説明

ポジ型感光性樹脂組成物

【課題】厚膜のパターンを形成でき、低温でポリベンズオキサゾールを与えることのできるポジ型感光性樹脂組成物の提供。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリヒドロキシアミド100質量部、(B)スルホニルオキシイミノ型の光酸発生剤0.1〜10質量部、(C)酸分解性基で置換されたフェノール性水酸基またはカルボキシル基を有する酸分解性化合物1〜50質量部、(D)熱酸発生剤1〜20質量部を含むことを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚膜のパターンを形成可能であり、低温でポリベンズオキサゾールを与えることのできるポジ型感光性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体保護膜用感光性耐熱材料としては、従来溶剤現像できるネガ型の感光性ポリイミド前駆体がよく知られている。(非特許文献1参照)一方、近年アルカリ水溶液で現像可能な感光性ポリベンズオキサゾール前駆体も広く使用されている。感光性ポリイミドや感光性ポリベンズオキサゾールは、これらの特徴を生かして半導体の保護膜として広く利用されている。(非特許文献2参照)
感光性ポリベンズオキサゾール前駆体の代表的組成は、アミド基のオルト位にヒドロキシ基が置換された芳香族ポリアミド、即ちポリ(o―ヒドロキシアミド)と溶解抑止剤を含む組成物である。溶解抑止剤としてキノンジアジドを用いた場合は、活性光線照射によりそれがインデンカルボン酸となり、アルカリ水溶液で処理すると照射部が溶解除去され微細パターンを形成する。また、照射により添加した光酸発生剤から酸を発生させ、その酸で溶解抑止剤をアルカリ可溶性の構造に変換するタイプの感光性組成物もある。このような方法でパターンを形成した後、高温で加熱処理することにより、電気特性や耐熱性に優れたポリベンズオキサゾールからなる保護膜を形成する事ができる(特許文献1参照)。
【0003】
オキサゾールへの変換には一般に350℃付近の熱処理が必要であるが、近年このオキサゾール化の熱処理温度を下げる要求が多くなってきている。例えば、ある種の不揮発メモリーではデバイス作成時に高温がかけられないこと、また、厚膜の保護膜や層間絶縁膜の場合には加熱処理工程が長時間となることから、硬化温度を下げることが要求される、具体的には250℃以下、好ましくは200℃以下が求められている。
熱処理温度を下げるには、感光性ポリベンズオキサゾール前駆体組成物を酸触媒または熱により酸を発生する化合物と共存させる方法がある。例えば、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸−p−ニトロベンジルを触媒として共存させる事により300℃付近までオキサゾール化温度を下げる事が出来る。さらに、250℃でオキサゾール化できる触媒としては、(5−プロピルスルフォニロキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−2−(メチルフェニル)アセトニトリル(以下「PTMA」ともいう)が見出された(非特許文献3及び特許文献2参照)。
【0004】
また近年、半導体デバイスの表面にはんだ等のバンプを形成して直接実装するフリップチップにおいて、バンプ位置の最適化のために再配線を行う事が一般的になっている。その配線が太くなるに従い、厚膜の絶縁膜が要求される。従来の代表的なポジ型感光性ポリベンズオキサゾール前駆体組成物の反応は、感光剤であるキノンジアジドが光を吸収し分解することから始まる。該反応が最高の効率で進行したとしても1光子1反応であり光感度には限界がある。その結果、膜厚が厚くなると露光に要する時間が長くなり生産性が低下するという問題がある。そのため、より高い光感度の材料が求められている。また、膜が厚くなると、吸収により光が感光性ポリベンズオキサゾール膜の底部まで達しない、もしくは光量が著しく低下し、好ましいパターンが得られないという問題がある。
【0005】
さらに、熱により酸を発生し、発生した酸により分解が促進される酸発生剤を含むことを特徴とする化学増幅系のポジ型感光性樹脂組成物では、その量子効率は高いが、膜厚が大きい場合には底部まで光が届くように光酸発生剤の添加量を減らす必要があり、その結果感度が低下するということもある。特に半導体ラインで汎用されている365nmの波
長であるi線を用いた露光装置の場合は大きな問題である。
このような背景から、厚膜にも適用できる高感度で低温熱処理の可能な感光性ポリベンズオキサゾール前駆体組成物が強く求められている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−170611号公報
【特許文献2】特開2006−010781号公報
【非特許文献1】上田、「感光性ポリイミド」、日本写真学会誌、日本写真学会、2003年06巻、4号、p367−375
【非特許文献2】池田、水野、「初歩から学ぶ感光性樹脂」、工業調査会、2002年4月10日、p125−142
【非特許文献3】F.Toyokawa,K.Fukukawa,Y.Shibasaki,M.Ueda Chemistry Letters Vol.33,No10(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、より低い温度、具体的には250℃以下でオキサゾール化が起き、厚膜のパターンを形成でき、低温でポリベンズオキサゾールを与えることのできるポジ型感光性組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、活性光線照射により酸を発生する特定の構造を有する化合物に、自己酸増殖機能を持つ熱酸発生剤を組み合わせることで、上記の課題を解決するポジ型感光性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち、本発明の第一は、(A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリヒドロキシアミド100質量部、(B)下記一般式(2)または(3)で表される光酸発生剤0.1〜10質量部、(C)酸分解性基で置換されたフェノール性水酸基またはカルボキシル基を有する酸分解性化合物1〜50質量部、(D)熱酸発生剤1〜20質量部を含むことを特徴とする、ポジ型感光性樹脂組成物である。
