説明

ポリイミド複合管状物の製造方法及びポリイミド複合管状物

【課題】クッション性を有しつつ、厚みの均一性及び表面平滑性が極めて良好なポリイミド複合管状物および該ポリイミド複合管状物を生産性良く製造できる方法を提供する。
【解決手段】芯体2の外周にポリイミド管状物3を外挿し、該ポリイミド管状物の外周面に対して一定のクリアランスを有する吐出口を具備した環状ノズル1を前記芯体2と同心に配置して、シリコーンゴム溶液を該環状ノズル1からポリイミド管状物3の外周面へ所定の吐出速度で吐出させつつ、芯体2と環状ノズル1とを相対移動させて、ポリイミド管状物3の外周面にシリコーンゴム溶液の塗膜(被膜)4を形成した後、芯体2からポリイミド管状物3を分離し、該分離後のポリイミド管状物3の外周面上の塗膜4を加熱してシリコーンゴム層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材としてのポリイミド管状物の外周面にシリコーンゴム層が形成された構造を有するポリイミド複合管状物の製造方法およびポリイミド複合管状物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリイミド樹脂は、その高い機械的強度、耐熱性等の理由から、電子写真方式で画像形成を行う複写機やレーザービームプリンター等の電子写真画像形成装置における、定着ベルト、転写ベルト、中間転写ベルト、搬送ベルト、感光体ベルト等の機能性ベルトやその基材として使用されている。
【0003】
電子写真画像形成装置では、感光体等の像担持体上に形成されたトナー像を紙などの被記録媒体上に直接転写して定着させるか、或いは、トナー像を中間転写ベルト等の中間転写体に一旦転写(一次転写)し(フルカラー画像を形成する場合は、各色毎のトナー像を転写し)、その後、中間転写体から紙などの被記録媒体上にトナー像を転写(二次転写)して定着させるが、高速化及び高画質化の要求から、トナー像の被記録媒体への定着を行う定着ユニットにおいては、トナーを短時間で溶融定着できるようにニップ幅を大きくできるベルト方式の採用が増えている。
【0004】
すなわち、ヒーターを内蔵する加熱ロールと加圧ロール間に被記録媒体を通して被記録媒体上のトナー像を溶融定着させるロール方式では、加熱ロール表面が所定温度に加熱されるまでに比較的長時間を要し、かつ、ニップ幅(加熱ロールと加圧ロールの接触幅)を大きくできないのに対し、定着ベルトと加圧ロール間に被記録媒体を通して被記録媒体上のトナー像を溶融定着させるベルト方式では、ベルトが薄く熱容量が小さいために、これを加熱すると直ちに定着作業ができ、また、ベルトと加圧ロールの接触幅が大きいためにトナーの溶融定着を短時間で行うことができる。
【0005】
しかしながら、ポリイミド樹脂は柔軟性が高いとはいえず、定着ベルトとして使用する場合、ベルトに十分な柔軟性が付与されず、高画質化の観点からは柔軟性の向上が必要である。そこで、ベルトに柔軟性を付与し、さらにトナーとの離型性を向上させるために、ポリイミド管状物の外周面にシリコーンゴムやフッ素ゴムからなるゴム層を設けたポリイミド複合管状物が提案されている(特許文献1〜4)。すなわち、このような外層にゴム層を有するポリイミド複合管状物を定着ベルトに使用すると、ゴム層がクッション性を与え、トナー像に対してベルトがソフトに接触してトナー像が必要以上に潰れることなく溶融定着されることから、鮮明な画像を得ることが可能となる。
【0006】
しかし、本発明者等の研究において、このようなポリイミド管状物の外周面にシリコーンゴム又はフッ素ゴム等のゴム層を設けたポリイミド複合管状物は、多層化のために、定着ベルトの基本的な要求特性である厚みの均一性や表面の平滑性が低下し、これが高画質化をより高いレベルで達成できない原因になっていることがわかった。
【0007】
なお、特許文献5には、芯体の外側に芯体の外径と所定の隙間で位置するスリットヘッドを備えた装置を用い、スリットヘッドから芯体の外表面に対して、外側からポリイミド或いはシリコーンゴム被膜前駆体溶液を所定の速度で制御しながら吐出し、芯体の外表面に前駆体溶液の被膜を所定の膜厚でキャスト成形する方法が記載されているが、該方法はポリイミド管状物の外周にシリコーンゴム層を形成した複合管状物については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−305681号公報
【特許文献2】特開2000−181257号公報
【特許文献3】特開平10−161448号公報
【特許文献4】特開2001−51535号公報
【特許文献5】特開2004−291367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたもので、その解決しようとする課題は、電子写真画像形成装置の機能性ベルト、特に定着ベルトとして有用な、クッション性を有しつつ、厚みの均一性及び表面平滑性が極めて良好なポリイミド複合管状物および該ポリイミド複合管状物を生産性良く製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を採る。
(1)芯体の外周にポリイミド管状物を外挿し、該ポリイミド管状物の外周面に対して一定のクリアランスを有する吐出口を具備した環状ノズルを前記芯体と同心に配置して、シリコーンゴム溶液を該環状ノズルからポリイミド管状物の外周面へ所定の吐出速度で吐出させつつ、芯体と環状ノズルとを相対移動させて、ポリイミド管状物の外周面にシリコーンゴム溶液の塗膜を形成し、その後、芯体からポリイミド管状物を分離し、該分離後のポリイミド管状物の外周面上の塗膜を加熱してシリコーンゴム層を形成することを特徴とする、ポリイミド複合管状物の製造方法。
