説明

ポジ型感光性樹脂組成物及び永久レジスト

【課題】高耐熱性、高耐溶剤性、高透過率及び低誘電率の層間絶縁膜の形成に好適であり、現像工程において最適現像時間を越えてもなお良好なパターン形状を形成できるような大きな現像マージンを有するポジ型感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ベース樹脂としてカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するポリシロキサン化合物、感光性成分として感光性ジアゾキノン化合物、及び有機溶剤を含有するポジ型感光性樹脂組成物に、エポキシ基を有する環状シロキサン構造の基同士が1分子中に2〜4個のビニル基を有する化合物からビニル基を除いた残基で連結されたエポキシシロキサン化合物を含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のエポキシシロキサン化合物を含有するポジ型感光性樹脂組成物、及び該ポジ型感光性樹脂組成物を用いた永久レジストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と記す。)型液晶表示素子や磁気ヘッド素子、集積回路素子、固体撮像素子等の電子部品には、一般に層状に配置される配線の間を絶縁するために層間絶縁膜が設けられている。層間絶縁膜を形成する材料としては、必要とするパターン形状を得るための工程数が少なくしかも十分な平坦性を有するものが好ましいことから、感放射線性樹脂組成物が幅広く使用されている(特許文献1参照)。上記電子部品のうち、例えばTFT型液晶表示素子は、上記の層間絶縁膜の上に、透明電極膜を形成し、さらにその上に液晶配向膜を形成する工程を経て製造されるため、層間絶縁膜は、透明電極膜の形成工程において高温条件に曝されたり、電極のパターン形成に使用されるレジストの剥離液に曝されたりすることとなるため、これらに対する十分な耐性が必要となる。また製造工程によっては形成した層間絶縁膜がドライエッチングに曝される場合もあり、ドライエッチングに対する十分な耐性が必要となる(特許文献2参照)。
【0003】
また近年、TFT型液晶表示素子においては、大画面化、高輝度化、高精細化、高速応答化、薄型化等の動向にあり、それに用いられる層間絶縁膜形成用組成物としては、高感度であり、形成される層間絶縁膜には低誘電率、高透過率等において、従来にも増して高性能が要求されている。絶縁性、耐熱性、耐溶剤性、ドライエッチング耐性等に優れ、微細なパターンが形成可能な層間絶縁膜材料としては、カルボキシル基を有するポリシロキサン化合物と感光性ジアゾキノン化合物を含有するポジ型感光性組成物(特許文献3参照)が開発され、エポキシ基を含有する環状シロキサン化合物を含有する組成物も知られているが現像工程における現像マージン(現像時間が最適となる時間の幅)が小さいために、現像時間がわずかでも過剰となると、形成されたパターンと基板との間に現像液が浸透して剥がれが生じやすくなるため、現像時間を厳密に制御する必要があり、製品の歩留まりの点で問題があった。
一方、エポキシ基を有する環状シロキサン化合物が連結された化合物が知られている(特許文献4参照)が、このような化合物を含有するポジ型感光性樹脂組成物は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−354822号公報
【特許文献2】特開2005−345757号公報
【特許文献3】特開2010−101957号公報
【特許文献4】特表2001−513117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高耐熱性、高耐溶剤性、高透過率及び低誘電率の層間絶縁膜の形成に好適であり、現像工程において最適現像時間を超えてもなお良好なパターン形状を形成できるような大きな現像マージンを有するポジ型感光性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記に鑑み鋭意研究の結果、本発明に到達した。
即ち、本発明は、ベース樹脂としてカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するポリシロキサン化合物、感光性成分として感光性ジアゾキノン化合物、及び有機溶剤を含有するポジ型感光性樹脂組成物において、下記一般式(1)で表わされる基同士が、又は下記一般式(1)で表わされる基と下記一般式(2)で表わされる基とが、1分子中に2〜4個のビニル基を有する化合物からビニル基を除いた残基で連結されたエポキシシロキサン化合物を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物を提供するものである。
【化1】

(式中、R1は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わし、Eはエポキシ基を有する基を表わし、aは2〜5の数を表わす。)
【化2】

(式中、bはa−b+1が0〜4の数となる2〜6の数を表わし、R1、E及びaは上記一般式(1)と同義である。)
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果は、高耐熱性、高耐溶剤性、高透過率及び低誘電率の層間絶縁膜の形成に好適であり、現像工程において最適現像時間を超えてもなお良好なパターン形状を形成できるような大きな現像マージンを有するポジ型感光性樹脂組成物を提供したことにある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のポジ型感光性樹脂組成物及び永久レジストについて、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0009】
本発明は、ベース樹脂としてカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するポリシロキサン化合物(以下、本発明のベース樹脂ともいう)、感光性成分として感光性ジアゾキノン化合物、及び有機溶剤を含有するポジ型感光性樹脂組成物に、上記一般式(1)で表わされる基同士が、又は上記一般式(1)で表わされる基と上記一般式(2)で表わされる基とが、1分子中に2〜4個のビニル基を有する化合物からビニル基を除いた残基で連結されたエポキシシロキサン化合物(以下、本発明のエポキシシロキサン化合物ともいう)を含有させたことに特徴がある。先ず、本発明のエポキシシロキサン化合物について説明する。
【0010】
上記一般式(1)において、R1は、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素原子数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2級ブチル、イソブチル、t−ブチル、等が挙げられる。炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル、エチルフェニル、トルイル、クメニル、キシリル、プソイドクメニル、メシチル、t−ブチルフェニル、フェネチル等が挙げられる。R1としては、耐熱性が向上することから、メチル、エチル及びフェニルが好ましく、メチル及びフェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。
【0011】
上記一般式(1)において、Eはエポキシ基を有する基を表わす。エポキシ基を有する基としては、下記式(5)又は(6)等の脂肪族エポキシ基、下記式(7)〜(9)等の脂環式エポキシ基、下記式(10)又は(11)等の芳香族エポキシ基等が挙げられるが、本発明のポジ型感光性樹脂組成物の保存安定性の点からは、下記式(5)又は(6)の脂肪族エポキシ基を部分構造とする基が好ましく、下記式(5)の1,2−エポキシプロピル基がより好ましく、中でもグリシジルエーテル基を有する基がより一層好ましく、3−グリシドキシプロピル基が最も好ましい。
【0012】
【化3】

【0013】
上記一般式(1)において、aは2〜5の数を表わし、工業的な原料の入手が容易であることから、aとしては2〜4の数が好ましく、2〜3の数が更に好ましく、3の数が最も好ましい。
【0014】
上記一般式(2)において、bはa−b+1が0〜4の数となる2〜6の数を表わし、R1、E及びaは上記一般式(1)と同義である。
【0015】
本発明のエポキシシロキサン化合物において、上記の1分子中に2〜4個のビニル基を有する化合物のビニル基の数は、アルカリ現像後の基板へのレジスト残渣が残りにくいことから、2の数が好ましい。上記の1分子中に2〜4個のビニル基を有する化合物としては、下記一般式(12)〜(18)で表わされる化合物が挙げられ、耐熱性の点からは、下記一般式(12)〜(14)で表わされる化合物が好ましく、工業的な入手の容易さの点からは、下記一般式(16)で表わされる化合物が好ましい。
【0016】
【化4】

(式中、R4〜R6は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わし、cは1〜3の数を表わし、d及びeは各々独立して0〜6の数を表わす。)
【0017】
【化5】

(式中、R7〜R9は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わし、fは0〜10の数を表わす。)
【0018】
【化6】

(式中、R10は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わし、gは3〜4の数を表わす。)
【0019】
【化7】

