説明

ポリイソシアネート残渣の分解装置およびそのスタートアップ方法

【課題】 ポリイソシアネート残渣と高温高圧水との反応を抑制して、円滑にスタートアップすることのできる、ポリイソシアネート残渣の分解装置、および、そのポリイソシアネート残渣の分解装置のスタートアップ方法を提供すること。
【解決手段】 ポリイソシアネート残渣を高温高圧水によりポリアミンに加水分解するための分解装置1において、分解槽2と、分解槽2に接続される水供給管3と、水供給管3に接続される残渣供給管4と、残渣供給管4の溶媒封入部分6に有機溶媒を封入するための溶媒供給ライン5aおよび溶媒抜き出しライン5bとを備えて、スタートアップ時には、溶媒供給ライン5aおよび溶媒抜き出しライン5bにより、予め溶媒封入部分6に有機溶媒を封入しておき、水供給管3から高温高圧水を分解槽2に供給した後、残渣供給管4から水供給管3に、まず有機溶媒を供給した後、次いでポリイソシアネート残渣を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネート残渣を高温高圧水によりポリアミンに分解する分解装置、および、そのスタートアップ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネートは、ポリウレタンの原料として用いられ、工業的には、例えば、ポリアミンと塩化カルボニルとのイソシアネート化反応により、製造されている。
このようなポリイソシアネートの製造プラントでは、イソシアネート化反応の終了後には、得られた未精製ポリイソシアネートから、残渣として副生する高分子量ポリイソシアネートを、分離するようにしている。
【0003】
そして、近年、副生する残渣を、溶融状態または溶液状態で反応器に連続的に供給するとともに、高圧高温水を反応器へ連続的に供給し、反応器内の温度を190〜300℃にして、残渣をポリアミンに分解して、得られたポリアミンを再使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−279539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1に記載の方法では、高圧高温水は、残渣とは別ラインで反応器へ連続供給され、残渣と高圧高温水とが、反応器内において、初めて接触して混合される。
しかし、反応器内では、残渣および高圧高温水は、それぞれの特性が大きく異なり、これらを反応器内において初めて接触させても、迅速かつ十分な混合が達成できないという不具合がある。
【0005】
また、特許文献1には、残渣を反応器に導入する前に、残渣の供給ラインに高圧高温水を合流させて反応器に導入してもよいことが記載されている。
しかし、残渣の供給ラインに高圧高温水を合流させると、スタートアップ時の合流部分においては、供給ラインの線速度が充分でなく、残渣の温度の上昇も不充分であり、反応器に流入する前の残渣と高温高圧水との接触時間が長くなり、残渣と高温高圧水との反応により尿素化合物などの中間生成物が多くが生成し、尿素化合物などに起因する固形物が発生し、供給ラインの閉塞を生じさせるという不具合がある。
【0006】
本発明の目的は、ポリイソシアネート残渣と高温高圧水との反応を抑制して、円滑にスタートアップすることのできる、ポリイソシアネート残渣の分解装置、および、そのポリイソシアネート残渣の分解装置のスタートアップ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のポリイソシアネート残渣の分解装置のスタートアップ方法は、ポリイソシアネート残渣と高温高圧水とを接触させるための分解槽と、前記分解槽に接続され、高温高圧水を前記分解槽に供給するための水供給管と、前記水供給管の途中に接続され、ポリイソシアネート残渣を高温高圧水とともに前記分解槽に供給するための残渣供給管とを備え、ポリイソシアネート残渣を高温高圧水によりポリアミンに分解する、ポリイソシアネート残渣の分解装置の、スタートアップ方法であって、前記残渣供給管の前記水供給管との接続部分に予め溶媒を封入し、前記水供給管から高温高圧水を分解槽に供給した後、前記残渣供給管から、前記水供給管に、まず、溶媒を供給した後、次いで、ポリイソシアネート残渣を供給することを特徴としている。