【0009】
【化1】

(式中、Xは少なくとも2個以上の炭素原子を有する4価の有機基であり、X、Y、およびYはそれぞれ独立に少なくとも2個以上の炭素原子を有する2価の有機基であり、mは2〜1000の整数であり、nは0〜500の整数であって、m/(m+n)≧0.5である。なお、XおよびYを含むm個のジヒドロキシジアミド単位、並びにXおよびYを含むn個のジアミド単位の配列順序は問わない。)
【0010】
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜10の1価の脂肪族基または炭素数6〜12の1価の芳香族基である。)
【0011】
【化3】

(式中、Rは炭素数1〜10の1価の脂肪族基または炭素数6〜12の1価の芳香族基である。)
【0012】
本発明の組成物においては、酸分解性化合物がフルオレン骨格を有する化合物であることが好ましく、また、熱酸発生剤が脂肪族または芳香族スルホン酸のエステルであることが好ましい。
また、本発明の第二は、(1)上述のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に形成し、(2)マスクを介して活性光線で露光するか、活性光線、電子線またはイオン線を直接描画し、(3)照射部をアルカリ水溶液で溶出または除去し、(4)得られたレリーフパターンを加熱処理することを特徴とする、硬化レリーフパターンの製造方法である。
さらに、本発明の第三は、上述の製造方法により得られる硬化レリーフパターン層を有してなることを特徴とする、半導体装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の組成物は、より低い温度、具体的には250℃以下でオキサゾール化が起き、厚膜でも耐熱性のあるポリベンズオキサゾールパターンを提供する高感度の感光性樹脂組成物を提供できるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<ポジ型感光性樹脂組成物>
本発明のポジ型感光性樹脂組成物を構成する各成分について、以下具体的に説明する。(A)ポリヒドロキシアミド
本発明のポジ型感光性樹脂組成物のベースポリマーであるポリヒドロキシアミドは、下記一般式(1)のジヒドロキシジアミド単位m個を有する。該ジヒドロキシジアミド単位は、Y(COOH)の構造を有するジカルボン酸およびX(NH(OH)の構造を有するビスアミノフェノールを重縮合させた構造を有する。該ビスアミノフェノールの2組のアミノ基とヒドロキシ基はそれぞれ互いにオルト位にあるものであり、該ポリヒドロキシアミドは熱処理により閉環して、耐熱性樹脂であるポリベンズオキサゾールに変化する。mは2〜1000の範囲が好ましく、3〜50の範囲がより好ましく、3〜
30の範囲であることが最も好ましい。
【0015】
【化4】

【0016】
ポリヒドロキシアミドには、必要に応じて、上記一般式(1)のジアミド単位n個を有してもよい。該ジアミド単位は、X(NHの構造を有するジアミンおよびY(COOH)の構造を有するジカルボン酸を重縮合させた構造を有する。nは0〜500の範囲が好ましく、0〜10の範囲がより好ましい。
ポリヒドロキシアミド中における上記のジヒドロキシジアミド単位の割合が高いほど現像液として使用するアルカリ性水溶液への溶解性が向上するので、m/(m+n)の値は0.5以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、0.8以上であることが最も好ましい。
【0017】
(NH(OH)の構造を有するビスアミノフェノールとしては、例えば、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,4−ジアミノ−2,5−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジアミノ−2,4−ジヒドロキシベンゼン、及び1,3−ジアミノ−4,6−ジヒドロキシベンゼンなどが挙げられる。これらのビスアミノフェノールは単独あるいは混合して使用してもよい。
【0018】
これらのX(NH(OH)の構造を有するビスアミノフェノールのうち特に好ましいものは、X が下記から選ばれる芳香族基の場合である。
【0019】
【化5】

【0020】
また、X(NH(OH)の構造を有する化合物として、分子内に2組の互い
にオルト位にあるアミド結合とフェノール性水酸基を有するジアミン(以下、「分子内にPBO前駆体構造を有するジアミン」という。)を使用することもできる。例えば、上記のX(NH(OH)の構造を有するビスアミノフェノールに2分子のニトロ安息香酸を反応させて還元することにより得られる、下記一般式で示されるジアミンが挙げられる。
【0021】
【化6】

(式中、Xは少なくとも2個以上の炭素原子を有する4価の有機基であり、前述したXで示される有機基として好ましいものからなる群から選択される少なくとも1つの有機基であることが好ましい。)
【0022】
分子内にポリベンズオキサゾール前駆体構造を有するジアミンを得るための別法としては、Y(COCl)の構造を有するジカルボン酸ジクロリドに2分子のニトロアミノフェノールを反応させて還元し、下記一般式で示されるジアミンを得る方法もある。
【0023】
【化7】

(式中、Yは少なくとも2個以上の炭素原子を有する2価の有機基であり、後述するYで示される有機基として好ましいものからなる群から選択される少なくとも1つの有機基であることが好ましい。)
【0024】
(NHの構造を有するジアミンとしては、芳香族ジアミン、シリコンジアミンなどが挙げられる。
