説明

ポインティングデバイス

【課題】磁電変換素子型のポインティングデバイスにおいて、操作性を損なうことなく一層の低背化を可能にする。
【解決手段】ポインティングデバイス10は、回路基板18の上方に支点14を中心に揺動自在に支持されるカバー46及びホルダ48を備える。回路基板18には4個の磁電変換素子24が実装される。ホルダ48はその凹部65に磁石66を収容する。第1及び第2フレーム体20、22とホルダ48の間には、板ばね74が配置される。板ばね74は、第1及び第2フレーム体20、22に係合する第1部分76と、第1部分76に沿って支点14の周囲でそれぞれ弧状に延設され、ホルダ48に係合する3個の第2部分78とを有する。板ばね74は、3個の第2部分78のばね力により、カバー46及びホルダ48を回路基板18の上方で常に初期位置に付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルコンピュータ等のデータ処理装置に設置されるポインティングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータやワードプロセッサ等の、ディスプレイ及びキーボードを備えたデジタルデータ処理装置において、オペレータが手操作してアナログ的な情報を入力することによりディスプレイ上の座標データを指示する補助入力装置としてのポインティングデバイスを備えたものは周知である。特に、携帯可能な小型データ処理装置では、処理装置の筐体にポインティングデバイスを一体的に組込むか、又はマウス等の別体のポインティングデバイスをケーブル及びコネクタを介して処理装置筐体に着脱自在に接続して使用する構成が一般的である。
【0003】
この種のポインティングデバイスとして、基部と、基部上に設定した支点を中心に揺動自在に基部に支持される操作部と、基部及び操作部の一方に担持される磁石と、磁石に対向して基部及び操作部の他方に担持される磁電変換素子(一般にホール素子)と、操作部を基部上で初期位置に付勢する弾性部材とを具備するものが知られている(例えば特許文献1参照)。このポインティングデバイスでは、オペレータが手で操作部を弾性部材の付勢に抗して揺動させ、磁石と磁電変換素子との相対的位置関係を変化させて磁電変換素子の出力電圧を変動させることにより、操作部の揺動方向及び揺動角度に対応したアナログ情報を入力することができる。
【0004】
上記した磁電変換素子型のポインティングデバイスを、小型データ処理装置の筐体に一体的に組込む場合には、通常、処理装置のキーボードに隣接する筐体上面に操作部を露出させた状態にポインティングデバイスを設置する。このとき、処理装置の携帯性を損なわないようにするために、筐体上面からの操作部の突出高さは可及的に低くされる。特に、処理装置の薄型化を促進するためには、ポインティングデバイス自体の低背化、すなわち基部の底面から操作部の上端面に至る寸法の可及的削減が要求される。
【0005】
他方、このような一体組込式のポインティングデバイスは、本来、ごく限られた領域内での入力動作を強いられるものであるのに加えて、上記した低背化を進めるに伴い、操作性の一層の低下が懸念される。したがって、薄型化したデータ処理装置の使用に際し、オペレータがポインティングデバイスの操作性を優先的に求める場合には、処理装置の寸法に関与しない着脱式のポインティングデバイスがしばしば使用される。特に、データ処理装置を携帯使用する場合には、裏面に操作ボールを露出させた通常のマウスは操作場所の確保が困難であるから、従来の一体組込式のポインティングデバイスと同様の構成を有するポインティングデバイスを、処理装置の筐体に着脱自在に装着して使用する構成が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平10−49292号公報
【特許文献2】特開平6−139013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の磁電変換素子型のポインティングデバイスを低背化するためには、各構成部品の、組立時の高さに相当する(すなわち高さ方向の)寸法を削減することが求められる。しかし、操作部を初期位置に付勢するための、一般にゴムやコイルばねからなる弾性部材に関しては、高さ方向の寸法を無闇に削減すると、弾性変形時に発生するばね力が不足し、結果として操作部を正確かつ安定的に操作することが困難になる危惧がある。さらに、各構成部品の高さ方向の寸法を削減すると、処理装置の筐体上面に露出する操作部の外面と磁石との間の距離が必然的に短くなり、その結果、操作部を通した外部への磁気漏洩が生じ易くなる課題がある。
