説明

ポリイミド成形体の製造方法

【課題】イミド化が完全に完了したポリイミドフィルムを単独で利用する方法を提供するものである。
【解決手段】ポリイミドの酸成分としてビフェニルテトラカルボン酸成分を含有するポリイミドフィルムを体積平均粒子径200μm以下の粉末に粉砕し、実質的にこの粉末のみを成形することを特徴とするポリイミド成形体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単独では再利用が困難とされているポリイミドフィルムを単独で再利用して、ポリイミド成形体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは優れた耐熱性、機械特性、摺動特性、耐薬品性を持つエンジニアリングプラスチックであり、電気・電子機器用途を中心に様々な分野で使用されている。ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートのような多くの熱可塑性のエンジニアリングプラスチックは加熱溶融し、単体あるいは未使用品と混合するなどして成形加工を行い、再使用することができる。
【0003】
これに対して、ポリイミドフィルムは、一般的に前述のようなエンジニアプラスチックと異なり明確な融点を持たず、非熱可塑性であり、有機溶剤などの薬品にも耐性があることなどから、加熱溶融などによる再使用を行うことができない。このためポリイミドフィルムの耳部や端部、あるいはその他の要因で製品として使用できないポリイミドフィルムは、廃棄物として処理されることが多かった。
【0004】
これらのポリイミドフィルムの再使用を行うために、ポリイミドフィルムを裁断、小片化してポリアミック酸溶液に2〜70重量%程度混合し、この小片を含むポリアミド酸溶液からポリイミドシートを作成する方法(特許文献1)や、ポリイミド樹脂原末10〜99重量部に対して、再使用するポリイミドを主成分とする樹脂成形品あるいはフィルムの破砕品1〜90重量部からなる混合物を成形してポリイミド樹脂成形品を得る方法(特許文献2)が提案されている。これらの小片やフィルムの破砕品などは完全にイミド化が完了したポリイミドを使用しており、該ポリイミド粉体のみで成形体を作成することはできなかった。このため、これらの文献では再使用するポリイミドフィルム以外に、新規のポリアミック酸やイミド化が完了していないポリイミド粉末を使用しており、再使用を行うために、新たにポリアミック酸やポリイミド粉体の製造を行わなければならず、再使用を行うためのコスト等に問題があった。
【0005】
一方、ポリイミドの酸成分としてビフェニルテトラカルボン酸成分を含有するポリイミドフィルムはよく知られている(特許文献3)。しかし、これらのフィルムを粉砕して再利用することは記載されていないし、もし、再利用されていたとしてもそれは、他の物質と混合して、成形しやすい状態にして成形されていたものであり、ポリイミドフィルムを単独で成形に利用することはなされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−131753号公報
【特許文献2】特開2006−232996号公報
【特許文献3】特開2005−119159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、イミド化が完全に完了したポリイミドフィルムを単独で利用する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用する。即ち本発明は、
(1)ポリイミドの酸成分としてビフェニルテトラカルボン酸成分を含有するポリイミドフィルムを体積平均粒子径200μm以下の粉末に粉砕し、実質的にこの粉末のみを成形することを特徴とするポリイミド成形体の製造方法、
(2)ビフェニルテトラカルボン酸成分の含有量が全酸成分に対して2〜100モル%であることを特徴とする上記(1)に記載のポリイミド成形体の製造方法、
(3)成形体の曲げ伸度、引張り伸度がいずれも2%以上であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のポリイミド成形体の製造方法、である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリイミド成形体の製造方法であるが、この方法によれば従来、単独では再利用不可能とされていたポリイミドフィルムを再利用して所望のポリイミド成形体を得ることができる。
【0010】
また、再利用する際に該ポリイミドフィルム以外の、他のポリイミド樹脂、粉末等を使用しなくても成形体が成形可能であり、再利用を目的とした新規のポリイミド樹脂、粉末の作成を必要としないため、再利用にかかる工程等を大幅に削減することができたものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明について、具体的に説明する。
【0012】
