説明

ポケット形成機構及びPTPシートの製造装置

【課題】包装用フィルムの伸長や当該伸長に起因する不具合を抑制できるポケット形成機構、及び、当該ポケット形成機構を具備するPTPシートの製造装置を提供する。
【解決手段】コントローラ70は、第1及び第2サーボモータ52,62を駆動制御し、包装用フィルム3を間欠的に搬送する。包装用フィルム3の搬送時において、コントローラ70は、送りローラ15によるフィルム送り量に対する供給ローラ14によるフィルム送り量の比率が1よりも小さくなるように、第1及び第2サーボモータ52,62を駆動制御する。一方、包装用フィルム3の停止時(搬送動作のインターバル)において、コントローラ70は、第2サーボモータ62を所定角度だけ逆方向へ回転駆動し、両ローラ14,15間における包装用フィルム3の弛みを取り除く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTPシートの製造装置に係り、特に、PTPシートの製造において包装用フィルムにポケット部を形成するためのポケット形成機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、PTPシートは、例えば熱可塑性樹脂フィルムよりなり複数のポケット部を備えた包装用フィルムと、錠剤が収容されたポケット部を塞ぐようにして包装用フィルムに取着されたアルミニウム製のカバーフィルムとを有している。
【0003】
従来、図5に示すように、PTPシートの製造装置100は、その上流側に、ポケット部を形成するためのポケット形成機構102を具備してなる。
【0004】
ポケット形成機構102は、包装用フィルム103を下流側へと間欠的に搬送するための供給ローラ104と、搬送された包装用フィルム103にポケット部を形成するためのポケット部形成装置105と、ポケット部の形成された包装用フィルム103をさらに下流側へと搬送するための送りローラ106とを備えている。該ポケット部形成装置105は、包装用フィルム103を加熱軟化するための加熱装置107と、成形凸部を押し付けてポケット部を成形するための成形装置108とを備えている。
【0005】
ポケット部が形成される際には、まず、送りローラ106が駆動され、帯状の包装用フィルム103が所定量送り出される。これにより、加熱装置107において、離間した上部ヒータプレートと下部ヒータプレートとの間に、包装用フィルム103が搬送される。そして、包装フィルム103の搬送が停止されている間に、両ヒータプレートに挟まれることで、包装用フィルム103が加熱軟化される。次に、加熱軟化された包装用フィルム103は、成形装置108へと搬送される。該成形装置108では、上型とベースとによって包装用フィルム103が挟まれる。さらに、包装用フィルム103に向かって、成形凸部を突出させることで、ポケット部が形成される。
【0006】
ところで、このようなポケット形成機構9において、上記供給ローラ104にブレーキローラを採用するものがある(例えば、特許文献1参照)。これにより、包装用フィルム103の搬送に際し、供給ローラ104と送りローラ106との間における包装用フィルム103に対し、テンションを付与することができる。その結果、包装用フィルム103の搬送が安定させられ、包装用フィルム103の弛みや蛇行等が抑制されるようになっている。
【特許文献1】特開2005−306402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しなしながら、上記供給ローラ104にブレーキローラを採用してテンションを付与する場合、従動回転する供給ローラ104の回転開始時における摩擦力が大きくなるため、搬送開始時におけるテンションが高くなるおそれがある。例えば、成形装置108によりポケット部が成形された直後の包装用フィルム103は、軟化されて伸長されやすい状態となっている。このような状態で、必要以上にテンションが付与されると、包装用フィルム103の長手方向において伸長が生じてしまうおそれがあり、形成されたポケット部の変形等の不具合が懸念される。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、包装用フィルムの伸長や当該伸長に起因する不具合を抑制できるポケット形成機構、及び、当該ポケット形成機構を具備するPTPシートの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0010】
