説明

ポリイミド系多層フィルムの製造方法

【課題】 フィルムカス等の欠陥の少ない多層ポリイミド系フィルムを安定的に生産する手法を提供することにある。
【解決手段】 ポリイミドを含有する樹脂層を複数有するポリイミド系多層フィルムの製造方法であって、(1)ポリイミドまたはその前駆体を含有する樹脂溶液を複数種類用いて、支持体上に、多層共押出ダイを用いて各樹脂溶液からなる液膜を積層してなる多層液膜を形成する多層液膜形成工程と、(2)得られた多層液膜を、自己支持性を有する多層ゲルフィルムとするゲルフィルム形成工程とを含み、上記ポリイミド系多層フィルムを構成する複数の液膜のうち支持体に接する最外層の液膜にはイミド化触媒が含有されており、化学脱水剤は含まれておらず、支持体上に形成された多層ゲルフィルムと支持体との密着強度が0.2kg/20cm〜2.4kg/20cmであることを特徴とするポリイミド系多層フィルムの製造方法により、上記課題を解決し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂を含有する樹脂層を複数有するポリイミド系多層フィルムの製造方法、及びその製造方法により得られるポリイミド系多層フィルム、並びにそのフィルムにより得られるフレキシブル金属張積層板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板(以下、FPCともいう)は、一般に、柔軟性を有する薄い絶縁性フィルムを基板(ベースフィルム)とし、この基板の表面に、各種接着材料を介して金属箔が加熱・圧着することにより貼りあわされた金属張積層板に回路パターンを形成し、その表面にカバー層を施した構成を有している。かかる絶縁性フィルム、接着層、および金属箔の三層からなるフレキシブルプリント配線板(三層FPC)では、従来から、絶縁性フィルムとしてポリイミドフィルム等が広く用いられている。この理由は、ポリイミドが優れた耐熱性、電気特性などを有しているためである。また、接着層としては、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系等の熱硬化性接着剤が一般的に用いられている。
【0003】
従来、接着層として用いられていたエポキシ樹脂やアクリル樹脂といった熱硬化性樹脂は、比較的低温での接着が可能であるため低温加工性に優れ、さらに経済性の観点からも優れるものの、例えば、耐熱性等に代表されるその他の特性については不十分であるのが現状である。
【0004】
上記問題を解決するために、接着層にもポリイミド材料を用いた二層FPCが提案されている。なお、この接着層にポリイミド材料を用いる方法で得られるFPCは厳密には三層であるともいえるが、2つのポリイミド層を一体と見なして二層FPCとするものである。この二層FPCは、エポキシ樹脂やアクリル樹脂を接着層に使用した三層FPCに比べて耐熱性、電気特性、寸法安定性に優れており、今後の要求特性に応えることができる材料として注目されている。
【0005】
上記二層FPCは、基板に金属箔を積層した構造を有するフレキシブル金属張積層板を用いて製造される。このフレキシブル金属張積層板の製造方法としては、キャスト法、メタライジング法、ラミネート法等が挙げられる。キャスト法は、金属箔上に、ポリイミド又はその前駆体であるポリアミド酸の有機溶媒溶液を流延、塗布した後イミド化する方法である。メタライジング法は、スパッタ、メッキによりポリイミドフィルム状に直接金属層を設ける方法である。ラミネート法は、熱可塑性ポリイミド層を介してポリイミドフィルムと金属箔とを貼り合わせる方法である。これらのうち、ラミネート法は、対応できる金属箔の厚み範囲がキャスト法よりも広く、装置に要するコストがメタライジング法よりも低いという点で優れている。上記ラミネート法により製造されるフレキシブル金属張積層板においては、基板として、非熱可塑ポリイミドを含む層(非熱可塑性ポリイミド層)の少なくとも一方の表面に熱可塑性ポリイミドを含む層(熱可塑性ポリイミド層)を設けてなる接着フィルムが広く用いられる。この接着フィルムにおいては、非熱可塑性ポリイミド層が絶縁性フィルムとなり、熱可塑性ポリイミド層が接着層となる。この接着フィルムは、言い換えれば、多層構造のポリイミド系フィルム(ポリイミド系多層フィルム)ということができる。上記ポリイミド系多層フィルムの製造方法としては、代表的なものとして塗工法、熱ラミネート法、流延製膜法等が挙げられる。塗工法は、非熱可塑性ポリイミド層となるポリイミドフィルムの片面または両面に、熱可塑性ポリイミドその前駆体を含有する樹脂組成物の溶液を塗工し乾燥させて製造する方法である。また、熱ラミネート法は、非熱可塑性ポリイミド層となるポリイミドフィルムの片面または両面に、熱可塑性ポリイミド層となるポリイミドフィルムを加熱して貼り合わせて加工し製造する方法である。上記流延製膜法としては、逐次法(逐次コーティング法)と共押出法(共押出流延製膜法)とが挙げられる。逐次法は、非熱可塑性ポリイミドまたはその前駆体を含む溶液と、熱可塑性ポリイミドまたはその前駆体を含む溶液とを、支持体上に順次コーティングしていく方法である。共押出法は、支持体上に非熱可塑性ポリイミド系ワニス及び熱可塑性ポリイミド系ワニスの双方を同時に共押出ダイを用いて押出し製膜する方法である。中でも、ポリイミド系多層フィルムの加熱収縮率を所望の範囲に制御しやすいことから、共押出法が好ましく用いられる(例えば特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−99554号公報
【特許文献2】特開平7−214637号公報
【特許文献3】特開平10−138318号公報
【特許文献4】特開2010−111719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
共押出法は、共押出ダイスから押出された複数の溶液を平滑な支持体上に連続的に押出し、溶媒の一部を揮散せしめることで自己支持性のある多層ゲルフィルムを得、次いで前記支持体上から多層ゲルフィルムを引き剥がし、最後に高温加熱処理することでイミド化を進行させる。支持体上から多層ゲルフィルムを引き剥がす際、多層ゲルフィルムの表層の一部や多層ゲルフィルム端部の厚みが異なる部分の一部が支持体上に残ることがある。本発明の目的は、多層ゲルフィルムと支持体との密着強度をコントロールし、フィルムカス等の欠陥の少ない多層ポリイミド系フィルムを安定的に生産する手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、支持体上に形成された多層ゲルフィルムと支持体との密着強度を制御することで、フィルムカス等の欠陥の少ない多層ポリイミド系多層フィルムを安定的に生産できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、ポリイミドを含有する樹脂層を複数有するポリイミド系多層フィルムの製造方法であって、
(1)ポリイミドまたはその前駆体を含有する樹脂溶液を複数種類用いて、支持体上に、多層共押出ダイを用いて各樹脂溶液からなる液膜を積層してなる多層液膜を形成する多層液膜形成工程と、
(2)得られた多層液膜を、自己支持性を有する多層ゲルフィルムとするゲルフィルム形成工程
