説明

ポジ型感光性組成物

【課題】
バーニング不要で湿度が25〜60%の条件で塗布して非常に優れた密着性が得られ、低いアルカリ強度で現像が可能であり、高感度が保たれ残渣が生じない現像ができて、シャープな輪郭で切れ、レジスト膜が非常に硬くて現像前の取り扱いにおける耐傷性が向上するポジ型感光性組成物を提供する。
【解決手段】
(A)分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子物質、(B)現像露光光源の赤外線を吸収して熱に変換する光熱変換物質、及び(C)チオール化合物、を含有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性組成物に関し、より詳しくは、波長700〜1,100nmのレーザー光に露光感応して該感応部がアルカリ現像液に可溶になる赤外波長域レーザー感応性を有する塗布後の加熱処理を必要としないアルカリ可溶性のポジ型感光性組成物に関する。本発明のポジ型感光性組成物は、フォトファブリケーションにおいて有効に用いることができ、特に、印刷版、電子部品、精密機器部品、偽造防止用関連部材等の製造に適用されるフォトファブリケーションの分野に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
近年、近赤外波長域のレーザーに露光感応して該感応部が現像液に可溶になる近赤外波長域レーザー感応性を有するポジ型感光性組成物が提案されている(たとえは、特許文献1及び2等参照。)。しかしながら、これらのポジ型感光性組成物は支持体表面への密着性が低く画像が剥離し易いという問題があった。
【0003】
また、従来のポジ型感光性組成物は、いずれも支持体表面に該ポジ型感光性組成物を塗布後に加熱処理(バーニング)を必要とするものであり、バーニング後の冷却を必要とし、バーニング及びその後の冷却に時間とエネルギーを要し、さらに、装置ラインがバーニング装置の分だけ長くなり、設備費とランニングコストが高くなる、等の問題がある。さらに、グラビアロールの場合は、ロールは薄板材と異なり、熱負荷が大きく加熱及び冷却に長時間を要し、さらにこれらの時間はロールの大きさ・肉厚により、又は鉄ロールとアルミロールにより相違する為均一な制御ができないという問題もあった。又、バーニングを行うことは、シアニン色素等の色素に変性を来して感度低下を生じパターンの切れが悪くなるとともに現像時にレジストが薄くなり輪郭が後退しピンホールが生じる一因になっている。従って、バーニングを必要としないポジ型感光膜の開発が強く要望されている。
【0004】
密着性を改良するために、特許文献3はフェノール性水酸基を有する樹脂、光吸収色素及び複素環チオールを含有するポジ型感光性組成物を開示している。しかしながら特許文献3記載の組成物も画像形成の為に感光性組成物を支持体表面に塗布後に加熱処理を行う必要があった。
【0005】
一方、特許文献4は、酸の作用により分解しアルカリ可溶となる基を有する樹脂、光酸発生剤及びメルカプト基を有する化合物を含有するポジ型感光性組成物を記載している。しかしながら、該組成物は支持体表面塗布後の加熱処理に加えて、露光後加熱(PEB)を必要とする。特許文献4は、PEBにより光酸発生剤が酸を発生し、この酸の作用により樹脂がアルカリ可溶となるポジ型感光性組成物であり、本発明のポジ型感光性組成物とはその構成も使用方法も全く別異なものである。
【特許文献1】特開平11−174681号公報
【特許文献2】特開平11−231515号公報
【特許文献3】特開2003−337408号公報
【特許文献4】特開2004−138758号公報
【特許文献5】特公昭47−25470号公報
【特許文献6】特公昭48−85679号公報
【特許文献7】特公昭51−21572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、密着性に優れると共に、被塗布対象への塗布後及び露光後の加熱処理が不要なポジ型感光性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のポジ型感光性組成物は、塗布後の加熱処理を必要としないポジ型感光性組成物であって、(A)分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子物質、(B)現像露光光源の赤外線を吸収して熱に変換する光熱変換物質、及び(C)チオール化合物、を含有することを特徴とする。
【0008】
前記高分子物質(A)が、カルボキシル基及び/又はカルボン酸無水物基を少なくとも1つ有する不飽和化合物(a1)より得られる重合体、並びに前記不飽和化合物(a1)及び該不飽和化合物と共重合可能な化合物(a2)より得られる共重合体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0009】
前記不飽和化合物(a1)が、マレイン酸、(メタ)アクリル酸及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好適である。なお、本発明において、アクリルとメタクリルを併せて(メタ)アクリルと称する。
【0010】
前記高分子物質(A)が、マレイン酸重合体、(メタ)アクリル酸重合体、スチレン/マレイン酸系共重合体及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の重合体であることが好ましい。
【0011】
前記高分子物質(A)が、カルボン酸無水物基を有する高分子物質と水酸基を有する化合物との反応物であることが好ましく、スチレン/無水マレイン酸系共重合体に水酸基を有する化合物を反応させて得られるスチレン/マレイン酸系共重合体であることがより好ましい。前記水酸基を有する化合物が、アルコールであることが好適である。
【0012】
前記高分子物質(A)が、下記一般式(1)で示される重合体であることが好ましい。
【0013】
【化1】