このうち芳香族ジアミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4−メチル−2,4−ビス(4−アミノフェニル)−1−ペンテン、4−メチル−2,4−ビス(4−アミノフェニル)−2−ペンテン、1,4−ビス(α,α−ジメチル−4−アミノベンジル)ベンゼン、イミノ−ジ−p−フェニレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、4−メチル−2,4−ビス(4−アミノフェニル)ペンタン、5(または6)−アミノ−1−(4−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、ビス(p−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニル尿素、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4
−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(α,α−ジメチル−4−アミノベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(α,α―ジメチル−4−アミノベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、フェニルインダンジアミン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、o−トルイジンスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルフィド、1,4−(4−アミノフェノキシフェニル)ベンゼン、1,3−(4−アミノフェノキシフェニル)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−ジ−(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、及び4,4’−ジアミノベンズアニリド等、ならびにこれら芳香族ジアミンの芳香核の水素原子が、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、メチル基、メトキシ基、シアノ基、及びフェニル基からなる群より選ばれた少なくとも一種の基または原子によって置換された化合物が挙げられる。
【0025】
また、基材との接着性を高めるためにX(NHの構造を有するジアミンの一部または全部に、シリコンジアミンを選択することができ、この例としては、ビス(4−アミノフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−アミノフェニル)テトラメチルシロキサン、ビス(4−アミノフェニル)テトラメチルジシロキサン、ビス(γ―アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,4−ビス(γ―アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、ビス(γ―アミノプロピル)テトラフェニルジシロキサン等が挙げられる。
【0026】
(COOH)及びY(COOH)構造を有するジカルボン酸としては、YおよびYがそれぞれ下記から選ばれた芳香族基または、脂肪族基であるジカルボン酸があげられる。
【0027】
【化8】

(式中、Aは、−CH−、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−C(CF−、−NHCO−、及び単結合からなる群から選択される2価の基を示し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、不飽和基、及びハロゲン原子からなる群から選択される基を示し、kは0〜4の整数を示す。)
【0028】
また、上記のY(COOH)及びY(COOH)構造を有するジカルボン酸の一部または全部に、5−アミノイソフタル酸の誘導体を用いることもできる。該誘導体を得るために5−アミノイソフタル酸に対して反応させる具体的な化合物としては、5−ノ
ルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、エキソ−3,6―エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、3−エチニル−1,2−フタル酸無水物、4−エチニル−1,2−フタル酸無水物、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、マレイン酸無水物、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、アリルスクシン酸無水物、イソシアナートエチルメタクリレート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、3−シクロヘキセン−1−カルボン酸クロライド、2−フランカルボン酸クロリド、クロトン酸クロリド、ケイ皮酸クロリド、メタクリル酸クロリド、アクリル酸クロリド、プロピオリック酸クロリド、テトロリック酸クロリド、チオフェン2−アセチルクロリド、p−スチレンスルフォニルクロリド、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、クロロぎ酸メチルエステル、クロロぎ酸エチルエステル、クロロぎ酸n−プロピルエステル、クロロぎ酸イソプロピルエステル、クロロぎ酸イソブチルエステル、クロロぎ酸2−エトキシエステル、クロロぎ酸−sec−ブチルエステル、クロロぎ酸ベンジルエステル、クロロぎ酸2−エチルヘキシルエステル、クロロぎ酸アリルエステル、クロロぎ酸フェニルエステル、クロロぎ酸2,2,2−トリクロロエチルエステル、クロロぎ酸−2−ブトキシエチルエステル、クロロぎ酸−p−ニトロベンジルエステル、クロロぎ酸−p−メトキシベンジルエステル、クロロぎ酸イソボルニルベンジルエステル、クロロぎ酸−p−ビフェニルイソプロピルベンジルエステル、2−t−ブチルオキシカルボニル−オキシイミノ−2−フェニルアセトニトリル、S−t−ブチルオキシカルボニル−4,6−ジメチル−チオピリミジン、ジ−t−ブチル−ジカルボナート、N−エトキシカルボニルフタルイミド、エチルジチオカルボニルクロリド、ぎ酸クロリド、ベンゾイルクロリド、p−トルエンスルホン酸クロリド、メタンスルホン酸クロリド、アセチルクロリド、塩化トリチル、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、(N,N−ジメチルアミノ)トリメチルシラン、(ジメチルアミノ)トリメチルシラン、トリメチルシリルジフェニル尿素、ビス(トリメチルシリル)尿素、イソシアン酸フェニル、イソシアン酸n−ブチル、イソシアン酸n−オクタデシル、イソシアン酸o−トリル、1,2−フタル酸無水物、シス−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、及びグルタル酸無水物が挙げられる。