【0008】
また、例えば特許文献2に記載される従来の着脱式ポインティングデバイスは、操作部及び操作部の動作を検出する検出部を収容するハウジングを有し、ハウジングから延長されるケーブルをコネクタによりデータ処理装置に接続するとともに、ハウジングを処理装置の筐体上の所望位置に装着して使用される。このような構成では、ポインティングデバイスの電気的接続及び機械的装着作業が煩雑になり、しかも装着状態でケーブルがデータ処理装置の周囲に延長されるので、処理装置の携帯性及び作業性を損なう懸念がある。
【0009】
したがって本発明の目的は、磁電変換素子型のポインティングデバイスにおいて、操作部の操作性を損なうことなく一層の低背化が可能なポインティングデバイスを提供することにある。
本発明の他の目的は、磁電変換素子型のポインティングデバイスにおいて、低背化を進める際にも、操作部を通した磁気漏洩を可及的に低減できるポインティングデバイスを提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、データ処理装置に着脱自在に装着して使用されるポインティングデバイスにおいて、処理装置への電気的接続及び機械的装着を容易に実施でき、しかも処理装置の携帯性及び作業性を損なうことがないポインティングデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、基部と、基部上に支点を中心として揺動自在に支持される操作部と、基部及び操作部の一方に担持される磁石と、磁石に対向して基部及び操作部の他方に担持される磁電変換素子と、基部と操作部との間に配置され、操作部を基部上で初期位置に付勢する弾性部材とを具備するポインティングデバイスにおいて、弾性部材が板ばねからなり、板ばねが、基部に係合する第1部分と、第1部分から一体的に支点の周囲に延設され、操作部に係合する第2部分とを有することを特徴とするポインティングデバイスを提供する。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のポインティングデバイスにおいて、板ばねの第1部分が、支点の周囲に環状に延びて基部上に固定的に支持され、第2部分が、第1部分に沿って弧状に延設されてばね性を発揮するポインティングデバイスを提供する。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のポインティングデバイスにおいて、板ばねの第2部分がU字形状を有するポインティングデバイスを提供する。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポインティングデバイスにおいて、磁石の上方で操作部に設置され、磁路を構成するヨークをさらに具備するポインティングデバイスを提供する。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のポインティングデバイスにおいて、磁石が操作部に担持され、ヨークが磁電変換素子から離れた側で磁石に隣接して配置されるポインティングデバイスを提供する。
請求項6に記載の発明は、基部と、基部上に支点を中心として揺動自在に支持される操作部と、基部及び操作部の一方に担持される磁石と、磁石に対向して基部及び操作部の他方に担持される磁電変換素子と、基部と操作部との間に配置され、操作部を基部上で初期位置に付勢する弾性部材とを具備するポインティングデバイスにおいて、磁石の上方で操作部に設置され、磁路を構成するヨークを具備することを特徴とするポインティングデバイスを提供する。
【0014】
請求項7に記載の発明は、基部と、基部上に支点を中心として揺動自在に支持される操作部と、基部及び操作部の一方に担持される磁石と、磁石に対向して基部及び操作部の他方に担持される磁電変換素子と、基部と操作部との間に配置され、操作部を基部上で初期位置に付勢する弾性部材とを具備するポインティングデバイスにおいて、基部及び操作部に隣接して配置されるコネクタ部を具備し、コネクタ部を介してデータ処理装置に着脱自在に装着されるとともに、装着時にコネクタ部が基部及び操作部を支持することを特徴とするポインティングデバイスを提供する。
【0015】
請求項8に記載の発明は、操作部と、操作部の動作を検出する検出部とを具備するポインティングデバイスにおいて、操作部及び検出部に隣接して配置されるコネクタ部を具備し、コネクタ部を介してデータ処理装置に着脱自在に装着されるとともに、装着時にコネクタ部が操作部及び検出部を支持することを特徴とするポインティングデバイスを提供する。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のポインティングデバイスにおいて、操作部及び検出部を収容するハウジングを具備し、コネクタ部がハウジングに回動自在に連結されるポインティングデバイス。
