説明

ポジ型画像形成性要素の画像形成および現像方法

平版印刷版などの画像形成された要素を製造する方法が、ポジ型画像形成性要素を300mJ/cm2 未満のエネルギーを使用して像様露光して、露光領域および非露光領域をもたらすことによって達成された。画像形成された要素は、炭酸塩を含むシリケートフリーのアルカリ性溶液を使用して現像され、主に露光領域のみを除去し、画像をもたらす。画像形成性要素は、基材と輻射線吸収性化合物とを含み、かつ、基材上に現像性向上化合物とポリ(ビニルアセタール)とを含む画像形成性層を有し、ポリ(ビニルアセタール)の反復単位の少なくとも25モル%がペンダントニトロ置換フェノール基を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独特のポリ(ビニルアセタール)バインダーを含むポジ型画像形成性要素から、炭酸塩現像液を使用して、例えば平版印刷版などの画像形成された要素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷の場合、画像領域として知られるインク受容領域を親水性表面上に生成させる。その表面を水で濡らし、インクを適用すると、親水性領域は水を保持してインクを弾き、そしてインク受容領域はインクを受容して水を弾く。次いでインクは画像が再現されるべき好適な材料の表面に転写される。場合によって、インクをまず中間ブランケットに転写することができ、次に、このブランケットが、画像が再現されるべき材料の表面にインクを転写させるために使用される。
【0003】
平版(またはオフセット)印刷版を作製するのに有用な画像形成性要素は、典型的には、基材の親水性表面(または中間層)上に適用された1つまたは2つ以上の画像形成性層を含む。当該画像形成性層(1つまたは2つ以上)は、好適なバインダー中に分散された1種または2種以上の輻射線感受性成分を含むことができる。画像形成に続いて、画像形成性層(1つまたは2つ以上)の露光領域または非露光領域が、好適な現像液により除去され、下側に位置する基材の親水性表面を露出させる。露光領域が除去される場合には、要素はポジ型と見なされる。逆に、非露光領域が除去される場合には、要素はネガ型と見なされる。各場合で、残される画像形成性層(1つまたは2つ以上)の領域はインク受容性であり、そして、現像プロセスによって露出された親水性表面の領域は、水および水溶液(典型的には湿し水)を受容し、インクを弾く。
【0004】
同様に、印刷回路板(PCB)の生産におけるレジストパターン、薄膜および厚膜回路、レジスタ、キャパシタ、およびインダクタ、マルチチップデバイス、集積回路、およびアクティブ半導体デバイスを形成するために使用することもできる。
【0005】
コンピュータからのデジタルデータを使用してオフセット印刷版または印刷回路板を直接形成する「レーザーダイレクト画像形成」法(LDI)が知られており、これらの方法は、マスキング用写真フィルムを用いた以前の方法を凌ぐ数多くの利点をもたらす。より効率的なレーザー、改善された画像形成性組成物およびそれらの成分から、この分野ではかなりの発展があった。
【0006】
感熱画像形成性要素は、適量の熱エネルギーに応答して、適量の熱エネルギーへの曝露により、または適量の熱エネルギーを吸収して化学変換を受ける要素として分類できる。熱により誘起される化学変換の種類は、要素中の画像形成性組成物をアブレートすること、または特定の現像液中での溶解度を変化させること、または感熱性層の表面層の粘着性または親水性もしくは疎水性を変化させることである。このようなものとして、平版印刷表面またはPCB生産におけるレジストパターンとして役立つことができる画像形成性層の所定の領域を露出させるために、熱画像形成を用いることができる。
【0007】
ノボラックまたは他のフェノール系ポリマーバインダーおよびジアゾキノン画像形成成分を含有するポジ型画像形成性組成物が、長年にわたって平版印刷版およびフォトレジストの業界において普及してきた。種々のフェノール樹脂および赤外線吸収性化合物に基づく画像形成性組成物も知られている。
【0008】
国際公開第2004/081662号(Memeteaら)には、酸性の性質を有する様々な現像性向上化合物(developability-enhancing compounds)と、フェノール系ポリマーまたはポリ(ビニルアセタール)とを使用して、必要な画像形成エネルギーを低減するためにポジ型組成物および要素の感度を高めることが記載されている。かかる組成物および要素に特に有用なポリ(ビニルアセタール)の幾つかが米国特許第6,255,033号(Levanonら)および米国特許第6,541,181号(Levanonら)に記載されている。
【0009】
特定の現像性向上材料およびポリ(ビニルアセタール)を含む感熱画像形成性要素が同時係属の本願と同じ出願人による米国特許出願第11/677,599号(Levanon,Postel,RubinおよびKurtserにより2007年2月22日に出願)米国特許出願第11/769,766号(Levanon,LurieおよびKampelにより2007年6月28日に出願)および米国特許出願第11/959,492号(NakashおよびLevanonにより2007年12月18日に出願)に記載されている。
【0010】
フェノール系樹脂を含む画像形成性要素は米国特許第6,410,203号(Nakamura)に記載されている。画像形成後、シリケートを含有する炭酸塩、リン酸塩およびホウ酸塩現像液などの様々な現像液のうちのいずれかにより要素を現像する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2004/081662号
【特許文献2】米国特許第6,255,033号明細書
【特許文献3】米国特許第6,541,181号明細書
【特許文献4】米国特許第6,410,203号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ポジ型画像形成性要素は、一般的に、画像形成されると、シリケートまたはメタシリケートを含む様々な高アルカリ性現像液を使用して現像される。かかる現像液は、画像形成性層の画像形成部分を除去するのに有効であるが、それらは望ましくないことにアルミニウム基材と反応して、廃棄の問題をもたらす毒性のある廃液を生じることがある。さらに、シリケートは処理機の管路および他の部品内に蓄積することがある。画像形成されたポジ型画像形成性要素、特にポリ(ビニルアセタール)バインダー樹脂を含む1つの画像形成性層を有するものを現像するためのより環境上許容され費用が少なくて済む方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、画像形成された要素を製造する方法であって、
A)ポジ型画像形成性要素を300mJ/cm2 未満のエネルギーを使用して像様露光して、露光領域および非露光領域をもたらす工程、および
B)像様露光された前記要素を、炭酸塩を含むシリケートフリーのアルカリ性溶液により現像して主に露光領域のみを除去して、露光され現像された要素に画像をもたらす工程、
を含み、前記画像形成性要素が、基材と輻射線吸収性化合物とを含み、かつ、現像性向上化合物とポリ(ビニルアセタール)とを含む画像形成性層を基材上に有し、ポリ(ビニルアセタール)の反復単位の少なくとも25モル%がペンダントニトロ置換フェノール基を含むことを特徴とする、画像形成された要素を製造する方法を提供する。
【0014】
幾つかの実施態様において、平版印刷版を製造する方法は、
A)ポジ型印刷版前駆体を100〜250mJ/cm2 のエネルギーを使用して像様露光して、露光領域および非露光領域をもたらす工程、および
B)像様露光された前記印刷版前駆体を、9.5〜11のpHを有し、かつ、0.5〜5質量%の炭酸イオンを含むシリケートフリーのアルカリ性溶液により現像して主に露光領域のみを除去して、得られた平版印刷版に画像をもたらす工程、
を含み、前記平版印刷版前駆体はアルミニウム含有基材を含み、当該アルミニウム含有基材上に画像形成性層を有し、当該画像形成性層は、輻射線吸収性化合物と、現像性向上化合物と、下記構造(I)により表されるポリ(ビニルアセタール)とを含む。
【0015】
【化1】