とを含み、上記ポリイミド系多層フィルムを構成する複数の液膜のうち支持体に接する最外層の液膜にはイミド化触媒が含有されており、化学脱水剤は含まれておらず、支持体上に形成された多層ゲルフィルムと支持体との密着強度が0.2kg/20cm〜2.4kg/20cmであることを特徴とするポリイミド系多層フィルムの製造方法に関する。
【0010】
上記ポリイミド系多層フィルムの支持体に接する側の面に熱可塑性ポリイミド樹脂を含有する層を配した構造であることが好ましい。
【0011】
上記多層共押出ダイが三層共押出ダイであり、中央層に化学脱水剤及びイミド化触媒を含有する溶液を添加することが好ましい。
【0012】
上記ポリイミド系多層フィルムを構成する複数の液膜のうち支持体に接しない最外層の液膜に、イミド化触媒及び/又は化学脱水剤を含まないことが好ましい。
【0013】
本発明は、上記ポリイミド系多層フィルムの製造方法により得られるポリイミド系多層フィルムに関する。
【0014】
本発明は、上記ポリイミド系多層フィルムに金属箔を貼り合わせて得られることを特徴とするフレキシブル金属張積層板に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、多層フィルムの層間に剥離を生じさせず、且つ、支持体からのフィルムの剥離性を良好に保ち、且つ、フィルムカス欠陥の少ないポリイミド系多層フィルムの製造方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
【0017】
本発明に係るポリイミド系多層フィルムの製造方法は、ポリイミドを含有する樹脂層を複数、直接積層した構造を有しているポリイミド系多層フィルムの製造方法であって、ポリイミドまたはその前駆体を含有する樹脂溶液を複数種類用いて、支持体上に、多層共押出ダイを用いて各樹脂溶液からなる液膜が積層されてなる多層液膜を形成する多層液膜形成工程と、得られた多層液膜を自己支持性を有する多層ゲルフィルムとするゲルフィルム形成工程とを含んでおり、上記ポリイミド系多層フィルムを構成する複数の液膜のうち支持体に接する最外層の液膜にはイミド化触媒が含有されており、化学脱水剤は含まれておらず、さらに支持体上に形成された多層ゲルフィルムと支持体との密着強度が0.2kg/20cm〜2.4kg/20cmであることを特徴としている。上記密着強度は更には0.2kg/20cm〜2.1kg/20cmであることがフィルムカス等の欠陥を減らす観点から好ましい。上記密着強度は更には0.2kg/20cm〜1.6kg/20cmであることがフィルムカス等の欠陥を減らす観点から好ましい。
【0018】
本発明における非熱可塑性ポリイミドとは、一般に加熱しても軟化、接着性を示さないポリイミドをいう。本発明では、非熱可塑性フィルムを単独で製膜し得られたフィルムで、450℃、1分間加熱を行い、シワが入ったり伸びたりせず、形状を保持しているポリイミド、若しくはDSC(示差走査熱量測定)で、実質的にガラス転移温度を有しないポリイミドをいう。
【0019】
また、熱可塑性ポリイミドとは、一般的にDSC(示差走査熱量測定)で、ガラス転移温度を有するポリイミドをいう。本発明での熱可塑性ポリイミドは、前記ガラス転移温度が、150℃〜350℃であるものをいう。
【0020】
前記の非熱可塑性ポリイミドに用いる芳香族酸二無水物としては、特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2´,3,3´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)及びそれらの誘導体を含み、これらを単独で、または任意の割合で混合した混合物を好ましく用いることができる。
【0021】
中でも、ピロメリット酸二無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸二無水物であることが好ましく、製造時の溶媒溶解性の面で、ピロメリット酸二無水物、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物がさらに好ましい。
【0022】
前記の非熱可塑性ポリイミドに用いる芳香族ジアミンは特に制限されないが、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、p−フェニレンジアミン、4,4´−ジアミノジフェニルプロパン、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4´−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3´−ジアミノジフェニルスルホン、4,4´−ジアミノジフェニルスルホン、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、3,3´−ジアミノジフェニルエーテル、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、4,4´−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4´−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4´−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4´−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン及びそれらの誘導体などが挙げられ、これらを単独で、または任意の割合で混合した混合物を好ましく用いることができる。
【0023】
中でも、線膨張係数及び強度の制御の面でp−フェニレンジアミン、4,4´−ジアミノジフェニルエーテルを用いることが好ましい。
【0024】
なお、非熱可塑性ポリイミドが熱可塑性ブロック成分を含むことは、非熱可塑性ポリイミドと熱可塑性ポリイミドとの密着性を向上させることができる点で好ましい。非熱可塑性ポリイミドを構成するジアミンとしては、熱可塑性ブロックを形成する面で2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを用いることが好ましい。
【0025】
前記の熱可塑性ポリイミドに用いる芳香族酸二無水物としては、特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2´,3,3´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)及びそれらの誘導体を含み、これらを単独で、または任意の割合で混合した混合物を好ましく用いることができる。
【0026】
中でも、ピロメリット酸二無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸二無水物であることが好ましく、フレキシブル金属張積層板の銅箔引き剥がし強度を高める面で3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましく、フレキシブル金属張積層板の銅箔引き剥がし強度を高めたままで、半田耐熱性の向上とさせる点で、ピロメリット酸二無水物と3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を併用することが好ましい。