【0029】
さらには、Y(COOH)及びY(COOH)構造を有するジカルボン酸として、テトラカルボン酸二無水物をモノアルコール、またはモノアミン等で開環したジカルボン酸を使用することもできる。ここでモノアルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール等が挙げられ、モノアミンの例としては、ブチルアミン、アニリン等が挙げられる。上記のテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の化学式で示される化合物が挙げられる。
【0030】
【化9】

(式中、Bは、−CH−、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−C(CF−、及び−NHCOからなる群から選択される2価の基を意味する。)
【0031】
または別法としてテトラカルボン酸二無水物とビスアミノフェノールもしくはジアミン
を反応させて、生成するカルボン酸残基を、モノアルコールまたはモノアミンにより、エステル化またはアミド化することもできる。
また、ビスアミノフェノールに対してトリメリット酸塩化物を反応させて、テトラカルボン酸二無水物を生成し、上記のテトラカルボン酸二無水物と同様の方法で開環してジカルボン酸として使用することもできる。ここで得られるテトラカルボン酸二無水物としては下記の化学式で示される化学式が挙げられる。
【0032】
【化10】

(式中、XはX(OH)(NH−)で表される2価の有機基を表す。)
【0033】
ポリヒドロキシアミドを合成するための、前記ジカルボン酸とビスアミノフェノール(ジアミン)の重縮合の方法としては、ジカルボン酸と塩化チオニルを使用してジ酸塩化物としたのちにビスアミノフェノール(ジアミン)を作用させる方法、またはジカルボン酸とビスアミノフェノール(ジアミン)をジシクロヘキシルカルボジイミドにより重縮合させる方法等が挙げられる。ジシクロヘキシルカルボジイミドを使用する方法においては同時にヒドロキシベンズトリアゾールを作用させることもできる。
【0034】
前述の一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリヒドロキシアミドにおいて、その末端基を有機基(以下、封止基という)で封止して使用することも好ましい。ポリヒドロキシアミドの重縮合において、ジカルボン酸成分をビスアミノフェノール成分とジアミン成分の和に比べて過剰のモル数で使用する場合には、封止基としては、アミノ基、または水酸基を有する化合物を用いるのが好ましい。該化合物の例としては、アニリン、エチニルアニリン、ノルボルネンアミン、ブチルアミン、プロパルギルアミン、エタノール、プロパルギルアルコール、ベンジルアルコール、ヒドロキシエチルメタクリレート、及びヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0035】
逆にビスアミノフェノール成分とジアミン成分の和をジカルボン酸成分に比べて過剰のモル数で使用する場合には、封止基としては、酸無水物、カルボン酸、酸塩化物、イソシアネート基等を有する化合物を用いるのが好ましい。該化合物の例としては、塩化ベンゾイル、ノルボルネンジカルボン酸無水物、ノルボルネンカルボン酸、エチニルフタル酸無水物、グルタル酸無水物、無水マレイン酸、無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロへキセンジカルボン酸無水物、メタクロイルオキシエチルメタクリレート、フェニルイソイアネート、メシルクロリド、及びトシル酸塩化物等が挙げられる。
【0036】
(B)光酸発生剤
光酸発生剤とは、活性光線照射により酸を発生する化合物をいい、本発明の組成物に含まれる光酸発生剤は、上記一般式(2)もしくは上記一般式(3)で表される化合物である。Rは炭素数1〜10の1価の脂肪族基または炭素数6〜12の1価の芳香族基であり、例えば、n−C、n−C17、−C1016O(カンファニル基)、p−CHから選ばれる基が好ましい。これらは、チバ・スペシャリティ・ケミカルズからCGI13XXシリーズとして入手でき、照射光としてg線、h線、i線、Kr
Fレーザーを用いることができる。Rは炭素数1〜10の1価の脂肪族基または炭素数6〜12の1価の芳香族基であり、例えば、n−C、p−CHから選ばれる基が好ましい。これらは、チバ・スペシャリティ・ケミカルズからCGI26Xシリーズとして入手でき、照射光として、KrFレーザーを用いることができる。
本発明においては、上記一般式(2)で表される光酸発生剤が好適に用いられる。(B)成分は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部用いられる。光酸発生剤の混合量が0.1以上であると感度が良好となり、10以下であると良好なパターンが形成される。
【0037】
(C)酸分解性化合物
本発明に使用される(C)成分である酸分解性化合物は、活性光線照射により(B)成分から発生した酸を触媒として分解反応を起こし、露光部のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有するものである。上記(C)成分としては、フェノール性水酸基またはカルボキシル基を有する化合物においてフェノール性水酸基またはカルボキシル基の水素原子の一部または全てを酸分解性基で置換した化合物が好ましい。
