説明

ポリアセン二量体

【課題】発光素子、光電変換素子、半導体などの有機機能性素子材料として使用できるポリアセン二量体を提供する。
【解決手段】式(I)のポリアセン二量体、及び多環式化合物とアルキルリチウムとを反応させ、多環式化合物の二量体を得る工程と、前記工程で得られた多環式化合物の二量体を、脱水素試薬の存在下、芳香族化する工程により、ポリアセン二量体を製造することができる。


(R〜Rは、水素、炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基又はシリル基を、nは1〜10を表わす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアセン二量体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アセン類は導電性を持つことが知られており、発光素子、光電変換素子、半導体などの有機機能性素子材料として極めて有用であるため、近年盛んに研究が行われている。
アセン類としては、例えば、本願発明者らの開示した縮合多環芳香族化合物の側鎖に置換基を導入した化合物などが知られている(特許文献1など)。この化合物は、縮合しているベンゼン環の数が増加するにつれて、理論的には、HOMOとLUMOのバンドギャップが減少するので、導電性が増大することが期待される。またこの化合物は有機溶媒に対する溶解度が高いため、塗布方式による素子の作製が可能であり実用性が高い。
【特許文献1】特開2004−331534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
有機機能性素子材料として利用可能なアセン類の更なる開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意努力した結果、アセン類の末端にハロゲン原子を有する化合物とアルキルリチウムとを反応させることにより、多環式化合物の二量体を得ることができ、更にこれを芳香族化することによって、アセン類の二量体を得ることに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、ポリアセン二量体及びその製造方法、並びにポリアセン二量体を含有する樹脂組成物及び薄膜などを提供するものである。
【0006】
本発明の第1態様では、下記式(I)で示されるポリアセン二量体が提供される。
【化4】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;又は置換基を有していてもよいシリル基であり、
nは、1〜10の整数である。]
【0007】
本発明の第2態様では、下記式(I)で示されるポリアセン二量体の製造方法であって、
【化5】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;又は置換基を有していてもよいシリル基であり、
nは、1〜10の整数である。]
下記式(II)で示される多環式化合物と
【化6】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びnは、上記の意味を有する。
1及びX2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ハロゲン原子である。]
アルキルリチウムとを反応させ、多環式化合物の二量体を得る工程と、
前記工程で得られた多環式化合物の二量体を、脱水素試薬の存在下、芳香族化する工程とを含むことを特徴とする、ポリアセン二量体の製造方法が提供される。
【0008】
本発明の第2態様において、前記X1及びX2はヨウ素であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の第2態様において、前記アルキルリチウムはn−ブチルリチウムまたはt−ブチルリチウムであることが好ましい。
【0010】
本発明の第3態様では、下記式(I)で示されるポリアセン二量体の製造方法であって、
【化7】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;又は置換基を有していてもよいシリル基であり、
nは、1〜10の整数である。]
亜鉛塩、ホウ酸塩、及び塩化マグネシウムからなる群より選ばれる1種、並びに、遷移金属触媒存在下、下記式(III)で示される多環式化合物と
【化8】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びnは、上記の意味を有する。
3は、脱離基である。]
アルキルリチウムとを反応させ、多環式化合物の二量体を得る工程と、
前記第工程で得られた多環式化合物の二量体を、脱水素試薬の存在下、芳香族化する工程とを含むことを特徴とする、ポリアセン二量体の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の第3態様において、前記X3は、ハロゲン原子であることが好ましい。
また、本発明の第3態様において、前記アルキルリチウムは、n−ブチルリチウムであることが好ましい。
また、本発明の第3態様において、前記遷移金属触媒は、ニッケル錯体又はパラジウム錯体であることが好ましい。
【0012】
本発明の第1態様、第2態様及び第3態様において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、又は置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基であることが好ましい。この場合、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8の2以上は、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基であることがより好ましく、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8の4以上は、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基であることが更に好ましい。
【0013】
本発明の第4態様では、第1態様にかかるポリアセン二量体、又は、第2態様もしくは第3態様で得られたポリアセン二量体と、その他の合成有機ポリマーとを含有する樹脂組成物が提供される。また、第1態様にかかるポリアセン二量体、又は、第2態様もしくは第3態様で得られたポリアセン二量体を含有する薄膜が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポリアセン二量体及びその製造方法が提供される。また本発明によれば、ポリアセン二量体とその他の合成有機ポリマーとを含有する樹脂組成物、並びに、ポリアセン二量体を含有する薄膜が提供される。本発明のポリアセン二量体は、好適には、発光素子、光電変換素子、半導体などの有機機能性素子材料として使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
A.本発明の第1態様
本発明の第1態様では、下記式(I)で示されるポリアセン二量体が提供される。
【化9】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びnは、上記の意味を有する。]
【0016】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;又は置換基を有していてもよいシリル基である。
【0017】
