説明

ポリイミド系材料、ポリイミド系樹脂組成物、フィルム及びその製造方法

【課題】難燃性、耐熱性、透明性、非着色性に優れたフィルムを形成しうるポリイミド系材料を提供する。
【解決手段】(A)(A−1)式(1):


(式(1)中、R、Rはハロゲン原子等であり、Rは水素原子等である。h、jは0〜4の整数、kは0または1である。)等で表されるテトラカルボン酸二無水物から選ばれる少なくとも1種のアシル化合物、及び、(A−2)脂肪族及び/又は脂環族テトラカルボン酸二無水物、及びこれらの反応性誘導体から選ばれる少なくとも1種のアシル化合物と、(B)芳香族イミノ形成化合物と、を反応させて得られるポリイミド系材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリイミド系材料、該材料を含む組成物、ならびに該材料からなるフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンから得られる全芳香族ポリイミドは、分子の剛直性や、分子が共鳴安定化していること、強い化学結合を有すること等に起因して、優れた耐熱性、機械的特性、電気特性、耐酸化・加水分解性を有しており、電気、電池、自動車および航空宇宙産業などの分野において、フィルム、コーティング剤、成型部品、絶縁材料として幅広く使用されている。
一方、光学部材に使用される材料には、優れた耐熱性、機械的特性等に加えて、難燃性、無色透明性、易成形(成型)性、光学特性(高屈折率等)に優れることが望ましい。
ここで、例えば、Kapton(東レ・デュポン社製)に代表される全芳香族ポリイミドフィルムは、上述のとおり、優れた耐熱性等を有し、電気等の分野には適するものの、着色性が高く、また、成形容易性に劣ることから、光学材料としての使用には制限があるという問題がある。
すなわち、全芳香族ポリイミドフィルムは、分子間あるいは分子内の電荷移動相互作用に由来する可視光領域の吸収により、黄色から褐色に着色しているという問題がある。また、全芳香族ポリイミドフィルムは、フィルム状に成形する際に、高温での熱処理を要するなど、プロセス負荷が高く、成形容易性が劣るという問題がある。具体的には、上記フィルムを形成するポリイミドは、有機溶媒に対する溶解性が低く、ポリイミドをそのまま用いてフィルムを形成することができない。そのため、前記ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸の溶液を用い、基板への塗布などによりフィルム状の塗膜を形成した後、該塗膜を400℃程度の高温で熱処理することにより、塗膜中のポリアミック酸をイミド化し、ポリイミドからなるフィルムを得る必要がある。
【0003】
このような問題を解決するために、非着色性や透明性を向上させたり、有機溶媒に対する可溶性を付与して成形性を向上させたポリイミドが種々提案されている。
例えば、パーフルオロアルキル基を有する特定の繰り返し構造からなる(全芳香族)ポリイミド共重合体が提案されている(特許文献1)。
また、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物及び1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンとから得られるポリイミドが提案されている(非特許文献1)。このポリイミドは、芳香族と脂肪族の二無水物を併用してなる、半芳香族のポリイミドである。
さらに、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物およびこれらの反応性誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のアシル含有化合物と、特定の式で表される、少なくとも一つのフェニレン基とイソプロピリデン基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種のイミノ形成化合物とを反応させてなるポリイミド樹脂が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3131940号公報
【特許文献2】特開2006−199945号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】High Performance Polymer 19、P175−193 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記文献に記載されているポリイミド樹脂は、一つ以上の物性(例えば、耐熱性等)が向上しているものの、難燃性が低いという問題がある。このため、フィルム、コーティング剤、成型部品、絶縁材料等の各種用途において、難燃性が求められる場合には、性能が十分ではないという問題があった。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、難燃性、耐熱性、透明性、及び非着色性に優れたフィルムを形成しうるポリイミド系材料、該ポリイミド系材料を含む組成物、該組成物からなるフィルム、及び、該フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のアシル化合物と、芳香族イミノ形成化合物を反応させて得られるポリイミド系材料によると、本発明の上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[10]を提供するものである。
[1] (A)(A−1)下記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物、下記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物、及びこれらの反応性誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のアシル化合物、及び、(A−2)脂肪族及び/又は脂環族テトラカルボン酸二無水物、及びこれらの反応性誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のアシル化合物と、(B)芳香族イミノ形成化合物と、を反応させて得られることを特徴とするポリイミド系材料。
【化1】

(式(1)中、R、Rは、各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基、または式(3)で表される基であり、Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基、または式(3)で表される基である。h、jは0〜4の整数を表わし、kは0または1である。ただし、k=0のとき、hは1〜4の整数を表わし、かつRの少なくとも1つは式(3)で表わされる基を示し、k=1のとき、Rの少なくとも1つは式(3)で表わされる基を示す。)
【化2】

(式(2)中、R〜Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基から選ばれる基であり、Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基、または式(3)で表される基である。l、mはそれぞれ独立に0〜4の整数を表わし、nは0または1である。ただし、n=0のとき、lは1〜4の整数を表わし、かつRの少なくとも1つは式(3)で表わされる基を示し、n=1のとき、Rの少なくとも1つは式(3)で表わされる基を示す。)
【化3】

