説明

ポイント半田NCデータ作成方法と自動半田装置

【課題】半田付け個所の品質を高く保ちつつ、生産時間を短縮できるポイント半田NCデータ作成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基板を設計製作するときに決定されたCADデータから、半田付け個所のランド情報(D1)と実装する部品情報(D2)とを取得する情報取得工程(11,12)と、ランド情報(D1)と部品情報(D2)から、半田付け個所の熱容量を算出する熱容量算出工程(13)と、熱容量算出工程の算出した熱容量から半田付け条件を算出する半田付け条件算出工程(14,15,16,17,18)を備え、半田付け条件算出工程の結果に基づいてNCデータを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田付けを実行する自動半田装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半田付けに関与するパラメータを自動で調節する自動半田装置として特許文献1が知られている。
この装置では、図8に示すように部品2をプリント基板1に半田付けする場合に、半田付け個所に半田送り装置5aによって半田を供給するとともに、半田鏝3の温度を温度センサ4によって検出し、温度センサアンプ4aを介して演算装置6へ検出温度を入力し、半田鏝3の先端の温度変化から演算装置6が部品2の熱容量を計算して、演算装置6が半田付け条件を自動的に決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−310845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この従来の自動半田装置では、半田付け個所ごとに温度変化測定が必要であり、多数の半田付け個所が存在するプリント基板1の場合や量産時には生産時間が長くなる問題がある。この特許文献1は、半田鏝3を半田付け個所に押し当てて半田付けするものであったが、半田付け個所に半田噴流を作用させて半田付けする噴流式半田装置においては、半田付のパラメータを自動的に決定することがより難しいのが現状である。
【0005】
本発明は、ポイント半田付けの半田付け条件を短時間で決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のポイント半田NCデータ作成方法は、ノズルから噴出する半田によって部品を基板に実装するポイント半田付け用のNCデータを作成する方法であって、前記基板のCADデータから半田付け個所のランド情報と実装する部品情報とを取得する情報取得工程と、前記ランド情報と前記部品情報から前記半田付け個所の熱容量を算出する熱容量算出工程と、前記熱容量から半田付け条件を算出する半田付け条件算出工程とからなることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の自動半田装置は、半田付けによって部品の実装を受ける基板のCADデータから半田付け個所のランド情報と実装する部品情報とを取得する情報取得部と、前記ランド情報と前記部品情報から前記半田付け個所の熱容量を算出する熱容量算出部と、前記熱容量から半田噴流速度と半田付け時間を算出する半田付け条件算出部とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この構成によれば、NCデータ作成時間と半田付け時間の短縮ができる。さらに、半田付け個所の状態に応じてNCデータを最適化することで、高品質なポイント半田付けを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のポイント半田NCデータ作成方法を実行する自動半田装置の要部の構成図
【図2】熱容量算出手段13で使用する各データの例を示す図
【図3】ノズル種別決定手段14で使用するノズル情報の例と半田噴流速度算出手段15で算出する情報の例を示す図
【図4】ノズル動作決定手段16で生成したNCデータの例を示す図
【図5】半田装置の側面図
【図6】半田不足の場合の補正を説明する図
