説明

ポストキュアインフレータ

【課題】装置の大型化や機構の複雑化を伴うことなく、更に部品コストやランニングコストの大幅な上昇を生じることなく短時間で加硫済みタイヤ1を冷却する。
【解決手段】加硫済みタイヤ1の上・下ビード部1a・1bを保持する上・下リム機構3・2と、これらリム機構3・2を介して加硫済みタイヤ1を回転させる回転駆動機構10と、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1d近傍に存在する空気を、回転駆動機構10による回転を利用して強制的に排除する空気排除機構41とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫済みタイヤを膨張冷却するポストキュアインフレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤ内部の補強繊維であるカーカス部材として、ポリエステルやナイロンまたはレーヨン等の有機繊維が使用されている。加硫終了後、タイヤが冷却されていく過程において、この補強繊維は収縮していくが、部材のバラツキや配置、成形状態等により収縮量は均一でなく、ただ単に放置した状態の自然冷却では、その収縮量の違いからタイヤが変形し、不良品となったりタイヤのユニフォミティ性能が悪化したりする。
【0003】
そこで、通常、加硫成形が終了すると、ポストキュアインフレータにおいて、タイヤ内部にエアーが封入され、形状を適正に保持した状態が保たれながら、補強繊維の収縮が収まる或る温度以下(通常100℃以下、望ましくは80℃以下に)にまで冷却される。そして、近年においては、加硫時間の短縮に対応してタイヤの冷却時間を短縮させる必要があることから、タイヤの冷却時間を短縮する各種の構成を備えたポストキュアインフレータが提案および実施されている。例えば特許文献1においては、タイヤのビード部を保持するリム機構の内部に中空経路を形成し、この中空経路に冷却エアーを供給して流動させると共に、タイヤの外面に空気や霧状の水を吹き付けることによって、タイヤを強制的に冷却して短時間で冷却を完了するポストキュアインフレータが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−307444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、冷却エアーや霧状の水等の冷却媒体を用いてタイヤを強制的に冷却する構成では、冷却媒体を送出する駆動源や配管等の機構を装置の周辺に設ける必要がある。この結果、配管や駆動源等の周辺機器により装置の大型化や機構の複雑化が生じていると共に、周辺機器の導入に伴う部品コストの上昇、更には、駆動源の運転によるランニングコストの大幅な上昇が生じることになる。
【0006】
本発明の目的は、装置の大型化や機構の複雑化を招来することなく、また、部品コストやランニングコストの大幅な上昇を生じることなく、タイヤを短時間で冷却することができるポストキュアインフレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のポストキュアインフレータは、加硫済みタイヤを加圧して保持する加硫済みタイヤ保持機構と、該加硫済みタイヤの周囲の空気流について自然対流よりも強制対流が支配的となるように、該加硫済みタイヤ保持機構を介して該加硫済みタイヤを高速回転させる回転駆動機構とを有している。
【0008】
上記の構成において、加硫済みタイヤの周囲の空気流について自然対流よりも強制対流が支配的となるように、加硫済みタイヤが高速回転されると、加硫済みタイヤの熱量が強制対流により積極的に除去されるため、短時間で所定の温度以下に冷却することができる。また、加硫済みタイヤが軸方向の中心点を基準として対称的な形状であるため、加硫済みタイヤの高速回転により発生する強制対流は、加硫済みタイヤの赤道中心、即ち、軸方向の中心点を通過および直交する平面と加硫済みタイヤの周面との交差する線分を基準とした軸方向両側に対称的な空気流となる。これにより、加硫済みタイヤは、赤道中心を基準とした軸方向両側に対称的に冷却されることによって、膨張冷却後の品質、特にユニフォミティを向上させることができる。
【0009】
更に、加硫済みタイヤの回転により冷却を行うため、冷却に要するランニングコストが増大することがないと共に、従来のように冷却用の駆動源や配管を追加する場合と比較して、装置の大型化や機構の複雑化を招来することがなく、部品コストが増大することもない。
【0010】
また、本発明における回転駆動機構は、前記加硫済みタイヤを100rpm以上の回転数で回転させる。この構成によれば、加硫済みタイヤの周囲の空気流について自然対流よりも強制対流が支配的となる状態を確実に出現させることができる。
【0011】
より好ましい態様としては、加硫済みタイヤを保持する加硫済みタイヤ保持機構と、前記加硫済みタイヤ保持機構を介して前記加硫済みタイヤを回転させる回転駆動機構と、前記加硫済みタイヤの側面部近傍に存在する空気を、前記回転駆動機構による回転を利用して強制的に排除する空気排除機構とを有している。
【0012】
上記の構成において、加硫済みタイヤの回転により側面部が雰囲気静止空気に対して相対移動すると、側面部表面では相対速度ゼロ、側面部から離れるに従って相対速度を持つ気流分布、いわゆる、速度境界層が形成されるが、空気排除機構により誘起される気流により、この速度境界層は、単にタイヤを回転させたときよりも、更に薄くなる。これと同様に、温度場についても側面部近傍に存在する温度境界層が薄くなる。この境界層が薄くなるほど熱抵抗は減る。そして、熱交換により高温となった側面部近傍における空気が空気排除機構により強制的に排除され、排除された空気を補うように、熱交換前の空気が外部から供給される。この結果、単に加硫済みタイヤを回転させて冷却する場合よりも、短時間で所定の温度以下に冷却することができる。また、回転駆動機構による回転を利用して加硫済みタイヤの冷却を促進するため、冷却に要するランニングコストが増大することがないと共に、従来のように冷却用の駆動源や配管を追加する場合と比較して、装置の大型化や機構の複雑化を招来することがなく、部品コストが増大することもない。
【0013】
また、更に好ましい態様として、前記空気排除機構は、前記加硫済みタイヤ保持機構に設けられ、該加硫済みタイヤ保持機構と共に回転することにより前記加硫済みタイヤの側面部に沿った方向成分を含む空気流を発生させる羽根部材を備えている。この構成によれば、羽根部材をリム機構に設けるという簡単な構成によって、加硫済みタイヤの側面部近傍に存在する空気を排除することができる。
【0014】
また、更に好ましい態様として、前記羽根部材は、前記加硫済みタイヤの所望部位に他の部位よりも高速の空気流を選択的に発生させる条件を満足するように設けられている。これにより、加硫済みタイヤの所望部位に空気流を高速流動させることによって、所望部位の熱を他の部位の熱よりも多く取り除くことができるため、所望部位についての冷却を重点的に行うことができる。
【0015】
また、更に好ましい態様として、前記空気排除機構は、前記羽根部材への空気の流入側の第1空間領域と、前記加硫済みタイヤの側面部近傍側の第2空間領域とに区画する仕切り部材を備えている。
【0016】
上記の構成によれば、第2空間領域に存在する空気が加硫済みタイヤとの熱交換で昇温したときに、この第2空間領域が仕切り部材により第1空間領域に対して区画されているため、昇温した空気の第1空間領域への移動が防止される。この結果、熱交換前の空気のみが第1空間領域に存在し、この空気が羽根部材に流入するため、加硫済みタイヤの冷却を一層効率良く行うことができる。
【0017】
また、更に好ましい態様として、前記空気排除機構は、前記羽根部材に対して冷却空気を供給する冷却空気供給機構を備えている。上記の構成によれば、冷却空気が加硫済みタイヤに送出されるため、加硫済みタイヤを一層効率良く冷却することができる。
【0018】
また、更に好ましい態様として、前記空気排除機構は、前記加硫済みタイヤの側面部に対向配置された状態で固定され、該側面部近傍に存在する空気を掻き取る掻取部材を備えている。
【0019】
上記の構成によれば、掻取部材が加硫済みタイヤの側面部近傍に存在する空気を掻き取ることによって、加硫済みタイヤとの熱交換により高温となった側面部近傍における空気が強制的に排除される。これにより、加硫済みタイヤを短時間で所定の温度以下に冷却することができる。