(式(3)中、R〜Rは、各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基から選ばれる基であり、p、qはそれぞれ独立に0〜4の整数を表わす。)
[2] (A−2)脂肪族及び/又は脂環族テトラカルボン酸二無水物が、下記(a−1)成分、(a−2)成分、(a−3)成分、及び(a−4)成分からなる群より選ばれる少なくとも一種のアシル化合物である上記[1]に記載のポリイミド系材料。
(a−1)5員環の酸無水物骨格を有し、かつ6員環の酸無水物骨格及び架橋環構造を有しない化合物、及びこれらの反応性誘導体
(a−2)5員環の酸無水物骨格及び架橋環構造を有し、かつ、該架橋環構造を構成する少なくとも2つの炭素原子が酸無水物骨格を形成し、6員環の酸無水物骨格を有しない化合物、及びこれらの反応性誘導体
(a−3)5員環の酸無水物骨格及び6員環の酸無水物骨格を有する化合物、及びこれらの反応性誘導体
(a−4)6員環の酸無水物骨格を有し、かつ、5員環の酸無水物骨格を有しない化合物、及びこれらの反応性誘導体
【0009】
[3] (B)芳香族イミノ形成化合物が、下記式(4)で表わされる化合物である、上記[1]または[2]に記載のポリイミド系材料。
【化4】

(式(4)中、Xは−NHまたは−N=C=O、−NHSi(R25)(R26)(R27)であり、Yは直接結合、−CH−、−O−、−S−、−C(CH−から選ばれる1つの基であり、Zは直接結合、−CH−、−O−、−S−、−C(CH−、>C=O、−SO−から選ばれる1つの基であり、R〜R16は、各々独立して、水素、アルキル基、ビニル基、アリール基、ハロゲンから選ばれる基であり、R25〜R27は、各々独立して、炭素数1〜15のアルキル基である。)
[4] 上記(A−1)成分と上記(A−2)成分とのモル比((A−1)/(A−2))が、0.1〜10である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリイミド系材料。
[5] 上記(A)成分と上記(B)成分とのモル比((A):(B))が、1.00:0.95〜1.00:1.05である上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリイミド系材料。
[6] 上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリイミド系材料、及び、溶媒を含むポリイミド系樹脂組成物。
[7] 上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリイミド系材料からなるフィルム。
[8] 光学部材用である上記[7]に記載のフィルム。
[9] プリント配線用基板用である上記[7]に記載のフィルム。
[10] 上記[7]〜[9]のいずれかに記載のフィルムの製造方法であって、上記(A)アシル化合物と上記(B)イミノ形成化合物とを反応させて得られるポリアミック酸及び/又はポリイミドと、有機溶媒とを含む溶液を、基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜から前記溶媒を蒸発させて除去し、フィルムを得る工程とを含む、フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリイミド系材料は、難燃性、耐熱性、透明性、及び非着色性に優れている。
本発明のポリイミド系材料は、発光ダイオード周辺材料、太陽電池周辺材料、フラットディスプレー周辺材料、電子回路周辺材料等として使用することができる。具体的には、耐熱透明フィルム、導電性透明フィルム、封止剤、レンズ等の光学部材に使用することができる。電子回路周辺材料としては、プリント配線基板形成用材料およびプリント配線用基板を挙げることができ、具体的には、フレキシブルプリント配線用基板、リジットプリント配線用基板、光電子プリント配線用基板、COF(Chip on Film)用基板、TAB(Tape Automated Bonding)用基板等に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明のポリイミド系材料の成分について説明する。
[(A−1)成分]
(A−1)成分は、下記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物、下記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物、及びこれらの反応性誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のアシル化合物である。
このようなアシル化合物を用いることにより、難燃性に優れたポリイミド系材料を得ることができる。
【化5】

(式(1)中、R、Rは、各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基、または式(3)で表される基であり、Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基、または式(3)で表される基である。h、jはそれぞれ独立に0〜4の整数を表わし、kは0または1である。ただし、k=0のとき、hは1〜4の整数を表わし、かつRの少なくとも1つは式(3)で表わされる基を示し、k=1のとき、Rの少なくとも1つは式(3)で表わされる基を示す。)
【化6】

(式(2)中、R〜Rは、各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基から選ばれる基であり、Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基、または式(3)で表される基である。l、mはそれぞれ独立に0〜4の整数を表わし、nは0または1である。ただし、n=0のとき、lは1〜4の整数を表わし、かつRの少なくとも1つは式(3)で表わされる基を示し、n=1のとき、Rの少なくとも1つは式(3)で表わされる基を示す。)
【化7】

(式(3)中、R〜Rは、各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基から選ばれる基であり、p、qはそれぞれ独立に0〜4の整数を表わす。)
【0012】
ここで、反応性誘導体とは、前記式(1)または(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物に変化しうる化合物であり、例えば、テトラカルボン酸二無水物の当該無水物に代えて2つのカルボキシル基を有する化合物や、これら2つのカルボキシル基の中の片方または両方がエステル化されたエステル化物である化合物や、これら2つのカルボキシル基の中の片方または両方がクロル化された酸クロライド等が好適に用いられる。
(A−1)成分の例としては、下記式(1a)で表わされる化合物(前記式(1)においてkが0、R1が前記式(3)であって、R及びRが共に水素原子である化合物;以下、TAHQともいう。)や、下記式(1b)で表わされる化合物等が挙げられる。
【化8】

【化9】

【0013】
例えば、上記式(1)で表される化合物は下記式(A)で表される化合物と下記式(B)で表される化合物とを反応させて、下記式(C)で表される化合物を得る工程、および下記式(C)で表される化合物と、下記式(D)とを反応させる工程により製造することができる。例えば、上記式(1a)で表される化合物は、ヒドロキノンと9−オキサ−10−ホスファ(V)−9,10−ジヒドロフェナントレン−10−オンとを反応させた後、4−(クロロカルボニル)フタル酸無水物と反応させることで得ることができる。また、上記式(1b)で表される化合物は、4,4′‐ジヒドロキシベンゾフェノンと9−オキサ−10−ホスファ(V)−9,10−ジヒドロフェナントレン−10−オンとを反応させた後、さらに4−(クロロカルボニル)フタル酸無水物と反応させることで得ることができる。
【化10】