【0016】
上記式中、Aは、下記構造(Ia):
【0017】
【化2】

【0018】
により表される反復単位を表し、
Bは、下記構造(Ib):
【0019】
【化3】

【0020】
により表される反復単位を表し、
Cは、下記構造(Ic):
【0021】
【化4】

【0022】
により表される反復単位を表し、
Dは、下記構造(Id):
【0023】
【化5】

【0024】
により表される反復単位を表し、
kは1〜20モル%、lは5〜50モル%、mは10〜80モル%、nは0〜40モル%であり、
RおよびR’は独立に、水素、あるいは置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、またはハロ基である。
1 は置換または非置換のアルキルカルボン酸エステルまたはアリールカルボン酸エステルであり、
2 はヒドロキシ基であり、
3 はニトロ置換フェノール、ニトロ置換ナフトール、またはニトロ置換アントラセノール基であり、
4 は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、または置換もしくは非置換アリール基である。
【0025】
本発明は、アルミニウム含有親水性基材を有する平版印刷版などの画像形成された要素を提供するために使用できる。
【0026】
本発明は、より環境上許容できる方式で高感度ポジ型前駆体から画像形成された要素を提供する。既知の高アルカリ性のシリケート含有現像液に伴う問題が回避される。さらに、現像条件は、既知の方法で使用されている条件と比べて比較的穏やかである。これらの利点は、比較的薄い炭酸塩現像液を使用することによって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
定義
特に断らない限り、本明細書で使用する場合、「輻射線感受性組成物」、「画像形成性要素」、「ポジ型画像形成性要素」という用語は、本発明において有用な実施態様を示すことを意図する。
【0028】
さらに、特に断らない限り、本明細書中に記載された種々の成分、例えば、「ポリビニルアセタール」、「輻射線吸収性化合物」、および「現像性向上化合物」は、各成文の混合物も指す。従って、単数を表す冠詞の使用は、単一の成分だけを必ずしも意味するものではなく、複数の成分または成分の混合物をも含む。
【0029】
特に断らない限り、百分率は、輻射線感受性組成物または配合物の全固形分または層の乾燥コーティング量を基本的に基準とした質量百分率である。
【0030】
「単層画像形成性要素」という用語は、画像形成のために唯一つの画像形成性層を有する画像形成性要素を意味するが、以下でより詳細に指摘するように、このような要素は、種々の特性を提供するために画像形成性層の下または上に1つまたは2つ以上の層(例えばトップコート)を含んでもよい。
【0031】
本明細書中で用いる「輻射線吸収性化合物」とは、或る特定の輻射線波長に対して感受性であり、これらが配置された層内で光子を熱に変換することができる化合物を意味する。これらの化合物は「光熱変換材料」、「増感剤」、または「光−熱変換体」としても知られている。
【0032】
ポリマーに関連するあらゆる用語の定義を明らかにするために、International Union of Pure and Applied Chemistry(「IUPAC」)によって発行された「Glossary of Basic Terms in Polymer Science」,Pure Appl. Chem. 68, 2287-2311(1996)を参照されたい。しかし、本明細書中のあらゆる定義が支配的なものと見なされるべきである。
【0033】
用語「ポリマー」(例えばポリビニルアセタール)は、オリゴマーを包含する高および低分子量ポリマーを意味し、ホモポリマーおよびコポリマーの両方を包含する。
【0034】
用語「コポリマー」は、2種または3種以上の異なるモノマーから誘導されたポリマー、または、たとえ同じモノマーから誘導されるとしても、2種または3種以上の異なる反復単位を有するポリマーを意味する。
【0035】
「主鎖」という用語は、複数のペンダント基が結合されたポリマー中の原子鎖を意味する。このような主鎖の例は、1種または2種以上のエチレン系不飽和重合性モノマーの重合から得られた「全炭素」主鎖である。しかしながら、他の主鎖がヘテロ原子を含むこともでき、この場合、ポリマーは、縮合反応または何らかの他の手段によって形成される。
【0036】
用途
本発明の輻射線感受性組成物は、印刷回路板(PCB)の生産におけるレジストパターン、厚および薄膜回路、レジスタ、キャパシタ、インダクタ、マルチチップデバイス、集積回路、およびアクティブ半導体デバイスを形成するために使用することができる。さらに、本発明の輻射線感受性組成物は、親水性表面を有する基材を有する平版印刷版を提供するために使用することができ、これらの画像形成性要素は、親水性表面を有する基材を有する平版印刷版を提供するために使用することができる。他の用途も当業者には容易に明らかである。
【0037】
輻射線感受性組成物
輻射線感受性組成物は、一次ポリマーバインダーとして、1種または2種以上の水性アルカリ性溶剤(現像液)可溶性ポリ(ビニルアセタール)ポリマーバインダーを含む。ポリ(ビニルアセタール)の質量平均分子量(Mw)は、標準的な手順を用いて測定した場合に、一般的に少なくとも5,000であり、そして最大150,000であることができ、典型的には20,000〜60,000である。最適なMwは、具体的なポリマーの部類およびその使用に伴って変化し得る。
【0038】
ポリ(ビニルアセタール)は、輻射線感受性組成物(または画像形成性層)中の唯一のバインダーであってよいが、より一般的には、これらは、全てのポリマーバインダーの乾燥質量を基準として、少なくとも10質量%、より典型的には少なくとも50質量%、かつ、90質量%以下を占める。実施態様によっては、ポリ(ビニルアセタール)の量は、全てのポリマーバインダーの乾燥質量を基準として、50〜90質量%であることができる。
【0039】
例えば、有用なポリマーバインダーは、下記構造(Ic)により表される反復単位を少なくとも25モル%かつ80モル%以下含むポリ(ビニルアセタール)である。
【0040】
【化6】

【0041】
ここで、RおよびR’は、独立に、水素、または置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、またはハロ基(以下でより詳しく定義する)。
【0042】
3 は、ニトロ置換フェノール、ニトロ置換ナフトールまたはニトロ置換アントラセノール基である。これらの芳香族環上に1〜3個のニトロ基が存在してよいが、典型的にはたった1つのニトロ基が存在する。これらのフェノール、ナフトールおよびアントラセノール基は、必要に応じて、ニトロ基に加えてさらなる置換基を有してもよい。かかる置換基としては、ヒドロキシ、メトキシおよび他のアルコキシ基、アリールオキシ、チオアリールオキシ、ハロメチル、トリハロメチル、ハロ、アゾ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、シアノ、カルボキシ、エテニル、カルボキシアルキル、フェニル、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよび複素脂環式基が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、R3は、1または2個以上のヒドロキシまたはハロ置換基も含むニトロ置換フェノールまたはニトロ置換ナフトール基であることができる。
【0043】
より具体的には、有用なポリ(ビニルアセタール)樹脂は下記構造(I)により表すことができる。
【0044】
【化7】