【0020】
また、更に好ましい態様として、前記加硫済みタイヤの回転時に、該加硫済みタイヤを内圧により膨張させる膨張用空気の入れ替えを行う空気入替機構を有している。
【0021】
上記の構成によれば、加硫済みタイヤを膨張させる膨張用空気を空気入替え機構により入れ替えることによって、加硫済みタイヤの内部からも冷却を行うことが可能になるため、加硫済みタイヤを一層効率良く冷却することができる。
【0022】
また、更に好ましい態様としては、加硫済みタイヤを保持する加硫済みタイヤ保持機構と、保持されている該加硫済みタイヤを回転させる回転駆動機構と、該加硫済みタイヤの両側面部近傍に存在する空気を、該加硫済みタイヤの回転と協働して、強制的に移流又は掻き取って排除するように該加硫済みタイヤの両側面部それぞれに対向して設けられた空気排除機構とを有している。更に好ましい態様としては、加硫済みタイヤを保持して該タイヤの円周方向に回転する加硫済みタイヤ保持機構と、該加硫済みタイヤの円周方向に回転して該加硫済みタイヤの両側面部それぞれに空気流を発生させることで、該両側面部近傍に存在する空気を強制的に排除する空気排除機構とを有している。更に好ましい態様としては、加硫済みタイヤを保持して該タイヤの円周方向に回転する加硫済みタイヤ保持機構と、該加硫済みタイヤの円周方向に回転して該加硫済みタイヤの一方の側面部に空気流を発生させることで、該一方の側面部近傍に存在する空気を強制的に排除する第1の空気排除機構と、該加硫済みタイヤの回転と協働して、該加硫済みタイヤの他方の側面部近傍に存在する空気を強制的に排除するように該他方の側面部に対向して設けられた第2の空気排除機構とを有している。
【0023】
上記の構成において、加硫済みタイヤの回転により側面部が空気に対して相対移動すると、側面部の近傍に存在する空気が強制的に排除される。即ち、空気排除機構を加硫済みタイヤの回転と協働して強制的に掻き取るように構成すると、熱交換により高温となった側面部近傍における空気が空気排除機構により強制的に排除され、排除された空気を補うように、熱交換前の空気が外部から供給される。この結果、単に加硫済みタイヤを回転させて冷却する場合よりも、短時間で所定の温度以下に冷却することができる。また、側面部表面では相対速度ゼロ、側面部から離れるに従って相対速度を持つ気流分布、いわゆる、速度境界層が形成されるが、空気排除機構により誘起される気流により、この速度境界層は、単にタイヤを回転させたときよりも、更に薄くなる。これと同様に温度場についても側面部近傍に存在する温度境界層が薄くなる。この境界層が薄くなるほど熱抵抗は減り、抜熱が速やかに行われる。更に、回転駆動機構による回転を利用して加硫済みタイヤの冷却を促進するため、冷却に要するランニングコストが増大することがないと共に、従来のように冷却用の駆動源や配管を追加する場合と比較して、装置の大型化や機構の複雑化を招来することがなく、部品コストが増大することもない。
【0024】
本発明の空気排除機構又は第1及び第2の空気排除機構が、加硫済みタイヤの周方向に等間隔で位置する複数の羽根部材を有していることが好ましい。これによると、加硫済みタイヤの側面部を周方向で均等に冷却しやすくなる。また、本発明の空気排除機構又は第1及び第2の空気排除機構が、加硫済みタイヤの側面部に対向配置された状態で固定され、該側面部近傍に存在する空気を掻き取る掻取部材を有していることが好ましい。これによれば、掻取部材が加硫済みタイヤの側面部近傍に存在する空気を掻き取ることによって、加硫済みタイヤとの熱交換により高温となった側面部近傍における空気が強制的に排除される。これにより、加硫済みタイヤを短時間で所定の温度以下に冷却することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のポストキュアインフレータは、装置の大型化や機構の複雑化や部品コスト、ランニングコストの大幅な上昇を生じることなく短時間で加硫済みタイヤを冷却することによりタイヤユニフォミティ等の性能を向上させることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以上のように、本発明のポストキュアインフレータは、加硫済みタイヤの周囲の空気流について自然対流よりも強制対流が支配的となるように、加硫済みタイヤを高速回転させる構成を備えている。本発明の更に好ましい実施形態について、以下に説明する。
【0027】
(実施形態1)
本実施形態に係るポストキュアインフレータ(PCI)は、図1に示すように、水平配置された加硫済みタイヤ1の下側面を保持する加硫済みタイヤ保持機構2(以下、下リム機構2という)と、加硫済みタイヤ1の上側面を保持する加硫済みタイヤ保持機構3(以下、上リム機構3という)とを有している。上リム機構3は、加硫済みタイヤ1の上ビード部1aを気密状態に保持する上リム4と、上リム4に連結された上リム連結部材5とを有している。尚、加硫済みタイヤ1は、軸方向の中心点を基準として対称的な形状に形成されており、加硫済みタイヤの赤道中心は、軸方向の中心点を通過および直交する平面と加硫済みタイヤ1の周面との交差する線分を基準として定義される。
【0028】
上記の上リム4は、上ビード部1aの径に対応した外径を有する円盤形状に形成されている。上リム4の内周側には、後述のロッキングシャフト33を挿通させるように開口部4aが形成されている。上リム4の上面には、上リム連結部材5が固設されている。上リム連結部材5は、開口部4aの周囲を取り囲むように円筒形状に形成されており、中心軸が上リム4の鉛直方向の中心軸に一致するように配置されている。
【0029】
上記のように構成された上リム機構3は、回転駆動機構10により任意の方向および回転速度で回転可能にされている。回転駆動機構10は、回転駆動機構10の外周面に水平方向に固設された従動プーリ11と、従動プーリ11の側方に配置された駆動プーリ12と、従動プーリ11と駆動プーリ12とに張設された駆動ベルト13と、駆動プーリ12に連結されたタイヤ駆動モータ14とを有している。そして、回転駆動機構10は、タイヤ駆動モータ14の回転駆動力を駆動プーリ12および駆動ベルト13を介して従動プーリ11に伝達し、上リム連結部材5および上リム4を回転させることによって、上リム4に保持された加硫済みタイヤ1を高速回転させることが可能になっている。
【0030】
ここで、『高速回転』とは、例えば図3に示すように、加硫済みタイヤ1の周囲の空気流について自然対流よりも強制対流が支配的となる回転速度のことである。具体的には、加硫済みタイヤ1を100rpm以上の回転数で回転させたときの回転速度である。尚、『高速回転』の回転速度は、100rpm以上の回転数であれば良いが、好ましくは200rpm以上、より好ましくは300rpm以上であり、また好ましくは1000rpm以下、より好ましくは800rpm以下である。ここで、上限を設定する理由は、高速にし過ぎても冷却効果の変化が小さく、逆に設備の耐久性の低下が顕著になるからであると共に、安全性を確保するのに多大な設備費や労力が必要であるからである。尚、羽根を設けた場合には、500rpm以下でも800〜1000rpmで回転するのみの場合と同様の効果を得ることができる。
【0031】
これにより、回転駆動機構10は、加硫済みタイヤ1の周囲の空気流について自然対流よりも強制対流が支配的となるように、加硫済みタイヤ1を高速回転させることによって、加硫済みタイヤ1の熱量を強制対流により積極的に除去することにより短時間で所定の温度以下に冷却することが可能になっている。また、上記の強制対流を加硫済みタイヤ1の赤道中心を基準とした軸方向両側に対称的な空気流として発生させることによって、赤道中心を基準とした軸方向両側において加硫済みタイヤ1を対称的に冷却させることが可能になっている。この結果、膨張冷却後の品質、特にユニフォミティを向上させることが可能になっている。
【0032】
上記の上リム機構3における上リム連結部材5の内周側には、上リム機構3を回転自在に支持する上リム支持機構21と、上リム機構3と下リム機構2とを着脱可能に連結するロック機構31とがこの順に配置されている。上リム支持機構21は、上リム連結部材5の内周面に沿って設けられた円筒形状の筒状支持部材22と、筒状支持部材22と上リム連結部材5との間に設けられた軸受け部材23とを有している。筒状支持部材22は、上端部が水平フレーム6に固設されている。尚、水平フレーム6は、ポストキュアインフレータの姿勢を保持する図示しないフレーム機構の一部を構成している。一方、軸受け部材23は、筒状支持部材22と上リム連結部材5とを上下方向に固定するように連結していると共に、水平方向に回転自在に支持している。これにより、上リム支持機構21は、水平フレーム6に支持された所定の高さ位置において上リム機構3を回転自在に支持するようになっている。
