説明

ポリアミド系多層フィルム

【課題】本発明は、屈曲による耐ピンホール性及び繰り返し接触による耐ピンホール性の両方を兼ね備えたポリアミド系多層フィルム、並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】ナイロン−6を50〜100重量%、ナイロン−6/6,6共重合体を0〜30重量%及び芳香族ポリアミドを0〜20重量%含むポリアミド層(A)、ナイロン−6を35〜96重量%、ナイロン−6/6,6共重合体を3〜30重量%、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体を1〜15重量%及び芳香族ポリアミドを0〜20重量%含むポリアミド層(B)、並びにエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を含むバリア層(C)が、A/B/C/B/A、又はB/A/C/A/Bの順で積層されたポリアミド系多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲による耐ピンホール性と繰り返し接触による耐ピンホール性の改善されたポリアミド系多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からナイロン樹脂を含む多層フィルムは、ガスバリア性、強靭性等を有するフィルムとして各方面で多用されている。例えば、ポリアミド層/バリア層/ポリアミド層の3層からなるフィルムは包装用として広く利用されている。
【0003】
この多層フィルムは、例えば市場に流通する食品等の包装フィルムとして用いられるが、その搬送、運搬等においてピンホールを生じる場合があり、このピンホールのために多層フィルムの優れたガスバリア性が阻害される結果となっていた。そのため、市場からは更なる強靭性の向上、特に耐ピンホール性の向上が望まれている。
【0004】
この多層フィルムのピンホールは、屈曲により発生するものと、繰り返しの接触による磨耗が原因で発生するものとがある。一般に、ナイロン樹脂層が硬いと、繰り返し接触の摩耗によるピンホールはできにくくなるが、屈曲によるピンホールが発生しやすくなる。一方、ナイロン樹脂層が柔らかいと、屈曲によるピンホールが発生しにくいが、繰り返しの接触による磨耗でピンホールが出来やすくなる。そのため、屈曲と繰り返しの接触のいずれに対しても、高い耐ピンホール性を有する多層フィルムが強く望まれている。
【0005】
かかる問題を解決するべく、本出願人は所定の5層構成のポリアミドフィルムが屈曲及び繰り返し接触による耐ピンホール性に優れることを報告している(特許文献1及び2)。しかしながら、繰り返し接触による耐ピンホール性においてさらなる改善の余地があった。
【特許文献1】特開2005−288923号公報
【特許文献2】特開2006−35511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、屈曲による耐ピンホール性及び繰り返し接触による耐ピンホール性の両方を兼ね備えたポリアミド系多層フィルム、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意研究を行った結果、ナイロン−6を50〜100重量%、ナイロン−6/6,6共重合体を0〜30重量%及び芳香族ポリアミドを0〜20重量%含むポリアミド層(A)、ナイロン−6を35〜96重量%、ナイロン−6/6,6共重合体を3〜30重量%、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体を1〜15重量%及び芳香族ポリアミドを0〜20重量%含むポリアミド層(B)、並びにエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を含むバリア層(C)が、A/B/C/B/A、又はB/A/C/A/Bの順で積層されたポリアミド系多層フィルムが、屈曲による耐ピンホール性及び繰り返し接触による耐ピンホール性の両方を兼ね備えることを見出した。この知見に基づき、さらに研究を重ねて本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下のポリアミド系多層フィルム及びその製造方法を提供する。
【0009】
項1. ナイロン−6を50〜100重量%、ナイロン−6/6,6共重合体を0〜30重量%及び芳香族ポリアミドを0〜20重量%含むポリアミド層(A)、ナイロン−6を35〜96重量%、ナイロン−6/6,6共重合体を3〜30重量%、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体を1〜15重量%及び芳香族ポリアミドを0〜20重量%含むポリアミド層(B)、並びにエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を含むバリア層(C)が、A/B/C/B/A、又はB/A/C/A/Bの順で積層されたポリアミド系多層フィルム。
【0010】
項2. 前記芳香族ポリアミドが結晶性芳香族ポリアミド又は非晶性芳香族ポリアミドである項1に記載のポリアミド系多層フィルム。
【0011】
項3. 前記結晶性芳香族ポリアミドがポリメタキシリレンアジパミド(MXD−ナイロン)である、項1又は2に記載のポリアミド系多層フィルム。