(2)シリコーンゴム層の外周面にさらにフッ素樹脂層を形成することを特徴とする、前記(1)記載のポリイミド複合管状物の製造方法。
(3)シリコーンゴム溶液の塗膜の加熱によるシリコーンゴム層の形成を2段階の加熱によって行い、1段目の加熱によって前記塗膜から形成された1次硬化層の外周面にフッ素樹脂液の塗膜を形成し、2段目の加熱を行なって、シリコーンゴム層(2次硬化層)とフッ素樹脂層を同時形成することを特徴とする、前記(2)記載のポリイミド複合管状物の製造方法。
(4)基材としてのポリイミド管状物と、該ポリイミド管状物の外周面に積層されたシリコーンゴム層とを有するポリイミド複合管状物であって、
前記シリコーンゴム層は、芯体を内包しない、中空のポリイミド管状物の外周面上に形成されたシリコーンゴム溶液の塗膜を加熱硬化して形成されたものであることを特徴とする、ポリイミド複合管状物。
(5)シリコーンゴム層にフッ素樹脂層がさらに積層されたポリイミド複合管状物であって、
前記フッ素樹脂層は、芯体を内包しない、中空のポリイミド管状物の外周面に積層されたシリコーンゴム層上に形成されたフッ素樹脂液の塗膜を加熱硬化して形成されたものである、前記(4)記載のポリイミド複合管状物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリイミド管状物が外挿された芯体と同心に配置した環状ノズルにより、ポリイミド管状物の外周面へ所定の吐出速度で吐出させつつ、芯体と環状ノズルとを相対移動させて、ポリイミド管状物の外周面にシリコーンゴム溶液の塗膜を形成するようにしたことから、常に新しいシリコーンゴム溶液によって塗膜(被膜)が形成され、異物や気泡の混入のない塗膜(被膜)を形成することができる。そして、ポリイミド管状物を芯体から分離した後に、シリコーンゴム溶液の塗膜(被膜)を加熱硬化するので、芯体の熱変形、膨張、収縮等の影響を受けることなく、厚みの変動が小さく、かつ、表面の平滑性に優れるシリコーンゴム層が形成され、その結果、定着ベルトとして有用な、クッション性を有しつつ、厚みの均一性及び表面平滑性が極めて良好なポリイミド複合管状物を得ることができる。
【0012】
また、環状ノズルにより、芯体と環状ノズルとを相対移動させてシリコーンゴム溶液の塗膜(被膜)を形成するので、製造すべきポリイミド複合管状物の必要長さに対して、必要最少量の塗液(シリコーンゴム溶液)の使用で済むため、材料ロスが少なく安価にポリイミド複合管状物を製造することができる。
【0013】
また、シリコーンゴム層にさらにフッ素樹脂層を積層する態様では、管状物の表面平滑性を一層向上させることができ、トナーの離型性が一層向上したポリイミド複合管状物を得ることができる。また、シリコーンゴム溶液の塗膜の加熱によるシリコーンゴム層の形成を2段階の加熱によって行なうようにし、1段目の加熱後の1次硬化層上にフッ素樹脂液の塗膜を形成し、2段目の加熱で、シリコーンゴム層(2次硬化層)とフッ素樹脂層を同時形成する方法の採用により、シリコーンゴム層とフッ素樹脂層間の密着性が向上し、機械的強度、真円度等の点でより有利なポリイミド複合管状物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ポリイミド管状物の製膜工程を模式的に示す図である。
【図2】本発明で使用する環状塗布装置を模式的に示す図である。
【図3】本発明のポリイミド複合管状物の一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明のポリイミド複合管状物の製造方法(以下、本発明方法とも略称する)は、基材であるポリイミド管状物を芯体に外挿した後(すなわち、芯体の外周にポリイミド管状物を被せた後)、かかる芯体に外挿したポリイミド管状物の外周面にシリコーンゴム溶液の塗膜を形成後、ポリイミド管状物を芯体から分離し、ポリイミド管状物の外周面上の塗膜を加熱してシリコーンゴム層を形成する手順で行なう。
【0016】
[ポリイミド複合管状物]
基材となるポリイミド管状物は公知の方法で製造されたものを使用することができる。ポリイミド複合管状物が電子写真画像形成装置の定着ベルト等の機能性ベルト用である場合、ポリイミド管状物には導電性物質を含有させた半導電性のポリイミド管状物を使用してもよい。
【0017】
ポリイミド管状物の製造方法としては、例えば、ポリイミド前駆体溶液又は導電性物質含有ポリイミド前駆体溶液を芯体(シリンダ)の外周面に均一に塗布し、これをイミド転化した後、芯体から取り外す方法が挙げられる。この際のポリイミド前駆体溶液又は導電性物質含有ポリイミド前駆体溶液(以下、両者を含めて「前駆体溶液」という場合がある)の芯体の外周面への塗布方法としては、前駆体溶液中に芯体を浸漬して引き上げる方法、芯体の片端部付近に前駆体溶液を供給した後この芯体と一定のクリアランスを有する走行体を走行させる方法、芯体と一定のクリアランスを有する孔内に、前駆体溶液が全面または一部に供給された芯体を通過させる方法等で行うことができる。なお、ポリイミド前駆体溶液のイミド転化は、通常、加熱によって行われる。また、ポリイミド管状物の別の製造方法としては、図1に示すように、円筒状金型11の内面に前駆体溶液12をスパイラル状に塗布した後に、回転成形を行って塗膜を均一に展開し、次いで、溶剤除去の乾燥を行い、加熱硬化を行う方法を挙げることができる(図中の符号13はポリイミド前駆体溶液の塗布ノズルである)。この方法は厚み均一性に特に優れるポリイミド管状物が得られやすく、好ましい方法である。