フェノール性水酸基またはカルボキシル基を有する化合物としては、1〜15個のベンゼン環を有し、フェノール性水酸基またはカルボキシル基を分子内に1〜20個有する化合物が好ましい。また、これらの化合物は、フェノールノボラック樹脂またはカルボキシル基を有するポリビニルフェノールのような樹脂状化合物を用いても良い。中でも、フルオレン骨格を有するフェノール化合物が好適に用いられ、その中でも、9,9’−ビス(4−t−ブトキシカルボニルオキシフェニル)フルオレンがより好適に用いられる。
【0038】
(C)成分のフェノール性水酸基またはカルボキシル基の水素原子に置換される酸分解性基としては、アセタール、ケタール、シリル基、シリルエーテル基等の酸により分解される置換基が用いられる。酸分解性基としては、例えば、t−ブトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、テトラヒドロピラニル基、エトキシエチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、トリメチルシリル基、t−ブトキシカルボニルメチル基、エチルビニルエーテル基、メチルビニルエーテル基、トリメチルシリルエーテル基等が挙げられる。これらの置換基は、例えば、フェノール性水酸基またはカルボキシル基を有する化合物に酸触媒下でビニルエーテル化合物を反応させることによりテトラヒドロピラニル基を容易に導入することができる。また、導入したい置換基の塩化物をアミン等のアルカリ触媒下で反応させることによっても容易に導入することができる。(C)成分は現像後の膜厚及び感度の点から、(A)成分100質量部に対して、1〜50質量部、好ましくは5〜25質量部用いられる。酸分解性化合物の混合量が1以上であると、パターン形成が良好となり、50以下であると膜減りが良好になる。
【0039】
(D)熱酸発生剤
本発明に用いる熱酸発生剤は、熱により分解し酸を発生する化合物で、一般的に高温になるほど分解率が高く、酸を発生し易い。また、酸の共存下では、酸が無いときに比べ分解が促進されるため、酸の増殖剤としての機能も有している。本発明に用いる熱酸発生剤として、i線吸収の少ない(D)熱酸発生剤を用いて(B)光酸発生剤の添加量を少なくすると、光の透過性が良くなり厚膜のパターン形成が可能となる。また、(D)熱酸発生剤は、パタ−ニング時には分解しないことが必要であり、後述する照射後加熱(PEBともいう)が必要な場合は、その温度、例えば110℃、での安定性が必須条件となる。
【0040】
本発明に使用できる熱酸発生剤には、オニウム塩、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物などを例として挙げることができる。その中でも、脂肪族または芳香族スルホン酸のエステルである化合物が好ましく、中でも二級アルキルエステルが、分解性と安定性のバランスが取れるためより好ましい。さらにキュア後に、例えば250℃で、分解揮
散すればさらに好ましい。
(A)成分100質量部に対して、組成物における(D)成分の含有量は、1〜20質量部、好ましくは5〜15質量部用いられる。熱酸発生剤の含有量が1質量部以上であると、低温硬化が可能で感度が良好となり、20質量部以下であると金属配線への影響が良好となる。
【0041】
(E)その他の添加剤
本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、必要に応じて、ポジ型感光性樹脂組成物の添加剤として知られているフェノール化合物、界面活性剤、及び/又はシリコンウエハーとの密着性を高めるための接着助剤等を添加することも可能である。
上記添加剤について更に具体的に述べると、フェノール化合物は、前記感光性ジアゾキノン化合物に使用しているバラスト剤、並びにパラクミルフェノール、ビスフェノール類、レゾルシノール類、あるいはMtrisPC、MtetraPC等の直鎖状フェノール化合物(本州化学工業社製:商品名)、TrisP−HAP、TrisP−PHBA、TrisP−PA等の非直鎖状フェノール化合物(本州化学工業社製:商品名)、ジフェニルメタンのフェニル基の水素原子2〜5個を水酸基に置換した化合物、2,2−ジフェニルプロパンのフェニル基の水素原子1〜5個を水酸基に置換した化合物、等が挙げられる。該フェノール化合物の添加により、現像時のレリーフパターンの密着性を向上させ残渣の発生をおさえることができる。なお、バラスト剤とは、フェノール性水素原子の一部がナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化されたフェノール化合物である前述の感光性ジアゾキノン化合物に原料として使用されているフェノール化合物をいう。
フェノール化合物を加える場合の添加量は、ポリヒドロキシアミド100質量部に対し、0〜50質量部が好ましく、1〜30質量部が好ましい。添加量が50質量部以内であれば、熱硬化後の膜の耐熱性が良好である。
【0042】
界面活性剤としては、ポリプロピレングリコール、もしくはポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリグリコール類、またはその誘導体からなる非イオン系界面活性剤があげられる。また、フロラード(住友3M社製:商品名)、メガファック(大日本インキ化学工業社製:商品名)、またはスルフロン(旭硝子社製:商品名)等のフッ素系界面活性剤があげられる。さらに、KP341(信越化学工業社製:商品名)、DBE(チッソ社製:商品名)、またはグラノール(共栄社化学社製:商品名)等の有機シロキサン界面活性剤が挙げられる。該界面活性剤の添加により、塗布時のウエハーエッジでの塗膜のハジキをより発生しにくくすることができる。
界面活性剤を加える場合の添加量は、ポリヒドロキシアミド100質量部に対し、0〜10質量部が好ましく、0.01〜1質量部がより好ましい。添加量が10質量部以内であれば、熱硬化後の膜の耐熱性が良好である。
【0043】