【0045】
上記式中、Aは下記構造(Ia):
【0046】
【化8】

【0047】
により表される反復単位を表し、
Bは下記構造(Ib):
【0048】
【化9】

【0049】
により表される反復単位を表し、
Cは先に定義した構造(Ic)により表される反復単位を表し、
Dは下記構造(Id):
【0050】
【化10】

【0051】
により表される反復単位を表し、kは1〜20モル%(典型的には2〜12モル%)であり、lは5〜50モル%(典型的には20〜35モル%)、mは25〜80モル%(典型的には35〜70モル%)であり、nは0〜40モル%(典型的には10〜30モル%)である。
【0052】
RおよびR’は、独立に、水素、または炭素原子数1〜6の置換または非置換の線状または分岐アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、クロロメチル、トリクロロメチル、iso−プロピル、iso−ブチル、t−ブチル、iso−ペンチル、neo−ペンチル、1−メチルブチルおよびiso−ヘキシル基)、または環内炭素原子数3〜6の置換または非置換のシクロアルキル環(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、メチルシクロヘキシルおよびシクロヘキシル基)、またはハロ基(例えばフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)である。典型的には、RおよびR’は、独立に、水素、または置換もしくは非置換のメチルまたはクロロ基であり、あるいは、例えば、これらは独立に、水素、または非置換メチルである。ポリマーバインダー中の異なる反復単位について、RおよびR’基は先に定義したものから選ばれる同じまたは異なる基であることができる。
【0053】
構造(I)において、R1は置換または非置換のアルキルカルボン酸エステルまたはアリールカルボン酸エステルであり、例えば式−OC(=O)−R5により表される。ここで、R5は、炭素原子数1〜12の置換もしくは非置換アルキル基、または芳香環内炭素原子数6または10の置換もしくは非置換アリール基(ただし、かかるアリール基はニトロ基により置換されていない)である。典型的には、R5は、炭素原子数1〜6の置換または非置換アルキル基、例えば非置換メチル基である。
2はヒドロキシ基である。
【0054】
4は、炭素原子数1〜12の置換または非置換の線状または分岐アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、t−ブチル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、メトキシメチル、クロロメチル、トリクロロメチル、ベンジル、シナモイル、iso−プロピル、iso−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、iso−ペンチル、neo−ペンチル、1−メチルブチルおよびiso−ヘキシル基)、環内炭素原子数3〜6の置換または非置換シクロアルキル環(例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、メチルシクロヘキシルおよびシクロヘキシル基)、またはフェノールもしくはナフトール以外の芳香環内炭素原子数6または10の置換または非置換アリール基(例えばフェニル、キシリル、トルリル、p−メトキシフェニル、3−クロロフェニルおよびナフチルなどの置換または非置換フェニルおよびナフチル基)である。典型的には、R4は、炭素原子数1〜6の置換または非置換アルキル基、例えばn−プロピルである。
【0055】
構造(I)における反復単位の比によって示されるように、ポリ(ビニルアセタール)は、存在する異なる反復単位の数に応じて少なくとも三量体であってよい。例えば、構造(Ia)から(Id)について定義した反復単位の部類のうちのいずれかに由来する複数の異なるタイプの反復単位が存在してもよい。例えば、構造(I)のポリ(ビニルアセタール)は、異なるR1基を有する構造(Ia)の反復単位を有していてよい。このような反復単位の多様性は、構造(Ib)〜(Id)のいずれかにより表される反復単位にも当てはまる。
【0056】
構造(I)により表されるポリマーバインダーは、構造(Ia)、(Ib)、(Ic)および(Id)により定義したもの以外の反復単位を含んでもよく、かかる反復単位は当業者に明らかである。従って、構造(I)はその最も広い意味において、定義した反復単位に限定されないが、実施態様によっては、構造(I)中にこれらの反復単位のみが存在する。他の可能な反復単位は、例えば、米国特許第6,255,033号(上記)並びに米国特許出願第11/677,599号、第11/769,766号および第11/959,492号明細書に記載されている。
【0057】
輻射線感受性または画像形成性層を形成する輻射線感受性組成物中のポリ(ビニルアセタール)の含有量は、一般的には総乾燥質量の10〜99%であり、典型的には総乾燥質量の30〜95%である。多くの実施態様は、組成物または画像形成性層の総乾燥質量の50〜90%の量でポリ(ビニルアセタール)を含む。
【0058】
本明細書中に記載されたポリ(ビニルアセタール)は、米国特許第6,541,181号明細書(上記)に記載されたものを含む公知の出発材料および反応条件を用いて製造できる。
【0059】
例えば米国特許第4,665,124号(Dhillon他)、第4,940,646号(Pawlowski)、第5,169,898号(Walls他)、第5,700,619号(Dwars他)、および第5,792,823号(Kim他)の各明細書、並びに特開平09-328,519号公報(Yoshinaga)に記載されているような公知の標準的な方法に従って、ポリビニルアルコールのアセタール化が行われる。
【0060】
このアセタール化反応は、一般的に、強無機触媒酸または強有機触媒酸を添加することを必要とする。触媒酸の例は、塩酸、硫酸、リン酸、およびp−トルエンスルホン酸である。他の強酸、例えばペルフルオロアルキルスルホン酸および他のペルフルオロ活性化酸も有用である。酸の量は、プロトン化を引き起こすのに有効な量であるべきであるが、しかし、アセタール基の望ましくない加水分解を引き起こすことにより最終生成物を著しく変化させることがない量である。アセタール化の反応温度は、アルデヒドの種類および所望の置換レベルに依存する。この温度は0℃と、適用可能であるならば溶剤の沸点との間である。有機溶剤、および水と有機溶剤との混合物が、反応のために使用される。例えば、好適な有機溶剤はアルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールおよびグリコールエーテル)、環状エーテル(例えば1,4−ジオキサン)、および双極性非プロトン性溶剤(例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンまたはジメチルスルホキシド)である。有機溶剤中または有機溶剤と水との混合物中でアセタール化を実施する場合には、出発ポリビニルアルコールが完全には溶解しなくても、反応生成物が溶液中にしばしば残る。有機溶剤中の出発ポリビニルアルコールの溶解が不完全であることは、再生不能な変換度および異なる生成物を招くおそれがあるという欠点である。ポリビニルアルコール、およびアセタール化の結果としての再生可能な生成物の完全な溶解を達成するために、水、または有機溶剤と水との混合物を使用するべきである。種々のアセタール化剤の添加順序は、多くの場合さほど重要ではなく、様々な調製順序から同等の最終生成物が得られる。固形物としての完成生成物を単離するために、ポリマー溶液を、激しく攪拌しながら、非溶剤中に導入し、濾過し、乾燥させる。ポリマーのための非溶剤として水が特に適する。
【0061】
ヒドロキシル置換芳香族アルデヒドによるアセタール化によって達成されるアセタール基の望ましくない加水分解は、同じ合成条件において脂肪族または非置換芳香族アルデヒドから形成されたアセタール、またはカルボキシル部分を含有するアルデヒドから形成されたアセタールの場合よりもかなり容易に起こる。反応混合物中に水が少量でも存在すると、アセタール化度が低くなり、使用された芳香族ヒドロキシアルデヒドの変換が不完全になる。他方において、水が存在しなければ、ヒドロキシ置換芳香族アルデヒドが、アルコールのヒドロキシル基とすぐに、ほとんど100%の変換率で反応することが判った。従って、所望のポリビニルアセタールを得るために、ヒドロキシ置換芳香族アルデヒドによってポリビニルアルコールをアセタール化するプロセスは、当業者に知られた手順とは異なる手順で行うことができる。合成中に減圧下での蒸留により水を反応混合物から除去し、そして有機溶剤と置換することができる。残留水は、水と容易に反応する有機物質を混合物に添加し、そして反応の結果として揮発性物質または不活性化合物を生成させることにより、除去できる。これらの物質は、炭酸塩、水と容易に反応する炭酸またはカルボン酸のオルトエステル、シリカ含有化合物、例えば炭酸ジエチル、オルト蟻酸トリメチル、炭酸テトラエチル、およびケイ酸テトラエチルから選択することができる。反応混合物にこれらの物質を添加すると、使用されたアルデヒドの変換率が100%になる。
【0062】
例えば、有用なポリビニルアセタールの調製は、80〜90℃のDMSO中に出発ポリビニルアルコールを溶解することで開始でき、次いで、この溶液を60℃に冷却し、そして有機溶剤中に溶解した酸性触媒を添加する。次いでこの溶液に、同じ溶剤中の脂肪族アルデヒドの溶液を添加し、溶液を60℃で30分間に保ち、同じ溶剤中の芳香族アルデヒドおよび/またはカルボン酸置換型アルデヒド、または他のアルデヒドの溶液を添加する。反応混合物にアニソールを添加し、水とアニソールとの共沸混合物を蒸留によって除去して、これを有機溶剤と置換する。この段階で、芳香族ヒドロキシアルデヒドの変換率は95〜98%に達する。反応混合物中の酸を中和し、混合物を水とブレンドすることによりポリマーを沈殿させ、これを濾過し、水で洗浄し、乾燥させる。芳香族ヒドロキシアルデヒドからベンザルへの変換率100%を達成するための第2の方法は、反応混合物にアルデヒドを添加したあと、水を除去する有機物質(例えば炭酸塩またはオルト蟻酸塩)を添加することである。
【0063】
画像形成性層中に「二次」ポリマーとして様々なフェノール系樹脂がポリ(ビニルアセタール)樹脂との混合物として存在しても良い。
【0064】
フェノール樹脂としては、ノボラック樹脂、例えばフェノールとホルムアルデヒドとの縮合ポリマー、m−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮合ポリマー、p−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮合ポリマー、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮合ポリマー、フェノールとクレゾール(m−、p−、またはm−/p−混合物)とホルムアルデヒドとの縮合ポリマー、ピロガロールとアセトンとの縮合コポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、側鎖にフェノール基を含む化合物を共重合することにより得られるコポリマーを使用することもできる。かかるポリマーバインダーの混合物を使用することもできる。
【0065】
質量平均分子量が少なくとも1500であり、数平均分子量が少なくとも300であるノボラック樹脂が有用である。一般的に、質量平均分子量は3,000〜300,000であり、数平均分子量は500〜250,000であり、分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10の範囲内である。
【0066】
1種または2種以上のポリ(ビニルアセタール)と1種または2種以上のフェノール樹脂との混合物などの、上記一次ポリマーバインダーの特定の混合物を使用することができる。例えば、1種または2種以上のポリ(ビニルアセタール)と、1種または2種以上のノボラックまたはレゾール樹脂(またはノボラックおよびレゾール樹脂の双方)との混合物を使用することができる。
【0067】
他の有用な樹脂としては、フェノール系ヒドロキシル基を有するポリビニル化合物、例えばポリ(ヒドロキシスチレン)、およびヒドロキシスチレンの反復単位を含むコポリマー、置換ヒドロキシスチレンの反復単位を含むポリマーおよびコポリマーが挙げられる。
【0068】
例えば米国特許第5,554,719号明細書(Sounik)、米国特許第6,551,758号明細書(Ohsawaら)、米国特許出願公開第2003/0050191号明細書(Bhattら)および米国特許出願公開第2005/0051053号(Wisnudelら)、並びに引用により本明細書に援用する、同時係属の本願と同じ譲受人による米国特許出願第11/474,020号(Levanon, J. Ray, K. Ray, PostelおよびKorionoffによって2006年6月23日付け出願)記載されているような4−ヒドロキシスチレンから誘導された分岐ヒドロキシスチレン反復単位を複数有する分岐ポリ(ヒドロキシスチレン)も有用である。例えば、かかる分岐ヒドロキシスチレンポリマーは、ヒドロキシスチレン、例えば4−ヒドロキシスチレンから誘導された反復単位を含み、当該反復単位は、ヒドロキシ基に対してオルト位で反復するヒドロキシスチレン単位(例えば4−ヒドロキシスチレン単位など)でさらに置換されている。これらの分岐ポリマーは、1,000〜30,000、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは3,000〜7,000の質量平均分子量(Mw)を有することができる。さらに、これらの分岐ポリマーは、2未満、好ましくは1.5〜1.9の多分散度を有することができる。当該分岐ポリ(ヒドロキシスチレン)は、ホモポリマーであっても、非分岐ヒドロキシスチレン反復単位を有するコポリマーであってもよい。
【0069】
さらに他の「二次」ポリマーバインダーとしては、主鎖および/または側鎖(ペンダント基)上に下記(1)〜(5)の酸性基を有する下記の部類のポリマーが挙げられる。
(1)スルホンアミド(−SO2NH−R)、
(2)置換スルホンアミドに基づく酸基(以後、活性イミド基と呼ぶ)[例えば−SO2NHCOR、SO2NHSO2R、−CONHSO2R]、
(3)カルボン酸基(−CO2H)、
(4)スルホン酸基(−SO3H)、および
(5)リン酸基(−OPO32)。
上述の基(1)〜(5)におけるRは水素または炭化水素基を表す。
【0070】
基(1)のスルホンアミド基を有する代表的な二次ポリマーバインダーは、例えば、スルホンアミド基を有する化合物から誘導される主成分としての最小構成単位から成るポリマーである。従って、このような化合物の例としては、少なくとも1つの水素原子が窒素原子に結合されている少なくとも1つのスルホンアミド基と、少なくとも1つの重合性不飽和基とを、その分子中に有する化合物が挙げられる。これらの化合物には、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、およびN−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミドがある。そのため、スルホンアミド基、例えばm−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、またはN−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミドを有する重合性モノマーから成るホモポリマーまたはコポリマーを使用することができる。
【0071】
基(2)の活性化イミド基を有する二次ポリマーバインダーの例は、主成分として活性化イミド基を有する化合物から誘導された反復単位を含むポリマーである。かかる化合物の例としては、下記構造式によって定義される部分を有する重合性不飽和化合物が挙げられる。
【0072】
【化11】

