説明

ポジショナ

【課題】基本機能を犠牲にすることなく、確実に、調節弁の開度制御の速応性や整定性などの制御性を向上させる。
【解決手段】供給電流Iが取り得る電流の範囲を複数の電流範囲に区分し、この電流範囲の区分毎に基本機能回路部7が実施する調節弁2の開度制御の制御形態(単ループ制御、二重ループ制御など)を定めたテーブルTB1をメモリ5に格納しておく。CPU4は、供給電流Iの実際値を検出し、基本機能回路部7に振り向けることが可能な余剰電流があるか否かを判断する。この場合、4mAを超える供給電流を余剰電流とみなし、その余剰電流を基本機能回路部7に配分するように、電流調整部8へ指令を送る。また、供給電流Iの区分に応じ、テーブルTB1に定められている制御形態で開度制御を実施するように、基本機能回路部7に指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上位側システムより一対の電線を介して電流の供給を受け、この供給電流の値に応じて調節弁の開度を制御するポジショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、調節弁に対してポジショナを設け、このポジショナによって調節弁の開度を制御するようにしている。このポジショナは、上位装置から送られてくる弁開度設定値と調節弁からフィードバックされてくる実開度値との偏差を求め、この偏差に所定の演算を施して得られる電気信号を制御出力として出力する制御部と、この制御部からの制御出力を空気圧信号に変換する電空変換器(EPM)と、この電空変換器が変換した空気圧信号を増幅し調節弁の駆動部へ出力するパイロットリレーと、調節弁の弁開度を検出し実開度値として制御部へ送る開度センサとを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のポジショナは、上位側システムより一対の電線を介して送られてくる4〜20mAの電流で動作するように設計されている。例えば、上位側システムより4mAの電流が送られてきた場合には調節弁の開度を0%とし、20mAの電流が送られてきた場合には調節弁の開度を100%とする。
【0004】
この場合、上位側システムからの供給電流Iは、4mA(下限電流値)から20mA(上限電流値)の範囲で変化するので、ポジショナ内のCPUや調節弁の開度制御を行う基本機能回路部(通信機能回路、弁開度制御機能回路、弁開度出力機能回路などを含む常時動作すべき回路部)を含む内部回路に必要な電流は、上位側システムから供給される電流値として常に確保することの可能な4mA以下に抑えられている。
【0005】
なお、この電流は最低動作電流と呼ばれ、例えば3.8mA程度とされる。また、この最低動作電流をIcとした場合、上位側システムからの供給電流Iのうち残りの電流Iv(Iv=I−Ic)は余剰電流とされ、自己の動作電源を生成する定電圧回路側に流れるのみで、CPUや基本機能回路部を含む内部回路には供給されない。
【0006】
図6に従来のポジショナの要部の構成を示す。同図において、1Aはポジショナ、2は調節弁である。ポジショナ1Aは、制御部11と、電空変換器12と、パイロットリレー13と、調節弁2の弁開度(バルブの開度)を検出する開度センサ14とを備えており、開度センサ14が検出する弁開度が調節弁2からの実開度値Xpvとして制御部11へフィードバックされるようになっている。
【0007】
ポジショナ1Aにおいて、制御部11は、上位側システム(図示せず)からの弁開度設定値Xspと開度センサ14からの実開度値Xpvとの偏差eを求め、この偏差eにPID制御演算を施して得られる電気信号を電空変換器12とパイロットリレー13とで構成される電空変換部15への制御出力MVとして出力する。なお、偏差eの算出は偏差算出部11aにおいて行われ、偏差eに対するPID制御演算はPID制御演算部11bで行われる。
【0008】
電空変換器12は、制御部11からの制御出力MVを空気圧信号(ノズル背圧)Pnに変換する。パイロットリレー13は、電空変換器12からの空気圧信号Pnを増幅し、空気圧Poとして調節弁2の駆動部2aへ出力する。これにより、駆動部2a内のダイアフラム室に空気圧Poの空気が流入し、調節弁2のバルブ2bの開度が調整される。なお、パイロットリレー13は、その主要な構成要素として、シリンダ13aとポペット弁13bとを備えている。
【0009】
