説明

ポリイミドフィルムおよび金属化ポリイミドフィルム

【課題】金属層との接着強度が優れた金属化ポリイミドフィルムによって、導体パターンを十分な接着強度で保持する信頼性の高い配線基板を提供する。
【解決手段】芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類との反応によって得られるポリアミド酸から製造されるポリイミドフィルムであって、その表面が、マルテンス硬度で270〜450N/mであるポリイミドフィルム、および該フィルムに金属層を積層した金属化フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅などの金属層を積層するなどの用途に優れた接着性を示す表面硬度が特定のポリイミドフィルムおよび優れた接着性を持って作製された金属化ポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銅などの金属(薄膜)層をポリイミドフィルムなどに積層し、サブトラクティブ法とセミアディティブ法の二つが主流である配線形成方法によって配線基板が作製されている。サブトラクティブ法は、銅張り積層板やRCC等を用い、これらの銅箔をエッチングすることにより配線を形成する方法である。しかし、このサブトラクティブ法では、エッチング時にサイドエッチングが入るため、微小配線形成には限界がある。一方、セミアディティブ法は、絶縁層上に下地金属層を形成した後、この下地金属層を電極としてパターンめっきを行うことで導電層を形成、その後余分な下地金属層をフラッシュエッチングにより除去することにより配線を形成する方法であり、微細配線の形成に適している。セミアディティブ法では、絶縁層と下地金属層との高い密着強度を得るために、過マンガン酸により絶縁層の表面を粗化し、その後、無電解めっきにより下地金属層を形成する方法が採用されている。
【0003】
近年、半導体素子は、ますます高集積化、高性能化の一途をたどってきており、これに対応するために、(多層)配線基板もビアホールの微小化、配線の微細化が要求されている。しかし、上述のように、粗面化された絶縁層上に下地金属層を設けて配線を形成するセミアディティブ法では、微細化された配線の幅に対して絶縁層の表面粗さが無視できないものとなっている。また、配線の微細化が進むほど、フラッシュエッチングによる余分な下地金属層の除去工程において、無電解めっきによる下地金属層の形成に使用した触媒が配線間に残存し易いという課題が生じている。そこで、更なる微細配線形成のためには、平坦な絶縁層上に下地金属層を設ける技術が要求されている。その一つとして、絶縁層上にスパッタリング法により金属薄膜を形成して下地金属層とし、この下地金属層を電極として電解めっきにより配線を形成するセミアディティブ法が提案されているが、このようなセミアディティブ法で作製された配線体は、無電解めっき用の触媒の残留という問題は解消されているが、絶縁層と下地金属層との密着性が不十分であり信頼性の低いものが殆どであった。
【0004】
これらの解決のため、金属層を高い密着強度で備えた金属層付き樹脂体と、導体パターンを十分な密着強度で備えた信頼性の高い配線体を提供するため、電気絶縁性の樹脂体と、該樹脂体上に、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、CVD法等の真空成膜法により形成する真空成膜法により形成した金属層とを備え、前記金属層の成膜温度における前記樹脂体のユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にあり、前記樹脂体の前記金属層との界面の表面粗さRaが2μm以下である金属層付き樹脂体(特許文献1参照)が提案されている。
【特許文献1】特開2004−082444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、金属層と高い接着(密着)強度で積層するためのポリイミドフィルムと金属層付き積層体である金属化ポリイミドフィルムと、それによって得られる導体パターンを十分な接着強度で保持し信頼性の高い配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の表面硬度を有するポリィイミドフィルムが、銅などの金属層と充分な密着強度を有するポリイミドフィルムと金属層付き積層体である金属化ポリイミドフィルムと、それによって得られる導体パターンを十分な接着強度で保持し信頼性の高い配線基板として満足できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、以下の構成からなる。
1.芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類との反応によって得られるポリアミド酸から製造されるポリイミドフィルムであって、該ポリイミドフィルムの表面が、マルテンス硬度で270〜450N/mであることを特徴とするポリイミドフィルム。
2.芳香族ジアミン類がベンゾオキサゾール骨格を有するポリイミドベンゾオキサゾ−ルである前記1に記載のポリイミドフィルム。
3.ポリイミドフィルムの厚さが0.5μm〜10μmである前記1又は2いずれかに記載のポリイミドフィルム
4.前記1〜3いずれかに記載のポリイミドフィルムに金属層を積層した金属化ポリイミドフィルム。
【発明の効果】
【0007】
本発明において、芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類との反応によって得られるポリアミド酸から製造されるポリイミドフィルムであって、該ポリイミドフィルムの表面が、マルテンス硬度で270〜450N/mであることを特徴とするポリイミドフィルムは、銅などの金属層と充分な密着強度を有したポリイミドフィルムであり、このポリイミドフィルムを使用した金属層積層体である金属化ポリイミドフィルムは、これを加工して得られる導体パターンとは十分な接着強度で保持し信頼性の高い配線基板として満足なものであり、機械的、熱的、化学的ストレスを経ても十分な接着強度を有し、高い信頼性と耐久性を有する配線基板を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明におけるポリイミドフィルムは、その表面がマルテンス硬度で270〜450N/mであれば、特に限定されるものではなく、これらのポリイミドフィルムを得るための芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸類との反応は、溶媒中で芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類とを(開環)重付加反応に供してポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液を得て、次いで、このポリアミド酸の溶液から前駆体フィルム(グリーンフィルム)を成形した後に乾燥・熱処理・脱水縮合(イミド化)することにより製造される。本発明におけるポリイミドフィルムは、特にその芳香族ジアミン類、芳香族テトラカルボン酸類が限定されるものではないが、下記の芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせが好ましい例として挙げられる。
A.ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
B.ジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
C.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
D.上記のABCの一種以上の組み合わせ。
本発明で特に好ましく使用できるのは、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを反応させて得られるポリイミドベンゾオキサゾールを主成分とするポリイミドベンゾオキサゾールフィルムであり、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類として、下記の化合物が例示できる。
【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

