説明

ポリイミド基材プリント配線板及びその製造方法

【課題】電子機器の軽小短薄化に貢献できる、ポリイミドフィルム基材プリント配線板を提供する。
【解決手段】ポリイミドフィルム上に銅導体層がダイレクトプレーティングによって積層されたプリント配線板であり、銅導体層積層部分のポリイミドフィルム面上に存在するパラジウム量が0.03〜3mg/cmで、かつ、銅導体層非積層部分のポリイミドフィルム面上のパラジウム量が0.003mg/cm以下であることを特徴とするポリイミド基材プリント配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板(銅貼積層体を含む)とその製造方法に関し、ポリイミドフィルム基材を用いて湿式めっきにより製造されるプリント配線板とその製法に関し、さらに詳しくは導電化の手法としてダイレクトプレーティングによる金属層形成を用いたプリント配線板とその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギーを用いずに、金属塩の水溶液中に還元剤を入れておき、その分解による還元作用で金属を基材上に析出せしめる無電解めっきは、各種プラスチック、ガラス、セラミック、木材などの絶縁性材料表面の機能化のために広く適用されている技術である。
例えば、ABS樹脂やポリプロピレン樹脂にダイレクトプレーティングを施し、自動車のグリルやマーク類、家電製品のツマミ類などの部品とする装飾めっきや、プリント配線板のスルーホールめっきのような機能めっきを挙げることができる。一方、浴の安定性の問題や廃液の規制強化の問題等から、近年無電解めっきを用いずに導電化し、直接電気銅めっきを行うダイレクトプレーティングが提案され、普及し始めている。
プラスチック基材上に銅皮膜を析出させる方法としては、ホルムアルデヒドを用いた無電解銅めっき浴が工業的に一般に用いられていた。例えばプリント回路基板の製造工程においては、無電解銅めっきを使用してスルーホール内に銅の電導性皮膜を形成した後に、これを素地として電気銅めっきが施される。しかしながら、この無電解銅めっき浴には、発ガン性を有するホルムアルデヒドの使用、分析管理の煩雑さ、稼働液体の交換の必要性、バスロード(処理液の単位体積当たりの処理面積)における制限、微小ホールへの水素ガスのトラップによるボイドの問題、析出速度の遅さ、コストの高さといった問題点を有している。プリント基板の製造法としては、例えば穴あけ、触媒付与、研磨、ドライフィルムを用いてイメージングした後、無電解銅めっきを用いて銅の電導性皮膜を形成し、続いて電気銅めっき、はんだめっきを行うものである(特許文献1参照)。これは無電解銅めっきを用いるため、上述したいくつかの問題点を含んでいる。
【0003】
これらの問題を解決するために、無電解銅めっきを使用しない方法がいくつか提案されている。これらの方法はダイレクトプレーティングとして知られており、大別してPd−Sn付与方式、カーボンブラック付与方式および有機電導性皮膜付与方式の3つの方式がある。しかしながら、これらの方式によって製造されたプリント配線基板は、銅箔とめっき皮膜の密着性の問題、耐熱試験の信頼性等の問題があり、信頼性はまだ充分とは言えない。ダイレクトプレーティングは各種フィルム表面との接着性が低い場合が多い。特に、ポリイミドフィルムを基材に用いたプリント配線板の製造に適用した場合、ダイレクトプレーティングにより形成した金属層と絶縁材料との接着性は低いというのが課題であった。
酸化銅コロイドを含む銅触媒で触媒付与された非電導性の基材を、銅塩、銅を析出するための銅の還元剤および銅の錯化剤を含む溶液中に浸漬することによって、酸化銅(I)コロイド表面に金属銅を析出させ、銅の電導性皮膜を形成させるダイレクトプレーティング方法(特許文献2参照)も提案されている。
【0004】
ダイレクトプレーティングにより形成された金属層との接着性に優れたプリント配線板を提供するために、ダイレクトプレーティングにより金属層を形成するための表面を少なくとも有するダイレクトプレーティング用材料であって、表面の表面粗度は、カットオフ値0.002mmで測定した算術平均粗さで0.5μm以下で、かつ表面は特定の構造を有するポリイミド樹脂を使用するダイレクトプレーティングも提案されている(特許文献3参照)。
被めっき物の表面にパラジウム触媒付与処理を施すことによりポリイミドフィルムの表面にパラジウム触媒を付与し、パラジウム化合物、アミン化合物及び還元剤を含有するパラジウム導電体層形成溶液により絶縁性部分にパラジウム導電体層を形成し、パラジウム導電体層上に直接電気銅めっき皮膜を形成することで、 高アルカリ性である無電解銅めっき液を使用せず、中性である上記パラジウム導電体層形成溶液で導体化を行うことから、ポリイミドを侵すことなく、密着性への悪影響が発生せず、基板に存在する銅部分と電気銅めっき皮膜との間の接続信頼性が非常に高い方法なども提案されている(特許文献4参照)が、これらのポリイミドフィルムは25〜75μm程度の厚みを有する厚いフィルムに関するものである。
フィルム厚みが薄いポリイミドフィルムに対して、ダイレクトプレーティングにより金属層を強固に接着するのは非常に困難であった。一方、例えば表面に配線を形成したプリント配線板などを製造する際、絶縁材料上に金属層を形成する場合、できるだけ平滑な表面に、強固に金属層が形成されていることが非常に望ましい。これまで知られているプリント配線板に用いられる絶縁シートは、様々な手法で表面を粗化させ、いわゆるアンカー効果によって金属層との接着性を得ていた。しかし、表面粗度が小さい場合には金属層と樹脂材料との接着性は低く、微細配線形成には限界があった。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−213085号公報
