説明

ポリアミド

【課題】耐熱性に優れ、引張強度、弾性率などの機械的強度に優れた芳香族ポリアミド繊維を提供する。
【解決手段】末端基として下記式(イ)
【化1】


(式中、Azは炭素数6〜20の2価の芳香族基)
で表される基を有する、0.5g/100mLの濃硫酸溶液で30℃において測定した特有粘度が0.05〜20dL/gである芳香族ポリアミド(X)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の末端基を有するポリアミド、樹脂組成物および繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリアミドは、剛直な芳香族環を連結させた構造をとり、耐熱性、機械特性、耐薬品性等に優れた素材として、繊維あるいはフィルムの形態で電気絶縁材料、各種補強剤、防弾繊維等、幅広く利用されており工業的に極めて価値の高い素材の一つであるが、使用される用途に応じて樹脂に対してより高度な特性が要求されるようになってきた。
【0003】
繊維の基本物性を向上させる手段の一つとして分子間に化学反応による架橋を施す方法が提案される。しかしながらポリマーにあらかじめ架橋を施した場合溶媒に対して不溶なポリマーを与え、繊維、フィルム等への成型加工が困難になる。そこでポリマーの成型加工の際に架橋剤をポリマー溶液にあらかじめ加えておき熱処理、熱延伸の際に反応させ成型体を得る方法が挙げられる。
【0004】
非特許文献1にはポリベンゾビスチアゾール分子鎖中にハロゲン原子を導入し熱処理時に発生するラジカルにより分子間結合を導入する試みがなされており、確かにシェアモジュラスの向上が見られる。特許文献1は芳香族ポリアミド分子鎖の末端をアニリンで封止することで芳香族ポリアミドの熱安定性の向上および重合度の制御を試みている。また、特許文献2では、芳香族ジイソシアネート、芳香族ジカルボン酸および主鎖に重合可能な不飽和基を有する芳香族ポリアミドオリゴマーを調製し、ラジカル発生触媒と共に加熱することで熱硬化を試みているが、末端基を修飾することによる全芳香族ポリアミドへの架橋の導入は今のところ報告例が無い。
【0005】
【特許文献1】特開平4−16490号公報
【特許文献2】特開平7−228658号公報
【非特許文献1】Journal of polymer Science:PartA:Polymer Chemistry, vol.30,1111−1122(1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐熱性に優れ、引張強度、弾性率などの機械的強度に優れた芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドを含有する樹脂組成物、繊維、およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明者は、芳香族ポリアミドに架橋構造を導入する方法について鋭意検討し、芳香族ポリアミドに架橋構造を導入することにより、耐熱性に優れ、引張強度、弾性率などの機械的強度に優れた芳香族ポリアミド、および繊維を提供することができることを見出した。
【0008】
すわなち本発明者は、芳香族ポリアミドの末端を特定構造の化合物で修飾し熱処理すると、下記式(1)
【化1】

(式中m、nおよびn’は10以上の整数である)
の反応スキームに示すように、末端基修飾芳香族ポリアミドの修飾末端基と芳香族ポリアミドのアミン末端が反応し架橋構造が形成されることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
また、熱処理前の末端修飾芳香族ポリアミドの成形性は良好であることを見出した。さらに、架橋により機械的強度に優れた繊維が得られることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記式(ア)
【化2】

で示される繰り返し単位を主として含有し、末端基として下記式(イ)
【化3】

(式中、Azは炭素数6〜20の2価の芳香族基)
で表される基を有する、0.5g/100mLの濃硫酸溶液で30℃において測定した特有粘度が0.05〜20dL/gであるポリアミド(X)である。
【0011】
また本発明は、(i) 下記式(ア)
【化4】