このポジショナ1Aに採用された制御方式(この制御方式を単ループ制御と呼ぶ)の場合、制御部11の制御対象には、調節弁2だけではなく、調節弁2に空気流量および空気圧力を加える電空変換器12およびパイロットリレー13も含まれる。電空変換器12とパイロットリレー13の特性が線形であり、素直な特性であれば、このような制御方式でも充分である。しかし、実際は電空変換器12およびパイロットリレー13ともヒステリシスや不感帯等の非線形要素を持ち、制御を複雑にしている。そのため、この制御方式では、速応性や整定性(安定性)において限界がある。そこで、バルブ開度制御の速応性を改善した制御方式が特許文献2に示され、バルブ開度制御の整定性を改善した制御方式が特許文献3に示されている。
【0010】
図7は特許文献2に示された制御方式の概略を示す図である。このポジショナ1Bでは、制御対象である調節弁2からフィードバックされてくる実開度値Xpvを第1のフィードバック値とする一方、パイロットリレー13におけるシリンダ13aやポペット弁13bの変位Xpを位置センサ16によって検出するようにし、この位置センサ16によって検出された変位Xpに定数Kmを乗じた値Km・Xpを第2のフィードバック値としている。そして、制御部11からの制御出力MVをメジャー制御ループの制御出力とし、このメジャー制御ループの制御出力MVから第2のフィードバック値Km・Xpをマイナー制御ループのフィードバック値として減算して補正制御出力MV’を求め、この補正制御出力MV’を電空変換部15への制御出力としている。なお、変位Xpに対する定数Kmの乗算は乗算部(第2のフィードバック値算出部)17で行い、メジャー制御ループの制御出力MVからのマイナー制御ループのフィードバック値Km・Xpの減算は減算部(補正制御出力演算部)18で行う。この特許文献2に示された制御方式では、ムダ時間や時定数を縮めることにより、バルブ開度制御の速応性の改善が望める。
【0011】
図8は特許文献3に示された制御方式の概略を示す図である。このポジショナ1Cでは、制御対象である調節弁2からフィードバックされてくる実開度値Xpvを第1のフィードバック値とする一方、パイロットリレー13からの調節弁2への空気圧Poを圧力センサ19によって検出するようにし、この圧力センサ19によって検出される空気圧Poの微分値dPo/dtを圧力微分値とし、この圧力微分値dPo/dtに定数Kmを乗じた値Km・dPo/dtを第2のフィードバック値としている。そして、制御部11からの制御出力MVをメジャー制御ループの制御出力とし、このメジャー制御ループの制御出力MVから第2のフィードバック値Km・dPo/dtをマイナー制御ループのフィードバック値として減算して補正制御出力MV’を求め、この補正制御出力MV’を電空変換部15への制御出力としている。なお、圧力微分値dPo/dtの算出およびこの圧力微分値dPo/dtに対する定数Kmの乗算は乗算部(第2のフィードバック値算出部)20で行い、メジャー制御ループの制御出力MVからのマイナー制御ループのフィードバック値Km・dPo/dtの減算は減算部(補正制御出力演算部)21で行う。この特許文献2に示された制御方式では、圧力値そのものを見ているため、オーバシュートや整定時間など整定性の改善が望める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実開昭62−28118号公報
【特許文献2】特表2004−523016号公報
【特許文献3】特開2001−221201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した特許文献1や特許文献2に示された制御方式(この制御方式を二重ループ制御と呼ぶ)を採用するためには、電空変換部でのシリンダやポペット弁の変位を検出する位置センサや電空変換部からの出力圧を検出する圧力センサを設け、この位置センサや圧力センサに電流を供給しなければならない。
【0014】
すると、調節弁の開度制御を行う基本機能回路部での消費電流が大きくなり、単ループ制御を前提とした回路に基づいて二重ループ制御を採用しようとすると、電流不足に陥って、適切な開度制御が行えなくなる虞が生じる。また、この問題を解決するために、基本機能を犠牲にして(基本機能回路部での機能の幾つかを犠牲にする)、二重ループ制御に必要な電流を確保することが考えられるが、基本機能の低下を招いてしまう。