(式(A)中、R、R10は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基であり、f、gはそれぞれ独立に1〜3の整数を表わし、kは0または1である。)
【化11】

(式(B)中、R、R、p、qは、式(3)と同義である。)
【化12】

(式(C)中、R〜R、h、j、kは式(1)と同義である。)
【化13】

【0014】
[(A−2)成分]
(A−2)成分は、脂肪族及び/又は脂環族テトラカルボン酸二無水物、及びこれらの反応性誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のアシル化合物である。
ここで、反応性誘導体とは、脂肪族及び/又は脂環族テトラカルボン酸二無水物に変化しうる化合物であり、例えば、脂肪族及び/又は脂環族テトラカルボン酸二無水物の当該無水物に代えて2つのカルボキシル基を有する化合物、これら2つのカルボキシル基の中の片方または両方がエステル化されたエステル化物である化合物、またはこれら2つのカルボキシル基の中の片方または両方がクロル化された酸クロライド等が好適に用いられる。
【0015】
本発明で用いられる(A−2)成分としては、下記(a−1)成分、(a−2)成分、(a−3)、及び(a−4)成分からなる群より選ばれる少なくとも一種のアシル化合物が、好適に用いられる。
(a−1)5員環の酸無水物骨格を有し、かつ6員環の酸無水物骨格及び架橋環構造を有しない化合物、及びこれらの反応性誘導体
(a−2)5員環の酸無水物骨格及び架橋環構造を有し、かつ、該架橋環構造を構成する少なくとも2つの炭素原子が酸無水物骨格を形成し、6員環の酸無水物骨格を有しない化合物、及びこれらの反応性誘導体
(a−3)5員環の酸無水物骨格及び6員環の酸無水物骨格を有する化合物、及びこれらの反応性誘導体
(a−4)6員環の酸無水物骨格を有し、かつ、5員環の酸無水物骨格を有しない化合物、及びこれらの反応性誘導体
【0016】
上記(a−1)成分(5員環の酸無水物骨格を有し、かつ6員環の酸無水物骨格及び架橋環構造を有しない化合物、及びこれらの反応性誘導体)としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジクロロ−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、下記式(5)で表される化合物、及びこれらの反応性誘導体が挙げられる。
なお、下記式(5)で表される化合物の具体例としては、下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0017】
【化14】

(式中、Rは、芳香環を有する2価の有機基を示し、Rは、水素原子またはアルキル基を示し、複数存在するRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【化15】

【0018】
上記(a−2)成分(5員環の酸無水物骨格及び架橋環構造を有し、かつ、該架橋環構造を構成する少なくとも2つの炭素原子が酸無水物骨格を形成し、6員環の酸無水物骨格を有しない化合物、及びこれらの反応性誘導体)としては、ノルボルニル基、ビシクロ〔2.2.2〕オクチル基等を含む化合物が挙げられる。例えば、ビシクロ〔2.2.2〕オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−ジ無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、及びこれらの反応性誘導体が挙げられる。
【0019】
上記(a−3)成分(5員環の酸無水物骨格及び6員環の酸無水物骨格を有する化合物、及びこれらの反応性誘導体)としては、例えば、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、及びこれらの反応性誘導体等が挙げられる。
【0020】
上記(a−4)成分(6員環の酸無水物骨格を有し、かつ、5員環の酸無水物骨格を有しない化合物、及びこれらの反応性誘導体)としては、例えば下記式(7)で表される化合物、及びこれらの反応性誘導体が挙げられ、具体的な化合物としては下記式(8)〜(10)で表される化合物、及びこれらの反応性誘導体が挙げられる。
【化16】

(式中、Rは、芳香環を有する2価の有機基を示し、Rは、水素原子またはアルキル基を示し、複数存在するRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【化17】

これらのアシル化合物は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0021】
上記のうち、(a−1)成分(5員環の酸無水物骨格を有し、かつ6員環の酸無水物骨格及び架橋環構造を有しない化合物、及びこれらの反応性誘導体)は、比較的分子構造にゆがみが少なく、特に高いイミド化率(例えば95%以上)を達成することができる点で好ましく用いられる。さらに、このような化合物を(A)成分として用いることにより、耐水性(低吸水性)や非着色性等に特に優れたポリイミドフィルムを得ることができる。また、上記(a−1)成分は、入手性およびコストの観点からも好ましい。
一方、(a−2)成分(5員環の酸無水物骨格及び架橋環構造を有し、かつ、架橋環構造を構成する少なくとも2つの炭素原子が無水物骨格を形成する化合物、及びこれらの反応性誘導体)、(a−3)成分(5員環の酸無水物骨格及び6員環の酸無水物骨格を有する化合物、及びこれらの反応性誘導体)、(a−4)成分(6員環の酸無水物骨格を有する化合物、及びこれらの反応性誘導体)は、(a−1)成分に比して歪みは大きいものの、十分に高いイミド化率(例えば85%以上)を達成することができる。なお、上記(a−2)成分、(a−3)成分、及び(a−4)成分のうち、溶解性、加工性の観点から、(a−3)成分が好ましく用いられる。
【0022】
なお、(A−2)成分としては、無水物(脂肪族及び/又は脂環族テトラカルボン酸二無水物)、及びこれらの反応性誘導体のうち、無水物が好ましく用いられる。無水物を(A)成分として用いると、無水物ではないものを用いる場合に比して、温和かつハンドリング性良く、ポリアミック酸を合成することができる。
また、(A−2)成分としては、上述のテトラカルボン酸二無水物の中でも、脂環族テトラカルボン酸二無水物が好ましく用いられる。脂環族テトラカルボン酸二無水物を(A)成分として用いると、難燃性、透明性、非着色性、耐熱性、機械的特性等に特に優れたポリイミドフィルムを得ることができる。
【0023】
[(B)成分]
(B)成分は、下記式(4)で表される芳香族イミノ形成化合物である。
【化18】