で示される繰り返し単位を主として含有し、0.5g/100mLの濃硫酸溶液で30℃において測定した特有粘度が0.05〜20dL/gであるポリアミド(Y)100重量部、および(ii)上記ポリアミド(X)を0.0001〜100重量部とを含有する樹脂組成物(Z)である。
【0012】
本発明は、ポリアミド(X)よりなる繊維である、また本発明は樹脂組成物(Z)よりなる繊維を包含する。
【0013】
本発明は、100重量部のポリアミド(X)および300〜3000重量部の溶媒を含有するドープ(X)を包含する。また本発明は、100重量部の樹脂組成物(Z)および300〜3000重量部の溶媒を含有するドープ(Z)を包含する。さらに本発明は、ドープ(X)またはドープ(Z)を紡糸することからなる繊維の製造方法を包含する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリアミド(X)は、末端を特定構造の化合物で修飾している。そのため、ポリアミド(X)を繊維などの形態に容易に成形することができ、かつ成形後に熱処理することにより、ポリアミド(X)はアミン末端と反応し、架橋構造を形成することができる。その結果、引張強度、弾性率などの機械的強度に優れた繊維を得ることができる。また本発明の樹脂組成物は、耐熱性に優れた繊維の原料となり、耐熱性に優れた繊維を製造することができる。本発明により、強度や弾性率などの機械的強度に優れた繊維成型体が得られ、得られた繊維成形体は、耐熱性繊維として高強度・弾性繊維としてロープ、ベルト、絶縁布、熱硬化性又は熱可塑性樹脂の補強材、さらには防護衣料等の分野に広く使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(ポリアミド(X)について)
本発明のポリアミド(X)は、下記式(ア)
【化5】

で示される繰り返し単位を主として含有し、末端基として下記式(イ)
【化6】

(式中、Azは炭素数6〜20の2価の芳香族基)
で表される基を有する、0.5g/100mLの濃硫酸溶液で30℃において測定した特有粘度が0.05〜20dL/gであるポリアミド(X)である。
【0016】
式(ア)で示される繰り返し単位を主として含有するとは、ポリアミド中、式(ア)の繰り返し単位を80〜100モル%含むことをいい、より好ましくは100モル%である。
【0017】
式(ア)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位としては、メタフェニレン基の他に、パラフェニレン基、3,4´−ジフェニレンエーテル基、および4,4´−ジフェニレンエーテル基を含む単位が挙げられる。
【0018】
ポリアミド(X)は、98重量%濃硫酸に0.5g/100mLの濃度で溶かした溶液を30℃にて測定した特有粘度(inherent viscosity)ηinhが0.05〜20dL/g、好ましくは、0.1〜5dL/g、より好ましくは0.5〜2dL/gである。
【0019】
式(イ)中、Azで表される2価の芳香族炭化水素基として、ベンゼン環若しくはナフタレン環を有する基が挙げられる。例えば、フェニレン基、トルフェニレン基、キシリレン基、ナフチレン基が挙げられ、なかでもフェニレン基が好ましい。
【0020】
上記式(イ)で表される末端基は下記式(ウ)
【化7】

で表される基であることが好ましい。
【0021】
上記式(イ)で表される末端基は、末端基濃度が0.05〜1500eq/tonであることが好ましく、さらには末端基濃度が100〜240eq/ton、さらには200〜240eq/tonであることが好ましい。末端基濃度はポリアミドドープについてのプロトンNMR解析より求めることができる。
【0022】
ポリアミド(X)は、特有粘度が0.5〜2dL/gであり、上記式(イ)で表される末端基濃度が200〜240eq/tonであることが好ましい。
【0023】
ポリアミド(X)は、上記式(イ)で表される末端基を有するため、加熱することにより、式(イ)で表される末端基が反応し、ポリアミド中に架橋構造が形成され、機械的強度が向上する。式(イ)で表される末端基は加熱前には架橋構造を形成しないので、ポリアミド(X)を用いて、繊維、フィルムなどへ容易に成形することができる。
【0024】
ポリアミド(X)は、下記式(a)
【化8】

で表されるジアミン成分と、下記式(b)
【化9】

(式(b)中、XはOH、ハロゲン原子、またはORで表される基を表す。Rは炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である)
で表されるジカルボン酸成分またはその酸無水物、
および下記式(c)
【化10】

(Azは炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素であり、XはOH、ハロゲン原子、またはORで表される基を表す。Rは炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。)
で表されるマレイミド成分(c)から重合させることにより製造することができる。
【0025】
式(ア)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含むポリアミド(X)を得ようとする場合、ジアミン成分としてメタフェニレンジアミンの他に、パラフェニレンジアミン、3,4´−ジフェニレンエーテルジアミン、または4,4´−ジフェニレンエーテルジアミンも用いられ、ジカルボン酸成分としてメタフェニレンジカルボン酸の他にパラフェニレンジカルボン酸も用いられる。
【0026】
重合は、溶液重合法、界面重合法、溶融重合法など従来公知の方法で行うことができる。重合度は芳香族ジアミン成分と芳香族ジカルボン酸成分の比率によりコントロールすることが出来、好ましい組成比としては
8≦(α)/{(β)+(γ)}≦1.2
0<(γ)/(β)≦1.0
(式中(α)は芳香族ジアミン成分(a)のモル数、(β)は芳香族ジカルボン酸成分(b)のモル数、(γ)はマレイミド成分(c)のモル数を表す)
である。
【0027】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物(Z)は、ポリアミド(X)およびポリアミド(Y)を含有する。ポリアミド(X)は前述の通りである。
【0028】
ポリアミド(Y)は、下記式(ア)
【化11】