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のポインティングデバイスにおいて、ハウジングが、データ処理装置の筐体に係合可能な係合部を備えるポインティングデバイスを提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、磁電変換素子型のポインティングデバイスにおいて、操作部の操作性を損なうことなく一層の低背化が実現される。また、低背化を進める際にも、操作部を通した磁気漏洩を可及的に低減できる。したがって、データ処理装置の一層の薄型化を促進することができる。さらに本発明によれば、データ処理装置に着脱自在に装着して使用されるポインティングデバイスにおいて、処理装置の携帯性及び作業性を損なうことなく、処理装置への電気的接続及び機械的装着を迅速かつ容易に実施することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図面において、同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付す。
図1は本発明の一実施形態によるポインティングデバイス10の分解斜視図、図2はポインティングデバイス10の分解縦断面図、図3はポインティングデバイス10の組立時の縦断面図、並びに図4はポインティングデバイス10の組立時の(a)平面図及び(b)側面図である。ポインティングデバイス10は、パーソナルコンピュータやパーソナルワードプロセッサ等の、特に携帯可能な小型データ処理装置において、ディスプレイ上の座標データを指示する低背型の補助入力装置として有利に使用できる。
【0019】
ポインティングデバイス10は、基部12と、基部12上に設定した支点14を中心に揺動自在に基部12に支持される操作部16とを備える。基部12は、図示しないCPU等の電子部品を実装した回路基板18と、互いに組合せた状態で回路基板18に固定的に取付けられる第1及び第2のフレーム体20、22とから構成される。回路基板18の表面の所定位置には、複数(図示実施形態では4個)の磁電変換素子(ホール素子)24が実装される。それら磁電変換素子24は、組合せたフレーム体20、22の内側に位置決めされる。
【0020】
第1のフレーム体20は、略環状の外周部分26と外周部分26の内側に延設される中心部分28とを一体に有する薄板状部材であり、中心部分28に、支点14を構成する半球状の溝が形成される。第2のフレーム体22は、略円筒状の周壁部分30と周壁部分30の径方向内側に局所的に延長される複数(図示実施形態では3個)のフランジ部分32とを一体に有し、周壁部分30及びフランジ部分32により、第1のフレーム体20を収容する凹部が画成される。第1のフレーム体20の外周部分26には、その外面の所定位置に外向きの爪34が形成される。第2のフレーム体22の周壁部分30には、その内面の所定位置に、爪34に係合可能な内向きの爪36が形成される。第1及び第2のフレーム体20、22は、両者の爪34、36が互いにスナップ式に係合することにより、互いに固定的に組合わされる。なお、本明細書で「スナップ式係合」とは、対応の係合要素同士が、一方又は双方の弾性変形及び弾性復元を伴って互いに係合する形態を示すものである。
【0021】
第1のフレーム体20には、支点14を構成する中心部分28の溝の裏側に1つの突起38が形成され、外周部分26の対応する側にも1つの突起40が形成される。それら突起38、40は、回路基板18の表面に設けた位置決め孔42、44にそれぞれ嵌入され、それにより、互いに組合わされた第1及び第2のフレーム体20、22が、回路基板18上の所定位置に位置決めされる。このとき、回路基板18に実装された複数の磁電変換素子24は、第1のフレーム体20の外周部分26と中心部分28との間の開口内に、支点14を中心として周方向へ分散して配置される。さらに、第2のフレーム体22は、図示しないボルトにより回路基板18に固定される。
【0022】
操作部16は、オペレータが手や指を接触させるカバー46と、カバー46に固定的に組付けられるホルダ48とから構成される。カバー46は、略円板状の端壁部分50と端壁部分50の外縁から軸線方向へ延長される略円筒状の周壁部分52とを一体に有し、端壁部分50及び周壁部分52により、基部12の第2のフレーム体22を受容可能な凹部が画成される。カバー46の端壁部分50の外面には、人間工学的に円滑に凹曲する操作面54が形成される。また、カバー46の端壁部分50の内面には、先端に内向きの爪56を有した複数(図示実施形態では3個)の係止片58が突設される。それら係止片58は、周壁部分52から離れて、周壁部分52に略同心状に配置される。