【特許文献2】特開平07−197266号公報
【特許文献3】特開2007−106951号公報
【特許文献4】特開2007−016283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリイミドフィルム、特にポリイミドベンゾオキサゾールフィルムの極めて薄いフィルムに、そのフィルム特性を維持して密着性に優れた銅導体を設けた銅貼積層体を得て、それを用いて軽小短薄なプリント配線板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、ポリイミドフィルム、特にポリイミドベンゾオキサゾールフィルの薄いフィルムの特性を維持して、かつこのフィルムに銅導体層を設け、軽小短薄なプリント配線板を得ることができた。
すなわち本発明は以下の構成になる。1. ポリイミドフィルム上に銅導体層が積層されたプリント配線板において、銅導体層積層部分のポリイミドフィルム面上に存在するパラジウム量が0.03〜3mg/cmで、かつ、銅導体層非積層部分のポリイミドフィルム面上のパラジウム量が0.003mg/cm以下であることを特徴とするポリイミド基材プリント配線板。
2. ポリイミドフィルムが、厚さ0.4〜12μm、引張弾性率5〜30GPa、表面積比1.2〜2.5である前記1.のポリイミド基材プリント配線板。
3. ポリイミドフィルムがベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドを主成分とするポリイミドフィルムである前記1.または2.のポリイミド基材プリント配線板。
4. ポリイミドフィルム上に銅導体層を積層するプリント配線板の製造方法において、銅導体層を積層する方法が、ポリイミドフィルムを前処理、導電化処理した後、直接電解めっきにより銅導体層を設けるダイレクトプレーティング法であり、前記前処理及び導電化処理浴の浴pHを9以下とし、ポリイミドフィルム上に0.03〜3mg/cmの量のパラジウムを形成させた後、該ポリイミドフィルム上に直接電解めっきにより銅導体層を積層し、次いで該銅導体層をエッチング加工することを特徴とするポリイミド基材プリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプリント配線板においては、特に厚さ12μm以下の薄いポリイミドフィルムを基材として用い、銅導体層が、高アルカリ性である無電解銅めっき液を使用する無電解銅めっき法によらないで、ポリイミドフィルム表面に形成させた特定量のパラジウム導電化層を介して電解めっきで直接積層されているため、ポリイミドフィルムの強度、伸度、弾性率などの機械的特性や寸法安定性などの耐熱特性を維持するのみならず、銅導体層とポリイミドフィルムとの接着性が優れ、軽小短薄なプリント配線板とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳述する。
本発明のポリイミドフィルムは、芳香族テトラカルボン酸類(無水物、酸、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)と芳香族ジアミン類(アミン、およびアミド結合性誘導体を総称して類という、以下同)とを反応させて得られるポリアミド酸溶液を流延、乾燥、熱処理(イミド化)してフィルムとなす方法で得られるポリイミドフィルムである。これらの溶液に用いられる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
本発明におけるポリイミドフィルムは、特に限定されるものではないが、下記の芳香族
ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせが好ましい例として挙
げられる。
A.ピロメリット酸残基を有する芳香族テトラカルボン酸類、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類との組み合わせ。
B.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
C.ジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸残基を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
中でも特にA.のベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン残基を有するポリイ
ミドフィルムを製造するための組み合わせが好ましい。
本発明におけるジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類としては、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)、3,3′−ジアミノジフェニルエーテルおよび3,4′−ジアミノジフェニルエーテルおよびそれらの誘導体が挙げられ、本発明におけるフェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミンおよびそれらの誘導体が挙げられ、本発明におけるベンザオキサゾ−ル骨格を有するジアミンとしては、下記具体例で示すジアミンが挙げられるが、これらのジアミンは全ジアミンの70モル%以上より好ましくは80モル%以上使用することが好ましい。
ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類の分子構造は特に限定されるものではなく、具体的には以下のものが挙げられる。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
【化3】