(式(4)中、Xは−NHまたは−N=C=O、−NHSi(R25)(R26)(R27)であり、Yは直接結合(単結合)、−CH−、−O−、−S−、−C(CH−から選ばれる1つの基であり、Zは直接結合、−CH−、−O−、−S−、−C(CH−、>C=O、−SO−から選ばれる1つの基であり、R〜R16は、各々独立して、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、より好ましくはメチル基)、ビニル基、アリール基、ハロゲンから選ばれる基であり、R25〜R27は、各々独立して、炭素数1〜15のアルキル基である。)
このような特定の式で表される、ベンゼン環を4個有する芳香族イミノ形成化合物を用いることにより、着色の少ないフィルムを得ることができる。ここで、「イミノ形成化合物」とは、(A)成分(換言すると、(A−1)成分及び(A−2)成分)と反応してイミノを形成するための化合物をいう。
【0024】
上記芳香族イミノ形成化合物としては、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−イソシアナト−α,α−ジメチルベンジル)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−イソシアナト−α,α−ジメチルベンジル)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−トリメチルシリルアミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−トリメチルシリルアミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェニル]プロパン、等が挙げられる。これらのうち、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェニル]プロパン、が好ましく用いられる。
【0025】
なお、成分(B)としては、上記式(4)において、X、Y、及びZで表される結合基がパラ位で結合してなる芳香族イミノ形成化合物、すなわち、下記式(11)で表される芳香族イミノ形成化合物が好適である。このような化合物を用いることにより、より耐熱性が高く着色の少ないフィルムを得ることができる。上述の芳香族イミノ形成化合物のうち、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェニル]プロパンがより好ましく用いられる。
【化19】