【0014】
[式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子もしくは置換又は非置換のアルキル基を示し、aは1〜3の整数、bは6〜8の整数である。]
【0015】
前記チオール化合物(C)が、2−メルカプトベンゾオキサゾールであることが好ましい。
【0016】
本発明のポジ型感光性組成物は、(D)溶解阻止剤をさらに含有することが好適である。前記溶解阻止剤(D)が、下記化学式(2)で示される化合物であることが好ましい。
【0017】
【化2】

【0018】
本発明のフォトファブリケーション方法は、本発明のポジ型感光性組成物を用いることを特徴とする。該フォトファブリケーション方法を、印刷版、電子部品、精密機器部品、及び偽造防止用関連部材等を製造する為に適用することが好ましい。
【0019】
本発明の製版方法は、本発明のポジ型感光性組成物を用いることを特徴とする。本発明の製版方法により、凹版(グラビア)、平版、凸版、孔版等の印刷版を作成することができる。
【0020】
本発明のポジ型感光性組成物を感光液として用いたグラビア版の一般的な製版工程は次の通りである。
1.シリンダーに感光液塗布(ドライ膜厚2−5μmが好ましい。ピンホールを無くすため膜は厚い方が良いが、薄い方が使用量が少ない分コストは安くなる。)→2.乾燥(タッチドライまで15分→終了まで15〜20分)→3.露光(光源:半導体レーザー830nm、220mJ/cm2)→4.現像(60〜90秒/25℃)→5.水洗(スプレー30秒)→6.エッチング(深度10〜30μm、腐食 塩化第二銅水溶液、銅換算60g/L)→7.レジスト剥離(アルカリ剥離)→8.水洗→9.Crメッキ(水に対してクロム酸250g/L,硫酸2.5g/L)→10.水洗→11.印刷。
【0021】
本発明のポジ型感光性組成物を感光液として用いた平版(PS版)の一般的な製版工程は次の通りである。
1.CTP(PS版)(アルミ研摩→感光液塗布→乾燥)→2.露光(光源:半導体レーザー830nm、220mJ/cm2)→3.現像→4.印刷。
【発明の効果】
【0022】
本発明のポジ型感光性組成物は、赤外波長域のレーザー光に露光感応して該感応部が現像液に可溶になる赤外波長域レーザー感応性を有するアルカリ可溶性のポジ型感光性組成物であり、以下のような優れた効果を有する。
(1)アルミニウムや銅のみならず、光沢のある鏡面状のメッキ銅のような密着性の悪い被塗布対象に対しても、バーニングを行わずに優れた密着性を得ることができる。また、バーニングを行わずに、従来のバーニングを行った場合と同等の光沢のある感光膜を得ることができる。
(2)湿度25〜60%の条件においても良好な密着性が得られる。
(3)適切な時間で残渣が発生しない良好なアルカリ現像が行える。感光層成分が露光により実質的に化学変化を起こさないにもかかわらず、耐刷性、感度、現像ラチチュード等の印刷版の基本性能を全て満足させることができる。また、カルボキシル基を有する高分子物質を用いており、現像液のアルカリ強度が低くても現像できる。現像液のpHが10〜12の間で現像ができるため、空気中の炭酸ガスの溶解が少ない分アルカリ現像液の経時による低下が少ない。一方、フェノール樹脂系の現像液は炭酸ガスの影響により、建浴後すぐPHの低下があり、バッファーソルーション(緩衝溶液)にしないと連続して現像が出ない、せいぜい2〜3日でアルカリ濃度の低下がおきる。そういう状況ではpH13.0以上の現像液で現像するフェノール樹脂タイプに比べ、アルカリの濃度低下に対する管理が容易である。また、アルカリ主剤の選択の幅が広がると同時にアルカリ廃液の強度が低いため、廃液処理が楽である。建浴:現像液原液から現像槽で水で希釈し現像液をつくることをいう。
(4)感光層中の光熱変換物質によって過剰な熱が発生する高い露光エネルギーよりも低い露光エネルギーで画像露光を行っても現像ラチチュードを広く取れるので感光層飛散が生ずる度合いが低く抑制されるから、感光層飛散(アブレーション)し、露光装置の光学系を汚染するという問題が生じない。
(5)バーニング処理を行わないことで高感度が保たれレジスト画像のエッジが露光の照射パターンの通りにシャープな輪郭で切れる極めて良好な現像が行える。また、端面部分もバーニングによる熱容量のバラツキがない分、現像後の均一な膜厚を保持できる。