(式中、R11及びR12は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。)
【0020】
【化8】

(式中、hは1〜2の数を表わす。)
【0021】
【化9】

(式中、jは1〜3の数を表わす。)
【0022】
【化10】

(式中、R13は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、グリシジル基又はアリル基を表わす。)
【0023】
上記一般式(12)で表わされる化合物は、1分子中に2〜4個のビニル基を有する化合物である。上記一般式(12)において、R4〜R6は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、上記一般式(1)のR1の説明で例示した基等が挙げられ、R4〜R6としては、耐熱性が良好であることから、メチル、エチル、プロピル及びフェニルが好ましく、メチル、エチル及びフェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。cは1〜3の数を表わし、d及びeは各々独立して0〜6の数を表わす。
【0024】
cが1の数である上記一般式(12)で表わされる化合物の中で、好ましい化合物としては、ジメチルジビニルシラン、ジエチルジビニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラエチル−1,3−ジビニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジビニルジシロキサン等が挙げられ、ジメチルジビニルシラン、ジエチルジビニルシラン及びジフェニルジビニルシランが好ましく、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサンが更に好ましい。cが2の数である上記一般式(12)で表わされる化合物の中で、好ましい化合物としては、メチルトリビニルシラン、エチルトリビニルシラン、フェニルトリビニルシラン、1,1,3,5,5−ペンタメチル−1,3,5−トリビニルトリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3−フェニル−1,3,5−トリビニルトリシロキサン、トリス(ジメチルビニルシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルビニルシロキシ)フェニルシラン等が挙げられる。cが3の数である上記一般式(12)で表わされる化合物の中で、好ましい化合物としては、テトラビニルシラン、テトラキス(ジメチルビニルシロキシ)シラン等が挙げられる。
【0025】
上記一般式(13)で表わされる化合物は、1分子中に4個のビニル基を有する化合物である。上記一般式(13)において、R7〜R9は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、上記一般式(1)のR1の説明で例示した基等が挙げられ、R7〜R9としては、耐熱性が良好であることから、メチル、エチル、プロピル及びフェニルが好ましく、メチル、エチル及びフェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。fは0〜10の数を表わす。上記一般式(13)で表される化合物の中で、好ましい化合物としては、1,3−ジメチル−1,1,3,3−テトラビニルジシロキサン、1,3,3,5−テトラメチル−1,1,5,5−テトラビニルトリシロキサン、1,5−ジメチル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラビニルトリシロキサン等が挙げられる。
【0026】
上記一般式(14)で表わされる化合物は、1分子中に3〜4個のビニル基を有する化合物である。上記一般式(14)において、R10は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、上記一般式(1)のR1の説明で例示した基等が挙げられ、R10としては、耐熱性が良好であることから、メチル、エチル、プロピル及びフェニルが好ましく、メチル、エチル及びフェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。gは3〜4の数を表わし、工業的な入手の容易さから、gとしては、4の数が好ましい。gが3の数である上記一般式(14)で表される化合物の中で、好ましい化合物としては、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリビニルシクロトリシロキサン、2,4,6−トリエチル−2,4,6−トリビニルシクロトリシロキサン、2,4,6−トリフェニル−2,4,6−トリビニルシクロトリシロキサン、2,4−ジメチル−6−フェニル−2,4,6−トリビニルシクロトリシロキサン等が挙げられる。gが4の数である上記一般式(14)で表される化合物の中で、好ましい化合物としては、2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラエチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラフェニル−2,4,6,8−テトラビニルシクロトリシロキサン2,4,6−トリメチル−8−フェニル−2,4,6,8−テトラビニルシクロトリシロキサン、2,4−ジメチル−6,8−ジフェニル−2,4,6,8−テトラビニルシクロトリシロキサン等が挙げられる。
【0027】
上記一般式(15)で表わされる化合物は、1分子中に2個のビニル基を有する化合物である。上記一般式(15)において、R11及びR12は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、上記一般式(1)のR1の説明で例示した基等が挙げられ、R11及びR12としては、耐熱性が良好であることから、メチル、エチル、プロピル及びフェニルが好ましく、メチル、エチル及びフェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。上記一般式(15)で表される化合物の中で、好ましい化合物としては、1,2−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(ジエチルビニルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(ジエチルビニルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジエチルビニルシリル)ベンゼン等が挙げられ、1,2−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン及び1,4−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼンが好ましく、1,4−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼンが更に好ましい。
【0028】
上記一般式(16)で表わされる化合物は、1分子中に2〜3個のビニル基を有する化合物である。上記一般式(16)において、hは1〜2の数を表わす。hが1の数である上記一般式(16)で表わされる化合物としては、1,2−ジビニルベンゼン、1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼンが挙げられる。hが2の数である上記一般式(16)で表わされる化合物としては、1,2,4−トリビニルベンゼン、1,3,5−トリビニルベンゼンが挙げられる。
【0029】
上記一般式(17)で表わされる化合物は、1分子中に2〜4個のビニル基を有する化合物である。上記一般式(17)において、jは1〜3の数を表わす。jが1の数である上記一般式(17)で表わされる化合物としては、1,2−ジビニルシクロヘキサン、1,3−ジビニルシクロヘキサン、1,4−ジビニルシクロヘキサンが挙げられる。hが2の数である上記一般式(17)で表わされる化合物としては、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリビニルシクロヘキサンが挙げられる。hが3の数である上記一般式(17)で表わされる化合物としては、1,2,4,5−テトラビニルシクロヘキサンが挙げられる。
【0030】
上記一般式(18)で表わされる化合物は、1分子中に2〜3個のビニル基を有する化合物である。上記一般式(18)において、R13は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、グリシジル基又はアリル基を表わす。R13としては、耐熱性の点から、メチル、エチル、グリシジル及びアリルが好ましい。上記一般式(18)で表わされる化合物の中で、好ましい化合物としては、1,3−ジアリル−5−メチルイソシアヌレート、1,3−ジアリル−5−エチルイソシアヌレート、1,3−ジアリル−5−グリシジルイソシアヌレート、1,3,5−トリアリルイソシアヌレート等挙げられる。
【0031】
本発明のエポキシシロキサン化合物におけるエポキシ基の割合は、あまりに少ない場合には、得られる硬化物の機械的物性が低下することから、エポキシ当量で、1000以下であることが好ましく、700以下であることが更に好ましく、350以下であることが最も好ましい。尚、エポキシ当量とは、分子量をエポキシ基の数で割った値、すなわちエポキシ基1個当たりの分子量をいう。
【0032】
本発明のエポキシシロキサン化合物の分子量は、あまりに小さい場合には、現像マージンの改善効果が小さく、またあまりに大きい場合には、アルカリ現像後の基板へのレジスト残渣が残る場合があることから、質量平均分子量で1000〜10000であることが好ましく、1500〜7000であることが更に好ましく、2000〜5000であることが最も好ましい。尚、本発明において、質量平均分子量とは、テトラヒドロフランを溶媒としてGPC(Gel Permeation Chromatography)分析を行った場合のポリスチレン換算の質量平均分子量をいう。
【0033】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、本発明のエポキシシロキサン化合物の含有量は、あまりに少ない場合には、現像マージンの改善効果が小さく、またあまりに多い場合には、アルカリ現像性及びレジストの物性への悪影響があり、現像後の基板へのレジスト残渣が残る場合があることから、本発明のベース樹脂100質量部に対して、1〜30質量部が好ましく、2〜25質量部が更に好ましく、3〜20質量部が最も好ましい。
【0034】
本発明のエポキシシロキサン化合物は、下記一般式(1a)で表わされる環状シロキサン化合物のSiH基に、1分子中に2〜4個のビニル基を有する化合物のビニル基をヒドロシリル化反応させた後、更にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有するエポキシ化合物をヒドロシリル化反応させることにより得ることができる。
【0035】
【化11】