接着助剤としては、アルキルイミダゾリン、アルキル酸、ポリヒドロキシスチレン、ポリビニルメチルエーテル、t−ブチルノボラック、エポキシポリマー、およびエポキシシランなどの各種シランカップリング剤が挙げられる。
シランカップリング剤の具体的な好ましい例としては、3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジアルコキシアルキルシラン、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルジアルコキシアルキルシラン、3−アミノプロピルトリアルコキシシラン又は3−アミノプロピルジアルコキシアルキルシランと、酸無水物又は酸二無水物の反応物、3−アミノプロピルトリアルコキシシラン又は3−アミノプロピルジアルコキシアルキルシランのアミノ基をウレタン基やウレア基に変換したものが挙げられる。この際のアルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基などが、酸無水物としてはマレイン酸無水物、フタル酸無水物などが、酸二無水物としてはピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物などが、ウレタン基としては
t−ブトキシカルボニルアミノ基などが、ウレア基としてはフェニルアミノカルボニルアミノ基などが挙げられる。
接着助剤を加える場合の添加量は、ポリヒドロキシアミド100質量部に対し、0〜30質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。添加量が30質量部以内であれば、熱硬化後の膜の耐熱性が良好である。
【0044】
本発明においては、これらの成分を溶媒に溶解してワニス状にし、ポジ型感光性樹脂組成物として使用することが好ましい。このような溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリノン、テトラメチルウレア、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート等を単独または混合して使用できる。これらの溶媒のうち、非アミド系溶媒がフォトレジストなどへの影響が少ない点から好ましい。具体的なより好ましい例としてはγ−ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを挙げることができる。
溶媒の添加量は、ポリヒドロキシアミド100質量部に対し、100〜1000質量部が好ましい。溶媒の添加量は、上記の範囲内で塗布装置、及び塗布厚みに適した粘度に設定することが、硬化レリーフパターンの製造を容易にすることができるので好ましい。
【0045】
<硬化レリーフパターン、及び半導体装置の製造方法>
次に、本発明の硬化レリーフパターンの製造方法について、以下具体的に説明する。
第一に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を、以下で示す基板、例えばシリコンウエハー、表面に窒化ケイ素、酸化ケイ素、金属等の薄膜が形成されたシリコンウエハー、セラミック基板、アルミ基板等に、スピナーを用いた回転塗布、又はダイコーター、もしくはロールコーター等のコータ−により塗布する。もしくは、インクジェットノズルやディスペンサーを用いて、所定の場所に塗布することも可能である。これをオーブンやホットプレートを用いて50〜140℃で乾燥して溶媒を除去することによって、基板上に感光性樹脂組成物を形成する。膜厚は1〜50μmが好ましい。
【0046】
第二に、マスクを介して、コンタクトアライナーやステッパーを用いて活性光線による露光を行うか、光線、電子線またはイオン線を直接描画する。なお、露光と描画を合わせて照射という。なお、(C)酸分解性化合物の種類によっては、酸分解性基の脱離反応を十分に進行させるため、ホットプレート等を用いて80〜150℃で、1〜15分間照射後加熱(PEB)する必要がある。例えば、t−ブトキシカルボニル基の場合は、110℃でのPEBを行うことが好ましい。なお、活性光線とは450nm以下の波長の電磁波を指す。
【0047】
第三に、照射部を現像液で溶解除去し、必要ならば引き続きリンス液によるリンスを行うことで所望のレリーフパターンを得る。現像方法としてはスプレー法、パドル法、ディップ法、または超音波等の方式が可能である。リンス液は蒸留水、または脱イオン水等が使用できる。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物により形成された膜を現像するために用いられる現像液は、アルカリ可溶性ポリマーを溶解除去するものであり、アルカリ化合物を溶解したア
ルカリ性水溶液であることが必要である。現像液中に溶解されるアルカリ化合物は、無機アルカリ化合物、または有機アルカリ化合物のいずれであってもよい。
該無機アルカリ化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、及びアンモニア等が挙げられる。
【0048】
また、該有機アルカリ化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、エタノールアミン、及びトリエタノールアミン等が挙げられる。
さらに、必要に応じて、上記アルカリ性水溶液に、メタノール、エタノール、プロパノール、またはエチレングリコール等の水溶性有機溶媒、界面活性剤、保存安定剤、及び樹脂の溶解抑止剤等を適量添加することができる。
【0049】
最後に、得られたレリーフパターンを加熱処理して、ポリベンズオキサゾール構造を有する樹脂からなる耐熱性硬化レリーフパターンを形成する。加熱処理装置としてはオーブン炉、縦型炉、コンベア炉、ホットプレート、高周波炉等がある。加熱温度は、150℃以上450℃以下である。150℃以上でオキサゾール化が進み450℃以下ではポリベンズオキサゾールは熱分解を受けない。本発明では低温でオキサゾール化できる事に特徴があり、150℃以上300℃以下が好ましく、180℃以上250℃以下がより好ましい。加熱雰囲気としては空気中、又は窒素、アルゴン等の不活性気体中もしくはこれらと空気の混合気体が好ましい。また減圧下加熱する事も良い。加熱処理時間は5分以上10時間以下か好ましく、15分以上3時間以下がより好ましい。また膜厚が厚いほど加熱時間は長時間必要である。