【0033】
上記の上リム支持機構21の内周側には、ロック機構31が設けられている。ロック機構31は、ロック部材32とロッキングシャフト33とロック用回動機構34とを有している。ロック部材32は、上リム支持機構21の筒状支持部材22に回動自在に嵌合されている。また、ロック部材32の上面部には、回動用シャフト35の先端部が回動自在に連結されている。回動用シャフト35は、水平配置されていると共に、後端部がエアーシリンダや油圧シリンダ等のシリンダ装置36に連結されている。回動用シャフト35とシリンダ装置36とは、ロック用回動機構34を構成しており、ロック用回動機構34は、シリンダ装置36により回動用シャフト35を回動させることによって、ロック部材32を正方向および逆方向に回動可能になっている。
【0034】
上記のロック用回動機構34により回動されるロック部材32は、下面が開口された凹状部32aを有している。凹状部32aの上面中心部には、空気穴32dが形成されており、空気穴32dは、ロック部材32の上壁部を上下方向に貫設された後、空気配管7に接続されている。空気配管7は、図示しない空気供給装置に接続されている。空気供給装置は、加硫済みタイヤ1内に膨張用空気を供給することによって、加硫済みタイヤ1を内圧により膨張させる空気供給機構と、加硫済みタイヤ1の回転時等において膨張用空気を入れ替える空気入替機構とを有している。
【0035】
また、凹状部32aの下端部には、側壁面の四方位置から内周方向に突設された係止部32bが形成されていると共に、隣接する係止部32b・32b間からなる挿通溝32c(切欠部)が形成されている。挿通溝32cは、ロッキングシャフト33の突設部33aを通過させるように形成されている。そして、このように構成されたロック機構31は、ロック部材32をロック用回動機構34により例えば正方向に回動させることによって、ロッキングシャフト33の突設部33aと挿通溝32cとを上下方向に一致させ、ロッキングシャフト33の突設部33aを凹状部32a内に対して進入自在および退出自在にする一方、ロック部材32を例えば逆方向に回動させることによって、ロッキングシャフト33の突設部33aと係止部32bとを上下方向に一致させ、ロッキングシャフト33の突設部33aを凹状部32a内で固定することを可能にしている。
【0036】
上記のロッキングシャフト33は、上述の突設部33aが上端部の四方位置に配置されていると共に外周方向に突設されている。また、ロッキングシャフト33は、軸芯が上述の下リム機構2の中心軸に一致するように配置されており、上端部から垂下されたシャフト部33bと、シャフト部33bの下端部に形成されたシャフト支持部33cとを有している。
【0037】
上記のシャフト支持部33cには、下リム機構2が回転自在に設けられている。下リム機構2は、加硫済みタイヤ1の下ビード部1bを気密状態で保持する下リム16と、下リム16に連結された下リム支持部材17と、下リム支持部材17をロッキングシャフト33のシャフト支持部33cに回転自在に連結する下リム連結機構18とを有している。
【0038】
上記の下リム16は、下ビード部1bの径に対応した外径を有する円盤形状に形成されている。下リム16の内周側には、上述のロッキングシャフト33を挿通させるように開口部16aが形成されている。下リム16の下面には、下リム支持部材17が固設されている。下リム支持部材17は、開口部16aの周囲を取り囲むように円筒形状に形成されており、中心軸が下リム16の中心軸に一致するように配置されている。また、下リム支持部材17の内周面には、軸受け部材からなる下リム連結機構18が設けられている。そして、このように構成された下リム機構2は、加硫済みタイヤ1の下ビード部1bを保持しながら上リム機構3の回転に従動することによって、加硫済みタイヤ1をロッキングシャフト33に対して回転自在に支持している。
【0039】
また、ロッキングシャフト33の下端部は、図示しない昇降機構に連結されている。昇降機構は、ロッキングシャフト33を図示しないタイヤ載置位置から図示位置よりも高いタイヤ装着位置までの間を昇降可能にしている。そして、タイヤ載置位置においては、加硫済みタイヤ1が下リム機構2に着脱されるようになっている。一方、タイヤ装着位置においては、加硫済みタイヤ1の上ビード部1aが上リム機構3に保持され、下リム機構2および上リム機構3で加硫済みタイヤ1が保持されながら冷却処理が行われるようになっている。
【0040】
上記の冷却処理は、回転駆動機構10による加硫済みタイヤ1の回転に加えて、空気排除機構41によっても行われている。空気排除機構41は、加硫済みタイヤ1の側面部であるサイドウォール部1c・1dの近傍に存在する空気を回転駆動機構10による回転を利用して強制的に排除するように構成されている。
【0041】
即ち、空気排除機構41は、リム機構3・2と共に回転することにより加硫済みタイヤ1の側面部に沿った方向成分や半径方向を含む空気流を発生させるように構成されている。具体的には、空気排除機構41は、上リム機構3および下リム機構2にそれぞれ設けられて、回転駆動機構からの駆動力が伝達される複数の羽根部材42を備えている。これらの羽根部材42は、図2に示すように、各リム機構3・2の外周部の円周方向において等間隔に配設されている。また、羽根部材42は、各リム機構3・2の外周面と同程度の曲率半径で湾曲された板状に形成されており、各リム機構3・2の半径方向に対して傾斜されている。即ち、羽根部材42は、内周側の一端側が他端側よりも回転方向(図示矢符方向)の上流側に位置するように傾斜された、いわゆる後退翼となっている。これにより、空気排除機構41は、羽根部材42がリム機構3・2と共に回転することにより、周方向の相対速度を下げることなく加硫済みタイヤ1の側面部に沿った方向成分や半径方向外向き成分を含む空気流を発生させるようになっている。この空気排除機構41は、多翼遠心ファンと類似の様相を呈する遠心ファン形状とすることができる。尚、空気排除機構41は、羽根部材42がリム機構と共に回転するものに限らず、相対回転するものであってもよい。
【0042】
上側および下側に配置された羽根部材42から見てタイヤ1側とは反対側には、仕切部材43が空気排除機構41の一部として設けられている。仕切部材43は、タイヤ1のサイドウォール部1c・1d側の領域を、羽根部材42への空気の流入側の第1空間領域Aと、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1d近傍側の第2空間領域Bとに区画している。即ち、仕切部材43は、上面から下面にかけて連通された円筒形状に形成されている。仕切部材43は、羽根部材42側(一方側)の内径が羽根部材42の外周側の端部に近接するように配置されていると共に、この一方側の内径が他方側の内径よりも減少するように設定されている。これにより、仕切部材43は、第2空間領域Bに存在する空気が第1空間領域Aに移動することを防止すると共に、第1空間領域Aに存在する熱交換前の空気を集合させながら多量に羽根部材42に流入させるようになっている。
【0043】
即ち、回転駆動機構10の駆動力の一部を分岐して羽根部材42に伝達するよう構成しても良いし、回転駆動機構10とは別に設けた駆動機構の駆動力を羽根部材42に伝達するよう構成しても良い。相対回転することにより、タイヤ1と羽根部材42との回転方向の位相が変化していくため、タイヤ周方向において、より均一な空気排除効果がある。また、羽根部材42に駆動力を伝達する駆動機構を回転駆動機構10とは別に設ける場合、加硫済みタイヤ1の上側と下側とに、それぞれ個別の駆動機構により駆動力が伝達される羽根部材42を設けるよう構成することができる。これにより、加硫済みタイヤ1の上側部分と下側部分における加硫済みタイヤ1の冷却能力を調整することができる。即ち、加硫済みタイヤ1の上下温度差についてより高度な調整が可能になる。
【0044】