本明細書において、「C1〜C20炭化水素基」の炭化水素基は、飽和若しくは不飽和の非環式であってもよいし、飽和若しくは不飽和の環式であってもよい。C1〜C20炭化水素基が非環式の場合には、線状でもよいし、枝分かれでもよい。「C1〜C20炭化水素基」には、C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基、C4〜C20アルキルジエニル基、C6〜C18アリール基、C7〜C20アルキルアリール基、C7〜C20アリールアルキル基、C4〜C20シクロアルキル基、C4〜C20シクロアルケニル基、(C3〜C10シクロアルキル)C1〜C10アルキル基などが含まれる。
【0018】
本明細書において、「C1〜C20アルキル基」は、C1〜C10アルキル基であることが好ましく、C1〜C6アルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
【0019】
本明細書において、「C2〜C20アルケニル基」は、C2〜C10アルケニル基であることが好ましく、C2〜C6アルケニル基であることが更に好ましい。アルケニル基の例としては、制限するわけではないが、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチルアリル、2−ブテニル等を挙げることができる。
【0020】
本明細書において、「C2〜C20アルキニル基」は、C2〜C10アルキニル基であることが好ましく、C2〜C6アルキニル基であることが更に好ましい。アルキニル基の例としては、制限するわけではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル等を挙げることができる。
【0021】
本明細書において、「C4〜C20アルキルジエニル基」は、C4〜C10アルキルジエニル基であることが好ましく、C4〜C6アルキルジエニル基であることが更に好ましい。アルキルジエニル基の例としては、制限するわけではないが、1,3−ブタジエニル等を挙げることができる。
【0022】
本明細書において、「C6〜C18アリール基」は、C6〜C12アリール基であることが好ましい。アリール基の例としては、制限するわけではないが、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
【0023】
本明細書において、「C7〜C20アルキルアリール基」は、C7〜C12アルキルアリール基であることが好ましい。アルキルアリール基の例としては、制限するわけではないが、o−トリル、m−トリル、p−トリル、2,3−キシリル、2,4−キシリル、2,5−キシリル、o−クメニル、m−クメニル、p−クメニル、メシチル等を挙げることができる。
【0024】
本明細書において、「C7〜C20アリールアルキル基」は、C7〜C12アリールアルキル基であることが好ましい。アリールアルキル基の例としては、制限するわけではないが、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル、2,2−ジフェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル等を挙げることができる。
【0025】
本明細書において、「C4〜C20シクロアルキル基」は、C4〜C10シクロアルキル基であることが好ましい。シクロアルキル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。
【0026】
本明細書において、「C4〜C20シクロアルケニル基」は、C4〜C10シクロアルケニル基であることが好ましい。シクロアルケニル基の例としては、制限するわけではないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等を挙げることができる。
【0027】
本明細書において、「C1〜C20アルコキシ基」は、C1〜C10アルコキシ基であることが好ましく、C1〜C6アルコキシ基であることが更に好ましい。アルコキシ基の例としては、制限するわけではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ等がある。
【0028】
本明細書において、「C6〜C20アリールオキシ基」は、C6〜C12アリールオキシ基であることが好ましい。アリールオキシ基の例としては、制限するわけではないが、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等を挙げることができる。
【0029】
本発明の第1態様において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8で示される「C1〜C20炭化水素基」、「C1〜C20アルコキシ基」、「C6〜C20アリールオキシ基」、「アミノ基」、「シリル基」には、置換基が導入されていてもよい。この置換基としては、例えば、C1〜C10炭化水素基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ナフチル、インデニル、トリル、キシリル、ベンジル等)、C1〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C6〜C12アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリル基などを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、好ましくは1個〜4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
本明細書において、「置換基を有していてもよいアミノ基」の例としては、制限するわけではないが、アミノ、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノ等がある。
【0031】
本明細書において、「置換基を有していてもよいシリル基」の例としては、制限するわけではないが、ジメチルシリル、ジエチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、トリフェノキシシリル、ジメチルメトキシシリル、ジメチルフェノキシシリル、メチルメトキシフェニル等がある。
【0032】
本発明の第1態様において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8の1以上が水素原子以外の基であることが好ましく、2以上が水素原子以外の基であることがより好ましい。また、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8の4以上が水素原子以外の基であってもよい。本発明の第1態様においては、ポリアセン二量体に適切な置換基を適切な位置に導入することによって、ポリアセン二量体の有機溶媒に対する溶解度を高めることができる。水素原子以外の基を有するR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8の個数、並びに置換基の種類は、所望の導電性によって適宜選択することができる。
【0033】
また、本発明の第1態様においては、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、又は置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基であることが好ましい。この場合、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8の2以上が、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基であることがより好ましく、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8の4以上が、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基であってもよい。
