説明

ボーリング孔閉塞装置と工法

【課題】 注入後固結しない注入材または固結速度の遅い注入材を用いて、ボーリング孔内への注入を行う場合に、ボーリング孔内の任意の位置で注入後の注入材の漏出を防止可能とする。
【解決手段】 ボーリング孔閉塞装置1のパッカー10は、第1と第2の注入材を個別に注入する注入口を組み合わせた複合注入口11、連結部12、ゴムラバーパッキン13から構成され、連結部12には、内側パイプ21と外側パイプ22からなるグラウトパイプ20が連結される。パッカー10をボーリング孔3内に挿入して任意の位置に位置決めした後、ゴムラバーパッキン13を膨張させてボーリング孔の内壁に圧着させ、この状態で、グラウトパイプ20からパッカー10の第1と第2の注入口を通じて、固結しないまたは固結速度の遅い第1の注入材4、固結する第2の注入材5をボーリング孔内に連続的に注入した後、第2の注入材5が固結した時点でパッカー10を引き抜く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボーリング孔に注入材を注入してボーリング孔を閉塞するボーリング孔閉塞技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、地盤注入工法としては、「薬液注入工法」、「岩盤注入工法」、「ジェットグラウト工法」、「コンパクショングラウチング工法」、「復元注入工法」など、止水目的、地盤強化などの改良目的や地質・岩盤特性などの施工条件に応じて多種多様な工法が用いられている。
【0003】
一例を挙げると、「岩盤注入工法」では、注入の対象となる岩盤の強度が大きく、注入の目的が、「永久的な信頼性のある止水」にある場合が多いため、注入材としては強度と耐久性に優れたセメント系材料が広く利用されている。しかし、従来、ダム基礎部の高透水ゾーンに対するグラウト材として用いられているセメントミルクでは、数千年以上の長期間の止水性を確保することはできない。
【0004】
これに対して、ベントナイトは、天然材料の粘土鉱物であることから長期安定性に期待できると考えられ、新たなグラウト材として着目されている。
【0005】
しかし、グラウト材として着目されるこのベントナイトは、セメントとは異なり固結しない。そのため、従来、グラウト材料としてセメントとベントナイトを混合して適用した事例はあるが、ベントナイト単体でグラウト材料として適用した事例は少なく、グラウトの技術として確立されていないのが現状である。ベントナイトに限らず、今後、グラウト材としてボーリング孔内の任意の場所で注入完了後、固結しない材料または固結速度の遅い材料が使用される可能性がある。
【0006】
ベントナイトなどの「注入後固結しない注入材または固結速度の遅い注入材」を用いた注入工法をグラウトの技術として確立するための問題点として予想されることは、注入完了後パッカーを外す際に孔口に注入したベントナイトスラリーなどの注入材の漏出をどのようにして防止するかという点である。
【0007】
注入材の漏出防止に関する従来工法としては、覆工した後にトンネル周辺地山改良のために行う裏込注入工法があり、グラウト材注入時にグラウト材逆流を防ぐための逆止弁が用いられている場合があるが、この逆止弁は孔口周辺のみで用いられているため、ボーリング孔内の任意の位置で注入後の注入材の漏出を防止する閉塞技術を開発する必要がある。
【0008】
また、現在、注入材の漏出を防止する閉塞技術としては、各種の注入工法に適したパッカーを用いた閉塞装置が使用されているが、注入後固結しない注入材または固結速度の遅い注入材を用いた注入工法に適した閉塞装置は開発されていない。
【0009】
【特許文献1】特開2002−97628
【特許文献2】特開2002−201630
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、注入後固結しない注入材または固結速度の遅い注入材を用いて、ボーリング孔内への注入を行う場合に、ボーリング孔内の任意の位置で注入後の注入材の漏出を防止可能なボーリング孔閉塞装置と工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、第1と第2の注入材を個別に注入する第1と第2の注入口を有するパッカーを用いて、第1の注入材と第2の注入材を連続的に注入することにより、注入後固結しない注入材または固結速度の遅い注入材を用いて、ボーリング孔内への注入を行う場合に、ボーリング孔内の任意の位置で注入後の注入材の漏出を防止できるようにしたものである。
