説明

ポジ型感光性樹脂及び新規ジチオール化合物

【課題】 従来技術の難点を解消し、半導体製造の微細なパターン形成に用いられ、従来品よりもレジスト感度を高めることができると共に、現像後の異物の低減等の効果が期待されるポジ型感光性樹脂、及び、このポジ型感光性樹脂の製造に極めて好適に用いることができる新規ジチオール化合物を提供する。
【解決手段】 本発明のポジ型感光性樹脂は、一般式(1)
【化1】


で表される構造を高分子主鎖に有することを特徴とし、本発明のジチオール化合物は、一般式(2)
【化2】


で表されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体リソグラフィーにおいて好適に使用されるポジ型感光性樹脂及び新規ジチオール化合物に関する。更に詳しくは、高分子主鎖に酸触媒によって切断される部位を有するため、従来品よりもレジスト感度を高めることができると共に、高分子の分子サイズが低下することによって、現像後の異物の低減等の効果が期待されるポジ型感光性樹脂、及び、ラジカル重合における連鎖移動剤等として使用できるため、上記ポジ型感光性樹脂の製造に極めて好適に用いることができる新規ジチオール化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造のために採用されるリソグラフィーにおいては、集積度の増大に伴いより微細なパターンの形成が求められている。パターンの微細化には露光光源の短波長化が不可欠であり、現在ではKrFエキシマレーザーを光源としたリソグラフィーが主流になりつつあり、ArFエキシマレーザーを利用したリソグラフィーも実用化されようとしている。更にはF2エキシマレーザー、EUV、X線、電子線等を用いた短波長の各種放射線リソグラフィー技術が開発段階にある。
【0003】
半導体リソグラフィーにおいて使用されるフォトレジストは、IBMの伊藤らによって開発された化学増幅型レジストが現在、必須となっている。この化学増幅型レジストとは、酸により解離する保護基が酸触により媒脱保護反応を起こすことによって、レジストを高感度化させる技術である。
【0004】
又、これら酸解離性保護基を有する繰り返し単位を含むレジストポリマーの具体例としては、KrFリソグラフィーでは、ヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位と酸解離性アルコキシスチレン由来の繰り返し単位とを含む共重合体、ヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位と酸解離性アルキル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位を含む共重合体、ヒドロキシスチレン由来の繰り返し単位の一部をアセタールで保護したポリマー等が知られており、ArFリソグラフィーでは、ラクトン構造含有(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位と酸解離性アルキル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位とを有する共重合体等が知られている。
【0005】
これらの共重合体は、いずれも酸によって解離する、酸に対して不安定な保護基を有する化学増幅型レジストであるが、レジストパターンの一層の微細化が求められるなか、これらの保護基だけでは十分なレジスト性能を得ることが困難になってきている。
【0006】
そこで、酸解離性保護基を有する繰り返し単位を含む共重合体に、酸により解離する架橋部位を、その側鎖に導入したレジストレジストポリマーも検討されている。(例えば特許文献1〜3等参照)
【0007】
これは、酸触媒により架橋結合が切断されることによって、露光領域と未露光領域の間の溶解コントラストが向上するものであるが、該ポリマーの重合には、ジアクリレート等の2官能性単量体を使用し、高分子鎖の側鎖での架橋反応を伴うが故に、生成するポリマーの分子量分布が極めて大きいために溶解性が悪く、且つ、超高分子量のポリマーが生成しやすいため、酸で分解した後でもアルカリ現像液に溶解しにくい難溶解性の高分子量成分が存在し、この溶け残りによって、微細なパターン形成時に欠陥が生じるという問題があった。
【0008】
又、酸に不安定なアセタール骨格を有する架橋部位を高分子側鎖に有する架橋重合体をレジストポリマーとして使用する例(特許文献1)では、酸に対して非常に高感度であるがために保存安定性が悪いという傾向があった。
【0009】
【特許文献1】特開2001−98034号公報
【特許文献2】特開2000−214587号公報
【特許文献3】特開2001−106737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、半導体製造の微細なパターン形成に用いられ、高分子主鎖に酸解離性の構造を導入することにより、従来品よりも高感度なポジ型感光性樹脂、及び、このポジ型感光性樹脂を含むレジスト組成物を提供すると共に、従来の側鎖架橋型ポリマーのような超高分子量成分の生成がなく、分子量分布が狭いポジ型感光性樹脂の製造に極めて好適に用いることができる新規ジチオール化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、酸の作用によって酸解離性保護基が解離し、アルカリ現像液に対する溶解度が増大するポジ型感光性樹脂であって、一般式(1)
【化4】