で示される繰り返し単位を主として含有するポリアミドである。
【0029】
式(ア)で示される繰り返し単位を主として含有するとは、ポリアミド中、式(ア)の繰り返し単位を80〜100モル%含むことをいい、より好ましくは100モル%である。
【0030】
式(ア)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位としては、メタフェニレン基の他に、パラフェニレン基、3,4´−ジフェニレンエーテル基、および4,4´−ジフェニレンエーテル基を含む単位が挙げられる。
【0031】
ポリアミド(Y)は、下記式(a)
【化12】

で表されるジアミン成分と、下記式(b)
【化13】

(XはOH、ハロゲン原子、またはORで表される基を表す。Rは炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である)
で表されるジカルボン酸成分またはその酸無水物から重合させることにより製造することができる。重合は、溶液重合法、界面重合法、溶融重合法など従来公知の方法で行うことができる。
【0032】
重合度は芳香族ジアミン成分と芳香族ジカルボン酸成分の比率によりコントロールすることが出来、好ましい組成比としては
0.8≦(α)/(β)≦1.2
(式中(α)は芳香族ジアミン成分(a)のモル数、(β)は芳香族ジカルボン酸成分(b)のモル数を表す。)
である。
【0033】
ポリアミド(Y)は、98重量%濃硫酸に0.5g/100mLの濃度で溶かした溶液を30℃にて測定した特有粘度(inherent viscosity)ηinhが0.05〜20dL/g、好ましくは、1〜20dL/g、より好ましくは1〜10dL/gである。
【0034】
樹脂組成物(Z)中のポリアミド(X)の含有量は、ポリアミド(Y)100重量部に対して、0.0001〜100重量部、好ましくは0.0001〜30重量部、より好ましくは0.001〜20重量部、さらに好ましくは0.01〜15重量部である。
【0035】
樹脂組成物(Z)中の上記式(イ)で表される末端基濃度は、好ましくは0.05〜240eq/ton、より好ましくは1〜50eq/tonである。
【0036】
樹脂組成物(Z)は、1)ポリアミド(Y)に、ポリアミド(X)を添加する、2)ポリアミド(Y)とポリアミド(X)とを混合する、3)ポリアミド(X)にポリアミド(Y)を添加する、4)ポリアミド(X)の溶液で、ポリアミド(Y)のIn−situ重合を行う等の方法で調製することができる。
【0037】
(ドープ)
本発明のドープ(X)は、100重量部のポリアミド(X)および300〜3000重量部、好ましくは300〜1500重量部、より好ましくは300〜1000重量部の溶媒を含有する。本発明のドープ(Z)は、100重量部の樹脂組成物(Z)および300〜3000重量部、好ましくは300〜1500重量部、より好ましくは300〜1000重量部の溶媒を含有する。
【0038】
溶媒として、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、あるいは100%硫酸、リン酸、ポリリン酸、メタンスルホン酸等の酸溶媒が挙げられる。ドープは、溶媒と、ポリアミド(X)または樹脂組成物(Z)とを混合することにより調製することができる。また、溶媒の存在下でポリアミドの重合反応を行いドープを直接得ることもできる。
【0039】
(繊維)
本発明は、ポリアミド(X)よりなる繊維を包含する。また本発明は、樹脂組成物(Z)よりなる繊維を包含する。
繊維の強度は、好ましくは400〜650mN/tex、より好ましくは450〜600mN/texである。繊維中の式(イ)で表される末端基濃度は、好ましくは0.05〜240eq/ton、より好ましくは1〜50eq/tonである。繊維における末端基濃度は核磁気共鳴分光法(NMR)により測定可能である。
【0040】
(繊維の製造方法)
繊維は、ポリアミド(X)を含むドープまたは樹脂組成物(Z)を含むドープを紡糸することにより製造することができる。
紡糸は、湿式、乾式、乾式湿式の併用のいずれの方法で行っても良い。前述したように紡糸工程において、流動配向、液晶配向、せん断配向または延伸配向させることによりポリアミドの配向を高め、機械特性を向上させることができる。
【0041】
紡糸した後、熱処理することが好ましい。熱処理により、ポリアミドを架橋させることができる。熱処理時の温度は、好ましくは100℃〜400℃、より好ましくは200℃〜350℃である。熱処理の際、繊維に張力を加えることも好ましい。張力は、繊維破断強度の好ましくは1〜95%、より好ましくは3〜50%、さらに好ましくは5〜30%である。
【0042】
熱処理の際、延伸してもよい。延伸倍率は、好ましくは2〜40倍、より好ましくは5〜30倍である。最大延伸倍率(MDR)になるべく近づけて延伸することが機械物性の面で望ましい。延伸の温度は、好ましくは100℃〜400℃、より好ましくは200℃〜350℃である。高温下、高倍率で延伸配向させることにより機械特性に優れた繊維を得ることが出来る。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
(1)末端基の濃度:ポリマードープを日本電子 JEOL A-600(600MHz)を用いてプロトンNMR解析により求めた。
(2)繊維の機械特性:オリエンテック株式会社製テンシロン万能試験機1225Aを用いて、得られた繊維の単糸での引張り試験を行い、弾性率および強度を求めた。
【0044】
[参考例1]ポリアミド(Y)の調製
十分に乾燥した攪拌装置付きの三口フラスコに、脱水精製したNMP300重量部、m−フェニレンジアミン24.51重量部を常温下で添加し窒素中で溶解した後、氷冷し攪拌しながらイソフタル酸ジクロリド46.02重量部を添加した。その後徐々に昇温して最終的に50℃、60分反応させたところで水酸化カルシウム16.8重量部を添加して中和反応を行い、ポリアミド(Y)を含有するドープを得た。ドープは、100重量部のポリアミド(Y)に対して379重量部のNMPを含有していた。得られたドープを水にて再沈殿することにより得たアラミド樹脂の濃度0.5g/100mLの濃硫酸溶液を30℃で測定した特有粘度は1.56dL/gであった。
【0045】
[参考例2]末端基修飾ポリアミド(X)
十分に乾燥した攪拌装置付きの三口フラスコに、脱水精製したNMP115重量部、m−フェニレンジアミン10.81重量部を常温下で添加し窒素中で溶解した後、氷冷し攪拌しながらイソフタル酸ジクロリド20.30重量部及び下記式(2)
【化14】