【0023】
ホルダ48は、略円板状の底壁部分60と底壁部分60の外縁から径方向へ局所的に延長される複数(図示実施形態では3個)のフランジ部分62とを一体に有する。ホルダ48の底壁部分60は、その一面に立設される円筒壁64を有し、底壁部分60と円筒壁64とによって画成される凹部65に、略円板状の磁石66が収容される。ホルダ48の複数のフランジ部分62は、底壁部分60の周方向へ略等間隔に配置される。底壁部分60と各フランジ部分62との間には、円筒壁64に略平行に延びる補助壁68がそれぞれ立設される。底壁部分60の、フランジ部分62を有しない外縁領域には、それぞれ外向きの爪70が形成される。カバー46とホルダ48とは、前者の各係止片58の爪56と後者の各爪70とが互いにスナップ式に係合することにより、互いに固定的に組合わされる。なおこのとき、カバー46の隣合う係止片58の間に、ホルダ48の各補助壁68が配置される。
【0024】
ホルダ48の底壁部分60の、円筒壁64の反対側の面は、外縁から中心に向かって略円錐状に延びて、その隆起した中心部に略半球状の突部72が形成される。操作部16を基部12に組付ける際には、ホルダ48を、その複数のフランジ部分62が、基部12の第2のフレーム体22の複数のフランジ部分32に対し側方へずれた位置関係で、第2のフレーム体22の周壁部分30の内側に挿入する。このとき同時に、ホルダ48に固定したカバー46の端壁部分50と周壁部分52との間の凹部に、第2のフレーム体22が受容され、またホルダ48の突部72が、第1のフレーム体20の中心部分28に設けた支点14を構成する溝に、がたつきなく摺動自在に嵌入される。このようにしてホルダ48は、カバー46及び磁石66と一体的に、支点14を中心として360°全方位へ揺動自在に第1のフレーム体20に支持される。この状態で磁石66は、回路基板18上の複数の磁電変換素子24に、所定の間隔を開けて対向配置される。
【0025】
ポインティングデバイス10はさらに、操作部16を基部12上で初期位置に付勢する弾性部材として作用する板ばね74を備える。板ばね74は、基部12に係合する第1部分76と、第1部分76から一体的に延設され、操作部16に係合する複数(図示実施形態では3個)の第2部分78とを有する。板ばね74は、例えばばね鋼板から打ち抜いて形成される薄板状部材であり、その第1部分76は、支点14の周囲に略円環状に延びて、基部12の第1のフレーム体20と第2のフレーム体22との間に固定的に支持される。板ばね74の複数の第2部分78は、第1部分76の周方向等間隔位置で、第1部分76に沿ってそれぞれ弧状に延設され、それらの自由端で、操作部16のホルダ48の複数のフランジ部分62にそれぞれ支持される。板ばね74は、無負荷時には図1及び図2に示すように、第1部分76と第2部分78とが互いに実質的同一の平面上に配置される。その状態から、各第2部分78に外力が加わると、各第2部分78が弾性変形して、外力に対しばね性を発揮する。
【0026】
板ばね74の第1部分76と各第2部分78との連結部位の近傍には、それぞれ貫通孔80が形成される。これに対応して、基部12の第2のフレーム体22は、その複数のフランジ部分32の内面にそれぞれ位置決め用の突起82が形成される。板ばね74は、各貫通孔80に第2のフレーム体22の各突起82を挿入した状態で、その第1部分76が、第1のフレーム体20の外周部分26と第2のフレーム体22の複数のフランジ部分32との間に挟持されることにより、基部12に組込まれる。
【0027】
前述したように操作部16を基部12に組付ける際には、板ばね74の各第2部分78を、その自由端でホルダ48の各フランジ部分62の上面すなわち回路基板18から離れた側の面に係合させる。このとき、全ての第2部分78が、対応のフランジ部分62から負荷を受けて上方へ僅かに弾性変形した状態に置かれる(図3)ように、各構成部品が寸法設定される。その結果、板ばね74の複数の第2部分78が、ホルダ48の複数のフランジ部分62のそれぞれに、下方すなわち回路基板18へ接近する方向への実質的均等なばね力を及ぼし、この平衡したばね力の下で、カバー46とホルダ48とからなる操作部16が、磁石66と一体的に、初期位置に安定的に保持される。なお、初期位置では、カバー46の端壁部分50が回路基板18に実質的平行に配置され、回路基板18上の複数の磁電変換素子24が操作部16上の磁石66からいずれも実質的等距離に配置される。