(式中、R1及びR2は炭素数2〜3の直鎖状又は分岐状の2価の飽和炭化水素基、R3は炭素数2〜5の直鎖状又は分岐状の2価の飽和炭化水素基、R〜R7はそれぞれ炭素数1〜4の同一又は異なる1価の飽和炭化水素基を示す。)
で表される構造を高分子主鎖に有することを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂に係り、少なくともフェノール性水酸基を有する繰り返し単位を含む共重合体であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のポジ型感光性樹脂に係り、少なくとも、脂環式骨格を有する(メタ)アクリレート誘導体である繰り返し単位を含む共重合体であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂に係り、少なくとも、ラクトン骨格を有する(メタ)アクリレート誘導体である繰り返し単位を含む共重合体であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5に記載の発明は、下記一般式(2)
【化5】

(式中、R1及びR2は炭素数2〜3の直鎖状又は分岐状の2価の飽和炭化水素基、R3は炭素数2〜5の直鎖状又は分岐状の2価の飽和炭化水素基、R〜R7はそれぞれ炭素数1〜4の同一又は異なる1価の飽和炭化水素基を示す。)
で表されることを特徴とする新規ジチオール化合物である。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂の製造方法であって、上記一般式(2)で表されるジチオール化合物の存在下で原料モノマーを重合させることを特徴とするものである。
【0017】
請求項7に記載の発明は、レジスト組成物に係り、少なくとも請求項1から4に記載のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂と光酸発生剤を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のポジ型感光性樹脂は、酸触媒によって切断される部位を高分子主鎖に有するため、露光領域と未露光領域の間の溶解コントラストが向上し、従来品よりもレジスト感度を高めることができる。又、高分子主鎖が切断されて高分子の分子サイズが低下することによって、現像後の異物の低減や、露光部と未露光部境界面におけるレジストパターンの平坦化によるラインエッジラフネスの改善効果が期待される。
【0019】
一方、本発明の新規ジチオール化合物は、ラジカル重合における連鎖移動剤或いはレドックス重合における重合開始剤として使用できるため、上記ポジ型感光性樹脂の製造に極めて好適に用いることができる。
【0020】
尚、高分子主鎖に酸触媒によって切断される構造を導入する試みは従来になく、このような構造を導入することにより、超高分子量成分の生成がなく、分子量分布が狭いポジ型感光性樹脂を得ることができ、又、このポジ型感光性樹脂を半導体リソグラフィー工程で使用することにより、不溶解成分に起因するディフェクトが少なく、大幅に感度が向上したポジ型フォトレジストを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のポジ型感光性樹脂は、酸の作用によって酸解離性保護基が解離し、アルカリ現像液に対する溶解度が増大するポジ型感光性樹脂であって、一般式(1)
【化6】