(式中、R1及びaは上記一般式(1)と同義である。)
【0036】
上記一般式(1a)で表わされる環状シロキサン化合物と1分子中に2〜4個のビニル基を有する化合物とのヒドロシリル化反応は、触媒を用いて行うことが好ましく、ヒドロシリル化触媒としては、例えば、白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。白金系触媒としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体、白金−カルボニルビニルメチル錯体(Ossko触媒)、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(KaRstedt触媒)、白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金−オクチルアルデヒド錯体、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt[P(C6534、PtCl[P(C6533、Pt[P(C4934]、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OC6534)、Pt[P(OC4934)、ジカルボニルジクロロ白金等が挙げられる。パラジウム系触媒又はロジウム系触媒としては、例えば、上記白金系触媒の白金原子の代わりにパラジウム原子又はロジウム原子を含有する化合物が挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ヒドロシリル化触媒としては、反応性の点から、白金系触媒が好ましく、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体及び白金−カルボニルビニルメチル錯体が更に好ましく、白金−カルボニルビニルメチル錯体が最も好ましい。また、触媒の使用量は、反応性の点から、各原料の合計量の5質量%以下が好ましく、0.0001〜1.0質量%が更に好ましく、0.001〜0.1質量%が最も好ましい。ヒドロシリル化の反応条件は特に限定されず、上記触媒を使用して従来公知の条件で行なえばよいが、反応速度の点から、室温(25℃)〜130℃で行なうのが好ましく、反応時にトルエン、ヘキサン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の従来公知の溶媒を使用してもよい。
【0037】
上記一般式(1a)で表わされる環状シロキサン化合物と1分子中に2〜4個のビニル基を有する化合物との反応物と、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有するエポキシ化合物とのヒドロシリル化反応は、上記一般式(1a)で表わされる環状シロキサン化合物と1分子中に2〜4個のビニル基を有する化合物とのヒドロシリル化反応と同様の条件で行えばよく、このヒドロシリル化反応の後に、反応物を単離・精製せずに、引き続き反応させることが好ましい。
【0038】
上記SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有するエポキシ化合物として、5,6−エポキシヘキセン、7,8−エポキシオクテン、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等を使用すれば上記式(5)の脂肪族エポキシ基;3,4−エポキシ−3−メチルブテン等を使用すれば上記式(6)の脂肪族エポキシ基;1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタクリレート等を使用すれば上記式(7)の脂環式エポキシ基;1,2−エポキシリモンネン等を使用すれば上記式(8)の脂環式エポキシ基;3−ビニル−5,6−エポキシ−ノルピナン等を使用すれば上記式(9)の脂環式エポキシ基;4−エポキシエチルスチレン等を使用すれば上記式(10)の芳香族エポキシ基:4−(1−メチルエポキシエチル)スチレン等を使用すれば上記式(11)の芳香族エポキシ基が、それぞれ導入できる。
【0039】
次に、本発明のベース樹脂について説明する。本発明のベース樹脂は、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するポリシロキサン化合物である。感光性成分として感光性ジアゾキノン化合物を含有するポジ型感光性樹脂組成物では、ベース樹脂は本来現像液に可溶であるが、未露光部分では、現像液に不溶或いは難溶である感光性ジアゾキノン化合物によりベース樹脂の現像液への溶解が阻害されるのに対し、露光部分では、感光性ジアゾキノン化合物が紫外線の照射等により分解されることによりベース樹脂が現像液に溶解できるようになることを利用して、パターンが形成される。
カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するポリシロキサン化合物をベース樹脂とするポジ型感光性樹脂組成物では、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するポリシロキサン化合物のカルボキシル基やフェノール性水酸基によりアルカリ現像性は良好となるが、現像マージンが小さくなるという問題があったが、本発明のポジ型感光性樹脂組成物では、本発明のエポキシシラン化合物を含有させることにより、現像マージンを大きくすることができる。
【0040】
本発明のベース樹脂において、カルボキシル基及びフェノール性水酸基の含量は、あまりに少ない場合には、アルカリ現像性が不良となり、またあまりに多い場合には、膜減りが大きくなることなら、合計で0.1〜5mmol/gであることが好ましく、0.5〜4mmol/gであることが更に好ましく、1〜3mmol/gであることが最も好ましい。
【0041】
また、本発明のベース樹脂の分子量は、あまりに小さい場合には、膜減りが大きく、またあまりに多い場合には、アルカリ現像後の基板表面のレジスト残渣が発生しやすいことから、質量平均分子量が1000〜20000であることが好ましく、2000〜16000であることが更に好ましく、4000〜13000であることが最も好ましい。
【0042】
本発明のベース樹脂は、ポジ型感光性樹脂組成物の熱架橋性が向上し、得られる硬化物の機械的強度や耐薬品性が向上することから、シラノール基を含有することが好ましい。本発明のベース樹脂中のシラノール基の含量は、OHの含量として、1〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることが更に好ましく、5〜20質量%であることが最も好ましい。
【0043】
本発明のベース樹脂としては、本発明の添加剤による現像マージンの改善効果が大きいことから、下記一般式(19)で表される環状シロキサン化合物と、下記一般式(20)で表されるシロキサン化合物との加水分解縮合物(上記特許文献3参照)が特に好ましい。
【0044】
【化12】

(式中、R14は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わし、R15は炭素数2〜10の2価の炭化水素連結基を表わし、R16及びR17は同一でも異なっていてもよい炭素数2〜10の2価の飽和脂肪族炭化水素基を表わし、R18及びR19は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表わす。kは1〜3の数を表わし、mは0〜5の数を表わし、nは0〜5の数を表わし、pは1〜5の数を表わす。但し、m、n及びpは、m+n=1〜5、m+n+p=3〜6となる数である。)
【0045】
【化13】