【0012】
項4. 前記非晶性芳香族ポリアミドがヘキサメチレンジアミン−テレフタル酸−ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸の共重合体である項1〜3のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【0013】
項5. 前記ナイロン−6/6,6共重合体におけるナイロン−6,6の共重合比率が5〜40モル%である項1〜4のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【0014】
項6. MD方向に2.5〜4.5倍、TD方向に2.5〜5倍に二軸延伸して得られる多層フィルムである項1〜5のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【0015】
項7. 前記ポリアミド系多層フィルムの総厚みが10〜50μmである項1〜6のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【0016】
項8. さらに一方の面にシール層を有する項1〜7のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【0017】
項9. 項1〜8のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルムの両端を、円筒状になるように接着して筒状物とし、さらに該筒状物の開口部の一端を接着して得られる包装用袋。
【0018】
項10. 食品包装用である項9に記載の包装用袋。
【0019】
項11. ナイロン−6を50〜100重量%、ナイロン−6/6,6共重合体を0〜30重量%及び芳香族ポリアミドを0〜20重量%含むポリアミド層(A)用樹脂組成物、ナイロン−6を35〜96重量%、ナイロン−6/6,6共重合体を3〜30重量%、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体を1〜15重量%及び芳香族ポリアミドを0〜20重量%含むポリアミド層(B)用樹脂組成物、並びにエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を含むバリア層(C)用樹脂組成物を、A/B/C/B/A、又はB/A/C/A/Bの順になるように共押出により積層し、縦横2軸に延伸し、加熱処理することを特徴とするポリアミド系多層フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明のポリアミド系多層フィルムは、屈曲に耐えるソフト性と、繰り返し接触による磨耗に耐える硬さを備えた、優れた耐ピンホール性を有している。
【0021】
本発明のポリアミド系多層フィルムは、さらに延伸性、突刺強度、衝撃強度に優れている。
【0022】
そのため、重量物の包装、とりわけ、餅、ウィンナー等の食品の包装に好適である。また低温の状態で輸送される冷凍食品の包装に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
ポリアミド系多層フィルム
本発明のポリアミド系多層フィルムは、ナイロン−6を50〜100重量%、ナイロン−6/6,6共重合体を0〜30重量%及び芳香族ポリアミドを0〜20重量%含むポリアミド層(A)、ナイロン−6を35〜96重量%、ナイロン−6/6,6共重合体を3〜30重量%、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体を1〜15重量%及び芳香族ポリアミドを0〜20重量%含むポリアミド層(B)、並びにエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を含むバリア層(C)が、A/B/C/B/A、又はB/A/C/A/Bの順で積層されたポリアミド系多層フィルムである。
【0024】
即ち、バリア層(C)の両面を、柔軟性即ち対屈曲性を備えた2層のポリアミド層(B)と硬さ即ち耐摩耗性を備えた2層のポリアミド層(A)でそれぞれサンドイッチし少なくとも5層の積層構造を有している。そのため、硬さと柔軟性を兼ね備え、屈曲や繰り返し接触に対する優れた耐ピンホール性を有している。
【0025】
ポリアミド層(A)は、ナイロン−6(ポリカプラミド)を50〜100重量%、好ましくは65〜100重量%、より好ましくは80〜100重量%含んでいる。
【0026】
ポリアミド層(A)は、ナイロン−6/6,6共重合体(カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体)を0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0〜10重量%含んでいる。ナイロン−6/6,6共重合体はナイロン−6(ポリカプラミド)とナイロン−6,6(ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート)の共重合体であり、ナイロン−6,6の共重合比は5〜40モル%、好ましくは10〜30モル%である。
【0027】