手段1.長尺状の包装用フィルムに対し、被収容物を収容するためのポケット部を形成するポケット部形成手段と、
該ポケット部形成手段の上流側に配置され、前記包装用フィルムを前記ポケット部形成手段へ搬送するための上流側搬送手段と、
前記ポケット部形成手段の下流側に配置され、前記ポケット部形成手段にて前記ポケット部が形成された包装用フィルムを、さらに下流側へ搬送するための下流側搬送手段と、
前記両搬送手段を駆動制御する駆動制御手段とを備えたポケット形成機構であって、
前記駆動制御手段は、前記包装用フィルムの搬送時において、前記上流側搬送手段における前記包装用フィルムの送り量と前記下流側搬送手段における前記包装用フィルムの送り量との間に一定の対応関係が維持されるように前記両搬送手段を駆動制御する第1制御、及び、前記ポケット部形成手段による前記ポケット部の形成に先立って、前記一定の対応関係を維持することなく、前記両搬送手段のうち少なくとも一方を駆動制御し、前記両搬送手段間における前記包装用フィルムの弛みを取り除く第2制御を行うことを特徴とするポケット形成機構。
【0011】
手段1では、ポケット部形成手段の上流側に配置される上流側搬送手段、及び、下流側に配置される下流側搬送手段、の両搬送手段が駆動制御手段によって駆動制御される。ここで特に、駆動制御手段による第1制御により、包装用フィルムの搬送時において、上流側搬送手段における包装用フィルムの送り量と下流側搬送手段における包装用フィルムの送り量との間に一定の対応関係が維持される。したがって、包装用フィルムに対して付与されるテンションが一定となり、例えば搬送開始時においてテンションが高くなる等のテンションのばらつきがなくなる。これにより、包装用フィルムの伸長を抑制することができる。
【0012】
ただし、ポケット部の形成にあたり包装用フィルムが加熱されることから、一定のテンションを付与しつつ搬送を行ったとしても、両搬送手段間において、包装用フィルムが伸長し弛みが生じるおそれがある。この点、手段1によれば、駆動制御手段による第2制御により、ポケット部の形成に先立って、両搬送手段のうち少なくとも一方が駆動制御され、両搬送手段間における包装用フィルムの弛みが取り除かれる。これにより、包装用フィルムの伸長に起因する不具合を抑制することができる。
【0013】
手段2.手段1に記載のポケット形成機構において、
前記一定の対応関係は、前記下流側搬送手段における前記包装用フィルムの送り量に対して、前記上流側搬送手段における前記包装用フィルムの送り量が小さく設定された関係であることを特徴とするポケット形成機構。
【0014】
上記手段1では例えば、下流側搬送手段における包装用フィルムの送り量と上流側搬送手段における包装用フィルムの送り量とを1対1の関係とする構成が含まれる。すなわち、両搬送手段を完全同期させて駆動制御する構成としてもよい。もっとも、両搬送手段を完全同期させた場合、包装用フィルムの自重等によって、僅かではあるが、包装用フィルムに伸長が生じるおそれがある。
【0015】
この点、手段2によれば、上流側搬送手段における包装用フィルムの送り量に対して下流側搬送手段における包装用フィルムの送り量が小さく設定されているため、包装用フィルムの自重等による伸長によって生じた弛みまで取り除くことができ、搬送時における包装用フィルムの伸長を確実に抑制することができる。
【0016】
なお、現実的には、包装用フィルムの自重等によって生じる弛みを取り除く程度のテンションが付与されればよく、「下流側搬送手段における包装用フィルムの送り量が幾分小さく設定された関係であること」あるいは「「下流側搬送手段における包装用フィルムの送り量が僅かに小さく設定された関係であること」としてもよい。
【0017】
手段3.長尺状の包装用フィルムに対し、被収容物を収容するためのポケット部を形成するポケット部形成手段と、
該ポケット部形成手段の上流側に配置され、前記包装用フィルムを前記ポケット部形成手段へ搬送するための上流側搬送手段と、