【0073】
N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミドおよびN−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミドは、かかる重合性化合物の例である。
【0074】
基(3)〜(5)のいずれかを有する二次ポリマーバインダーとしては、所望の酸性基、または重合後にかかる酸性基に変換することができる基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーを反応させることにより容易に調製されるバインダーが挙げられる。
【0075】
(1)〜(5)から選択された酸性基を有する最低限の構成単位に関しては、ポリマー中に唯一種の酸性基を使用する必要はなく、実施態様によっては、少なくとも2種の酸性基を有することが有用な場合がある。言うまでもなく、二次ポリマーバインダー中の反復単位毎に酸性基のうちの1つを有する必要はなく、通常は少なくとも10モル%、典型的には少なくとも20モル%が、上記酸性基のうちの1つを有する反復単位を含む。
【0076】
二次ポリマーバインダーは、少なくとも2,000の質量平均分子量、および少なくとも500の数平均分子量を有することが可能である。典型的には、質量平均分子量は5,000〜300,000であり、数平均分子量は800〜250,000であり、分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10である。
【0077】
二次ポリマーバインダーの混合物を、1種または2種以上のポリ(ビニルアセタール)ポリマーバインダーと併用してもよい。二次ポリマーバインダーは、輻射線感受性組成物または画像形成性層内の全ポリマーバインダーの乾燥質量を基準として、少なくとも1質量%かつ50質量%以下の量で、典型的には5〜30質量%の量で存在することができる。
【0078】
輻射線感受性組成物は、1または2以上の部類の化合物から選択できる現像性向上化合物をさらに含む。例えば、有用な現像性向上化合物は国際公開第2004/081662号(上記)に記載されている。
【0079】
他の有用な現像性向上化合物は、1または2個以上のアミノ基および1または2個以上のカルボン酸(カルボキシ)基により置換された有機酸(特に芳香族酸)である。かかる基は、1または2個以上の脂肪族または芳香族基を通じて連結されていてもよい。例えば、アミノ基は、以下でより詳しく定義するアルキレン、アリーレンおよびシクロアルキレン基に直接結合していても良い。さらに、アミノ基は、芳香族または非芳香族複素環式N含有環の部分であることができる。アミノ基およびカルボン酸基のそれぞれが4個以下、現像性向上化合物の分子中に存在してよく、特に、少なくとも1個のアミノ基が存在し、置換または非置換アリール基(例えば置換または非置換フェニル基)に直接結合していてもよい。
【0080】
代表的な現像性向上化合物は、下記構造(DEC)により定義することができる。
【0081】
【化12】

【0082】
構造DEにおいて、R1およびR2は同じであっても異なっていてもよく、水素、あるいは置換または非置換の炭素数1〜6の線状または分岐アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、クロロメチル、トリクロロメチル、iso−プロピル、iso−ブチル、t−ブチル、iso−ペンチル、neo−ペンチル、1−メチルブチルおよびiso−ヘキシル基)、炭化水素環中に5〜10個の炭素原子を有する置換または非置換の炭素原子数5〜10のシクロアルキル基、あるいは芳香族環中に6,10もしくは14個の炭素原子を有する置換または非置換アリール基であることができる。実施態様によっては、R1およびR2は、同じまたは異なる置換または非置換アリール基(例えばフェニルまたはナフチル基)であることができ、Aが−[N(R1)(R2)]n に直接結合している場合に、R1およびR2の少なくとも1つが置換または非置換アリール基であることが特に有用である。
【0083】
他の実施態様において、構造(DEC)におけるR1 およびR2 は、同じまたは異なる、水素、あるいは置換もしくは非置換の、線状もしくは分岐状の炭素原子数1〜6のアルキル基(上記)、置換もしくは非置換のシクロヘキシル基、または置換もしくは非置換のフェニルもしくはナフチル基であることができる。
【0084】
構造(DEC)において、Aは鎖中に少なくとも1個の炭素、窒素、硫黄または酸素原子を有する置換もしくは非置換有機連結基である。Aは、−[N(R1)(R2)]n に直接連結した置換または非置換アリーレン基(例えば置換または非置換フェニレン基など)も含む。従って、Aは1または2個以上のアリーレン基(例えば、芳香環内に6または10個の炭素原子を有する)、シクロアルキレン基(例えば、炭素環式環内に5〜10個の炭素原子を有する)、アルキレン基(例えば鎖内に1〜12個の炭素原子を有し、線状および分岐状の基を包含する)、オキシ基、チオ基、アミド基、カルボニル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、エテニレン(−CH=CH−)基、エチニレン(−C≡C−)基およびセレノ基、またはこれらの組み合わせを含むことができる。幾つかの特に有用な実施態様において、Aは、置換または非置換アリーレン基(例えば置換又は非置換フェニレン基)から成る。
【0085】
構造(DEC)において、mは1〜4(典型的には1または2)の整数であり、nは1〜4(典型的には1または2)の整数であり、mとnとは同じであっても異なっていてもよい。
【0086】
さらに他の実施態様において、現像性向上化合物は、下記構造(DEC1 )により定義することができる:
【0087】
【化13】

【0088】
ここで、R1 およびR2 は先に定義したとおりであり、Aは、−[N(R1)(R2)]n に直接結合した置換または非置換フェニレンを有する有機連結基であり、Bは単結合であるかまたは鎖内に少なくとも1個の炭素、酸素、硫黄または窒素原子を有する有機連結基であり、mは1または2の整数であり、nは1または2の整数である。「B」有機連結基は、Bがアリーレン基を含むことは必要でないということを除いて、先に定義したAと同様に定義でき、通常、Bは、存在する場合に、Aと異なる。
【0089】
上記のアリール(およびアリーレン)基、シクロアルキル基、およびアルキル(およびアルキレン)基は、必要に応じて4個以下の置換基を有してよく、かかる置換基としては、ヒドロキシ、メトキシおよび他のアルコキシ基、アリールオキシ基、例えばフェノキシ基、チオアリールオキシ基など、ハロメチル基、トリハロメチル基、ハロ基、ニトロ基、アゾ基、チオヒドロキシ基、チオアルコキシ基、例えばチオメチル基、シアノ基、アミノ基、カルボキシ基、エテニル基および他のアルケニル基、カルボキシアルキル基、アリール基、例えばフェニル基、アルキル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロアリール基および複素脂環式基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
画像形成性要素は、1または2種以上のアミノ安息香酸、ジメチルアミノ安息香酸、アミノサリチル酸、インドール酢酸、アニリノ二酢酸、N−フェニルグリシン、またはこれらの任意の組み合わせを現像性向上化合物として含むことができる。例えば、かかる化合物としては、4−アミノ安息香酸、4−(N,N’−ジメチルアミノ)安息香酸、アニリノ二酢酸、N−フェニルグリシン、3−インドール酢酸および4−アミノサリチル酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
さらに他の有用な現像性向上化合物は、酸性の現像性向上化合物(ADEC)、例えばカルボン酸または環状酸無水物、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、ホスフィン酸類、ホスホン酸エステル、フェノール類、スルホンアミド類、またはスルホンイミド類などである。なぜなら、かかる組み合わせは現像ラチチュードおよび耐刷性のさらなる向上をもたらすことができるからである。かかる化合物の代表例は、米国特許出願公開第2005/0214677号明細書(上記)の[0030]〜[0036]に示されており、これらの酸性の現像性向上化合物について、引用によりその記載内容を本明細書に援用することにする。
【0092】
さらに、現像性向上化合物は、同時係属の本願出願人に譲渡された米国特許出願第11/677,599号明細書(上記)に記載されている塩基性の現像性向上化合物であることができる。それらの化合物について、米国特許出願第11/677,599号明細書の開示を、引用により本明細書に援用することにする。かかる化合物は、下記構造(BでC)により定義できる:
【0093】
【化14】