【図7】プリント基板に反りがある場合の補正を説明する図
【図8】従来の半田装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のポイント半田NCデータ作成方法を具体的な実施の形態に基づいて説明する。
図1は入力された情報に基づいてNCデータを作成する演算装置10を備えた自動半田装置を示す。図5は演算装置10で決定されたNCデータに基づいて、半田噴流速度とプリント基板に対するノズルの高さを制御して半田付けを実行する半田装置25を示している。
【0011】
マイクロコンピュータを主要部として構成された演算装置10の入力には、半田付け対象のプリント基板を設計製作する際に使用した基板設計CADシステム21と、プリント基板に実装する実装位置と部品の情報を管理している部品情報システム22が接続されている。演算装置10の出力には、図5に示す半田装置25が接続されている。さらに、演算装置10には、半田付けによって実装が完了したプリント基板を検査する半田検査機23と、半田付け前と半田付け中のプリント基板の反りを検出する基板反りセンサ24が接続されている。
【0012】
演算装置10は次のように構成されている。
演算装置10は、ランド情報取得手段11、部品情報取得手段12、熱容量算出手段13、ノズル種別決定手段14、半田噴流速度算出手段15、ノズル動作決定手段16、ノズル高さ補正手段17、NCデータ出力手段18を備えている。
【0013】
ランド情報取得手段11は、基板設計CADシステム21からランド情報D1を取得する。図2(a)はランド情報取得手段11によって取得されたランド情報D1の例である。ランド情報D1には、半田付け個所のランドロケーションに対して、基板原点からのX方向およびY方向の位置、X方向およびY方向の外形寸法、面積、厚み、比重、比熱等が含まれている。
【0014】
部品情報取得手段12は、部品情報システム22から部品情報D2を取得する。図2(b)は部品情報取得手段12によって取得された部品情報D2の例である。部品情報D2には、半田付け個所の部品ロケーションに対して、基板原点からのX方向およびY方向の位置、X方向およびY方向の外形寸法、面積、長さ、比重、比熱等が含まれている。
【0015】
熱容量算出手段13は、ランド情報取得手段11から出力されたランド情報D1と部品情報取得手段12から出力された部品情報D2から、半田付け個所の熱容量を算出する。例えば図2では、
半田付け個所の熱容量 = ランド熱容量 + 部品のリード部の熱容量
ランド熱容量 = 面積 × 厚み ÷ 1000 × 比重 × 比熱
部品のリード部の熱容量 = 面積 × 長さ ÷ 1000 × 比重 × 比熱
で計算する。ここで、部品の熱容量は、部品のリード部分の熱容量を意味する。以下、リード部分の熱容量を部品熱容量と称す。
【0016】
また、部品のボディ情報の熱容量も考慮したい場合は、
部品ボディ熱容量 = 面積 × 厚み ÷ 1000 × 比重 × 比熱 × 係数
で計算して、半田付け個所の熱容量に加算することもできる。部品ボディ熱容量とは、部品のリード部と接続されている部品本体部分の熱容量のことである。部品熱容量だけでなく、部品ボディ熱容量までを、計算に含めると、さらに、精度よく熱容量を求めることができる。
【0017】
一方、部品情報D2が取得できない場合には、“ 部品熱容量 = ランド情報D1のド
リル穴径 × 係数 × 仮想長さ ÷ 1000 ×比重×比熱 ”によって、仮想的に部品熱容量を算出することも可能である。図2(c)に熱容量計算の結果を示す。
【0018】
ノズル種別決定手段14は、ランド情報取得手段11から得られるランド形状寸法と、演算装置10の出力に接続されている図5に示す半田装置25に実装可能なノズル51のノズル情報とからノズル種別を決定する。図3(a)はノズル情報の例である。ノズル情報には、形状、ノズル穴のX方向の寸法(穴X寸法)、ノズル穴のY方向の寸法(穴Y寸法)、面積、最大噴流速度、噴流量対熱量係数が含まれる。ノズル種別は例えば、“ランド情報D1の外形寸法の最大値 ≦ ノズル情報の穴寸法”を満足するノズルの中で最も面積が小さいものを選択する。