前記ポケット部形成手段の下流側に配置され、前記ポケット部形成手段にて前記ポケット部が形成された包装用フィルムを、さらに下流側へ搬送するための下流側搬送手段と、
前記両搬送手段を駆動制御する駆動制御手段とを備えたポケット形成機構であって、
前記駆動制御手段は、前記包装用フィルムの搬送時において、前記両搬送手段をほぼ同期させて駆動制御する第1制御、及び、前記ポケット部形成手段による前記ポケット部の形成に先立って、前記両搬送手段を同期させず、前記両搬送手段のうち少なくとも一方を駆動制御し、前記両搬送手段間における前記包装用フィルムの弛みを取り除く第2制御を行うことを特徴とするポケット形成機構。
【0018】
ここで「両搬送手段をほぼ同期させて駆動制御する」とあるのは、両搬送手段が完全同期させられる場合だけでなく、上記手段2の「なお書き」に示した構成を含める趣旨である。本手段3によっても、上記構成と同様の効果が奏される。
【0019】
手段4.手段1乃至3のいずれかに記載のポケット形成機構において、
前記駆動制御手段は、本ポケット形成機構が稼動停止状態とされてから再び稼動状態とされた場合における最初の前記ポケット部形成手段による前記ポケット部の形成に先立って、前記第2制御を行うことを特徴とするポケット形成機構。
【0020】
ポケット形成機構の稼動が停止されると、加熱された包装用フィルムが両搬送手段間において、自重によって伸長するおそれがあり、結果的に、包装用フィルムに弛みが生じるおそれがある。
【0021】
この点、手段4によれば、本ポケット形成機構が稼動停止状態とされてから再び稼動状態とされた場合における最初のポケット部の形成に先立って、第2制御、すなわち包装用フィルムの弛みを取り除く制御が行われるため、装置の稼動停止による包装用フィルムの伸長に起因する不具合をも抑制することができる。
【0022】
手段5.手段1乃至4のいずれかに記載のポケット形成機構において、
前記駆動制御手段は、
前記上流側搬送手段を駆動するための上流側駆動手段と、
前記下流側搬送手段を駆動するための下流側駆動手段と、
前記上流側及び下流側駆動手段を駆動制御する制御手段とを有していることを特徴とするポケット形成機構。
【0023】
例えば、手段5に示すように、上記駆動制御手段は、上流側駆動手段、下流側駆動手段、及び、制御手段にて構成することができる。このようにすれば、構造がさほど複雑にならず、コストの増大といった不具合も回避できる。
【0024】
手段6.手段5に記載のポケット形成機構において、
前記上流側駆動手段及び下流側駆動手段は、それぞれエンコーダの搭載されたサーボモータよりなることを特徴とするポケット形成機構。
【0025】
また、例えば手段6のように構成することで、上記両駆動手段の構造の複雑化を招くこともなく、比較的簡易な構成でもって上記各作用効果を奏せしめることができる。
【0026】
なお、以上はポケット形成機構の発明として説明してきたが、次に示すように、上記ポケット形成機構を具備してなるPTPシートの製造装置の発明として実現することもできる。
【0027】
手段7.手段1乃至6のいずれかに記載のポケット形成機構を具備してなるPTPシートの製造装置。
【0028】
手段7に記載のPTPシートの製造装置においても上記構成と同様の効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
図1(a)乃至(c)に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた包装用フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして包装用フィルム3に取着されたカバーフィルム4とを有している。包装用フィルム3は、例えば、PP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の比較的硬質で所定の剛性を有する熱可塑性樹脂材料によって構成され、透明または半透明を呈している。カバーフィルム4は、アルミニウムによって構成されている。また、各ポケット部2には錠剤5が1つずつ収容されている。本実施形態において、PTPシート1は、帯状の包装用フィルム3及びカバーフィルム4から形成された帯状のPTPフィルム6がカット或いは打抜かれることで、シート状に製造される。