(6)レジスト画像に膜減りが少なく、光沢があり、そのまま腐食してもピンホールの発生がなくグラビア製版ができる。また、印刷等に供して数千枚以上刷れる程の耐刷性のあるレジスト画像が得られ、感光膜乾燥後の現像前の取り扱いにおけるピンホールの発生を回避でき、又は耐擦爪傷性が向上する。
(7)レーザーによる画像焼付に対する変化率が少なく、且つ現像のラチチュードが秀逸である。
(8)現像後の膜減りが少ないため、ピンホールの発生が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これらの実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0024】
本発明のポジ型感光性組成物は、露光後の加熱処理を必要としないポジ型感光性組成物であって、下記成分(A)〜(C)を必須成分として含有するものである。
(A)分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子物質、
(B)画像露光光源の赤外線を吸収して熱に変換する光熱変換物質、及び
(C)チオール化合物。
【0025】
前記高分子物質(A)としては、分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有する、アルカリに可溶な高分子物質であれば、特に限定されないが、カルボキシル基及び/又はカルボン酸無水物基を少なくとも1つ有する不飽和化合物(a1)の重合体や、前記不飽和化合物(a1)と該不飽和化合物と共重合可能な化合物(a2)の共重合体が好適な例として挙げられる。前記高分子物質(A)は、カルボキシル基を酸価が30〜500、特に、180〜250になるように含むことが好ましい。重量平均分子量としては1,500〜100,000が好適であり、3,000〜10,000前後のものが更に好ましい。
【0026】
前記不飽和合物(a1)としては、マレイン酸、(メタ)アクリル酸、フマール酸、イタコン酸、及びそれらの誘導体等が好ましく、これらを単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
マレイン酸及びその誘導体(マレイン酸系単量体と称する。)としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル(例えば、マレイン酸モノメチル,マレイン酸モノエチル,マレイン酸モノ−n−プロピル,マレイン酸モノイソプロピル,マレイン酸モノ−n−ブチル,マレイン酸モノイソブチル及びマレイン酸モノ−tert−ブチル等)、マレイン酸ジエステル等が好適な例として挙げられる。
【0028】
(メタ)アクリル酸及びその誘導体[(メタ)アクリル系単量体と称する。]としては、例えば、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等)が好適な例として挙げられる。
【0029】
前記不飽和化合物(a1)と共重合可能な化合物(a2)としては、不飽和二重結合を有する化合物が好ましく、スチレン、α−メチルスチレン、m又はp−メトキシスチレン、p−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、3−ヒドロキシメチル−4−ヒドロキシ−スチレン等のスチレンとその誘導体(スチレン系単量体と称する。)が特に好ましい。これらを単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
前記高分子物質(A)としては、前記マレイン酸系単量体の重合体やマレイン酸系単量体を主成分とする共重合体、前記(メタ)アクリル系単量体の重合体や(メタ)アクリル系単量体を主成分とする共重合体、マレイン酸系単量体及び(メタ)アクリル系単量体とスチレン系単量体等の他の単量体との共重合体、マレイン酸系単量体とスチレン系単量体とを共重合して得られるスチレン/マレイン酸系共重合体(以下、共重合体(b1)と称する。)、アクリル系単量体とスチレン系単量体との共重合体、これら重合体の誘導体、又はそれらの変性物が好ましく、マレイン酸重合体、(メタ)アクリル酸重合体、下記一般式(3)及び/又は(4)で示される構造と下記一般式(5)で示される構造とを有する共重合体、又は(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとスチレン系単量体との共重合体がより好ましく、下記一般式(1)で示される共重合体であることがさらに好ましい。
【0031】
【化3】