【0028】
ポインティングデバイス10を操作する際には、オペレータが手指で操作部16のカバー46を操作して、板ばね74の付勢に抗して基部12上で支点14を中心に揺動させる。このとき、図5(a)、(b)に示すように、カバー46の揺動方向及び揺動角度に対応して、磁石66と各磁電変換素子24との相対的位置関係が変化し、それにより複数の磁電変換素子24が互いに異なる電圧を出力する。カバー46の揺動動作に伴う各磁電変換素子24の出力電圧の変動は、回路基板18上の図示しないCPUでアナログ情報として処理されてデジタル座標データに変換され、回路基板18に設けられたコネクタ部84(図1)を介して、データ処理装置(図示せず)の処理機構に出力される。このようにして、操作部16のカバー46の揺動方向及び揺動角度に対応して、例えばデータ処理装置のディスプレイ上のキャラクタやカーソルを所望方向に所望距離だけ移動することができる。
【0029】
図5(a)、(b)に示すように、カバー46を初期位置から所望方向に揺動させると、板ばね74の複数の第2部分78が、ホルダ48の複数のフランジ部分62の揺動により、平衡した弾性変形状態から揺動方向に対応して偏った弾性変形状態に移行する。つまり操作部16は、板ばね74の複数の第2部分78が平衡状態に復元しようとするばね力により、常に初期位置に向けて付勢される。その結果、操作部16は、オペレータの手指の動作に正確かつ円滑に対応して揺動するとともに、オペレータがカバー46から手指を離すと同時に初期位置へ迅速に復帰する。
【0030】
このように、ポインティングデバイス10においては、操作部16を初期位置に付勢する弾性部材として、薄板状の板ばね74を使用したので、組立てたポインティングデバイス10の高さ方向の寸法を容易に削減することができる。しかも板ばね74は、その各第2部分78が第1部分76に沿って支点14の周囲に弧状に延設されるので、高さ方向の寸法が極めて小さい構成であるにも関わらず、周方向へ所望長さに延びる各第2部分78により、操作部16を安定的に操作するに必要十分なばね力を発揮することができる。したがってポインティングデバイス10は、操作部16の操作性を損なうことなく一層の低背化が可能であり、データ処理装置の筐体に一体的に組込んで使用する場合に、データ処理装置のさらなる薄型化を促進できるものである。
【0031】
ポインティングデバイス10の板ばね74は、上記以外の様々な形状を有することができる。例えば図6に示すように、第1部分76に連結される基端側からU字状に延びる第2部分78′を有する板ばね74を採用できる。この場合、第2部分78′は、その先端の自由端領域79で、ホルダ48のフランジ部分62に係合するように構成される。このような構成によれば、ばね作用部分である第2部分78′の全長を容易に増加できるので、さらに大きなばね力を獲得することができる。
【0032】
なお、本発明における上記した板ばねは、磁石と磁電変換素子との配置が上記実施形態とは逆の構成、すなわち基部に設置した磁石に対し、操作部に設置した磁電変換素子が変位するように構成されたポインティングデバイスにおいても、有効に使用でき、かつ同様に格別の作用効果を奏するものである。
【0033】
ポインティングデバイス10はさらに、磁石66の上方で操作部16に設置され、磁路を構成するヨーク86を備える。ヨーク86は、磁性鋼板等の板金材料から絞り加工により形成される皿状部材であり、略円板状の端壁部分88と端壁部分88の外縁から軸線方向へ延長される略円筒状の周壁部分90とを一体に有する。ヨーク86は、その周壁部分90をホルダ48の円筒壁64と各補助壁68との間に挿入して、磁石66を凹部65に収容したホルダ48に取付けられる。このとき、ヨーク86の端壁部分88は、磁電変換素子24から離れた側で磁石66に隣接して配置される。ヨーク86は、その端壁部分88及び周壁部分90に沿って、磁石66による磁気回路を形成するので、カバー46を通した外部への磁気漏洩を低減するように作用するとともに、磁界を回路基板18上の複数の磁電変換素子24に接近する方向へ向けるように作用する。したがって、板ばね74の上記作用効果により低背化したポインティングデバイス10においても、操作部16を通した外部への磁気漏洩を可及的に低減することができる。
【0034】
なお、本発明における上記したヨークは、磁電変換素子を用いたポインティングデバイスであれば、弾性部材として板ばねを使用する上記実施形態に限らず、ゴムやコイルばね等の他の弾性部材を使用するポインティングデバイスにおいても、有効に使用でき、かつ同様に格別の作用効果を奏するものである。