【0031】
次に、上記PTPシート1を製造するための「PTPシートの製造装置」としてのPTP包装機8の概略について説明する。
【0032】
図2に示すように、帯状の包装用フィルム3は、最上流側においてロール状に巻回されており、間欠的に搬送されるようになっている。包装用フィルム3の搬送経路に沿って、「上流側搬送手段」としての供給ローラ14、加熱装置11、成形装置12、及び、「下流側搬送手段」としての送りローラ15が順に設けられている。加熱装置11及び成形装置12によって、「ポケット部形成手段」としてのポケット部形成装置13が構成されている。
【0033】
ポケット部形成装置13においては、加熱装置11によって加熱されて比較的柔軟になった包装用フィルム3に対し、成形装置12によってポケット部2が成形される。なお、このポケット部2の成形は、供給ローラ14及び送りローラ15による包装用フィルム3の搬送動作間のインターバルに行われる。
【0034】
ポケット部2が形成された包装用フィルム3の搬送経路に沿って、ポケット部2に錠剤5を自動的に充填する錠剤投入装置16、検査装置17、フィルム受けローラ18が配設されている。錠剤投入装置16は、所定間隔毎にシャッタを開くことで錠剤5を落下させるものであり、このシャッタ開放動作に伴って各ポケット部2に錠剤5が投入される。
【0035】
検査装置17は、錠剤5が各ポケット部2に確実に充填されているか否か、また錠剤5の異常の有無、異物混入の有無等の検査を行うためのものである。該検査装置17は、ポケット部2の開口側からの検査を行う。
【0036】
一方、帯状に形成されたカバーフィルム4は、最上流側においてロール状に巻回されている。ロール状に巻回されたカバーフィルム4の引出し端は、前記フィルム受けローラ18の方へと案内されている。フィルム受けローラ18には、加熱ローラ19が圧接可能となっており、両ローラ18,19間に包装用フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれるようになっている。そして、包装用フィルム3及びカバーフィルム4が、両ローラ18,19間を加熱圧接状態で通過することで、包装用フィルム3にカバーフィルム4が貼着され、これにより、錠剤5が各ポケット部2に充填されたPTPフィルム6が製造される。
【0037】
フィルム受けローラ18の下流ではPTPフィルム6の搬送経路に沿って、錠剤等の異常の有無、異物混入の有無等の検査を行うための検査装置21が配設されている。この検査装置21はポケット部2の突出面側からの検査を行うものである。従って、上記検査装置17による検査と相俟って、PTPフィルム6の表裏両面側からの検査を実行することができるようになっている。なお、各検査装置17,21によって不良品判定された場合、その不良品判定となったPTPシートは、図示しない不良シート排出機構によって別途排出される。
【0038】
検査装置21の下流ではPTPフィルム6の搬送経路に沿って、スリット成形装置22、刻印装置23及びシート打抜装置24が順に配設されている。スリット成形装置22は、PTPフィルム6の所定位置にスリットを形成する機能を有する。刻印装置23はPTPフィルム6の所定位置にロットナンバー等の識別情報を示す刻印を付す機能を有する。シート打抜装置24は、PTPフィルム6をPTPシート1単位に打抜く機能を有する。前記シート打抜装置24の下側には、シート打抜装置24から落下する端材25を貯留するためのスクラップ用ホッパ26が設けられている。
【0039】
また、打抜かれたPTPシート1を搬送するためのアーム機構27、コンベア28等が設けられており、PTPシート1は完成品用ホッパ29に搬送されるようになっている。
【0040】
本実施形態は、上記ポケット部形成装置13、上記供給ローラ14、及び上記送りローラ15等を具備してなるポケット形成機構9に特徴を有している(図3参照)。
【0041】
ポケット形成機構9のうち部形成装置13は、上述したように上流側に設けられた加熱装置11と、下流側に設けられた成形装置12とを具備してなる。
【0042】