【0012】
本発明のボーリング孔閉塞装置は、ボーリング孔に注入材を注入してボーリング孔を閉塞するボーリング孔閉塞装置において、次のようなパッカーと注入手段を有することを特徴としている。パッカーは、第1と第2の注入材を個別に注入する第1と第2の注入口と、各注入口に設けられた逆止弁を有し、ボーリング孔内に挿入されて任意の位置に設置される手段である。注入手段は、パッカーに連結されて第1と第2の注入材に対して個別の注入経路を形成し、当該パッカーの第1と第2の注入口を通じてボーリング孔内に第1、第2の注入材を個別に注入する手段である。
【0013】
本発明のボーリング孔閉塞工法は、ボーリング孔に注入材を注入してボーリング孔を閉塞するボーリング孔閉塞工法において、次のようなパッカー設置工程、第1と第2の注入工程、パッカー回収工程を有することを特徴としている。パッカー設置工程は、第1と第2の注入材を個別に注入する第1と第2の注入口を有するパッカーをボーリング孔内に挿入して、任意の位置に設置する工程である。第1の注入工程は、パッカー設置工程後に、第1の注入材として、固結しない材料または固結速度の遅い材料からなる注入材を、パッカーの第1の注入口を通じてボーリング孔内に注入する工程である。第2の注入工程は、第1の注入工程後に、第2の注入材として、固結する材料からなる注入材を、パッカーの第2の注入口を通じてボーリング孔内における第1の注入材を注入した区間の手前に注入する工程である。パッカー回収工程は、第2の注入工程後に第2の注入材が固結した時点で、パッカーをボーリング孔から引き抜く工程である。
【0014】
以上のような特徴を有する本発明によれば、第1と第2の注入口を有するパッカーをボーリング孔内の任意の位置に設置し、この状態で、固結しないまたは固結速度の遅い第1の注入材と固結する第2の注入材を連続的に注入することにより、第2の注入材を固結させて第1の注入材の漏出を防止できる。したがって、注入後固結しない注入材または固結速度の遅い注入材を用いて、ボーリング孔内への注入を行う場合に、ボーリング孔内の任意の位置で注入後の注入材の漏出を防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、注入後固結しない注入材または固結速度の遅い注入材を用いて、ボーリング孔内への注入を行う場合に、ボーリング孔内の任意の位置で注入後の注入材の漏出を防止可能なボーリング孔閉塞工法と装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下には、本発明を実施するための最良の形態(以下「実施形態」と呼ぶ)について図面を参照して説明する。
【0017】
なお、本明細書中において、「固結速度の遅い材料からなる注入材」、「固結速度の遅い注入材」は、固結するまでの時間が、数週間、数ヶ月、あるいはそれ以上の長期に及ぶ材料を意味しており、通常の工期内には固結しないような材料である。これに対して、「固結する材料からなる注入材」、「固結する注入材」、「固結材」は、固結するまでの時間が長くても数日程度までの材料を意味している。
【0018】
[代表的な実施形態]
図1は、本発明を適用した一つの代表的な実施形態に係るボーリング孔閉塞工法を示す模式図である。この図1に示すように、本実施形態のボーリング孔閉塞工法は、ボーリング孔閉塞装置1により、地盤2に形成されたボーリング孔3に固結しないまたは固結速度の遅い第1の注入材4を注入した後、固結する第2の注入材5を注入し、第2の注入材5が固結した後に、ボーリング孔閉塞装置1のパッカー10をボーリング孔3から引き抜くことによりボーリング孔3を閉塞する工法である。
【0019】
[装置構成]
本実施形態のボーリング孔閉塞装置1は、ボーリング孔3内に挿入するパッカー10と2重管構造のグラウトパイプ(注入用パイプ)20、およびグラウトパイプ20に接続する注入材供給手段30を有する。
