説明

ボールねじ測定装置およびその測定方法

【課題】 ボールねじのナットおよび軸のねじ径を、容易にかつ精度良く測定することができるボールねじ測定装置およびその測定方法を提供する。
【解決手段】 測定子本体26の先端を、被検査物Wnのねじ溝Wnaに測定圧を付与して当接させ、移動体19等に対し、カウンターウェイト5を用いて移動体19等の移動方向の重量バランスをとり、支持台11を回転させて測定子本体26の変位量を測定器6により測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボールねじ測定装置およびその測定方法に関し、ボールねじの軸およびナットのボール溝径を高精度にかつ容易に測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじの雌ねじを測定する測定装置が実用に供されている(例えば特許文献1)。この測定装置は、雌ねじ部材であるナットを支持して回転する筒状の主軸と、この主軸の軸孔を通してナットのねじ孔内へ進出する支持杆とを有する。この支持杆に、雌ねじに当接する略半球状の計測子と、この計測子の進退量を計測する計測手段とを支持すると共に、前記支持杆の下部にこの支持杆を上方へ向けて付勢する空圧手段を設けている。
【特許文献1】特開2002−181527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来の測定装置では、ボールねじのナットの雌ねじの内径を測定することができるが、ボールねじの軸のねじ径を測定することができない。また、この測定装置では、前記支持杆を上下摺動自在に保持する保持筒が、一対のガイドバーにより摺動自在に支持されている。これらカイドバーは、水平線より2度前後傾斜して平行に設けられ、さらに前記保持筒は、空圧手段によりこれらカイドバー上から浮上させて設けられる。このように、従来の測定装置は構造が複雑であり、また、保持筒を浮上させるため、例えば、空気圧供給源から圧縮空気を常時供給する必要があるので、設備費用が高くなるうえ、容易に測定できない。
【0004】
この発明の目的は、ボールねじのナットおよび軸のねじ径を、容易にかつ精度良く測定することができるボールねじ測定装置およびその測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明のボールねじ測定装置は、回転可能に設けられ、その回転軸心と同心にボールねじの軸またはナットからなる被検査物を支持する支持台と、前記支持台に支持された被検査物に対し、前記支持台の回転軸心の軸方向に沿って移動可能に設けられる移動体と、前記移動体に先端が前記回転軸心に対して垂直な方向に移動可能に設けられ、被検査物のねじ溝に当接する測定子と、前記移動体に設けられ、前記測定子にねじ溝に当接させる方向の圧力を付与する測定圧付与手段と、前記移動体およびこの移動体に設けられるものに対し、前記移動体の移動方向の重量バランスをとるカウンターウェイトと、前記測定子の変位量を測定して、被検査物のねじ径を測定するねじ径測定器とを備えたことを特徴とする。
【0006】
この構成によると、支持台に、この支持台の回転軸心と同心に被検査物を支持し、前記回転軸心に対して垂直な方向に移動可能に移動体に設けられる測定子の先端を、被検査物のねじ溝に測定圧付与手段により圧力を付与して当接させる。移動体およびこの移動体に設けられるものは、カウンターウェイトを用いて重量バランスがとられ、これにより前記測定子は、前記移動体と共にフローティング状態となる。この状態で支持体を回転させて被検査物を回転させる。このとき、測定子は圧力の付与状態で被検査物のねじ溝に当接しているため、ねじ溝の螺進によって軸方向に移動しようとするが、上記のようにフローティング状態とされていて自由に軸方向に移動できる。そのため、支持台の回転によって、ねじ溝の任意の周方向部分に測定子を当て、この測定子の変位量を測定して被検査物のねじ径を測定することができる。
このように、カウンターウェイトを用いて移動体等に対し移動方向の重量バランスをとっているので、測定子は、ねじ溝の任意の周方向部分に当て、その部分のねじ径を測定することができる。したがって、位相の異なる多点でのねじ径を測定することができて、ボールねじの軸またはナットからなる被検査物のねじ径を、従来技術のものより容易にかつ精度良く測定することができる。また、従来の測定装置の構造よりも構造を簡単化でき、設備費用も低減することが可能となる。
【0007】