図3に示すように、成形装置12は、下型31及び上型32を備えている。下型31及び上型32は、ポケット部2の形状や配置等に応じて交換可能となっている。下型31は、ポケット部2の位置に対応する複数の孔33を備えたベース34と、孔33に対し出没可能に設けられた成形凸部35とを備えている。ベース34は、包装用フィルム3の下面に沿って固定されており、成形凸部35は、図示しないアクチュエータにより上下動可能に設けられている。また、上型32は、前記孔33に対応する筒状の凹部36を備えており、包装用フィルム3を挟持できるように、前記ベース34に対して接離方向、つまり、上下方向へ移動可能に設けられている。かかる構成の下、上型32とベース34とで挟まれた包装用フィルム3に対して成形凸部35が突出させられることで、ポケット部2が形成されるようになっている。
【0043】
また、図3に示すように、加熱装置11は、包装用フィルム3の上側に設けられる第1加熱手段37と下側に設けられる第2加熱手段38とを備えている。本実施形態の加熱装置11は、包装用フィルム3の全面加熱及び部分加熱の双方を実施可能に構成されている。全面加熱をする場合には、第1加熱手段37及び第2加熱手段38にそれぞれ全面加熱用の加熱上型39a及び加熱下型40aを装着する。全面加熱用の加熱上型39a及び加熱下型40aは、当該対向面が平坦な加熱面42a,43aとなっている。一方、部分加熱をする場合には、前記全面加熱用の加熱上型39a及び加熱下型40aに代えて、図4に示す部分加熱用の加熱上型39b及び加熱下型40bを装着する。部分加熱用の加熱上型39b及び加熱下型40bは、ポケット部2に対応する位置に複数の突出部42b,43bをそれぞれ備えている。突出部42b,43bはポケット部2の外周形状に対応しており、略円柱状をなしている。図3に示した第1加熱手段37及び第2加熱手段38には、図示しないヒータが内蔵されており、加熱上型39a,39b及び加熱下型40a,40bがそれぞれ、ヒータによって加熱されるようになっている。
【0044】
さらに、加熱装置11は、第1加熱手段37と第2加熱手段38とを接離方向に往復移動させるための図示しない移動手段を備えている。この移動手段によって、部分加熱時には、第1及び第2加熱手段37,38の双方が往復移動させられ、全面加熱時には、第1加熱手段37のみが往復移動させられるようになっている。なお、全面加熱時には、第2加熱手段38に装着された加熱下型40aの加熱面43aが、上記成形装置12を構成する下型31のベース34上面と同じ高さとなる位置に固定されるようになっている。
【0045】
以上、加熱装置11及び成形装置12の詳細について説明したが、包装用フィルム3は、加熱装置11、成形装置12の順に、上記ポケット部形成装置13を通過させられる。この包装用フィルム3の搬送を行うのが、上流側に配置された供給ローラ14及び、下流側に配置された送りローラ15である。なお、送りローラ15の表面には、ポケット部2に対応させて複数の凹部15aが形成されている。
【0046】
図3に示すように、ポケット形成機構9は、さらに、上記送りローラ15を駆動する「下流側駆動手段」としての下流側駆動装置51と、上記供給ローラ14を駆動する「上流側駆動手段」としての上流側駆動装置61と、両駆動装置51,61を制御する「制御手段」としてのコントローラ70とを備えている。つまり、本実施形態においては、両駆動装置51,61、及びコントローラ70が「駆動制御手段」を構成している。
【0047】
下流側駆動装置51は、第1サーボモータ52と、第1エンコーダ53とを備えている。第1サーボモータ52の出力軸は、送りローラ15の回転軸に連結されている。つまり、送りローラ15は、第1サーボモータ52の出力軸の回転に伴って回転するようになっている。また、第1サーボモータ52には、第1エンコーダ53が直接的に搭載されている。
【0048】
上流側駆動装置61は、第2サーボモータ62と、第2エンコーダ63とを備えている。第2サーボモータ62の出力軸は、供給ローラ14の回転軸に連結されている。つまり、供給ローラ14は、第2サーボモータ62の出力軸の回転に伴って回転するようになっている。また、第2サーボモータ62には、第2エンコーダ63が直接的に搭載されている。
【0049】
コントローラ70は、いわゆるコンピュータシステムにて構成されており、上記両駆動装置51,61を制御する。具体的には、両エンコーダ53,63からの信号が入力されるようになっており、この信号に基づいて、両サーボモータ52,53を駆動制御する。