更に、上側および下側に配置された仕切部材43から見てタイヤ1側とは反対側には、冷却空気供給機構44が空気排除機構41の一部として設けられている。冷却空気供給機構44は、各リム機構3・2の上リム連結部材5および下リム支持部材17の周囲を取り囲むように形成および配置された環状配管45と、環状配管45に冷却空気を供給する図示しない冷却空気供給装置と、羽根部材42に向かって冷却空気を噴出するように環状配管45に設けられた図示しないノズルとを有している。尚、ノズルは、環状配管45に形成された貫通穴であっても良い。
【0045】
上記の構成において、ポストキュアインフレータの動作について説明する。
先ず、下リム機構2を下限位置まで下降した図示しないタイヤ載置位置において、下リム機構2に加硫済みタイヤ1が載置され、加硫済みタイヤ1の下ビード部1bが下リム機構2の下リム16に保持される。
【0046】
この後、ロッキングシャフト33が上昇され、下リム機構2および加硫済みタイヤ1が上昇される。この際、ロック機構31においては、ロック部材32がロック用回動機構34により正方向に回動されることによって、ロッキングシャフト33の突設部33aとロック部材32の挿通溝32cとが上下方向に一致されている。従って、上昇するロッキングシャフト33は、突設部33aが挿通溝32cを通過して凹状部32a内に進入する。そして、ロッキングシャフト33が上限位置であるタイヤ装着位置に到達すると、ロッキングシャフト33の上昇が停止され、加硫済みタイヤ1の上ビード部1aが上リム機構3の上リム4により気密状態に保持される。
【0047】
この後、ロック機構31において、ロック部材32が逆方向に回動され、係止部32bがロッキングシャフト33の突設部33aに対して上下方向に一致される。この結果、ロッキングシャフト33の突設部33aが凹状部32a内の係止部32bにより上下方向に固定されることによって、上リム機構3と下リム機構2とがロッキングシャフト33を介して一定距離を隔てて固定された状態にされる。
【0048】
次に、図示しない空気供給装置における空気供給機構が作動され、膨張用空気が空気配管7等を介して加硫済みタイヤ1内に所定圧で供給される。これにより、加硫済みタイヤ1が所定形状に膨張および形状保持される。この後、空気供給装置における空気入替機構が適宜作動され、加硫済みタイヤ1内の圧力が一定に維持されながら膨張用空気の入れ替えが行われる。この結果、加硫済みタイヤ1との熱交換で高温となった膨張用空気が排出される一方、熱交換前の低温の膨張用空気が加硫済みタイヤ1内に供給されるため、加硫済みタイヤ1の内部から効率良く冷却が行われる。
【0049】
また、回転駆動機構10におけるタイヤ駆動モータ14が作動されることにより、駆動プーリ12、駆動ベルト13および従動プーリ11を介して上リム機構3が回転され、上リム機構3に保持された加硫済みタイヤ1が高速回転される。この結果、加硫済みタイヤ1の周囲の空気流について自然対流よりも強制対流が支配的となり、加硫済みタイヤ1の熱量が強制対流により積極的に除去される。これにより、加硫済みタイヤ1を停止した状態で膨張冷却したり、自然対流が支配的な低速回転で加硫済みタイヤ1を回転させながら膨張冷却した場合よりも、加硫済みタイヤ1が短時間で所定の温度以下に冷却される。
【0050】
更に、加硫済みタイヤ1が軸方向の中心点を基準として対称的な形状であるため、加硫済みタイヤ1の高速回転により発生する強制対流は、加硫済みタイヤ1の赤道中心、即ち、軸方向の中心点を通過および直交する平面と加硫済みタイヤの周面との交差する線分を基準とした軸方向両側に対称的な空気流となる。これにより、加硫済みタイヤ1は、赤道中心を基準とした軸方向両側に対称的に冷却されることによって、膨張冷却後の品質、特にユニフォミティが向上したものになる。
【0051】
また、加硫済みタイヤ1の回転により各サイドウォール部1c・1dが周囲の空気に対して相対移動すると、サイドウォール部1c・1dの表面では相対速度ゼロ、表面から離れるに従って相対速度を持つ気流分布、いわゆる、速度境界層が形成されるが、空気排除機構41により誘起される気流により、この速度境界層は、単にタイヤを回転させたときよりも更に薄くなる。これと同様に温度場についても、サイドウォール部近傍に存在する温度境界層が薄くなる。この境界層が薄くなるほど熱抵抗は減り、サイドウォール部1c・1dが速やかに冷却される。加硫済みタイヤ1は、速度境界層が十分に薄くなる程度に高速で回転させる必要があり、100rpm以上、好ましくは200rpm以上、更に好ましくは300rpm以上であるが、更に高速回転させることで、より速やかな冷却が可能である。
【0052】
また、熱交換により高温となったサイドウォール部1c・1d近傍における空気は、空気排除機構41により強制的に排除される。即ち、加硫済みタイヤ1の回転により冷却が開始されると、冷却空気供給機構44における環状配管45から低温の冷却空気が羽根部材42方向に噴出される。また、各リム機構3・2が回転すると、これらのリム機構3・2に設けられた羽根部材42が回転、即ち、各リム機構3・2の軸芯を中心とした周方向に旋回する。この結果、羽根部材42により各リム機構3・2側の第1空間領域Aに存在する冷却空気等を含む熱交換前の空気が仕切部材43からタイヤ1方向に押し出され、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1dに沿った方向成分を含む空気流(風)となる。
【0053】
これにより、サイドウォール部1c・1dの近傍に存在する熱交換後の高温の空気が加硫済みタイヤ1から排除され、このようにして排除された空気を補うように、熱交換前の空気が羽根部材42により第1空間領域Aから供給される。従って、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1dは、温度差の大きな空気との間で熱交換が常時行われるため、短時間で所定の温度以下に冷却される。尚、羽根部材42を設けた場合は、設けていない場合と比較して、同等の効果をより低回転または短時間で得ることが可能である。
【0054】
更に、サイドウォール部1c・1d近傍側の第2空間領域Bが仕切部材43により第1空間領域Aに対して区画されているため、加硫済みタイヤ1との熱交換で昇温した第2空間領域Bの高温の空気は、第1空間領域Aに移動することが阻止される。この結果、熱交換前の空気のみが第1空間領域Aに存在し、この空気が羽根部材42に流入するため、サイドウォール部1c・1dの冷却が一層効率良く行われる。
【0055】
また、このような加硫済みタイヤ1を高速回転させての冷却時においては、上側および下側の各サイドウォール部1c・1dにおける空気は、加硫済みタイヤ1の外周方向に流動される。この結果、下側のサイドウォール部1c・1dとの熱交換で高温となった空気が自然対流により上昇して上側のサイドウォール部1c・1dに回り込むという事態が防止される。これにより、上側および下側の両サイドウォール部1c・1dが同じ条件で冷却されることになる。また、このような高速回転で生じる遠心力により、加硫済みタイヤ1内部における空気には軸方向両側で対称的な流れが誘起され、加硫済タイヤ1内部からの加硫済タイヤの軸方向の両側に対称的(均等)な冷却が促進される。このように、加硫済みタイヤ1を例えば100rpm以上の高速で回転させ得る回転駆動機構10を有するポストキュアインフレータ(PCI)によれば、回転数や羽根部材42の有無、加硫済みタイヤ1と羽根部材42との相対回転の有無、上下羽根部材42それぞれの回転数調整等を適宜行うことで、タイヤ形状に応じた冷却、タイヤ内外からのムラのない冷却、冷却時間の調整・短縮化を行うことができ、1加硫サイクル内での冷却が完了するよう調整することも可能である。換言すれば、ポストキュアインフレータは、1加硫サイクル内での冷却が完了するよう調整する構成や機能、例えば回転数や羽根部材42の有無、加硫済みタイヤ1と羽根部材42との相対回転の有無、上下羽根部材42それぞれの回転数調整等を適宜行う構成や機能を備えていても良い。また、加硫済みタイヤ1の上下方向および周方向でバランスのとれた冷却が行われるため、冷却後の加硫済みタイヤ1が高品質の状態となる。
【0056】
以上のようにして加硫済みタイヤ1の冷却が完了すると、膨張用空気を排出しロック機構31において、ロック部材32がロック用回動機構34により正方向に回動されることによって、ロッキングシャフト33の突設部33aとロック部材32の挿通溝32cとが上下方向に一致される。この後、ロッキングシャフト33が下降され、凹状部32a内に存在する突設部33aが挿通溝32cを通過して外部に退出される。そして、冷却された加硫済みタイヤ1と共に下リム機構2が図示しないタイヤ載置位置にまで下降して停止されると、加硫済みタイヤ1の排出が行われ、次の加硫済みタイヤ1の冷却が開始される。