この発明において、前記移動体の移動量を測定して被検出するリード測定器を設けても良い。この場合、被検査物のねじ径およびねじリードを測定することができる。したがって、被検査物に対し、一度の測定回数で、被検査物のねじ径およびねじリードを測定することができ、測定の工数低減を図ることができる。また、このボールねじ測定装置の汎用性を高めることが可能となる。
【0008】
この発明において、前記測定子は、ねじ溝に当接する球面状または円筒面状の接触体を有するものであっても良い。この場合、ボールねじ完成品に使用される鋼球と同一半径の接触体を適用することができるので、装置の測定精度を高めることができる。
この発明において、前記ねじ径測定器で測定された、被検査物における複数の異なる位相の半径方向の変位量に基づいて、被検査物のねじ径を算出する算出手段を設けても良い。
この構成によると、一つの位相の半径方向の変位量に基づいて、被検査物のねじ径を算出するよりも、信頼性の高い測定結果を得ることができる。すなわち、装置の測定精度を高めることができる。
【0009】
この発明のボールねじ測定方法は、ボールねじの軸またはナットからなる被検査物を測定するボールねじ測定方法であって、回転可能に設けられる支持台に、この支持台の回転軸心と同心に前記被検査物を支持し、前記支持台に支持された被検査物に対し、前記支持台の回転軸心の軸方向に沿って移動可能な移動体を設け、前記移動体に先端が前記回転軸心に対して垂直な方向に移動可能に設けられる測定子をねじ溝に圧力を付与して当接させ、前記支持台およびこの移動体に設けられるものに対し、カウンターウェイトを用いて前記移動体の移動方向の重量バランスをとり、前記支持台を回転させて前記測定子の変位量を測定して、被検査物のねじ径を測定することを特徴とする。
【0010】
この構成によると、測定子をねじ溝に圧力を付与して当接させ、移動体およびこの移動体に設けられるものは、カウンターウェイトを用いて重量バランスがとられ、これにより前記測定子は、前記移動体と共にフローティング状態となる。この状態で支持体を回転させて被検査物を回転させる。このとき、測定子は圧力の付与状態で被検査物のねじ溝に当接しているため、ねじ溝の螺進によって軸方向に移動しようとするが、上記のようにフローティング状態とされていて自由に軸方向に移動できる。そのため、支持台の回転によって、ねじ溝の任意の周方向部分に測定子を当て、この測定子の変位量を測定して被検査物のねじ径を測定することができる。このように、ねじの軸またはナットからなる被検査物のねじ径を、従来技術のものより容易にかつ精度良く測定することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明のボールねじ測定装置の構成によると、測定子は、圧力の付与状態で被検査物のねじ溝に当接しているため、ねじ溝の螺進によって軸方向に移動しようとするが、この測定子は、カウンターウェイトにより移動体と共にフローティング状態とされていて自由に軸方向に移動できる。そのため、支持台の回転によって、ねじ溝の任意の周方向部分に測定子を当て、この測定子の変位量を測定して被検査物のねじ径を測定することができる。
このように、カウンターウェイトを用いて移動体等に対し移動方向の重量バランスをとっているので、測定子は、ねじ溝の任意の周方向部分に当て、その部分のねじ径を測定することができる。したがって、ボールねじのナットおよび軸のねじ径を、従来技術のものよりも容易にかつ精度良く測定することができる。また、従来の測定装置の構造よりも構造を簡単化でき、設備費用も低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の一実施形態にかかるボールねじ測定装置を図1ないし図5と共に説明する。以下の説明は、ボールねじ測定方法についての説明をも含む。このボールねじ測定装置は、ボールねじの軸またはナットからなる被検査物のねじ径を測定する装置である。先ず、被検査物としてナットを適用した場合について説明する。
図1および図2に示すように、このボールねじ測定装置1は、主に、回転機構2、回転駆動モータ3、移動機構4、カウンターウェイト5、および測定器6(図2)を有する。前記回転機構2は、被検査物Wnをこの被検査物Wnの軸心まわりに回転可能に支持する機構である。この実施形態では、被検査物Wnの軸方向が上下方向となるように設けられる。前記上下方向をz方向と定義し、このz方向に直交しかつ後述するレバー支点のピンの軸方向をx方向と定義し、これらzおよびx方向に直交する方向をy方向と定義する。各図において、x,y,z方向を、矢符x,y,zにて表記する。
【0013】
先ず、回転機構2等について説明する。