【0050】
なお、上記両エンコーダ53,63は、いわゆるインクリメンタルタイプであってもアブソリュートタイプであってもよいが、少なくとも供給ローラ14及び送りローラの回転角度に対応する信号を出力するようになっている。これにより、コントローラ70は、両ローラ14,15の回転角度位置を常に把握できるようになっている。
【0051】
次に、ポケット形成機構9における包装用フィルム3の搬送態様について説明する。
【0052】
コントローラ70は、第1及び第2サーボモータ52,62を駆動制御し、包装用フィルム3を間欠的に搬送する。そして、搬送動作のインターバルにおいて、上記加熱装置11による包装用フィルムの加熱、及び、上記成形装置12によるポケット部2の成形が行われる。
【0053】
包装用フィルム3の搬送時において、コントローラ70は、第1サーボモータ52の回転角度位置を、第1エンコーダ53の信号から把握する。詳しくは、送りローラ15による包装用フィルム3の送り量の瞬間値(すなわち送りローラ15の回転速度)を取得する。また、コントローラ70は、第2サーボモータ62の回転角度位置を、第2エンコーダ63の信号から把握する。詳しくは、供給ローラ14による包装用フィルム3の送り量の瞬間値(すなわち供給ローラ14の回転速度)を取得する。そして、送りローラ15によるフィルム送り量に対する供給ローラ14によるフィルム送り量の比率が1よりも僅かに小さくなるように(例えば0.98など)、第1及び第2サーボモータ52,62を駆動制御する(第1制御)。換言すれば、供給ローラ14及び送りローラ15をほぼ同期させるように、第1及び第2サーボモータ52,62を駆動制御する。具体的には、第1サーボモータ52(送りローラ15)の回転速度に対応させて、第2サーボモータ62(供給ローラ14)の回転速度を調整したり、反対に、第2サーボモータ62(供給ローラ14)の回転速度に対応させて、第1サーボモータ52(送りローラ15)の回転速度を調整したりするという具合である。これにより、上記両ローラ14,15におけるフィルム送り量の比率が維持される(各フィルム送り量の間に一定の対応関係が維持される)。
【0054】
一方、包装用フィルム3の停止時(搬送動作のインターバル)において、コントローラ70は、第2サーボモータ62の回転角度位置を第2エンコーダ63の信号から把握することにより、第2サーボモータ62を所定角度だけ逆方向へ回転駆動する。これにより、両ローラ14,15間に生じる包装用フィルム3の弛みを取り除く(第2制御)。
【0055】
また、この包装用フィルム3の弛みを取り除くための制御(第2制御)は、PTPシートの製造装置8が稼動停止状態とされてから再び稼動状態とされた場合における最初のポケット部2の形成に先立つタイミングにおいても行われる。この場合、PTPシートの製造装置8の稼動停止によって包装用フィルム3の弛みが大きくなっていることも考えられるため、上記所定角度(逆回転させる角度)が若干大きく設定される。
【0056】
以上詳述したように、本実施形態によれば、ポケット部形成装置13の上流側に配置される供給ローラ14、及び、下流側に配置される送りローラ15の両方が、各サーボモータ52、62を介しコントローラ70によって駆動制御される。ここで特に、コントローラ70による上記第1制御により、両ローラ14,15におけるフィルム送り量の比率が維持される(各フィルム送り量の間に一定の対応関係が維持される)。これにより、包装用フィルム3に対して付与されるテンションが一定となり、例えば搬送開始時においてテンションが高くなる等のテンションのばらつきがなくなる。結果として、包装用フィルムの伸長を抑制することができる。しかも、上記第1制御では、送りローラ15によるフィルム送り量に対する供給ローラ14によるフィルム送り量の比率が1よりも僅かに小さくなっている。これにより、包装用フィルム3の搬送時における伸長によって生じた弛みまで取り除くことができ、包装用フィルム3の伸長を確実に抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、コントローラ70による上記第2制御により、ポケット部2の形成に先立つ搬送動作のインターバルにおいて、第2サーボモータ62が逆方向へ回転駆動され、両ローラ14,15間における包装用フィルム3の弛みが取り除かれる。これにより、包装用フィルム3の伸長に起因する不具合を抑制することができる。