本発明は、ポリイミドの酸成分としてビフェニルテトラカルボン酸成分を含有するポリイミドフィルムを体積平均粒子径200μm以下の粉末に粉砕し、実質的にこの粉末のみを成形することを特徴とするポリイミド成形体の製造方法である。なお、本発明において、「酸成分」と言えば「酸」、「酸二水物」を含む総称であり、また、フィルムなどのポリマー中の「酸成分」と言えばポリマーを構成する、「酸成分に由来する酸の残基」を意味する。
【0013】
ポリイミドフィルムは、通常、テトラカルボン酸二無水物化合物とジアミン化合物を有機溶媒中で反応させ、得られたポリアミック酸溶液を支持体上に流延させ、イミド化を進めることにより製造される。本発明においてはこのテトラカルボン酸成分として少なくともビフェニルテトラカルボン酸を含有させることを特徴としている。使用するビフェニルテトラカルボン酸の量は、全酸成分に対して2〜100モル%が好ましく、その下限は、5モル%、15モル%、25モル%が順次好ましい。使用できるビフェニルテトラカルボン酸成分としては3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸が挙げられ、また、これらのアミド形成性誘導体、酸無水物が挙げられる。中でも最も好ましいビフェニルテトラカルボン酸成分は3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。このビフェニルテトラカルボン酸成分は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよく、上記以外の酸成分を併用することも可能である。
【0014】
ここでいう併用する酸成分の具体例としては、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、オキシジフタル酸、2,3,6,7−ナフタレンジカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸およびこれらのアミド形成性誘導体などの酸無水物が挙げられる。
【0015】
本発明のポリイミドを構成するジアミン成分としては、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンチジン、パラキシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルおよびこれらのアミド形成性誘導体が挙げられる。中でもパラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。これらのジアミン成分は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0016】
典型的なポリイミドフィルムの製造方法としては、次のようなものがある。セパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、パラフェニレンジアミン等のジアミンを単独または組み合わせて入れ、さらにN,N’−ジメチルアセトアミド等の有機溶媒を入れて窒素雰囲気下、室温で撹拌する。約1時間撹拌後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とピロメリット酸二無水物を数回に分けて投入し、更に約1時間撹拌後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液を30分かけて滴下し、更に約1時間攪拌してポリアミック酸溶液を得る。得られたポリアミック酸をポリエステルフィルム上に取り、スピンコーターを用いて均一な膜を形成する。これをオーブンで100℃、1時間加熱乾燥することにより自己支持性のポリアミック酸フィルムを得る。この自己支持性のポリアミック酸フィルムをポリエステルフィルムから剥離し、これを金属枠に固定し、200〜400℃で熱処理することによりポリイミドフィルムを得ることができる。
【0017】
なお、本発明に用いるポリイミドフィルムは、酸成分としてビフェニルテトラカルボン酸成分を含有するポリイミドフィルムであれば、工業的に大量生産されているポリイミドフィルムを利用することができる。
【0018】
本発明においては、ポリイミドフィルムを粉砕する。粉砕機としては、フリーザーミル、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ジェットミル、ターボミル、アトマイザーミルおよび、インパクトミル等を使用することができ、複数の異なる粉砕機器を組み合わせて使用してもよい。また、粉砕する前にポリイミドフィルムを薬品処理や加熱によって粉砕しやすくすることもできるし、裁断するなどして、所望の大きさに調整することもできる。粉砕した粒子の大きさは、体積平均粒子径が200μm以下であることが必要であり、より好ましくは10〜150μmであり、さらに好ましくは15〜80μmの微細粉体であることが重要である。これは、ポリイミド粉体の体積平均粒子径の粒径が200μmよりも大きくなると嵩密度が大きくなり、成形体にした時に十分な密度が得られないためである。樹脂の密度は成形体の強度に関わり、十分な密度が得られない場合は脆い樹脂となってしまう。