【0020】
ここで、パッカー10は、挿入先端部に設けられた複合注入口11、挿入軸方向反対側の端部に設けられた連結部12、および、複合注入口11と連結部12の間に設けられた外周方向に膨張可能なゴムラバーパッキン13、から構成されている。複合注入口11は、第1と第2の注入材を個別に注入する第1と第2の注入口を組み合わせてなる注入口である。
【0021】
また、2重管構造のグラウトパイプ20は、第1の注入材の注入経路を形成する内側パイプ21と、この内側パイプ21との間の隙間に第2の注入材の注入経路を形成する外側パイプ22から構成されている。このグラウトパイプ20は、パッカー10の連結部13に連結されており、パッカー10の第1と第2の注入口を通じてボーリング孔3内に第1、第2の注入材4,5を個別に注入するために使用される。
【0022】
注入材供給手段30は、グラウトパイプ20の内側パイプ21に接続されて第1の注入材を供給する内側供給管31と、外側パイプ22に接続されて第2の注入材を供給する外側供給管32から構成されており、外側供給管32には、パッカー10のゴムラバーパッキン13を膨張させるためのレバー33が設けられている。すなわち、パッカー10は、このレバー33の回転を利用してゴムラバーパッキン13を外周方向に膨張させるように構成されている。
【0023】
[パッカー構成]
図2、図3は、以上のような本実施形態のボーリング孔閉塞装置1のうち、パッカー10とグラウトパイプ20の具体的な構造例として、パッカー10の複合注入口11の構成が一部異なる2つの例をそれぞれ示す模式図である。
【0024】
この図2、図3に示すパッカー10a,10bの複合注入口11は、いずれも、パッカーの軸方向における挿入先端部の内外にそれぞれ設けられた第1と第2の注入口111,112から構成されている。そして、パッカー10a,10b内部には、内側パイプ21によって形成される第1の注入材の注入経路と連続して第1の注入口111に至る内側の注入経路と、内側パイプ21と外側パイプ22によって形成される第2の注入経路と連続して第2の注入口112に至る外側の注入経路がそれぞれ形成されている。
【0025】
また、図2、図3に示すパッカー10a,10bの第1の注入口111には、いずれも、平面同士が重なり合うように設置された一対の半球113と、各半球を閉方向に付勢するスプリング114を有する構造の半球型逆止弁115が設けられている。
【0026】
これに対して、図2と図3に示すパッカー10a,10bの異なる点は、第2の注入口112の弁構造のみである。すなわち、図2に示すパッカー10aの第2の注入口112には、ボール型逆止弁116が設けられ、図3に示すパッカー10bの第2の注入口112には、ゴムスリーブ型逆止弁117が設けられている。
【0027】
[閉塞工法の手順]
本実施形態においては、以上のようなボーリング孔閉塞装置1を用いて、図1中に(A)〜(E)として示すような手順でボーリング孔を閉塞する。なお、図面の簡略化の観点から、図1の(C)、(D)においては、ボーリング孔閉塞装置1の注入材供給手段30の記載を省略している。
【0028】
まず、パッカー設置工程におけるパッカー挿入工程として、図1の(A)に示すように、パッカー10をボーリング孔3内の任意のカバーロック区間(第1の注入材4を閉塞する区間)まで挿入し、位置決めする。
【0029】
次に、パッカー設置工程におけるパッカー固定工程として、図1の(B)に示すように、;レバー33を反時計回りに回転させることにより、パッカー10のゴムラバーパッキン13を、外周方向に膨張させてボーリング孔3の内壁に圧着させる。この場合、ゴムラバーパッキン13は、注入材4の注入圧力に耐えうる程度まで十分に膨張させる。なお、このようにレバー33の回転を利用してゴムラバーパッキン13を膨張させる構造は、各種の既存の技術を利用してレバー33とゴムラバーパッキン13との間に回転力伝達機構を構成することにより、容易に実現可能である。
【0030】