で表される構造を高分子主鎖に有することを特徴とし、式中、R1及びR2は炭素数2〜3の直鎖状又は分岐上の2価の飽和炭化水素基を、R3は炭素数2〜5の直鎖状又は分岐状の2価の飽和炭化水素基を、R〜R7はそれぞれ同一又は異なる1価の飽和炭化水素基であって、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソブチル基を示している。
【0022】
上記一般式(1)の構造の具体例としては、以下に示すようなものを挙げることができる。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【0023】
本発明のポジ型感光性樹脂において、上記一般式(1)で表される構造の含有量が少なすぎると、上述のようなレジスト感度の向上効果が不十分となるので、一般式(1)で表される構造の含有量は、樹脂中に含まれるモノマー単位の総数に対して0.1モル%以上とすることが好ましく、0.5モル%以上とすることがより好ましい。
【0024】
一般式(1)で表される構造の含有量を上記範囲にするためには、重合の際における本発明のジチオール化合物の使用量を、原料モノマー100モルに対して0.1モル以上とすることが好ましく、0.5モル以上とすることがより好ましい。尚、本発明のジチオール化合物の使用量が多いほど、樹脂中に一般式(1)で表される構造の含有量は多くなるが、一方で、得られる共重合体の分子量は小さくなるので、所望の平均分子量が得られる範囲で選択する。
【0025】
尚、本発明のポジ型感光性樹脂の重量平均分子量は、高すぎると塗膜形成時に使用される溶剤や、アルカリ現像液への溶解性が低くなり、一方、低すぎると塗膜性能が悪くなることから、2000〜40000の範囲が好ましく、3000〜30000の範囲がより好ましい。
【0026】
本発明のポジ型感光性樹脂を製造する際に用いられる原料モノマーとしては、反応的にはエチレン性二重結合を有する重合性化合物(モノマー)であれば特に限定されないが、酸の作用によって酸解離性保護基が解離し、アルカリ現像液に対する溶解度が増大するポジ型感光性樹脂であるためには、少なくとも、酸の作用によって解離してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する構造を有する繰り返し単位(A)と、基板に対する密着性を高めるための極性基を有する繰り返し単位(B)とを必須成分とし、必要に応じ、レジスト溶剤やアルカリ現像液への溶解性を調節するための非極性の構造を有する繰り返し単位(C)を含んで構成される。
【0027】
酸の作用によって解離してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する構造を有する繰り返し単位(A)は、従来よりレジストとして一般的に用いられている構造を意味し、酸によって解離してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する構造を有するモノマーを重合させるか、アルカリ可溶性の構造を有するモノマーを重合させた後、アルカリ可溶性基を酸解離性基で保護することにより得ることができる。
【0028】
酸の作用によって解離してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する構造を有するモノマーとしては、アルカリ可溶性基を酸解離性基で保護した化合物を挙げることができ、例えば酸解離性基で保護されたフェノール性水酸基、カルボキシル基やヒドロキシフルオロアルキル基を有する化合物等を挙げることができる。
【0029】
上記アルカリ可溶性基を含有するモノマーとしては、具体的には例えば、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン等のヒドロキシスチレン類;アクリル酸、メタクリル酸、トリフルオロメチルアクリル酸、5−ネルボルネン−2−カルボン酸、2−トリフルオロメチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸、カルボキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメタクリレート等のエチレン性二重結合を有するカルボン酸類;p−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)スチレン、2−(4−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)シクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルアクリレート、2−(4−(2−ヒドロキシ1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)シクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルトリフルオロメチルアクリレート、5−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)メチル−2−ノルボルネン等のヒドロキシフルオロアルキル基を有する化合物等を挙げることができる。
【0030】