(式(11)中、R〜R16、X、Y、及びZは、上記式(4)中と同様である。)
なお、これらイミノ形成化合物は、単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
【0026】
次に、本発明のポリイミド系樹脂組成物及びフィルムの製造方法について説明する。
本発明のフィルムの製造方法は、(b)上記(A)アシル化合物(具体的には、(A−1)成分と(A−2)成分とからなるもの)と上記(B)芳香族イミノ形成化合物を反応させて得られるポリアミック酸及び/又はポリイミドと、有機溶媒とを含む溶液を、基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、(c)該塗膜から前記溶媒を蒸発させて除去し、フィルムを得る工程と、を含むものである。
本発明のフィルムの製造方法は、前記工程(b)の前に、(a)ポリアミック酸及び/又はポリイミドと有機溶媒とを含む溶液を調製する工程、を含むことができる。
【0027】
[工程(a)]
工程(a)は、上記(A−1)成分及び(A−2)成分と上記(B)成分とを反応させて得られるポリアミック酸及び/又はポリイミドと、有機溶媒とを含む溶液を調製する工程である。
ここで、上記ポリアミック酸及び/又はポリイミドと有機溶媒とを含む溶液は、例えば以下のようにして得られる。
まず、(A−1)成分及び(A−2)成分と、(B)成分とを有機溶媒中で反応させて、ポリアミック酸を生成させ、次いで、該ポリアミック酸の少なくとも一部をイミド化し、ポリアミック酸及び/又はポリイミドと有機溶媒とを含む溶液を得る。
(A−1)成分及び(A−2)成分と、(B)成分とを反応させる際の具体的な方法としては、少なくとも1種の(B)芳香族イミノ形成化合物を有機溶媒に溶解した後、得られた溶液に、少なくとも1種の(A−1)アシル化合物と少なくとも1種の(A−2)アシル化合物を添加し、0〜100℃の温度で、1〜60時間撹拌する方法が挙げられる。
上記有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素等の非プロトン系極性溶媒;クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール等のフェノール系溶媒等が挙げられる。中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
これらの溶媒は1種を単独で、あるいは2種以上混合して使用することができる。
なお、反応液中の芳香族イミノ形成化合物とアシル化合物の合計量は、反応液全量の5〜30質量%であることが好ましい。
【0028】
(A−1)アシル化合物と(A−2)アシル化合物とのモル比((A−1)/(A−2))は、好ましくは0.1〜10.0、より好ましくは0.1〜6.0、特に好ましくは0.2〜4.0である。
該モル比が0.1未満であると、難燃性が低下することがある。該モル比が10.0を超えると、非着色性が低下することがある。
【0029】
(A)アシル化合物と(B)芳香族イミノ形成化合物のモル比((A):(B))は、好ましくは1.00:0.95〜1.00:1.05、より好ましくは1.00:0.97〜1.00:1.03、さらに好ましくは1.00:0.98〜1.00:1.02、特に好ましくは1.00:0.99〜1.00:1.01である。
(A)アシル化合物1モルに対して、(B)芳香族イミノ形成化合物の量が0.950モル未満であると、生成するポリマーの分子量が小さく、フィルムの成膜性、力学特性に問題が生じることがある。一方、(A)アシル化合物1モルに対して、(B)芳香族イミノ形成化合物の量が1.050モルを超えると、生成するポリマーの着色が強くなり、目的とする用途での使用に支障をきたすことがある。
【0030】
上記の方法で得られるポリアミック酸及び/又はポリイミドの末端は主としてカルボン酸無水物となる。ポリマーの末端基は、処理せずそのままの状態でフィルム化することができる。また、アニリン誘導体に代表される単官能の芳香族アミンの添加により、イミド化処理することができる。
なお、ポリアミック酸とは、酸無水物基とアミノ基とが反応して生じる、−CO−NH−、及び、−CO−OHを含む構造を有する酸、または、その誘導体(具体的には、例えば、−CO−NH−、及び、−CO−OR(ただし、Rはアルキル基等である。)を含む構造を有するもの)をいう。ポリアミック酸は、加熱等によって、−CO−NH−のHと、−CO−OHのOHとが脱水して、環状の化学構造(−CO−N−CO−)を有するポリイミドとなる。
【0031】
ここで、イミド化の方法としては、脱水剤を用いる方法(化学イミド化)や、160℃〜350℃(溶液では160〜220℃程度、キャストフィルムでは300℃以上での処理が一般的)で熱処理する方法(熱イミド化)が挙げられる。
化学イミド化における脱水剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸等の酸無水物、もしくは相当する酸クロライド類、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物等が挙げられる。なお、化学イミド化の際には、60〜120℃の温度で加熱することが好ましい。
熱イミド化の場合には、脱水反応で生じる水を系外に除去しながら行うことが好ましい。この際、ベンゼン、トルエン、キシレン等を用いて水を共沸除去することができる。
また、イミド化の際には、必要に応じて、ピリジン、イソキノリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルフォリン、イミダゾール等の塩基触媒を用いることができる。上記脱水剤又は塩基触媒は、アシル化合物1モルに対し、それぞれ0.1〜8モルの範囲で用いることが好ましい。
【0032】
イミド化の方法としては、より低温での加熱によってイミド化を行うことができることなどから、化学イミド化が好ましい。
なお、イミド化は、ポリアミック酸の少なくとも一部、好ましくは75モル%以上、より好ましくは85モル%以上、特に好ましくは90モル%以上をイミド化するように行われる。イミド化率が75モル%未満であると、フィルムの吸水率が高くなったり、耐久性が低下することがある。
得られたポリアミック酸及び/又はポリイミドと有機溶媒とを含む溶液は、そのまま使用することもできるが、ポリイミド等を固体分として単離した後、有機溶媒に再溶解して用いることもできる。なお、再溶解する有機溶媒としては、上記有機溶媒と同様のものが挙げられる。ポリイミド等を単離する方法としては、ポリイミド等及び有機溶媒を含む溶液を、メタノール等のポリイミドに対する貧溶媒に投じてポリイミド等を沈殿させ、濾過・洗浄・乾燥等によりポリイミド等を固体分として分離する方法が挙げられる。このような操作をすることにより、イミド化の際に使用した脱水触媒(イミド化触媒)の除去も図ることができる。
なお、上記の方法で得られるポリアミック酸及び/又はポリイミドの末端は主としてカルボン酸無水物となる。ポリマーの末端基は、処理せずそのままの状態でフィルム化することができる。また、アニリン誘導体に代表される単官能の芳香族アミンの添加により、イミド化処理することができる。
【0033】
[工程(b)]
工程(b)は、工程(a)で調製したポリアミック酸及び/又はポリイミド(以下、「ポリイミド等」ともいう。)と有機溶媒とを含む溶液を、基板上に塗布して塗膜を形成する工程である。
上記基板としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、SUS板、銅箔等が挙げられる。