【0035】
上記実施形態によるポインティングデバイス10は、操作性低下や磁気漏洩の問題を解決して低背化を実現できるものであり、薄型のデータ処理装置の筐体に一体的に組込まれる組込式ポインティングデバイスとして、特に有利に使用できる。しかし、オペレータの意向によっては、データ処理装置に着脱自在に装着して使用される着脱式のポインティングデバイスが要求される場合もある。図7〜図10は、そのような着脱式の構成を有した本発明の他の実施形態によるポインティングデバイス100を示す。
【0036】
ポインティングデバイス100は、操作部102と、操作部102の動作を検出する検出部104と、操作部102及び検出部104に隣接して配置されるコネクタ部106とを備えて構成される。ポインティングデバイス100は、コネクタ部106を介して、後述するデータ処理装置に着脱自在に装着される。操作部102は、組立体として図示されるが、平椀状のカバー48に代えて棒状部分108を有するドーム110を装備した点以外は、前述したポインティングデバイス10の操作部16と実質的に同一の内部構造を有するものである。したがって、操作部102の内部構造の図示及び説明は省略する。
【0037】
検出部104は、図示しないCPU等の電子部品を実装した回路基板112と、回路基板112上の所定位置に実装される複数の磁電変換素子114とから構成される。回路基板112及び磁電変換素子114は、前述したポインティングデバイス10の回路基板18及び磁電変換素子24と実質的に同一の構成を有するものであり、説明を省略する。ドーム110は、回路基板112に固定されるフレーム体116上に、支点(図示せず)を中心として揺動自在に支持される。フレーム体116は、ポインティングデバイス10における第1及び第2フレーム体20、22に相当するものである。
【0038】
このように、ポインティングデバイス100は、その基本的な構成を前述したポインティングデバイス10と実質的に同一のものとすることができる。ただし、着脱式の構成を有するポインティングデバイス100では、寸法上の制約が少ないので、前述した板ばね74に代えて、ゴムやコイルばね等の他の弾性部材を使用することもできる。
【0039】
ポインティングデバイス100はさらに、操作部102及び検出部104を収容する上下一対のハウジング118、120を備える。それらハウジング118、120は互いに組合わされて、フレーム体116を固定した回路基板112を固定的に支持するとともに、棒状部分108を含むドーム110の一部分を上部ハウジング118に設けた開口部122から外部に突出させる。両ハウジング118、120の外面には、円筒状の曲面部分を有する凹部124、126がそれぞれ形成される。それら凹部124、126は、両ハウジング118、120を組合せたときに、それらの曲面部分を互いに円滑に接続して、コネクタ部106を受容する受容部128を形成する。図示のように受容部128は、半円よりも大きな弓形の断面形状を有する。
【0040】
コネクタ部106は、一例としてUSB(Universal Serial Bus)規格に従った角形接続部を有するコネクタ130と、コネクタ130をその接続部を露出させて固定的に収容するケーシング132とを備える。コネクタ130は、図示しないケーブル又はリード線を介して、検出部104の回路基板112に接続される。ケーシング132は、両ハウジング118、120の受容部128の形状に対応する略弓形断面形状を有する筒状組立体であり、その円筒状の外周面部分を受容部128の円筒状の曲面部分に対向ないし接触させて、受容部128に受容される。
【0041】
両ハウジング118、120の受容部128には、それぞれの凹部124、126の曲面部分に周方向へ延びる互いに平行な一対の突条134が形成される。これに対応して、コネクタ部106のケーシング132には、その円筒状の外周面部分に、互いに平行に周方向へ延びる一対の溝136が形成される。コネクタ部106は、そのケーシング132の外面の一対の溝136に、両ハウジング118、120の受容部128の一対の突条134をそれぞれ嵌入した状態で、受容部128に受容される。これによりコネクタ部106は、受容部128内で突条134に沿って回動自在に、かつ受容部128から脱落しないように、両ハウジング118、120に連結される。
【0042】