【0027】
前記の熱可塑性ポリイミドに用いる芳香族ジアミンは特に制限されないが、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、p−フェニレンジアミン、4,4´−ジアミノジフェニルプロパン、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4´−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3´−ジアミノジフェニルスルホン、4,4´−ジアミノジフェニルスルホン、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、3,3´−ジアミノジフェニルエーテル、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、4,4´−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4´−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4´−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4´−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン及びそれらの誘導体などが挙げられ、これらを単独で、または任意の割合で混合した混合物を好ましく用いることができる。
【0028】
中でも、熱可塑性ポリイミドを構成する2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンは、金属箔張積層板の金属箔の引き剥がし強度を向上させる点で好ましい。
【0029】
本発明にかかるポリイミド系多層フィルムは、何層でもよく、特に銅張積層板に用いられるポリイミド系多層フィルムは銅箔をラミネートできるように最外層が熱可塑性ポリイミドであることが通常である。また、加熱収縮率を抑制するため、ポリイミド系多層フィルムの最外層以外の層は非熱可塑性ポリイミドであることが通常であるが、下記説明する中央層が非熱可塑性ポリイミド、その両面に最外層として熱可塑性ポリイミドを配した構造に限定されるわけではない。また、設備面・コスト面・生産性の観点からポリイミド系多層フィルムの総数は最低限に抑えることが通常であり、結果として、非熱可塑性ポリイミドの両面に非熱可塑性ポリイミドを配した三層構造のポリイミドフィルムが、両面金属張積層板を製造でき、フレキシブルプリント配線板の軽量化、小型化、高密度化を実現できる点で好ましい。
【0030】
三層ポリイミドフィルムの製造方法としては、三層共押出により、同時に三層ポリアミド酸を支持体に流延して、三層ポリイミドフィルムを製造する。その際、支持体に直接接するポリアミド酸溶液中に、イミド化触媒を含有させることが密着強度をコントロールする上で好ましい。イミド化触媒を含有させることで、支持体上に直接接するポリアミド酸のイミド化が促進され、ポリアミド酸とポリイミドとの溶媒溶解度の差により、溶剤が染み出し、支持体上に部分的な貼り付きも残さず、三層ゲルフィルムを容易に剥がせるようになる。また、中央層に添加される化学脱水剤及びイミド化触媒の量は諸特性によって決定されることが通常で、支持体とゲルフィルムの密着性を考慮して決定されることはない。そのため、支持体とゲルフィルムの密着性は予想することが困難であるが、支持体に直接接するポリアミド酸にイミド化触媒を混合することで、支持体とゲルフィルムの密着強度を容易にコントロールできる。このため、支持体に直接接するポリアミド酸溶液中に、イミド化触媒を含有させることが有用となる。イミド化触媒に加えて、化学脱水剤を含有させると、加熱しなくとも化学的にイミド化が進行して昇粘し、支持体への流延が困難となる。流延直前に化学脱水剤を含有させる場合にのみ製膜可能となるが、設備面、コスト面の観点から好ましくない。化学脱水剤が含まれていない場合は前述のような昇粘はなく、混合後の経過時間をケアする必要がないことから生産性の観点で好ましい。
【0031】
本発明の三層ポリイミドフィルムの製造方法は、三層共押出でポリアミド酸溶液を三層ダイへ同時に供給し、前記ダイの吐出口から三層の薄膜状体として、支持体上に流延し、支持体上で加熱した後、三層ゲルフィルムを支持体から剥がし、200℃以上の高温で加熱して、三層ポリイミドフィルムを製造する方法がある。
【0032】
本発明では、中央層は非熱可塑性ポリイミド層であることが好ましい。以下、中央層が非熱可塑性ポリイミド層である例について記載する。
【0033】
中央層である非熱可塑性ポリイミド層のポリアミド酸溶液には、化学脱水剤とイミド化触媒が含まれていることが好ましいが、化学脱水剤の含有量は、化学脱水剤及びイミド化触媒を含有せしめる溶液に含まれるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して、0.5〜4.5モルが好ましく、1.0〜4.0モルがさらに好ましい。イミド化触媒の含有量は、化学脱水剤及びイミド化触媒を含有せしめる溶液に含まれるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して、0.05〜2.0モルが好ましく、0.05〜1.0モル、さらには0.1〜0.8モルが特に好ましい。
【0034】
支持体上に直接接するポリアミド酸溶液のイミド化触媒の含有量は、イミド化触媒を含有せしめる溶液に含まれるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して、0.05〜4.0モルが好ましく、0.05〜2.0モル、さらには0.1〜1.8モルが特に好ましい。
【0035】
イミド化時間に関しては、実質的にイミド化および乾燥が完結するに十分な時間を取ればよく、一義的に限定されるものではないが、一般的には、化学脱水剤を用いる化学キュア法を採用する場合、1〜600秒程度、化学脱水剤を用いない熱キュア法を採用する場合、60〜1800秒の範囲で適宜設定される。
【0036】
イミド化する際にかける張力としては、1kg/m〜15kg/mの範囲内とすることが好ましく、5kg/m〜10kg/mの範囲内とすることが特に好ましい。張力が上記範囲より小さい場合、フィルム搬送時にたるみや蛇行が生じ、巻取り時にシワが入ったり、均一に巻き取れない等の問題が生じる可能性がある。逆に上記範囲よりも大きい場合、強い張力がかかった状態で高温加熱されるため、金属張積層板用基材を用いて作製される金属張積層板の寸法特性が悪化することがある。
【0037】
三層ポリイミドフィルムの厚みとしては、7.5μm以上、125μm以下が好ましい。三層ポリイミドフィルム中の非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも片面の熱可塑性ポリイミド層の厚みは、1.7μ以上が好ましい。1.7μm未満であると、金属箔表面の粗度にもよるが銅箔との密着性が悪くなることがあった。