酸によって解離する保護基としては、具体的には例えば、t−ブチル基、t−アミル基、1−メチル−1−シクロペンチル基、1−エチル−1−シクロペンチル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基、1−エチル−1−シクロヘキシル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、2−プロピル−2−アダマンチル基、2−(1−アダマンチル)−2−プロピル基、8−メチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、8−エチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、8−メチル−8−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基、8−エチル−8−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基等の飽和炭化水素基;1−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、1−iso−プロポキシエチル基、1−n−ブトキシエチル基、1−t−ブトキシエチル基、1−シクロペンチルオキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシエチル基、1−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルオキシエチル基、1−メトキシメチル基、2−エトキシメチル基、1−iso−プロポキシメチル基、1−n−ブトキシメチル基、1−t−ブトキシメチル基、1−シクロペンチルオキシメチル基、1−シクロヘキシルオキシメチル基、1−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルオキシメチル基、t−ブトキシカルボニル基等の含酸素炭化水素基等を挙げることができる。
【0031】
アルカリ可溶性の構造を有するモノマーを重合させた後、当該アルカリ可溶性基を酸解離性保護基で保護する場合は、前記のアルカリ可溶性基を有する化合物をそのまま重合反応に用い、その後、酸触媒のもとでビニルエーテルやハロゲン化アルキルエーテル等の化合物と反応させることにより、酸解離性保護基を導入することができる。反応に用いる酸触媒としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、強酸性イオン交換樹脂等を挙げることができる。
【0032】
一方、基板に対する密着性を高めるための極性基を有する繰り返し単位(B)を与えるモノマーとしては、例えば、極性基としてフェノール性水酸基、カルボキシル基やヒドロキシアルキル基を有する化合物等を挙げることができ、具体的には例えば、アルカリ可溶性基を含有するモノマーとして前記説明したヒドロキシスチレン類やエチレン性二重結合を有するカルボン酸類、ヒドロキシフルオロアルキル基を有する重合性化合物、及び、これらに更に極性基が置換したモノマーの他、ノルボルネン環、テトラシクロドデセン環等の脂環構造に極性基が結合したモノマー等を挙げることができる。
【0033】
繰り返し単位(B)に導入される上記極性基としては、ラクトン構造を含むものが特に好ましく、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、1,3−シクロヘキサンカルボラクトン、2,6−ノルボルナンカルボラクトン、4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン、メバロン酸δ−ラクトン等のラクトン構造を含む置換基を挙げることができる。又、ラクトン構造以外の極性基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル基等のヒドロキシアルキル基等を挙げることができる。
【0034】
更に、必要に応じ含有される、レジスト溶剤やアルカリ現像液への溶解性を調節するための非極性の置換基を有する繰り返し単位(C)を与えるモノマーとしては、例えば、極性基を含まない置換又は非置換のアルキル基或いはアリール基、非極性の非酸解離性基で保護された極性基を有する化合物等を挙げることができ、具体的には例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸、メタクリル酸、トリフルオロメチルアクリル酸、ノルボルネンカルボン酸、2−トリフルオロメチルノルボルネンカルボン酸、カルボキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメタクリレート等のエチレン性二重結合を有するカルボン酸に酸安定な非極性基が置換したエステル化合物;ノルボルネン、テトラシクロドデセン等のエチレン性二重結合を有する脂環式炭化水素化合物等を挙げることができる。又、前記カルボン酸にエステル置換する酸安定な非極性置換基の例としては、例えば、メチル基、エチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、2−アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基等をあげることができる。
【0035】
これらのモノマーは、繰り返し単位(A)、(B)及び(C)のそれぞれについて1種類若しくは2種類以上を混合して用いることができ、得られる感光性樹脂中の各繰り返し単位の組成比は、レジストとしての基本性能を損なわない範囲で選択することができる。即ち、一般に、繰り返し単位(A)は10〜70モル%であることが好ましく、10〜60モル%であることがより好ましい。又、繰り返し単位(B)の組成比は、30〜90モル%であることが好ましく、40〜90モル%であることがより好ましいが、同一の極性基を有するモノマー単位については、70モル%以下とすることが好ましい。更に、繰り返し単位(C)の組成比は、0〜50モル%であることが好ましく、より好ましくは0〜40モル%の範囲で選択することが望ましい。
【0036】
上記のような本発明のポジ型感光性樹脂は、下記一般式(2)で表される本発明の新規ジチオール化合物の存在下で原料モノマーを重合させること、より具体的には、本発明の新規ジチオール化合物をラジカル重合における連鎖移動剤又はレドックス重合における重合開始剤として使用することにより製造することができる。
【化13】