【0050】
本発明の半導体装置は、本発明の硬化レリーフパターンを、表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、あるいはバンプ構造を有する装置の保護膜として、公知の半導体装置の製造方法と組み合わせることで製造することができる。
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、多層回路の層間絶縁、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、または液晶配向膜等の用途にも有用である。
【実施例】
【0051】
本発明を参考例、実施例に基づいて説明する。
<ポリヒドロキシアミドの合成>
〔参考例1〕
100mlナスフラスコに4,4’−オキシビス安息香酸8.75g(33.9mmol)と、塩化チオニル20ml(274mmol)、DMF数滴を加えて90℃で3時間還流した。その後、減圧にして塩化チオニルを取り除き、粗生成物を得た。粗生成物をヘキサンで再結晶して、減圧乾燥することで白色の結晶4,4’−オキシビスベンゾイルクロリド(OBBC)6.27gを得た。
次に、100ml二口ナスフラスコにN−メチル−2−ピロリドン40mlを入れ、2,2’−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.49g(15.0mmol)とLiCl1.40g(33.0mmol)を常温、窒素雰囲気下で加えた。全て溶けたあと、氷浴で冷やしながらOBBC4.43g(15mmol)を加え、24時間常温で攪拌した。そのポリマー溶液を水3:メタノール1の溶液1リットルに落とし、吸引ろ過後、減圧110℃で乾燥し、白色の固体ポリヒドロキシアミド
(P−1)8.61gを得た。
【0052】
<メタンスルホン酸イソプロピルエステルの合成>
〔参考例2〕
300ml三口ナスフラスコにイソプロパノール3.83ml(50.0mmol)、メタンスルホニルクロライド3.23ml(41.7mol)、塩化メチレン100mlを窒素雰囲気で加えた。その後、フラスコを氷浴で冷やしながらピリジン8.15ml(100mmol)を15分かけて滴下した。0℃で1.5時間、室温で1.5時間攪拌した後、塩化メチレン200mlを加えて希釈し、1M塩酸300mlで1回、飽和重曹水200mlで二回洗浄し、硫酸マグネシウムを入れて乾燥させた。濾過によって硫酸マグネシウムを除去し、エバポレーターで塩化メチレンを大部分取り除いた後、減圧蒸留を行うと無色透明の液体メタンスルホン酸イソプロピルエステル(Q−1)3.09gを得た。
【0053】
<パラトルエンスルホン酸イソプロピルエステルの合成>
〔参考例3〕
300ml三口ナスフラスコにイソプロパノール8ml(104.4mmol)、p−トルエンスルホニルクロライド10.0g(52.5mmol)、塩化メチレン100mlを窒素雰囲気下で加えた。その後、フラスコを氷浴で冷やしながら、ピリジン15ml(184mmol)を15分かけて滴下した。室温で12時間攪拌した後、塩化メチレン150mlを加えて希釈し、純粋200ml、飽和重曹水200ml、純水200mlの順で3回洗浄し、硫酸マグネシウムを入れ乾燥させた。ろ過によって硫酸マグネシウムを除去し、エバポレーター、減圧蒸留で塩化メチレンを取り除くと、目的の生成物p−トルエンスルホン酸イソプロピルエステル(Q−2)5.49g(25.8mmol、収率49.1%)を得た。
【0054】
<9,9’−ビス(4−t−ブトキシカルボニルオキシフェニル)フルオレンの合成>
〔参考例4〕
300ml三口ナスフラスコにテトラヒドロフラン200ml、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン10g(28.5mmol)、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン0.018g(0.15mmol)を溶解させた。その後、二炭酸ジ−t−ブチル14.9g(68.4mmol)を加え、50℃で2h攪拌した。その溶解液をメタノール4:水1の溶媒に落とし、粗生成物を回収した。粗生成物をヘキサン5:テトラヒドロフラン1の溶媒で再結晶して、白色の固体9,9’−ビス(4−t−ブトキシカルボニルオキシフェニル)フルオレン13.3g得た。生成物のIRスペクトルは堀場製作所社製 FT−720を用いて測定し、H NMRスペクトルはBRUKER DPX300を用いて測定した。
【0055】
<ポリヒドロキシアミドとPTMAと9,9’−ビス(4−t−ブトキシカルボニルオキシフェニル)フルオレン組成物のリソグラフィー特性>
〔参考例5〕
ポリヒドロキシアミド(P−1)70g、PTMA5g、9,9’−ビス(4−t−ブトキシカルボニルオキシフェニル)フルオレン25gを含む組成物を調整し、i線照射における感度及びコントラスト値を測定した結果、膜厚1.2μmで、D=34mJ/cm、γ=5.8を得た。(Dは膜厚を0にすることができる最小露光量を示し、γは露光量の対数をx軸に、硬化感光性樹脂の膜厚の相対値をy軸にとり、y軸の0から1までの長さと、x軸の対数値の差が1となる長さを等しくして、残膜率のグラフを書いた場合の傾きの角度をθとするとき、tanθをγというが、特に膜厚が0になったところでのθの値をθとするとき、tanθをγという。)
【0056】
<メタンスルホン酸イソプロピルエステルを添加したポリヒドロキシアミドのオキサゾール化率>
〔参考例6〕
ポリヒドロキシアミド(P−1)9.5gにメタンスルホン酸イソプロピルエステル(Q−1)を0.5g添加したものは、200℃で82%、250℃で100%オキサゾール化が進行した。任意の加熱温度におけるオキサゾール化率は、赤外線吸収スペクトル測定(堀場製作所社製 FT−720 フーリエ変換赤外分光光度計)を用いて行い、次の式より算出した。