【0008】
本発明のポリイソシアネート残渣の分解装置のスタートアップ方法によれば、スタートアップ時には、高温高圧水を分解槽に供給している水供給管に、残渣供給管から、まず、溶媒が供給される。すると、残渣供給管から水供給管への供給流れが形成される。そのため、残渣供給管から、次いで、ポリイソシアネート残渣を供給すれば、ポリイソシアネート残渣は、その供給流れに従って水供給管へ充分な線速度で円滑に供給され、ポリイソシアネート残渣は、合流部分で滞留することなく、合流部分において高温高圧水と充分に混合されて分解槽に供給される。その結果、ポリイソシアネート残渣と高温高圧水との反応による、中間生成物に起因する固形物の発生による閉塞を防止して、円滑にスタートアップすることができる。
【0009】
また、この方法では、前記分解装置は、前記残渣供給管の前記水供給管との接続端に、開閉手段、好ましくはフラッシュ開閉手段と、前記残渣供給管における前記開閉手段の上流側に、残渣輸送手段とを備え、少なくとも前記開閉手段と前記残渣輸送手段との間が、溶媒が封入される前記接続部分とされており、前記開閉手段を閉鎖した状態において、前記残渣輸送手段によって溶媒あるいはポリイソシアネート残渣を輸送することにより、前記接続部分の内圧を上昇させ、前記水供給管から高温高圧水を分解槽に供給して、前記分解槽が分解温度および分解圧力に到達した後に、前記開閉手段を開放して、前記残渣供給管から、前記水供給管との合流部分に、まず、溶媒を供給した後、次いで、ポリイソシアネート残渣を供給することが好適である。
【0010】
このようにポリイソシアネート残渣を供給すれば、より一層、ポリイソシアネート残渣と高温高圧水との反応による、中間生成物に起因する固形物の発生による閉塞を防止して、円滑にスタートアップすることができる。
また、本発明のポリイソシアネート残渣の分解装置は、ポリイソシアネート残渣と高温高圧水とを接触させるための分解槽と、前記分解槽に接続され、高温高圧水を前記分解槽に供給するための水供給管と、前記水供給管の途中に接続され、ポリイソシアネート残渣を高温高圧水とともに前記分解槽に供給するための残渣供給管と、前記残渣供給管の前記水供給管との接続部分に、溶媒を封入するための溶媒封入手段とを備えていることを特徴としている。
【0011】
本発明のポリイソシアネート残渣の分解装置によれば、スタートアップ時において、溶媒封入手段によって、残渣供給管の水供給管との接続部分に予め溶媒を封入し、水供給管から高温高圧水を分解槽に供給した後、残渣供給管から、水供給管に、まず、溶媒を供給した後、次いで、ポリイソシアネート残渣を供給することができる。すると、スタートアップ時には、高温高圧水を分解槽に供給している水供給管に、残渣供給管から、まず、溶媒が供給される。すると、残渣供給管から水供給管への供給流れが形成される。そのため、残渣供給管から、次いで、ポリイソシアネート残渣を供給すれば、ポリイソシアネート残渣は、その供給流れに従って水供給管へ充分な線速度で円滑に供給され、ポリイソシアネート残渣は、合流部分で滞留することなく、合流部分において高温高圧水と充分に混合されて分解槽に供給される。その結果、ポリイソシアネート残渣と高温高圧水との反応による、中間生成物に起因する固形物の発生による閉塞を防止して、円滑にスタートアップすることができる。
【0012】
また、この装置では、前記残渣供給管の前記水供給管との接続端に、開閉手段、好ましくはフラッシュ開閉手段と、前記残渣供給管における前記開閉手段の上流側に、残渣輸送手段とを備え、少なくとも前記開閉手段と前記残渣輸送手段との間が、溶媒が封入される前記接続部分とされていることが好適である。
さらに安定的に供給を開始させるためには、残渣輸送手段から開閉手段までの部分が、溶媒で封入されていることが好ましい。
【0013】