(式中、R20は炭素数6〜10のアリール基を表わし、R21及びR22は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表わし、qは2〜3の数を表わす。)
【0046】
上記一般式(19)において、R14は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、上記一般式(1)のR1の説明で例示した基が挙げられる。R14としては、耐熱性と工業的な入手の容易さの点から、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル及びフェニルが好ましく、メチル及びフェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。
【0047】
上記一般式(19)において、R15は炭素数2〜10の2価の炭化水素連結基を表わす。炭素数2〜10の2価の炭化水素連結基としては、エチレン、プロピレン、1−メチルエチレン、2−メチルエチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、3−メチルペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、シクロヘキサン−1,4−ジイル、2−フェニルエタン−1,4’−ジイル、2−フェニルプロパン−1,4’−ジイル等が挙げられ、R15としては、工業的な入手の容易さと耐熱性の点から、エチレン、2−メチルエチレン及び2−フェニルエタン−1,4’−ジイルが好ましく、2−メチルエチレン及び2−フェニルエタン−1,4’−ジイルが更に好ましく、2−フェニルエタン−1,4’−ジイルが最も好ましい。
【0048】
上記一般式(19)において、R16及びR17は同一でも異なっていてもよい炭素数2〜10の2価の飽和脂肪族炭化水素基を表わす。炭素数2〜10の2価の飽和脂肪族炭化水素基としては、エチレン、プロピレン、1−メチルエチレン、2−メチルエチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、3−メチルペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン等が挙げられ、R16及びR17としては、工業的な入手の容易さと耐熱性の点から、エチレン、2−メチルエチレン、及びプロピレンが好ましく、エチレンが更に好ましい。
【0049】
上記一般式(19)において、R18及びR19は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2級ブチル、t−ブチル等が挙げられる。R18及びR19としては、加水分解縮合反応の反応性が良好であり、本発明のベース樹脂の耐熱性が向上することから、メチル及びエチルが好ましく、メチルが更に好ましい。
【0050】
上記一般式(19)において、kは1〜3の数を表わし、mは0〜5の数を表わし、nは0〜5の数を表わし、pは1〜5を表わす。但し、m、n及びpは、m+n=1〜5、m+n+p=3〜6となる数である。工業的な原料の入手の容易さから、m+n+pとしては、3〜5の数が好ましく、3〜4の数が更に好ましく、4の数が最も好ましい。mに対するnの比は、基板との密着性が良好となることから0.5〜2であることが好ましく、0.8〜1.1.8であることが更に好ましく、1.0〜1.7であることが最も好ましい。
【0051】
上記一般式(20)において、R20は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素数6〜10のアリール基としては、上記一般式(1)のR1の説明で例示したアリール基等が挙げられる。R20としては、耐熱性と工業的な入手の容易さの点から、フェニル及びトルイルが好ましく、フェニルが更に好ましい。R21及びR22は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基としては、上記一般式(1)のR1の説明で例示したアルキル基等が挙げられ、R21及びR22としては、加水分解縮合反応の反応性が良好であり、本発明のベース樹脂の耐熱性が向上することから、メチル及びエチルが好ましく、メチルが更に好ましい。
【0052】
本発明のベース樹脂の分子量は、あまりに小さい場合には、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を対象物に塗布する場合の成膜性が不良となる場合があり、またあまりに大きい場合には、アルカリ現像後の基板表面のレジスト残渣が増加する場合があることから、質量平均分子量で600〜50000であることが好ましく、800〜20000であることが更に好ましく、1000〜10000であることが最も好ましい。
【0053】
本発明のベース樹脂において、カルボキシル基及びフェノール性水酸基の含量は、あまりに少ない場合には、アルカリ現像性が不良となり、またあまりに多い場合には現像時の膜減りが大きくなることから、カルボキシル基の含量をA(単位:mmol/g)、フェノール性水酸基の含量をB(単位:mmol/g)とした場合、A+0.1×Bの値が、0.01〜3mmol/gであることが好ましく、0.05〜2mmol/gであることが更に好ましく、0.1〜1.5mmol/gであることが最も好ましい。
【0054】
上記一般式(19)で表される環状シロキサン化合物と上記一般式(20)で表されるシロキサン化合物との加水分解縮反応は、いわゆるゾル・ゲル反応を行えばよく、このようなゾル・ゲル反応としては、溶媒中で、酸又は塩基等の触媒を使用して加水分解縮合反応を行う方法が挙げられる。この時に用いられる溶媒は特に限定されず、具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1−メトキシ−2−プロパノールアセテート、1,2−ジメトキシエタン、トルエン等が挙げられ、これらの1種を用いることも、2種以上を混合して用いることも出来る。アルコキシリル化合物同士の反応である上記加水分解縮合反応は、該化合物中のアルコキシシリル基が水によって加水分解してシラノール基(Si−OH基)を生成し、この生成したシラノール基同士が、又は、シラノール基とアルコキシシル基が縮合することにより進行する。
【0055】
この加水分解縮合反応を速やかに進ませるためには、適量の水を加えることが好ましく、触媒を水に溶解して加えてもよい。また、空気中の水分、又は、水以外の溶媒中にも含まれる微量の水によってもこの加水分解縮合反応は進行する。この加水分解縮合反応で用いられる酸、塩基等の触媒は、加水分解縮合反応を促進するものであればよく、具体的には、塩酸、リン酸、硫酸等の無機酸類;ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸モノイソプロピル等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等の無機塩基類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン化合物(有機塩基)類等が挙げられ、これらの1種を用いることも、2種以上を併用することも出来る。加水分解縮合反応の温度は、溶媒の種類、触媒の種類及び量等により変わるが、0〜80℃が好ましく、5〜50℃が更に好ましく、8〜30℃が最も好ましい。
【0056】
アルコキシシリル基の加水分解により生成したシラノール基は、全て縮合反応を起こすわけではなく、一部が反応せずに残っている。本発明のベース樹脂は、耐薬品性、基板への密着性等が向上することから、シラノール基を含有することが好ましい。本発明のベース樹脂中のシラノール基の含量は、OHの含量として、1〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることが更に好ましく、5〜20質量%であることが最も好ましい。シラノール基の定量方法としては、シラノール基をトリメチルクロロシラン等でトリメチルシリル化し反応前後の質量増加量により定量する方法(TMS化法)、近赤外線分光光度計(特開2001−208683号公報、特開2003−35667号公報等を参照)や29Si−NMR(特開2007−217249公報等を参照)を使用した機器分析に定量する方法が挙げられる。
【0057】
シラノール基は、縮合反応が起こりやすく、取り扱いによりシラノール基の含量が減少する場合がある。特に、加水分解縮合反応後に生成物を単離した場合に、シラノール基同士の脱水縮合反応が起こりやすいことから、本発明のベース樹脂を製造する場合には、溶媒中で加水分解縮合反応した後に、生成物を単離せずに、溶媒を濃縮又は必要に応じて他の溶媒に置換し、ポジ型感光性樹脂組成物に配合することが好ましい。
【0058】
次に、感光性成分である感光性ジアゾキノン化合物について説明する。
本発明に使用できる感光性ジアゾキノン化合物としては、感光性材料に使用できることが知られているジアゾキノン化合物であれば、特に限定されないが、中でも、感光性が良好で微細なパターンが形成可能であることから、フェノール性水酸基を有する化合物の水素原子が下記式(21)で表される基で置換された化合物(4−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル)又は下記式(22)で表される基で置換された化合物(5−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル)が好ましい。
【0059】
【化14】

【0060】
このような感光性ジアゾキノン化合物の、好ましい具体例としては、例えば、以下の式(23)〜(28)で表される化合物及びそれらの位置異性体等を例示することができる。
【0061】
【化15】

(上記式(23)〜(28)中、Qは上記式(21)若しくは上記式(22)で表される基又は水素原子である。但し、それぞれの式において、Qの全てが水素原子であることはない。)
【0062】
上記式(21)で表される基はi線(波長365nm)領域に吸収を持つため、i線露光に適している。また上記式(22)で表される基は広範囲の波長領域に吸収が存在するため、広範囲の波長での露光に適している。このため、露光する波長によって、上記式(21)で表される基、又は上記式(22)で表される基の何れかを選択することが好ましい。
【0063】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、上記感光性ジアゾキノン化合物の含有量は、本発明のエポキシシロキサン化合物と本発明のベース樹脂との含有量の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部であることが、本発明の永久レジストの現像性、微細加工性の点から好ましい。
【0064】
次に有機溶剤について説明する。
本発明に使用できる有機溶剤としては、特に限定されず、本発明のエポキシシロキサン化合物、本発明のベース樹脂、上記感光性ジアゾキノン化合物及び後述する下記一般式(3)で表わされるアルキルシラン化合物と下記一般式(4)で表わされるアリールシラン化合物との加水分解縮合物を溶解又は分散できればどのよう有機溶剤でも使用できる。このような有機溶剤としては、1−メトキシ−エタノール、1−エトキシ−エタノール、1−プロポキシ−エタノール、1−イソプロポキシ−エタノール、1−ブトキシ−エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のエーテルアルコール類;1−メトキシ−エチルアセテート、1−エトキシ−エチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、3−メトキシ−1−ブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート等のエーテルアルコールの酢酸エステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;4−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシ−3メチル−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−2−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)等のケトアルコール類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等の環状エステル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート等のカーボネート類等が挙げられ、これらの中でも、溶解性が良好であり、適度な揮発性を有することから、エーテルアルコールの酢酸エステル類が好ましく、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、3−メトキシ−1−ブチルアセテート、及び3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテートが更に好ましく、1−メトキシ−2−プロピルアセテートが最も好ましい。
【0065】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、上記有機溶剤の含有量は、ハンドリング性や塗膜の成膜性の点から、本発明のエポキシシロキサン化合物及び本発明のベース樹脂との含有量の合計100質量部に対して、10〜10000質量部、特に100〜1000質量部であることが好ましい。
【0066】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、現像マージンが更に大きくできることから、下記一般式(3)で表わされるアルキルシラン化合物と下記一般式(4)で表わされるアリールシラン化合物との加水分解縮合物(以下、本発明の加水分解縮合物ともいう)を含有することが好ましい。
【0067】
【化16】