ポリイミド等及び有機溶媒を含む溶液を基板上に塗布する方法としては、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、ドクターブレードを用いる方法等を使用することができる。
塗膜の厚さは、特に限定されないが、例えば1〜250μmである。
【0034】
[工程(c)]
工程(c)は、上記塗膜から前記有機溶媒を蒸発させて除去し、フィルムを得る工程である。
具体的には、塗膜を加熱することにより、該塗膜中の有機溶媒を蒸発させて除去する。
上記加熱の条件は、有機溶媒が蒸発すればよく特に限定されないが、例えば60〜250℃で1〜5時間である。なお、加熱は二段階で行ってもよい。例えば、100℃で30分加熱した後、150℃で1時間加熱するなどである。また、必要に応じて、窒素雰囲気下、もしくは減圧下にて乾燥を行ってもよい。
本工程では、有機溶媒を除去することができればよく、従来技術のような高温下でのイミド化を行う必要がないため、従来技術に比して低温でフィルムを得ることができる。そのため、光学部材を形成する他の部材が耐熱性の低いものであっても、該部材に直接上記ポリイミド等及び有機溶媒を含む溶液を塗布して、有機溶媒を蒸発除去することにより、フィルムを形成することができる。
得られたフィルムは、基板から剥離して、あるいは剥離せずにそのまま用いることができる。
【0035】
本発明において、ポリアミック酸とポリイミドの合計100モル%中、ポリイミドの割合は、75モル%以上、好ましくは85モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。ポリイミドの割合が75モル%未満であると、フィルムの吸水率が高くなったり、耐久性が低下することがある。
得られたポリアミック酸及び/又はポリイミドの、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは40,000〜50,0000、より好ましくは40,000〜200,000、特に好ましくは50,000〜150,000である。
本発明のフィルムの厚みは、1〜250μm、好ましくは5〜200μmである。また、本発明のフィルムを基材として使用する場合、該厚みは、特に好ましくは10〜150μmである。
本発明のフィルムの全光線透過率は、厚さが20μmである場合、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上である。
本発明のフィルムのYI値(イエローインデックス)は、厚さが20μmである場合、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.7以下である。
本発明のフィルムのガラス転移温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上、特に好ましくは180℃以上である。
【0036】
本発明のフィルムは、発光ダイオード周辺材料、太陽電池周辺材料、フラットディスプレー周辺材料、電子回路周辺材料に使用することができる。具体的には、耐熱透明フィルム、導電性透明フィルム等の光学部材に使用することができる。また、電子回路周辺材料としては、プリント配線基板用基板として使用することもでき、フレキシブルプリント配線用基板、リジットプリント配線用基板、光電子プリント配線用基板、COF(Chip on Film)用基板、TAB(Tape Automated Bonding)用基板を挙げることができる。プリント配線用基板として用いる場合には、例えば、配線用の銅層を設けることもできる。本発明のフィルムに銅層を設ける方法としては、ラミネート法、メタライジング法等を挙げることができる。ラミネート法の場合には、例えば、本発明のフィルムに銅箔を熱プレスすることで銅層が設けられたプリント配線用基板を製造することができる。メタライジング法の場合には、例えば、本発明のフィルムの金属との親和性を発現させるために表面改質を行った後に、蒸着法またはスパッタリング法によって、ポリイミドと結合するNi系の金属層と湿式電気めっきに必要なシード層を形成する。そして、湿式めっき法により所定の膜厚の銅層を設けることで、銅層が設けられたプリント配線用基板を製造することができる。
【0037】
また、ポリイミド等及び有機溶媒を含有するポリイミド系溶液は、ポリイミド系樹脂組成物として、発光ダイオード周辺材料、太陽電池周辺材料、フラットディスプレー周辺材料、電子回路周辺材料等に用いることもできる。具体的には、封止剤、レンズ材、プリント配線基板形成用材料等に用いることができる。例えば、プリント配線基板形成用材料として用いる場合には、キャスティング法によりプリント配線用基板を製造することができる。具体的には、銅箔の上に前記ポリイミド系樹脂組成物を塗布した後に、熱処理することで、銅層が設けられたプリント配線用基板を製造することができる。
なお、前記ポリイミド系樹脂組成物において、共溶媒として、沸点が150℃以下の有機溶媒を使用することができる。該有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
これらの溶媒は1種単独であるいは2種以上混合して使用することができる。
なお、ポリイミド系樹脂組成物中のポリアミック酸及び/又はポリイミドの濃度は、反応液全量の5〜30質量%であることが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
[実施例1]
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた300mLの4つ口フラスコに2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン8.01g(19.5mmol)を添加した。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという。)58mlを加え均一になるまで攪拌した。得られた溶液に2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物3.06g(13.7mmol)と下記式(1a)で表される化合物(TAHQ)3.93g(5.8mmol)を室温で加え、そのままの温度で24時間攪拌を続けて、ポリアミック酸溶液を得た。
得られたポリアミック酸溶液に対し、N−メチルピペリジン1.9ml、無水酢酸5.5mlを加え、75℃で4時間攪拌しイミド化を行った。室温まで冷却後、大量のメタノールに投じ、ろ別によりポリマーを単離した。得られたポリマーは60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末とした(収量13.2g、収率92.4質量%)。
次いで、得られたポリマーをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に再溶解し、20質量%の樹脂溶液を得た。該樹脂溶液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる基板上にドクターブレード(100μmギャップ)を用いて塗布し、100℃で30分、ついで150℃で60分乾燥してフィルムとした後、PET基板より剥離した。その後、フィルムをさらに150℃、減圧下で3時間乾燥して、膜厚20μmのフィルムを得た。
上記ポリマーについて、IR(KBr法)により構造分析を行った。結果は、カルボニル基の特性吸収が、1781cm−1および1720cm−1であった。
また、上記ポリマーについて、下記の方法により、特性を評価した。結果を表1に示す。
【化20】