【0038】
以下に、三層共押出による三層ポリイミドフィルムの製造方法について述べる。
【0039】
一般的に用いられる方法について説明すると、三層ダイから押出された前記の溶液を、平滑な支持体上に連続的に押し出し、次いで、前記支持体上の三層の薄膜状体の溶媒の少なくとも一部を揮散せしめることで、自己支持性を有する三層ゲルフィルムを得る。支持体上の三層ポリアミド酸を最高温度は100〜200℃で加熱することが好ましい。
【0040】
さらに、当該三層ゲルフィルムを前記支持体上から剥離し、最後に、当該三層ゲルフィルムを高温(250−600℃)で充分に加熱処理することによって、溶媒を実質的に除去すると共にイミド化を完全に進行させることで三層ポリイミドフィルムを得ることができる。支持体から引き剥がした三層ゲルフィルムは、ポリアミド酸からポリイミドへの硬化の中間段階にあり、自己支持性を有し、式(1)
(A−B)×100/B・・・・(1)
式(1)中
A,Bは以下のものを表す。
A:三層膜の重量
B:三層膜を450℃で20分間加熱した後の重量
から算出される揮発分含量は5〜200重量%の範囲、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは30〜80重量%の範囲にある。この範囲の三層ゲルフィルムを用いることが好適であり、焼成過程でフィルム破断、乾燥ムラによるフィルムの色調ムラ、特性ばらつき等の不具合を抑制できる点で好ましい。また、熱可塑性ポリイミド層の熔融流動性を向上させる目的で、意図的にイミド化率を低くする及び/又は溶媒を残留させてもよい。
本発明に係る支持体とは、三層ダイから押出された三層液膜を流延するもので、当該支持体上で三層液膜を加熱乾燥せしめ、自己支持性を付与するものである。該支持体の形状は特に問わないが、接着フィルムの生産性を考慮すると、ドラム状若しくはベルト状であることが好ましい。また、該支持体の材質も特に問わず、金属、プラスチック、ガラス、磁器などが挙げられ、好ましくは金属であり、更に好ましくは耐腐食性に優れるSUS材である。また、Cr、Ni、Snなどの金属メッキをしても良い。
【0041】
上記の三層ダイとしては各種構造のものが使用できるが、例えば複数層用フィルム製造用のTダイス等が使用できる。また、従来既知のあらゆる構造のものを好適に使用可能であるが、特に好適に使用可能なものとして、フィードブロックTダイやマルチマニホールドTダイが例示される。
【0042】
本発明においてポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、ポリアミド酸を溶解する溶媒であればいかなるものも用いることができるが、アミド系溶媒、すなわちN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどを例示することができる。中でも、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドを特に好ましく用いることができる。
本発明において非熱可塑性ポリアミド酸の重合にはいかなるモノマーの添加方法を用いても良い。代表的な重合方法として、次のような方法が挙げられる。すなわち、
1)芳香族ジアミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法、
2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法、
3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いてここに芳香族ジアミン化合物を追加添加後、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法、
4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解および/または分散させた後、実質的に等モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法、
5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法、
などのような方法である。これらの方法を単独で用いても良いし、部分的に組み合わせて用いることもできる。
【0043】
中でも、非熱可塑性ポリイミド層のポリアミド酸は、下記の工程(a)〜(c)で得られることが好ましい。
(a)芳香族酸二無水物と、これに対し過剰モル量の芳香族ジアミンとを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る
(b)続いて、ここに芳香族ジアミンを追加添加する
(c)更に、全工程における芳香族酸二無水物と芳香族ジアミンが実質的に等モルとなるように芳香族酸二無水物を添加して重合し、ポリアミド酸溶液を得る。
【0044】
前記方法の中でも、(a)で得られたプレポリマーが、熱可塑性ブロック成分となることが好ましい。次に、プレポリマーが熱可塑性ブロック成分であるかの判定方法について述べる。
【0045】
(熱可塑性ブロック成分の判定方法)
プレポリマー製造時に使用した酸二無水物とジアミンを等モル量に補正して(使用した酸二無水物が複数種である場合、その比率は固定し、また使用したジアミンが複数種である場合も、その比率は固定した。)得られたポリアミド酸溶液を、コンマコーターを用いてアルミ箔上に流延し、130℃×100秒で加熱した後、アルミ箔から自己支持性のゲルフィルムを引き剥がして、金属枠に固定する。その後、300℃×20秒、450℃×1分熱処理した際に、フィルムが軟化したり、溶融したりして、外観が変形している場合、熱可塑性ブロック成分と判定した。
【0046】
熱可塑性ブロック成分となりうる酸二無水物及びジアミンは特に制限されないが、酸二無水物としては、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を必須成分として用いることが好ましく、粘弾性と耐熱性のバランスがとれる面で、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を必須成分として用いることがさらに好ましい。また、ジアミンとしては、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを必須成分として用いることが好ましい
本発明における熱可塑性ポリイミドの熱可塑性ポリアミド酸の製造方法は、(a)酸二無水物又はジアミンと、これに対して過剰モル量のジアミン又は酸二無水物とを有機極性中で反応させ、両末端にアミノ基又は酸無水物を有するプレポリマーを得る工程、(b)続いて、全工程における酸二無水物とジアミンの比が、決めた比になるように、酸二無水物又はジアミンを添加して重合することが好ましい。(b)で、酸二無水物又はジアミンを添加する方法として、粉末を投入する方法、予め酸二無水物を有機極性溶媒に溶解した酸溶液を投入する方法等があるが、反応が均一に進行しやすい面で、酸溶液を投入する方法が好ましい。
【0047】