【0015】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、基本機能を犠牲にすることなく、確実に、調節弁の開度制御の速応性や整定性などの制御性を向上させることが可能なポジショナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような目的を達成するために本発明は、上位側システムより一対の電線を介して電流の供給を受け、この供給電流から自己の動作電源を生成する一方、供給電流の値に応じて調節弁の開度を制御するポジショナにおいて、調節弁の開度制御を行う基本機能回路部と、供給電流の実際値を現在の供給電流として検出する供給電流検出手段と、検出された現在の供給電流に基本機能回路部に振り向けることが可能な余剰電流があるか否かを判断し、余剰電流があった場合、その余剰電流を基本機能回路部に配分する余剰電流配分手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、供給電流の実際値が現在の供給電流として検出され、この検出された現在の供給電流に基本機能回路部に振り向けることが可能な余剰電流があるか否かが判断され、余剰電流があった場合、その余剰電流が基本機能回路部に配分される。これにより、所定値を超える余剰電流があった場合、その余剰電流で二重ループ制御を行わせるなどして、基本機能を犠牲にすることなく、確実に、調節弁の開度制御の速応性や整定性などの制御性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、供給電流の実際値を現在の供給電流として検出し、この検出した現在の供給電流に基本機能回路部に振り向けることが可能な余剰電流があるか否かを判断し、余剰電流があった場合、その余剰電流を基本機能回路部に配分するようにしたので、所定値を超える余剰電流があった場合、その余剰電流で二重ループ制御を行わせるなどして、基本機能を犠牲にすることなく、確実に、調節弁の開度制御の速応性や整定性などの制御性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るポジショナの一実施の形態の要部の構成図である。
【図2】このポジショナで用いられるテーブルの一例を示す図である。
【図3】このポジショナで用いられるテーブルの別の例を示す図である。
【図4】このポジショナで用いられるテーブルの別の例を示す図である。
【図5】このポジショナで用いられるテーブルの別の例を示す図である。
【図6】従来のポジショナの要部の構成を示す図である。
【図7】特許文献2に示された制御方式の概略を示す図である。
【図8】特許文献3に示された制御方式の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1はこの発明に係るポジショナの一実施の形態の要部の構成図である。このポジショナ100は、上位側システム200より一対の電線L1,L2を介して電流を供給を受け、この供給電流Iから自己の動作電源を生成する一方、供給電流Iの値に応じて調節弁2の弁開度(バルブの開度)を制御する。
【0021】
本実施の形態のポジショナ100は、ツェナーダイオードD1を含む定電圧回路3と、CPU(中央演算処理装置)4と、メモリ5と、電流監視部6と、調節弁2の開度制御を行う基本機能回路部7と、基本機能回路部7への電流の供給路に設けられた電流調整部8と、抵抗R1とを備えている。なお、CPU4および基本機能回路部7は、ポジショナ100の内部回路9を構成する主要構成要素とされている。
【0022】
定電圧回路3と抵抗R1とは上位側システム200からの電流Iが入力される端子T1,T2間に直列に接続され、定電圧回路3と抵抗R1との接続点は接地されている。定電圧回路3は、上位側システム200からの供給電流Iより定電圧V1を生成し、この生成した定電圧V1を動作電源として内部回路9に供給する。
【0023】
基本機能回路部7は、抵抗R1の電流Iの流出側に生ずる電圧Vsを弁開度設定値Xspとして入力とし、すなわち上位側システム200からの供給電流Iの値に応じた電圧Vsを弁開度設定値Xspとして入力とし、また調節弁2よりフィードバックされてくる位置信号Vrから調節弁2の実開度値Xpvを検出し、弁開度設定値Xspと実開度値Xpvとが一致するように調節弁2の弁開度を制御する。
【0024】