で表される3−マレイミド酸クロライド1.41重量部を添加した。その後徐々に昇温して最終的に60℃、60分反応させたところで水酸化カルシウム7.41重量部を添加して中和反応を行い、ポリアミド(X)を含有するドープを得た。ドープは、100重量部のポリアミド(X)に対して400重量部のNMPを含有していた。得られたドープを水にて再沈殿することにより得たアラミド樹脂の濃度0.5g/100mLの濃硫酸溶液を30℃で測定した特有粘度は0.633dL/gであった。式(2)由来の末端基の濃度は144eq/tonであった。
【0046】
[実施例1]
参考例1で調製したポリアミドのドープ(Y)300重量部に参考例2で調製した末端基修飾ポリアミド(X)18.2重量部を加え、温度70℃で4時間攪拌することにより、ポリアミド(Y)/ポリアミド(X)=95/5(重量比)の混合ドープを得た。混合ドープ中のポリアミド(Y)およびポリアミド(X)の合計量100重量部に対するNMPの量は383重量部であった。ポリアミド(Y)およびポリアミド(X)の合計量に対する式(2)由来の末端基の濃度は7.2eq/tonであった。
【0047】
(繊維の製造)
得られたポリマードープをそれぞれ孔径0.08mm、孔数40個のキャップを用いて、シリンダー温度80℃にて塩化カルシウム48重量%の水溶液である温度50℃の凝固浴中に速度3.6m/分にて押出した。凝固浴から取り出した繊維を50℃の水浴中にて水洗し、90℃の水浴中にて沸水延伸を行い、150℃の乾燥ローラーで乾燥後、300℃の熱板上にて延伸させた。先にこの延伸工程における最大延伸倍率(MDR)を求め、その0.8倍の延伸倍率である17倍で延伸し、繊維成型体を得た。得られた繊維の引っ張り強度は519mN/texであった。
得られた繊維を300℃で3分間、熱処理をおこなった後の引っ張り強度は、531mN/texであった。また得られた繊維を350℃で3分間、熱処理をおこなった後の引っ張り強度は、563mN/texであった。
【0048】
[実施例2]
実施例1と同様に、参考例1で調製したポリアミドのドープ(Y)300重量部に参考例2で調製した末端基修飾ポリアミド(X)を77.5重量部を加え、温度70℃で4時間攪拌することにより、ポリアミド(Y)/ポリアミド(X)=85/15(重量比)の混合ドープを得た。混合ドープ中のポリアミド(Y)およびポリアミド(X)の合計量100重量部に対するNMPの量は398重量部であった。ポリアミド(Y)およびポリアミド(X)の合計量に対する式(1)由来の末端基の濃度は21.6eq/tonであった。
【0049】
(繊維の製造)
実施例1と同様な方法で繊維の製造を行い、繊維成型体を得た。得られた繊維の引っ張り強度は500mN/texであった。
得られた繊維を300℃で3分間、熱処理をおこなった後の引っ張り強度は、486mN/texであった。また得られた繊維を350℃で3分間、熱処理をおこなった後の引っ張り強度は、491mN/texであった。
【0050】
[比較例1]
参考例1で作成したNMPのアラミド樹脂溶液300重量部を実施例1と同様に紡糸を行い、繊維成型体を得た。このファイバーの各種物性を表1に示した。
得られた繊維の引っ張り強度は502mN/texであった。
得られた繊維を300℃で3分間、熱処理をおこなった後の引っ張り強度は461mN/texであった。また得られた繊維を350℃で3分間、熱処理をおこなった後の引っ張り強度は471mN/texであった。
以下結果を表1にまとめる。
【0051】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の繊維は、耐熱性、機械特性に優れるので、ロープ、ベルト、絶縁布、熱硬化性または熱可塑性樹脂の補強材、さらには防護衣料等の分野に広く使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(ア)
【化1】