【0057】
(実施形態2)
次に、ポストキュアインフレータの他の実施形態について説明する。尚、実施形態1と同一部材には同一の符号を付記してその説明を省略する。また、空気排除機構41等を図示していないが、実施形態1に開示された部材や機構を必要に応じて適宜設けても良い。
【0058】
ポストキュアインフレータは、図12に示すように、水平配置された加硫済みタイヤ1の下側面を保持する下リム機構2と、加硫済みタイヤ1の上側面を保持する上リム機構3とを有している。上リム機構3は、回転駆動機構74により任意の回転速度で回転可能にされている。回転駆動機構74は、上リム機構3が連結された回転軸部材75と、回転軸部材75を回転自在に支持し、回転軸部材75を鉛直方向に保持する外筒部材76と、回転軸部材75の上端部にプーリやベルトを介して連結された駆動モータ77とを有している。回転軸部材75には、空気穴75aが形成されており、空気穴75aは、上下方向に貫設された後、図示しない空気配管を介して空気供給装置に接続されている。
【0059】
上記の回転軸部材75を支持する外筒部材76は、図12にも示すように、水平フレーム78に固設されている。外筒部材76の外周面側には、回動機構79が配置されている。回動機構79は、筒部材76bの外周面に設けられ、ロッド80aが鉛直方向に進退移動可能に設定された係合用シリンダ80と、係合用シリンダ80のロッド80aに係合可能に配置され、回転軸部材75に固設された係合盤81と、外筒部材76に支持され、筒部材76bを水平方向に回動させる回動用シリンダ82とを有している。
【0060】
上記の回動機構79の下方には、ロック機構83が設けられている。ロック機構83は、回転軸部材75の下端部(先端部)に形成された突設部75aと、上リム機構3に連結されたロック部材84を有している。ロック部材84は、上面が開口された凹状部84aを有している。凹状部84aの上端部には、側壁面の四方位置から内周方向に突設された係止部84bが形成されていると共に、隣接する係止部32b・32b間からなる挿通溝(切欠部)が形成されている。挿通溝は、回転軸部材75の突設部75aを通過させるように形成されている。そして、このように構成されたロック機構83は、回転軸部材75を上述の回動機構79により例えば正方向に回動させることによって、突設部75aと挿通溝とを上下方向に一致させ、突設部75aを凹状部84a内に対して進入自在および退出自在にする一方、回転軸部材75を例えば逆方向に回動させることによって、突設部75aと係止部84bとを上下方向に一致させ、突設部75aを凹状部84a内で固定することを可能にしている。その他の構成は、実施形態1と同一である。
【0061】
上記の構成において、ポストキュアインフレータの動作について説明する。
先ず、下リム機構2を下限位置まで下降した図示しないタイヤ載置位置において、下リム機構2に加硫済みタイヤ1が載置され、加硫済みタイヤ1が下リム機構2に保持される。この後、下リム機構2がロック機構83と共に上昇され、下リム機構2および加硫済みタイヤ1が上昇される。この際、ロック機構83の上方に位置する回転軸部材75においては、回動機構79により正方向に回動されることによって、突設部75aがロック部材84の挿通溝に対して上下方向に一致されている。従って、上昇するロック部材84は、突設部33aを凹状部84a内に進入させる。そして、下リム機構2が上限位置であるタイヤ装着位置に到達すると、上昇が停止され、加硫済みタイヤ1が上リム機構3により気密状態に保持される。
【0062】
この後、回動機構79において、回転軸部材75が逆方向に回動され、ロック部材84の係止部84bが回転軸部材75の突設部75aに対して上下方向に一致される。この結果、回転軸部材75の突設部75aが凹状部84a内の係止部84bにより上下方向に固定されることによって、上リム機構3と下リム機構2とが回転軸部材75を介して一定距離を隔てて固定されたロック状態にされる。
【0063】
次に、係合用シリンダ80のロッド80aが後退され、係合盤81との係合が解除されることによって、回転軸部材75が外筒部材76に対して回転自在にされる。そして、図示しない空気供給装置における空気供給機構が作動され、膨張用空気が加硫済みタイヤ1内に所定圧で供給されることによって、加硫済みタイヤ1が所定形状に膨張および形状保持される。この後、駆動モータ77が作動されることによって、プーリやベルトを介して回転軸部材75が回転される。これにより、加硫済みタイヤ1が高速回転されることにより膨張冷却される。
【0064】
加硫済みタイヤ1の冷却が完了すると、膨張用空気が排出された後、ロック機構83および回動機構79において、上述の下リム機構2と上リム機構3とを連結する動作とは逆の動作によりロック状態が解除される。そして、冷却された加硫済みタイヤ1と共に下リム機構2が図示しないタイヤ載置位置にまで下降して停止された後、加硫済みタイヤ1の排出が行われ、次の加硫済みタイヤ1の膨張冷却が開始される。その他の動作は、実施形態1と同一である。
【0065】
次に、本実施形態1・2におけるポストキュアインフレータによる冷却効果を確認するため、下記のシミュレーション試験を行った。
【0066】
従来のように、加硫済みタイヤ1を静置したとき(回転数0rpm)の加硫済みタイヤ1の周辺に生じる空気流の流動状態を調査した。図6及び図7は、そのシミュレーション結果を示すものである。図6は、半径方向及び鉛直方向速度ベクトル図を表し、図7は、半径方向速度成分の等値図を表している。なお、図7においては、色調が濃いほど速度が大きいことを示している。この結果、図6及び図7に示すように、タイヤ外側では加硫済みタイヤ1の下側のサイドウォール部1dにおいて高温となった空気が上昇し、上側のサイドウォール部1cに回り込む自然対流の空気流(矢符方向)が発生していることが確認された。更に、タイヤ内側では、ベルトインナーライナー部を上昇する自然対流が発生し、且つ温度成層も形成され、上下温度差を生じることも確認された。
【0067】
羽根部材42を備えたポストキュアインフレータに加硫済みタイヤ1を装着し、500回転/分の回転速度で回転させたときの加硫済みタイヤ1の周辺に生じる空気流の流動状態を調査した。図3は、そのシミュレーション結果を示すものであり、半径方向及び鉛直方向速度ベクトル図を表している。この結果、図3に示すように、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1dに沿った方向成分を含む強制対流の空気流(矢符方向)、即ち、加硫済みタイヤ1の赤道中心を基準とした軸方向両側に対称的な空気流が発生し、サイドウォール部1c・1d近傍の空気が赤道中心を基準とした軸方向両側に対称的であって強制的に排除されることが確認された。
【0068】
また、羽根部材42を備えない場合と、備えた場合について、600回転/分の回転速度で回転させたときの、加硫済みタイヤ1の周辺に生じる空気流の流動状態を調査した。図4及び図5は、そのシミュレーション結果を示すものである。図4は、半径方向成分の等値図(羽根なしの場合)を表している。図5は、半径方向成分の等値図(羽根ありの場合)を表している。なお、両図とも、色調が濃いほど速度成分が大きいことを示している。この結果、周方向の雰囲気空気との相対速度が大きく、これが支配的となっているが、図4及び図5に示すように、半径方向外向きの2次流れについては、羽根部材を備えたことによって、タイヤ1のサイドウォール部1c・1dに沿った方向を含む空気流(矢印方向)が増大し、サイドウォール部1c・1d近傍の空気がより効果的に排除されることが確認された。
【0069】
以上のように、本実施形態1・2のポストキュアインフレータは、図1に示すように、加硫済みタイヤ1の上・下ビード部1a・1bを保持する上・下リム機構3・2(加硫済みタイヤ保持機構)と、加硫済みタイヤ1の周囲の空気流について自然対流よりも強制対流が支配的となるように、これらリム機構3・2を介して加硫済みタイヤ1を高速回転させる回転駆動機構10とを有した構成にされている。
【0070】