この回路構成において、上位側システム200からは4〜20mAの間で変化する電流Iが供給されるが、この供給電流Iのうち内部回路9側へのラインLAに回路の消費電流(動作電流)Icが流れ、この動作電流Icを超える余分な電流が余剰電流Iv(Iv=I−Ic)として定電圧回路3側のラインLBに流れる。このラインLAを流れる動作電流IcとラインLBを流れる余剰電流Ivは、末端で合流し、抵抗R1を介して上流側システム200へ戻される。電流監視部6は上位側システム200へ戻される電流をポジショナ100への供給電流Iの実際値として検出する。
【0025】
CPU4は、メモリ5に格納されているプログラムに従って動作し、電流監視部6が検出する供給電流Iの実際値(現在の供給電流)を取り込み、この現在の供給電流に基本機能回路部7に振り向けることが可能な余剰電流があるか否かを判断する。この例において、CPU4は、4mAを超える供給電流を余剰電流とみなす。そして、CPU4は、余剰電流があった場合、その余剰電流を基本機能回路部7に配分するように、電流調整部8へ指令を送る。
【0026】
メモリ5には、上述したプログラムに加えて、供給電流Iが取り得る電流の範囲(4〜20mA)を複数の電流範囲に区分し、この電流範囲の区分毎に基本機能回路部7が実施する調節弁2の開度制御の制御形態を定めたテーブルTB1が格納されている。
【0027】
図2にテーブルTB1の一例を示す。このテーブルTB1では4〜8mAの電流範囲を第1の区分とし、8〜12mAの電流範囲を第2の区分とし、12〜20mAの電流範囲を第3の区分とし、第1の区分に調節弁2の開度制御の制御形態として「単ループ制御」を定め、第2の区分に調節弁2の開度制御の制御形態として「二重ループ制御」を定め、第3の区分に調節弁2の開度制御の制御形態として「二重ループ+動作クロック高速」を定めている。
【0028】
なお、「単ループ制御」では、図6を用いて説明したように、調節弁2の実開度値Xpvと弁開度設定値Xspとの偏差eに基づいて求められた制御信号を電空変換部15への制御出力MVとする。また、「二重ループ制御」では、図7,図8を用いて説明したように、電空変換部15からのフィードバック値によって補正した制御信号を電空変換部15への制御出力MV’とする。また、「二重ループ+動作クロック高速」では、「単ループ制御」よりもCPU4の動作クロックを高速(制御周期を高速)とした二重ループ制御とする。
【0029】
〔4〜8mA〕
今、上位側システム200からの供給電流Iが4〜8mAの範囲内で変化しているものとする。この場合、CPU4は、電流監視部6が検出する供給電流Iの実際値(現在の供給電流)を取り込み、4mAを超える供給電流を余剰電流とみなす。すなわち、供給電流I=4〜8mAのうち4mAを超える残りの電流(0〜4mA)を余剰電流とみなし、この余剰電流を基本機能回路部7に配分すように電流調整部8へ指令を送る。これにより、余剰電流(0〜4mA)分、基本回路機能部7に供給される電流が増加する。
【0030】
また、CPU4は、供給電流Iの実際値(現在の供給電流)が区分1の電流範囲に属していることを確認し、その属している区分1に対して定められている開度制御の制御形態として「単ループ制御」をテーブルTB1から読み出し、この読み出した「単ループ制御」の制御形態で調節弁2の開度制御を実施するように基本機能回路部7に指示する。
【0031】
これにより、基本機能回路部7は、上位側システム200からの供給電流Iが4〜8mAの範囲内で変化している場合、0〜4mAの余剰電流を加え、その制御形態を「単ループ制御」として、調節弁2の開度を制御する。
【0032】
〔8〜12mA〕
今、上位側システム200からの供給電流Iが8〜12mAの範囲内で変化しているものとする。この場合、CPU4は、電流監視部6が検出する供給電流Iの実際値(現在の供給電流)を取り込み、4mAを超える供給電流を余剰電流とみなす。すなわち、供給電流I=8〜12mAのうち4mAを超える残りの電流(4〜8mA)を余剰電流とみなし、この余剰電流を基本機能回路部7に配分すように電流調整部8へ指令を送る。これにより、余剰電流(4〜8mA)分、基本回路機能部7に供給される電流が増加する。
【0033】
また、CPU4は、供給電流Iの実際値(現在の供給電流)が区分2の電流範囲に属していることを確認し、その属している区分2に対して定められている開度制御の制御形態として「二重ループ制御」をテーブルTB1から読み出し、この読み出した「二重ループ制御」の制御形態で調節弁2の開度制御を実施するように基本機能回路部7に指示する。
【0034】