【0032】
式(3)において、R3及びR4は、それぞれ独立して水素原子又は1価の置換基を示し、水素原子、低級アルキル基又は反応性二重結合を有する基が好ましい。
【0033】
【化4】

【0034】
【化5】

【0035】
式(5)において、R5及びR6はそれぞれ独立して水素原子又は1価の置換基を示し、水素原子又はメチル基が好ましい、R7は水素原子又は1価の置換基を示し、水素原子、水酸基、アルキル基又はアルコキシ基が好ましい、R8は水素原子又は1価の置換基を示し、水素原子又はヒドロキシアルキル基が好ましい。
【0036】
【化6】

【0037】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子又は1価の置換基であり、水素原子、もしくは置換又は非置換のアルキル基が好ましく、水素原子、低級アルキル基又はアルコキシアルキル基がより好ましい、R1及びR2が複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。R1及びR2の少なくとも1つが水素原子であることが好ましい、aは0又は1以上の整数であり、1〜3が好ましい、bは1以上の整数であり、6〜8が好ましい。
【0038】
前記高分子物質(A)の製造方法は特に限定されず、公知の方法に準じて行うことができるが、カルボン酸無水物基を有する高分子物質と水酸基を有する化合物とを反応させてカルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子物質を得ることが好ましい。例えば、前記スチレン/マレイン酸系共重合体は、スチレン/無水マレイン酸系共重合体(即ち、スチレン系単量体と、無水マレイン酸との共重合物)に水酸基を有する化合物を反応させてエステル化させて得ることが好適である。
【0039】
前記水酸基を有する化合物としては、特に限定はないが、イソプロパノール、n−プロパノール、イソプロパノール/シクロヘキサノール、ブチルアルコール、イソオクタノール、エチレングリコール等のアルコール,エチレングリコールブチルエーテル等のエチレングリコールエーテル,ジエチレングリコールエチルエーテル等のジエチレングリコールエーテルなどが挙げられる。
【0040】
また、前記高分子物質(A)として、前記共重合体(b1)を、反応性二重結合を有する化合物で変性したもの[以下、共重合体(b2)と称する。]を用いてもよい。この場合の式(3)及び(4)で示される構造と式(5)で示される構造の比率が約1であることが好ましい。上記共重合体(b2)としては、具体的には、共重合体(b1)中の酸無水物基又はカルボキシ基に、反応性二重結合を有する化合物を反応させることにより製造することができる。この場合アルカリ現像を行うために必要なカルボキシル基が共重合体中に残っていることが必要である。
【0041】
前記反応性二重結合を有する化合物としては、炭素−炭素二重結合を有する化合物が好ましく、具体的には、不飽和アルコール(例えば、アリルアルコール、2−ブテン−1−2−オール、フルフリルアルコール、オレイルアルコール、シンナミルアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド等),アルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート等),オキシラン環及び反応性二重結合をそれぞれ1個有するエポキシ化合物(例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、α−エチルグリシジルアクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、イタコン酸モノアルキルモノグリシジルエステル等)等が好適な例として挙げられる。
【0042】
また、上記共重合体(b2)として、不飽和アルコールにより反応性二重結合を導入されたものに、さらに反応性二重結合濃度を大きくするために、前記したオキシラン環及び反応性二重結合をそれぞれ1個有するエポキシ化合物を反応させ、さらに反応性二重結合濃度を大きくしたものを用いてもよい。
【0043】
上記共重合体(b1)及び(b2)の製造方法は特に限定されず、公知の方法(例えば、特許文献5〜7等参照。)に準じて行うことができる。スチレン/マレイン酸系重合体以外のカルボキシ基を有するアルカリ可溶性高分子物質も上記と同様に反応性二重結合を導入することができる。高分子物質への反応性二重結合の付与は、硬化度の増加及び耐刷性の向上の点から好ましい。
【0044】
本発明のポジ型感光性組成物におけるアルカリ可溶性高分子物質(A)の含有割合は、特に限定されないが、ポジ型感光性組成物の固形分総量に対して、80〜99重量%であるのが好ましく、90〜95重量%であるのが更に好ましい。これら高分子物質(A)は、単独で使用しても良く、2種以上併用しても良い。
【0045】
前記光熱変換物質(B)としては、吸収した光を熱に変換し得る化合物であれば特に限定はないが、波長700〜1,100nmの赤外線領域の一部又は全部に吸収帯を有する有機又は無機の顔料や染料、有機色素、金属、金属酸化物、金属炭化物、金属硼化物等が挙げられ、前記波長域の光を効率良く吸収し、且つ紫外線領域の光は殆ど吸収しないか又は吸収しても実質的に感応しない光吸収色素が好ましく、下記一般式(6)又は(7)で示される化合物やその誘導体が好適に用いられる。
【0046】
【化7】

【0047】
[式(6)中、R9〜R14は各々独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示す。X-は対アニオンを示し、Xとしてはハロゲン原子、ClO4、BF4、p−CH364SO3、又はPF6等が挙げられる。]
【0048】
【化8】

【0049】
[式(7)中、R15〜R18は各々独立して、水素原子、メトキシ基、−N(CH32、又は−N(C252を示し、Y-は対アニオンを示し、YとしてはC49−B(C653、p−CH364SO3、又はCF3SO3等が挙げられる。]
【0050】
上記一般式(7)で示される化合物としては、最大吸収波長が近赤外線領域にある下記化学式(8)〜(11)で示される近赤外線吸収色素がより好ましい。
【0051】
【化9】

【0052】
【化10】

【0053】
【化11】

【0054】
【化12】

【0055】
また、他の光吸収色素としては、例えば、特許文献1〜3に記載されているような窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子等を含む複素環等がポリメチン(−CH=)nで結合された、広義の所謂シアニン系色素が代表的なものとして挙げられ、具体的には、例えば、キノリン系(所謂、シアニン系)、インドール系(所謂、インドシアニン系)、ベンゾチアゾール系(所謂、チオシアニン系)、イミノシクロヘキサジエン系(所謂、ポリメチン系)、ピリリウム系、チアピリリウム系、スクアリリウム系、クロコニウム系、アズレニウム系等が挙げられ、中で、キノリン系、インドール系、ベンゾチアゾール系、イミノシクロヘキサジエン系、ピリリウム系、又はチアピリリウム系が好ましい。特に、フタロシアニンやシアニンが好ましい。
【0056】
前記光熱変換物質(B)は、波長700〜1,100nmの赤外波長領域の一部又は全部に吸収帯を有し該赤外波長領域のレーザー光を吸収して熱分解する特性を有し、前記カルボキシル基を有する高分子物質(A)の分子の熱切断によるアルカリ可溶性の低分子化・アブレーションに関与する。
【0057】
光熱変換物質の添加量の多少は、露光で発生する熱の過多と不足に関係し、又、赤外レーザー光の強弱は、露光部分に存在する有機高分子物質の熱分解の過多と不足に関係するので適切な量に設定される。本発明のポジ型感光性組成物における光熱変換物質(B)の含有割合は、ポジ型感光性組成物の固形分総量に対して、0.1〜10重量%であるのが好ましく、1〜4重量%であるのが更に好ましい。
【0058】
前記チオール化合物(C)としては、−SH基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、2−メルカプトエタノール、チオリンゴ酸、トリチルメルカプタン、4−アミノチオフェノール及び3−メルカプトプロピオン酸メチルエステル等のメルカプタン類、チオ酢酸等のチオカルボン酸類、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール及び2−チオ酢酸−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール等のチアジアゾール類、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、1−(2−ジメチルアミノエチル)−5−メルカプト−1H−テトラゾール、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジンモノナトリウム塩、2−アミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、p−メルカプトフェノール、及び下記一般式(12)(これは下記一般式(13)と互変異性の関係にある)で表わされる化合物等が挙げられる。
【0059】
【化13】