【0013】
【化4】

【0014】
【化5】

【0015】
【化6】

【0016】
【化7】

【0017】
【化8】

【0018】
【化9】

【0019】
【化10】

【0020】
【化11】

【0021】
【化12】

【0022】
【化13】

【0023】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましく、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールがより好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明においては、全ジアミンの30モル%以下であれば下記に例示されるジアミン類を一種または二種以上を併用しても構わない。そのようなジアミン類としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンの芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0025】
<芳香族テトラカルボン酸無水物類>
本発明で用いられる芳香族テトラカルボン酸無水物類としては、具体的には、以下のものが挙げられる。
【0026】
【化14】

【0027】
【化15】

【0028】
【化16】

【0029】
【化17】

【0030】
【化18】

【0031】
【化19】

これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0032】
本発明においては、全テトラカルボン酸二無水物の30モル%以下であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種または二種以上を併用しても構わない。そのようなテトラカルボン酸無水物としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0033】
芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とを反応(重合)させてポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの質量が、通常5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%となるような量が挙げられる。
【0034】
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌および/または混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の質量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
【0035】
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸溶液を製造するのに有効である。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
重合反応により得られるポリアミド酸溶液から、ポリイミドフィルムを形成するためには、ポリアミド酸溶液を支持体上に塗布して乾燥することによりグリーンフィルム(自己支持性の前駆体フィルムを得て、次いで、グリーンフィルムを熱処理に供することでイミド化反応させる方法が挙げられる。支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
【0036】
支持体上に塗布したポリアミド酸を乾燥してグリーンシートを得る条件は特に限定はなく、温度としては70〜150℃が例示され、乾燥時間としては、5〜180分間が例示される。そのような条件を達する乾燥装置も従来公知のものを適用でき、熱風、熱窒素、遠赤外線、高周波誘導加熱などを挙げることができる。次いで、得られたグリーンシートから目的のポリイミドフィルムを得るために、イミド化反応を行わせる。その具体的な方法としては、従来公知のイミド化反応を適宜用いることが可能である。例えば、閉環触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、必要により延伸処理を施した後に、加熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)が挙げられる。この場合の加熱温度は100〜500℃が例示され、フィルム物性の点から、より好ましくは、150〜250℃で3〜20分間処理した後に350〜500℃で3〜20分間処理する2段階熱処理が挙げられる。
【0037】