【0037】
上記式中、R1及びR2は炭素数2〜3の直鎖状又は分岐上の2価の飽和炭化水素基を、R3は炭素数2〜5の直鎖状又は分岐状の2価の飽和炭化水素基を、R〜R7はそれぞれ同一又は異なる1価の飽和炭化水素基であって、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソブチル基を示している。
【0038】
上記一般式(2)の化合物の具体例としては、以下に示すようなものを挙げることができる。
【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【0039】
上記ジチオール化合物を連鎖移動剤として使用し、本発明のポジ型感光性樹脂をラジカル重合によって製造する際に用いる重合開始剤としては、一般にラジカル発生剤として用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物を単独若しくは混合して用いることができる。重合開始剤の使用量は、重合反応に用いる原料モノマーや、連鎖移動剤の種類、量及び重合温度や重合溶媒の重合条件により異なるので、一概に規定することはできないが、一般に、連鎖移動剤1モルに対して0.01〜10モル、好ましくは0.1〜5モルの範囲から選択される。
【0040】
一方、ジチオール化合物を重合開始剤として使用し、本発明のポジ型感光性樹脂をレドックス重合によって製造する際に用いる重合促進剤としては、例えば、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル等の金属塩又は金属錯体を単独若しくは混合して用いることができ、特に、イオン化ポテンシャルギャップが大きいバナジウムの金属塩又は金属錯体が好ましい。バナジウムの金属塩又は金属錯体は、例えば、ナフテン酸バナジウム、ステアリン酸バナジル、バナジウムトリスアセチルアセトナート{V(acac)3 }、バナジルアセチルアセトナート{VO(acac)2 }等が挙げられる。重合促進剤の使用量は、重合反応に用いる原料モノマーや、ジチオールの種類、量及び重合温度や重合溶媒等の重合条件により異なるので、一概に規定することはできないが、一般に、ジチオール化合物1モルに対して0.0001〜1モル、好ましくは0.0001〜0.01モルの範囲から選択される。
【0041】
本発明のポジ型感光性樹脂を製造する際の重合方法としては、溶液重合が好ましく、原料モノマー等を重合溶媒に溶解した状態で重合させることが好ましい。溶液重合は、例えば、全てのモノマー、開始剤、連鎖移動剤等を重合溶媒に溶解して重合温度に加熱する、いわゆる一括重合法や、モノマー、開始剤、連鎖移動剤等の一部若しくは全てを重合温度に加熱した重合系内に滴下する。いわゆる滴下重合法等により実施することができる。
【0042】
重合反応に用いる溶媒としては、原料モノマー、得られた共重合体、重合開始剤及び連鎖移動剤を安定して溶解しうる溶媒であれば特に制限されない。重合溶媒の具体な例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、グライム、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類等を挙げることができ、これらを単独又は混合して用いることができる。
【0043】
重合溶媒の使用量には特に制限はないが、通常、モノマー1重量部に対して0.5〜20重量部、好ましくは1〜10重量部である。溶媒の使用量があまりに少なすぎるとモノマー又は共重合体が析出する場合があり、多すぎると重合反応の速度が不十分となる場合がある。
又、重合の反応条件は特に制限されないが、一般に反応温度は60℃〜100℃程度、反応時間は1時間〜20時間程度が好ましい。
【0044】
上記重合反応により得られた重合体は、重合反応液を貧溶媒単独、若しくは貧溶媒と良溶媒の混合溶媒に滴下して析出させ、更に必要に応じて洗浄することにより、未反応モノマー、オリゴマー、重合開始剤、連鎖移動剤及びこれらの反応残渣物等の不要物を除去し、精製することができる。貧溶媒としては、得られた共重合体が溶解しない溶媒であれば特に制限されないが、例えば、水やメタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素類等を単独もしくは混合して用いることができる。又、良溶媒としては、モノマー、オリゴマー、重合開始剤、連鎖移動剤及びこれらの反応残渣物が溶解する溶媒であれば特に制限されないが、製造工程の管理上、重合溶媒と同じものが好ましい。
【0045】
又、精製後の共重合体には精製時に用いた溶媒が含まれているため、減圧乾燥したのちレジスト用の溶媒に溶解するか、若しくはそのままレジスト用の溶媒ないし重合溶媒等の良溶媒に一旦溶解した後、必要に応じてレジスト用の溶媒を供給しながら、その他の溶媒を減圧下で留去する等してレジスト用の溶液に仕上げることができる。
【0046】
上記レジスト用の溶媒としては、共重合体を溶解するものであれば特に制限されないが、通常、沸点、半導体基板やその他の塗布膜への影響、リソグラフィーに用いられる放射線の吸収を勘案して選択される。レジスト用に一般的に用いられる溶媒の例としては、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、メチルアミルケトン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン等の溶媒が挙げられ、溶媒の使用量は特に制限されないが、通常、共重合体1重量部に対して1重量部〜20重量部の範囲である。
【0047】
本発明のポジ型感光性樹脂をレジストとして用いる場合は、上記溶液に、光酸発生剤、及び、放射線に暴露されない部分への酸の拡散を防止するための含窒素化合物等の酸拡散制御剤を添加して、レジスト組成物に仕上げることができる。光酸発生剤としては、オニウム塩化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、ジスルホニルジアゾメタン化合物等、一般的にレジスト用原料として使用されているものを用いることができる。又、レジスト組成物には、更に必要に応じて、溶解抑止剤、増感剤、染料等レジスト用添加剤として慣用されている化合物を添加することができる。
【0048】
レジスト組成物中の各成分(レジスト溶媒を除く)の配合比は特に制限されないが、一般に、ポリマー濃度10〜50質量%、感放射線性酸発生剤0.1〜10質量%、酸拡散制御剤0.001〜10質量%の範囲から選択される。
【0049】
一方、本発明の新規ジチオール化合物は、対応するジ(メタ)アクリレートを出発原料として合成することができ、この反応で原料となるジ(メタ)アクリレート化合物は、例えば、以下に示すスキーム(I)のように、対応するジオール化合物を(メタ)アクリル酸又は塩化(メタ)アクリロイルでアクリル化することによって得る方法等によって合成することができる。
【化20】