【0039】
(1)重量平均分子量
重量平均分子量は、TOSOH製HLC−8020型GPC装置を使用して測定した。溶媒には、臭化リチウム及び燐酸を添加したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用い、測定温度40℃にて、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
(2)ガラス転移温度(Tg)
Rigaku社製8230型DSC測定装置を用いて、昇温速度を20℃/分として測定した。
(3)リン濃度
得られたポリマー中の繰り返し単位の分子量は、(アシル化合物の分子量)+(ジアミンの分子量)−2HOで求められる。この繰り返し単位1つあたり、1つのリン原子を含むため、リン濃度(イミド化率が100モル%であると仮定した場合の理論値)は、下記式により求めた。
[リン濃度](単位:質量%)=(リン含有アシル化合物のモル比×30.97)/{(アシル化合物の分子量×モル比)+(リン含有アシル化合物の分子量×モル比)+(ジアミンの分子量)−2HO}×100
(4)全光線透過率、YI
JIS K7105透明度試験法に準じて測定した。具体的には、フィルムの全光線透過率、YI値(イエローインデックス)を、スガ試験機株式会社製SC−3H型ヘイズメーターを用いて測定した。
(5)難燃性
得られたポリマーをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に再溶解し、20質量%の樹脂溶液を得た。該樹脂溶液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる基板上にドクターブレード(250μmギャップ)を用いて塗布し、70℃で30分、ついで150℃で60分乾燥してフィルムとした後、PET基板より剥離した。その後、フィルムをさらに180℃、減圧下で1時間乾燥して、膜厚50μmのフィルムを作製し、UL94難燃性試験に準拠して測定した。UL−94 V−2相当以上である物を[○]それ以外を[×]とした。
【0040】
[実施例2]
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた300mLの4つ口フラスコに2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン6.49g(15.8mmol)を添加した。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという。)58mlを加え均一になるまで攪拌した。得られた溶液に2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物1.06g(4.7mmol)と上記式(1a)で表される化合物(TAHQ)7.45g(11.1mmol)を室温で加え、そのままの温度で24時間攪拌を続けて、ポリアミック酸溶液を得た。
次いで、得られたポリアミック酸溶液を、を、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる基板上にドクターブレード(100μmギャップ)を用いて塗布し、100℃で30分、ついで150℃で60分乾燥してフィルムとした後、PET基板より剥離した。その後、フィルムをさらに180℃、減圧下で3時間乾燥して、膜厚20μmのフィルムを得た。
得られたポリマーの構造解析を実施例1と同様にして行った。結果は、カルボニル基の特性吸収が、1781cm−1および1720cm−1であった。
また、得られたポリマーの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0041】
[実施例3]
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた300mLの4つ口フラスコに2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン6.49g(15.8mmol)を添加した。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという。)58mlを加え均一になるまで攪拌した。得られた溶液に1−cis−2−cis−3−trans−4−trans−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物1.06g(4.7mmol)と上記式(1a)で表される化合物(TAHQ)7.45g(11.1mmol)を室温で加え、そのままの温度で24時間攪拌を続けて、ポリアミック酸溶液を得た。
得られたポリアミック酸溶液に対し、N−メチルピペリジン1.8ml、無水酢酸4.9mlを加え、75℃で4時間攪拌しイミド化を行った。室温まで冷却後、大量のメタノールに投じ、ろ別によりポリマーを単離した。得られたポリマーは60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末とした(収量13.1g、収率91.5質量%)。
次いで、得られたポリマーに対して実施例1と同様に処理して、膜厚20μmのフィルムを得た。
得られたポリマーの構造解析を実施例1と同様にして行った。結果は、カルボニル基の特性吸収が、1780cm−1および1719cm−1であった。
また、得られたポリマーの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0042】
[実施例4]
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた300mLの4つ口フラスコに2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン7.17g(17.5mmol)を添加した。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという。)58mlを加え均一になるまで攪拌した。得られた溶液に1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物1.96g(8.75mmol)と上記式(1a)で表される化合物(TAHQ)5.87g(8.75mmol)を室温で加え、そのままの温度で24時間攪拌を続けて、ポリアミック酸溶液を得た。
得られたポリアミック酸溶液に対し、N−メチルピペリジン1.8ml、無水酢酸4.9mlを加え、75℃で4時間攪拌しイミド化を行った。室温まで冷却後、大量のメタノールに投じ、ろ別によりポリマーを単離した。得られたポリマーは60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末とした(収量13.4g、収率93.1質量%)。
次いで、得られたポリマーに対して実施例1と同様に処理して、膜厚20μmのフィルムを得た。
得られたポリマーの構造解析を実施例1と同様にして行った。結果は、カルボニル基の特性吸収が、1780cm−1および1721cm−1であった。
また、得られたポリマーの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0043】
[実施例5]
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた300mLの4つ口フラスコに2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン6.84g(16.7mmol)を添加した。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという。)58mlを加え均一になるまで攪拌した。得られた溶液に3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物2.55g(8.35mmol)と上記式(1a)で表される化合物(TAHQ)5.61g(8.35mmol)を室温で加え、そのままの温度で24時間攪拌を続けて、ポリアミック酸溶液を得た。
得られたポリアミック酸溶液に対し、N−メチルピペリジン1.7ml、無水酢酸4.7mlを加え、75℃で4時間攪拌しイミド化を行った。室温まで冷却後、大量のメタノールに投じ、ろ別によりポリマーを単離した。得られたポリマーは60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末とした(収量13.3g、収率92.0質量%)。
次いで、得られたポリマーに対して実施例1と同様に処理して、膜厚20μmのフィルムを得た。
得られたポリマーの構造解析を実施例1と同様にして行った。結果は、カルボニル基の特性吸収が、1779cm−1および1718cm−1であった。
また、得られたポリマーの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0044】
[比較例1]
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた300mLの4つ口フラスコに2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン9.70g(23.6mmol)を添加した。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという。)58mlを加え均一になるまで攪拌した。得られた溶液に2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物5.30g(23.6mmol)を室温で加え、そのままの温度で12時間攪拌を続けて反応させ、ポリアミック酸を含む溶液を得た。
得られたポリアミック酸溶液に対し、N−メチルピペリジン2.4ml、無水酢酸6.7mlを加え、75℃で3時間攪拌しイミド化を行った。室温まで冷却後、大量のメタノールに投じ、ろ別によりポリマーを単離した。得られたポリマーは60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末とした(収量13.4g、収率94.4%)。
次いで、得られたポリマーに対して実施例1と同様に処理して、膜厚20μmのフィルムを得た。
得られたポリマーの構造解析を実施例1と同様にして行った。結果は、カルボニル基の特性吸収が、1735cm−1および1682cm−1であった。
また、得られたポリマーの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0045】
[比較例2]
比較例1と同様に2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物の代わりに1−cis−2−cis−3−trans−4−trans−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物5.08g(24.2mmol)を用い、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、N−メチルピペリジン、及び無水酢酸の各々の配合量を、9.92g(24.2mmol)、2.4ml、及び6.8mlに変更したこと以外は実施例1と同様にして、白色粉末からなるポリマー(収量13.4g、収率94.6質量%)及びフィルムを得た。
得られたポリマーの構造解析を比較例1と同様にして行った。結果は、カルボニル基の特性吸収が、1781cm−1および1718cm−1であった。
また、得られたポリマー及びフィルムの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。
【0046】
[比較例3]
比較例1と同様に2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物の代わりに1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物5.30g(23.6mmol)を用い、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、N−メチルピペリジン、及び無水酢酸の各々の配合量を、9.70g(23.6mmol)、2.4ml、及び6.7mlに変更したこと以外は実施例1と同様にして、白色粉末からなるポリマー(収量13.3g、収率93.7質量%)及びフィルムを得た。
得られたポリマーの構造解析を比較例1と同様にして行った。結果は、カルボニル基の特性吸収が、1770cm−1および1694cm−1であった。
また、得られたポリマー及びフィルムの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。
【0047】
[比較例4]
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を取り付けた300mLの4つ口フラスコに2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン5.69g(13.9mmol)を添加した。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという。)58mlを加え均一になるまで攪拌した。得られた溶液に下記式(3)で表される化合物(TAHQ)9.31g(13.9mmol)を室温で加え、そのままの温度で24時間攪拌を続けて、ポリアミック酸溶液を得た。
次いで、得られたポリアミック酸溶液を、を、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる基板上にドクターブレード(100μmギャップ)を用いて塗布し、100℃で30分、ついで150℃で60分乾燥してフィルムとした後、PET基板より剥離した。その後、フィルムをさらに180℃、減圧下で3時間乾燥して、膜厚20μmのフィルムを得た。
得られたポリマーの構造解析を実施例1と同様にして行った。結果は、カルボニル基の特性吸収が、1781cm−1および1720cm−1であった。
また、得られたポリマーの各種物性について、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1から、(A)成分(アシル化合物)として(A−1)成分と(A−2)成分を併用した実施例1〜5では、難燃性、耐熱性、透明性、非着色性のすべてが良好であり、物性のバランスが良いことがわかる。
一方、(A)成分(アシル化合物)として(A−2)成分のみを用いた比較例1〜3では、耐熱性、透明性、非着色性に優れているものの、難燃性が非常に劣り、物性のバランスが悪いことがわかる。また、(A)成分(アシル化合物)として(A−1)成分のみを用いた比較例4では、耐熱性、難燃性に優れているものの、非着色性が劣り、物性のバランスが悪いことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(A−1)下記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物、下記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物、及びこれらの反応性誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のアシル化合物、及び、(A−2)脂肪族及び/又は脂環族テトラカルボン酸二無水物、及びこれらの反応性誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種のアシル化合物と、(B)芳香族イミノ形成化合物と、を反応させて得られることを特徴とするポリイミド系材料。
【化1】