別のイミド化反応の例として、ポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることもできる。この方法では、ポリアミド酸溶液を支持体に塗布した後、イミド化反応を一部進行させて自己支持性を有するフィルムを形成した後に、加熱によってイミド化を完全に行わせることができる。この場合、イミド化反応を一部進行させる条件としては、好ましくは100〜200℃による3〜20分間の熱処理であり、イミド化反応を完全に行わせるための条件は、好ましくは200〜400℃による3〜20分間の熱処理である。
【0038】
本発明におけるポリイミドフィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、0.4〜12μmが好ましく、0.7〜7μmがより好ましく、さらに好ましくは1.1〜4.8μmであり、これらのフィルムの厚さ斑も20%以下であることが好ましい。
この範囲より薄いポリイミドフィルムの場合はフィルム自体の製作が困難であり、また電気絶縁性の観点から回路に使用される電圧が制限される場合が生ずる。また、この範囲より厚いフィルムの場合は、回路線幅の細線化に特性インピーダンスが伴わなくなり、伝送特性の悪化が懸念される。これらのフィルムを使用することで、電子部品の軽小短薄化と高速化に大きく貢献できる。
従来12μm以下、特には7.0μm以下のポリイミドフィルムの長尺フィルムを工業的に安定的に製造することが困難であり、また得られたこれらの極薄ポリイミドフィルムはその厚さ斑が極端に大きく、例えば市販の7.5μmのポリイミドフィルムの厚さ斑は25%程度のものであり、寸法精度の要求される電子部品などにおいては品質上問題があった、本発明はこれらの課題を解決せんとするものである。このポリイミドフィルムの厚さはポリアミド酸溶液を支持体に塗布する際の塗布量や、ポリアミド酸溶液の濃度によって容易に制御し得る。塗布の方法としては、カーテンコート、ダイコート、スキージング、グラビアコート、オフセットコート、スプレーコート、蒸着、等の方法w用いることgあ出来る。
【0039】
本発明のポリイミドフィルムの引張弾性率は5〜30GPaが好ましく、6〜24GPaがより好ましく、7〜18GPaがなお好ましく、8〜14GPaがなおさらに好ましい。弾性率が5GPaを下回ると、加工プロセス中、ないし最終形態に於ける使用環境下でポリイミドフィルム部に加わる外力により、フィルムの変形が生じ、特に微細線パターンにおいてはパターンの位置ズレや歪みが生じる場合がある。また30GPaを超えるポリイミドフィルムを得るには、高度の延伸技術が必要となり技術的な難易度が高く非常に高価な物となる。またかかる高弾性率のポリイミドフィルムは加工性が困難であり、プロセスコストの上昇も見込まれるため、経済的に折り合わない。
【0040】
本発明において、これらの厚さ斑が20%以下である7μm以下の厚さであるポリイミドフィルムを得る方法は、特に限定されるものではないが、好ましい方法として、(1)芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とを反応させて得られるポリアミド酸を流延・乾燥し前駆体フィルム(ポリアミド酸フィルム)を得て、該前駆体フィルムを、フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持が、多数のクリップで挟み込むことやピンシートに設けられた多数のピンで突き刺すことによってなされ、幅方向およびまたは搬送方向に張設した状態でフィルムを搬送するテンター方式でイミド化させる厚さが7μm以下のポリイミドフィルムを得るポリイミドフィルムの製造方法で、前駆体フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム把持が、イミド化される前駆体(ポリアミド酸)フィルムと細幅のポリイミドフィルムに接着剤層を設けた易接着性ポリイミドフィルムとを重ねて把持およびまたは突き刺すことで固定するポリイミドフィルムの製造方法、(2)前記の細幅のポリイミドフィルムが、芳香族テトラカルボン酸類と芳香族ジアミン類とを反応させて得られるポリアミド酸を流延・乾燥して得られる前駆体フィルムのスリットした所謂前駆体フィルム(グリーンフィルム)である前記(1)の方法が挙げられる。
【0041】
前記処方によって、本発明の好ましい実施態様である、ポリイミドフィルムの厚さが0.4〜12μmで、厚さ斑が20%以下、引張弾性率が5〜30GPa、表面粗さがRaにて0.1μm以下、表面積比が1.2〜2.5のポリイミドフィルムが得られ、このポリイミドフィルムを使用することで、本発明のプリント配線板がより好ましいものとなる。