この装置によれば、開閉手段を閉鎖した状態において、残渣輸送手段によって溶媒あるいはポリイソシアネート残渣を輸送することにより、接続部分の内圧を上昇させ、水供給管から高温高圧水を分解槽に供給して、分解槽が分解温度および分解圧力に到達した後に、開閉手段を開放して、残渣供給管から、水供給管との合流部分に、まず、溶媒を供給した後、次いで、ポリイソシアネート残渣を供給することできる。そのため、より一層、ポリイソシアネート残渣と高温高圧水との反応による、中間生成物に起因する固形物の発生による閉塞を防止して、円滑にスタートアップすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリイソシアネート残渣の分解装置によって、本発明のポリイソシアネート残渣の分解装置のスタートアップ方法を実施すれば、ポリイソシアネート残渣と高温高圧水との反応による、中間生成物に起因する固形物の発生による閉塞を防止して、円滑にスタートアップすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明のポリイソシアネート残渣の分解装置の一実施形態を示す概略構成図である。
図1において、この分解装置1は、ポリイソシアネートの製造プラントにおいて、ポリイソシアネートを製造するための製造工程、製造工程において製造された未精製ポリイソシアネートからポリイソシアネートを蒸留操作などにより取り出し、残渣と(以下、ポリイソシアネート残渣という。)分離する精製工程の、次の工程において、ポリイソシアネート残渣を高温高圧水によりポリアミンに分解するために設備されている。この分解装置1は、分解槽2と、分解槽2に接続される水供給管3と、水供給管3に接続される残渣供給管4と、後述する溶媒封入部分6に有機溶媒を封入するための溶媒封入手段としての溶媒供給ライン5aおよび溶媒抜き出しライン5bとを備えている。
【0016】
分解槽2は、ポリイソシアネート残渣と高温高圧水とを接触させて、ポリイソシアネート残渣を、ポリアミンに加水分解するための加水分解槽であって、温度・圧力制御可能な耐熱耐圧容器からなる。
水供給管3は、高温高圧水を分解槽2に供給するための水供給ラインであり、耐熱耐圧配管からなり、その下流側端部が、分解槽2に接続されている。また、その上流側端部が、図示しない水(プロセス回収水やイオン交換水など)が給水される給水ラインに接続されている。
【0017】
また、水供給管3の途中には、高温高圧水を分解槽2に向けて圧力輸送するための水圧送ポンプ7が介在されている。さらに、水供給管3の途中には、水圧送ポンプ7の下流側に、水加熱器8が介在されている。
残渣供給管4は、ポリイソシアネート残渣を高温高圧水とともに分解槽2に供給するための残渣供給ラインであり、耐熱耐圧配管からなり、その下流側端部が、水供給管3の途中であって、水加熱器8の下流側に接続されている。また、その上流側端部が、ポリイソシアネート残渣ドラム9に接続されている。
【0018】
ポリイソシアネート残渣ドラム9には、ポリイソシアネートの製造工程において製造された未精製ポリイソシアネートから、精製工程において分離されたポリイソシアネート残渣が、一時的に貯留されている。
ポリイソシアネート残渣は、ポリイソシアネートの製造時に副生する高分子量ポリイソシアネートを主成分とするタール分であって、ポリイソシアネートのダイマー、トリマー、およびカルボジイミド、ウレトジオン、ウレトンイミン、イソシアヌレート基をもつ2量体、3量体、多量体の化合物などが含まれている。また、ポリイソシアネート残渣には、未分離のポリイソシアネートも含まれている。
【0019】
ポリイソシアネートは、製造プラントによって製造されるポリイソシアネートに応じて、例えば、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。
【0020】
なお、ポリイソシアネート残渣は、流動性を確保すべく、ポリイソシアネートを一部共存させたり、ポリイソシアネートの製造工程において、反応溶媒として用いられる有機溶媒(例えば、モノクロロベンゼンやジクロロベンゼンなど)によって、適宜粘度調整しておくこともできる。
また、残渣供給管4の途中には、ポリイソシアネート残渣を水供給管3に向けて圧力輸送するための残渣輸送手段としての残渣圧送ポンプ10が介在されている。この残渣圧送ポンプ10には、例えば、多段ダイヤフラムポンプが採用されている。また、残渣供給管4の途中には、残渣圧送ポンプ10の下流側に、残渣加熱器11が介在されている。
【0021】
また、残渣供給管4における残渣圧送ポンプ10の下流側であって、水供給管3との接続端には、開閉手段(フラッシュ開閉手段)としてのフラッシュ開閉弁12が設けられている。