【0058】
さらにまた、本実施形態によれば、この包装用フィルム3の弛みを取り除くための制御(第2制御)は、PTPシートの製造装置8が稼動状態とされた場合における最初のポケット部2の形成に先立つタイミングにおいても行われる。これにより、稼動停止時における包装用フィルム3の伸長に起因する不具合をも抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態では、両ローラ14,15を駆動制御するための構成が、下流側駆動装置51、上流側駆動装置61、及び、コントローラ70からなっている。加えて、両駆動装置51,61は、エンコーダ53,63の搭載されたサーボモータ52,62として具現化されている。これにより、構造の複雑化を招くこともなく、比較的簡易な構成でもって上記効果を奏せしめることができる。
【0060】
なお、上記実施形態は一例として挙げられるものであり、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々なる態様で実施可能である。例えば次のように実施してもよい。
【0061】
(a)上記実施形態のポケット形成機構9においては、包装用フィルム3の搬送に供給ローラ14及び送りローラ15を採用していた。これに対し、両ローラ14,15のうち少なくとも一方をチャック送り機構で構成することとしてもよい。例えば供給ローラ14においては、送りローラ15のような凹部15aを備えていないため、包装用フィルム3の滑りが生じる可能性も否めない。この点、チャック送り機構を採用することにより、このような包装用フィルム3が滑るという不具合を払拭することができる。なお、チャック送り機構を採用する場合には、駆動手段としてリニアモータ等を用いればよい。
【0062】
(b)駆動手段として、サーボモータ52,62に代えて、インバータモータやDD(ダイレクトドライブ)モータ等、他のモータを採用することとしてもよい。また、モータ以外の他の駆動手段を用いてもよい。
【0063】
(c)上記実施形態では両ローラ14,15をそれぞれ別のサーボモータ52,62で駆動することとしているが、一方のローラ(例えば供給ローラ14)のみをサーボモータで駆動し、駆動されるローラと他方のローラとをタイミングベルトで連結するようにしてもよい。この場合、第2制御における供給ローラ14の逆方向の回転駆動に対して送りローラ15が回転駆動されないような機構、例えば逆方向の回転駆動に対して送りローラ15が空回りする機構や送りローラ15への駆動力を切断する機構(クラッチ機構)等を備えるものとすればよい。
【0064】
(d)上記実施形態では、第2制御として、供給ローラ14を逆方向へ所定角度だけ回転駆動するようにしていた。これに対し、供給ローラ14を停止させた状態で、送りローラ15を正方向へ所定角度だけ回転駆動するようにしてもよい。このような送りローラ15の回転駆動は、上記搬送動作のインターバルに行うようにしてもよいし、搬送動作の終了に際し、先に供給ローラ14を停止させることで行うようにしてもよい。また、送りローラ15を正方向へ回転駆動すると共に、供給ローラ14を逆方向へ回転駆動するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】(a)はPTPシートの外観を示す斜視図であり、(b)はPTPシートが打抜かれる前のPTPフィルムの外観を示す斜視図であり、(c)はPTPシートの部分拡大断面図である。
【図2】PTP包装機の概略構成を説明するための模式図である。
【図3】ポケット部形成機構の概略構成を示す断面模式図である。
【図4】部分加熱用の加熱上型及び加熱下型を示す断面模式図である。
【図5】従来のPTP包装機の概略構成を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0066】