重合時の固形成分濃度は、10〜30重量%であることが好ましい。固形成分濃度は、重合速度、重合粘度で決めることができる。重合粘度は、熱可塑性ポリイミドのポリアミド酸溶液を、支持体フィルムに塗工する場合、又は非熱可塑性ポリイミドと共押出する場合に合わせて設定することができるが、塗工する場合、例えば、固形成分濃度14重量%において重合粘度は100poise以下であることが好ましい。また、共押出する場合、例えば、固形成分濃度14重量%において重合粘度が100poise〜1200poiseであることが好ましく、150poise〜800poiseは、得られる三層ポリイミドフィルムの膜厚を均一にできることで好ましい。前記で説明した芳香族酸二無水物と芳香族ジアミンは、三層ポリイミドフィルムの特性及び生産性を考慮し、順番を変更して用いることができる。
【0048】
また、摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性等のフィルムの諸特性を改善する目的でフィラーを添加することもできる。フィラーとしては特に制限されないが、好ましい例としてはシリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられる。
【0049】
フィラーの粒子径は改質すべきフィルム特性と添加するフィラーの種類によって決定されるため、特に限定されるものではないが、一般的には平均粒径が0.05〜20μm、好ましくは0.1〜10μm、更に好ましくは0.1〜7μm、特に好ましくは0.1〜5μmである。粒子径がこの範囲を下回ると改質効果が現れにくくなり、この範囲を上回ると表面性を大きく損なったり、機械的特性が大きく低下したりする可能性がある。また、フィラーの添加部数についても改質すべきフィルム特性やフィラー粒子径などにより決定されるため特に限定されるものではない。一般的にフィラーの添加量はポリイミド100重量部に対して0.01〜50重量部、好ましくは0.01〜20重量部、更に好ましくは0.02〜10重量部である。フィラー添加量がこの範囲を下回るとフィラーによる改質効果が現れにくく、この範囲を上回るとフィルムの機械的特性が大きく損なわれる可能性がある。
【0050】
フィラーの添加は、例えば、
(1)重合前または途中に重合反応液に添加する方法
(2)重合完了後、3本ロールなどを用いてフィラーを混錬する方法
(3)フィラーを含む分散液を用意し、これをポリアミド酸有機溶媒溶液に混合する方法
(4)ビーズミル等により分散する方法
などいかなる方法を用いてもよいが、フィラーを含む分散液をポリアミド酸溶液に混合する方法、特に製膜直前に混合する方法が、製造ラインのフィラーによる汚染が最も少なくてすむため、好ましい。
【0051】
フィラーを含む分散液を用意する場合、ポリアミド酸の重合溶媒と同じ溶媒を用いるのが好ましい。また、フィラーを良好に分散させ、また分散状態を安定化させるために、分散剤、増粘剤等をフィルム物性に影響を及ぼさない範囲内で用いることもできる。
【0052】
フィルムの摺動性改善のために添加する場合、粒子径は0.1〜10μm、好ましくは0.1〜5μmである。粒子径がこの範囲を下回ると摺動性改善の効果が発現しにくく、この範囲を上回ると高精細な配線パターンを作成し難くなる傾向にある。またさらにこの場合、フィラーの分散状態も重要であり、20μm以上のフィラーの凝集物が50個/m以下、好ましくは40個/m以下にするのが好ましい。20μm以上のフィラー凝集物がこの範囲よりも多いと、接着剤塗工時にはじきの原因となったり、高精細配線パターンを作成したときに接着面積の減少をきたしてフレキシブルプリント基板そのものの絶縁信頼性を落とす傾向にある。
【0053】
ポリイミドは、ポリイミドの前駆体、即ちポリアミド酸からの脱水転化反応により得られ、当該転化反応を行う方法としては、熱によってのみ行う熱キュア法と、化学脱水剤を使用する化学キュア法の2法が最も広く知られている。しかしながら、生産性に優れていることから、化学キュア法の採用がより好ましい。熱キュア法と化学キュア法は、イミド化触媒を用いることがイミド化反応を早く進行させる面で好ましい。
【0054】
化学脱水剤とは、ポリアミド酸に対する脱水閉環剤であり、その主成分として、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、N,N′−ジアルキルカルボジイミド、低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪族酸無水物、アリールスルホン酸ジハロゲン化物、チオニルハロゲン化物またはそれら2種以上の混合物を好ましく用いることができる。その中でも特に、脂肪族酸無水物及び芳香族酸無水物が良好に作用する。また、イミド化触媒とはポリアミド酸に対する脱水閉環作用を促進する効果を有する成分であるが、例えば、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、複素環式3級アミンを用いることができる。そのうち、イミダゾ−ル、ベンズイミダゾ−ル、イソキノリン、キノリン、またはβ−ピコリンなどの含窒素複素環化合物であることが好ましい。さらに、化学脱水剤及びイミド化触媒からなる溶液中に、有機極性溶媒を導入することも適宜選択されうる。
【0055】
本発明における多層ゲルフィルムと支持体との密着強度のコントロールについて、コントロールする手段は特に限定されないが、支持体側からのアプローチと多層ゲルフィルム側からのアプローチがある。支持体の材質、表面加工、表面処理、等の影響で密着強度は変化するが、製膜時の密着強度に応じタイムリーに対応するためにはゲルフィルム側からのアプローチが好ましい。本発明では支持体に接する最外層の液膜にイミド化触媒を含有させることで密着強度を制御した。イミド化触媒の種類は特に限定されるものではなく、例えば、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、複素環式3級アミンを用いることができる。そのうち、イミダゾ−ル、ベンズイミダゾ−ル、イソキノリン、キノリン、ルチジン、ピリジン、β−ピコリンなどの含窒素複素環化合物であることが好ましい。イミド化触媒を含有させることで多層ゲルフィルムと支持体との密着強度を低下できるが、含有量過多の場合は多層ゲルフィルムが支持体から浮いてしまい安定的に製膜を続けることができない。多層ゲルフィルムと支持体の密着強度を適切な範囲に制御することが、フィルムカス等の欠陥の少ない多層ポリイミド系フィルムを安定的に生産する手法を提供することに繋がる。多層ゲルフィルムと支持体との密着強度が0.2kg/20cm〜2.4kg/20cmであることを特徴としている。上記密着強度は更には0.2kg/20cm〜2.1kg/20cmであることがフィルムカス等の欠陥を減らす観点から好ましい。上記密着強度は更には0.2kg/20cm〜1.6kg/20cmであることがフィルムカス等の欠陥を減らす観点から好ましい。
【0056】
本発明にかかるフレキシブル金属張積層板の製造方法について説明すると、以下の通りであるが、これに限定されるものでない。
【0057】
本発明にかかるフレキシブル金属張積層板の製造方法は、上記三層ポリイミドフィルムに金属箔を貼り合わせる工程を含むことが好ましい。フレキシブル金属積層板で用いられる銅箔は、厚みは1〜25μmを用いることができ、圧延銅箔、電解銅箔のどちらを用いても良い。