【0094】
ここで、tは1〜6であり、sは0、1または2であり、vは1〜3であり、ただし、sとvの和は3である。sが1である場合には、R7 は、水素、またはアルキル、アルキルアミン、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアミンまたはヘテロアリール基であり、sが2である場合には、複数のR7 基は同じまたは異なるアルキル、アルキルアミン、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアミンまたはヘテロアリール基であるか、あるいは2個のR7 基が窒素原子と一緒に置換または非置換の複素環式環を形成することができる。R8 およびR9 は独立に水素またはアルキル基である。
【0095】
かかる有機BDEC化合物の例は、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、N−フェニルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)−エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)−エチレンジアミン、3−[(2−ヒドロキシエチル)フェニルアミノ]プロピオニトリル
、およびヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジンである。これらの化合物の2種または3種以上の混合物も有用である。
【0096】
輻射線感受性組成物は、画像形成性層について後述する他の任意添加剤を含んでよい。
【0097】
一般的に、画像形成性要素は、1種または2種以上のポリ(ビニルアセタール)樹脂などの1種または2種以上のポリマーバインダー、1種または2種以上の現像性向上化合物、赤外線吸収性化合物(下記)、および他の任意添加剤(例えばフェノール樹脂、コントラスト樹脂またはそれらの両方)を含む輻射線感受性組成物を好適な基材に好適に適用して画像形成性層を形成することによって形成される。この基材は、調製物の適用の前に、下記のような種々の方法で処理またはコーティングすることができる。例えば、基材は、付着性または親水性の改善のために「中間層」を提供するように処理することができ、画像形成層は中間層上に適用される。
【0098】
基材は、一般的に、親水性表面、または画像形成側に適用された画像形成用配合物よりも高親水性である表面を有する。基材は、画像形成性要素、例えば平版印刷版を製造するために従来より使用されている任意の材料から構成できる支持体を含む。基材は通常、シート、フィルムまたは箔の形態にあり、丈夫であり、安定であり、そして可撓性であり、また色記録がフルカラー画像を見当合わせするような使用条件下では耐寸法変化性である。典型的には、支持体は、ポリマーフィルム(例えばポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースエステルポリマー、およびポリスチレンフィルム)、ガラス、セラミック、金属シートまたは箔、または剛性紙(樹脂コート紙および金属化紙を含む)、またはこれらの材料のうちのいずれかの積層体(例えばポリエステルフィルム上へのアルミニウム箔の積層体)などのいかなる自立型材料であってもよい。金属支持体としては、アルミニウム、銅、亜鉛、チタンおよびこれらの合金のシートまたは箔が挙げられる。
【0099】
ポリマーフィルム支持体の一方または両方の表面を、親水性を高めるために「下引き」層で改質することができ、或いは、平坦性を高めるために、紙支持体を同様にコーティングすることができる。下引き層材料の例としては、アルコキシシラン、アミノ−プロピルトリエトキシシラン、グリシジオキシプロピル−トリエトキシシラン、およびエポキシ官能性ポリマー、ならびに、ハロゲン化銀写真フィルムに使用されるコンベンショナルな親水性下引き材料(例えばゼラチン、および他の天然由来および合成の親水性コロイド、ならびに塩化ビニリデンコポリマーなどのビニルポリマー)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
1つの基材は、物理的砂目立て、電気化学的砂目立て、化学的砂目立て、およびこれに続く陽極酸化を含む、当業者に知られた技術によってコーティングまたは処理することができるアルミニウム支持体から構成される。アルミニウムシートは、化学的または電気化学的に砂目立て、リン酸または硫酸、およびコンベンショナルな手順を用いて陽極酸化することができる。
【0101】
例えばシリケート、デキストリン、フッ化カルシウムジルコニウム、ヘキサフルオロケイ酸、ホスフェート/フッ化ナトリウム、ポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)、ビニルホスホン酸コポリマー、ポリ(アクリル酸)、またはアクリル酸コポリマー溶液でアルミニウム支持体を処理することにより、任意選択の中間層を形成することができる。研摩および陽極酸化が施されたアルミニウム支持体は、表面親水性を改善するために周知の手順を用いてポリ(アクリル酸)で処理することができる。
【0102】
基材の厚さは様々な値を取り得るが、印刷に由来する摩耗に耐えるのに十分な厚さを有し、しかも印刷版の周りに巻き付けるのに十分に薄くあるべきである。好ましい態様としては、厚さ100μm〜600μmの処理されたアルミニウム箔が挙げられる。
【0103】
基材の裏側(非画像形成側)には、画像形成性要素の取り扱いおよび「感触」を改善するために、静電防止剤および/またはスリップ層または艶消し層を被覆することができる。
【0104】
基材は、輻射線感受性組成物が適用された円筒形表面であってもよく、ひいては印刷機の一体部分であってもよい。かかる画像形成されたシリンダーの使用は、例えば米国特許第5,713,287号明細書(Gelbart)に記載されている。
【0105】
画像形成性層は、典型的には、1種または2種以上の輻射線吸収性化合物を含む。これらの化合物は、150〜1500nmの任意の好適なエネルギー形態(例えばUV、可視、およびIR線)に対して感受性であることができるが、これらは典型的には赤外線に対して感受性であり、そのため、かかる輻射線吸収性化合物は、600〜1400nm、よりありそうに思われるのは700〜1200nmの輻射線を吸収する赤外線吸収性化合物(「IR吸収性化合物」)として知られる。画像形成性層は、一般的には、画像形成性要素中の最外層である。
【0106】
好適なIR吸収性化合物の例としては、例えばアゾ染料、スクアリリウム染料、クロコネート染料、トリアリールアミン染料、チアゾリウム染料、インドリウム染料、オキソノール染料、オキサゾリウム染料、シアニン染料、メロシアニン染料、フタロシアニン染料、インドシアニン染料、インドトリカルボシアニン染料、ヘミシアニン染料、ストレプトシアニン染料、オキサトリカルボシアニン染料、チオシアニン染料、チアトリカルボシアニン染料、メロシアニン染料、クリプトシアニン染料、ナフタロシアニン染料、ポリアニリン染料、ポリピロール染料、ポリチオフェン染料、カルコゲノピリロアリーリデンおよびビ(カルコゲノピリロ)ポリメチン染料、オキシインドリジン染料、ピリリウム染料、ピラゾリンアゾ染料、およびオキサジン染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、アリールメチン染料、ポリメチン染料、スクアリン染料、オキサゾール染料、クロコニン染料、ポルフィリン染料、および前記染料の部類の任意の置換形態物またはイオン形態物などのIR染料が挙げられるが、これらに限定されない。好適な染料は、例えば米国特許第4,973,572号明細書(DeBoer)、および第5,208,135号明細書(Patel他)、第5,244,771号明細書(Jandrue Sr.他)および第5,401,618号明細書(Chapman他)、および欧州特許出願公開第0 823 327号明細書(Nagasaka他)に開示されている。
【0107】
アニオン性発色団を有するシアニン染料も有用である。例えば、シアニン染料は、2つの複素環式基を有する発色団を有することができる。別の態様の場合、シアニン染料は、少なくとも2つのスルホン酸基、例えば2つのスルホン酸基と2つのインドレニン基とを有することができる。このタイプの有用なIR感光性シアニン染料が、米国特許出願公開第2005-0130059号明細書(Tao)に記載されている。
【0108】
好適なシアニン染料の有用な部類に関する一般的記述が、国際公開第2004/101280号パンフレット(Munnelly他)の[0026]において式で示されている。
【0109】
低分子量IR吸収染料に加えて、ポリマーに結合されたIR染料部分を使用することもできる。さらに、IR染料カチオンを使用することができ、すなわち、このカチオンは、カルボキシ、スルホ、ホスホまたはホスホノ基を側鎖に含むポリマーとイオン相互作用する染料塩のIR吸収部分である。
【0110】
近赤外線吸収シアニン染料も有用であり、例えば米国特許第6,309,792号明細書(Hauck他)、第6,264,920号明細書(Achilefu他)、第6,153,356号明細書(Urano他)、第5,496,903号明細書(Watanate他)に記載されている。好適な染料は、コンベンショナルな方法および出発材料を用いて形成することができ、或いは、American Dye Source(カナダ国ケベック州ベ−デュルフェ)およびFEW Chemicals(ドイツ国)を含む種々の商業的供給元から得ることができる。近赤外線ダイオードレーザービームのための他の有用な染料が、例えば米国特許第4,973,572号明細書(DeBoer)に記載されている。
【0111】
有用なIR吸収化合物は、カーボンブラック、例えば当業者によく知られているように可溶化基で表面官能化されたカーボンブラックなどの種々の顔料であることができる。親水性の非イオン性ポリマーにグラフト化されたカーボンブラック、例えばFX−GE−003(Nippon Shokubai製)、またはアニオン基で表面官能化されたカーボンブラック、例えばCAB−O−JET(登録商標)200またはCAB−O−JET(登録商標)300(Cabot Corporation製)も有用である。他の有用な顔料としては、ヘリオゲン・グリーン、ニグロシン塩基、酸化鉄(III)、酸化マンガン、プリシアン・ブルー、およびパリス・ブルーが挙げられる。顔料粒子のサイズは、画像形成性層の厚さを上回るべきではなく、好ましくは、粒子のサイズは、画像形成性層の厚さの半分未満になる。
【0112】
画像形成性要素において、輻射線吸収性化合物は、一般的に、0.1〜30質量%の乾燥被覆量で存在し、典型的には0.5〜20質量%の乾燥被覆量で存在する。この目的に必要な特定の量は、使用される具体的な化合物に応じて、当業者は容易に判るであろう。
【0113】
あるいは、輻射線吸収性化合物は、画像形成性層と熱的に接触する別個の層に含まれてもよい。従って、画像形成中に、当該別個の層中の輻射線吸収性化合物の作用を、当該化合物が当初は含まれていなかった画像形成性層に移すことができる。
【0114】
画像形成性層(および輻射線感受性組成物)は、着色剤染料として作用する1種または2種以上の追加の化合物を含むこともできる。アルカリ性現像剤中に可溶性の着色剤染料が有用である。着色剤染料のための有用な極性基としては、エーテル基、アミン基、アゾ基、ニトロ基、フェロセニウム基、スルホキシド基、スルホン基、ジアゾ基、ジアゾニウム基、ケト基、スルホン酸エステル基、リン酸エステル基、トリアリールメタン基、オニウム基(例えばスルホニウム、インドニウムおよびホスホニウム基)、窒素原子が複素環に組み込まれている基、および正電荷を帯びた原子を含有する基(例えば第四級化アンモニウム基)が挙げられる。溶解抑制剤として有用な正電荷を帯びた窒素原子を含有する化合物としては、例えばテトラルキルアンモニウム化合物、および第四級化複素環式化合物、例えばキノリニウム化合物、ベンゾチアゾリウム化合物、ピリジニウム化合物、およびイミダゾリウム化合物が挙げられる。有用な着色剤染料としては、トリアリールメタン染料、例えばエチル・バイオレット、クリスタル・バイオレット、マラカイト・グリーン、ブリリアント・グリーン、ビクトリア・ブルーB、ビクトリア・ブルーR、およびビクトリアピュアブルーBO、BASONYL(登録商標)バイオレット610およびD11(仏国ロンジュモー所在のPCAS)が挙げられる。これらの化合物は、現像された画像形成性要素内の非露光(非画像形成)領域を露光された(画像形成された)領域から区別するコントラスト染料として作用することもできる。
【0115】
着色剤染料が画像形成性層中に存在する場合には、その量は広範に変えることができるが、一般的には、(総乾燥層質量を基準として)0.5質量%〜30質量%の量で存在する。
【0116】
画像形成性層(および輻射線感受性組成物)はさらに、様々な添加剤、例えば分散剤、保湿剤、殺生物剤、可塑剤、コーティング適性またはその他の特性のための非イオン性または両性界面活性剤(例えばフルオロポリマー)、耐摩耗性ポリマー(例えばポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリアミド、およびアクリル樹脂)、増粘剤、充填剤および増量剤、書き込まれた画像の視覚化を可能にするための染料もしくは着色剤、pH調整剤、乾燥剤、消泡剤、保存剤、抗酸化剤、現像助剤、レオロジー調整剤、またはこれらの組み合わせ、あるいは平版印刷分野において一般的に使用されている任意の他の添加剤を、コンベンショナルな量(例えば上記米国特許出願公開第2005/0214677号明細書に記載)で含むことができる。
【0117】
ポジ型画像形成性要素は、コンベンショナルなコーティング法またはラミネーション法を用いて、基材の表面(および表面上に設けられた任意のその他の親水性層)の上方に画像形成性層調製物を適用することにより製造することができる。例えば、好適なコーティング用溶剤中に所望の成分を分散または溶解させることにより調製物を適用することができ、得られた調製物は、好適な装置および手順、例えばスピンコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、スロットコーティング、バーコーティング、ワイヤロッドコーティング、ローラーコーティング、または押出ホッパーコーティングを用いて、基材に適用される。調製物は、好適な支持体(例えば印刷機上印刷シリンダー)上に噴霧することによっても適用できる。
【0118】
画像形成性層のコーティング量は、0.5〜3g/m2、好ましくは1〜2g/m2である。
【0119】
層調製物をコーティングするために使用される溶剤は、調製物中のポリマーバインダーおよびその他のポリマー材料および非ポリマー成分の性質に応じて選択される。一般に、画像形成性層調製物は、当業者によく知られている条件および技術を用いて、アセトン、メチルエチルケトン、または別のケトン、テトラヒドロフラン、1−メトキシプロパン−2−オール(または1−メトキシ−2−プロパノール)、N−メチルピロリドン、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、γ−ブチロラクトン、およびこれらの混合物からコーティングされる。代表的なコーティング用溶剤混合物を下記例において説明する。
【0120】
あるいは、それぞれの層組成物の溶融混合物からコンベンショナルな押出コーティング法により層(1層または2層以上)を適用することもできる。典型的には、このような溶融混合物は、揮発性有機溶剤を含有しない。
【0121】
他の調製物のコーティング前に溶剤を除去するために、種々の層配合物の適用の間に、中間乾燥工程を用いることができる。乾燥工程は、種々の層の混合を防止するのを助けることもできる。
【0122】
本発明に従ってポジ型画像形成性要素を製造する代表的な方法を、下記例において説明する。
【0123】
基材上で画像形成性層を乾燥させた後(すなわち、コーティングが自立し、指触乾燥状態になった後)、要素を少なくとも4時間、典型的には少なくとも20時間にわたって、または少なくとも24時間にわたって、40℃〜90℃(好ましくは50〜70℃)で熱処理する。最大熱処理時間は96時間もの長さであってよいが、しかし熱処理のための最適な時間および温度は、常套的試験によって容易に決定することができる。このような処理は、例えば欧州特許第823,327号明細書(Nagasaka他)および第1,024,958号明細書(McCullough他)に記載されている。
【0124】
熱処理中に、画像形成性要素を非透水性シート材料で包み込むか覆って、前駆体からの水分の除去に対する有効なバリヤーとすることも望ましいであろう。個々の、積層体の、またはコイル状の画像形成性要素の場合の、この状態調節プロセスについての詳細は米国特許第7,175,969号明細書(Rayら)に記載されている。
【0125】
画像形成および現像
本発明の画像形成性要素は、例えば印刷版前駆体、印刷シリンダー、印刷スリーブ、および印刷テープ(可撓性印刷ウェブを含む)などのいかなる有用な形態を有することができる。例えば、画像形成性部材は、平版印刷版を形成するための平版印刷版前駆体である。
【0126】
印刷版前駆体は、好適な基材上に配置された所要の画像形成性層を有する、任意の有用なサイズおよび形状(例えば正方形または長方形)から成ることができる。印刷シリンダおよびスリーブは、円筒形態の基材と画像形成層とを有する回転印刷部材として知られる。印刷スリーブのための基材として、中空または中実の金属コアを使用することができる。
【0127】
使用中、画像形成性要素は、輻射線感受性組成物中に存在する輻射線吸収性化合物に応じて、波長150〜1500nmの輻射線、例えば紫外線(UV)、可視光または赤外線の好適な供給源に暴露される。ほとんどの実施態様の場合、画像形成は、波長700〜1200nmの赤外線レーザーを使用して行われる。画像形成部材を露光するために使用されるレーザーは、ダイオードレーザーシステムの信頼性およびメンテナンスの手間の少なさにより、ダイオードレーザーであることが可能であるが、他のレーザー、例えば気体または固体レーザーも使用できる。レーザー画像形成のための出力、強度、および露光時間の組み合わせは、当業者には容易に明らかである。目下、商業的に入手可能なイメージセッターにおいて使用される高性能レーザーまたはレーザーダイオードは、波長800〜850nmまたは1060〜1120nmの赤外線を放射する。
【0128】
画像形成装置は、プレートセッターとしてだけ機能することができ、あるいは、画像形成装置は、平版印刷機内に直接組み込まれていてもよい。後者の場合、印刷は画像形成直後に開始することができ、これにより印刷機設定時間をかなり短縮することができる。画像形成装置は、画像形成性部材をドラムの内側または外側の円筒面に装着した状態で、平床型記録器として、またはドラム型記録器として構成することができる。有用な画像形成装置は、波長830nmの近赤外線を放出するレーザーダイオードを備えるEastman Kodak Company(カナダ国ブリティッシュコロンビア州バーナビー)から入手可能な幾つかのモデルのKodak Trendsetter(登録商標)イメージセッターのとして入手可能である。他の好適な画像形成供給源としては、波長1064nmで作動するCrescent 42Tプレートセッター(イリノイ州シカゴ所在のGerber Scientificから入手可能)、およびScreen PlateRite 4300シリーズまたは8600シリーズのプレートセッター(イリノイ州シカゴ所在のScreenから入手可能)が挙げられる。さらなる有用な輻射線源としては、要素が印刷版シリンダーに取り付けられている間に要素に画像を形成するために使用することができるダイレクト画像形成印刷機が挙げられる。好適なダイレクト画像形成印刷機の例としては、Heidelberg SM74-DIプレス(オハイオ州デイトン所在のHeidelbergから入手可能)が挙げられる。
【0129】
IR画像形成スピードは、300mJ/cm2以下、または典型的には100〜250mJ/cm2であることができる。
【0130】
画像形成は、一般的に、ダイレクトデジタル画像形成によって実施される。画像信号は、コンピュータ上のビットマップデータファイルとして記憶される。このようなファイルは、ラスター画像プロセッサー(RIP)、または他の好適な手段により生成できる。ビットマップは、カラーの色相、ならびにスクリーンの頻度および角度を規定するために構成される。
【0131】
画像形成性要素に画像を形成することにより、画像形成された(露光された)領域と非画像形成(非露光)領域とから成る潜像を含む画像形成された要素が生じる。画像形成された要素を好適な現像液(上記)により現像することによって、画像形成性層およびその下側の任意の層の露光された領域を除去し、基材の親水性表面を露出させる。そのような画像形成性要素は「ポジ型」(例えば「ポジ型」平版印刷版前駆体)である。
【0132】
例えば、現像は、画像形成性層の主に画像形成された(露光された)領域のみを除去するのに十分な時間実施されるが、画像形成性層の非画像形成(非露光)領域を除去するほどには長くない時間にわたって実施される。従って、画像形成性層の画像形成された(露光された)領域は、現像液に「可溶性」または現像液中で「除去可能」と記述される。なぜならば、これらの領域は、画像形成性層の非画像形成(非露光)領域よりも容易に、現像液中で除去され、溶解し、または分散されるからである。従って「可溶性」という用語は、「分散性」であることをも意味する。
【0133】
画像形成された要素は、ほとんどのコンベンショナルな現像液中に見出されるシリケート類およびメタシリケート類を含まない炭酸塩含有現像液を使用して現像される。この炭酸塩含有現像液は、一般的に、9.5〜11のpHを有し、典型的には10〜10.8のpHを有する。炭酸イオンは、例えば炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムなど(これらに限定されない)の炭酸アルカリ金属塩および炭酸アンモニウムなどの1種または2種以上の供給源から供給できる。現像液中の炭酸塩濃度は一般的に少なくとも0.5質量%かつ5質量%以下、典型的には1〜3質量%、より典型的には1〜2質量%である。
【0134】
現像は、一般的に、穏やかな条件下で実施される。例えば、現像は、35℃以下、典型的には23〜28℃で、少なくとも0.5分間かつ3分間以内で実施できる。
【0135】
一般的に、現像液は、現像液を含むアプリケーターで要素を擦るかまたは拭うことにより、画像形成された要素に適用される。あるいは、画像形成された要素に、現像液をはけ塗りすることもでき、または露光された領域を除去するのに十分な力で現像液を画像形成された要素に吹き付けることにより、現像液を画像形成された要素に適用することができる。この場合もやはり、画像形成された要素を現像液中に浸漬することができる。
【0136】
現像に続いて、画像形成された要素を水で濯ぎ、そして好適な様式で乾燥させることができる。乾燥させた要素を、コンベンショナルなガム引き溶液(好ましくはアラビアゴム)で処理することもできる。
【0137】
画像形成され、現像された要素は、結果として得られる画像形成された要素のランレングスを長くするために実施することができる露光後ベーキング作業において、ベーキングすることもできる。ベーキングは、例えば0.5〜10分間にわたって220℃〜240℃、または30分間にわたって120℃で実施することができる。
【0138】
画像形成された要素の印刷面に平版印刷インクおよび湿し水を適用することにより、印刷を実施できる。インクは、画像形成性層の非画像形成(非露光または非除去)領域により取り込まれ、湿し水は、画像形成および現像プロセスによって露出された基材の親水性表面により取り込まれる。インクは、次いで、その上に画像の所望の刷りを提供するために、好適な受容材料(例えば布地、紙、金属、ガラスまたはプラスチック)に転写される。必要に応じて、画像形成された部材から受容材料へインクを転写するために、中間「ブランケット」ローラを使用できる。画像形成された部材は、必要に応じて、コンベンショナルなクリーニング手段および化学薬品を使用して、刷りの間にクリーニングすることができる。
以下の例は本発明の実施を例示する手段として示すが、本発明はこれらの例により限定されない。
【実施例】
【0139】
下記成分を例の調製および使用において使用した。特に断らない限り、これらの成分は、Aldrich Chemical Company(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から入手可能である。
BF−03は、Chang Chun Petrochemical Co. Ltd.(台湾)から入手した、加水分解度98%(Mw=15,000)のポリ(ビニルアルコール)を表す。
クリスタル・バイオレット(C.I.42555)は、ベーシック・バイオレット3(λmax=588nm)である。
DMABAは、4−(ジメチルアミノ)安息香酸を表す。
DMSOはジメチルスルホキシドを表す。
LB 9900はHexion Specialty Chemicals AG(ドイツ国)から入手したレゾール樹脂である。
M−1は、炭酸カルシウム(1質量%)、ベンジルアルコール(1.5質量%)、2−ブトキシエタノール(1質量%)およびエトキシル化ノニルフェノール(NP12、0.04質量%)の水溶液を表す。
M−2は炭酸カリウム(1質量%)の水溶液を表す。
M−3は炭酸カリウム(1.5質量%)の水溶液を表す。
MEKはメチルエチルケトンを表す。
MSAはメタンスルホン酸(99%)を表す。
Polyfox(登録商標)PF 652は、Omnova(オハイオ州フェアローン)から入手した界面活性剤である。
PMは1−メトキシ−2−プロパノールを表す(Dow Chemicalから入手可能なDowanol(登録商標)PMまたはLyondellBissel Industriesから入手可能なArcosolve(登録商標)PMとしても知られる)。
S 0094は、FEW Chemicals(ドイツ国)から入手したIR染料(λmax=813nm)である。
スダン・ブラックBは、Acros Organics(ベルギー国ギール)から入手可能な中性ジアゾ染料(C.U.26150)である。
TEAはトリエタノールアミンを表す。
【0140】
ポリマーAの調製:
水冷式凝縮器、滴下漏斗および温度計を備え、しかもDMSO(200g)を含む反応容器にBF−03(50g)を加えた。攪拌を続けながら、混合物が透明溶液になるまで混合物を80℃で30分間加熱した。次に、温度を60℃に調節し、DMSO(50g)中のMSA(2.7g)を加えた。この反応混合物に、15分間かけて、ブチルアルデヒド(10.4g)の溶液を加え、反応混合物を55〜60℃に1時間保った。DMSO(100g)中の2−ヒドロキシベンズアルデヒド(サリチル酸アルデヒド、39g)を反応混合物に加えた。次に、反応混合物をアニソール(350g)で希釈し、減圧蒸留を開始した。反応混合物からアニソール:水共沸物を留去した(溶液中に残存する水は0.1%未満)。反応混合物を室温に冷却し、DMSO(30g)中に溶解したTEA(8g)により中和し、次に6kgの水と混合した。その結果沈殿したポリマーを水で洗浄し、濾過し、50℃で24時間乾燥させて86gのポリマーAを得た。ポリマーAは、下記の式で示される反復単位を下記のモルで有していた。
【0141】
【化15】