【0019】
また、ノズル穴よりも半田噴流は小さくなり、ノズル高さによって半田付けするランド面積を一定範囲で制御できる。図2(a)のランド情報D1の場合、ランドのX,Y外形寸法のうちで、最大外形が10mmなので、X,Y穴寸法内どちらかが10mm以上のノズルの内で面積が最も小さいN−R1005ノズルが選択される。ここで、ノズル穴寸法のX,Yのどちらかが、10mm以上でよいのは、ノズルの角度を制御することが可能なので、一方だけ大きい場合でも使用できる。
【0020】
半田噴流速度算出手段15は、熱容量算出手段13から出力された半田付け個所の熱容量と、ノズル種別決定手段14から出力されたノズル種別と、プリヒート温度とから、半田噴流速度および半田付け時間を算出する。例えば、
半田付け昇温度 = 半田付け温度 − プリヒート温度
半田付けに必要な熱量 = 半田付け昇温度 × 半田付け個所の熱容量
半田噴流速度 =標準噴流速度係数 × 最大噴流速度
半田付け時間 =半田付けに必要な熱量 ÷(半田噴流速度×噴流量対熱量係数)
で計算する。図3(b)は半田噴流速度および半田付け時間の算出例である。
【0021】
ここで、標準噴流速度係数は、定常的に噴流を流し続けることが可能な、最大噴流速度に対する噴流速度の比であり、最大噴流速度は、噴流を発生させるモーターの最大回転速度である。
【0022】
ノズル動作決定手段16は、ランド情報取得手段11から得られるランド位置および半田噴流速度算出手段15から出力された半田付け時間から、品質を保ちつつ半田付け時間が最小となるノズルの動作を決定する。例えば、熱容量の小さいものから大きいものへの半田付けすることで品質の安定化が図れる。すなわち、半田付け時間が短い半田付け個所から、半田付け時間が長い半田付け個所へと半田付けを行うようにNCデータを作成する。例えば、図3(b)においては、半田付け時間が0.40秒、0.72秒、2.16秒の順に半田付けを行うのが望ましい。このことで、各ポイント間で必要な熱容量の差が小さく、徐々に、熱量を与えることができ、品質が安定する。
【0023】
まず、X01−01の半田付けロケーションを半田付けする。ランド情報D1のY外形寸法から縦長のランド形状であることが分かる。ランド位置はランド中心座標で表現されているため、Y外形寸法/2(5/2)=2.5mmだけYマイナス方向に移動した位置をノズルの開始位置(X:124mm,Y46.5mm)とし、2.5mmだけYプラス方向に移動した位置をノズルの終了位置(X:124mm,Y51.5mm)とする。半田付け高さは、部品情報D2の半田付け長さ(2mm)+クリアランス(例えば0.5mm)=2.5mmとする。ここで半田付け長さとは、基板面を基準とし、その位置から半田付けが必要な部品のリード先端までの長さのことである。移動速度は、移動距離/半田付け時間=5mm/0.4s=12.5mm/sとする。また、ランドX外形寸法が3mm、ノズル短手寸法がY方向で5mmのため、ノズル角度は90度とする。ここで、ノズル角度とは、ノズル情報で定義されている状態を0度としている。ノズルは回転機構があるため、0度に対する回転角度をノズル角度としている。X方向は基板が流れる方向と同一である。
【0024】
ノズル角度は、ノズル形状のX方向とY方向の寸法が異なる場合や、角ノズルの場合などに、ノズル形状内にランド形状が入るようにノズル角度を調整する。この例であると、ランドは縦長、ノズルは横長のため、ノズルを90度回転させて縦長状態に制御している。移動時高さは2.5mmとする。次の半田付け個所は、半田付け時間が0.72秒の内、X01−01に最も近い半田付け個所を抽出し、CN02−02の半田付けロケーションを半田付けする。ランド情報D1の外形寸法から、ノズル開始位置と終了位置は同じとする。半田付け高さは、部品情報D2の半田付け長さ(2mm)+クリアランス(例えば0.5mm)=2.5mmとする。ノズル移動は不要なため、半田付け時間で待機する。また、ランドXY外形寸法が8mmのため、ノズル角度は0度とする。移動時高さは2.5mmとする。同様にして、CN02−01,R01−01,R01−02の半田付けロケーションを半田付けする。図4にNCデータ例を示す。