(R2は炭素数1〜4のアルキル基を表わし、X1は炭素数1〜4のアルコキシ基又はハロゲン原子を表わす。)
【0068】
【化17】

(R3は炭素数6〜10のアリール基を表わし、X2は炭素数1〜4のアルコキシ基又はハロゲン原子を表わす。)
【0069】
上記一般式(3)において、R2は炭素数1〜4のアルキル基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2級ブチル、イソブチル、t−ブチル等が挙げられ、R2としては、現像マージンが大きくなることから、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル及びイソブチルが好ましく、メチル及びエチルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。X1は炭素数1〜4のアルコキシ基又はハロゲン原子を表わす。炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ等が挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。X1としては、反応性が良好なことから、メトキシ、エトキシ及び塩素原子が好ましく、メトキシ及びエトキシが更に好ましい。
【0070】
上記一般式(3)で表わされるアルキルシラン化合物の中で、好ましい化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシシラン、エチルトリクロロシシラン、プロピルトリクロロシシラン、イソプロピルトリクロロシシシラン、ブチルトリクロロシシラン、イソブチルトリクロロシシラン等が挙げられる。
【0071】
上記一般式(4)において、R3は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル、エチルフェニル、トルイル、クメニル、キシリル、プソイドクメニル、メシチル、t−ブチルフェニル、ベンジル、フェネチル等が挙げられ、R3としては、耐熱性の点から、フェニル及びトルイルが好ましく、フェニルが更に好ましい。X2は炭素数1〜4のアルコキシ基又は塩素原子を表わす。炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ等が挙げられ、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。X2としては、反応性が良好なことから、メトキシ、エトキシ及び塩素原子が好ましく、メトキシが更に好ましい。
【0072】
上記一般式(4)で表わされるアリールシラン化合物の中で、好ましい化合物としては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、トルイルトリメトキシシラン、トルイルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、トルイルトリクロロシラン等が挙げられる。
【0073】
本発明の加水分解縮合物において、上記一般式(3)で表わされるアルキルシラン化合物に対する上記一般式(4)で表わされるアリールシラン化合物の反応比は、あまりに少ない場合には、本発明のベース樹脂との相溶性が低下し、またあまりに多い場合には、得られる硬化物の機械的物性(例えば、耐クラック性)等に悪影響がでる場合があることから、モル比で0.1〜10が好ましく、0.2〜4が更に好ましく、0.4〜2が最も好ましい。
【0074】
本発明の加水分解縮合物は、その機能を低下させない範囲であれば、上記一般式(3)で表わされるアルキルシラン化合物や下記一般式(4)で表わされるアリールシラン化合物の一部を、テトラアルコキシシラン化合物、R2で表わされる基(炭素数1〜4のアルキル基)及び/又はR3で表わされる基(炭素数6〜10のアリール基)を有するジアルコキシシラン化合物又はジハロシラン化合物、R3で表わされる基(炭素数6〜10のアリール基)を有するシランジオール化合物で置き換えて反応させてもよい。
このような化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン化合物;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジプロピルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン等のR2で表わされる基を有するジアルコキシシラン化合物又はジハロシラン化合物;
ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン等のR3で表わされる基を有するジアルコキシシラン化合物又はジハロシラン化合物;
メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、エチルフェニルジメトキシシラン、エチルフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジクロロシラン、エチルフェニルジクロロシラン等のR2で表わされる基及びR3で表わされる基を有するジアルコキシシラン化合物又はジハロシラン化合物;
ジフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール等のR3で表わされる基を有するシランジオール化合物が挙げられる。
【0075】
本発明の加水分解縮合物の分子量は、あまりに小さい場合には、現像マージンの改善効果がみられず、またあまりに大きい場合には、アルカリ現像液への溶解性が低下しアルカリ現像後のレジスト残渣が増加する場合があることから、質量平均分子量で600〜20000であることが好ましく、800〜10000であることが更に好ましく、1000〜5000であることが最も好ましい。
【0076】
上記一般式(3)で表わされるアルキルシラン化合物と上記一般式(4)で表わされるアリールシラン化合物との加水分解縮合反応は、本発明のベース樹脂の場合と同様の条件で行えばよい。加水分解縮合反応では、アルコキシシラン化合物とハロシラン化合物のどちらを使用してもよく、それぞれを混合して使用してもよいが、反応の制御や副生成物の除去が用意であることから、アルコキシシラン化合物である、炭素数1〜4のアルキルトリアルコキシシラン(上記一般式(3)中のX1が炭素数1〜4のアルコキシ基である化合物)と、アルコキシシラン化合物である、炭素数6〜10のアリールトリアルコキシシラン(上記一般式(4)中のX2が炭素数1〜4のアルコキシ基である化合物)とを用いることが好ましい。
【0077】
本発明の加水分解縮合物は、本発明のポジ型感光性樹脂組成物の現像マージンを大きくできることから、シラノール基を含有することが好ましく、本発明の加水分解縮合物中のシラノール基の含量は、OHの含量として、1〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることが更に好ましく、5〜20質量%であることが最も好ましい。
【0078】
トリアルコキシシリル基やトリハロシリル基を有する化合物の加水分解により生成するシラノール基は、縮合反応が起こりやすく、取り扱いによりシラノール基の含量が減少する場合がある。特に、加水分解縮合反応後に生成物を単離した場合に、シラノール基同士の脱水縮合反応が起こりやすいことから、本発明の添加剤を製造する場合には、溶媒中で加水分解縮合反応した後に、生成物を単離せずに、溶媒を濃縮又は必要に応じて他の溶媒に置換し、ポジ型感光性樹脂組成物に配合することが好ましい。
【0079】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、本発明の加水分解縮合物の含有量は、あまりに少ない場合には、現像マージンが改善されず、またあまりに多い場合には、現像時に残渣が発生しやすくなること、及び得られる硬化物の物性が低下することから、本発明のベース樹脂100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましく、10〜70質量部であることが更に好ましく、15〜50質量部であることが最も好ましい。
【0080】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、このほか、必要に応じて、可塑剤、チクソ性付与剤、光酸発生剤、熱酸発生剤、分散剤、消泡剤、顔料、染料等の任意成分を配合することができる。これらの任意成分の配合量は、特に制限されるわけではないが、本発明のベース樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以下である。
【0081】
次に、本発明の永久レジストについて説明する。本発明の永久レジストは、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を使用して作製される。以下、本発明の永久レジストを作製する工程について説明する。
【0082】
(第1工程)塗膜形成工程
塗膜形成工程は、調製した本発明のポジ型感光性樹脂組成物を対象材料上に塗布した後、プリベークを行ない、塗膜を形成する工程である。塗膜を形成する対象材料としては、ポジ型感光性樹脂組成物中の有機溶剤等に対する耐薬品性、第4工程のアルカリ性溶液による現像や第6工程における処理に対する耐熱性等を有する材料であれば特に限定されるものではなく、ガラス、金属、半導体等を対象材料とすることができる。特に、絶縁層としての永久レジストを必要とする液晶ディスプレーのTFT表面等を好ましいものとして例示することができる。塗布の方法としては、特に限定されず、例えばスピンコート法、ディップコート法、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、スリットコート法等の各種の塗布方法を利用することができる。
【0083】
プリベークは、上記対象材料上に塗布されたポジ型感光性樹脂組成物層から有機溶剤を除去するために行なう。プリベークされたポジ型感光性樹脂組成物層は、アルカリ性溶液に対し難溶性であり、第2工程の露光工程で光を照射することにより、光が照射された部分(以下、露光部分という場合がある)がアルカリ可溶性となる。プリベークの温度は、使用した有機溶剤の種類によっても異なるが、温度が低すぎると、有機溶剤の残留分が多くなり、露光感度や解像度の低下の原因となる場合があり、また温度が高すぎると、プリベークにより塗膜の全体の硬化が進行し、光が照射された部分のアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、結果として露光感度や解像度が低下する場合があることから、60〜140℃が好ましく、70〜120℃が更に好ましい。プリベークの時間は、使用した有機溶剤の種類とプリベークの温度により異なるが、30秒〜10分が好ましく、1〜5分が更に好ましい。
【0084】
プリベークは、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を上記対象材料上に塗布した後、そのまま行ってもよいが、本発明の永久レジストの高熱履歴後の物性、耐薬品性等が向上することから、プリベークの前に、室温〜60℃未満の温度で、常圧又は減圧下に、ポジ型感光性樹脂組成物層中の有機溶剤の濃度が5質量%以下になるよう有機溶剤を揮発させた後に、プリベークを行うことが好ましい。プリベーク後のポジ型感光性樹脂組成物層の厚さは、本発明の永久レジストが使用される用途により異なり、特に限定されないが、0.1μm〜100μm、好ましくは0.3μm〜10μmであれば良い。
【0085】
(第2工程)露光工程
露光工程は、プリベークされたポジ型感光性樹脂組成物層に対して、パターン化された光を照射し、露光部分のアルカリ溶解性を向上させる工程である。プリベークされたポジ型感光性樹脂組成物層は、アルカリ性溶液に対し難溶性であるが、光照射により露光部分の感光性ジアゾキノン化合物が分解されて、インデンカルボン酸化合物に変化して、アルカリ性溶液に溶解・分散が可能になる。照射光としては、特に限定されず、プリベークされたポジ型感光性樹脂組成物層の光照射部のアルカリ溶解性を向上させることのできるエネルギー量の光であればよく、例えば、エネルギー量が10〜1000mJ/cm2の範囲、特に40〜300mJ/cm2の範囲の光が好ましい。また照射光の波長は可視光でも紫外光でも良く特に限定されないが、上記感光性ジアゾキノン化合物として、4−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル類を使用した場合には、i線(365nm)を主体とする狭い波長の光を、5−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル類を使用した場合には、i線(365nm)、h線(405nm)及びg線(436nm)を含むブロードな波長の光を、高圧水銀灯、超高圧水銀灯等を用いて照射すればよい。上記照射光のパターン化の方法は、特に限定されず、従来知られている方法、例えば、フォトマスク等を介した光照射方法であってもよく、レーザー光用いた選択的な光照射方法でもよい。
【0086】
(第3工程)現像工程
現像工程は、第2工程の露光工程で、光が照射されてアルカリ溶解性が向上した部分(露光部分)を、現像液を用いて除去することにより所定のパターンを形成する工程である。露光部分は、現像液で除去した後、流水又はシャワーにより水でリンスすることが好ましく、必要により50〜120℃の範囲で、脱水乾燥させてもよい。
現像方法としては、例えば、液盛り法、浸漬法、シャワー法、スプレー法等の何れの方法も利用することができる。最適の現像時間は、ベース樹脂であるカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するポリシロキサン化合物の種類や分子量、現像液の温度等によって異なるが、通常30〜180秒間である。従来、ベース樹脂としてカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するポリシロキサン化合物、感光性成分として感光性ジアゾキノン化合物、及び有機溶剤を含有するポジ型感光性樹脂組成物では、現像工程における現像マージンが小さいという問題があったが、本発明の添加剤を含有させることにより、現像マージンが大きくなり、現像時間が最適の現像時間よりも多少長くなっても、パターンと基板との間への現像液の浸透による剥がれが生じにくく、製品の歩留まりを向上させることができる。
【0087】
現像工程で用いられる現像液は、露光部分を液中に溶解又は分散して除去できるものであれば特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア等の無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミン等の1級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の2級アミン類;トリメチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン類;ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の3級アルカノールアミン類;ピロール、ピペリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、1、8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1、5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等の環状3級アミン類;ピリジン、コリジン、ルチジン、キノリン等の芳香族3級アミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩の水溶液等のアルカリ類の水溶液を用いることができ、その濃度は、従来のポジ型感光性樹脂組成物層の除去に用いられる現像液のアルカリ濃度でよい。これらアルカリ類の水溶液は、更に、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒及び/又は界面活性剤を適当量含有してもよい。