【0142】
ポリマーBの調製:
水冷式凝縮器、滴下漏斗および温度計を備え、しかもDMSO(170g)を含む反応容器にBF−03(20g)を加えた。攪拌を続けながら、混合物が透明溶液になるまで混合物を80℃で30分間加熱した。次に、温度を60℃に調節し、MSA(1.0g)を加えた。この反応混合物に、15分間かけて、DMSO(20g)中のブチルアルデヒド(4.0g)の溶液を加え、反応混合物を55〜60℃に30分間保った。2−ヒドロキシ−5−ニトロベンズアルデヒド(5−ニトロ−サリチル酸アルデヒド、18.78g)およびDMSO(40g)を反応混合物に加え、次に、反応混合物を55〜60℃に1時間保った。次に、反応混合物をアニソール(140g)で希釈し、減圧蒸留を開始した。反応混合物からアニソール:水共沸物を留去した(溶液中に残存する水は0.1%未満)。反応混合物を室温に冷却し、DMSO(120g)中に溶解したTEA(2g)により中和し、次に3.2kgの水と混合した。その結果沈殿したポリマーを水で洗浄し、濾過し、50℃で24時間乾燥させて34.6gのポリマーBを得た。ポリマーB中の反復単位のモル比を以下に示す。
【0143】
ポリマーCの調製:
水冷式凝縮器、滴下漏斗および温度計を備え、しかもDMSO(170g)を含む反応容器にBF−03(20g)を加えた。攪拌を続けながら、混合物が透明溶液になるまで混合物を80℃で30分間加熱した。次に、温度を60℃に調節し、MSA(1.0g)を加えた。この反応混合物に、15分間かけて、DMSO(20g)中のブチルアルデヒド(2.4g)の溶液を加え、次に反応混合物を55〜60℃に30分間保った。2−ヒドロキシ−5−ニトロベンズアルデヒド(5−ニトロ−サリチル酸アルデヒド、22.54g)およびDMSO(40g)を反応混合物に加え、次に、反応混合物を55〜60℃に1時間保った。次に、反応混合物をアニソール(140g)で希釈し、減圧蒸留を開始した。反応混合物からアニソール:水共沸物を留去した(溶液中に残存する水は0.1%未満)。反応混合物を室温に冷却し、DMSO(120g)中に溶解したTEA(2g)により中和し、次に3.2kgの水と混合した。その結果沈殿したポリマーを水で洗浄し、濾過し、50℃で24時間乾燥させて36.2gのポリマーCを得た。反復単位のモル比を以下に示す。
【0144】
ポリマーDの調製:
水冷式凝縮器、滴下漏斗および温度計を備え、しかもDMSO(170g)を含む反応容器にBF−03(20g)を加えた。攪拌を続けながら、混合物が透明溶液になるまで混合物を80℃で30分間加熱した。次に、温度を60℃に調節し、MSA(1.0g)を加えた。この反応混合物に、15分間かけて、DMSO(20g)中のブチルアルデヒド(5.6g)の溶液を加え、次に反応混合物を55〜60℃に30分間保った。2−ヒドロキシ−5−ニトロベンズアルデヒド(5−ニトロ−サリチル酸アルデヒド、18.78g)およびDMSO(40g)を反応混合物に加え、次に、反応混合物を55〜60℃に1時間保った。次に、反応混合物をアニソール(140g)で希釈し、減圧蒸留を開始した。反応混合物からアニソール:水共沸物を留去した(溶液中に残存する水は0.1%未満)。反応混合物を室温に冷却し、DMSO(120g)中に溶解したTEA(2g)により中和し、次に3.2kgの水と混合した。その結果沈殿したポリマーを水で洗浄し、濾過し、50℃で24時間乾燥させて29.7gのポリマーDを得た。反復単位のモル比を以下に示す。
【0145】
ポリマーEの調製:
水冷式凝縮器、滴下漏斗および温度計を備え、しかもDMSO(170g)を含む反応容器にBF−03(20g)を加えた。攪拌を続けながら、混合物が透明溶液になるまで混合物を80℃で30分間加熱した。次に、温度を60℃に調節し、MSA(1.0g)を加えた。2−ヒドロキシ−5−ニトロベンズアルデヒド(5−ニトロ−サリチル酸アルデヒド、28.2g)およびDMSO(40g)を反応混合物に加え、次に、反応混合物を55〜60℃に1時間保った。次に、反応混合物をアニソール(140g)で希釈し、減圧蒸留を開始した。反応混合物からアニソール:水共沸物を留去した(溶液中に残存する水は0.1%未満)。反応混合物を室温に冷却し、DMSO(120g)中に溶解したTEA(2g)により中和し、次に3.2kgの水と混合した。その結果沈殿したポリマーを水で洗浄し、濾過し、50℃で24時間乾燥させて36.3gのポリマーEを得た。反復単位のモル比を以下のポリマー図に示す。
【0146】
【化16】