【0025】
また、ノズル動作決定手段16は、事前に上記に計算した条件(NCデータ)で半田付けした基板を半田検査機23で検査した検査結果を取得し、半田付けロケーションが不良と判定された場合、その不良モードに応じてノズル動作を補正する。例えば、半田ブリッジ不良モードの場合、移動時高さをより下方向へ移動(例えば4.0mm)して、半田付けロケーション移動時の半田噴流の影響を抑制する。一方、半田が少なかった不良モードの場合、検査結果である半田付け形状寸法測定データから半田が少ない個所への半田付けノズル移動を長め(例えば+1.0mm)にして、半田噴流量を増加させる。
【0026】
なお、ノズル動作の修正後に、再度、検査し、修正してもよい。
ノズル高さ補正手段17は、ノズル動作決定手段16が決定したノズルの動作を、基板反りセンサ24から取得した基板反り情報に基づいて補正する。具体的には、ノズル動作決定手段16が決定したノズル高さを、基板反りセンサ24から取得した基板反り情報に基づいて補正する。例えば、取得した基板反り情報が、半田付けロケーションR01−01、+1mmの場合、上方向(=基板30の下面を原点とした場合に高さマイナス方向)に1mm反っているので、半田付け高さ2.5mm−1mm=1.5mmとして補正する。
【0027】
NCデータ出力手段18は、上記のように作成したNCデータを半田装置25が読み込みできるフォーマットで出力する。
NCデータ出力手段18から出力されたNCデータに基づき運転される半田装置25の構成を図5(a)(b)と図6,図7に基づいて説明する。
【0028】
図5(a)において、固定されたプリント基板30に対してノズル51が右側に移動して半田付けして行く。プリント基板30のランド31に穿設された部品孔には、部品42のリード部41が挿入されてセットされている。プリント基板30のランド32に穿設された部品孔には、部品44のリード部43が挿入されてセットされている。プリント基板30のランド33に穿設された部品孔には、部品46のリード部45が挿入されてセットされている。
【0029】
先端から半田噴流52を噴出するノズル51による半田付けは、NCデータの順序の昇順で行う。なお、各半田付け個所における半田噴流52の速度は、半田装置25が半田噴流速度算出手段15の結果に基づいて適正値に制御されている。
【0030】
原点に位置しているノズル51を垂直方向、水平方向に移動させて、第1の半田付け個所の半田付け開始位置であるランド31の近傍に移動した後、半田付け高さに移動する。これによって、半田噴流52がランド31とリード41に指定された時間だけ接触して半田付けが行われる。図5(b)はノズル51の垂直移動と水平移動を表している。この場合のランド31の大きさは、使用中のノズル51の径に比べて同じか小さいため、ランド31の下方位置に到着したノズル51は、ランド31の中心位置に向かって上昇し、上昇位置で半田噴流52を指定された時間だけランド31とリード41に接触させて、その後に半田噴流52がプリント基板30に接触しない位置までノズル51が下降する。次の半田付け個所に向かうノズル51はこの下降した状態で水平移動する。
【0031】
つぎの半田付け個所のランド32の大きさは、使用中のノズル51の径に比べて大きく、しかも熱容量が大きいため、ノズル51はランド32とリード43の半田付け開始位置に移動した後、半田付け高さに上昇する。そしてノズル51が上昇位置のままで半田付け終了位置に向かって、指定された移動速度で水平移動して半田付けが行われる。半田付け終了位置に到着したノズル51は、半田噴流52がプリント基板30に接触しない位置までノズル51が下降する。次の半田付け個所に向かうノズル51はこの下降した状態で水平移動する。
【0032】
つぎの半田付け個所のランド33の大きさは、使用中のノズル51の径に比べて大きく、しかも熱容量が大きいため、ランド33とリード45の半田付け開始位置に移動した後、半田付け高さに移動する。さらに、半田付け終了位置に、指定された移動速度で移動して半田付けが行われる。
【0033】