【0050】
スキーム(I)中、Zは水素原子又は塩素原子、R8は水素原子、メチル基又はハロゲン置換されたアルキル基、R3は炭素数0〜10の分岐状又は環状の飽和炭化水素からなる2価の有機基、R4〜R7は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の飽和炭化水素からなる1価の有機基であって、各々同じであっても異なっていてもよい。
【0051】
上記スキーム(I)中のジオール化合物としては、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,6−ジメチル−2,6−ヘプタンジオール、2,7−ジメチル−2,7−オクタンジオール、2,8−ジメチル−2,8−ノナンジオール、2,9−ジメチル−2,9−デカンジオール、2,10−ジメチル−2,10−ドデカンジオール、3,6−ジメチル−3,6−オクタンジオール、2,4,7,9−テトラメチル−4,7−デカンジオール等を挙げることができる。
【0052】
目的とする本発明のジチオール化合物は、例えば、上記スキーム(I)に示す反応により得られるジ(メタ)アクリレート化合物を反応原料として、例えば以下に示すスキーム(II)のように、チオ酢酸、チオプロピオン酸等のチオ酸を付加した後、得られたチオ酸エステルを加水分解又はアルコーリシスにより分解する方法等により合成することができる。
【化21】

スキーム(II)中、R8は水素原子、メチル基又はハロゲン置換されたアルキル基、R3は炭素数0〜10の分岐状又は環状の飽和炭化水素からなる2価の有機基、R4〜R7は炭素数1〜10の直鎖上、分岐状又は環状の飽和炭化水素からなる1価の有機基であって、各々同じであっても異なっていてもよい。)
【0053】
スキーム(II)の反応では、ジ(メタ)アクリレート化合物と、該化合物1モルに対して、通常2〜10モル、好ましくは2〜5モルのチオ酸(例えばチオ酢酸、チオプロピオン酸等;スキームではチオ酢酸を例示)とを、ラジカル開始剤(例えば、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、過酸化物)、又は、レドックス触媒(例えば酸化バナジウムアセチルアセトナート、バナジウムアセチルアセトナート)の存在下で、通常、0〜100℃、好ましくは10〜80℃で、通常10分〜12時間、好ましくは1〜8時間反応させる。
【0054】
反応溶媒は、用いても用いなくてもよく、用いる場合の反応溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。又、反応は反応器に全量を投入したのちに所定の温度に加熱又は冷却する方法、チオ酸を反応器内に投入後、ラジカル開始剤又はレドックス触媒及びジ(メタ)アクリレート化合物を滴下する方法等が挙げられるが、ジ(メタ)アクリレート由来のオリゴマー分の生成を抑制するために、
反応系内にラジカル開始剤又はレドックス触媒を所定の溶剤に溶解させて、加熱又は冷却した後にジ(メタ)アクリレート化合物とチオ酸を滴下する方法が好ましく、又、ジ(メタ)アクリレート化合物とチオ酸を個別に滴下する方法がより好ましい。
【0055】
反応後は、蒸留、再結晶、カラム精製等の公知の方法で精製することにより本発明のジチオール化合物の中間体であるジチオ酸エステルが得られる。更に、得られたジチオ酸エステルと、該化合物1モルに対して5〜50モル、好ましくは10〜30モルの水又はアルコール(例えば、メタノール、エタノール等)とを、酸(例えば、塩酸、硫酸、スルホン酸等)又はアルカリ(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)の存在下で、通常0〜80℃、好ましくは50〜80℃で、通常1〜20時間、好ましくは3〜5時間反応させた後、蒸留、再結晶、カラム精製等の公知の方法で精製することにより本発明のジチオール化合物を得ることができる。
【0056】
得られた化合物の構造については、機器分析、特に核磁気共鳴吸収(NMR)スペクトルにより確認することができる。
【0057】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、得られた共重合体の平均共重合組成は13C−NMRの測定結果により求め、又、
重量平均分子量Mw及び分散度Mw/Mnはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定結果より求めた。
【0058】
反応例1;下記構造式(i)の化合物の合成
【化22】

攪拌子、還流冷却管、滴下装置を取り付けた四つ口フラスコに、メタノール33g、バナジルアセチルアセトナート{VO(acac)2 }0.01gを投入し、80℃のオイルバスに浸漬して攪拌した。別途、三角フラスコに1,1,4,4−トリメチル−1,4ブタンジオールジアクリレート20g、メタノール30gを投入し、30分間攪拌して完全に溶解させ、これを滴下液1とした。更に別の三角フラスコにチオ酢酸18g、メタノール30gを投入し、30分間攪拌させ、これを滴下液2とした。オイルバスに浸漬した四つ口フラスコ中に滴下液1と滴下液2を同時に2時間20分かけて滴下し、その後7時間熟成させた。反応終了後、軽質分の減圧除去を行って粗結晶を得、ヘキサンで再結晶をおこなって白色固体(I)を得た。(ジアクリレート換算での収率72%)
13C−NMRスペクトル(CDCl溶媒)
δ(ppm):194.8,170.2,82.2,35.1,34.1,30.2,25.9,24.1
H−NMRスペクトル(CDCl溶媒)
δ(ppm):3.08(t,4H),2.55(t,4H),2.33(s,6H),1.78(s,4H),1.43(s,12H)
【実施例1】
【0059】
下記構造式で表される新規ジチオール化合物(以下、DMOCと略す)の合成
【化23】