【0058】
三層ポリイミドフィルムと金属箔の貼り合わせ方法としては、例えば、一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置、またはダブルベルトプレス(DBP)による連続処理を用いることができる。中でも、装置構成が単純であり保守コストの面で有利であるという点から、一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置を用いることが好ましい。
【0059】
ここでいう「一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置」とは、材料を加熱加圧するための金属ロールを有している装置であればよく、その具体的な装置構成は特に限定されるものではない。
【0060】
なお、三層ポリイミドフィルムと金属箔とを熱ラミネートにより貼り合わせる工程を、以下、「熱ラミネート工程」と称する。
【0061】
上記熱ラミネートを実施する手段(以下、「熱ラミネート手段」ともいう)の具体的な構成は特に限定されるものではないが、得られる積層板の外観を良好なものとするために、加圧面と金属箔との間に保護材料を配置することが好ましい。
【0062】
上記保護材料としては、熱ラミネート工程の加熱温度に耐えうる材料、例えば、非熱可塑性ポリイミドフィルム等の耐熱性プラスチック、銅箔、アルミニウム箔、SUS箔等の金属箔等が挙げられる。中でも、耐熱性、再使用性等のバランスが優れる点から、非熱可塑性ポリイミドフィルム、もしくは、ガラス転移温度(Tg)がラミネート温度よりも50℃以上高い熱可塑性ポリイミドからなるフィルムが好ましく用いられる。熱可塑性ポリイミドを使用する場合、上記の条件を満たすものを選択することによって、熱可塑性ポリイミドのロールへの付着を防ぐことができる。
【0063】
また、保護材料の厚みが薄いと、ラミネート時の緩衝並びに保護の役目を十分に果たさなくなるため、非熱可塑性ポリイミドフィルムの厚みは75μm以上であることが好ましい。
【0064】
また、この保護材料は、必ずしも1層である必要はなく、異なる特性を有する2層以上の三層構造でもよい。
【0065】
また、ラミネート温度が高温の場合、保護材料をそのままラミネートに用いると、急激な熱膨張により、得られるフレキシブル金属張積層板の外観や寸法安定性が充分でない場合がある。従って、ラミネート前に、保護材料に予備加熱を施すことが好ましい。このように、保護材料の予備加熱を行った後、ラミネートする場合、保護材料の熱膨張が終了しているため、フレキシブル金属張積層板の外観や寸法特性に影響を与えることが抑制される。
【0066】
予備加熱の手段としては、保護材料を加熱ロールに抱かせるなどして接触させる方法が挙げられる。接触時間としては、1秒間以上が好ましく、3秒間以上がさらに好ましい。接触時間が上記よりも短い場合、保護材料の熱膨張が終了しないままラミネートが行われるため、ラミネート時に保護材料の急激な熱膨張が起こり、得られるフレキシブル金属張積層板の外観や寸法特性が悪化することがある。保護材料を加熱ロールに抱かせる距離については、特に限定されず、加熱ロールの径と上記接触時間から適宜調整すればよい。
【0067】
上記熱ラミネート手段における被積層材料の加熱方式は、特に限定されるものではなく、例えば、熱循環方式、熱風加熱方式、誘導加熱方式等、所定の温度で加熱しうる従来公知の方式を採用した加熱手段を用いることができる。同様に、上記熱ラミネート手段における被積層材料の加圧方式も、特に限定されるものではなく、例えば、油圧方式、空気圧方式、ギャップ間圧力方式等、所定の圧力を加えることができる従来公知の方式を採用した加圧手段を用いることができる。
【0068】
上記熱ラミネート工程における加熱温度、すなわちラミネート温度は、三層ポリイミドフィルムのガラス転移温度(Tg)+50℃以上の温度であることが好ましく、三層ポリイミドフィルムのTg+100℃以上がより好ましい。Tg+50℃以上の温度であれば、三層ポリイミドフィルムと金属箔とを良好に熱ラミネートすることができる。また、Tg+100℃以上であれば、ラミネート速度を上昇させてその生産性をより向上させることができる。
【0069】
特に、本発明の三層ポリイミドフィルムのコアとして使用しているポリイミドフィルムは、Tg+100℃以上でラミネートを行った場合に、熱応力の緩和が有効に作用するように設計しているため、寸法安定性に優れたフレキシブル金属張積層板が、生産性良く得られる。
【0070】
加熱ロールへの接触時間は、0.1秒間以上が好ましく、より好ましくは0.2秒間以上、0.5秒間以上が特に好ましい。接触時間が上記範囲より短い場合、緩和効果が十分に発生しない場合がある。接触時間の上限は、5秒間以下が好ましい。5秒間よりも長く接触させても緩和効果が、より大きくなるわけではなく、ラミネート速度の低下やラインの取り回しに制約が生じるため好ましくない。
【0071】
また、ラミネート後に加熱ロールに接触させて徐冷を行ったとしても、依然としてフレキシブル金属張積層板と室温との差は大きく、また、残留歪みを緩和しきれていない場合もある。そのため、加熱ロールに接触させて徐冷した後のフレキシブル金属張積層板は、保護材料を配したままの状態で、後加熱工程を行うことが好ましい。この際の張力は、1〜10N/cmの範囲とすることが好ましい。また、後加熱の雰囲気温度は(温度−200℃)〜(ラミネート温度+100℃)の範囲とすることが好ましい。
【0072】
ここでいう「雰囲気温度」とは、フレキシブル金属張積層板の両面に密着させている保護材料の外表面温度をいう。実際のフレキシブル金属張積層板の温度は、保護材料の厚みによって多少変化するが、保護材料表面の温度を上記範囲内にすれば、後加熱の効果を発現させることが可能である。保護材料の外表面温度測定は、熱電対や温度計などを用いて行うことができる。
【0073】
上記熱ラミネート工程におけるラミネート速度は、0.5m/分以上であることが好ましく、1.0m/分以上であることがより好ましい。0.5m/分以上であれば、十分な熱ラミネートが可能になり、さらに、1.0m/分以上であれば、生産性をより一層向上することができる。
【0074】
上記熱ラミネート工程における圧力、すなわちラミネート圧力は、高ければ高いほどラミネート温度を低く、かつラミネート速度を速くすることができる利点があるが、一般に、ラミネート圧力が高すぎると、得られる積層板の寸法変化が悪化する傾向がある。逆に、ラミネート圧力が低すぎると、得られる積層板の金属箔の接着強度が低くなる。そのため、ラミネート圧力は、49〜490N/cm(5〜50kgf/cm)の範囲内であることが好ましく、98〜294N/cm(10〜30kgf/cm)の範囲内であることがより好ましい。この範囲内であれば、ラミネート温度、ラミネート速度、およびラミネート圧力の三条件を良好なものにすることができ、生産性をより一層向上することができる。
【0075】