溶媒供給ライン5aおよび溶媒抜き出しライン5bは、溶媒供給管13および溶媒排出管14をそれぞれ備えている。
【0022】
溶媒供給ライン5aの溶媒供給管13は、その下流側端部が、残渣供給管4における残渣圧送ポンプ10と残渣ドラム9との間に接続されている。また、その上流側端部は、図示しない溶媒タンクや溶媒循環ラインなどに接続されている。溶媒タンクや溶媒循環ラインには、ポリイソシアネートの製造工程において、反応溶媒として用いられる有機溶媒(例えば、モノクロロベンゼンやジクロロベンゼンなど)が、貯留または流通している。
【0023】
また、溶媒供給管13の途中には、溶媒供給管13から残渣供給管4への有機溶媒の供給または供給停止するための溶媒供給弁15が設けられている。
なお、溶媒供給ライン5aの溶媒供給管13は、残渣圧送ポンプ10の吐出側(下流側)に接続してもよいが、吸入側(上流側)に接続することにより、スタートアップ時の昇圧を容易に実施でき、好ましい。スタートアップの安定化時間が必要な場合は、別途溶媒ドラム(図示しない)を設けてもよく、残渣ドラム9に予め溶媒を貯留してスタートアップすることもできる。
【0024】
溶媒抜き出しライン5bの溶媒排出管14は、その上流側端部が、残渣供給管4における残渣加熱器11とフラッシュ開閉弁12との間であって、フラッシュ開閉弁12の上流側近傍に接続されている。また、その下流側端部は、上記した溶媒タンクや溶媒循環ラインなどに接続されている。
また、溶媒排出管14の途中には、残渣供給管4から溶媒排出管14への有機溶媒の排出または排出停止するための溶媒排出弁16が設けられている。
【0025】
そして、この分解装置1では、残渣供給管4において、溶媒供給管13と溶媒排出管14との間であって、少なくとも、残渣圧送ポンプ10とフラッシュ開閉弁12との間が、溶媒排給ライン5により有機溶媒が封入される、残渣供給管4の水供給管3との接続部分である溶媒封入部分6とされている。
次に、この分解装置1によって、ポリイソシアネート残渣を高温高圧水によりポリアミンに分解する分解処理について説明する。
【0026】
この分解処理は、連続運転され、処理中は、溶媒排出管14の溶媒封入部分6に有機溶媒が封入されることなく、溶媒供給弁15および溶媒排出弁16は閉鎖されている。また、フラッシュ開閉弁12は開放されている。
残渣ドラム9に一時的に貯留されているポリイソシアネート残渣は、残渣圧送ポンプ10によって、残渣供給管4内を、フラッシュ開閉弁12を介して水供給管3に向けて圧力輸送され、また、残渣加熱器11によって、例えば、120〜180℃に加熱される。ポリイソシアネート残渣は、例えば、残渣圧送ポンプ10によって5〜30MPaの供給圧力に昇圧され、かつ、120〜180℃の供給温度に加熱された状態で、水供給管3に流入される。
【0027】
一方、給水ラインから水供給管3に流入される水は、水圧送ポンプ7によって、水供給管3内を、分解槽2に向けて圧力輸送され、また、水加熱器8によって、例えば、190〜300℃に加熱される。これによって、水は、5〜30MPaに昇圧され、かつ、190〜300℃に加熱された高温高圧水となって、残渣供給管4から合流するポリイソシアネート残渣とともに、分解槽2に流入する。
【0028】
分解槽2では、例えば、槽内温度(分解温度)190〜300℃、槽内圧力(分解圧力)5〜30MPaに制御されており、また、残渣圧送ポンプ10および水圧送ポンプ7の制御により、加水比(高温高圧水/ポリイソシアネート残渣の重量比)が、例えば、0.5〜5に制御されている。
これによって、分解槽2では、ポリイソシアネート残渣が、高温高圧水によって加水分解され、分解生成物として、対応するポリアミンが生成し、また、二酸化炭素および水などが副生する。
【0029】