【0060】
20CCの試験管に反応例1で得られたジチオアセテート化合物(I)2g、メタノール6g、水酸化ナトリウム2gを仕込み、冷却管を取り付けて窒素シールした。その後、80℃のオイルバスに浸漬し、5時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、分液漏斗に反応液、酢酸エチル8.5g及び純水19gを投入し、水層を分離した。次に油層に純水を20g投入して洗浄し、水層を分離した。これを4回繰り返した後、油層を単蒸留した。真空度0.05mmHg、オイルバス180℃で白色固体560mgを得た。液クロマトグラフィー分析の結果、純度は98エリア%であった。(収率35%)
13C−NMRスペクトル(CDCl溶媒)
δ(ppm):172.5(s),83.6(s),40.6(t),35.2(t),26.7(q),20.5(t)
1H−NMRスペクトル(CDCl溶媒)
δ(ppm):4.83(br,2H,−SH),2.74(t,4H,−CH2−),2.61(t,4H,−CH2−),1.91(s,4H,−CH2−),1.49(s,12H,−CH3
【実施例2】
【0061】
酸によって切断される部位を主鎖に有するポリ(p−ヒドロキシストレン−co−t−ブチルアクリレートの合成
【化24】

【0062】
50ccのシュレンク管に、p−エチルフェノールを脱水素して得られる粗p−ヒドロキシスチレン{p−ヒドロキシスチレン(以下、PHSと略す)23重量部、p−エチルフォノール45重量部、メタノール22重量部、水10重量部}26.9g、t−ブチルアクリレート(以下、BHAと略す)3.11g、実施例1で得られたジチオール化合物(DMOC)0.42g、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(以下、MAIBと略す)0.61gを仕込み、室温で20分間攪拌し完全に溶解させた。このシュレンク管に冷却管を取り付け、70℃に加熱したオイルバスに浸漬して6時間攪拌した後、室温まで冷却した。得られた重合液を150gのトルエンに投入してポリマーを析出させ、上澄み液をデカンテーションした。その後、10gのアセトンでポリマーを再溶解して、再度150gのトルエンでポリマーを析出させ、上澄み液をデカンテーションした。この操作をもう一度行った後、再度10gのアセトンでポリマーを再溶解し、200gのヘキサンでポリマーを析出させ上澄み液をデカンテーションした。得られたモチ状の沈殿物を60℃、10torrで3日間減圧乾燥させて、淡黄色のポリマー粉体9gを得た。得られたポリマー中のDMOC含有量、平均共重合組成、重量平均分子量及び多分散度を表1に示す。
【実施例3】
【0063】
酸によって切断される部位を主鎖に有するポリ(5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン−co−2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート)の合成
【化25】

【0064】
50ccのシュレンク管に5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン(以下、NLMと略す)4.44g、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート(以下、MAMと略す)4.69g、テトラヒドロフラン27.4g、DMOC0.26g、MAIB0.18gを投入し、室温で20分間攪拌し完全に溶解させた。このシュレンク管に冷却管を取り付け、70℃に加熱したオイルバスに浸漬して6時間攪拌した後、室温まで冷却した。得られた重合液を180gのメタノールに投入してポリマーを析出させ、保留粒子1ミクロンのろ紙でろ過した。得られたウェットケーキ状のポリマーを180gのメタノールに投入し、攪拌洗浄してメタノールを濾別した。これを2回行った後、60℃、10torrで3日間乾燥して、6.5gの白色ポリマーを得た。得られたポリマー中のDMOC含有量、平均共重合組成、重量平均分子量及び多分散度を表1に示す。
【実施例4】
【0065】
酸によって切断される部位を主鎖に有するポリ(γ−ブチロラクトン−2−イルメタクリレート−co−t−ブチルメタクリレート)の合成
【化26】

【0066】
50ccのシュレンク管にγ−ブチロラクトン−2−イルメタクリレート(以下、GBMと略す)5.10g、t−ブチルメタクリレート(以下、TBMAと略す)4.26g、テトラヒドロフラン28.1g、DMOC0.39g、MAIB0.28gを投入し、室温で20分間攪拌し完全に溶解させた。このシュレンク管に冷却管を取り付け、70℃に加熱したオイルバスに浸漬して6時間攪拌した後、室温まで冷却した。得られた重合液を180gのメタノールに投入してポリマーを析出させ、保留粒子1ミクロンのろ紙でろ過した。得られたウェットケーキ状のポリマーを180gのメタノールに投入し、攪拌洗浄してメタノールを濾別した。これを2回行った後、60℃、10torrで3日間乾燥して、4.5gの白色ポリマーを得た。得られたポリマー中のDMOC含有量、平均共重合組成、重量平均分子量及び多分散度を表1に示す。
【0067】
比較例1
酸によって切断される部位を主鎖に有さないポリ(p−ヒドロキシストレン−co−t−ブチルアクリレートの合成
【化27】