図1の(B)に示すようなパッカー固定工程によりパッカー10の任意のカバーロック区間への設置を完了し、したがって、パッカー設置工程を完了した後に、図1の(C)に示すような第1の注入工程を行う。すなわち、注入材供給手段30の第1の供給口34から、内側パイプ21内の注入経路およびパッカー10の第1の注入口111を通じて、ボーリング孔3内の注入区間(パッカーの設置により画定されるボーリング孔の奥側空間)に、第1の注入材4として、注入後固結しない注入材または固結速度の遅い注入材を注入する。なお、このような注入後固結しない注入材または固結速度の遅い注入材としては、例えば、塩水を溶液として用いた塩水−ベントナイトスラリーを使用可能である。
【0031】
第1の注入工程に続いて、図1の(D)に示すような第2の注入工程を行う。すなわち、注入材供給手段30の第2の供給口35から、内側パイプ21と外側パイプ22の間の注入経路およびパッカー10の第2の注入口112を通じて、ボーリング孔3内における第1の注入材4を注入した区間の手前に、第2の注入材5として、注入後固結する注入材(固結材)を注入する。なお、このような注入後固結する固結材としては、例えば、セメントペーストを使用可能である。
【0032】
第2の注入工程を完了した後は、第2の注入材5が固結するまで放置する。そして、第2の注入材5が固結した時点で、パッカー回収工程として、図1の(E)に示すように、パッカー10およびグラウトパイプ20をボーリング孔3から引き抜いた後、ボーリング孔3内における第2の注入材5を注入した区間の孔口側に、さらに固結材6を充填してボーリング孔3を閉塞する。なお、このような固結材6としては、例えば、セメントペーストを使用可能である。
【0033】
[第1の注入材]
前述したように、本実施形態において、注入後固結しないまたは固結速度の遅い第1の注入材4としては、例えば、塩水を溶液として用いた塩水−ベントナイトスラリーを使用可能であるが、この場合に、塩水−ベントナイトの配合比の設定については、4%の塩水を次のような配合比でベントナイトスラリーに加えることが望ましい。
【0034】
すなわち、塩水−ベントナイトの配合比の設定については、施工現場の条件(岩種や亀裂幅、亀裂表面の粗度等)および注入機器(検出器、グラウトポンプ等)の性能によっても異なると考えられるが、塩分濃度と粘度の関係、ベントナイトスラリーの配合比と粘度の関係等を考慮すると、ベントナイト/4%塩水の比が、1:8〜1:2までの配合比となるように設定することが最も効率的である。この配合比の塩水−ベントナイトスラリーを用いた場合には、ベントナイト濃度の高いスラリーを亀裂に充填でき、その結果として、優れた難透水性を発揮できる。
【0035】
[パッカーの動作]
図4、図5は、以上のような閉塞工法の手順において、図2、図3に示すパッカー10a,10bの逆止弁の動作をそれぞれ示す模式図である。
【0036】
すなわち、図4、図5の(A)に示すように、注入材の注入前においては、第1の注入口111の半球型逆止弁115と第2の注入口112のボール型逆止弁116、ゴムスリーブ型逆止弁117は、いずれも閉状態となっている。
【0037】
そして、図4、図5の(B)に示すように、第1の注入工程において、第1の注入材4が第1の注入口111に注入される場合には、第1の注入口111の半球型逆止弁115が開状態となる一方で、第2の注入口112のボール型逆止弁116、ゴムスリーブ型逆止弁117は閉状態に保たれる。
【0038】
続いて、図4、図5の(C)に示すように、第2の注入工程において、第2の注入材5が第2の注入口112に注入される場合には、第2の注入口112のボール型逆止弁116、ゴムスリーブ型逆止弁117が開状態となる一方で、第1の注入口111の半球型逆止弁115は、閉状態に戻る。すなわち、半球型逆止弁115の半球113は、第1の注入材4の注入が完了した時点で、スプリング114の付勢力と注入された注入材4からの戻し方向の圧力により閉位置に復帰し、半球型逆止弁115は閉状態に戻る。
【0039】
そして、図4、図5の(D)に示すように、第2の注入材5の注入が完了した時点で、ボール型逆止弁116、ゴムスリーブ型逆止弁117は、注入された注入材5からの戻し方向の圧力により閉状態に戻る。
【0040】
[効果]