本発明における表面積率とは、表面が理想平面に対し、何倍の表面積を持つかを示すものであり、表面物性評価機能付走査型プローブ顕微鏡によって好適に求めることができる。具体的には、例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製のSPA300/SPI3800Nを使用することができる。
【0042】
本発明でいうダイレクトプレーティングとは、絶縁材料および/または導電性材料表面に導電化処理を行い、その後直接電解めっきによりめっきを行う方法を言う。導電化処理としては、特に限定は無く、いかなる導電化処理を施すことも可能であり、実用的にはダイレクトプレーティング用材料との密着性という観点から、パラジウム、導電性ポリマー、カーボンのいずれかにより導電化されていることが好ましい。導電性ポリマーを用いる方法としては、ピロール誘導体のモノマーを過マンガン酸塩処理することによって、生成した酸化マンガンによる酸性下で酸化重合させることによって、次の電気銅めっきを行うに十分な導電性の膜を形成させる例を挙げることができる。カーボンを用いる方法としては、懸濁したカーボンブラックの溶液で表面を処理することにより、導電性のカーボンを静電気的に吸着させる方法を例示ことができる。
本発明ではこれらのダイレクトプレーティング方の中から特にパラジウムを用いる方法を用いることが必須となる。パラジウムによる導電化としては、パラジウム−スズコロイド系や、スズフリーパラジウム系を用いる方法を挙げることができ、いずれも好ましく適用可能である。本発明ではプリント配線板の銅導体とポリイミドフィルムとの境界に0.03〜3mg/cmに相当するパラジウムが存在することが必須であり、0.1〜2mg/cmのパラジウムが存在する事が好ましく、さらに0.2〜1.5mg/cmのパラジウムが存在することが望ましい。パラジウム量がこの範囲に満たない場合には導電性が不十分なため、電気めっきにより形成される銅導体の厚みの不均一性が増す場合がある。またパラジウム量がこの範囲を超えると、材料コストが増えるとともに、銅導体が無い部分のパラジウムの除去が困難となり、回路線間の絶縁性が低下することが懸念される。
電解めっきについては特に限定はないが、工業的観点、耐マイグレーション性等の電気特性の観点より、電解銅めっき、電解ニッケルめっきが好ましく、特に好ましくは電解銅めっきである。スミアの除去や密着性の向上といった観点から、ダイレクトプレーティング前にデスミア処理やクリーニング処理等の各種処理を施しても構わない。
【0043】
本発明では、銅導体が無い部分のポリイミドフィルム表面に残存するパラジウム量が0.003mg/cm以下であることが必須であり、さらに0.001mg/cm以下であることがなお好ましい。パラジウム残存量の下限は特に限定されず、理想的にはゼロであるが、現実的な工業上の要求としては、既存分析機器にて検出出来ないというレベルに達すれば十分である。
なお、フィルムと銅導体の境界に存在するパラジウム量の直接定量は困難であるため、本発明では、パラジウム付与工程後、電気めっき直前工程のフィルム表面に存在するパラジウム量でもって、フィルムと銅導体の境界に存在するパラジウム量と見なすこととする。また、銅導体が無い部分、すなわち回路線間部分に存在するパラジウム量については、電気めっきにて銅導体を形成したる後に、銅導体を、回路加工に要するエッチング工程に用いられるエッチング液により除去した後の表面残存パラジウム量でもって、見なすことができる。
本発明において好ましく用いられるエッチング液は、塩化銅系エッチング液、塩化鉄系エッチング液、硫酸/過酸化水素系エッチング液、である、なお、本発明ではかかるエッチング液によるエッチング工程の後に、残存パラジウム量を低減する目的にて塩酸による処理、ないし、アルカリ性過マンガン酸カリウム溶液による処理、あるいは真空プラズマ処理、ないし大気圧プラズマ処理を行うことが強く推奨される。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0045】
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドの場合は、N,N−ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解し、測定した。)
2.ポリイミドフィルムの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。
3.ポリイミドフィルムの引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度