1…PTPシート、2…ポケット部、3…包装用フィルム、8…PTP包装機、9…ポケット形成機構、11…加熱装置、12…成形装置、13…ポケット形成装置、14…供給ローラ、15…送りローラ、51…下流側駆動装置、52…第1サーボモータ、53…第1エンコーダ、61…上流側駆動装置、62…第2サーボモータ、63…第2エンコーダ、70…コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の包装用フィルムに対し、被収容物を収容するためのポケット部を形成するポケット部形成手段と、
該ポケット部形成手段の上流側に配置され、前記包装用フィルムを前記ポケット部形成手段へ搬送するための上流側搬送手段と、
前記ポケット部形成手段の下流側に配置され、前記ポケット部形成手段にて前記ポケット部が形成された包装用フィルムを、さらに下流側へ搬送するための下流側搬送手段と、
前記両搬送手段を駆動制御する駆動制御手段とを備えたポケット形成機構であって、
前記駆動制御手段は、前記包装用フィルムの搬送時において、前記上流側搬送手段における前記包装用フィルムの送り量と前記下流側搬送手段における前記包装用フィルムの送り量との間に一定の対応関係が維持されるように前記両搬送手段を駆動制御する第1制御、及び、前記ポケット部形成手段による前記ポケット部の形成に先立って、前記一定の対応関係を維持することなく、前記両搬送手段のうち少なくとも一方を駆動制御し、前記両搬送手段間における前記包装用フィルムの弛みを取り除く第2制御を行うことを特徴とするポケット形成機構。
【請求項2】
請求項1に記載のポケット形成機構において、
前記一定の対応関係は、前記下流側搬送手段における前記包装用フィルムの送り量に対して、前記上流側搬送手段における前記包装用フィルムの送り量が小さく設定された関係であることを特徴とするポケット形成機構。
【請求項3】
長尺状の包装用フィルムに対し、被収容物を収容するためのポケット部を形成するポケット部形成手段と、
該ポケット部形成手段の上流側に配置され、前記包装用フィルムを前記ポケット部形成手段へ搬送するための上流側搬送手段と、
前記ポケット部形成手段の下流側に配置され、前記ポケット部形成手段にて前記ポケット部が形成された包装用フィルムを、さらに下流側へ搬送するための下流側搬送手段と、
前記両搬送手段を駆動制御する駆動制御手段とを備えたポケット形成機構であって、
前記駆動制御手段は、前記包装用フィルムの搬送時において、前記両搬送手段をほぼ同期させて駆動制御する第1制御、及び、前記ポケット部形成手段による前記ポケット部の形成に先立って、前記両搬送手段を同期させず、前記両搬送手段のうち少なくとも一方を駆動制御し、前記両搬送手段間における前記包装用フィルムの弛みを取り除く第2制御を行うことを特徴とするポケット形成機構。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のポケット形成機構において、
前記駆動制御手段は、本ポケット形成機構が稼動停止状態とされてから再び稼動状態とされた場合における最初の前記ポケット部形成手段による前記ポケット部の形成に先立って、前記第2制御を行うことを特徴とするポケット形成機構。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のポケット形成機構において、
前記駆動制御手段は、
前記上流側搬送手段を駆動するための上流側駆動手段と、
前記下流側搬送手段を駆動するための下流側駆動手段と、
前記上流側及び下流側駆動手段を駆動制御する制御手段とを有していることを特徴とするポケット形成機構。
【請求項6】
請求項5に記載のポケット形成機構において、
前記上流側駆動手段及び下流側駆動手段は、それぞれエンコーダの搭載されたサーボモータよりなることを特徴とするポケット形成機構。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のポケット形成機構を具備してなるPTPシートの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−261591(P2007−261591A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85048(P2006−85048)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】