ポインティングデバイス100は、図11及び図12に示すように、パーソナルコンピュータやパーソナルワードプロセッサ等のデータ処理装置140の筐体142に着脱自在に装着して使用される。データ処理装置140は、キーボード144とディスプレイ146とを集約的に備えた携帯可能な装置として示されており、キーボード144を収容する筐体142の側面所定位置に、ポインティングデバイス100のコネクタ部106を接続するインタフェース部148が設置される。
【0043】
ポインティングデバイス100は、コネクタ部106及びインタフェース部148を介してデータ処理装置140に着脱自在に装着されるとともに、装着時にコネクタ部106が、操作部102及び検出部104を内蔵したハウジング118、120を支持するように作用する。このような構成によれば、データ処理装置140へのポインティングデバイス100の電気的接続及び機械的装着が、コネクタ部106をインタフェース部148に接続するだけで完了するので、迅速な着脱作業を容易に実施することができる。しかもポインティングデバイス100では、コネクタ部106が予めハウジング118、120に組込まれているので、従来の着脱式ポインティングデバイスのように、装着状態でケーブルが処理装置の周囲に延長されることがなく、したがって処理装置の携帯性及び作業性を損なうことがない。
【0044】
なお、コネクタ部106のコネクタ130がUSB規格に従う場合、コネクタ130の接続部の中心からケーシング132の略平坦な端面までの距離W(図10(b))は、4.25mm以下であることが望ましい。このようにすれば、ポインティングデバイス100に並設して、同様にUSB規格に従った他の周辺装置のコネクタを、データ処理装置140に接続することができる。
【0045】
上記したコネクタ部106による機械的支持作用を補助するために、ポインティングデバイス100はさらに、データ処理装置140の筐体142に係合可能な係合部138を備えることができる。係合部138は、ポインティングデバイス100の下部ハウジング120の底面に刻設されたスリットからなる。これに対応して、データ処理装置140の筐体142には、ポインティングデバイス100の係合部138に着脱自在に係合して下部ハウジング120を支持する支持部150を設置することができる。この場合、支持部150は、スリットからなる係合部138に挿入可能な板状片として構成できる。また、データ処理装置140の携帯性及び作業性を損なわないように、支持部150を、筐体142の側面に隣接する引込位置と筐体142の側面から突出する突出位置との間で、矢印α(図11(b))のように移動可能な構成とすることが望ましい。
【0046】
上記構成を有するポインティングデバイス100をデータ処理装置140に装着する際には、筐体142上のインタフェース部148の配置にもよるが、ポインティングデバイス110のハウジング118、120が筐体142側の支持部150に干渉しないよう、図11(a)に示すように、コネクタ部106を受容部128内で適当に回転した状態で、コネクタ部106をインタフェース部148に接続する。次いで、支持部150を突出位置に配置し、コネクタ部106に対してハウジング118、120を回転させることにより、支持部150を係合部138に挿入する。これにより装着が完了する(図12)。
【0047】
なお、上記したコネクタ部を有するポインティングデバイスは、磁電変換素子を用いた上記実施形態の構成に限らず、ボールを指で回転させてその回転方向及び回転角度を入力する回転入力式のポインティングデバイスや、シート上で指を当接摺動させることにより押圧点の移動方向及び移動距離を入力する平面押圧式のポインティングデバイス等にも適用でき、その場合も同様に格別の作用効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態によるポインティングデバイスの分解斜視図である。
【図2】図1のポインティングデバイスの分解縦断面図である。
【図3】図1のポインティングデバイスの組立時の縦断面図である。
【図4】図1のポインティングデバイスの(a)平面図及び(b)側面図である。
【図5】図1のポインティングデバイスの操作時の縦断面図で、(a)1つの揺動方向及び(b)他の揺動方向において示す。
【図6】変形例による板ばねの斜視図である。
【図7】本発明の他の実施形態によるポインティングデバイスの分解斜視図である。
【図8】図7のポインティングデバイスの組立時の斜視図である。
【図9】図8の(a)矢印A方向からの側面図及び(b)矢印B方向からの側面図である。
【図10】図7のポインティングデバイスの(a)平面図及び(b)底面図である。