【0147】
発明例1:
以下の輻射線感受性組成物の配合を使用して本発明の画像形成性要素を以下のように作製した。
ポリマーB 0.5536g
LB 9900(PM中49%) 0.2449g
S 0094 IR染料 0.0200g
クリスタル・バイオレット 0.0160g
スダン・ブラックB 0.0160g
DMABA 0.0720g
Polyfox(登録商標)PF 652(PM中10%) 0.0240g
MEK 3.220g
PM 5.830g
【0148】
上記配合物を濾過し、一般的な方法によりリン酸ナトリウム/フッ化ナトリウムの水溶液による処理にかけられた電気化学的に砂目立てされ陽極酸化されたアルミニウム基材に適用し、その結果得られた画像形成性層コーティングを、Glunz&Jensen “Unigraph Quartz”炉内で100℃で30秒間乾燥させた。画像形成性層の乾燥被覆量は約1.5g/m2 であった。1つの画像形成性層が画像形成性層の最外層であった。画像形成性要素を、間紙を用いて温度60℃および相対湿度25%で2日間に状態調節した。
【0149】
得られた画像形成性層を、60mJ/cm2 〜約180mJ/cm2 のエネルギー範囲でKodak Lotem 400 Quantumイメージャーで露光し、次いで、M−1現像液を含む皿内で26℃で30秒間現像した。得られた印刷版を、感度:クリアリングポイント(clearing point)(露光領域が所与の温度および時間で現像液により完全に除去された最低画像形成エネルギー)、線形性ポイント(linearity point)(200lpiスクリーンで50%ドットが50%±0.2%ドットとして再生されるエネルギー)、および非露光領域でのコーティング量の減少の目安である非露光(非画像)領域でのシアン濃度の減少について評価した。結果を表Iに示す。
【0150】
発明例2:
発明例1について先に記載したのと同じ一般手順を用いて画像形成性要素を作製し、画像形成し、現像した。この場合、版を24℃で30秒間現像し、下記の輻射線感受性組成物の配合を用いた。
ポリマーC 0.5536g
LB 9900(PM中49%) 0.2449g
S 0094 IR染料 0.0200g
クリスタル・バイオレット 0.0160g
スダン・ブラックB 0.0160g
DMABA 0.0720g
Polyfox(登録商標)PF 652(PM中10%) 0.0240g
MEK 3.220g
PM 5.830g
発明例2について得られた結果を下記表Iに示す。
【0151】
発明例3:
発明例1について先に記載したのと同じ一般手順を用いて画像形成性要素を作製し、画像形成し、現像した。この場合、下記のコーティング溶液を用いた。
ポリマーD 0.5536g
LB 9900(PM中49%) 0.2449g
S 0094 IR染料 0.0200g
クリスタル・バイオレット 0.0160g
スダン・ブラックB 0.0160g
DMABA 0.0720g
Polyfox(登録商標)PF 652(PM中10%) 0.0240g
MEK 3.220g
PM 5.830g
発明例3について得られた結果を下記表Iに示す。
【0152】
発明例4:
発明例1について先に記載したのと同じ一般手順を用いて画像形成性要素を作製し、画像形成し、現像した。この場合、下記の輻射線感受性組成物の配合を用いた。
ポリマーE 0.5536g
LB 9900(PM中49%) 0.2449g
S 0094 IR染料 0.0200g
クリスタル・バイオレット 0.0160g
スダン・ブラックB 0.0160g
DMABA 0.0720g
Polyfox(登録商標)PF 652(PM中10%) 0.0240g
MEK 3.220g
PM 5.830g
発明例4について得られた結果を下記表Iに示す。
【0153】
発明例5:
発明例1について先に記載したのと同じ一般手順を用いて画像形成性要素を作製し、画像形成し、現像した。しかし、この場合、画像形成性要素を150mJ/cm2 〜270mJ/cm2 のエネルギー範囲で露光し、M−2現像液を含む皿内で26℃で120秒間現像した。発明例5について得られた結果を表に示す。
【0154】
発明例6:
発明例1について先に記載したのと同じ一般手順を用いて画像形成性要素を作製し、画像形成し、現像した。しかし、この場合、画像形成性要素を150mJ/cm2 〜270mJ/cm2 のエネルギー範囲で露光し、M−3現像液を含む皿内で26℃で90秒間現像した。発明例6について得られた結果を表に示す。
【0155】
比較例1:
発明例1について先に記載したのと同じ一般手順を用いて画像形成性要素を作製し、画像形成し、現像した。しかし、画像形成された要素の現像は、M−1、M−2またはM−3現像液内で26℃で3分間であった。以下の輻射線感受性組成物の配合を使用して要素を作製した。
ポリマーA 22.35g
LB 9900(PM中49%) 23.41g
S 0094 IR染料 0.9600g
クリスタル・バイオレット 0.7700g
スダン・ブラックB 0.7700g
DMABA 2.300g
Polyfox(登録商標)PF 652(PM中10%) 1.150g
MEK 273.0g
PM 154.5g
比較例1について得られた結果を下記表Iに示す。
【0156】
【表1】