【0060】
【化14】

【0061】
[式(12)及び(13)中、Aは硫黄原子、酸素原子又は>N−R21を表わし、R21は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表わす。R19及びR20はそれぞれ水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基、ニトロ基、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、アセチル基、若しくはカルボキシル基であり、また、R19、R20及びこれらが結合している二重結合を併せてベンゼン環を形成してもよく、R19及びR20が結合している二重結合は、水素添加されていてもよい。]
【0062】
前記式(12)で示されるチオール化合物の具体例を以下に示す。
(1)2−メルカプトベンゾイミダゾール
【化15】

(2)2−メルカプトベンゾオキサゾール
【化16】

(3)2−メルカプトベンゾチアゾール
【化17】

(4)1−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール
【化18】

(5)2−メルカプト−4−メチル−5−アセチルチアゾール
【化19】

(6)2−メルカプト−5−アセチルチアゾール
【化20】

(7)1−メチル−2−メルカプト−4−メチル−5−アセチルイミダゾール
【化21】

(8)1−メチル−2−メルカプトイミダゾール
【化22】

(9)2−メルカプトオキサゾール
【化23】

(10)2−メルカプト−4−メチルチアゾール
【化24】

(11)2−メルカプト−4,5−ジメチルチアゾール
【化25】

(12)2−メルカプト−2−イミダゾリン
【化26】

【0063】
これらチオール化合物は単独で使用しても良く、2種以上併用してもよい。本発明のポジ型感光性組成物におけるチオール化合物(C)の含有割合は、ポジ型感光性組成物の固形分総量に対して、0.1〜10重量%であるのが好ましく、0.2〜5重量%であるのがより好ましい。
【0064】
本発明のポジ型感光性組成物に、溶解阻止剤(D)を配合することが好ましい。前記溶解阻止剤(D)は、露光部と非露光部のアルカリ現像液に対する溶解性の時間差を増大させる目的で配合され、高分子物質(A)と水素結合を形成して該高分子物質の溶解性を低下させる機能を有し、かつ、赤外領域の光を殆ど吸収せず、赤外領域の光で分解されないものが用いられる。
【0065】
前記溶解阻止剤(D)として、下記式(2)で示される化合物(4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール)を用いることが好ましい。
【0066】
【化27】

【0067】
また、溶解阻止剤(D)として、公知の溶解阻止剤を用いることもできる。具体的には、スルホン酸エステル、燐酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、芳香族ジスルホン、カルボン酸無水物、芳香族ケトン、芳香族アルデヒド、芳香族アミン、芳香族エーテル等や、ラクトン骨格、チオラクトン骨格、N,N−ジアリールアミド骨格、又はジアリールメチルイミノ骨格を有する酸発色性色素、ラクトン骨格、チオラクトン骨格、又はスルホラクトン骨格を有する塩基発色性色素、非イオン性界面活性剤等が挙げられ、これらの中では、ラクトン骨格を有する酸発色性色素が好ましい。
【0068】
本発明のポジ型感光性組成物における溶解阻止剤(D)の含有割合は、ポジ型感光性組成物の固形分総量に対して、0.5〜8重量%であるのが好ましく、1〜5重量%がより好ましい。これら溶解阻止剤は単独で使用しても良く、2種以上併用してもよい。
【0069】
本発明のポジ型感光性組成物には、上記した成分に加えて、必要に応じて、他の密着性改質剤、増感剤、顔料又は染料等の着色剤、現像促進剤、塗布性改良剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0070】
前記密着性改質剤としては、特に限定されないが、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、ビニルピロリドン/ビニルカプロラクタム/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、テルペンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、及びケトン樹脂等のアルカリ可溶性樹脂が好適に用いられる。これら密着性改質剤は単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0071】
前記着色剤としては、特にトリアリールメタン系染料が好ましい。トリアリールメタン系染料としては、従来公知のトリアリールメタン系の着色染料を広く使用できるが、具体的には、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ビクトリアブルーB、オイルブルー613(オリエント化学工業(株)製の商品名)及びこれらの誘導体が好ましい。これらトリアリールメタン系色素は単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0072】
着色染料を用いることにより、現像によりパターンができた際に感光膜の表面のピンホール、ゴミ等がはっきり認識でき修正液(オペーク)で塗込み作業がし易いという効果がある。染料の濃度が高いほど見やすく好ましい。なお、半導体産業では修正出来ないため、クリーンルームで製造を行っているが、印刷業界、電子部品関連では失敗品を再生させるため、修正を行う。
【0073】
前記現像促進剤は、例えば、ジカルボン酸又はアミン類又はグリコール類を微量添加することが好ましい。前記増感剤としては、光や熱により酸を発生する化合物が好ましい。これら増感剤としては、例えば、ジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、芳香族スルホン酸エステル、トリアジン化合物、ジアゾジスルホン系化合物等が挙げられ、下記式(25)で示される化合物が特に好ましい。
【0074】
【化28】