このようにして、熱容量の小さい半田付け個所から順に大きい個所へと半田付けを行うことにより、半田噴流を安定化させ半田付け品質を確保できる。
半田検査機23から取得した検査結果で、ランド32とリード43との半田付け個所において、半田不足による半田付け不良が発生した場合の動作を、図6で説明する。
【0034】
半田検査機23での測定結果である半田付け形状寸法測定データから、半田付け終了位置付近で半田少となっていることがノズル動作決定手段16で判明した場合、次回の同一個所の半田付け時にノズル動作決定手段16は、図6(a)に示すように半田付け開始位置においてノズル51を、仮想線で示す通常高さよりも規定高さ(例えば1.0mm)だけ高い位置に上昇させると共に、この1.0mmだけ通常よりも高い上昇位置のままで半田付け終了位置までノズル51を水平移動させる。そして、通常の待機時間だけノズル51を半田付け終了位置に保持した後に、半田噴流52がプリント基板30に接触しない位置に向かってノズル51の下降を開始させることで、半田不足の半田付け不良を改善する。
【0035】
または、図6(b)に示すように次回の同一個所の半田付け時に、半田付け開始位置においてノズル51を、実線で示す通常高さに上昇させる。そして水平移動して仮想線で示す通常の終了位置に到着したノズル51を、通常の待機時間よりも規定時間(例えば+0.1秒)だけ長く同一位置に待機させてから、半田噴流52がプリント基板30に接触しない位置に向かってノズル51の下降を開始させることで、半田不足の半田付け不良を改善する。
【0036】
上記の説明では、半田不足による半田付け不良が発生した場合には、ノズル51を通常の高さよりも高く上昇させることで半田不良を防止したが、ノズル51の高さは通常高さのままでノズル動作決定手段16が半田検査機23から取得できる半田の測定結果に応じて半田噴流52の高さを補正することによっても半田不良を未然に防止できる。具体的には、ノズル動作決定手段16が半田不足による半田付け不良と判定した場合には、次回の同一の半田付け個所については、ノズル51を通常高さに上昇させた場合の半田噴流52の高さを、半田不足の程度に応じて通常高さよりも高くするようにデータを補正する。この補正した半田噴流52の高さで半田付け終了位置までノズル51を水平移動させる。また、このような半田噴流高さと半田噴流速度の関係は、ノズル毎に異なるため、ノズル動作決定手段16はそれぞれに変換式を準備して算出する。
【0037】
上記の説明では、半田結果に応じてノズル51の高さまたは半田噴流52の高さを制御して半田不良を防止したが、半田結果に応じてノズル51の高さならびに半田噴流52の高さの両方を適正に制御して半田不良を防止することもできる。
【0038】
ランド32とリード43の半田付け箇所で基板反りが発生した場合の動作を、図7(a)(b)で説明する。
プリント基板30が図7(a)に示すように上方向きに反っている場合には、ノズル51の上昇高さが通常のままでは、半田噴流52と、半田付け個所のランド32とリード43との接触が不足する。そのため、ノズル高さ補正手段17が、基板反りセンサ24から取得した基板反り情報から上方向きに1.0mm反っていると判定した場合には、ノズル高さ補正手段17が、半田付け開始位置のノズル51を、図7(b)に示すように通常の高さよりもプリント基板30の反り量に応じて、ここでは1.0mmだけ高く上昇させることで、半田不良を未然に防止する。
【0039】
なお、基板反りセンサ24が、演算装置10に付属しない場合には、別の装置から、基板反りの情報を得て補正することもできる。最もよいのは、半田付けする位置での基板の反りを基板反りセンサ24で測定することである。
【0040】
以上のように、基板設計CADシステム21と部品情報システム22から取得した設計情報である、ランド情報D1および部品情報D2をベースに、基準となるNCデータを短時間で作成することができることを説明した。さらに、半田検査機23,基板反りセンサ24の測定装置から取得した結果をNCデータに反映することで、高品質な半田付けを短時間で実現するNCデータを作成でき、半田付け個所の品質を高く保ちつつ、生産時間を短縮できる。
【0041】