【図11】図7のポインティングデバイスをデータ処理装置に装着する手順を示す図で、(a)ポインティングデバイスの斜視図及び(b)データ処理装置の斜視図である。
【図12】図11のデータ処理装置にポインティングデバイスを装着した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
12 基部
14 支点
16、102 操作部
18、112 回路基板
20 第1フレーム体
22 第2フレーム体
24、114 磁電変換素子
46 カバー
48 ホルダ
66 磁石
74 板ばね
76 第1部分
78、78′ 第2部分
86 ヨーク
104 検出部
106 コネクタ部
118 上部ハウジング
120 下部ハウジング
128 受容部
130 コネクタ
132 ケーシング
134 突条
136 溝
138 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、該基部上に支点を中心として揺動自在に支持される操作部と、該基部及び該操作部の一方に担持される磁石と、該磁石に対向して該基部及び該操作部の他方に担持される磁電変換素子と、該基部と該操作部との間に配置され、該操作部を該基部上で初期位置に付勢する弾性部材とを具備するポインティングデバイスにおいて、
前記弾性部材が板ばねからなり、該板ばねが、前記基部に係合する第1部分と、該第1部分から一体的に前記支点の周囲に延設され、前記操作部に係合する第2部分とを有することを特徴とするポインティングデバイス。
【請求項2】
前記板ばねの前記第1部分が、前記支点の周囲に環状に延びて前記基部上に固定的に支持され、前記第2部分が、該第1部分に沿って弧状に延設されてばね性を発揮する請求項1に記載のポインティングデバイス。
【請求項3】
前記板ばねの前記第2部分がU字形状を有する請求項2に記載のポインティングデバイス。
【請求項4】
前記磁石の上方で前記操作部に設置され、磁路を構成するヨークをさらに具備する請求項1〜3のいずれか1項に記載のポインティングデバイス。
【請求項5】
前記磁石が前記操作部に担持され、前記ヨークが前記磁電変換素子から離れた側で該磁石に隣接して配置される請求項4に記載のポインティングデバイス。
【請求項6】
基部と、該基部上に支点を中心として揺動自在に支持される操作部と、該基部及び該操作部の一方に担持される磁石と、該磁石に対向して該基部及び該操作部の他方に担持される磁電変換素子と、該基部と該操作部との間に配置され、該操作部を該基部上で初期位置に付勢する弾性部材とを具備するポインティングデバイスにおいて、
前記磁石の上方で前記操作部に設置され、磁路を構成するヨークを具備することを特徴とするポインティングデバイス。
【請求項7】
基部と、該基部上に支点を中心として揺動自在に支持される操作部と、該基部及び該操作部の一方に担持される磁石と、該磁石に対向して該基部及び該操作部の他方に担持される磁電変換素子と、該基部と該操作部との間に配置され、該操作部を該基部上で初期位置に付勢する弾性部材とを具備するポインティングデバイスにおいて、
前記基部及び前記操作部に隣接して配置されるコネクタ部を具備し、該コネクタ部を介してデータ処理装置に着脱自在に装着されるとともに、装着時に該コネクタ部が該基部及び該操作部を支持することを特徴とするポインティングデバイス。
【請求項8】
操作部と、該操作部の動作を検出する検出部とを具備するポインティングデバイスにおいて、
前記操作部及び前記検出部に隣接して配置されるコネクタ部を具備し、該コネクタ部を介してデータ処理装置に着脱自在に装着されるとともに、装着時に該コネクタ部が該操作部及び該検出部を支持することを特徴とするポインティングデバイス。
【請求項9】
前記操作部及び前記検出部を収容するハウジングを具備し、前記コネクタ部が該ハウジングに回動自在に連結される請求項8に記載のポインティングデバイス。
【請求項10】
前記ハウジングが、データ処理装置の筐体に係合可能な係合部を備える請求項9に記載のポインティングデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−70392(P2009−70392A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270072(P2008−270072)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【分割の表示】特願平11−124993の分割
【原出願日】平成11年4月30日(1999.4.30)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】