【0034】
nは、1〜10の整数である。nは、1〜4であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、特にnは1または2であることが好ましい。例えば、nが1及び2の場合には、それぞれ、4環式、及び、5環式、即ち、ナフタセン誘導体、及び、ペンタセン誘導体となる。
【0035】
nが1である場合には、上記式(I)中、少なくともR6及びR7が水素原子以外の基であることが好ましく、少なくともR6及びR7が、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基であることがより好ましく、少なくともR6及びR7が、プロピルまたはブチルであることが特に好ましい。
【0036】
nが2以上である場合には、上記式(I)中、R1及びR4がそれぞれ2以上存在する。この場合、2以上のR1及びR4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;又は置換基を有していてもよいシリル基である。この場合において、同一のベンゼン環に結合したR1及びR4は、同一の置換基であることが好ましい。
【0037】
本発明において、R1及びR4、R2及びR3、R5及びR8、R6及びR7のいずれかの組み合わせが同一の置換基であることが好ましい。
【0038】
B.本発明の第2態様
本発明の第2態様では、本発明の第1態様にかかるポリアセン二量体の製造方法の一例が提供される。即ち、本発明の第2態様では、下記式(II)で示される多環式化合物と
【化10】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、X1及びX2は、上記の意味を有する。]
アルキルリチウムとを反応させ、多環式化合物の二量体を得る工程(以下「工程A」という)と、
前記工程で得られた多環式化合物の二量体を、脱水素試薬の存在下、芳香族化する工程(以下「工程B」という)とを含むことを特徴とする、下記式(I)で示されるポリアセン二量体の製造方法が提供される。
【0039】
【化11】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びnは、上記の意味を有する。]
【0040】
工程Aでは、下記式(II)で示される多環式化合物とアルキルリチウムとを反応させ、下記式(Ia)で示される多環式化合物の二量体が得られる。
【化12】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、n、X1及びX2は、上記の意味を有する。Rはアルキル基である。]
【0041】
上記式(II)で示される多環式化合物において、X1及びX2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ハロゲン原子である。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が好ましく、ヨウ素原子が更に好ましい。また合成が容易である点では、X1及びX2は同一のハロゲン原子であることが好ましく、X1及びX2は、ヨウ素であることが特に好ましい。式(II)で示される多環式化合物の製造方法は、後述において詳しく説明する。
【0042】
工程Aに使用されるアルキルリチウムは、一般式RLiで示される炭素−リチウム結合を有する強塩基性の化合物であり、例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどが好ましく使用される。中でも、n−ブチルリチウム又はt−ブチルリチウムが好ましく使用される。
【0043】
アルキルリチウムの使用量は、特に制限されないが、例えばn−ブチルリチウムの場合、式(II)で示される多環式化合物1モルに対し、1モル〜10モルであることが好ましく、1モル〜5モルであることがより好ましく、1モル〜2モルであることが更に好ましい。
【0044】
反応は、好ましくは−120℃〜150℃の温度範囲で行われ、より好ましくは−120℃〜50℃の温度範囲、更に好ましくは−120℃〜0℃の温度範囲で行われる。反応は常圧下で行われることが好ましい。反応時間は、0.5時間〜10時間であることが好ましく、0.5時間〜5時間がより好ましく、0.5時間〜3時間が特に好ましい。反応は常圧で行うことができる。
【0045】
反応は継続的に又はバッチ式で、一段階又はそれより多段階で、溶液中、懸濁液中、気相中又は超臨界媒体中で行える。反応を均一に進行させるためには反応は多段階で、溶液中で行うことが好ましい。
【0046】
例えば、反応を二段階で行う場合、次のスキームにより本発明の第1態様にかかるポリアセン二量体を得ることができる。
【化13】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、n、X1及びX2は、上記の意味を有する。]
【0047】
まず、溶媒中、式(II)で示される化合物と、アルキルリチウムとを反応させる。アルキルリチウムの使用量は、特に制限されないが、例えばn−ブチルリチウムの場合、式(II)で示される化合物1モルに対し、1モル〜10モルであることが好ましい。この反応は均一に進行するように温度範囲を調整しながら徐々に行うことが好ましい。例えば、−120℃〜−100℃の温度範囲で0.5時間〜1時間反応させた後、−100℃〜−78℃の温度範囲で0.5時間〜1時間反応させ、更に0℃〜10℃の温度範囲で0.5時間〜1時間反応させることが好ましい。反応終了後、水を添加して過剰の試薬を不活性にし、常法に従い、中間生成物(IIa)と副生成物(IIb)とを分離精製する。
【0048】
次いで、溶媒中、得られた中間生成物(IIa)と、アルキルリチウムとを反応させる。アルキルリチウムの使用量は、中間生成物(IIa)1モルに対し、1モル〜2モルであることが好ましい。この反応は−78℃〜0℃の温度範囲で行うことが好ましく、−78℃〜−40℃の温度範囲で行うことがより好ましく、−78℃で行うことが更に好ましい。反応時間は、1時間〜5時間であることが好ましく、1時間〜3時間であることがより好ましく、1時間〜2時間であることが更に好ましい。反応終了後は、常法に従って精製処理し、多環式化合物の二量体(1a)を得ることができる。
【0049】
また、反応を二段階で行う場合、第一の工程で得られた中間生成物(IIa)と副生成物(IIb)とを分離精製することなく、中間生成物(IIa)と副生成物(IIb)の混合物に、更にアルキルリチウムを添加して、次の工程を行ってもよい。この場合も、反応を均一に進行させるため、第一の工程では、温度範囲を調整しながら徐々に反応を行うことが好ましい。反応温度及び反応時間は、前記と同じ条件、又は近似した条件で行うことができる。
【0050】
工程Aに使用される溶媒は、式(II)で示される多環式化合物、及びアルキルリチウムを溶解できるものであれば特に制限されない。溶媒は、脂肪族又は芳香族の溶媒が用いられ、好ましくは、極性溶媒が用いられる。エーテル系溶媒、例えばテトラヒドロフラン又はジエチルエーテル;塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素;o−ジクロロベンゼンのようなハロゲン化芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシドが用いられる。あるいは、芳香族の溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素を用いてもよい。