【0088】
(第4工程)ブリーチング露光工程
ブリーチング露光工程は、第3工程の現像工程におけるアルカリ溶液処理にて残存したポジ型感光性樹脂組成物層(以下、レジスト層ともいう)の全体に光を照射して可視光透過性を向上させる(ブリーチング露光)工程である。レジスト層は、感光性ジアゾキノン化合物を含有していることから、淡黄色乃至淡褐色に着色している。レジスト層に光を照射すると、残存する未反応の感光性ジアゾキノン化合物が光分解して、可視光領域で吸収のないインデンカルボン酸化合物に変化して可視光透過性が向上するため、本発明の永久レジストを、液晶表示装置、有機EL表示装置等に用いられるアクティブマトリクス基板用の永久レジストとして用いる場合に特に好ましいものとなる。ブリーチング露光工程における、照射光は、特に限定されず、例えばエネルギー量が10〜1000mJ/cm2の範囲、好ましくは40〜600mJ/cm2の範囲の光を照射すればよい。また照射光の波長は、可視光でも紫外光でも良く、特に限定されないが、第2工程の露光工程と同様に、使用した感光性ジアゾキノン化合物の種類に応じて、照射光の波長を選択することが好ましい。
【0089】
(第5工程)ポストベーク工程
第4工程において、ブリーチング露光されたレジスト層は可視光透過性が向上するが、アルカリ溶解性も向上する。ポストベーク工程は、このようなブリーチング露光されたレジスト層に対して、120℃以上の熱処理を行い、レジスト層中のシリコーン樹脂を熱架橋させ、永久レジストとして要求される耐熱性、耐薬品性及び耐経時変化性を付与して、本発明の永久レジストとする工程である。ポストベークは、好ましくは、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下に、120〜400℃の温度で15分〜2時間行うことが好ましく、200〜350℃の温度で15分〜2時間行うことが更に好ましい。
【0090】
第1工程である塗膜形成工程において、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、半導体基板等の対象材料上に直接塗布して使用してもよいが、支持体フィルム上に塗布して塗膜を形成し、ドライフィルムレジストとして使用してもよい。ドライフィルムレジストは、塗膜形成後、プリベークして塗膜中の溶剤を除去し、塗膜表面に保護フィルムをラミネートして作製される。本発明のポジ型感光性樹脂組成物から得られたドライフィルムレジストを使用する場合は、ドライフィルムレジストから保護フィルムを剥がした後、該ドライフィルムレジストを、上記対象材料上に熱圧着して貼り付け、必要に応じて上記支持体フィルムを剥がした後、上記の条件で露光、現像、ブリーチング露光、ポストベークを行えばよい。
上記支持体フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン等が使用できるが、支持体フィルムとしての熱的特性及び機械的特性に優れることから、PETフィルムが好ましい。支持体フィルムの膜厚は、通常1μm〜5mmであり、好ましくは10μm〜100μmである。支持体フィルム上に形成される塗膜の厚さは用途により異なり、特に限定されないが、0.1μm〜100μm、好ましくは0.3μm〜10μmが目安となる。
【0091】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物から得られる永久レジストは、透明性、絶縁性、耐熱性、及び耐薬品性に優れるだけでなく、300〜350℃程度の高温の熱履歴(高熱履歴)後の透明性、絶縁性及び耐薬品性にも優れることから、液晶表示装置、有機EL表示装置等に用いられるアクティブマトリクス基板用の層間絶縁膜、中でも、多結晶シリコン薄膜を活性層とするTFTを有するアクティブマトリクス基板用の層間絶縁膜として極めて有用である。
【0092】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物から得られる永久レジストは、半導体素子の層間絶縁膜や、半導体素子のウエハコート材料(表面保護膜、バンプ保護膜、MCM(multi-chip module)層間保護膜、ジャンクションコート)、パッケージ材(封止材、ダイボンディング材)にも使用することができる。
【0093】
更に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物から得られる永久レジストは、半導体素子、多層配線板等の絶縁膜としても有用である。半導体素子としては、ダイオード、トランジスタ、化合物半導体、サーミスタ、バリスタ、サイリスタ等の個別半導体素子、DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)、SRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリー)、EPROM(イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、マスクROM(マスク・リード・オンリー・メモリー)、EEPROM(エレクトリカル・イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリー)、フラッシュメモリー等の記憶素子、マイクロプロセッサー、DSP、ASIC等の理論回路素子、MMIC(モノリシック・マイクロウェーブ集積回路)に代表される化合物半導体等の集積回路素子、混成集積回路(ハイブリッドIC)、発光ダイオード、電荷結合素子等の光電変換素子等が挙げられる。また、多層配線板としては、MCM等の高密度配線板等が挙げられる。
【実施例】
【0094】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、シラノール基の含量は、試料をピリジン溶液中でトリメチルクロロシランと反応させてシラノール基をトリメチルシリルエーテル基に変えた後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド((CH34NOH)水溶液で処理してC−O−Si結合を加水分解し、反応後の重量増加率から逆算して求めた。尚、特に断らない限り「%」は質量単位である。
【0095】
〔製造例1:本発明のエポキシシラン化合物A−1の製造〕
温度計及び攪拌装置を備えたガラス製反応容器に、トルエン250g、上記一般式(1a)で表わされる環状シロキサン化合物として2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン144g(0.6モル)、1分子中に2〜4個のビニル基を有する化合物として1,4−ジビニルベンゼン52g(0.4モル)、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する化合物としてアリルグリシジルエーテル194g(1.7モル)、及び白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)9mgを加えて、攪拌しながら50〜60℃で15時間反応させた。この反応液から溶媒を60℃で減圧留去させ、グリシジルエーテル基を有するシロキサン化合物である、本発明のエポキシシラン化合物A−1を得た。得られた本発明のエポキシシラン化合物A−1は、上記一般式(1)においてR1がメチル、Eが上記式(5)のエポキシ基を有する基であり、aが3の数に相当し、1分子中に2〜4個のビニル基を有する化合物が1,4−ジビニルベンゼン(上記一般式(16)中のhが1の数である化合物)である化合物である。また本発明のエポキシシラン化合物A−1のGPC分析による質量平均分子量は1500であり、エポキシ当量の分析値は244であった。
【0096】
〔製造例2:本発明のエポキシシラン化合物A−2の製造〕
温度計及び攪拌装置を備えたガラス製反応容器に、トルエン250g、上記一般式(1a)で表わされる環状シロキサン化合物として2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン240g(1.0モル)、1分子中に2〜4個のビニル基を有する化合物として1,3,5−トリアリルイソシアヌレート24.9g(0.1モル)及び白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)9mgを加えて、攪拌しながら50〜60℃で5時間反応させた。この反応液から溶媒及び未反応の2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンを100℃で減圧留去させた後、トルエン250gと、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有する化合物としてアリルグリシジルエーテル114g(1.0モル)とを加えて、攪拌しながら50〜60℃で15時間反応させた。この反応液から溶媒を60℃で減圧留去させて、グリシジルエーテル基を有するシロキサン化合物である、本発明のエポキシシラン化合物A−2を得た。得られた本発明のエポキシシラン化合物A−2は、上記一般式(1)においてR1がメチル、Eが上記式(5)のエポキシ基を有する基であり、aが3の数に相当し、1分子中に2〜4個のビニル基を有する化合物が1,3,5−トリアリルイソシアヌレート(上記一般式(18)中のR13がアリルである化合物)である化合物である。また本発明のエポキシシラン化合物A−2のGPC分析による質量平均分子量は2400であり、エポキシ当量の分析値は267であった。
【0097】
〔製造例3:本発明のベース樹脂B−1の製造〕
上記特許文献3の段落〔0152〕〜〔0155〕に記載のシリコーン樹脂(a)の製造例に準じ、本発明のベース樹脂B−1を製造した。即ち、温度計及び攪拌装置を備えたガラス製反応容器に、トルエン300g、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン120g(0.5モル)、4−ビニル安息香酸−t−ブチルエステル102g(0.5モル)、4−t−ブトキシスチレン132g(0.75モル)、トリメトキシビニルシラン111g(0.75モル)、及び白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)1mgを加えて、攪拌しながら60℃で15時間反応した後、溶媒を60℃で減圧留去させ、上記一般式(19)で表わされる環状シロキサン化合物のカルボキシル基及びフェニル性水酸基がt−ブチル基でマスクされた化合物である中間体b−1を得た。中間体b−1のGPC分析による質量平均分子量は900(理論分子量933.1)である。
【0098】
上記中間体b−1の90g(0.1モル)に、上記一般式(20)で表されるシロキサン化合物としてフェニルトリメトキシシラン91g(0.46モル)及びトルエン200gを加えて、10℃で氷冷攪拌しながら、有機酸触媒として5%シュウ酸水溶液50gを1時間かけて滴下し、更に10℃で15時間攪拌を続けた。水100gで2回水洗した後、50℃、減圧下で還流脱水・脱アルコール処理し、50℃減圧下で、溶媒のトルエンを1−メトキシ−2−プロパノールアセテート(以下PGMEAという)へと溶媒交換を行い、中間体b−2の25%PGMEA溶液を得た。
【0099】
t−ブチル基を脱離するために、上記中間体b−2の25%PGMEA溶液400gに、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体3gを加えて、80℃で3時間攪拌の後、減圧下で100gの脱溶媒処理をし、酸性物質の吸着剤(協和化学工業製、商品名:キョーワード500SH)を10g加えた後に80℃で1時間攪拌したスラリー溶液について、濾過により固形物を除去し、上記一般式(19)で表わされる環状シロキサン化合物と上記一般式(20)で表されるシロキサン化合物との加水分解縮合物である、本発明のベース樹脂B−1の30%PGMEA溶液を得た。得られた本発明のベース樹脂B−1は、上記一般式(19)における基がそれぞれ、R14:メチル、R15:エチレン、R16:エチレン、R17:エチレン、R18:メチル、m:1、n:1.5、p:1.5、k:3の数であり、上記一般式(20)における基がそれぞれ、R20:フェニル、R21:メチル、q:3の数である化合物である。また本発明のベース樹脂B−1のGPC分析による質量平均分子量は6900であり、シラノール基の含量は、OHの含量として5.4%であり、カルボキシル基(A)及び/又はフェノール性水酸基(B)の含量(A+0.1×B)は1.17mmol/gであった。
【0100】
〔製造例4:本発明の加水分解縮合物C−1の製造〕
温度計及び攪拌装置を備えたガラス製反応容器に、上記一般式(3)で表わされるアルキルシラン化合物として、メチルトリエトキシシラン178g(1モル)、上記一般式(4)で表わされるアリールシラン化合物として、フェニルトリメトキシシラン198g(1モル)、溶媒として1−メトキシ−2−プロパノールアセテート(以下PGMEAという)100gを仕込み、氷冷しながら、有機酸触媒として5%シュウ酸水溶液100gを1時間かけて滴下し、10℃で更に10時間攪拌した。反応容器に、トルエン250gを加え、減圧下、60℃で還流脱水し、更に減圧濃縮して、反応で生成したアルコール及びトルエンを除去し、ろ過して、本発明の加水分解縮合物C−1の30質量%PGMEA溶液を得た。得られた本発明の加水分解縮合物C−1のGPC分析による質量平均分子量は2000であり、シラノール基の含量は、OHの含量として7.8%であった。
【0101】
〔製造例5:本発明の加水分解縮合物C−2の製造〕
製造例3において、メチルトリエトキシシラン178g(1モル)の代わりにエチルトリエトキシシラン250g(1.3モル)を使用し、フェニルトリメトキシシランの量を198g(1モル)から125g(0.7モル)に変更した以外は、製造例1と同様の操作を行い、本発明の加水分解縮合物C−2の30質量%PGMEA溶液を得た。得られた本発明の加水分解縮合物C−2のGPC分析による質量平均分子量は1900であり、シラノール基の含量は、OHの含量として7.5%であった。
【0102】
〔製造例6:比較用のエポキシシロキサン化合物D−1の製造〕
上記特許文献3の段落〔0164〕に記載のグリシジルエーテル基を有するシロキサン化合物(j)の製造例に準じ、比較用のエポキシシロキサン化合物D−1を製造した。即ち、温度計及び攪拌装置を備えたガラス製反応容器に、トルエン150g、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン60g(0.25モル)、アリルグリシジルエーテル114g(1モル)、及び白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)0.5mgを加えて、攪拌しながら50〜60℃で15時間反応させた。この反応液から溶媒を60℃で減圧留去させ、グリシジルエーテル基を有するシロキサン化合物である、比較用のエポキシシロキサン化合物D−1を得た。
【0103】
[実施例1〜6及び比較例1〜3:本発明及び比較用のポジ型感光性樹脂組成物の調製及び評価]
上記製造例で得られた本発明のエポキシシラン化合物、比較用のエポキシシラン化合物、本発明のベース樹脂のPGMEA溶液、本発明の加水分解縮合物のPGMEA溶液、及び感光性成分として、下記の感光性ジアゾキノン化合物(ジアゾナフトキノン類(DNQ))を、表1に示す割合で配合後、ろ過して、実施例1〜6及び比較例1〜3のポジ型感光性樹脂組成物を調製した。尚、有機溶剤のPGMEAは、表中の値になるように追加した。
ジアゾナフトキノン類(DNQ):上記式(23)において全てのQが上記式(22)で表される基である化合物(ダイトーケミックス社製、商品名:PA−6)
【0104】
【表1】