【0157】
表Iの結果から、ポリマーAを含む配合物を使用して作製した画像形成性要素は炭酸塩を含有するM−1、M−2またはM−3現像液では現像できないのに対して(表I中の比較例1参照)、ニトロ置換ポリマーB(発明例1,5および6)、ポリマーC(発明例2)、ポリマーD(発明例3)またはポリマーE(発明例4)を含む類似の配合物を使用して作製された画像形成性要素は炭酸塩を含有するM−1、M−2またはM−3現像液により効果的に現像でき、それにより潜像を表したことが判る(表I中の発明例1〜6を参照)。
【0158】
発明例1〜4で得られた結果と発明例5および6で得られた結果(表I)とを比較することによって、M−1現像液中でのベンジルアルコールおよび2−ブトキシエタノールの使用により画像形成性要素の感度が増加したこと(クリアリングポイントがより低い)とシアン濃度の減少量が増加したこと(「CDL」がより高い)が判る。
【0159】
表I中の結果から、ニトロ置換ポリ(ビニルアセタール)樹脂の反応性がニトロ置換アセタール反復単位Cの百分率に正比例し、脂肪族アセタール反復単位Dの百分率に反比例すること、それ故、画像形成された要素が現像されるスピードがニトロ置換アセタール反復単位Cの百分率に正比例し、脂肪族アセタール反復単位Dの百分率に反比例することも判る(上記のポリマースキーム参照)。反応性の順序は次のとおりである:ポリマーE>>ポリマーC>ポリマーB>ポリマーD。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成された要素を製造する方法であって、
A)ポジ型画像形成性要素を300mJ/cm2 未満のエネルギーを使用して像様露光して、露光領域および非露光領域をもたらす工程、および
B)像様露光された前記要素を、炭酸塩を含むシリケートフリーのアルカリ性溶液により現像して主に露光領域のみを除去して、露光され現像された前記要素に画像をもたらす工程、
を含み、前記画像形成性要素が、基材と輻射線吸収性化合物とを含み、かつ、現像性向上化合物とポリ(ビニルアセタール)とを含む画像形成性層を基材上に有し、ポリ(ビニルアセタール)の反復単位の少なくとも25モル%がペンダントニトロ置換フェノール基を含むことを特徴とする、画像形成された要素を製造する方法。
【請求項2】
前記炭酸塩含有溶液が9.5〜11のpHを有し、少なくとも0.5質量%かつ5質量%以下の炭酸イオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記像様露光が100〜250mJ/cm2 のエネルギーで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記現像が35℃以下で3分間以内で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリ(ビニルアセタール)が、下記構造(Ic):
【化1】


により表される反復単位を少なくとも25モル%かつ80モル%以下含み、ここで、RおよびR’は独立に、水素、あるいは置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、またはハロ基であり、R3 はニトロ置換フェノール、ニトロ置換ナフトール、またはニトロ置換アントラセノール基である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリ(ビニルアセタール)が下記構造(I):
【化2】


により表され、ここで、Aは、下記構造(Ia):
【化3】


により表される反復単位を表し、
Bは、下記構造(Ib):
【化4】


により表される反復単位を表し、
Cは先に定義した構造(Ic)により表される反復単位を表し、
Dは、下記構造(Id):
【化5】

により表される反復単位を表し、
kは1〜20モル%、lは5〜50モル%、mは25〜80モル%、nは0〜40モル%であり、
RおよびR’は独立に、水素、あるいは置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、またはハロ基であり、
1 は置換または非置換のアルキルカルボン酸エステルまたはアリールカルボン酸エステルであり、
2 はヒドロキシ基であり、
4 は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、または置換もしくは非置換アリール基である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
kが2〜12モル%であり、lが20〜35モル%であり、mが35〜70モル%であり、nが10〜30モル%である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記画像形成性要素が700〜1400nmの波長で画像形成され、前記画像形成性要素が前記画像形成性層中に赤外線吸収性化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記基材がアルミニウムを含み、かつ、前記画像形成性層上に親水性表面を有する。
【請求項10】
前記画像形成性層がフェノール樹脂、コントラスト染料、またはこれらの両方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法により得られる画像形成された要素。
【請求項12】
アルミニウム含有親水性基材を有する平版印刷版である請求項11に記載の画像形成された要素。
【請求項13】
A)ポジ型印刷版前駆体を100〜250mJ/cm2 のエネルギーを使用して像様露光して、露光領域および非露光領域をもたらす工程、および
B)像様露光された前記印刷版前駆体を、9.5〜11のpHを有し、かつ、0.5〜5質量%の炭酸イオンを含むシリケートフリーのアルカリ性溶液により現像して主に露光領域のみを除去して、露光され現像された平版印刷版に画像をもたらす工程、
を含み、前記平版印刷版前駆体がアルミニウム含有基材を含み、前記アルミニウム含有基材はその上に赤外線吸収性化合物と、現像性向上化合物と、下記構造(I):
【化6】


により表されるポリ(ビニルアセタール)を含み、ここで、Aは、下記構造(Ia):
【化7】


により表される反復単位を表し、
Bは、下記構造(Ib):
【化8】


により表される反復単位を表し、
Cは、下記構造(Ic):
【化9】


により表される反復単位を表し、
Dは、下記構造(Id):
【化10】


により表される反復単位を表し、
kは1〜20モル%、lは5〜50モル%、mは25〜80モル%、nは0〜40モル%であり、
RおよびR’は独立に、水素、あるいは置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、またはハロ基であり、
1 は置換または非置換のアルキルカルボン酸エステルまたはアリールカルボン酸エステルであり、
2 はヒドロキシ基であり、
3 はニトロ置換フェノール、ニトロ置換ナフトール、またはニトロ置換アントラセノール基であり、
4 は置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、または置換もしくは非置換アリール基である、平版印刷版の製造方法。

【公表番号】特表2011−511317(P2011−511317A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545000(P2010−545000)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/000362
【国際公開番号】WO2009/099518
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】