【0068】
連鎖移動剤として、DMOCの代わりに3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール(以下、DOODTと略す)0.24gを使用したした以外は実施例2と同様な方法で、ポリマーを7g合成した。得られたポリマー中のDOODT含有量、平均共重合組成、重量平均分子量及び多分散度を表1に示す。
【0069】
比較例2
酸によって切断される部位を主鎖に有さないポリ(5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン−co−2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート)の合成
【化28】

【0070】
連鎖移動剤として、DMOCの代わりにDOODT0.15gを使用した以外は実施例3と同様な方法で、ポリマーを7g合成した。得られたポリマー中のDOODT含有量、平均共重合組成、重量平均分子量及び多分散度を表1に示す。
【0071】
比較例3
酸によって切断される部位を主鎖に有さないポリ(γ−ブチロラクトン−2−イルメタクリレート−co−t−ブチルメタクリレート)の合成
【化29】

【0072】
連鎖移動剤として、DMOCの代わりにDOODT0.22gを使用した以外は実施例4と同様な方法で、ポリマーを4g合成した。得られたポリマー中のDOODT含有量、平均共重合組成、重量平均分子量及び多分散度を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
(レジストの感度評価)
実施例2で得た本発明のポジ型感光性樹脂としてにポリマー1g及び光酸発生剤(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミジルトリフルオロメタンスルホネート)0.01gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート5.8gに溶解し、次いで、0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターを用い濾過することによってレジスト組成物を調整した。次に、予めヘキサメチルジシラザン処理してある直径100mmのシリコンウェハーに上記レジストをスピンコートにより塗布し、130℃、60秒間ホットプレート上でベーキングを行い、膜厚0.6μmの薄膜を形成した。そして、この成膜したウェハーを密着型露光実験機中に静置し、石英板上にクロムでパターンを描いたマスクをレジスト膜上に密着させ、そのマスクを通して248nmの紫外線を照射した。その後すぐさま150℃、60秒間ホットプレート上でポストベークし、液温23℃の0.26mol/lの水素化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液で30秒間浸漬法による現像を行い、続けて60秒間純水でリンス処理を行った。この結果、レジスト膜の露光部分のみが現像液に溶解除去されたポジ型のパターンが得られた。同様にして実施例3、4、比較例1、2、3で得た樹脂を用いたレジストについても評価を行った。結果を表2に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
表2の結果から明らかなように、実施例で得た主鎖が酸によって切断する樹脂を含むレジストは、主鎖が酸によって切断されない樹脂を含み、実施例の樹脂と同様の物性を有する樹脂を含むレジストと比較して、レジスト感度が大幅に改善されていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸の作用によって酸解離性保護基が解離し、アルカリ現像液に対する溶解度が増大するポジ型感光性樹脂であって、一般式(1)
【化1】

(式中、R1及びR2は炭素数2〜3の直鎖状又は分岐状の2価の飽和炭化水素基、R3は炭素数2〜5の直鎖状又は分岐状の2価の飽和炭化水素基、R〜R7はそれぞれ炭素数1〜4の同一又は異なる1価の飽和炭化水素基を示す。)
で表される構造を高分子主鎖に有することを特徴とするポジ型感光性樹脂。
【請求項2】
少なくともフェノール性水酸基を有する繰り返し単位を含む共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のポジ型感光性樹脂。
【請求項3】
少なくとも、脂環式骨格を有する(メタ)アクリレート誘導体である繰り返し単位を含む共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポジ型感光性樹脂。
【請求項4】
少なくとも、ラクトン骨格を有する(メタ)アクリレート誘導体である繰り返し単位を含む共重合体であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂。
【請求項5】
一般式(2)
【化2】

(式中、R1及びR2は炭素数2〜3の直鎖状又は分岐状の2価の飽和炭化水素基、R3は炭素数2〜5の直鎖状又は分岐状の2価の飽和炭化水素基、R〜R7はそれぞれ炭素数1〜4の同一又は異なる1価の飽和炭化水素基を示す。)
で表されることを特徴とするジチオール化合物。
【請求項6】
一般式(2)
【化3】

(式中、R1及びR2は炭素数2〜3の直鎖状又は分岐状の2価の飽和炭化水素基、R3は炭素数2〜5の直鎖状又は分岐状の2価の飽和炭化水素基、R〜R7はそれぞれ炭素数1〜4の同一又は異なる1価の飽和炭化水素基を示す。)
で表されるジチオール化合物の存在下で原料モノマーを重合させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂の製造方法。
【請求項7】
少なくとも請求項1から4に記載のいずれかの樹脂と光酸発生剤を含むことを特徴とするレジスト組成物。

【公開番号】特開2006−91762(P2006−91762A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280353(P2004−280353)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000157603)丸善石油化学株式会社 (84)
【Fターム(参考)】