上記の説明では、プリント基板30が上方向きに反っていると判定した場合には、ノズル51を通常の高さよりも高く上昇させることで半田不良を防止したが、基板反りセンサ24から取得できる基板反り情報を、ノズル高さ補正手段17へ図1に実線で示したように入力するのに代わって、基板反りセンサ24から取得できる基板反り情報を図1に仮想線で示したようにノズル動作決定手段16に入力して、ノズル動作決定手段16が基板反りセンサ24から取得できる基板反り情報に応じて半田噴流52の高さを補正することによっても半田不良を未然に防止できる。具体的には、ノズル動作決定手段16が基板反りセンサ24から取得した半田付け個所の基板反り情報が、上方へ反っているとの内容である場合、ノズル51を通常高さに上昇させた場合の半田噴流52の高さを、基板反りセンサ24から取得した基板反り量に応じて通常高さよりも高くするようにデータを補正する。この補正した半田噴流52の高さで半田付け終了位置までノズル51を水平移動させる。そして、通常の待機時間だけノズル51を半田付け終了位置に保持した後に、半田噴流52がプリント基板30に接触しない位置に向かってノズル51の下降を開始させながら、半田噴流速度を指定速度に戻すことで、半田不足の半田付け不良を改善する。また、このような半田噴流高さと半田噴流速度の関係は、ノズル毎に異なるため、ノズル動作決定手段16それぞれに変換式を準備して算出する。このように基板反り情報にかかわらずにノズル51の高さは通常高さで制御し、基板反り情報に応じて半田噴流52の高さを制御する場合には、図1に示したノズル高さ補正手段17は不要であって、ノズル動作決定手段16の出力がNCデータ出力手段18に供給される。
【0042】
上記の説明では、基板反り情報に応じてノズル51の高さまたは半田噴流52の高さを制御して半田不良を防止したが、ノズル動作決定手段16とノズル高さ補正手段17が基板反りセンサ24から取得し、基板反りの状況に応じてノズル51の高さならびに半田噴流52の高さの両方を適正に制御して半田不良を防止することもできる。
【0043】
以上のように、基板設計CADシステム21と部品情報システム22から取得した設計情報である、ランド情報D1および部品情報D2をベースに、基準となるNCデータを短時間で作成できる。さらに、半田検査機23,基板反りセンサ24の測定装置から取得した結果をNCデータに反映することで、高品質な半田付けを短時間で実現するNCデータを作成でき、半田付け個所の品質を高く保ちつつ、生産時間を短縮できる。
【0044】
上記の説明では、半田付け終了位置に到着したノズル51を、次の半田付け個所に移動する際には、半田噴流52がプリント基板30に接触しないように下降させてから水平移動して、半田付け開始位置で上昇させたが、次の半田付け位置との間に障害となるものが無いような場合には、次の半田付け個所に移動する際にノズル51を下降させずに次の半田付け開始位置へ水平移動させることによって、より迅速な半田付けを実現できる。
【0045】
上記の各実施の形態では、演算装置10は、ランド情報D1を基板設計CADシステム21から取得し、部品情報D2を部品情報システム22から取得したが、ランド情報D1を実装エンジニアリングシステムから取得したり、部品情報D2を実装エンジニアリングシステム、実装機NCデータ、検査機データから取得することもできる。
【0046】
ここで、実装エンジニアリングシステムはCADデータを入力とし、基板配線ルール、部品隣接干渉などのチェックを行い、生産前に基板および部品の課題を抽出するシステムである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、各種電子機器の生産性の向上と、高品質な半田付けに寄与できる。
【符号の説明】
【0048】
10 演算装置
11 ランド情報取得手段
12 部品情報取得手段
13 熱容量算出手段
14 ノズル種別決定手段
15 半田噴流速度算出手段
16 ノズル動作決定手段
17 ノズル高さ補正手段
18 NCデータ出力手段
21 基板設計CADシステム
22 部品情報システム
23 半田検査機
24 基板反りセンサ