これにより、基本機能回路部7は、上位側システム200からの供給電流Iが8〜20mAの範囲内で変化している場合、4〜8mA)を余剰電流として加え、その制御形態を「二重ループ制御」として、調節弁2の開度を制御する。
【0035】
〔12〜20mA〕
今、上位側システム200からの供給電流Iが12〜20mAの範囲内で変化しているものとする。この場合、CPU4は、電流監視部6が検出する供給電流Iの実際値(現在の供給電流)を取り込み、4mAを超える供給電流を余剰電流とみなす。すなわち、供給電流I=12〜20mAのうち4mAを超える残りの電流(8〜16mA)を余剰電流とみなし、この余剰電流を基本機能回路部7に配分すように電流調整部8へ指令を送る。これにより、余剰電流(8〜16mA)分、基本回路機能部7に供給される電流が増加する。
【0036】
また、CPU4は、供給電流Iの実際値(現在の供給電流)が区分3の電流範囲に属していることを確認し、その属している区分3に対して定められている開度制御の制御形態として「二重ループ制御+動作クロック高速」をテーブルTB1から読み出し、この読み出した「二重ループ制御+動作クロック高速」の制御形態で調節弁2の開度制御を実施するように基本機能回路部7に指示する。
【0037】
これにより、基本機能回路部7は、上位側システム200からの供給電流Iが12〜20mAの範囲内で変化している場合、8〜16mAの余剰電流を加え、その制御形態を「二重ループ制御+動作クロック高速」として、調節弁2の開度を制御する。
【0038】
このようにして、本実施の形態では、基本機能回路部7に流せる余剰電流が0〜4mAのときは「単ループ制御」で調節弁2の開度制御が行われ、基本機能回路部7に流せる余剰電流が4〜8mAのときは「二重ループ制御」で調節弁2の開度制御が行われ、基本機能回路部7に流せる余剰電流が8〜16mAのときは「二重ループ制御+動作クロック高速」で調節弁2の開度制御が行われれるものとなり、供給電流Iが大きくなるに従い、高性能な制御が実施されるようになる。
【0039】
この場合、「単ループ制御」では、消費電流が少なくて済むので、基本機能回路部7に流れる余剰電流が0〜4mAと少なくても、電流不足に陥ることはない。
【0040】
また、「二重ループ制御」では、基本機能回路部7に流れる余剰電流が4〜12mAと多くなるので、消費電流が大きくなっても、電流不足に陥ることはない。したがって、基本機能を犠牲にすることなく、確実に、調節弁2の開度制御の速応性や整定性などの制御性を向上させることできる。
【0041】
また、「二重ループ制御+動作クロック高速」では、基本機能回路部7に流れる余剰電流が8〜16mAとさらに多くなるので、消費電流がさらに大きくなっても、電流不足に陥ることはない。したがって、基本機能を犠牲にすることなく、確実に、調節弁2の開度制御の速応性や整定性などの制御性を向上させると共に、高速で制御を行わせることができる。
【0042】
なお、上述した実施の形態では、4〜20mAの電流範囲を3つの区分に分け、第1の区分に「単ループ制御」を定め、第2の区分に「二重ループ制御」を定め、第3の区分に「二重ループ+動作クロック高速」を定めるようにしたが、図3に示すように、4〜20mAの電流範囲を2つの区分に分け、第1の区分に「単ループ制御」を定め、第2の区分に「二重ループ制御」を定めるようにしてもよい。
【0043】
また、図4に示すように、第1の区分に「単ループ制御」を定め、第2の区分に「単ループ制御+動作クロック高速」を定めるようにしたり、図5に示すように、第1の区分に「単ループ制御」を定め、第2の区分に「単ループ制御+動作クロック高速」を定め、第3の区分に「二重ループ制御」を定め、第4の区分に「二重ループ制御+動作クロック高速」を定めるようにするなどしてもよい。
【0044】
なお、図4および図5において、第2の区分の「単ループ制御+動作クロック高速」では、第1の区分に対して定めた「単ループ制御」よりもその制御周期(CPU4の動作クロック)を高速とし、第4の区分の「二重ループ制御+動作クロック高速」では、第3の区分に対して定めた「二重ループ制御」よりもその制御周期(CPU4の動作クロック)を高速とする。