上記の構成によれば、加硫済みタイヤ1の周囲の空気流について自然対流よりも強制対流が支配的となるように、加硫済みタイヤが高速回転されると、加硫済みタイヤの熱量が強制対流により積極的に除去されるため、短時間で所定の温度以下に冷却することができる。また、加硫済みタイヤが軸方向の中心点を基準として対称的な形状であるため、加硫済みタイヤの高速回転により発生する強制対流は、加硫済みタイヤ1の赤道中心を基準とした軸方向両側に対称的な空気流となる。これにより、加硫済みタイヤ1は、赤道中心を基準とした軸方向両側に対称的に冷却されることによって、膨張冷却後の品質、特にユニフォミティを向上させることができる。更に、加硫済みタイヤ1の回転により冷却を行うため、冷却に要するランニングコストが増大することがないと共に、従来のように冷却用の駆動源や配管を追加する場合と比較して、装置の大型化や機構の複雑化を招来することがなく、部品コストが増大することもない。
【0071】
尚、本実施形態1・2においては、上・下リム機構3・2(加硫済みタイヤ保持機構)により加硫済みタイヤ1を水平配置した姿勢で保持して高速回転させるようになってなっているが、これに限定されるものではなく、傾斜した姿勢で加硫済みタイヤ1を保持して高速回転させるようになっていても良いし、例えば垂直方向の姿勢、即ち、加硫済みタイヤ1の軸が水平方向に一致する姿勢で保持して高速回転させるようになっていても良い。垂直方向の姿勢で加硫済みタイヤ1を高速回転させた場合には、赤道中心を基準とした軸方向両側の空気流の対称性が一層向上し、冷却の対称性、ひいてはユニフォミティ等の品質を一層向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態1・2のポストキュアインフレータは、加硫済みタイヤ1の上・下ビード部1a・1bを保持する上・下リム機構3・2(加硫済みタイヤ保持機構)と、これらリム機構3・2を介して加硫済みタイヤ1を回転させる回転駆動機構10・74と、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1d近傍(側面部近傍)に存在する空気を、回転駆動機構10による回転を利用して強制的に排除する空気排除機構41とを有した構成にされている。尚、本実施形態1・2においては、水平フレーム6の下方位置において1本の加硫済みタイヤ1を冷却する構成を用いて説明しているが、これに限定されるものではなく、水平フレーム6を中心として同一構成の機構を対称に設けて上下反転する構成にされていても良い。
【0073】
上記の構成において、加硫済みタイヤ1の回転によりサイドウォール部1c・1dが空気に対して相対移動すると、サイドウォール部1c・1d表面では相対速度ゼロ、側面部から離れるに従って相対速度を持つ気流分布、いわゆる、速度境界層が形成されるが、空気排除機構41により誘起される気流により、この速度境界層は、単にタイヤ1を回転させたときよりも更に薄くなる。これと同様に温度場についても、サイドウォール部1c・1d近傍に存在する温度境界層が薄くなる。この境界層が薄くなるほど熱抵抗は減り、つまり抜熱が速やかに行われる。更に、空気排除機構41は熱交換によって高温となった側面部の空気を強制的に排除し、排除された空気を補うように、熱交換前の冷たい空気を外部から導く役目も果たす。この結果、単に加硫済みタイヤ1を回転させて冷却する場合よりも、短時間で所定の温度以下に冷却することができる。また、回転駆動機構10による回転を利用して加硫済みタイヤ1の冷却を促進するため、冷却に要するランニングコストが増大することがないと共に、従来のように冷却用の駆動源や配管を追加する場合と比較して、装置の大型化や機構の複雑化を招来することがなく、部品コストが増大することもない。
【0074】
また、本実施形態1において、空気排除機構41は、各リム機構3・2に設けられ、各リム機構3・2と共に回転することにより加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1dに沿った方向成分を含む空気流を発生させる羽根部材42を備えている構成である。尚、実施形態2のポストキュアインフレータが羽根部材42を備えていても良い。
【0075】
尚、羽根部材42は、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1dに沿った方向成分を含む空気流を発生させるものであれば、どのような形状および配置形態が選択されていても良い。例えば羽根部材42は、単数であっても良いし、傾斜角度や形状、サイズが羽根部材42毎に異なっていても良いし、平板状にされていても良い。更には、サイドウォール部1c・1dに対して直交する方向成分を多く含むように、羽根部材42の上部が進行方向のサイドウォール部1c・1d側に曲折されていたり、羽根部材42全体が進行方向側に傾斜されていても良い。
【0076】
また、羽根部材42は、加硫済みタイヤ1の所望部位、例えばサイドウォール部1c・1dの最も肉厚が大きな部位等に他の部位よりも高速の空気流を発生させる条件を満足するように設けられていても良い。この場合には、加硫済みタイヤ1の所望部位に多くの空気流を流動させることによって、所望部位の熱を他の部位の熱よりも多く取り除くことができるため、所望部位についての冷却を重点的に行うことができる。この結果、一層、加硫済みタイヤ1を理想的な状態で冷却することができる。尚、『条件を満足する』とは、例えば羽根部材42の設置枚数や傾斜角度、形状等を代表例とする空気流変動要素について、これら空気流変動要素の少なくとも一つを調整することによって、加硫済みタイヤ1の所望部位に他の部位よりも多くの空気流を発生させることを意味する。
【0077】
上記の構成によれば、羽根部材42を各リム機構3・2に設けるという簡単な構成によって、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1d近傍に存在する空気を排除することができる。
【0078】
また、本実施形態1において、空気排除機構41は、羽根部材42への空気の流入側の第1空間領域Aと、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1d近傍側の第2空間領域Bとに区画する仕切部材43を備えている構成である。尚、実施形態2のポストキュアインフレータが仕切部材43を備えていても良い。
【0079】
上記の構成によれば、第2空間領域Bに存在する空気が加硫済みタイヤ1との熱交換で昇温したときに、この第2空間領域Bが仕切部材43により第1空間領域Aに対して区画されているため、昇温した空気の第1空間領域Aへの移動が防止される。この結果、熱交換前の空気のみが第1空間領域Aに存在し、この空気が羽根部材42に流入するため、加硫済みタイヤ1の冷却を一層効率良く行うことができる。
【0080】
また、本実施形態1において、空気排除機構41は、羽根部材42に対して冷却空気を供給する冷却空気供給機構44を備えている構成である。尚、実施形態2のポストキュアインフレータが冷却空気供給機構44を備えていても良い。この構成によれば、冷却空気が加硫済みタイヤ1に送出されるため、加硫済みタイヤ1を一層効率良く冷却することができる。
【0081】
また、本実施形態1において、加硫済みタイヤ1の回転時に、加硫済みタイヤ1を内圧により膨張させる膨張用空気の入れ替えを行う空気入替機構を有する構成である。尚、実施形態2のポストキュアインフレータが空気入替機構を備えていても良い。これにより、加硫済みタイヤ1を膨張させる膨張用空気を空気入替え機構により入れ替えることによって、加硫済みタイヤ1の内部からも積極的に冷却を行うことが可能になるため、加硫済みタイヤ1を一層効率良く冷却することができる。
【0082】
尚、本実施形態1における空気排除機構41は、加硫済みタイヤ1の両側面部近傍に存在する空気を、回転駆動機構10の回転駆動力を直接的に利用して回転することにより加硫済みタイヤ1の両側面部それぞれに対して空気流を発生させる構成にされているが、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1d近傍(側面部近傍)に存在する空気を、回転駆動機構10による回転を利用して強制的に排除する機能を発揮するように構成にされていれば良く、自らは回転しないように固定的に設けられていても良い。
【0083】
更に、空気排除機構41は、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1d近傍に存在する空気を、加硫済みタイヤ1の回転と協働して、強制的に移流又は掻き取って排除するように加硫済みタイヤ1の両側面部それぞれに対向または近接して設けられた構成であっても良い。この構成によれば、空気排除機構41は、加硫済みタイヤ保持機構を介して駆動、即ち、加硫済みタイヤ保持機構と同一の駆動源で駆動されるものでなくても良い。この場合には、加硫済みタイヤ1とは逆方向に回転させたり、加硫済みタイヤ1の回転速度とは異なった速度で回転させることによって、加硫済みタイヤ1に応じた所望の条件で冷却することができる。