【0019】
本発明の最大の特徴は、上記のようにして得られたポリイミドの粉体を実質的に単独で成形することにある。従来のポリイミドフィルムは粉末にしても単独では成形不可能であった。「実質的に」とは、単独で用いても良いし、また、少量の他の物質、例えば本発明で規定するポリイミドフィルム以外のポリイミドフィルムが含まれていても良いという意味である。
【0020】
本発明におけるポリイミド粉末を成形する方法は特に限定されず、例えば加熱と加圧を同時に行う熱プレスが挙げられる。また、使用する粉末を成形前に乾燥させたり、熱プレスを行う前に熱を加えずに加圧だけを行う予備成形を行ってもよい。さらに、これらの工程は窒素等の不活性ガスを用いた雰囲気下で行ってもよい。
【0021】
得られた成形体は通常のポリイミド成形体と同程度の物性を有することが好ましく、曲げ伸度、引張り伸度はいずれも2%以上であることが好ましい。また、曲げ弾性率は2GPa以上、曲げ強度は50MPa以上が好ましい。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し本発明はこれらの実施例のみによって限定されない。なお、各実施例における物性は下記の方法で測定した。
【0023】
<体積平均粒子径>
セイシン企業製レーザー式粒度分布測定機LMS−30を用いて測定した。
【0024】
<曲げ伸度、曲げ伸度>
ASTM D790に準じて測定した。
【0025】
<引っ張り伸度、引っ張り強度>
ASTM D1708に準じて測定した。
【0026】
実施例1
(ポリイミドフィルムの作成)
ケミカルスターラーを備えた300mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル12.94g(0.065mol)、パラフェニレンジアミン6.99g(0.065mol)、N,N’−ジメチルアセトアミド189.32gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。60分撹拌後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物13.32g(0.045mol)とピロメリット酸二無水物14.11g(0.065mol)を数回に分けて投入し、更に180分撹拌後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(6wt%)14.09gを30分かけて滴下し、更に60分攪拌してポリアミック酸溶液を得た。
【0027】
得られたポリアミック酸の一部をポリエステルフィルム上に取り、スピンコーターを用いて均一な膜を形成した。これをオーブンで100℃、1時間加熱乾燥することにより自己支持性のポリアミック酸フィルムを得た。
【0028】
自己支持性のポリアミック酸フィルムをポリエステルフィルムより剥離し、これを金属枠に固定し、200℃30分、300℃20分、400℃5分の条件で熱処理を行うことにより、ポリイミドフィルムを得た。
この時のフィルムの膜厚は53μmであった。
【0029】
(ポリイミド粉体の作成)
上記の方法で得られたポリイミドフィルムをシュレッダーで裁断した後、ジェットミルにて粉砕を行った。得られた粉体をセイシン企業製レーザー式粒度分布測定機LMS−30にて測定したところ、体積平均粒子径は63μmであった。
【0030】
(成形体の作成)
この粉体を使用し、熱プレス法にて粉体から成形体を作成した。粉体を成形機に入れ、2.0ton/cmの圧力をかけた状態で400℃まで温度を上げ、この状態を30分保持して成形体を得た。得られた成形体の物性を表1に示す。
【0031】
実施例2
(ポリイミドフィルムの作成)
ケミカルスターラーを備えた300mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル20.02g(0.100mol)、N,N’−ジメチルアセトアミド182.98gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。60分撹拌後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物28.54g(0.097mol)を数回に分けて投入し、更に120分撹拌後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(6wt%)10.9gを30分かけて滴下し、更に60分攪拌してポリアミック酸溶液を得た。
【0032】
得られたポリアミック酸の一部をポリエステルフィルム上に取り、スピンコーターを用いて均一な膜を形成した。これをオーブンで100℃、1時間加熱乾燥することにより自己支持性のポリアミック酸フィルムを得た。
【0033】
自己支持性のポリアミック酸フィルムをポリエステルフィルムより剥離し、これを金属枠に固定し、200℃30分、300℃20分、400℃5分の条件で熱処理を行うことにより、ポリイミドフィルムを得た。この時のフィルムの膜厚は42μmであった。