なお、ポリアミンは、例えば、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(MDI)に対応するポリメチレンポリフェニレンポリアミン(MDA)、トリレンジイソシアネート(TDI)に対応するトリレンジアミン(TDA)、キシリレンジイソシアネート(XDI)に対応するキシリレンジアミン(XDA)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)に対応するテトラメチルキシリレンジアミン(TMXDA)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)に対応するビス(アミノメチル)ノルボルナン(NBDA)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)に対応する3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(IPDA)、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)に対応する4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(H12MDA)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)に対応するビス(アミノメチル)シクロヘキサン(H6XDA)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に対応するヘキサメチレンジアミン(HDA)などが挙げられる。
【0030】
その後、分解槽2から流出した分解生成物は、大気圧まで減圧された後、図示しない脱水塔にて、それぞれに分離され、ポリアミンが回収される。回収されたポリアミンは、再度、ポリイソシアネートの製造工程において、原料のポリアミンとして用いられる。
このような分解処理は、上記したように、連続運転されているが、メンテナンス時などには、その連続運転を一旦停止し、メンテナンスが終了すれば、再度、連続運転を開始する。そして、この分解装置1では、連続運転を開始するためのスタートアップ時には、スタートアップ操作として、予め溶媒封入部分6に有機溶媒を封入しておき、水供給管3から高温高圧水を分解槽2に供給した後、残渣供給管4から、水供給管3に、まず、有機溶媒を供給した後、次いで、ポリイソシアネート残渣を供給するようにしている。
【0031】
次に、そのようなスタートアップ操作について詳述する。スタートアップ操作が開始される以前は、分解装置1は停止しており、フラッシュ開閉弁12、溶媒供給弁15および溶媒排出弁16が閉鎖され、水圧送ポンプ7、残渣圧送ポンプ10、水加熱器8および残渣加熱器11は停止している。また、分解槽2内の温度および圧力は、制御されておらず、連続運転時よりも下がっている。
【0032】
そして、スタートアップ操作の開始時には、まず、溶媒供給弁15および溶媒排出弁16を開放して、溶媒供給管13から残渣供給管4の溶媒封入部分6に有機溶媒を流入させるとともに、その流入した有機溶媒によって、溶媒封入部分6に滞留しているポリイソシアネート残渣を、溶媒排出管14へ押し流して、溶媒封入部分6に有機溶媒を封入する。溶媒封入部分6に対する有機溶媒の封入が完了すると、溶媒供給弁15および溶媒排出弁16を閉鎖する。
【0033】
また、別途、水圧送ポンプ7および水加熱器8を作動させるとともに、分解槽2を制御して、上記した連続運転時の所定の分解温度および分解圧力になるように、高温高圧水を水供給管3から分解槽2に流入させる。
その後、残渣圧送ポンプ10および残渣加熱器11を作動させて、残渣圧送ポンプ9の吸入側(上流側)の有機溶媒やポリイソシアネート残渣を、溶媒封入部分6に封入されている有機溶媒に向けて圧力輸送し、溶媒封入部分6内を昇温および昇圧して、上記した連続運転時の所定の供給温度および供給圧力以上となった時点で、フラッシュ弁12を開放する。
【0034】
すると、連続運転時の所定の分解温度および分解圧力で、高温高圧水を分解槽2に供給している水供給管2に、残渣供給管4から、まず、有機溶媒が、連続運転時の所定の供給温度および供給圧力以上で供給される。有機溶媒が、残渣供給管4から水供給管2へ供給されると、その有機溶媒によって、残渣供給管4から水供給管2への供給流れが形成される。そして、溶媒封入部分6に封入されている有機溶媒および残渣圧送ポンプ9の吸入側(上流側)の有機溶媒が、すべて水供給管2へ供給されると、次いで、有機溶媒の供給流れに従って、有機溶媒と同じ勢いで、ポリイソシアネート残渣が、残渣供給管4から水供給管2へ円滑に供給される。