以上のような本実施形態によれば、第1と第2の注入口を有するパッカーをボーリング孔内の任意の位置に設置し、この状態で、固結しないまたは固結速度の遅い第1の注入材と固結する第2の注入材を連続的に注入することにより、第2の注入材を固結させて第1の注入材の漏出を防止できる。したがって、注入後固結しない注入材を用いて、ボーリング孔内への注入を行う場合に、ボーリング孔内の任意の位置で注入後の注入材の漏出を防止できる。
【0041】
また、本実施形態の閉塞工法における手順は、第1と第2の注入口を有するパッカーを挿入して固定した後、第1、第2の注入材を連続的に注入するだけの極めて単純な手順であるため、作業効率に優れている。また、本実施形態のボーリング孔閉塞装置は、パッカーと2重管構造のグラウトパイプを組み合わせた簡略な構成であるため、装置の取り扱いが容易であり、ボーリング孔に対する装置の設置作業も短時間で可能であり、また、経済性にも優れている。
【0042】
さらに、本実施形態においては、パッカーの第1の注入口と第2の注入口を内外に設けていることから、固結しない注入材または固結速度の遅い注入材をボーリング孔に注入した後、その注入した区間の手前の外周部から固結材を注入することができるため、ボーリング孔の内壁との間に隙間を生じることもなく、固結材を良好に注入することができる。したがって、固結材により、固結しない注入材または固結速度の遅い注入材の注入区間の前面を確実にカバーしてその漏出を確実に防止できる。
【0043】
また、パッカーの第1の注入口に設けた半球型逆止弁は、簡略な構成でありながら、注入後にスプリングの付勢力を利用して閉状態に高速で復帰できるため、注入した固結しない注入材または固結速度の遅い注入材の漏出を確実に防止可能であり、動作信頼性に優れている。これに対して、パッカーの第2の注入口に設ける逆止弁には、閉状態への高速復帰は要求されないため、本実施形態のようなボール型逆止弁またはゴムスリーブ型逆止弁などのより簡略な構成の構造で十分である。このように、本実施形態のパッカーは、簡略な構成でありながら、第1、第2の注入材を連続的に注入するための十分な動作性能を有するものである。
【0044】
[他の実施形態]
なお、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で他にも多種多様な変形例が実施可能である。
【0045】
例えば、第1、第2の注入材、および固結材として使用する具体的な材料は、注入目的や施工現場の条件などに応じて自由に選択可能である。また、第1の注入材の注入区間が、ボーリング孔の孔口に近く、第2の注入材でボーリング孔の孔口を閉塞させる場合には、別の固結材の充填は不要となる。また、ボーリング孔閉塞装置の構成やそのパッカーを初めとする各手段の具体的な構成は適宜選択可能であり、使用する装置やそれを構成する手段の具体的な構成に応じて、具体的な手順は異なるものとなる。
【0046】
すなわち、本発明は、第1と第2の注入材を個別に注入する第1と第2の注入口を有するパッカーを用いて、第1の注入材と固結する第2の注入材を連続的に注入するものである限り、具体的な手順や装置構成、使用する材料は適宜選択可能であり、そのような各種の変形例において、前記実施形態と同様の優れた効果が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明を適用した代表的な実施形態に係るボーリング孔閉塞工法を示す模式図。
【図2】代表的な実施形態に係るパッカーの具体的な構造例として、第1と第2の注入口に半球型逆止弁とボール型逆止弁を使用した場合の一例を示す模式図。
【図3】代表的な実施形態に係るパッカーの具体的な構造例として、第1と第2の注入口に半球型逆止弁とゴムスリーブ型逆止弁を使用した場合の一例を示す模式図。
【図4】図2に示すパッカーの逆止弁の動作を示す模式図。
【図5】図3に示すパッカーの逆止弁の動作を示す模式図。
【符号の説明】
【0048】
1…ボーリング孔閉塞装置
2…地盤
3…ボーリング孔
4…第1の注入材
5…第2の注入材
6…固結材
10…残留型パッカー
11…複合注入口
111…第1の注入口
112…第2の注入口
113…半球
114…スプリング
115…半球型逆止弁
116…ボール型逆止弁
117…ゴムスリーブ型逆止弁
12…連結部
13…ゴムラバーパッキン
20…2重管構造のグラウトパイプ