【0051】
次に、工程Bについて述べる。工程Bでは、前記工程Aで得られた多環式化合物の二量体(Ia)を、脱水素試薬の存在下、芳香族化し、式(I)で示されるポリアセン二量体を得る。
【化14】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、上記の意味を有する。]
【0052】
工程Bに使用される脱水素化試薬は、下記式(IV)で示される化合物であることが好ましい。
【化15】

[式中、Q1、Q2、Q3、及び、Q4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ハロゲン原子又はシアノ基である。]
【0053】
上記式(IV)で示されるキノンは、上記式(I)で示される多環式化合物の二量体と反応して、1,4−ジヒドロキシ−シクロヘキサン誘導体に変換する。
【0054】
上記式(IV)で示されるキノンの場合には、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が好ましく、塩素原子又は臭素原子が更に好ましく、塩素原子が更になお好ましい。
例えば、Q1、Q2、Q3、及び、Q4が全て塩素原子であってもよい。即ち、クロラニルであってもよい。あるいは、Q1及びQ2がシアノ基であり、Q3及びQ4が塩素原子であってもよい。即ち、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノキノンであってもよい。Q1、Q2、Q3、及び、Q4が全てシアノ基であってもよい。即ち、2,3,5,6−テトラシアノキノンであってもよい。
【0055】
上記式(IV)で示されるキノンを用いた場合には、上記式(IV)で示されるキノンが更に生成物のポリアセン誘導体とDiels-Alder反応をして、副生成物を生じる場合がある。所望より、カラムクロマトグラフィー等により、副生成物を除去する。
【0056】
上記式(IV)で示されるキノンは、このような副生成物の生成を防止するために、上記式(Ia)で示される多環式化合物1モルに対し2モル用いることが特に好ましい。
【0057】
工程Bに使用される溶媒は、有機溶媒が好ましく、特に、ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物が好ましい。
【0058】
工程Bにおいて、反応は、0℃〜150℃の温度範囲で行うことが好ましく、50℃〜100℃の温度範囲で行うことがより好ましく、80℃〜120℃の温度範囲で行うことが更に好ましい。所望により、光を遮断して反応を進行させてもよい。
【0059】
また、工程Bに使用される脱水素試薬は、パラジウムを含むことが好ましい。例えば、活性炭などの炭素に担持されたパラジウム、いわゆるパラジウムカーボンとして市販されているものを好適に用いることができる。Pd/Cは、脱水素化に広く用いられている触媒であり、本発明でも従来と同様に用いることができる。
【0060】
本発明の第2態様において、上記式(II)で示される化合物は、既知の方法(J. A. Chem. Soc., 2002, 124, 576)に記載の方法に従い、またはこれに準じた方法により合成することができる。例えば、下記のようなスキームで得ることができる。
【化16】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、n、X1及びX2は、上記の意味を有する。X3及びX4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ハロゲン原子であり;M及びM'は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、金属である。]
【0061】
上記式(Va)または(Vb)で示される金属ジエンと、上記式(VI)で示されるベンゼン誘導体とを金属化合物の存在下に反応させ、上記式(II)で示される化合物を得ることができる。
【0062】
上記式(Va)または(Vb)中、M及びM'は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、金属であり、例えば、Zr、Cu、Li、Mg、Zn、Ti、Co、Cu、Bi、Pd、Ni、Bなどが好ましい。
【0063】
上記式(Va)または(Vb)で示される金属ジエンは、対応するジインを金属上で環化して調製してもよく、ジハロジエンをリチオ化してトランメタル化して調製してもよい。
【0064】
上記式(VI)で示されるベンゼン誘導体において、X3及びX4は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ハロゲン原子である。X3及びX4は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が好ましく、ヨウ素原子が更に好ましい。X3及びX4は、X1、X2と同一であることが好ましく、X3及びX4は、ヨウ素であることが特に好ましい。
【0065】
上記式(VI)で示されるベンゼン誘導体の使用量、使用される金属化合物の種類及びその使用量、反応条件などは、J. A. Chem. Soc., 2002, 124, 576に記載の条件あるいはそれに近似した条件で行うことができる。
【0066】
使用される溶媒は、金属化合物を溶解することができるものであれば特に制限されない。溶媒は、脂肪族又は芳香族の溶媒が用いられ、好ましくは、極性溶媒が用いられる。エーテル系溶媒、例えばテトラヒドロフラン又はジエチルエーテル;塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素;o−ジクロロベンゼンのようなハロゲン化芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシドが用いられる。あるいは、芳香族の溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素を用いてもよい。
【0067】
反応は好ましくは−40℃〜150℃の温度範囲で行われ、より好ましくは0℃〜100℃の温度範囲で行われ、更に好ましくは20℃〜70℃の温度範囲で行われる。反応は常圧下で行われることが好ましい。反応時間は、0.5時間〜10時間であることが好ましく、1時間〜5時間がより好ましく、1時間〜3時間が特に好ましい。反応は継続的に又はバッチ式で、一段階又はそれより多段階で、溶液中、懸濁液中、気相中又は超臨界媒体中で行える。
【0068】
反応は、金属化合物を溶媒中で安定化させるための安定化剤の存在下で行われることが好ましい。特に、金属化合物が金属塩であり、かつ、溶媒が有機溶媒のときに、安定化剤が、金属塩を有機溶媒中で安定化させる。安定化剤としては、N,N'−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)、ヘキサメチルホスホアミド等が挙げられる。
【0069】
安定化剤の使用量は、式(Va)または(Vb)で示される金属ジエン1モルに対し、1モル〜10モルであることが好ましく、1モル〜5モルであることがより好ましく、2モル〜3モルであることが更に好ましい。
【0070】
C.本発明の第3態様
本発明の第3態様では、本発明の第1態様にかかるポリアセン二量体の製造方法の他の一例が提供される。即ち、本発明の第3態様では、亜鉛塩、ホウ酸塩、及び塩化マグネシウムからなる群より選ばれる1種、並びに、遷移金属触媒存在下、下記式(III)で示される多環式化合物と