前記回転機構2は、ベース板7、ハウジング部材8、一対の転がり軸受9,9、円筒軸部材10、支持台11、筒状部材12、およびギヤ13等を備えている。これらのうちベース板7はいわゆるxy平面に沿って設けられ、その他の部品等を支持する。このベース板7に、z方向に貫通する貫通孔7aが形成されている。ベース板7の一表面部つまり下部に、円筒状のハウジング部材8の軸方向一端部が固着されている。このハウジング部材8には、転がり軸受9,9の外輪外径面9aを嵌合する嵌合孔8aが前記貫通孔7aと同心に形成されている。またハウジング部材8の軸方向他端部に、上下方向に並ぶ転がり軸受9,9のうち一方の転がり軸受9の外輪端面に当接する当接部8bが設けられている。
【0014】
ベース板7の貫通孔7aは、他方の転がり軸受9の外輪外径面9aを嵌合する大径孔7aaと、この大径孔7aaに段部7bを介して連なり、大径孔7aaよりも所定寸法小径に形成される小径孔7abとからなる。したがって、一方の転がり軸受9はハウジング部材8の嵌合孔8aに嵌合され、他方の転がり軸受9は、前記嵌合孔8aおよびベース板7の大径孔7aaに嵌合されている。これら転がり軸受9,9の内輪内径面9bに円筒軸部材10が嵌合され、この円筒軸部材10の軸方向一端のフランジ部10aに前記支持台11が固着されている。前記フランジ部10aは、ベース板7の小径孔7abに環状隙間を介して干渉することなく収容されている。
【0015】
また、支持台11上には、例えば、把持チャック11aが設けられている。この把持チャック11aは、周方向一定間隔おきに設けられる複数の把持部を有する。これら把持部は、上下方向に垂直な半径方向に移動自在に構成され、被検査物Wnの外周面を着脱可能になっている。また、支持台11には、被検査物Wnの軸方向一端部を係合し支持する係合孔11bが形成され、この係合孔11bに段部を介して連なり後述する測定子14との干渉を防ぐ小径孔11c、換言すれば測定子14の進入、退避を許容する小径孔11cが形成されている。したがって、支持台11は、転がり軸受9,9等によって回転可能に設けられ、この支持台11の回転軸心と被検査物Wnの回転軸心とが同心となるように設けられる。
【0016】
前記円筒軸部材10の軸方向他端および一方の転がり軸受9の内輪隅部に、筒状部材12の軸方向一端部が固着されている。この筒状部材12の軸方向他端部に、ギヤ13が固着されている。これら筒状部材12、ギヤ13は、測定子14との干渉を防ぐ貫通孔12a,13aがそれぞれ形成されている。
また、ベース板7の一表面部にブラケット15が設けられ、このブラケット15に、支持台11を回転駆動する前記回転駆動モータ3が設けられている。この回転駆動モータ3のモータ軸に、ピニオンギヤ16が固着され、このピニオンギヤ16と前記ギヤ13とが噛合している。回転駆動モータ3を回転駆動すると、この回転駆動力を順次、ピニオンギヤ16、ギヤ13、筒状部材12、円筒軸部材10および軸受内輪に伝達し、さらに支持台11に伝達するようになっている。
【0017】
次に、移動機構4について説明する。
前記移動機構4は、スライドベース17、スライド案内機構18、移動体19、測定子14、測定子逃がし装置20、および測定圧付与手段21を有する。これらのうちスライドベース17に、移動体19を上下方向に進退自在に案内するスライド案内機構18が設けられる。また、スライドベース17は、ベース板7に一体的に固定される。前記スライド案内機構18は、直動転がり軸受からなり、スライドベース17の表面部に上下方向に沿って延在して設けられるスライドレール18aと、このスライドレール18aに直動案内されるスライド18b,18bとによって構成される。このスライド18bは、ケース内に配置された複数個の小径鋼球を循環させることにより、スライドレール18a上での移動を円滑にしている。これらスライド18bに、移動体19が固着されている。これにより、移動体19は、支持台11に支持された被検査物Wnに対し、上下方向に移動可能に設けられる。
【0018】
この移動体19はy方向に見て上下方向に延在する長方形板状に形成され、この長手方向一端側の表面部に、測定子14を揺動支持するためのブラケット22が設けられている。このブラケット22は前記表面部からy方向に所定距離突出する。このブラケット22内にx方向にやや離隔して設けた一対の軸受23,23にピン24が嵌合され、このピン24をレバー支点として測定子14のレバー25が、x軸まわりに揺動自在に支持されている。
【0019】