ポリアミド層(A)は、芳香族ポリアミドを0〜20重量%、好ましくは0〜15重量%、より好ましくは0〜10重量%含んでいる。芳香族ポリアミドとしては、非晶性芳香族ポリアミド或いは結晶性芳香族ポリアミドが挙げられる。
【0028】
非晶性芳香族ポリアミドとしては、例えば、その主骨格が、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸及び/又はイソフタル酸が重合したものが挙げられる。具体的には、ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン−テレフタル酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン−テレフタル酸−ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸の共重合体などを例示できる。
【0029】
結晶性芳香族ポリアミドとしては、例えば、芳香環を含むジアミン成分とジカルボン酸成分とからなるポリアミドであり、具体的には、キシリレンジアミン系ポリアミドである。具体的にはメタキシリレンジアミンとアジピン酸からなるポリアミド、即ちポリメタキシリレンアジパミド(MXD−6ナイロン)が挙げられる。
【0030】
ポリアミド層(B)は、ナイロン−6を35〜96重量%、好ましくは50〜96重量%、より好ましくは62〜93重量%含んでいる。
【0031】
ポリアミド層(B)は、ナイロン−6/6,6共重合体を3〜30重量%、好ましくは3〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%含んでいる。ナイロン−6,6の共重合比は5〜40モル%、好ましくは10〜30モル%である。前記ポリアミド層(A)で挙げたナイロン−6/6,6を用いることができる。
【0032】
ポリアミド層(B)は、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体を1〜15重量%、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは2〜8重量%含んでいる。変性エチレン−酢酸ビニル共重合体とは、(1)−OCOCHを部分的にけん化した樹脂、(2)−OCOCHを部分的に−OCOCHCHに置換した樹脂、(3)無水マレイン酸等の酸無水物を部分的にグラフト重合した樹脂をあげることができる。好ましくは、−OCOCHを部分的にけん化した樹脂である。
【0033】
ポリアミド層(B)は、芳香族ポリアミドを0〜20重量%、好ましくは0〜15重量%、より好ましくは0〜10重量%含んでいる。芳香族ポリアミドとしては、前記ポリアミド層(A)で挙げた非晶性芳香族ポリアミド或いは結晶性芳香族ポリアミドを用いることができる。
【0034】
バリア層(C)を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物とは、特に制限はないが、エチレン含有量55モル%以下、好ましくは20〜50モル%、より好ましくは26〜44モル%であり、酢酸ビニル成分のけん化度が90モル%以上、好ましくは約95モル%以上のものを例示できる。
【0035】
本発明の多層フィルムの好ましい態様としては、ナイロン−6からなるポリアミド層(A)、ナイロン−6を60〜95重量%、ナイロン−6/6,6共重合体を5〜30重量%(好ましくは15〜25重量%)及び変性エチレン−酢酸ビニル共重合体を1〜8重量%含むポリアミド層(B)、並びにバリア層(C)が、A/B/C/B/A又はB/A/C/A/Bの順で積層されたものが挙げられる。
【0036】
本発明の多層フィルムの他の好ましい態様としては、ナイロン−6からなるポリアミド層(A)、ナイロン−6を60〜90重量%、ナイロン−6/6,6共重合体を5〜30重量%(好ましくは5〜20重量%)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体を1〜8重量%及び芳香族ポリアミドを5〜15重量%含むポリアミド層(B)、並びにバリア層(C)が、A/B/C/B/Aの順で積層されたものが挙げられる。
【0037】
本発明の多層フィルムの他の好ましい態様としては、ナイロン−6を90〜97重量%及び芳香族ポリアミドを3〜10重量%含むポリアミド層(A)、ナイロン−6を60〜95重量%、ナイロン−6/6,6共重合体を5〜30重量%(好ましくは7〜25重量%)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体を1〜8重量%含むポリアミド層(B)、並びにバリア層(C)が、A/B/C/B/Aの順で積層されたものが挙げられる。
【0038】
なお、本発明の多層フィルムの各層中には、本発明の目的を阻害しない範囲で、異種のポリマーを混合しても良いし、また酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線吸収剤などの有機添加剤が通常添加される程度添加されても良い。
【0039】
2つのポリアミド層(A)及び2つのポリアミド層(B)の組成及び配合量は、それぞれ同一又は異なっていてもよいが、後述する多層フィルムの製造における簡便さ等の点から、同一であることが好ましい。
【0040】