で示される繰り返し単位を主として含有し、末端基として下記式(イ)
【化2】

(式中、Azは炭素数6〜20の2価の芳香族基)
で表される基を有する、0.5g/100mLの濃硫酸溶液で30℃において測定した特有粘度が0.05〜20dL/gであるポリアミド(X)。
【請求項2】
上記式(イ)で表される末端基が下記式(ウ)
【化3】

で表される基である請求項1に記載のポリアミド(X)。
【請求項3】
上記式(イ)で表される末端基濃度が0.05〜1500eq/tonである請求項1〜2のいずれかに記載のポリアミド(X)。
【請求項4】
特有粘度が0.5〜2dL/gであり、上記式(イ)で表される末端基濃度が200〜240eq/tonである請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド(X)。
【請求項5】
(i)下記式(ア)
【化4】

で示される繰り返し単位を主として含有し、0.5g/100mLの濃硫酸溶液で30℃において測定した特有粘度が0.05〜20dL/gであるポリアミド(Y)100重量部、および(ii)請求項1に記載のポリアミド(X)0.0001〜100重量部とを含有する樹脂組成物(Z)。
【請求項6】
樹脂組成物中の上記式(イ)で表される末端基濃度が0.05〜240eq/tonである請求項5記載の樹脂組成物(Z)。
【請求項7】
請求項1記載のポリアミド(X)100重量部および300〜3000重量部の溶媒を含有するドープ(X)。
【請求項8】
請求項5記載の樹脂組成物(Z)100重量部および300〜3000重量部の溶媒を含有するドープ(Z)。
【請求項9】
請求項7または8記載のドープを紡糸することからなる繊維の製造方法。
【請求項10】
紡糸した後、熱処理する請求項9記載の繊維の製造方法。
【請求項11】
請求項1記載の芳香族ポリアミド(X)よりなる繊維。
【請求項12】
請求項5記載の樹脂組成物(Z)よりなる繊維。
【請求項13】
式(イ)で表される末端基濃度が1〜50eq/tonである請求項11または12記載の繊維。
【請求項14】
強度が400〜600mN/texの請求項12または13に記載の繊維。

【公開番号】特開2009−40804(P2009−40804A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204107(P2007−204107)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】