上記ラミネート工程における接着フィルム張力は、0.01〜4N/cmの範囲内であることが好ましく、0.02〜2.5N/cmの範囲内であることがより好ましく、0.05〜1.5N/cmの範囲内であることが特に好ましい。張力が上記範囲を下回ると、ラミネートの搬送時に、たるみや蛇行が生じ、均一に加熱ロールに送り込まれないために、外観の好なフレキシブル金属張積層板を得ることが困難となることがある。逆に、上記範囲を上回ると、接着層のTgと貯蔵弾性率の制御では緩和できないほど張力の影響が強くなり、寸法安定性が劣ることがある。
【0076】
本発明にかかるフレキシブル金属張積層板を得るためには、連続的に被積層材料を加熱しながら圧着する熱ラミネート装置を用いることが好ましい。さらに、この熱ラミネート装置では、熱ラミネート手段の前段に、被積層材料を繰り出す被積層材料繰出手段を設けてもよいし、熱ラミネート手段の後段に、被積層材料を巻き取る被積層材料巻取手段を設けてもよい。これらの手段を設けることで、上記熱ラミネート装置の生産性をより一層向上させることができる。
【0077】
上記被積層材料繰出手段および被積層材料巻取手段の具体的な構成は特に限定されるものではなく、例えば、接着フィルムや金属箔、あるいは得られる積層板を巻き取ることのできる公知のロール状巻取機等を挙げることができる。
【0078】
さらに、保護材料を巻き取ったり繰り出したりする保護材料巻取手段や保護材料繰出手段を設けると、より好ましい。これら保護材料巻取手段・保護材料繰出手段を備えていれば、熱ラミネート工程で、一度使用された保護材料を巻き取って繰り出し側に再度設置することで、保護材料を再使用することができる。
【0079】
また、保護材料を巻き取る際に、保護材料の両端部を揃えるために、端部位置検出手段および巻取位置修正手段を設けてもよい。これによって、精度よく保護材料の端部を揃えて巻き取ることができるので、再使用の効率を高めることができる。なお、これら保護材料巻取手段、保護材料繰出手段、端部位置検出手段および巻取位置修正手段の具体的な構成は特に限定されるものではなく、従来公知の各種装置を用いることができる。
【0080】
フレキシブル金属張積層板の三層ポリイミドフィルムと金属箔の引き剥がし強度は、10N/cm以上が好ましい。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、合成例、実施例及び比較例における三層ポリイミドフィルムと金属箔の引き剥がし強度の評価法は次の通りである。
【0082】
(金属張積層板の作製方法)
三層ポリイミドフィルムの両面に18μmの圧延銅箔(BHY−22B−T;日鉱金属製)、さらにその両側に保護材料(アピカル125NPI;カネカ製)を配して、熱ロールラミネート機を用いて、ラミネート温度380℃、ラミネート圧力294N/cm(30kgf/cm)、ラミネート速度1.0m/分の条件で連続的に熱ラミネートを行い、フレキシブル金属張積層板を作製した。
【0083】
(金属箔の引き剥がし強度)
JIS C6471の「6.5 引きはがし強さ」に従って、サンプルを作製し、3mm幅の金属箔部分を、90度の剥離角度、200mm/分の条件で剥離し、その荷重を測定した。支持体上に直接接する熱可塑性ポリイミド層側をB面、それと反対側をA面とした。
【0084】
以下に、合成例で用いるモノマー及び溶媒の略称を示す。
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
BAPP:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
ODA:4,4´−ジアミノジフェニルエーテル
PDA:p−フェニレンジアミン
BPDA:3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物物
BTDA:3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
以下に、ポリアミド酸溶液の合成例を示す。
【0085】
(合成例1;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
10℃に冷却したN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)219kgに、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)43.9kgを溶解させた後、3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)3.1kgを徐々に添加し、窒素雰囲気下で1時間撹拌させて溶解させた。ここに、ピロメリット酸二無水物(PMDA)19.8kgを添加し、窒素雰囲気下で1時間撹拌して溶解させた。別途調製しておいたPMDAのDMF溶液(PMDA:DMF=0.9kg:10kg)を上記反応液に徐々に添加し、粘度が1200ポイズ程度に達したところで添加を止めた。1時間撹拌を行って固形分濃度17重量%、23℃での回転粘度が1300ポイズの、熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液を得た。
【0086】
(合成例2;熱可塑性ポリイミド前駆体の合成)
10℃に冷却したN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)227kgに、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)を40.9kgを溶解させた後、3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)20.5kgを徐々に添加し、窒素雰囲気下で1時間撹拌させて溶解させた。ここに、ピロメリット酸二無水物(PMDA)5.4kgを添加し、窒素雰囲気下で1時間撹拌し溶解させた。別途調製しておいたPMDAのDMF溶液(PMDA:DMF=0.9kg:10kg)を上記反応液に徐々に添加し、粘度が1200ポイズ程度に達したところで添加を止めた。1時間撹拌を行って固形分濃度17重量%、23℃での回転粘度が1300ポイズの、熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液を得た。
【0087】
(合成例3:非熱可塑性ポリイミドの前駆体の合成)
10℃に冷却したN,N−ジメチルフォルムアミド(DMF)239kgに4,4'−オキシジアニリン(ODA)6.9kg、p−フェニレンジアミン(PDA)6.2kg、2,2−ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(BAPP)9.4kgを溶解させた後、ピロメリット酸二無水物(PMDA)10.4kgを添加し、窒素雰囲気下で1時間撹拌して溶解させた。ここに、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)20.3kgを添加し、窒素雰囲気下で1時間撹拌させて溶解させた。別途調製しておいたPMDAのDMF溶液(PMDA:DMF=0.9kg:7.0kg)を上記反応液に徐々に添加し、粘度が3000ポイズ程度に達したところで添加を止めた。1時間撹拌を行って固形分濃度18重量%、23℃での回転粘度が3200ポイズの、非熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液を得た。