前記測定子14は、前記レバー25と、このレバー25の長手方向一端部に設けた測定子本体26とを有する。前述のように、レバー25が、x軸まわりに揺動自在に支持されることで、前記測定子本体26の先端は、y方向に移動可能に設けられ、被検査物Wnのねじ溝Wnaに当接する構成になっている。また、移動体19の長手方向他端側の表面部に、測定圧付与手段21としてのばねが設けられている。このばねは、例えば、圧縮コイルばねからなり、測定子本体26にねじ溝Wnaに当接させる方向の圧力つまり測定圧を付与する機能を有する。前記移動体19に設けられるばね支持部材27と、レバー25の長手方向他端部に形成されるばね収容孔25aとにわたって、このばねが設けられている。また、このばねによる測定圧を変更可能になっている。この測定圧の変更は、例えば、ばね定数等を変更した他のばねに交換する、ばねの軸方向長さを手動により調整する、等により実施することができる。ただし、測定圧付与手段21は、圧縮コイルばねに限定されるものではなく、圧縮コイルばね以外の種々のばねを適用し得る。
【0020】
測定子本体26について説明する。
図3に示すように、測定子本体26は、軸28、接触体29、および止めねじ30を有する。この軸28は、レバー25の長手方向一端部に形成されたy方向の貫通孔25bに嵌合する軸部28aと、この軸部28aの一端に設けられ接触体29を保持するテーパ状の接触体保持部28bとを有する。この軸部28aの軸方向中間付近に、断面V字形状の環状溝28avが形成されている。また、レバー25の長手方向一端部には、前記貫通孔25bおよび外方に連通する雌ねじ25cであって、測定子本体26の長手方向に沿う雌ねじ25cが形成されている。この雌ねじ25cに、例えば、六角穴付きの前記止めねじ30を螺着していき、この止めねじ30の円錐状の先端部30aを、前記軸部28aの断面V字形状の環状溝25avのうちの一方の谷に当接させる。これにより、接触体保持部28bの座面28bzがレバー25に強固に固着され、測定子本体26の位置決め精度を高め得る。接触体保持部28bのy方向先端部分に円錐孔28beが形成され、この円錐孔28beに、例えば鋼球からなる接触体29であってねじ溝Wnaに当接する接触体29が設けられている。ただし、この接触体29は、必ずしも鋼製に限定されるものではなく、例えばセラミックスからなる球等を適用してもよい。また、接触体として、部分的な球面を有する部分球面状の接触体、または円筒面状の接触体等を適用してもよい。このような場合であっても、本実施形態と同様の効果を奏する。
【0021】
前記測定子逃がし装置20は、移動体19の長手方向中間付近に、ブラケット31を介して設けられる。この測定子逃がし装置20は、例えば空気圧シリンダからなるいわゆる測定子ノックアウトシリンダによって実現される。この測定子逃がし装置20のロッド20aを、レバー25の長手方向他端部に設けた押圧部25dに対し所定小距離離隔して対向するように設けられている。前記測定子本体26をねじ溝Wnaに当接させて測定に供するとき、このロッド20aをシリンダ本体に退入させておき、押圧部25dに対する離隔状態を維持する。例えば、段取り替えや被検査物Wnを交換するときにロッド20aを突出させて、押圧部25dに当接させる。これにより、前記ばねの付勢力に抗して、ピン24を支点として測定子本体26がねじ溝Wnaから離れる。
【0022】
次に、カウンターウェイト5等について説明する。
図1に示すように、カウンターウェイト5は、移動体19およびこの移動体19に設けられるものに対し、前記移動体19の移動方向つまり上下方向の重量バランスをとる機能を有する。前記移動体19に設けられるものとしては、ブラケット22、一対の軸受23、ピン24、ブラケット31、測定子逃がし装置20、ばね支持部材27、ばね21、ねじ径測定器6a、およびねじ径測定器用支持板32、スライド18b等が挙げられる。
【0023】
スライドベース17の表面部のうち上端部分に、滑車33がy方向軸心まわりに回動可能に設けられている。この滑車33の上半部に、例えばワイヤ等からなる索状体34が掛けられると共に、索状体34の一端部が移動体19の長手方向他端部に連結され、かつ同索状体34の他端部がカウンターウェイト5に連結されている。測定子本体26の接触体29を被検査物Wnのねじ溝Wnaに圧力を付与して当接させる。移動体19等は、このカウンターウェイト5を用いて重量バランスがとられ、これにより測定子本体26は、移動体19と共にフローティング状態となる。この状態で支持台11を回転させて被検査物Wnを回転させる。このとき、測定子本体26は圧力の付与状態で被検査物Wnのねじ溝Wnaに当接しているため、ねじ溝Wnaの螺進によって軸方向に移動しようとするが、上記のようにフローティング状態とされていて自由に軸方向に移動できる。そのため、支持台11の回転によって、ねじ溝Wnaの任意の周方向部分に測定子本体26を当て、この測定子本体26の変位量を測定して被検査物Wnのねじ径を測定することができる。