【0034】
(ポリイミド粉体の作成)
得られたフィルムを使用し、シュレッダーで裁断した後、ジェットミルにて粉砕を行った。得られた粉体をセイシン企業製レーザー式粒度分布測定機LMS−30にて測定したところ、体積平均粒子径は70μmであった。
【0035】
(成形体の作成)
この粉体を使用し、熱プレス法にて粉体から成形体を作成した。粉体を成形機に入れ、2.0ton/cmの圧力をかけた状態で400℃まで温度を上げ、この状態を30分保持して成形体を得た。得られた成形体の物性を表1に示す。
【0036】
実施例3
(ポリイミドフィルムの作成)
ケミカルスターラーを備えた300mlセパラブルフラスコ中に、パラフェニレンジアミン14.06g (0.130mol)、N,N’−ジメチルアセトアミド190.87gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。60分撹拌後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物37.10g(0.126mol)を数回に分けて投入し、更に120分撹拌後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(6wt%)14.18gを30分かけて滴下し、更に60分攪拌してポリアミック酸溶液を得た。
【0037】
得られたポリアミック酸の一部をポリエステルフィルム上に取り、スピンコーターを用いて均一な膜を形成した。これをオーブンで100℃、1時間加熱乾燥することにより自己支持性のポリアミック酸フィルムを得た。
【0038】
自己支持性のポリアミック酸フィルムをポリエステルフィルムより剥離し、これを金属枠に固定し、200℃30分、300℃20分、400℃5分の条件で熱処理を行うことにより、ポリイミドフィルムを得た。
この時のフィルムの膜厚は48μmであった。
【0039】
(ポリイミド粉体の作成)
得られたフィルムをシュレッダーで裁断した後、ジェットミルにて粉砕を行った。得られた粉体をセイシン企業製レーザー式粒度分布測定機LMS−30にて測定したところ、体積平均粒子径は68μmであった。
【0040】
(成形体の作成)
この粉体を使用し、熱プレス法にて粉体から成形体を作成した。粉体を成形機に入れ、2.0[ton/cm]の圧力をかけた状態で400℃まで温度を上げ、この状態を30分保持して作成した。得られた成形体の物性を表1に示す。
【0041】
実施例4
(ポリイミドフィルムの作成)
ケミカルスターラーを備えた300mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル23.03g (0.115mol)、N,N’−ジメチルアセトアミド185.69gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。60分撹拌後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物8.46g(0.028mol)とピロメリット酸二無水物18.06g(0.082mol)を数回に分けて投入し、更に120分撹拌後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(6wt%)12.54gを30分かけて滴下し、更に60分攪拌してポリアミック酸溶液を得た。
【0042】
得られたポリアミック酸の一部をポリエステルフィルム上に取り、スピンコーターを用いて均一な膜を形成した。これをオーブンで100℃、1時間加熱乾燥することにより自己支持性のポリアミック酸フィルムを得た。
【0043】
自己支持性のポリアミック酸フィルムをポリエステルフィルムより剥離し、これを金属枠に固定し、200℃30分、300℃20分、400℃5分の条件で熱処理を行うことにより、ポリイミドフィルムを得た。この時のフィルムの膜厚は47μmであった。
【0044】
(ポリイミド粉体の作成)
得られたフィルムをシュレッダーで裁断した後、ジェットミルにて粉砕を行った。得られた粉体をセイシン企業製レーザー式粒度分布測定機LMS−30にて測定したところ、体積平均粒子径は65μmであった。
【0045】
(成形体の作成)
この粉体を使用し、熱プレス法にて粉体から成形体を作成した。粉体を成形機に入れ、2.0[ton/cm]の圧力をかけた状態で400℃まで温度を上げ、この状態を30分保持して作成した。得られた成形体の物性を表1に示す。
【0046】
比較例1
(ポリイミドフィルムの作成)
ケミカルスターラーを備えた300mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル25.03g(0.125mol)、N,N’−ジメチルアセトアミド192.50gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。60分撹拌後、ピロメリット酸二無水物26.45g(0.121mol)を数回に分けて投入し、更に120分撹拌後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(6wt%)13.63gを30分かけて滴下し、更に60分攪拌してポリアミック酸溶液を得た。