【0084】
更に、空気排除機構41は、第1の空気排除機構と第2の空気排除機構とで構成されており、第1の空気排除機構は、加硫済みタイヤ1の一方の側面部近傍に存在する空気を、前記回転駆動機構の回転移動力を利用して回転することにより一方の側面部に対して空気流を発生させることにより強制的に排除するように構成され、第2の空気排除機構は、前記加硫済みタイヤの他方の側面部近傍に存在する空気を、前記加硫済みタイヤの回転と協働して、強制的に移流又は撹拌して排除するように前記加硫済みタイヤの他方の側面部に対向して設けられた構成であってもよい。ここで、他方側の空気排除機構としては、サイドウォール部1c・1dに対応する固定羽根や、その固定を解いて回転する羽根がある。
【0085】
以上、本発明を好適な実施形態1・2に基づいて説明したが、本発明はその趣旨を超えない範囲において変更が可能である。即ち、ポストキュアインフレータは、図8に示すように、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1dに対向配置された状態で固定され、サイドウォール部1c・1d近傍に存在する空気を掻き取る掻取部材51を空気排除機構41として備えた構成であっても良い。
【0086】
具体的に説明すると、掻取部材51は、サイドウォール部1c・1dとの対向面がサイドウォール部1c・1dとの距離が等距離となる形状に形成されている。また、掻取部材51は、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1dを挟んで上下に配置されている。上側の掻取部材51は、筒状支持部材22に上側支持部材52を介して固定されている。一方、下側の掻取部材51は、ロッキングシャフト33のシャフト支持部33cに下側支持部材53を介して固定されている。
【0087】
また、掻取部材51は、図9に示すように、サイドウォール部1c・1dに対向する環状領域において、複数個が等間隔に配設されている。そして、掻取部材51は、加硫済みタイヤ1の外周面と同程度の曲率半径で湾曲された板状に形成されており、加硫済みタイヤ1の半径方向に対して傾斜されている。即ち、掻取部材51は、外周側の一端側が他端側よりも回転方向(図示矢符方向)の上流側に位置するように傾斜されている。
【0088】
尚、掻取部材51は、外周側の一端側が他端側よりも回転方向(図示矢符方向)の下流側に位置するように傾斜されていても良い。また、掻取部材51は、図1の空気排除機構41における羽根部材42や仕切部材43、冷却空気供給機構44と組み合わせて設けられていても良い。また、掻取部材51は、加硫済みタイヤのサイドウォール部に対して相対回転して、サイドウォール部近傍の空気を掻き取るものであればよく、ロッキングシャフトおよび筒状部材に固定されるものに限らない。
【0089】
上記の構成によれば、加硫済みタイヤ1が回転すると、サイドウォール部1c・1dが掻取部材51に対して相対移動し、サイドウォール部1c・1dと共に移動するサイドウォール部1c・1d近傍の空気が掻取部材51により掻き取られる。この結果、加硫済みタイヤ1との熱交換により高温となったサイドウォール部1c・1d近傍における空気が強制的に排除される。これにより、加硫済みタイヤ1を短時間で所定の温度以下に冷却することができる。
【0090】
更に、ポストキュアインフレータは、図10(a)・(b)に示すように、加硫済みタイヤ1のサイドウォール部1c・1dに対向配置された状態で各リム機構3・2に固定され、サイドウォール部1c・1d近傍に存在する空気を上昇気流や下降気流により移流する(または排除する)軸流羽根部材54を空気排除機構41として備えた構成であっても良い。
【0091】
具体的に説明すると、軸流羽根部材54は、後端部が各リム機構3・2に固定され、回転中心Oに対して偏心した状態で四方に配置されている。軸流羽根部材54の先端部は、サイドウォール部1c・1dに対向配置されており、第1板部材55と第2板部材56とを備えている。第2板部材56は、サイドウォール部1c・1dに対して平行に配置されている。一方、第1板部材55は、回転方向の上流側の端部が第2板部材56に接続され、下流側の端部が上方に30度等の所定角度に傾斜された状態に設けられている。
【0092】
尚、軸流羽根部材54は、第1板部材55における回転方向の上流側の端部が第2板部材56に接続され、下流側の端部が下方に30度等の所定角度に傾斜された状態に設けられていても良い。また、軸流羽根部材54は、図1の空気排除機構41における羽根部材42や仕切部材43、冷却空気供給機構44と組み合わせて設けられていても良い。また、軸流羽根部材54は、加硫済みタイヤに対して相対回転するように設けてもよい。
【0093】
上記の構成によれば、加硫済みタイヤ1が回転すると、サイドウォール部1c・1dと軸流羽根部材54とが同一速度で回転(移動)又は相対回転する。そして、軸流羽根部材54においては、第2板部材56が移動による空気流の圧力差によって、サイドウォール部1c・1dから離れる方向である上昇気流や下降気流を発生させる。この結果、サイドウォール部1c・1d近傍の加硫済みタイヤ1との熱交換により高温となった空気が上昇気流や下降気流により強制的に排除される。これにより、加硫済みタイヤ1を短時間で所定の温度以下に冷却することができる。
【0094】
以上のように、本発明は、上記の好ましい実施形態1・2に記載されているが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。更に、本実施形態1・2を含む明細書において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0095】
先ず、トレッド部からサイドウォール部を通り、ビード部にのびる本体部にビードコアの周りをタイヤ軸方向内側から外側に向かって折り返す巻上げ部が一体に設けられた1枚のカーカスプライからなるカーカス構造の加硫済みタイヤについて、回転数(rpm)や羽根の有無、羽根の枚数、羽根の形状等を冷却条件とし、これら冷却条件を変更しながら膨張冷却したときの冷却時間(分)と、必要冷却時間12分比(%)と、カーカスコード(中間伸度上下差(%))と、コニシティとを試験項目として調査した。また、加硫済みタイヤを従来製法で膨張冷却することによって、上記の各試験項目を調査した。
【0096】
ここで、冷却時間は、トレッド部に隣接するサイドウォールのカーカス部が80℃まで冷える時間とした。但し、従来製法の冷却時間は、現状2サイクル方式のPCI時間とした。また、カーカスコード中間伸度は、タイヤより採取したサイドウォール部を試料として測定した。コニシティーは、N=12のデータ(タイヤ12本分の平均値)である。
【0097】
尚、中間伸度、即ち、一定荷重伸び率とは、JIS L1017(化学繊維タイヤコード試験方法)の7.7項に記載された一定荷重伸び率により測定を行った一定荷重Wを加えたときの伸び率(%)であり、その7.7.1項の標準時試験に基づいて行われる。尚、一定荷重Wは、W(kgf)=4.5×(d2/d1)により算出するように定められている。ここで、d1:繊維の種類により定まる基準デシテックス、d2:試料の表示デシテックスである。そして、タイヤ1本当たり、タイヤ両側(上下)のサイドウォール部の周上の略均等な4箇所から、カーカスコードの試料を上下一対で4セット採取し、タイヤ10本分(試料40セット)の上下差の平均値を小数点以下1桁まで算出した。
【0098】
具体的に説明すると、加硫サイクルタイム(ここでは、加硫成形時間に型開閉と型内外へのタイヤ搬出入時間を含むものである)10分で、タイヤサイズが195/65R15 91Sの乗用車用ラジアルタイヤを準備した。そして、上記の冷却条件を表1・2のように各種変更して膨張冷却した。この冷却条件および調査結果についての詳細を実施例1〜16および従来例1として表1および表2に示す。また、従来製法での冷却時間を100%としたときの各実施例1〜16の冷却時間の比率を算出して図11のようにグラフ化した。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
