徴とする液体噴射ヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−121045(P2006−121045A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247242(P2005−247242)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】