本発明のフィルム全体の厚みは、10〜50μm、好ましくは10〜30μmである。ポリアミド層(A)及びポリアミド層(B)の合計厚みは、3〜49μm、好ましくは6〜29μmである。そのうちポリアミド層(A)の合計厚みは、1〜47μm、好ましくは2〜27μmであり、ポリアミド層(B)の合計厚みは、1〜47μm、好ましくは2〜27μmである。バリア層(C)の厚みは1〜20μm、好ましくは1〜15μmである。
【0041】
なお、本発明の多層フィルムの外層或いは各層間には、必要に応じてシーラント層、接着樹脂層などを設けても良い。
【0042】
製造方法
本発明のポリアミド系多層フィルムは、例えば各層の樹脂組成物を上記したA/B/C/B/A、又はB/A/C/A/Bの順序になるように、Tダイスより冷却水が循環するチルロール上に共押出せしめフラット状の多層フィルムとして得ることができる。
【0043】
得られたフィルムは、一軸延伸又は二軸延伸(同時二軸延伸、逐次二軸延伸)しても良い。延伸倍率は例えば、縦延伸(MD)2.5〜4.5倍、横延伸(TD)2.5〜5.0倍である。
【0044】
例えば、逐次二軸延伸の場合、50〜80℃のロール延伸機により2.5〜4.5倍に縦延伸し、80〜140℃の雰囲気のテンター延伸機により2.5〜5.0倍に横延伸せしめ、引き続いて同テンターにより180〜220℃雰囲気中で熱処理して得ることができる。
【0045】
本発明の多層フィルムは一軸延伸または二軸延伸(同時二軸延伸、逐次二軸延伸)しても良く得られた多層フィルムは、必要ならばその両表面又は片表面にコロナ放電処理を施すこともできる。
【0046】
本発明の多層フィルムの「屈曲による耐ピンホール性」については、後述の実施例に記載のゲルボフレックステスターを用いて評価する。本発明の多層フィルムでは、5℃の条件下において1000回屈曲の耐ピンホール性の評価で発生するピンホール数が3個以下、好ましくは2個以下、より好ましくは1個以下である。また、23℃条件下において1000回屈曲の耐ピンホール性の評価で発生するピンホール数が0個である。
【0047】
本発明の多層フィルムの「繰り返し接触による耐ピンホール性」については、後述の実施例に記載の方法により評価する。具体的には、錐状のアルミ製治具に多層フィルムを装着し、錐状の頂点を多層フィルムを介してボール紙に接触させる。次に、治具に63gの荷重を載せて湿度65%の条件下、2700mm/分の速度で、移動距離45mmの範囲で摺動させて、摺動回数50回単位でピンホールが開いたかどうかを確認する(例えば、図1)。ピンホールの発生は、フィルムに治具の頂点が当たっていたところに浸透液を滴下して判定する。かかる測定条件において、本発明の多層フィルムでは、ピンホールが開くまでの摺動回数が、250回以上、好ましくは300回以上、より好ましくは350回以上である。
【0048】
さらに、本発明の多層フィルムは、延伸性に優れておりフィルムの延伸破断はほとんど生じない。また、突き刺し強度(JIS Z−1707)が8N以上、さらに9N以上と優れている。また、インパクトテスターを用いた衝撃強度が0.8J以上、さらに0.85J以上と優れている。また、熱収縮率もMDで1.6%未満であり、TDで0.6%未満であり小さい値となる。
【0049】
本発明の多層フィルムは、強靱性、屈曲および繰り返し接触による耐ピンホール性に優れているので、重量物の包装、とりわけ、餅、ウィンナー等の食品の包装などに好適である。また、低温の状態で輸送される冷凍食品の包装に好適である。さらに、本発明の多層フィルムは、高い透明性を有しているため、食品包装物としたとき内容物(食品)の目視が容易である。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明を、実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0051】
下記の実施例及び比較例で使用する原料樹脂を下記に示す。
【0052】
ナイロン−6(Ny6):1022FDX04(宇部興産株式会社製)
ナイロン−6/66コポリマー(Ny−6/66):5034B(宇部興産株式会社製):ナイロン66の共重合比率20モル%
エチレン酢酸ビニル共重合体けん化物:日本合成化学工業(株)製:DC3203FB(エチレン含有率32mol%、けん化度99.6%、MFR3.2g/10min(210℃、荷重2160g))
非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスNy):X−21(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)
結晶性芳香族ポリアミド(MXDNy):S−6011(三菱ガス化学(株)製)
【0053】
実施例1
ナイロン−6(100重量%)をポリアミド層(A)用の樹脂組成物とした。
ナイロン−6(77重量%)、ナイロン−6/66コポリマー(20重量%)及び変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(3重量%)を配合して、ポリアミド層(B)用の樹脂組成物とした。
エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物をバリア層(C)用の樹脂組成物とした。
【0054】