【0024】
次に、測定器6について説明する。
前記測定器6は、被検査物Wnのねじ径を測定するねじ径測定器6aと、被検査物Wnのねじリードを測定するリード測定器6bとを有する。移動体19の長手方向他端側の表面部に、y方向一方に突出するねじ径測定器用支持板32が設けられる。この支持板32はxy平面に沿って設けられ、この支持板32の表面部つまり上部に、ねじ径測定器6aの測定器本体が設けられている。また、レバー25の長手方向他端部のうちばね収容孔25aの裏面に、被測定部35が設けられている。この被測定部35は、前記測定器本体のスピンドル6asが当接する位置に設けられる。このねじ径測定器6aは、ねじ溝Wnaに測定圧で当接する測定子本体26の変位量を、前記スピンドル6asのy方向の変位量により算出して、被検査物Wnのねじ径を測定するように構成されている。
【0025】
前記リード測定器6bの測定器本体は、例えば、ベース板7等の固定物に設けられている。この測定器本体のスピンドル6bsは、z方向に突出するように向けられる。また、前記支持板32の表面部のうち先端部分に、リード測定器6bに対する被測定部36が設けられている。この被測定部36は、前記測定器本体のスピンドル6bsが当接する位置に設けられる。このリード測定器6bは、移動体19のz方向の移動量を測定することにより、ねじリードを被検出するように構成されている。
【0026】
以上説明したボールねじ測定装置1によると、支持台11に、この支持台11の回転軸心と同心に被検査物Wnを支持し、前記回転軸心に対して垂直な方向に移動可能に設けられる測定子本体26の接触体29を、被検査物Wnのねじ溝Wnaに測定圧付与手段21により圧力を付与して当接させる。移動体19およびこの移動体19に設けられるものは、カウンターウェイト5を用いて重量バランスがとられ、これにより測定子14は、移動体19と共にフローティング状態となる。この状態で支持体11を回転させて被検査物Wnを回転させる。
このとき、測定子本体26は圧力の付与状態で被検査物Wnのねじ溝Wnaに当接しているため、ねじ溝Wnaの螺進によって軸方向に移動しようとするが、上記のようにフローティング状態とされていて自由に軸方向に移動できる。そのため、支持台11の回転によって、ねじ溝Wnaの任意の周方向部分に測定子本体26の接触体29を当て、この測定子本体26の変位量を測定して被検査物Wnのねじ径を測定することができる。
このように、カウンターウェイト5を用いて移動体19等に対し移動方向の重量バランスをとっているので、測定子14はねじ溝Wnaの任意の周方向部分に当て、その部分のねじ径をねじ径測定器6aにより測定することができる。したがって、被検査物Wnのねじ径を、従来技術のものより容易にかつ精度良く測定することができる。また、従来の測定装置の構造よりも構造を簡単化でき、設備費用も低減することが可能となる。
【0027】
また、移動体19の移動量を測定して被検出するリード測定器6bを設けているので、被検査物Wnのねじ径およびねじリードを測定することができる。したがって、被検査物Wnに対し、例えば、一度の測定回数で、被検査物Wnのねじ径およびねじリードを測定することができ、測定の工数低減を図ることができる。また、このボールねじ測定装置1の汎用性を高めることが可能となる。
測定圧付与手段21としてばねを適用したので、測定子本体26にねじ溝Wnaに当接させる方向の測定圧を簡単にかつ恒久的に付与することができる。これにより、被検査物Wnを、例えば径の異なるものに段取り変えするときの工数低減を図ることができる。
【0028】
また、測定子14は、ねじ溝Wnaに当接する接触体29を有するので、ボールねじ完成品に使用される鋼球と同一半径の接触体29を適用することができる。それ故、装置1の測定精度を高めることができる。
また、ねじ径測定器6aで測定された、被検査物Wnにおける複数の異なる位相の半径方向の変位量に基づいて、被検査物Wnのねじ径、つまりねじ直径を算出する算出手段37(図2参照)を設けても良い。この場合、一つの位相の半径方向の変位量に基づいて、被検査物Wnのねじ径を算出するよりも、信頼性の高い測定結果を得ることができる。すなわち、装置1の測定精度を高めることができる。また、このような算出手段37の機能を備えた測定器6を適用することも可能である。
【0029】
次に、被検査物Wnとして、ボールねじの「軸」を適用した場合について、図4および図5と共に説明する。以下の説明においては、先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0030】