【0105】
実施例1〜6及び比較例1〜3のポジ型感光性樹脂組成物について下記の評価を行った。
結果を表2に示す。
【0106】
〔試験片の調製法〕
ポジ型感光性樹脂組成物を、ガラス基板上に、スピンコート法により塗膜の膜厚が2〜3μmになるよう塗布した後、溶剤を揮発させて試験片とした。
尚、パターニング露光は何れも、試験片を90℃で2分間加熱処理した後、ガラス基板の上部に線幅5μmが描かれたフォトマスクを設置し、超高圧水銀灯により90mJ/cm2(波長365nm露光換算)の紫外線を照射することにより行った。
【0107】
〔最適現像時間及び現像マージンの評価〕
現像時間を30秒から、5秒おきに変えて、最適現像時間及び現像マージンを評価した。即ち、各ポジ型感光性樹脂組成物について、各15枚の試験片を準備し、パターニング露光した後、これらの試験片を液温25℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に浸漬し、浸漬開始してから30秒後から、5秒おきに取り出した。取り出した試験片は、直ちに超純水により1分間流水洗浄を行い、風乾した。風乾した試験片を観察し、ライン線幅が5μmになるのに必要な時間を最適現像時間、最適現像時間から5μmのライン・パターンが剥がれるまでの時間を現像マージンとした。
【0108】
〔耐アルカリ性試験〕
最適現像時間で現像した試験片を、風乾した後、ブリーチング露光として、超高圧水銀灯により200mJ/cm2(波長365nm露光換算)で照射した後、大気雰囲気下230℃で60分間の加熱処理、又は窒素雰囲気下350℃で30分間の加熱処理を行い永久レジスト膜を形成させた。40℃のアルカリ溶液(モノエタノールアミン:N−メチル−2−ピロリドン:ブチルジグリコール=10:30:60質量比)に30分浸漬した前後の、波長400nmの光の透過率、及び触針式表面形状測定器を用いてレジストの膜厚を測定し、光透過率の変化率と膜厚の変化率から下記の基準にて耐アルカリ性を評価した。
【0109】
○:350℃で加熱処理した試験片の、光透過率の変化率が1%未満及び膜厚の変化率が10%未満であり、耐アルカリ性及び高熱履歴後の耐アルカリ性に優れる。
△:230で加熱処理した試験片の、光透過率の変化率が1%未満及び膜厚の変化率が10%未満であるが、350℃で加熱処理した試験片の、光透過率の変化率が1%以上又は膜厚の変化率が10%以上であり、耐アルカリ性に優れるが、高熱履歴後の耐アルカリ性に劣る。
×:230℃で加熱処理した試験片の、光透過率の変化率が1%以上又は膜厚の変化率が10%以上であり、耐アルカリ性に劣る。
【0110】
【表2】