各層を構成する樹脂組成物を、A/B/C/B/Aの順序になるように、Tダイスより冷却水が循環するチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の5層フィルムを得た。この5層フィルムを、65℃のロール延伸機により3.0倍に縦延伸し、次いで110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.0倍に横延伸し、さらに同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理して厚さ15μmのフィルムを得た。各層の厚さは3/3/3/3/3(μm)であった。
【0055】
実施例2
ナイロン−6(95重量%)及びMXDNy(5重量%)を配合してポリアミド層(A)用の樹脂組成物とした。
【0056】
ナイロン−6(77重量%)、ナイロン−6/66コポリマー(20重量%)及び変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(3重量%)を配合して、ポリアミド層(B)用の樹脂組成物とした。
【0057】
エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物をバリア層(C)用の樹脂組成物とした。
【0058】
実施例1と同様にしてA/B/C/B/Aの厚さ15μmの5層フィルムを得た。各層の厚さは3/3/3/3/3(μm)であった。
【0059】
実施例3
ナイロン−6(95重量%)及びアモルファスNy(5重量%)を配合してポリアミド層(A)用の樹脂組成物とした。
【0060】
ナイロン−6(77重量%)、ナイロン−6/66コポリマー(20重量%)及び変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(3重量%)を配合して、ポリアミド層(B)用の樹脂組成物とした。
【0061】
エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物をバリア層(C)用の樹脂組成物とした。
【0062】
実施例1と同様にしてA/B/C/B/Aの厚さ15μmの5層フィルムを得た。各層の厚さは3/3/3/3/3(μm)であった。
【0063】
実施例4〜7
表1に記載の組成及び配合して、実施例1と同様にしてA/B/C/B/Aの厚さ15μmの5層フィルムを得た。各層の厚さは3/3/3/3/3(μm)であった。
【0064】
実施例8
各層を構成する樹脂組成物を、B/A/C/A/Bの順序とすること以外は、実施例1と同様にして厚さ15μmの5層フィルムを得た。各層の厚さは3/3/3/3/3(μm)であった。
【0065】
【表1】

【0066】
比較例1〜11
表2に記載の組成及び配合して、実施例1と同様にしてA/B/C/B/Aの厚さ15μmの5層フィルムを得た。各層の厚さはいずれも3/3/3/3/3(μm)であった。
【0067】
【表2】

【0068】
試験例1(特性評価結果)
実施例1〜8及び比較例1〜11に記載の5層フィルムについて下記の特性を評価した。その結果を表3に示す。
【0069】
[延伸性]
24時間の製膜において延伸破断の発生した回数を数えた。
破断発生回数:0〜1回・・・○、 2回・・・△、 3回以上・・・×
【0070】
[耐磨耗性]
形が錐状のアルミ製の治具に、テープ等を用いてフィルムを装着し、錐状の治具の頂点を、フィルムを介してボール紙(コクヨCampus 板目 美膿判用 430g/m2)に接触させた。頂点のRは摺動方向R=0.1〜1.0mm、摺動方向と直角の方向R=0.1〜1.0mmとした。次に、治具に63gの荷重を乗せた。湿度65%の条件下で、治具を2700mm/分の速度で、かつ移動距離45mmの範囲でボール紙に対して平行に摺動させ、摺動回数50回単位で測定し、ピンホールが開いた時点での回数を測定した。例えば、300回で開いて250回で開かない場合は300回とした。
【0071】
ピンホールの発生は、フィルムに治具の頂点が当たっていたところに浸透液を滴下して、白色紙の上で浸透するか否かにより判定した。その結果を表3に示す。
300回以上・・・○、 250回・・・△、 200回以下・・・×
なお、図1に測定装置の模式図を示す。また、図2に錐状のアルミ製治具の一例を示す。
【0072】
[突刺強度]
JIS Z-1707に従い突刺強度(N)を測定した。
8N以上・・・○、 7N以上〜8N未満・・・△、 7N未満・・・×
【0073】
[衝撃強度]
インパクトテスター((株)東洋精機製作所 製)を用いて衝撃強度(J)を測定した。
0.8J以上・・・○、 0.7以上〜0.8未満・・・△、 0.7未満・・・×
【0074】
[耐屈曲性]
理化学工業(株)製のゲルボフレックステスターを用いて測定した。折り径150mm、長さ300mmの筒状に製袋したフィルムをゲルボフレックステスターに装着し、捻り角度440°で15.0cmの屈曲直線運動を5℃及び23℃の条件下で1000回繰り返した後、それぞれ浸透液を用いてピンホールの数を調べた。なお、ピンホール数の測定はサンプルの中央部における300cmの箇所で行った。3枚のサンプルについてピンホールの数を測定し、その平均値を表3に示す。
23℃(1,000回):0個・・・○、 1〜2個・・・△、 3個以上・・・×