測定対象のポリイミドフィルムを、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(島津製作所社製、オートグラフ(R) 機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度及び引張破断伸度を測定した。
【0046】
4.フィルム上のパラジウム量
パラジウム付与工程後の基板100平方cmを所定量の塩酸に24時間浸積することによりパラジウム抽出し、原子吸光光度計;島津製作所社製AA−6200を用いて定量分析を行い面積あたりのパラジウム量を算出した。
5.ポリイミドフィルムの表面積率
表面形態の観察は走査型プローブ顕微鏡を用いた。具体的にはエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社のSPA300/SPI3800Nを使用した。観察はDFMモードで行った。カンチレバーはエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社から販売されているDF3又はDF20を使用した。スキャナーはFS−20Aを使用し、走査範囲は2mm四方、測定分解能は512×512ピクセルとした。観察像は二次傾き補正を行った後、装置付属のソフトウエアで表面積率を算出した。
6.ポリイミドフィルム厚さ斑
幅方向および長手方向に測定した。幅方向(TD)については、幅方向1cm間隔で全幅測定し、その間の平均および最大値、最小値を出し、上式を用いて計算した。長手方向(MD)については、長手方向5cm間隔で5m分測定し、その間の平均および最大値、最小値を出し、下式を用いて計算した。
厚さ斑(%)=((最大値−最小値)/平均厚み)×100
【0047】
7.銅箔引きはがし強さ
得られたプリント配線板の直線回路部分を用い、90度剥離試験をJIS C5016準拠の方法にて行った。なお測定は初期、150℃のドライオーブン中に100時間放置した後、平山製作所社製PCT試験機にて、121℃、2気圧(飽和)条件下にて100時間処理した後について行った。
8.金属化ポリイミドフィルムの耐マイグレーション性
40μmピッチの櫛形電極に、電圧(DC60V)を印可し、85℃、85%RHの恒温恒湿槽(FX412Pタイプ、エタック社製)の中に入れ電圧負荷状態のまま5分毎に絶縁抵抗値を測定記録し、線間の抵抗値が100Mオーム以下に達する時間を測定しマイグレーション評価とした。
【0048】
〔参考例1〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を1.22質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を、容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。予備分散液中の平均粒子径は0.11μmであった。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、223質量部の5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールを入れた。次いで、4000質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて24時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Aが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.8であった。
【0049】
〔参考例2〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を7.6質量部、N−メチル−2−ピロリドン390質量部を容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、200質量部のジアミノジフェニルエーテルを入れた。次いで、3800質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を390質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて5時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Bが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.7であった。
【0050】