【化17】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、上記の意味を有する。
3は、脱離基である。]
アルキルリチウムとを反応させ、多環式化合物の二量体を得る工程(以下「第1工程」という)と、
前記第工程で得られた多環式化合物の二量体を、脱水素試薬の存在下、芳香族化する工程(以下「第2工程」という)とを含むことを特徴とする、下記式(I)で示されるポリアセン二量体の製造方法が提供される。
【化18】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びnは、上記の意味を有する。]
【0071】
上記式(III)で示される多環式化合物において、前記X3は、脱離基である。本発明の第3態様において、脱離基は、クロスカップリング剤の試剤として知られているものであれば特に制限なく使用される。例えば脱離基は、ハロゲン原子であることが好ましく、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素であることがより好ましい。上記式(III)で示される多環式化合物は、本発明の第2の態様において式(II)で示される多環式化合物と同様の方法で製造することができる。より具体的には、式(II)で示される多環式化合物の製造方法において、式(VI)で示されるベンゼン誘導体に代えて、対応する脱離基X3を有するベンゼン誘導体を使用すればよい。
【0072】
本発明の第3態様の第1工程に使用されるアルキルリチウムは、第2態様において例示したものの中から適宜選択して使用することができる。第1工程に使用されるアルキルリチウムは、n−ブチルリチウムであることが好ましい。
アルキルリチウムの使用量は、式(III)で示される化合物1モルに対し、n−ブチルリチウムの場合、1モルが好ましい。
【0073】
第1工程は、亜鉛塩、ホウ酸塩、及び塩化マグネシウムからなる群より選ばれる1種、並びに遷移金属触媒存在下で行われる。
【0074】
第1工程に使用される亜鉛塩、ホウ酸塩、及び塩化マグネシウムからなる群より選ばれる1種の使用量は、式(III)で示される化合物1モルに対し、1モル〜10モルであることが好ましく、1モル〜5モルであることがより好ましく、1モル〜3モルであることが更に好ましい。
【0075】
第1工程に使用される遷移金属触媒は、ニッケル錯体又はパラジウム錯体であることが好ましい。前記遷移金属触媒としては、例えば、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロニッケル、ジクロロ(2,2'−ビピリジン)ニッケル、PdCl2(2,2'− ビピリジン)などが挙げられる。第1工程に使用される遷移金属触媒の使用量は、式(III)で示される化合物1モルに対し、0.5モル以下であることが好ましく、0.0001モル〜0.5モルであることがより好ましく、0.001モル〜0.2モルであることが更に好ましい。
【0076】
第1工程に使用される溶媒は、脂肪族又は芳香族の有機溶媒が用いられ、例えば、テトラヒドロフラン又はジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素;o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;ヘキサン等の脂肪族炭化水素が用いられる。
【0077】
第1工程において、反応は、好ましくは0℃〜120℃の温度範囲で行われ、より好ましくは20℃〜80℃の温度範囲、更に好ましくは20℃〜50℃の温度範囲で行われる。反応は常圧下で行われることが好ましい。反応時間は、0.1時間〜72時間であることが好ましく、0.5時間〜12時間がより好ましく、1時間〜3時間が特に好ましい。反応は継続的に又はバッチ式で、一段階又はそれより多段階で、溶液中、懸濁液中、気相中又は超臨界媒体中で行える。
【0078】
第2工程では、前記工程で得られた多環式化合物の二量体を、脱水素試薬の存在下、芳香族化する。第2工程は、本発明の第2の態様の工程Bと同様であり、工程Bと同じ条件または類似した条件を適宜選択して行うことができる。本工程で得られた反応生成物を適宜分離精製し、上記式(I)で示されるポリアセン二量体を得ることができる。
【0079】
D.本発明の第4態様
本発明の第4態様では、第1態様にかかるポリアセン二量体、又は、第2態様もしくは第3態様で得られたポリアセン二量体と、その他の合成有機ポリマーとを含有する樹脂組成物が提供される。また、第1態様にかかるポリアセン二量体、又は、第2態様もしくは第3態様で得られたポリアセン二量体を含有する薄膜が提供される。
【0080】
本発明で提供される樹脂組成物は、例えば、ブレンドであってもよい。例えば、1重量%〜99重量%のポリアセン二量体と、99重量%〜1重量%の合成有機ポリマーとを含有する樹脂組成物が提供される。また、10重量%〜90重量%のポリアセン二量体と、90重量%〜10重量%の合成有機ポリマーとを含有する樹脂組成物も提供される。
【0081】
合成有機ポリマーには、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、エンジニアリングプラスチックス、導電性ポリマーなどが含まれる。また、合成有機ポリマーは、コポリマーであってもよい。熱可塑性ポリマーには、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−プロピレンコポリマー等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート等が含まれる。熱硬化性ポリマーには、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、ポリウレタン樹脂が含まれる。エンジニアリングプラスチックには、例えば、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン等が含まれる。合成有機ポリマーは、スチレン−ブタジエン等の合成ゴム、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂であってもよい。
【0082】
導電性ポリマーとしては、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアリレンビニレン、ポリチエニレンビニレンなどの共役系高分子、若しくはそれらに電子供与性分子または電子受容性分子をドーピングしたものが挙げられる。更に、導電性ポリマーとしては、テトラチアフルバレン、ビスエチレンジチオテトラチアフルバレンなどの電子供与性分子、若しくは、それらとテトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレンなどの電子受容性分子の組合せによる電荷移動錯体が挙げられる。
【0083】
この樹脂組成物には、更に、種々の添加剤が含まれていても良い。添加剤としては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、ドーパントなどが挙げられる。更に、樹脂組成物には、ガラスファイバー、カーボンファイバー、アラミド繊維、ボロン繊維、カーボンナノチューブ等の強化材が含まれていても良い。
【0084】
上記樹脂組成物は、当業者に公知の方法を用いて、繊維、フィルム又はシートといった薄膜の形態にすることができ、制限するわけではないが、この方法には、溶融紡糸、溶液からの紡糸、乾燥ジェット湿式紡糸、押出法、流延法、及び成形法がある。繊維、フィルム又はシートは、圧延成形、型押、二次成形又は当業者に公知の他の方法により更に加工される。
【0085】