軸を測定する場合、回転テーブルである支持台11の中心と同軸上に、この軸を両センターで支持し測定に供する。したがって、被検査物Wnとしての軸を支持する支持具38等が、前述の図1および図2に示すボールねじ測定装置1と異なる。この支持具38以外は、前記ボールねじ測定装置1と同様の構成となっている。したがって、図1および図2で示した測定方法と同一の測定方法により、軸のねじ径およびねじリードを容易にかつ精度良く測定することができる。このボールねじ測定装置によると、部品の支持形態を変更するだけで、ボールねじの軸およびナットの両方を測定することができる。したがって、装置の汎用性を高めることができる。
本発明の他の実施形態として、ボールねじ測定装置からリード測定器6bを除外した装置を用いてもよい。この場合にも、ボールねじのナットおよび軸のねじ径を、従来技術のものよりも容易にかつ精度良く測定することができる。さらに、装置の初期導入費用を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の一実施形態にかかる、ナットのねじ溝を測定するボールねじ測定装置の断面図である。
【図2】同ボールねじ測定装置を別の切断面で切断して見た断面図である。
【図3】同ボールねじ測定装置の測定子先端の要部断面図である。
【図4】この発明の一実施形態にかかる、軸のねじ溝を測定するボールねじ測定装置の断面図である。
【図5】同ボールねじ測定装置の別の切断面で切断して見た断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1…ボールねじ測定装置
5…カウンターウェイト
6a…ねじ径測定器
6b…リード測定器
11…支持台
14…測定子
19…移動体
21…測定圧付与手段
25…レバー
26…測定子本体
29…接触体
37…算出手段
Wn…被検査物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられ、その回転軸心と同心にボールねじの軸またはナットからなる被検査物を支持する支持台と、
前記支持台に支持された被検査物に対し、前記支持台の回転軸心の軸方向に沿って移動可能に設けられる移動体と、
前記移動体に先端が前記回転軸心に対して垂直な方向に移動可能に設けられ、被検査物のねじ溝に当接する測定子と、
前記移動体に設けられ、前記測定子にねじ溝に当接させる方向の圧力を付与する測定圧付与手段と、
前記移動体およびこの移動体に設けられるものに対し、前記移動体の移動方向の重量バランスをとるカウンターウェイトと、
前記測定子の変位量を測定して、被検査物のねじ径を測定するねじ径測定器と、
を備えたボールねじ測定装置。
【請求項2】
請求項1において、前記移動体の移動量を測定して被検出するリード測定器を設けたボールねじ測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記測定子は、ねじ溝に当接する球面状または円筒面状の接触体を有するボールねじ測定装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記ねじ径測定器で測定された、被検査物における複数の異なる位相の半径方向の変位量に基づいて、被検査物のねじ径を算出する算出手段を設けたボールねじ測定装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記測定子は、移動体に揺動自在に支持されたレバーと、このレバーの長手方向一端部に設けた測定子本体とを有するボールねじ測定装置。
【請求項6】
ボールねじの軸またはナットからなる被検査物を測定するボールねじ測定方法であって、
回転可能に設けられる支持台に、この支持台の回転軸心と同心に前記被検査物を支持し、前記支持台に支持された被検査物に対し、前記支持台の回転軸心の軸方向に沿って移動可能な移動体を設け、
前記移動体に先端が前記回転軸心に対して垂直な方向に移動可能に設けられる測定子をねじ溝に圧力を付与して当接させ、前記移動体およびこの移動体に設けられるものに対し、カウンターウェイトを用いて前記移動体の移動方向の重量バランスをとり、前記支持台を回転させて前記測定子の変位量を測定して、被検査物のねじ径を測定するボールねじ測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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