〔参考例3〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を3.7質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、108質量部のフェニレンジアミンを入れた。次いで、3600質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と292.5質量部のビフェニルテトラカルボン酸二無水物を加えて、25℃にて12時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Cが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は4.5であった。
【0051】
〔フィルム製造〕
前記参考例で得られた各ポリアミド酸溶液を使用して、それぞれ流延・乾燥し各前駆体フィルム(ポリアミド酸フィルム)を得て、該前駆体フィルムを、フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持が、細幅のポリイミドフィルム(同一ポリアミド酸から予め得たポリイミドフィルムの細幅フィルム)に接着剤層を設けた易接着性ポリイミドフィルムを重ねて、多数のクリップで挟み込み、ピンシートに設けられた多数のピンで突き刺して、幅方向およびまたは搬送方向に張設した状態でフィルムを搬送するテンター方式でイミド化させて、各ポリアミド酸溶液から、幅520mm長さ300mのポリイミドフィルムロールを得た。それぞれ厚さが6μmと12μmのポリイミドフィルム、フィルムA(6)、フィルムA(12)、フィルムB(6)、フィルムB(12)、フィルムC(6)、フィルムC(12)を得た。得られた各ポリイミドフィルムの物性を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
(銅貼り積層板製造)
これらの得られた各ポリイミドフィルムロールを真空プラズマ装置にセットし、アルゴン/酸素混合ガス中にて両面のプラズマ処理を行った。条件は、周波数13.56MHz、出力200W、ガス圧0.5Paのであり、処理時の温度は25℃、処理時間を1分間から5分間の間で変化させた。なお以下、特に注記する以外においては5分間の処理を行った物を用いた。ついでスパッタリング製膜法によりポリイミドフィルム処理面にニッケル/クロム合金薄膜(ニッケル/クロム=8/2元素比)100nm、銅薄膜200nmの順に製膜し、さらに硫酸銅5水塩80g/L、硫酸200g/L、塩化物イオン60ppm、硫酸銅めっき添加剤を含む電気銅めっき液にて5μmの電気銅めっきを行い、所謂無接着剤型の片面銅貼り積層板(片面CCL)を製作した。
【0054】
<実施例1>両面プリント配線板
図1.に示すプロセスにより両面プリント配線板を製作した。まず、得られた片面銅貼り積層板のフィルム面側より所定の箇所に、UVレーザーを用い、銅箔を残し、ポリイミドフィルム部分だけを除去する、所謂有底孔開け加工を行った。
ついで、酸素混合ガス中にて、周波数13.56MHz、出力300W、ガス圧0.8Paにて10分間プラズマデスミアとポリイミド表面粗化処理を行った。処理されたポリイミドフィルム表面の面積率を、原子間力顕微鏡観察による3次元マッピングにて確認した後、水洗を行い、その後、6%硫酸水溶液で酸洗いし、水洗、乾燥し、Pd(パラジウム)−Sn(錫)コロイドの溶液に浸漬、Pd−Snコロイドの溶液(Pd−Sn溶液)に浸漬し、還元処理を施し、フィルム上に、Pdとして1.0mg/cmの導電化処理層を形成した。
パラジウム導電化処理層形成フィルムに電気銅メッキ浴を用いてフィルドビアめっきを行った。な電気めっき条件としては初期0.2A/dm、流密度により、硫酸銅5水塩80g/L、硫酸200g/L、塩化物イオン60ppmnから徐々に電流密度を増やし、最終的に2.5A/dmにて銅箔厚が5μmに達するまで通電を行った。
次いで、所定部分に感光性液状レジストによりエッチングレジストパターンを形成し、塩化第2銅エッチング液にてエッチング処理を行い、水酸化ナトリウム水溶液にてレジストを剥離した後、エッチング後に4規定の塩酸に30秒浸積し、水洗乾燥し両面プリント配線板を得た。この際に、同時に、金属が除去された部分を用いて、残存パラジウム量の測定を行うための試験片を同条件にて製作した。
得られた各両面プリント配線板について銅箔引きはがし強さ、マイグレーション試験を行った。結果を表2.に示す。なお、表中の表面積率は、片面銅貼り積層板のフィルム面に相当する面での測定値である。
【0055】
<実施例2>多層プリント配線板