【0047】
得られたポリアミック酸の一部をポリエステルフィルム上に取り、スピンコーターを用いて均一な膜を形成した。これをオーブンで100℃、1時間加熱乾燥することにより自己支持性のポリアミック酸フィルムを得た。
【0048】
自己支持性のポリアミック酸フィルムをポリエステルフィルムより剥離し、これを金属枠で把持し、200℃30分、300℃20分、400℃5分の条件で熱処理を行うことにより、ポリイミドフィルムを得た。この時のフィルムの膜厚は55μmであった。
【0049】
(ポリイミド粉体の作成)
上記のポリイミドフィルムをシュレッダーで裁断した後、ジェットミルにて粉砕を行った。得られた粉体をセイシン企業製レーザー式粒度分布測定機LMS−30にて測定したところ、体積平均粒子径は63μmであった。
【0050】
(成形体の作成)
この粉体を使用し、熱プレス法にて粉体から成形体を作成した。粉体を成形機に入れ、2.0ton/cmの圧力をかけた状態で400℃まで温度を上げ、この状態を30分保持したが、粉体同士の密着力が不足しているために成形体を得られなかった。
【0051】
比較例2
(ポリイミドフィルムの作成)
ケミカルスターラーを備えた300mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル20.02g(0.100mol)、N,N’−ジメチルアセトアミド182.98gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。60分撹拌後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物28.54g(0.097mol)を数回に分けて投入し、更に120分撹拌後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(6wt%)10.9gを30分かけて滴下し、更に60分攪拌してポリアミック酸溶液を得た。
【0052】
得られたポリアミック酸の一部をポリエステルフィルム上に取り、スピンコーターを用いて均一な膜を形成した。これをオーブンで100℃、1時間加熱乾燥することにより自己支持性のポリアミック酸フィルムを得た。
【0053】
自己支持性のポリアミック酸フィルムをポリエステルフィルムより剥離し、これを金属枠に固定し、200℃30分、300℃20分、400℃5分の条件で熱処理を行うことにより、ポリイミドフィルムを得た。
この時のフィルムの膜厚は42μmであった。
【0054】
(ポリイミド粉体の作成)
得られたフィルムを使用し、鋏で裁断した後、ジェットミルにて粉砕を行った。得られた粉体をセイシン企業製レーザー式粒度分布測定機LMS−30にて測定したところ、体積平均粒子径は252μmであった。
【0055】
(成形体の作成)
この粉体を使用し、熱プレス法にて粉体から成形体を作成した。粉体を成形機に入れ、2.0[ton/cm]の圧力をかけた状態で400℃まで温度を上げ、この状態を30分保持したが、粉体同士の密着力が不足しているために成形体を得られなかった。
【0056】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のポリイミド粉体は、作成した粉体のみで既存のポリイミド成形体と同等の成形体を作成することができるため、再利用を目的とするポリイミドフィルムのみから既存のポリイミド成形体と同等の樹脂を作成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドの酸成分としてビフェニルテトラカルボン酸成分を含有するポリイミドフィルムを体積平均粒子径200μm以下の粉末に粉砕し、実質的にこの粉末のみを成形することを特徴とするポリイミド成形体の製造方法。
【請求項2】
ビフェニルテトラカルボン酸成分の含有量が全酸成分に対して2〜100モル%であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド成形体の製造方法。
【請求項3】
成形体の曲げ伸度、引張り伸度がいずれも2%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミド成形体の製造方法。

【公開番号】特開2011−131455(P2011−131455A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291937(P2009−291937)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000219266)東レ・デュポン株式会社 (288)
【Fターム(参考)】