25 半田装置
30 プリント基板
D1 ランド情報
D2 部品情報
31,32,33 ランド
42,44,46 部品
41,43,45 リード部
51 ノズル
52 半田噴流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから噴出する半田によって部品を基板に実装するポイント半田付け用のNCデータを作成する方法であって、
前記基板のCADデータから半田付け個所のランド情報と実装する部品情報とを取得する情報取得工程と、
前記ランド情報と前記部品情報から前記半田付け個所の熱容量を算出する熱容量算出工程と、
前記熱容量から半田付け条件を算出する半田付け条件算出工程と
からなる
ポイント半田NCデータ作成方法。
【請求項2】
前記半田付け条件算出工程で算出した半田付け条件にて、前記基板に半田付けした後、半田付け個所を検査し、その検査結果に基づいて、前記半田付け条件を修正する第1修正工程を、さらに含む
請求項1記載のポイント半田NCデータ作成方法。
【請求項3】
前記半田付け条件算出工程では、前記ランド情報から半田を噴流するノズル種類を決定する
請求項1または2記載のポイント半田NCデータ作成方法。
【請求項4】
前記熱容量算出工程では、前記ランドの熱容量と部品の熱容量とから熱容量を求める
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のポイント半田NCデータ作成方法。
【請求項5】
さらに、前記基板の反りを測定し、その情報に基づき、ノズルの高さと半田噴流速度の内の少なくとも一方を補正する第2修正工程を、さらに含む
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のポイント半田NCデータ作成方法。
【請求項6】
前記検査結果が、予め決められた不良モードにより分類され、前記不良モードに基づいて前記半田付け条件を修正する前記第1修正工程である
請求項2〜請求項5のいずれかに記載のポイント半田NCデータ作成方法。
【請求項7】
前記部品情報がない部品に関しては、前記部品を実装するランド情報から熱容量を計算する
請求項1〜請求項6のいずれかに記載のポイント半田NCデータ作成方法。
【請求項8】
前記半田付け条件算出工程では、前記ノズルの種類と、前記熱容量と、プリヒート温度とから半田噴流速度と半田付け時間を算出する
請求項1〜請求項7のいずれかに記載のポイント半田NCデータ作成方法。
【請求項9】
前記半田付け条件算出工程では、前記熱容量の順番で半田付けする順番を決定する
請求項1〜請求項5のいずれかに記載のポイント半田NCデータ作成方法。
【請求項10】
前記半田付け条件算出工程では、前記ランド形状に応じて、前記ノズル角度を決定する
請求項1〜請求項6のいずれかに記載のポイント半田NCデータ作成方法。
【請求項11】
半田付けによって部品の実装を受ける基板のCADデータから半田付け個所のランド情報と実装する部品情報とを取得する情報取得部と、
前記ランド情報と前記部品情報から前記半田付け個所の熱容量を算出する熱容量算出部と、
前記熱容量から半田噴流速度と半田付け時間を算出する半田付け条件算出部と
からなる
自動半田装置。
【請求項12】
さらに、前記半田付け条件部での、半田付け条件にて、前記基板に半田付けした後、半田付け個所の検査装置の結果に基づいて前記半田付け条件を修正する条件修正部を含む
請求項11記載の自動半田装置。
【請求項13】
さらに、前記基板の反りを測定する基板反りセンサを有し、前記基板反りセンサの情報に基づき、ノズルの高さと半田噴流速度の内の少なくとも一方を、前記条件修正部で補正する
請求項12記載の自動半田装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−228635(P2011−228635A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21264(P2011−21264)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】