表1・2および図11から、回転数が100rpm以上であれば、従来製法よりも冷却時間を大幅(本実施例では80%以下)に短縮できることが明らかになった。尚、この理由は、上述のシミュレーション結果において示されているように、加硫済みタイヤの周囲の空気流について自然対流よりも強制対流が支配的となる程度にまで、加硫済みタイヤが高速回転されたからであると考えられる。また、加硫済みタイヤを高速回転させた場合において、羽根が有る場合の方が無い場合よりも、冷却時間を短縮できることも明らかになった。
【0102】
次に、加硫サイクルタイム(ここでは、加硫成形時間に型開閉と型内外へのタイヤ搬出入時間を含むものである)14分で、タイヤサイズが265/70R16 112Sの四輪駆動車用ラジアルタイヤを準備した。そして、上記の冷却条件を表2のように各種変更して膨張冷却した。この冷却条件および調査結果についての詳細を実施例17〜20および従来例2として表3に示す。表3においても、回転数が100rpm以上の高速回転であれば、従来製法よりも冷却時間を短縮できることが明らかになった。
【0103】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】ポストキュアインフレータの縦断面の概略構成図である。
【図2】羽根部材の配置状態を示す説明図である。
【図3】本発明による空気流のシミュレーション結果を示す説明図である。
【図4】本発明による空気流のシミュレーション結果を示す説明図である。
【図5】本発明による空気流のシミュレーション結果を示す説明図である。
【図6】従来例による空気流のシミュレーション結果を示す説明図である。
【図7】従来例による空気流のシミュレーション結果を示す説明図である。
【図8】ポストキュアインフレータの縦断面の概略構成図である。
【図9】羽根部材の配置状態を示す説明図である。
【図10】羽根部材の配置状態を示す説明図であり、(a)は平面視した図、(b)は正面視した図である。
【図11】必要冷却時間のグラフである。
【図12】ポストキュアインフレータの縦断面の概略構成図である。
【図13】ポストキュアインフレータの概略平面図である。
【符号の説明】
【0105】
1 加硫済みタイヤ
1a 上ビード部
1b 下ビード部
1c サイドウォール部
1d サイドウォール部
2 加硫済みタイヤ保持機構(下リム機構)
3 加硫済みタイヤ保持機構(上リム機構)
4 上リム
5 上リム連結部材
6 水平フレーム
7 空気配管
10 回転駆動機構
11 従動プーリ
12 駆動プーリ
13 駆動ベルト
14 タイヤ駆動モータ
16 下リム
17 下リム支持部材
18 下リム連結機構
21 上リム支持機構
22 筒状支持部材
23 軸受け部材
31 ロック機構
32 ロック部材
33 ロッキングシャフト
34 ロック用回動機構
35 回動用シャフト
36 シリンダ装置
41 空気排除機構
42 羽根部材
43 仕切部材
44 冷却空気供給機構
45 環状配管
51 拡散部材
52 上側支持部材
53 下側支持部材
54 軸流羽根部材
55 第1板部材
56 第2板部材
74 回転駆動機構
75 回転軸部材
76 外筒部材
77 駆動モータ
78 水平フレーム
79 回動機構
80 係合用シリンダ
81 係合盤
82 回動用シリンダ
83 ロック機構
84 ロック部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫済みタイヤを保持する加硫済みタイヤ保持機構と、
該加硫済みタイヤの周囲の空気流について自然対流よりも強制対流が支配的となるように、該加硫済みタイヤ保持機構を介して該加硫済みタイヤを高速回転させる回転駆動機構と
を有することを特徴とするポストキュアインフレータ。
【請求項2】
前記回転駆動機構は、前記加硫済みタイヤを100rpm以上の回転数で回転させることを特徴とする請求項1に記載のポストキュアインフレータ。
【請求項3】
更に、前記加硫済みタイヤの側面部近傍に存在する空気を、前記回転駆動機構による回転を利用して強制的に排除する空気排除機構を有することを特徴とする請求項1または2に記載のポストキュアインフレータ。
【請求項4】
前記空気排除機構は、
前記加硫済みタイヤ保持機構に設けられ、該加硫済みタイヤ保持機構と共に回転することにより前記加硫済みタイヤの側面部に空気流を発生させる羽根部材を備えていることを特徴とする請求項3に記載のポストキュアインフレータ。
【請求項5】
前記羽根部材は、
前記加硫済みタイヤの所望部位に他の部位よりも高速の空気流を選択的に発生させる条件を満足するように設けられていることを特徴とする請求項4に記載のポストキュアインフレータ。
【請求項6】
前記空気排除機構は、
前記羽根部材への空気の流入側の第1空間領域と、前記加硫済みタイヤの側面部近傍側の第2空間領域とに区画する仕切り部材を備えていることを特徴とする請求項3または4に記載のポストキュアインフレータ。
【請求項7】
前記空気排除機構は、
前記羽根部材に対して冷却空気を供給する冷却空気供給機構を備えていることを特徴とする請求項4ないし6の何れか1項に記載のポストキュアインフレータ。
【請求項8】
前記空気排除機構は、
前記加硫済みタイヤの側面部に対向配置された状態で固定され、該側面部近傍に存在する空気を掻き取る掻取部材を備えていることを特徴とする請求項3ないし7の何れか1項に記載のポストキュアインフレータ。
【請求項9】
前記加硫済みタイヤの回転時に、該加硫済みタイヤを内圧により膨張させる膨張用空気の入れ替えを行う空気入替機構を有することを特徴とする請求項1ないし8の何れか1項に記載のポストキュアインフレータ。
【請求項10】
加硫済みタイヤを保持する加硫済みタイヤ保持機構と、
保持されている該加硫済みタイヤを回転させる回転駆動機構と、
該加硫済みタイヤの両側面部近傍に存在する空気を、該加硫済みタイヤの回転と協働して、強制的に移流又は掻き取って排除するように該加硫済みタイヤの両側面部それぞれに対向して設けられた空気排除機構と
を有することを特徴とするポストキュアインフレータ。
【請求項11】
加硫済みタイヤを保持して該タイヤの円周方向に回転する加硫済みタイヤ保持機構と、
該加硫済みタイヤの円周方向に回転して該加硫済みタイヤの両側面部それぞれに空気流を発生させることで、該両側面部近傍に存在する空気を強制的に排除する空気排除機構と
を有することを特徴とするポストキュアインフレータ。
【請求項12】
加硫済みタイヤを保持して該タイヤの円周方向に回転する加硫済みタイヤ保持機構と、
該加硫済みタイヤの円周方向に回転して該加硫済みタイヤの一方の側面部に空気流を発生させることで、該一方の側面部近傍に存在する空気を強制的に排除する第1の空気排除機構と、
該加硫済みタイヤの回転と協働して、該加硫済みタイヤの他方の側面部近傍に存在する空気を強制的に排除するように該他方の側面部に対向して設けられた第2の空気排除機構と
を有することを特徴とするポストキュアインフレータ。
【請求項13】
前記空気排除機構又は前記第1及び第2の空気排除機構が、
前記加硫済みタイヤの周方向に等間隔で位置する複数の羽根部材を有していることを特徴とする請求項10ないし12の何れか1項に記載のポストキュアインフレータ。
【請求項14】
前記空気排除機構又は前記第2の空気排除機構が、
前記加硫済みタイヤの側面部に対向配置された状態で固定され、該側面部近傍に存在する空気を掻き取る掻取部材を有していることを特徴とする請求項10、12および13の何れか1項に記載のポストキュアインフレータ。
【請求項15】
加硫済みタイヤを保持して該タイヤの円周方向に回転する加硫済みタイヤ保持機構と、
該加硫済みタイヤの円周方向に回転して該タイヤの両側面部に向けてビード側から空気流を発生させる第1の空気排除機構と、
該加硫済みタイヤの回転と協働して、該加硫済みタイヤの両側面部近傍に存在する空気を強制的に排除するように該両側面部に対向して設けられた第2の空気排除機構と
を有することを特徴とするポストキュアインフレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−137054(P2006−137054A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−327584(P2004−327584)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】