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のポジショナは、調節弁(バルブ)の開度を制御する機器として、プロセス制御など様々な分野で利用することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1A,1B,1C…ポジショナ、2…調節弁、2a…駆動部、2b…バルブ、3…定電圧回路、4…CPU、5…メモリ、6…電流監視部、7…基本機能回路部、8…電流調整部、9…内部回路、11…制御部、11a…偏差算出部、11b…PID制御演算部、12…電空変換器、13…パイロットリレー、13a…シリンダ、13b…ポペット弁、14…開度センサ、15…電空変換部、16…位置センサ、17…乗算部(第2のフィードバック値算出部)、18…減算部(補正制御出力演算部)、19…圧力センサ、20…乗算部(第2のフィードバック値算出部)、21…減算部(補正制御出力演算部)、TB1…テーブル、R1…抵抗、100…ポジショナ、200…上位側システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位側システムより一対の電線を介して電流の供給を受け、この供給電流から自己の動作電源を生成する一方、前記供給電流の値に応じて調節弁の開度を制御するポジショナにおいて、
前記調節弁の開度制御を行う基本機能回路部と、
前記供給電流の実際値を現在の供給電流として検出する供給電流検出手段と、
前記検出された現在の供給電流に前記基本機能回路部に振り向けることが可能な余剰電流があるか否かを判断し、余剰電流があった場合、その余剰電流を前記基本機能回路部に配分する余剰電流配分手段と
を備えることを特徴とするポジショナ。
【請求項2】
請求項1に記載されたポジショナにおいて、
前記供給電流が取り得る電流の範囲を複数の電流範囲に区分し、この電流範囲の区分毎に前記基本機能回路部が実施する前記調節弁の開度制御の制御形態を定めたテーブルを記憶する記憶手段を備え、
前記余剰電流配分手段は、前記検出された現在の供給電流が前記電流範囲の区分の何れに属しているかを確認し、その属している電流範囲の区分に対して定められている制御形態を前記テーブルより読み出し、この読み出した制御形態で前記調節弁の開度制御を実施するように前記基本機能回路部に指示する
ことを特徴とするポジショナ。
【請求項3】
請求項2に記載されたポジショナにおいて、
前記記憶手段は、前記電流範囲の区分のうちその電流値が小さい第1の区分に前記開度制御の制御形態として前記調節弁の実開度と設定開度との偏差に基づいて求められた制御信号を電空変換部への制御出力とする単ループ制御を定め、前記第1の区分よりもその電流値が大きい第2の区分に前記開度制御の制御形態として前記制御信号を前記電空変換部からのフィードバック値によって補正した制御信号を前記電空変換部への制御出力とする二重ループ制御を定めたテーブルを記憶する
ことを特徴とするポジショナ。
【請求項4】
請求項2に記載されたポジショナにおいて、
前記記憶手段は、前記電流範囲の区分のうちその電流値が小さい第1の区分に前記開度制御の制御形態として前記調節弁の実開度と設定開度との偏差に基づいて求められた制御信号を電空変換部への制御出力とする単ループ制御を定め、前記第1の区分よりもその電流値が大きい第2の区分に前記開度制御の制御形態として前記第1の区分に対して定めた単ループ制御よりも制御周期を高速とした単ループ制御を定めたテーブルを記憶する
ことを特徴とするポジショナ。
【請求項5】
請求項2に記載されたポジショナにおいて、
前記記憶手段は、前記電流範囲の区分のうちその電流値が小さい第1の区分に前記開度制御の制御形態として前記調節弁の実開度と設定開度との偏差に基づいて求められた制御信号を電空変換部への制御出力とする単ループ制御を定め、前記第1の区分よりもその電流値が大きい第2の区分に前記開度制御の制御形態として前記制御信号を前記電空変換部からのフィードバック値によって補正した制御信号を前記電空変換部への制御出力とする二重ループ制御を定め、前記第2の区分よりもその電流値が大きい第3の区分に前記開度制御の制御形態として前記第2の区分に対して定めた二重ループ制御よりも制御周期を高速とした二重ループ制御を定めたテーブルを記憶する
ことを特徴とするポジショナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−208822(P2012−208822A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75078(P2011−75078)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】