【0011】
【化3】

【0012】
【化4】

【0013】
【化5】

【0014】
【化6】

【0015】
【化7】

【0016】
【化8】

【0017】
【化9】

【0018】
【化10】

【0019】
【化11】

【0020】
【化12】

【0021】
【化13】

【0022】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを70モル%以上使用することが好ましい。
【0023】
本発明は、前記事項に限定されず下記の芳香族ジアミンを使用してもよいが、好ましくは全芳香族ジアミンの30モル%未満であれば下記に例示されるベンゾオキサゾール構造を有しないジアミン類を一種または二種以上、併用してのポリイミドフィルムである。
そのようなジアミン類としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
【0024】
3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
【0025】
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
【0026】
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
【0027】
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
【0028】
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0029】
本発明で用いられる芳香族テトラカルボン酸類は例えば芳香族テトラカルボン酸無水物類である。芳香族テトラカルボン酸無水物類としては、具体的には、以下のものが挙げられる。
【0030】
【化14】

【0031】
【化15】

【0032】
【化16】

【0033】
【化17】

【0034】
【化18】

【0035】
【化19】

【0036】
これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、全テトラカルボン酸二無水物の30モル%未満であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種または二種以上、併用しても構わない。そのようなテトラカルボン酸無水物としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、
【0037】
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0038】
前記芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸(無水物)類とを重縮合(重合)してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの質量が、通常5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%となるような量が挙げられる。
【0039】
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌および/または混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割しても構わない。また、温度を上下させても構わない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の質量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
本発明におけるポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)は、特に限定するものではないが3.0dl/g以上が好ましく、4.0dl/g以上がさらに好ましく、これらの還元粘度とすることで、得られるポリイミドベンゾオキサゾールの線膨張係数が−10から+16(ppm/℃)と制御し易くなる。
【0040】
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の有機溶媒溶液を製造するのに有効である。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
【0041】
高温処理によるイミド化方法としては、従来公知のイミド化反応を適宜用いることが可能である。例えば、閉環触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、加熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)やポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることができる。
【0042】