【0088】
(実施例1)
リップ幅200mmのマルチマニホールド式の三層ダイを用い、合成例1で得られたポリアミド酸溶液/合成例3で得られたポリアミド酸溶液/合成例1で得られたポリアミド酸溶液の順の3層構造でSUS性のエンドレスベルトに押出し流延した。なお、合成例3で得られたポリアミド酸が三層ダイに入る直前に、ポリアミド酸ユニット1モルに対して2.3モルの無水酢酸と0.25モルのイソキノリンを添加し、ミキサーで混合した。また、支持体(エンドレスベルト)と接する側の合成例1で得られたポリアミド酸が三層ダイに入る直前に、ポリアミド酸ユニット1モルに対して1.4モルの3,5−ジエチルピリジンを添加し、ミキサーで混合した。流延後、この三層膜を50℃から130℃の範囲で段階的に100秒間加熱した後、自己支持性を有する三層ゲルフィルムをバネ測りを介して引き剥がし、支持体とゲルフィルムの密着強度を測定した。同時に支持体表面と引き剥がされたゲルフィルムの支持体との接触面を観察した。結果は表1にまとめた。なお、観察したゲルフィルムの表面層に部分的に剥離した痕があり、支持体表面にはささくれたゲルフィルムカスが点在していた。剥離したカスが存在することからこの状況を剥離カス有と称している。引き剥がされたゲルフィルムをピンシートに固定し、250℃から400℃の範囲で段階的に乾燥・イミド化し、得られた多層ポリイミドフィルムの各層の膜厚を測定したところ、3.2μm/12.5μm/3.2μmであった。
【0089】
(実施例2)
合成例1のポリアミド酸の代わりに、合成例2のポリアミド酸を使用することを除き、実施例1と同様に実施した。結果は、表1にまとめた。
【0090】
(実施例3)
支持体と接するポリアミド酸が三層ダイスに入る直前に、ポリアミド酸ユニット1モルに対して1.8モルの3,5−ルチジンを添加することを除き、実施例1と同様に実施した。結果は表1にまとめた。
【0091】
(実施例4)
支持体と接するポリアミド酸が三層ダイスに入る直前に、ポリアミド酸ユニット1モルに対して3.6モルの3,5−ルチジンを添加することを除き、実施例1と同様に実施した。結果は表1にまとめた。
【0092】
(実施例5)
支持体と接するポリアミド酸が三層ダイスに入る直前に、ポリアミド酸ユニット1モルに対して1.8モルの3,5−ルチジンを添加することを除き、実施例2と同様に実施した。結果は表1にまとめた。
【0093】
(実施例6)
支持体と接するポリアミド酸が三層ダイスに入る直前に、ポリアミド酸ユニット1モルに対して3.6モルの3,5−ルチジンを添加することを除き、実施例2と同様に実施した。結果は表1にまとめた。
【0094】
(実施例7)
支持体と接するポリアミド酸に添加するイミド化触媒を重合直後に添加して撹拌し、該ポリアミド酸が三層ダイスに入るまでに10時間以上経過していることを除き、実施例3と同様に実施した。結果は表1にまとめた。
【0095】
(実施例8)
支持体と接するポリアミド酸に添加するイミド化触媒を重合直後に添加して撹拌し、該ポリアミド酸が三層ダイスに入るまでに10時間以上経過していることを除き、実施例5と同様に実施した。結果は表1にまとめた。
【0096】
(比較例1)
支持体と接するポリアミド酸にイミド化触媒を添加しないことを除き、実施例1と同様に実施した。結果は表1にまとめた。
【0097】
(比較例2)
支持体と接するポリアミド酸が三層ダイに入る直前に添加するイミド化触媒のポリアミド酸ユニット1モルに対するモル比が2.8であることを除き、実施例1と同様に実施した。結果は表1にまとめた。なお、比較例2においては支持体と多層ゲルフィルムとの密着強度が非常に弱くいために多層ゲルフィルムが支持体から剥がれてしまい、安定的な長尺運転が困難であった。この状況を支持体からのゲルフィルム浮き有と称している。
【0098】
(比較例3)
支持体と接するポリアミド酸にイミド化触媒を添加しないことを除き、実施例2と同様に実施した。結果は表1にまとめた。
【0099】
(比較例4)
支持体と接するポリアミド酸が三層ダイに入る直前に添加するイミド化触媒のポリアミド酸ユニット1モルに対するモル比が2.8であることを除き、実施例2と同様に実施した。結果は表1にまとめた。なお、比較例2同様に支持体からのゲルフィルム浮きが生じていた。
【0100】
(比較例5)
支持体と接するポリアミド酸に添加するイミド化触媒を重合直後に添加し、同時にポリアミド酸1モルに対して2モルの無水酢酸を添加して撹拌することを除き、実施例7と同様に実施した。10時間後にはポリアミド酸が固化しており、支持体に流延することができなかった。
【0101】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂を含有する樹脂層を複数有するポリイミド系多層フィルムの製造方法であって、
(1)ポリイミド樹脂またはその前駆体を含有する樹脂溶液を複数種類用いて、支持体上に、多層共押出ダイを用いて各樹脂溶液からなる液膜を積層してなる多層液膜を形成する多層液膜形成工程と、
(2)得られた多層液膜を、自己支持性を有する多層ゲルフィルムとするゲルフィルム形成工程
とを含み、上記ポリイミド系多層フィルムを構成する複数の液膜のうち支持体に接する最外層の液膜にはイミド化触媒が含有されており、化学脱水剤は含まれておらず、支持体上に形成された多層ゲルフィルムと支持体との密着強度が0.2kg/20cm〜2.4kg/20cmであることを特徴とするポリイミド系多層フィルムの製造方法。
【請求項2】
上記ポリイミド系多層フィルムの支持体に接する側の面に熱可塑性ポリイミド樹脂を含有する層を配した構造であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド系多層フィルムの製造方法。
【請求項3】
上記多層共押出ダイが三層共押出ダイであり、中央層に化学脱水剤及びイミド化触媒を含有する溶液を添加することを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミド系多層フィルムの製造方法。
【請求項4】
上記ポリイミド系多層フィルムを構成する複数の液膜のうち支持体に接しない最外層の液膜に、イミド化触媒及び/又は化学脱水剤を含まないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミド系多層フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイミド系多層フィルムの製造方法により得られるポリイミド系多層フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載のポリイミド系多層フィルムに金属箔を貼り合わせて得られることを特徴とするフレキシブル金属張積層板。

【公開番号】特開2012−158149(P2012−158149A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20884(P2011−20884)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】