オキサゾール化率(%)=(A(加熱温度℃)/B(加熱温度℃)−A(100℃)/B(100℃))/(A(350℃)/B(350℃)−A(100℃)/B(100℃))×100
A:オキサゾール(C−O)の吸光度(1052cm−1
B:シリコンウェハの吸光度(609cm−1
式中にカッコで示す温度は、それぞれ試料の加熱温度を示す。
測定は、試料を100℃、10分間乾燥させた後、150℃で10分ホールド後測定し、ついで160℃に昇温させ10分ホールド後測定し、同様にして10℃づつ上昇させ、そのつど350℃まで測定した。
【0057】
<p−トルエンスルホン酸イソプロピルエステルを添加したポリヒドロキシアミドのオキサゾール化率>
〔参考例7〕
ポリヒドロキシアミド(P−1)9.5gにp−トルエンスルホン酸イソプロピルエステル(Q−2)を0.5g添加した以外は、参考例6と同様に測定した。結果、200℃で65%、250℃で100%オキサゾール化が進行した。
<ポリヒドロキシアミドの環化>
〔参考例8〕
ポリヒドロキシアミド(P−1)10gを用いて、その他は参考例6と同様に測定した。その結果、200℃でオキサゾール化は起こらず、250℃で35%オキサゾール化が進行した。
【0058】
<ポジ型感光性樹脂組成物の調整>
[実施例1]
上記参考例1にて得られたポリヒドロキシアミド(P−1)100質量部に対して、上記参考例2にて得られた熱酸発生剤(Q−1)15質量部、及びPTMA5質量部及び9,9’−ビス(4−t−ブトキシカルボニルオキシフェニル)フルオレン25質量部を、シクロヘキサノン600質量部に溶解し、ポジ型感光性樹脂組成物を調整した。
[実施例2]
熱酸発生剤を、上記参考例3にて得られた熱酸発生剤(Q−2)15質量部に変更した以外は、実施例1と同様に調整した。
【0059】
<ポジ型感光性樹脂組成物の評価>
上記実施例1〜2のポジ型感光性樹脂組成物をスピンコーター(ミカサ株式会社製 1H−D7)にて5インチシリコンウエハーにスピン塗布し、ホットプレートにて100℃、300秒間プリベークを行い、膜厚1.5μmの塗膜を形成した。膜厚はフィルム膜厚測定装置(Veeco Instruments Inc.社製Dektak3system)にて測定した。
【0060】
この塗膜に、テストパターン付きフォトマスクを通してi線(365nm)の露光波長を有する密着露光機(ミカサ株式会社製 M−1S)を用いて、露光量100mJ/cmで露光した。さらに、110℃、180秒にて露光後ベーク(PEB)を行った。これ
をアルカリ現像液(2.38wt%水酸化テトラメチルアンモニウム及び5wt%イソプロパノールを含有した水溶液)を用い、25℃、25秒の条件下で現像し、純水にてリンスを行い、ポジ型のレリーフパターンを形成した。その結果、ポジ型感光性樹脂組成物の膜厚は1.5μmとなった。
このレリーフパターンを250℃で10分間キュアすることで、100%オキサゾール化が進行した。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、半導体の保護膜として使用するのに適したポリベンズオキサゾール前駆体の製造に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】参考例4で合成した化合物のH NMRスペクトルである。
【図2】参考例4で合成した化合物のIRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリヒドロキシアミド100質量部、(B)下記一般式(2)または(3)で表される光酸発生剤0.1〜10質量部、(C)酸分解性基で置換されたフェノール性水酸基またはカルボキシル基を有する酸分解性化合物1〜50質量部、(D)熱酸発生剤1〜20質量部を含むことを特徴とする、ポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Xは少なくとも2個以上の炭素原子を有する4価の有機基であり、X、Y、およびYはそれぞれ独立に少なくとも2個以上の炭素原子を有する2価の有機基であり、mは2〜1000の整数であり、nは0〜500の整数であって、m/(m+n)≧0.5である。なお、XおよびYを含むm個のジヒドロキシジアミド単位、並びにXおよびYを含むn個のジアミド単位の配列順序は問わない。)
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜10の1価の脂肪族基または炭素数6〜12の1価の芳香族基である。)
【化3】

(式中、Rは炭素数1〜10の1価の脂肪族基または炭素数6〜12の1価の芳香族基である。)
【請求項2】
(C)酸分解性化合物がフルオレン骨格を有する化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(D)熱酸発生剤が脂肪族または芳香族スルホン酸のエステルであることを特徴とする、請求項1または2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(1)請求項1〜3のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物層を基板上に形成し、(2)マスクを介して活性光線で露光するか、活性光線、電子線またはイオン線を直接
描画し、(3)照射部をアルカリ水溶液で溶出または除去し、(4)得られたレリーフパターンを加熱処理することを特徴とする、硬化レリーフパターンの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法により得られる硬化レリーフパターン層を有してなることを特徴とする、半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−304125(P2007−304125A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129266(P2006−129266)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】