図1.に示すプロセス((1)〜(7))にて製作された両面プリント配線板をコア層に用い、図2.に示す工程((1)〜(7))にて4層構成の多層配線板を製作した。まず両面プリント配線板の両面にアクリルエポキシ系接着剤を用いてポリイミドフィルムを積層した。次いで所定の箇所にUVレーザーを用いて有底孔開け加工を行い、以下前述の両面プリント配線板の加工プロセスと同様に、プラズマ処理によるデスミアとポリイミド表面粗化〜パラジウム付与、電気めっき、を行い、さらに同様にレジスト形成、エッチング、レジスト剥離、塩酸処理、水洗を行い4層構成の多層基板を得た。
得られた多層基板を、各々、150℃のドライオーブン中に100時間放置、ならびに、平山製作所製PCT試験機にて、121℃、2気圧(飽和)条件下にて100時間処理を行い、外観観察、および導通テストを行った。結果を表2.に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
<実施例3>
前記両面プリント配線板製作工程においてプラズマデスミア処理に代えて、以下に示す酸素イオンガン処理を行った以外は同じ条件にて両面プリント配線板を製作した。
巻出し、巻き取り部を有するAdvanced Energy Industries 社のイオンガン装置、38CMLISが備え付けられた真空装置を用い、イオンガンに酸素ガスを導入し、放電電圧520V、放電電流0.6A、放電電力300W、ビームガス流量45sccm、差動圧力3×10-1Paでイオンガンを動作させた。ロール送り速度は0.05m/minであり、イオンガン以外からのガス導入は行っていない。
以下同様に評価した 結果を表3.に示す
【0059】
<実施例4>
実施例1の両面プリント配線板製作工程において、片面銅貼り積層板製作時のプラズマ処理時間を2分間とし、プラズマデスミアの時間を1分間とした以外は実施例1と同様に操作した。結果を表4.に示す。
【0060】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、基板フィルムに特定量のパラジウムを存在せしめて、ダイレクトプレーティングによって銅導体層を電解めっきで直接設けることで、ポリイミドフィルムの強度、伸度、弾性率などの機械的特性や寸法安定性などの耐熱特性を維持した軽小短薄なプリント配線板であり、各種電子機器に安心して幅広く使用することができ、電子機器の軽小短薄化に貢献でき、かつ品質上、生産効率上工業的に極めて有意義である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】両面プリント配線板の製作プロセスの概要を示す説明図である。
【図2】4層構成の多層配線板の製作プロセスの概要を示す説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1・・・ポリイミドフィルム
2・・・銅
3・・・パラジウム
4・・・レジスト
5・・・ポリイミドフィルム
6・・・接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドフィルム上に銅導体層が積層されたプリント配線板において、銅導体層積層部分のポリイミドフィルム面上に存在するパラジウム量が0.03〜3mg/cmで、かつ、銅導体層非積層部分のポリイミドフィルム面上のパラジウム量が0.003mg/cm以下であることを特徴とするポリイミド基材プリント配線板。
【請求項2】
ポリイミドフィルムが、厚さ0.4〜12μm、引張弾性率5〜30GPa、表面積比1.2〜2.5である請求項1記載のポリイミド基材プリント配線板。
【請求項3】
ポリイミドフィルムが、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリイミドを主成分とするポリイミドフィルムである請求項1〜2いずれかに記載のポリイミド基材プリント配線板。
【請求項4】
ポリイミドフィルム上に銅導体層を積層するプリント配線板の製造方法において、銅導体層を積層する方法が、ポリイミドフィルムを前処理、導電化処理した後、直接電解めっきにより銅導体層を設けるダイレクトプレーティング法であり、前記前処理及び導電化処理浴の浴pHを9以下とし、ポリイミドフィルム上に0.03〜3mg/cmの量のパラジウムを形成させた後、該ポリイミドフィルム上に直接電解めっきにより銅導体層を積層し、次いで該銅導体層をエッチング加工することを特徴とするポリイミド基材プリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−283528(P2009−283528A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131640(P2008−131640)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】