第1態様にかかるポリアセン二量体、又は、第2態様もしくは第3態様で得られたポリアセン二量体を含有する薄膜は、発光素子、光電変換素子、半導体などの有機機能性素子材料として使用することができる。
薄膜には、ドーパントが含まれていてもよい。例えば、電子受容性分子を導入してもよい。この場合には、例えば、真空蒸着法で薄膜を作製する場合、縮合多環芳香族化合物とともに電子受容性分子を基板上に供給して薄膜のドーピングを行うことができる。またスパッタリングで薄膜作製を行う場合、縮合多環芳香族化合物と電子受容性分子の2元ターゲットを用いてスパッタリングを行い、薄膜のドーピングを行うことができる。以上のようにしてドーピングを行い導電材料の組成はドーピングの条件によって変化させることが可能である。ドーパントとしては、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアリレンビニレン、ポリチエニレンビニレンなどの共役系高分子にドーパントとして用いられる電子供与性分子または電子受容性分子を好ましく用いることができる。
【0086】
薄膜の膜厚は利用する目的により50オングストロームからミクロンオーダーまで作製が可能である。必要に応じて、薄膜上にドーパントの拡散・飛散防止、機械的強度増加のための保護層や他の材料の層を設けることができる。また、薄膜を応用した機能材料として、本発明の薄膜と他の材料の薄膜の多層膜を用いることもできる。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
有機金属化合物又はLiAlH4を用いた反応は、真空ラインテクニックを使った窒素気流下で行った。THF、ジエチルエーテル及びトルエンは、金属ナトリウムとベンゾフェノンから蒸留して無水とした。ナフタセン誘導体の二量体は、グローブボックス内で取り扱った。
【0088】
1H NMRおよび13C NMRスペクトルはJEOL JNM-AL400 またはJEOL JNM-AL600を用いて測定した。この際1H NMR、13C NMR:テトラメチルシランを基準物質とした。NMRにより収率を求めたときはメシチレンを内部標準として用いた。リサイクル分取HPLC分析は、JAI LC-9201を用いて測定した。
【0089】
すべての出発原料は、特に記載のない限り、市販品を精製せずにそのまま用いた。
DDQ、n-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ジエチルエーテル、クロロホルム、ヘキサン、メタノール、トルエンは、関東化学からそれぞれ購入した。
【0090】
出発化合物は、下記のスキームにより、既知の方法(J. A. Chem. Soc., 2002, 124, 576)に記載の方法に従って合成した。
【化19】

1a : 6,11-ジブチル-8,9-ジヨード-5,12-ジヒドロ-ナフタセン
1b : 1,2,3,4,6,11-ヘキサプロピル-8,9-ジヨード-5,12-ジヒドロ-ナフタセン
1c : 1,2,3,4,6,11-ヘキサブチル-8,9-ジヨード-5,12-ジヒドロ-ナフタセン
【0091】
実施例1
5,12,5',12'-テトラブチル- [2,2']ビナフタセニル(6a)
【化20】

【0092】
(1) 5,12,5',12'-テトラブチル-3,3'-ジヨード-6,11,6',11'-テトラヒドロ-[2,2']ビナフタセニル(2a)
【化21】

-120 ℃に冷却した6,11-ジブチル-8,9-ジヨード-5,12-ジヒドロナフタセン(1a)200 mgの20 mlジエチルエーテル溶液に、1当量のn-ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.59 M)を滴下し、0.5時間攪拌した。攪拌しながら1時間かけて-78 ℃に昇温した。更に0 ℃で0.5 時間攪拌した後、反応混合物に水を添加し急冷した。ジエチルエーテルで抽出し、硫酸化マグネシウムで乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ジエチルエーテル/ヘキサン:1/10)で精製し、化合物(2a)および(3a)を83:17の比で得た。合計95 %の収率であった。次いで、化合物(2a)および(3a)をクロロホルムを溶媒としてリサイクル分取HPLC分析を行った。
【0093】
1H NMR (δ, ppm, CDCl3) 8.68 (s, 2H), 7.98 (s, 2H), 7.33-7.37 (m, 4H), 7.20-7.23 (m, 4H), 4.10 (s, 4H), 4.07 (s, 4H), 3.13-3.21 (m, 8H), 1.46-1.72 (m, 16H), 1.08 (t, J=7.2Hz, 6H), 0.94 (t, J=7.2Hz, 6H). 13C NMR (δ, ppm, CDCl3) 144.6(2C), 137.4 (4C), 134.9(2C), 134.5(2C), 134.4(2C), 133.03(2C), 132.16(2C), 131.54(2C), 130.22(2C), 126.83(4C), 126.33 (4C), 126.15(2C), 97.28(2C), 33.93 (4C), 33.15(2C), 32.90(2C), 28.23(2C), 28.13(2C), 23.19(2C), 23.06(2C), 14.16(2C), 14.13(2C). MS (FAB), C52H56I2,Calcld: 934.2471, found: 934.2491
【0094】
(2) 5,12,5',12'-テトラブチル-6,11,6',11'-テトラヒドロ-[2,2']ビナフタセニル(4a)
【化22】

化合物(2a)および(3a)混合物(2a/3a=83/17)のTHF溶液100 mgに、2当量のt-ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.0 M)を滴下し、1時間攪拌した後、過剰のメタノールを添加し、10分間攪拌した。次いで、反応生成物をジエチルエーテルで抽出し、硫酸化マグネシウムで乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ジエチルエーテル/ヘキサン:1/10)で精製し、化合物(4a)および(5a)を83:17の比で得た。合計99 %の収率であった。次いで、化合物(2a)および(3a)をクロロホルムを溶媒としてリサイクル分取HPLC分析を行った。
【0095】
1H NMR (δ, ppm, CDCl3) 8.40 (s, 2H), 8.18 (d, J=8.8Hz, 2H), 7.85 (dd, J1=2Hz, J2=8.8Hz, 2H), 7.34-7.38 (m, 4H), 7.18-7.24 (m, 4H), 4.12(s, 4H), 4.11 (s, 4H), 3.30 (t, J=8Hz, 4H), 3.24 (t, J=4hz, 4H), 1.55-1.78 (m, 16H), 1.02-1.09 (m, 12H). 13C NMR (δ, ppm, CDCl3) 137.7 (4C), 137.6 (2C), 133.6(2C), 133.1(2C), 132.8(2C), 132.6(2C), 131.3(2C), 130.1(2C), 126.8(4C), 126.2 (4H), 125.1(2C), 124.5 (4C), 122.8(2C), 33.9(2C), 33.8(2C), 32.9(4C), 28.4(2C), 28.3(2C), 23.2(4C), 14.2(2C), 14.1(2C). MS (FAB), C52H58 , Calcd: 682.4538, found: 682.4545.