【0075】
本発明のポジ型感光性組成物は、通常、溶媒に溶解した溶液として使用される。溶媒の使用割合は、感光性組成物の固形分総量に対して、通常、重量比で1〜20倍程度の範囲である。
【0076】
溶媒としては、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与えるものであれば特に制限はなく、セロソルブ系溶媒、プロピレングリコール系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、高極性溶媒を使用できる。セロソルブ系溶媒としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等が挙げられる。プロピレングリコール系溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。エステル系溶媒としては、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等が挙げられる。アルコール系溶媒としては、ヘプタノール、ヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール等が挙げられる。高極性溶媒としては、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン系溶媒やジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。その他、酢酸、あるいはこれらの混合溶媒、更にはこれらに芳香族炭化水素を添加したもの等が挙げられる。
【0077】
本発明のポジ型感光性組成物は、通常、前記各成分をセロソルブ系溶媒、プロピレングリコール系溶媒等の溶媒に溶解した溶液として支持体表面であるグラビア印刷用の被製版ロールの銅メッキ面又は硫酸銅メッキ面に塗布し自然乾燥した後、高速回転して被製版ロールの表面で風を切り感光膜内における遠心力による質量作用と表面近傍が若干の負圧状態になることで溶剤残留濃度を6%以下に低減することにより、支持体表面に感光性組成物層が形成されたポジ型感光膜とされる。
【0078】
塗布方法として、メニスカスコート、ファウンティンコート、ディップコート、回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、及びカーテン塗布等を用いることができる。塗布膜の厚さは1〜6μmの範囲とすることが好ましく、さらに3〜5μmとするのが好ましい。
【0079】
ポジ型感光性組成物層を画像露光する光源としては、波長700〜1,100nmの赤外レーザー光線を発生する半導体レーザーやYAGレーザーが好ましい。他に、ルビーレーザー、LED等の固体レーザーを用いることが出来る。レーザー光源の光強度としては、50〜700mJ/cm2とすることが好ましく、80〜250mJ/cm2とすることが特に好ましい。
【0080】
本発明のポジ型感光性組成物を用いて形成した感光膜に対して用いる現像液としては、無機アルカリ(例えば、Na、Kの塩等)、又は有機アルカリ(例えば、TMAH(Tetra Methyl Ammonium Hydroxide)、又はコリン等)などの無機又は有機のアルカリからなる現像剤が好ましい。
【0081】
現像は、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等により、通常、15〜45℃程度の温度、好ましくは22〜32℃で行う。
【実施例】
【0082】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0083】
(実施例1)
表1に示す配合物質及び配合割合によりポジ型感光性組成物を調製し、テスト感光液とした。
【0084】
【表1】

【0085】
表1中の各成分は下記の通りである。
樹脂1:SMA 1440(SARTOMER社製,スチレン/無水マレイン酸共重合体のブチルセロソルブによる部分エステル化物)
赤外線吸収色素1:前記式(6)で示される赤外線吸収色素
チオール1:2−メルカプトベンゾオキサゾール
溶解阻止剤1:TrisP−PA(本州化学工業(株)製、前記式(2)で示される化合物)。
着色色素1:オイルブルー613(オリエント化学工業(株)製、Color Index(C.I.) No. 42595)
PM:プロピレングリコールモノメチルエーテル
IPA:イソプロピルアルコール
MEK:メチルエチルケトン
【0086】
得られたテスト感光液を用いて下記の実験を行った。なお、実験室内は25℃、表2に示す湿度条件下で実験を行った。ロール母材が鉄であり硫酸銅メッキされ鏡面研磨された200φmmの被製版ロールを、ファウンテンコーティング装置(除湿装置と加湿装置が付設されていて湿度を所望にコントロールできる装置)で両端チャックして25r.p.mで回転し、ワイピングクロスで十分に拭浄した。なお、該ファウンテンコーティング装置は、ポジ型感光性組成物中の溶剤がコーティング中に蒸発して溶剤の割合が変化することを回避するものである。
【0087】
その後、上端からテスト感光液が涌き出るパイプを被製版ロールの一端に約500μmのギャップを有するように位置させ、テスト感光液をコーティングに必要な量だけ湧き出させるようにして、該パイプを被製版ロールの一端から他端まで移動してスパイラルスキャン方式でテスト感光液を均一に塗布し、塗布終了から5分間25r.p.mで回転を続行した後回転停止した。
【0088】
5分間待って、液垂れについて観察したところ、肉眼で液垂れが生じたことが観察できなかった。そして、膜厚測定をしたところ、ロールの下面部分と上面部分とで差異はなかった。もって、液垂れが生じなく状態に乾固した感光膜をセットできたことを確認した。
【0089】
引き続いて、試験ロールを100r.p.mで20分間回転して停止し、感光膜中の溶剤残留濃度を測定したところ、2.9%であった。
【0090】
続いて、試験ロールをクレオサイテックス社の高出力半導体レーザーヘッドを搭載した露光装置(株式会社シンク・ラボラトリー製)に取付けて該試験ロールに赤外波長域のレーザーを照射してポジ画像を焼き付け、次いで、試験ロールを現像装置に取付けて回転して現像槽を上昇させて残渣がなくなるまで現像を行い、その後水洗した。なお、現像液はKOH4.2%(25℃)を用いた。得られたレジスト画像を顕微鏡により評価した。結果を表2に示す。
【0091】
【表2】