(式(1)中、R、Rは、各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基、または式(3)で表される基であり、Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基、または式(3)で表される基である。h、jは0〜4の整数を表わし、kは0または1である。ただし、k=0のとき、hは1〜4の整数を表わし、かつRの少なくとも1つは式(3)で表わされる基を示し、k=1のとき、Rの少なくとも1つは式(3)で表わされる基を示す。)
【化2】

(式(2)中、R、Rは、各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基から選ばれる基であり、Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基、または式(3)で表される基であり、R〜Rは少なくとも1つが式(3)で表される基である。l、mはそれぞれ独立に0〜4の整数を表わし、nは0または1である。ただし、n=0のとき、lは1〜4の整数を表わし、かつRの少なくとも1つは式(3)で表わされる基を示し、n=1のとき、Rの少なくとも1つは式(3)で表わされる基を示す。)
【化3】

(式(3)中、R〜Rは、各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のハロゲン化炭化水素基から選ばれる基であり、p、qはそれぞれ独立に0〜4の整数を表わす。)
【請求項2】
(A−2)脂肪族及び/又は脂環族テトラカルボン酸二無水物が、下記(a−1)成分、(a−2)成分、(a−3)成分、及び(a−4)成分からなる群より選ばれる少なくとも一種のアシル化合物である請求項1に記載のポリイミド系材料。
(a−1)5員環の酸無水物骨格を有し、かつ6員環の酸無水物骨格及び架橋環構造を有しない化合物、及びこれらの反応性誘導体
(a−2)5員環の酸無水物骨格及び架橋環構造を有し、かつ、該架橋環構造を構成する少なくとも2つの炭素原子が酸無水物骨格を形成し、6員環の酸無水物骨格を有しない化合物、及びこれらの反応性誘導体
(a−3)5員環の酸無水物骨格及び6員環の酸無水物骨格を有する化合物、及びこれらの反応性誘導体
(a−4)6員環の酸無水物骨格を有し、かつ、5員環の酸無水物骨格を有しない化合物、及びこれらの反応性誘導体
【請求項3】
(B)芳香族イミノ形成化合物が、下記式(4)で表わされる化合物である、請求項1または2に記載のポリイミド系材料。
【化4】

(式(4)中、Xは−NHまたは−N=C=O、−NHSi(R25)(R26)(R27)であり、Yは直接結合、−CH−、−O−、−S−、−C(CH−から選ばれる1つの基であり、Zは直接結合、−CH−、−O−、−S−、−C(CH−、>C=O、−SO−から選ばれる1つの基であり、R〜R16は、各々独立して、水素原子、アルキル基、ビニル基、アリール基、ハロゲンから選ばれる基であり、R25〜R27は、各々独立して、炭素数1〜15のアルキル基である。)
【請求項4】
上記(A−1)成分と上記(A−2)成分とのモル比((A−1)/(A−2))が、0.1〜10である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミド系材料。
【請求項5】
上記(A)成分と上記(B)成分とのモル比((A):(B))が、1.00:0.950〜1.00:1.05である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイミド系材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミド系材料、及び、溶媒を含むポリイミド系樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミド系材料からなるフィルム。
【請求項8】
光学部材用である請求項7に記載のフィルム。
【請求項9】
プリント配線用基板用である請求項7に記載のフィルム。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法であって、上記(A)アシル化合物と上記(B)イミノ形成化合物とを反応させて得られるポリアミック酸及び/又はポリイミドと、有機溶媒とを含む溶液を、基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜から前記溶媒を蒸発させて除去し、フィルムを得る工程とを含む、フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2011−74177(P2011−74177A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226056(P2009−226056)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】