【0096】
(3) 5,12,5',12'-テトラブチル- [2,2']ビナフタセニル(6a)
【化23】

【0097】
化合物(4a)70 mgの20 mlトルエン溶液に、2当量のDDQを滴下し、100 ℃で3時間攪拌した。化合物(6a)をNMR収率85 %で得た。反応混合物を窒素気流下、ろ過して別のフラスコに移し、トルエンから3回再結晶し、深紅粉末として化合物(6a)を得た。単離収率は30 %であった。
【0098】
1H NMR (δ, ppm, CDCl3) 8.97 (s, 2H), 8.96 (s, 2H), 8.71 (s, 2H), 8.48 (d, J=9Hz, 2H), 8.07 (d, J=3Hz, 2H), 8.05 (d, J=3Hz, 2H), 7.96 (dd, J1= 9Hz, J2=1Hz, 2H), 7.43 (d, J=3Hz, 2H), 7.41 (d, J=3Hz, 2H), 3.91 (t, J=7.8Hz, 4H), 3.84 (t, J=7.8Hz, 4H), 1.94-2.05 (m, 8H), 1.71-1.76 (m, 8H), 1.12 (t, J=7.2Hz, 6H). 13C NMR (δ, ppm, CDCl3) 136.7 (2H), 134.2 (2H), 133.9 (2H), 131.0 (2H), 130.9 (2H), 129.01 (2H), 129.0 (2H), 128.7 (2H), 128.5 (4H), 127.9 (2H), 126.3 (2H), 125.2 (2H), 125.1 (2H), 124.5 (2H), 123.78 (2H), 123.70 (2H), 123.2 (2H), 33.75 (2H), 33.71 (2H), 28.38 (4H), 23.60 (2H), 23.58 (2H), 14.25 (2H), 14.19 (2H). MS (FAB): C52H54 cald: 678.4246, found: 678.4210.
【0099】
実施例2
5,12,5',12'-テトラブチル-6,11,6',11'-テトラヒドロ-[2,2']ビナフタセニル(4a)
【化24】

【0100】
-120 ℃に冷却した6,11-ジブチル-8,9-ジヨード-5,12-ジヒドロナフタセン(1a)200 mgの20 mlジエチルエーテル溶液に、1当量のn-ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.59 M)を滴下し、1 時間攪拌した。攪拌しながら1時間かけて-78 ℃に昇温した。更に0 ℃で0.5 時間攪拌した。再び-78 ℃に冷却し、2当量のt-ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.0 M)を滴下し、1 時間攪拌した後、過剰のメタノールを添加し、10分間攪拌した。次いで、反応生成物をジエチルエーテルで抽出し、硫酸化マグネシウムで乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ジエチルエーテル/ヘキサン:1/10)で精製し、化合物(4a)および(5a)を80:20の比で得た。NMR収率は合計90 %であった。次いで、化合物(4a)および(5a)をクロロホルムを溶媒としてリサイクル分取HPLC分析を行った。淡黄色粉末として化合物(4a)を得た。単離収率は61 %であった。
得られた化合物(4a)は、実施例1と同様にして芳香族化した。
【0101】
実施例3
5,7,8,9,10,12,5',7',8',9',10',12'-ドデカプロピル- [2,2']ビナフタセニル(6b)
【化25】

【0102】
(1) 5,7,8,9,10,12,5',7',8',9',10',12'-ドデカプロピル-6,11,6',11'-テトラヒドロ-[2,2']ビナフタセニル(4b)
8,9-ジヨード-1,2,3,4,6,11-ヘキサプロピル-5,12-ジヒドロナフタセン(1b)を出発物質として使用したこと以外は、実施例2と同様の方法で反応を行った。反応混合物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ジエチルエーテル/ヘキサン:1/10)で精製し、化合物(4b)および1,2,3,4,6,11-ヘキサプロピル-5,12-ジヒドロナフタセン(5c)(5b)を85:15の比で得た。NMR収率は合計88 %であった。次いで、化合物(4b)および(5b)をクロロホルムを溶媒としてリサイクル分取HPLC分析を行った。淡黄色粉末として化合物(4b)を得た。単離収率は31 %であった。
【0103】
1H NMR (δ, ppm, CDCl3) 8.383(s, 2H), 8.381(s, 2H), 8.16(d, J=8.4Hz, 2H), 7.84 (dd, J1=1.2Hz, J2=9.0Hz, 2H), 4.08(s, 4H), 4.07(s, 4H), 3.29(m, 4H), 3.24(m, 4H), 2.76-2.79(m, 8H), 2.56-2.59(m, 8H), 1.77-1.86(m, 8H), 1.62-1.66(m, 8H), 1.52-1.56(m, 8H), 1.16-1.25(m, 24H), 1.06(t, J=7.2Hz, 12H) 13C NMR (δ, ppm, CDCl3) 137.46, 136.60, 135.09, 135.07, 134.73, 134.30, 134.09, 134.08, 132.16, 131.88, 131.37, 130.14, 125.12, 124.30, 122.89, 32.36, 32.27, 31.03, 30.49, 30.44, 25.08, 24.69, 24.39, 24.36, 15.13, 15.09, 14.97, 14.90. MS (FAB), C72H98 , Calcd: 962.7668, found: 962.7657.