【0092】
表2中の評価方法は下記の通りである。
1)エッジの解像性
図1に示した解像力テストパターンを用いて、市松模様、グレーチングの7.9μmの線のエッジがシャープかどうかを測定した。
2)現像ラチチュード
大日本印刷株式会社製のセル蔵(網点の開孔率自動測定のできる装置)を用いて測定を行った。現像の回数を多くしたテスト(本実施例では3回)により、7.9μm×7.9μmの露光により、セル面積計算で60−75μm2に入っている場合は、印刷濃度の許容範囲に入っている為、良好であり、表中◎で示した。印刷許容範囲外の場合を表中×で示した。
3)密着性
tesa test: DIN EN ISO 2409 tesaテープによる碁盤目密着性テストで100マスが全て残る場合を◎、20%未満の範囲で剥離される場合を○、20%以上剥離する場合を×とした。
4)感度
露光量をふり画像パターンに再現性が近いもので感度を決定。露光機はクレオ社のサーマルイメージングヘッドを用いた。
5)現像
残渣がなくなるまでの現像時間を測定した。
6)残膜率
塗膜の厚みを測定する装置であるFILMETRICS Thin Film Analyzer F20(Filmetrics Co製)を用いて、現像前の膜厚、現像後の膜厚を測定し、残膜率を算出した。
7)画像
オリジナル画像に再現性が近いかどうかを評価した。
【0093】
感光液テストパターンと計測個所を図1に示す。図1中の計測個所に対するチェック項目及び測定方法を表3に示す。
【0094】
【表3】

【0095】
表2に示した如く、実施例1のポジ型感光性組成物は、25℃の室温、湿度35〜55%の条件下で、70秒位で残渣がないシャープなパターンが得られる良好な現像が行えた。現像ラチチュードも良好であった。
【0096】
なお、硫酸銅メッキ面の代わりに銅面又はアルミニウム面を用いた場合についても実験を行ったがいずれも実施例1と同様、良好な結果が得られた。アルミニウム面の場合、特に広い現像ラチチュードが得られた。
【0097】
(実施例2〜12)
表4に示した如く組成物中の成分(C)を変更した以外は実施例1−2と同様に実験を行った。なお、測定条件は湿度45%の条件下で行ったものである。結果を併せて表4に示す。
【0098】
【表4】

【0099】
表4中、チオール2〜12は下記の通りである。なお、各チオールの括弧内の数値は配合量を示すものであり、成分(A)の配合量を100重量部としたときの重量部を示したものである。
チオール2:2−メルカプトベンゾイミダゾール
チオール3:2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール
チオール4:2−チオ酢酸−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール
チオール5:2−メルカプトエタノール
チオール6:チオ酢酸
チオール7:1−(2−ジメチルアミノエチル)−5−メルカプト−1H−テトラゾール
チオール8:ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート
チオール9:2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン
チオール10:2−アミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン
チオール11:p−メルカプトフェノール
チオール12:4−アミノチオフェノール
【0100】
(実施例13〜21)
表5に示した如く組成物中の成分(A)を変更した以外は実施例1−2と同様に実験を行った。結果を併せて表5に示す。
【0101】
【表5】

【0102】
表5中、成分(A)の配合量は実施例1と同様であり、樹脂2〜10は下記の通りである。
樹脂2:SMA 17352(SARTOMER社製,スチレン/無水マレイン酸共重合体のイソプロパノール/シクロヘキサノールによる部分エステル化物)。
樹脂3:SMA 2624(SARTOMER社製,スチレン/無水マレイン酸共重合体のn−プロパノールによる部分エステル化物)。
樹脂4:SMA 3840(SARTOMER社製,スチレン/無水マレイン酸共重合体のイソオクタノールによる部分エステル化物)。
樹脂5:オキシラックSH−101(日本触媒化学工業(株)製、スチレン/マレイン酸半エステル共重合体)。
樹脂6:アクリル酸、メタクリル酸メチル、及びスチレンの共重合体(酸価98、重量平均分子量21000、ベースモノマー比 アクリル酸:メタクリル酸メチル:スチレン=1:1:1)。
樹脂7:マレイン酸重合体(酸価300、重量平均分子量10000)
樹脂8:アクリル酸重合体(酸価100、重量平均分子量25000)
樹脂9:オキシラックSH−101誘導体(グリシジルメタクリレート付加したスチレン/マレイン酸系共重合体、酸価80)
樹脂10:グリシジルメタクリレート付加させた樹脂6
【0103】
(実施例22〜26)
表6に示した如く組成物中の成分(B)を変更した以外は実施例1−2と同様に実験を行った。結果を併せて表6に示す。
【0104】
【表6】