すると、水供給管4に流入したポリイソシアネート残渣は、水供給管4との合流部分で滞留することなく、高温高圧水と充分に混合されて分解槽2に供給される。そのため、分解槽2に流入する前の、ポリイソシアネート残渣と高温高圧水とを充分な線速度で混合させることができ、これによって、ポリイソシアネート残渣と高温高圧水とが反応して尿素化合物などの中間生成物に起因した固形物の発生による水供給管4が閉塞を防止することができる。その結果、円滑にスタートアップすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のポリイソシアネート残渣の分解装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0036】
1 分解装置
2 分解槽
3 水供給管
4 残渣供給管
5a 溶媒供給ライン
5b 溶媒抜き出しライン
6 溶媒封入部分
10 残渣圧送ポンプ
12 フラッシュ開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート残渣と高温高圧水とを接触させるための分解槽と、前記分解槽に接続され、高温高圧水を前記分解槽に供給するための水供給管と、前記水供給管の途中に接続され、ポリイソシアネート残渣を高温高圧水とともに前記分解槽に供給するための残渣供給管とを備え、ポリイソシアネート残渣を高温高圧水によりポリアミンに分解する、ポリイソシアネート残渣の分解装置の、スタートアップ方法であって、
前記残渣供給管の前記水供給管との接続部分に予め溶媒を封入し、
前記水供給管から高温高圧水を分解槽に供給した後、
前記残渣供給管から、前記水供給管に、まず、溶媒を供給した後、次いで、ポリイソシアネート残渣を供給することを特徴とする、ポリイソシアネート残渣の分解装置のスタートアップ方法。
【請求項2】
前記分解装置は、前記残渣供給管の前記水供給管との接続端に、開閉手段と、前記残渣供給管における前記開閉手段の上流側に、残渣輸送手段とを備え、
少なくとも前記開閉手段と前記残渣輸送手段との間が、溶媒が封入される前記接続部分とされており、
前記開閉手段を閉鎖した状態において、前記残渣輸送手段によって溶媒あるいはポリイソシアネート残渣を輸送することにより、前記接続部分の内圧を上昇させ、
前記水供給管から高温高圧水を分解槽に供給して、前記分解槽が分解温度および分解圧力に到達した後に、
前記開閉手段を開放して、前記残渣供給管から、前記水供給管との合流部分に、まず、溶媒を供給した後、次いで、ポリイソシアネート残渣を供給することを特徴とする、請求項1に記載のポリイソシアネート残渣の分解装置のスタートアップ方法。
【請求項3】
前記開閉手段がフラッシュ開閉手段であることを特徴とする、請求項2記載のポリイソシアネート残渣の分解装置のスタートアップ方法。
【請求項4】
ポリイソシアネート残渣と高温高圧水とを接触させるための分解槽と、
前記分解槽に接続され、高温高圧水を前記分解槽に供給するための水供給管と、
前記水供給管の途中に接続され、ポリイソシアネート残渣を高温高圧水とともに前記分解槽に供給するための残渣供給管と、
前記残渣供給管の前記水供給管との接続部分に、溶媒を封入するための溶媒封入手段とを備えていることを特徴とする、ポリイソシアネート残渣の分解装置。
【請求項5】
前記残渣供給管の前記水供給管との接続端に、開閉手段と、前記残渣供給管における前記開閉手段の上流側に、残渣輸送手段とを備え、
少なくとも前記開閉手段と前記残渣輸送手段との間が、溶媒が封入される前記接続部分とされていることを特徴とする、請求項4に記載のポリイソシアネート残渣の分解装置。
【請求項6】
前記開閉手段がフラッシュ開閉手段であることを特徴とする、請求項5に記載のポリイソシアネート残渣の分解装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−22926(P2007−22926A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203222(P2005−203222)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(501140544)三井化学ポリウレタン株式会社 (115)
【Fターム(参考)】