熱閉環法の加熱最高温度(最終温度)は、100〜600℃が例示され、好ましくは450〜550℃、特に好ましくは490〜530℃である。加熱最高温度(最終温度)がこの範囲より低いと充分に閉環されづらくなり、ポリイミドフィルムの表面のマルテンス硬度が不十分となる場合がある。また、この範囲より高いと劣化が進行し、複合体が脆くなりやすくなる。より好ましい態様としては、150〜250℃で3〜20分間処理した後に350〜550℃で3〜20分間処理する2段階熱処理が挙げられる。
【0043】
化学閉環法では、ポリアミド酸溶液のイミド化反応を一部進行させて自己支持性を有する前駆体複合体を形成した後に、加熱によってイミド化を完全に行わせることができる。
この場合、イミド化反応を一部進行させる条件としては、好ましくは100〜200℃による3〜20分間の熱処理であり、イミド化反応を完全に行わせるための条件は、好ましくは200〜400℃による3〜20分間の熱処理である。
【0044】
閉環触媒をポリアミド酸溶液に加えるタイミングは特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどといった脂肪族第3級アミンや、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどといった複素環式第3級アミンなどが挙げられ、中でも、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンが好ましい。ポリアミド酸1モルに対する閉環触媒の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.5〜8モルである。
脱水剤をポリアミド酸溶液に加えるタイミングも特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などといった脂肪族カルボン酸無水物や、無水安息香酸などといった芳香族カルボン酸無水物などが挙げられ、中でも、無水酢酸、無水安息香酸あるいはそれらの混合物が好ましい。また、ポリアミド酸1モルに対する脱水剤の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.1〜4モルである。脱水剤を用いる場合には、アセチルアセトンなどといったゲル化遅延剤を併用してもよい。
【0045】
本発明におけるポリイミドフィルムは、マルテンス硬度で270〜450N/mのポリイミドフィルムである。
マルテンス硬度の測定は、20℃、50%相対湿度の雰囲気下でフィルムの表面上を超微小硬さ試験装置((株)フィッシャー・インストルメンツ社製、商品名:フィッシャースコープHM2000)を用いて、最大荷重2mN、第1クリープ:5sec、第2クリープ:5secの条件で測定するものである。測定するフィルムは、一旦スパッタリング、めっきなどでの銅をつけた後に、室温の塩化第二鉄35質量%水溶液に3分間攪拌しながら浸して、エッチングを行い、銅薄膜を除去した後に測定を行った。
【0046】
本発明のポリイミドフィルムの厚さは特に限定されないが、金属化フィルムの基材に用いることを考慮すると、通常0.5〜150μm、好ましくは0.5〜50μmであり、さらに好ましいのは0.5〜10μmの極めて薄いポリイミドフィルムであり、この薄いポリイミドフィルムの表面硬度が特定範囲にあることで、特に接着強度に顕著な効果が見られる。
【0047】
この厚さはポリアミド酸溶液などのフィルム原料液を支持体に塗布する際の塗布量や、ポリアミド酸溶液などのフィルム原料液における原料濃度によって容易に制御し得る。
本発明のポリイミドフィルムには、滑剤をポリイミドフィルム中に添加含有せしめるなどしてフィルム表面に微細な凹凸を付与しフィルムの滑り性を改善することが好ましい。
滑剤としては、無機や有機の0.03μm〜3μm程度の平均粒子径を有する微粒子が使用でき、具体例として、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、粘土鉱物などが挙げられる。
本発明のポリイミドフィルムは、無延伸フィルムであっても延伸フィルムであってもよく、ここで無延伸フィルムとは、テンター延伸、ロール延伸、インフレーション延伸などによってフィルムの面拡張方向に機械的な外力を意図的に加えずに得られるフィルムをいう。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は前記した以外は以下の通りである。
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
2.ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1254D)を用いて測定した。
【0049】
3.接着強度
測定対象の金属化フィルムを90μm配線幅のTABテープパターンに加工した後、90度方向に引き剥がしたときに要する強度を以って剥離強度とした。測定は、JIS C6418に準じて引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフ(商品名)機種名AG−5000A)を用いて行った。接着サンプルは、次に記した、PCT処理後のサンプルで行った。
4.PCTテスト