【0105】
表6中、色素2〜6は下記の通りである。なお、各色素の括弧内の数値は配合量を示すものであり、成分(A)の配合量を100重量部としたときの重量部を示したものである。
色素2:IR−B(昭和電工(株)製、前記式(8)で示される赤外線吸収色素)
色素3:IR−T(昭和電工(株)製、前記式(9)で示される赤外線吸収色素)
色素4:IR−2MF(昭和電工(株)製、前記式(10)で示される赤外線吸収色素)
色素5:IR−13F(昭和電工(株)製、前記式(11)で示される赤外線吸収色素)
色素6:NK−2014((株)林原生物化学研究所製、下記式(26)で示される赤外線吸収色素)
【0106】
【化29】

【0107】
(比較例1)
樹脂1の替わりにノボラック樹脂[PR−NMD−100(住友ベークライト社製)]を配合した組成物をテスト感光液として用いた以外は実施例1−2と同様に実験を行った。比較例1の塗膜はアルカリ現像液で全面的に流れてしまい、現像後、画像が形成されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明のポジ型感光性組成物は、グラビア印刷用の被製版ロールの硫酸銅メッキ面にポジ型感光膜を形成するのに好ましいが、これに限定されるものではなく、アルミニウム、亜鉛、鋼等の金属板、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄、クロム、ニッケル等をメッキ又は蒸着した金属板、樹脂を塗布した紙、アルミニウム等の金属箔を貼着した紙、プラスチックフィルム、親水化処理したプラスチックフィルム、及びガラス板等に適用しても低温での密着性が良好であり、高感度が得られる。
【0109】
従って、感光性平版印刷版、簡易校正印刷用プルーフ、配線板やグラビア用銅エッチングレジスト、フラットディスプレイ製造に用いられるカラーフィルター用レジスト、LSI製造用フォトレジスト、及び偽造防止用関連部材等に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】実施例1で用いた感光液テストパターンと計測個所を示す図面であり、(a)はテストパターン、(b)は(a)の丸印部分の拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布後の加熱処理を必要としないポジ型感光性組成物であって、
(A)分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子物質、
(B)現像露光光源の赤外線を吸収して熱に変換する光熱変換物質、及び
(C)チオール化合物、
を含有することを特徴とするポジ型感光性組成物。
【請求項2】
前記高分子物質(A)が、カルボキシル基及び/又はカルボン酸無水物基を少なくとも1つ有する不飽和化合物(a1)より得られる重合体、並びに前記不飽和化合物(a1)及び該不飽和化合物と共重合可能な化合物(a2)より得られる共重合体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のポジ型感光性組成物。
【請求項3】
前記不飽和化合物(a1)が、マレイン酸、(メタ)アクリル酸及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項2記載のポジ型感光性組成物。
【請求項4】
前記高分子物質(A)が、マレイン酸重合体、(メタ)アクリル酸重合体、スチレン/マレイン酸系共重合体及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポジ型感光性組成物。
【請求項5】
前記高分子物質(A)が、カルボン酸無水物基を有する高分子物質と水酸基を有する化合物との反応物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のポジ型感光性組成物。
【請求項6】
前記高分子物質(A)が、スチレン/無水マレイン酸系共重合体に水酸基を有する化合物を反応させて得られるスチレン/マレイン酸系共重合体であることを特徴とする請求項4又は5記載のポジ型感光性組成物。
【請求項7】
前記高分子物質(A)が、下記一般式(1)で示される重合体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のポジ型感光性組成物。
【化1】

[式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して水素原子もしくは置換又は非置換のアルキル基を示し、aは1〜3の整数、bは6〜8の整数である。]
【請求項8】
前記水酸基を有する化合物が、アルコールであることを特徴とする請求項5又は6記載のポジ型感光性組成物。
【請求項9】
前記チオール化合物(C)が、2−メルカプトベンゾオキサゾールであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載のポジ型感光性組成物。
【請求項10】
(D)溶解阻止剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載のポジ型感光性組成物。
【請求項11】
前記溶解阻止剤(D)が、下記化学式(2)で示される化合物であることを特徴とする請求項10記載のポジ型感光性組成物。
【化2】

【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載のポジ型感光性組成物を用いることを特徴とするフォトファブリケーション方法。
【請求項13】
印刷版、電子部品、精密機器部品、又は偽造防止用関連部材を製造するために適用されることを特徴とする請求項12記載のフォトファブリケーション方法。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項記載のポジ型感光性組成物を用いた製版方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−65071(P2006−65071A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248590(P2004−248590)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000131625)株式会社シンク・ラボラトリー (52)
【Fターム(参考)】