【0111】
上記の結果から明らかなように、ベース樹脂としてカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するポリシロキサン化合物及び感光性成分として感光性ジアゾキノン化合物を含有するポジ型感光性樹脂組成物では、現像工程における現像マージンが小さいという問題があったが、本発明のエポキシシラン化合物を含有させることにより、現像マージンが大きくなり、現像時間が最適現像時間を超えてもなおパターンと基板との間への現像液の浸透による剥がれが生じにくく、良好なパターン形状が形成できることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース樹脂としてカルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するポリシロキサン化合物、感光性成分として感光性ジアゾキノン化合物、及び有機溶剤を含有するポジ型感光性樹脂組成物において、
下記一般式(1)で表わされる基同士が、又は下記一般式(1)で表わされる基と下記一般式(2)で表わされる基とが、1分子中に2〜4個のビニル基を有する化合物からビニル基を除いた残基で連結されたエポキシシロキサン化合物を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わし、Eはエポキシ基を有する基を表わし、aは2〜5の数を表わす。)
【化2】

(式中、bはa−b+1が0〜4の数となる2〜6の数を表わし、R1、E及びaは上記一般式(1)と同義である。)
【請求項2】
更に、下記一般式(3)で表わされるアルキルシラン化合物と下記一般式(4)で表わされるアリールシラン化合物との加水分解縮合物を含有する請求項1のポジ型感光性樹脂組成物。
【化3】

(R2は炭素数1〜4のアルキル基を表わし、X1は炭素数1〜4のアルコキシ基又はハロゲン原子を表わす。)
【化4】

(R3は炭素数6〜10のアリール基を表わし、X2は炭素数1〜4のアルコキシ基又はハロゲン原子を表わす。)
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポジ型感光性樹脂組成物から得られる永久レジスト。

【公開番号】特開2012−113161(P2012−113161A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262741(P2010−262741)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】