接着したサンプルを121℃、100%RH、96時間の環境下に置き、その後に常温、常圧下に戻した後に剥離強度テストを行った。
【0050】
〔ポリアミド酸の重合〕
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール500質量部を仕込んだ。次いで、次いで、N−メチル−2−ピロリドン5000質量部を加えて完全に溶解させた後,ピロメリット酸二無水物485質量部を加えた。次いで、別に蒸留したN−メチル−2−ピロリドン50質量部に、所定のフィラーを所定量混合して、ホモジナイザーで15分攪拌後加えた後、25℃の反応温度で48時間攪拌すると、淡黄色で粘調なポリアミド酸溶液が得られた。得られた溶液のηsp/Cは4.1dl/gであった。
【0051】
(実施例1〜7、比較例1〜7)
上記のポリアミド酸溶液をステンレスベルトにT型ダイを用いてコーティングした。ダイのリップギャップは各実施例で変更して実施した。次いで、90℃にて60分間乾燥することにより得られた自己支持性をもつ各ポリアミド酸フィルムをステンレスベルトから剥離し、連続式の乾燥炉にて、170℃で3分間、次いで、約20秒間で最終温度まで昇温して、最終温度として450〜510℃に変更して7分間加熱して、その後、5分間で室温にまで冷却し、種々厚さと硬度の各例の褐色ポリイミドフィルムを得た。
【0052】
上記で得られた各フィルムを50cm×200cmの方形に切り取り、開口部を有するステンレス製の枠に挟んで固定した。次いでフィルム表面のプラズマ処理を行った。プラズマ処理条件はアルゴンガス中で、周波数13.56MHz、出力180W、ガス圧0.6Paの条件であり、処理時の温度は25℃、処理時間は5分間であった。次いで、周波数13.56MHz、出力300W、ガス圧0.7Paの条件、ニッケル−クロム(3質量%)合金のターゲットを用い、アルゴン雰囲気下にてDCマグネトロンスパッタ法により、10Å/秒のレートで厚さ50Åのニッケル−クロム合金被膜(下地層)を形成し、次いで、基板の温度を5℃にて、100Å/秒のレートで銅を蒸着し、厚さ0.25μmの銅薄膜を形成させた。得られた銅薄膜形成フィルムをプラスチック製の枠に固定し、硫酸銅めっき浴をもちいて、厚さ35μmの厚付け銅めっき層(厚付け層)を形成し、引き続き100℃で10分間熱処理乾燥し目的とする金属化ポリイミドフィルムを得た。
得られた各金属化ポリイミドフィルムを90μm配線幅のTABテープパターンに加工し、その接着強度を測定した。
各例でのフィルム物性と、接着強度の測定結果を表1、表2に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
同様にして、得られた各ポリイミドフィルムを使用して、各ポリイミドフィルムに対して、エポキシ系接着剤(UR2700:東洋紡績株式会社製)を塗工して、5分間80℃にすることで接着剤の溶媒を蒸発させた。その後、厚さ35μmの銅箔(BHY−22B−T、株式会社日鉱マテリアルズ製)をラミネーターで積層した。その後、150℃にて2時間処理することで接着剤を硬化させた。その後、このフィルムを250mm×400mmに切り出し、各金属化ポリイミドフィルムを得て、得られた各金属化ポリイミドフィルムを90μm配線幅のTABテープパターンに加工し、その接着強度を測定したが、上記の乾式製膜方法での金属化ポリイミドフィルムと同様に、実施例フィルムでは接着強度が充分な強度であったが、比較例フィルムの場合は接着強度が劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のポリイミドフィルムは、その表面がマルテンス硬度で270〜450N/m以下であり、銅などの金属の薄膜との接着強度において優れているので、金属層付き積層体である金属化ポリイミドフィルムによって得られる金属層の導体パターンの接着強度が優れ、信頼性の高いフレキシブル配線基板などに使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類との反応によって得られるポリアミド酸から製造されるポリイミドフィルムであって、該ポリイミドフィルムの表面が、マルテンス硬度で270〜450N/mであることを特徴とするポリイミドフィルム。
【請求項2】
芳香族ジアミン類がベンゾオキサゾール骨格を有するポリイミドベンゾオキサゾ−ルである請求項1記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
ポリイミドフィルムの厚さが0.5〜10μmである請求項1〜2いずれかに記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載のポリイミドフィルムに金属層を積層した金属化ポリイミドフィルム。

【公開番号】特開2007−191539(P2007−191539A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9661(P2006−9661)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】