5℃(1,000回):0〜3個・・・○、 4〜5個・・・△、 6個以上・・・×
【0075】
[熱収縮率]
MD×TD=100mm×100mmのフィルムサンプルを沸騰水で30秒間処理し、処理後の収縮率を測定した。4回の測定の平均値として表3に示す。
MD:1.6%未満・・・○、 1.6%以上〜2.0%未満・・・△、 2.0%以上・・・×
TD:0.6%未満・・・○、 0.6%以上〜1.2%未満・・・△、 1.2%以上・・・×
【0076】
【表3】

【0077】
表3より、実施例1〜8のフィルムは、いずれの試験においても優れた特性を有することがわかった。一方、比較例1〜11のフィルムは、全ての特性を満足できるものはなかった。
【0078】
特に、実施例のフィルムは、特許文献1(特開2005−288923号公報)の実施例1及び2に相当する比較例8及び9のフィルムと比べて、耐摩耗性及び耐屈曲性において顕著に優れていることがわかった。
【0079】
また、実施例のフィルムは、特許文献2(特開2006−35511号公報)の実施例1及び2に相当する比較例10及び11のフィルムと比べて、耐摩耗性及び耐屈曲性において顕著に優れていることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】繰り返し接触により発生するピンホールの評価に用いた測定装置の模式図を示す。
【図2】錐状のアルミ製治具の一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイロン−6を50〜100重量%、ナイロン−6/6,6共重合体を0〜30重量%及び芳香族ポリアミドを0〜20重量%含むポリアミド層(A)、ナイロン−6を35〜96重量%、ナイロン−6/6,6共重合体を3〜30重量%、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体を1〜15重量%及び芳香族ポリアミドを0〜20重量%含むポリアミド層(B)、並びにエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を含むバリア層(C)が、A/B/C/B/A、又はB/A/C/A/Bの順で積層されたポリアミド系多層フィルム。
【請求項2】
前記芳香族ポリアミドが結晶性芳香族ポリアミド又は非晶性芳香族ポリアミドである請求項1に記載のポリアミド系多層フィルム。
【請求項3】
前記結晶性芳香族ポリアミドがポリメタキシリレンアジパミド(MXD−ナイロン)である、請求項1又は2に記載のポリアミド系多層フィルム。
【請求項4】
前記非晶性芳香族ポリアミドがヘキサメチレンジアミン−テレフタル酸−ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸の共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【請求項5】
前記ナイロン−6/6,6共重合体におけるナイロン−6,6の共重合比率が5〜40モル%である請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【請求項6】
MD方向に2.5〜4.5倍、TD方向に2.5〜5倍に二軸延伸して得られる多層フィルムである請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【請求項7】
前記ポリアミド系多層フィルムの総厚みが10〜50μmである請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【請求項8】
さらに一方の面にシール層を有する請求項1〜7のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルムの両端を、円筒状になるように接着して筒状物とし、さらに該筒状物の開口部の一端を接着して得られる包装用袋。
【請求項10】
食品包装用である請求項9に記載の包装用袋。
【請求項11】
ナイロン−6を50〜100重量%、ナイロン−6/6,6共重合体を0〜30重量%及び芳香族ポリアミドを0〜20重量%含むポリアミド層(A)用樹脂組成物、ナイロン−6を35〜96重量%、ナイロン−6/6,6共重合体を3〜30重量%、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体を1〜15重量%及び芳香族ポリアミドを0〜20重量%含むポリアミド層(B)用樹脂組成物、並びにエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を含むバリア層(C)用樹脂組成物を、A/B/C/B/A、又はB/A/C/A/Bの順になるように共押出により積層し、縦横2軸に延伸し、加熱処理することを特徴とするポリアミド系多層フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−188776(P2008−188776A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22243(P2007−22243)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】