21…内側パイプ
22…外側パイプ
30…注入材供給手段
31…内側供給管
32…外側供給管
33…レバー
34…第1の供給口
35…第2の供給口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーリング孔に注入材を注入してボーリング孔を閉塞するボーリング孔閉塞装置において、
第1と第2の注入材を個別に注入する第1と第2の注入口と、各注入口に設けられた逆止弁を有し、前記ボーリング孔内に挿入されて任意の位置に設置されるパッカーと、
前記パッカーに連結されて前記第1と第2の注入材に対して個別の注入経路を形成し、当該パッカーの前記第1と第2の注入口を通じて前記ボーリング孔内に第1、第2の注入材を個別に注入する注入手段
を有することを特徴とするボーリング孔閉塞装置。
【請求項2】
前記注入手段は、前記第1の注入材の注入経路を形成する内側パイプと、この内側パイプとの間の隙間に、前記第2の注入材の注入経路を形成する外側パイプからなる2重管構造の注入用パイプである
ことを特徴とする請求項1に記載のボーリング孔閉塞装置。
【請求項3】
前記パッカーの前記第1と第2の注入口は、当該パッカーの軸方向における挿入先端部の内外にそれぞれ設けられている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボーリング孔閉塞装置。
【請求項4】
前記パッカーの前記第1の注入口に設けられた前記逆止弁は、平面同士が重なり合うように設置された一対の半球と、各半球を閉方向に付勢するスプリングを有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のボーリング孔閉塞装置。
【請求項5】
前記パッカーの前記第2の注入口に設けられた前記逆止弁は、ボール型逆止弁とゴムスリーブ型逆止弁のいずれかである
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のボーリング孔閉塞装置。
【請求項6】
前記パッカーは、その外周方向に膨張可能な外周パッキンを有し、当該外周パッキンを膨張させて前記ボーリング孔の内壁に圧着させることにより固定されるように構成され、
前記パッカーの前記外周パッキンを膨張させるためのパッキン操作手段を有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のボーリング孔閉塞装置。
【請求項7】
前記注入手段に連結されて前記第1と第2の注入材を当該注入手段の各注入経路にそれぞれ供給する注入材供給手段を有し、
前記パッキン操作手段は、前記注入材供給手段に設けられた回転式の操作手段である
ことを特徴とする請求項6に記載のボーリング孔閉塞装置。
【請求項8】
ボーリング孔に注入材を注入してボーリング孔を閉塞するボーリング孔閉塞工法において、
第1と第2の注入材を個別に注入する第1と第2の注入口を有するパッカーを前記ボーリング孔内に挿入して、任意の位置に設置するパッカー設置工程と、
前記パッカー設置工程後に、前記第1の注入材として、固結しない材料または固結速度の遅い材料からなる注入材を、前記パッカーの前記第1の注入口を通じて前記ボーリング孔内に注入する第1の注入工程と、
前記第1の注入工程後に、前記第2の注入材として、固結する材料からなる注入材を、前記パッカーの前記第2の注入口を通じて前記ボーリング孔内における前記第1の注入材を注入した区間の手前に注入する第2の注入工程と、
前記第2の注入工程後に前記第2の注入材が固結した時点で、前記パッカーを前記ボーリング孔から引き抜くパッカー回収工程
を有することを特徴とするボーリング孔閉塞工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−322286(P2006−322286A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−148657(P2005−148657)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(591151808)株式会社環境総合テクノス (23)
【Fターム(参考)】