【0104】
(2) 5,7,8,9,10,12,5',7',8',9',10',12'-ドデカプロピル- [2,2']ビナフタセニル(6b)
化合物(4b)を出発物質として、実施例1と同様の方法で芳香族化した。化合物(6b)をNMR収率82 %で得た。反応混合物を窒素気流下、セライトろ過して別のフラスコに移し、トルエンから3回再結晶し、深紅粉末として化合物(6b)を得た。単離収率は35 %であった。
【0105】
1H NMR (δ, ppm, CDCl3) 9.02 (s, 2H), 9.01 (s, 2H), 8.61 (s, 2H), 8.40 (d, J=7.8Hz, 2H), 7.86 (d, J=7.8Hz, 2H), 3.78-3.81(m, 4H), 3.72-3.75(m, 4H), 3.15-3.18(m, 8H), 2.72-2.75(m, 8H), 1.94-2.10(m, 8H), 1.61-1.84(m, 8H), 1.57-1.61(m, 8H), 1.07-1.25(m, 36H). 13C NMR (δ, ppm, CDCl3) 136.56, 136.51, 136.48, 133.71, 133.45, 133.41, 129.62, 129.51, 129.04, 128.86, 128.21, 127.81, 127.79, 126.23, 124.23, 123.22, 120.19, 120.10, 32.86, 31.84, 30.93, 30.85, 24.93, 24.90, 24.86, 24.45, 15.16, 15.11, 15.07, 15.04. MS (FAB): C72H94 cald: 958.7355, found: 958.7371.
【0106】
実施例4
5,7,8,9,10,12,5',7',8',9',10',12'-ドデカブチル- [2,2']ビナフタセニル(6c)
【化26】

【0107】
(1) 5,7,8,9,10,12,5',7',8',9',10',12'-ドデカブチル-6,11,6',11'-テトラヒドロ-[2,2']ビナフタセニル(4c)
8,9-ジヨード-1,2,3,4,6,11-ヘキサブチル-5,12-ジヒドロナフタセン(1c)を出発物質として使用したこと以外は、実施例2と同様の方法で反応を行った。反応混合物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(ジエチルエーテル/ヘキサン:1/10)で精製し、化合物(4c)および1,2,3,4,6,11-ヘキサブチル-5,12-ジヒドロナフタセン(5c)を75:25の比で得た。NMR収率は合計88 %であった。次いで、化合物(4c)および(5c)をクロロホルムを溶媒としてリサイクル分取HPLC分析を行った。淡黄色粉末として化合物(4c)を得た。単離収率は32 %であった。
【0108】
1H NMR (δ, ppm, CDCl3) 8.383(s, 2H), 8.378 (s, 2H), 8.16(d, J=8.4Hz, 2H), 7.83 (dd, J1=1.2Hz, J2=9.0Hz, 2H), 4.08(s, 4H), 4.07(s, 4H), 3.26-3.31(m, 4H), 3.21-3.26(m, 4H), 2.78-2.81(m, 8H), 2.58-2.60(m, 8H), 1.46-1.78(m, 24H), 1.01-1.08(m, 24H), 1.00-1.08(t, J=7.2Hz, 12H) 13C NMR (δ, ppm, CDCl3) 137.51, 136.59, 135.08, 135.06, 134.65, 134.21, 133.91, 133.90, 132.23, 131.95, 131.35, 130.13, 125.10, 124.34, 122.84, 33.89, 33.52, 33.19, 30.44, 30.38, 29.56, 28.55, 23.64, 23.58, 23.54, 14.10, 14.08. MS (FAB), C84H122 , Calcd: 1130.9546, found: 1130.9550.
【0109】
(2) 5,7,8,9,10,12,5',7',8',9',10',12'-ドデカブチル- [2,2']ビナフタセニル(6c)
化合物(4c)を出発物質として、実施例1と同様の方法で芳香族化した。化合物(6c)をNMR収率80 %で得た。反応混合物を窒素気流下、セライトろ過して別のフラスコに移し、トルエンから3回再結晶し、深紅粉末として化合物(6c)を得た。単離収率は29 %であった。
【0110】
1H NMR (δ, ppm, CDCl3) 9.04 (s, 2H), 9.03 (s, 2H), 8.61 (s, 2H), 8.39 (d, J=7.8Hz, 2H), 7.85(d, J=7.8Hz, 2H), 3.79-3.83(m, 4H), 3.74-3.76(m, 4H), 3.18-3.20(m, 8H), 2.75-2.77(m, 8H), 1.63-1.84(m, 48H), 0.98-1.03(m, 36H). 13C NMR (δ, ppm, CDCl3) 136.75, 136.73, 136.52, 136.49, 133.82, 133.50, 133.47, 129.65, 129.56, 128.76, 128.07, 127.76, 127.69, 126.21, 124.24, 123.10, 120.09, 120.02, 33.89, 33.85, 33.71, 33.43, 30.18, 29.24, 28.52, 24.24, 23.84, 23.80, 23.77, 23.61. MS (FAB): C84H118 cald: 1126.9234, found: 1126.9240.



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で示されるポリアセン二量体。
【化1】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;又は置換基を有していてもよいシリル基であり、
nは、1〜10の整数である。]
【請求項2】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8が、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子、又は置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基である、請求項1に記載のポリアセン二量体。
【請求項3】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8の2以上が、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基である、請求項1に記載のポリアセン二量体。
【請求項4】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8の4以上が、置換基を有していてもよいC1〜C10アルキル基である、請求項1に記載のポリアセン二量体。
【請求項5】
下記式(I)で示されるポリアセン二量体の製造方法であって、
【化2】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;又は置換基を有していてもよいシリル基であり、
nは、1〜10の整数である。]
下記式(II)で示される多環式化合物と
【化3】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、上記の意味を有する。
1及びX2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ハロゲン原子である。]
アルキルリチウムとを反応させ、多環式化合物の二量体を得る工程と、
前記工程で得られた多環式化合物の二量体を、脱水素試薬の存在下、芳香族化する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
1及びX2が、ヨウ素である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
アルキルリチウムが、n−ブチルリチウム又はt−ブチルリチウムである、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜4の何れかに記載のポリアセン二量体、又は、請求項5〜7の何れかに記載の製造方法で得られたポリアセン二量体と、その他の合成有機ポリマーとを含有する樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜4の何れかに記載のポリアセン二量体、又は、請求項5〜7の何れかに記載の製造方法で得られたポリアセン二量体を含有する薄膜。


【公開番号】特開2007−238565(P2007−238565A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66617(P2006−66617)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】