【0018】
上記のポリイミド前駆体溶液は、例えばテトラカルボン酸二無水物あるいはその誘導体と、ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で重合反応させることにより調製される。なお、テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミン成分とは通常等モル量使用される。
【0019】
テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ベリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0020】
また、ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン(PDA)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ−第三ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−6−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルへプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロポキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルへプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン等が挙げられる。
【0021】
上記のテトラカルボン酸二無水物、ジアミン成分はいずれも、1種または2種以上を併用できる。
【0022】
有機極性溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド等のN,N−ジアルキルアミド類の他、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン(N−メチルピロリドン(NMP))、ピリジン、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等が挙げられ、これらはいずれかを単独で使用しても、2種以上を併せて用いても差し支えない。
【0023】
導電性物質としては、導電性を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、例えばカーボンブラック、グラファイト、金属粉末等の導電性粉末や、導電性を有する有機化合物、無機化合物等が用いられる。かかる導電性物質はポリイミド管状物の表面抵抗率を101〜108Ω/□の範囲とするのに必要な量で使用することが好ましく、通常、ポリイミドに対して0.5〜50重量%の範囲内となるように配合することが好ましい。また、導電性物質の粒径としては、得られる複合管状物の表面平滑性を考慮して、少なくとも基材であるポリイミド管状物の肉厚(厚み)以下であることが好ましい。
【0024】
ポリイミド前駆体溶液は、上記テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体(a)とジアミン化合物(b)とを有機極性溶媒中で、0.5〜10時間程度反応(重合反応)させることにより得られる。なお、0.5時間未満であると反応が不十分となり、10時間を超えてもそれ以上の効果が得られない傾向がある。また、反応時におけるモノマー濃度〔上記溶媒中における(a)+(b)の濃度〕は種々の要因に応じて設定できるが、通常5〜30重量%である。また、反応温度は80℃以下に設定することが好ましい。なかでも、反応温度を5〜50℃に設定することが好適である。
【0025】
得られるポリイミド前駆体溶液は、重合によりその粘度が上昇するが、そのまま加熱を行うとポリイミド前駆体溶液の粘度が低下する。この現象を利用してポリイミド前駆体溶液を所定の粘度に調整することができる。このときの加熱温度は50〜90℃が好ましい。
【0026】
なお、導電性物質含有ポリイミド前駆体溶液の調製は、上記のポリイミド前駆体溶液に導電性物質を分散させる方法でも、予め上記の溶媒中に導電性物質を分散させた分散液を調製し、該導電性物質分散液にテトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミン成分を溶解し、重合させる方法であってもよい。
【0027】
ポリイミド前駆体溶液の塗膜を加熱することによるイミド転化は、80〜180℃程度の低温で加熱して溶媒を蒸発除去し、ついで250〜400℃程度に昇温してイミド転化を終了するという多段加熱法を用いるのが好ましい。加熱時の所要時間は加熱温度に応じて適宜に設定するが、通常、低温加熱およびその後の高温加熱とも20〜60分程度である。このような多段加熱法を用いれば、イミド転化に伴い発生する閉環水や溶媒の蒸発に起因するポリイミド管状体における微小ボイドの発生を防止できる。
【0028】
イミド転化によって得られたポリイミド管状体を芯体若しくは円筒状金型の周面から剥離する作業は、例えば芯体若しくは円筒状金型の壁に小さな貫通孔を予め設けておき、この孔に空気を圧送してその圧力でポリイミド管状体を芯体若しくは円筒状金型から剥離させる方法;表面に離型処理した円筒状金型を使用する方法等により行うことができる。
【0029】
本発明において、基材であるポリイミド管状物の肉厚(層厚み)は、ポリイミド複合管状物の具体的用途に応じて適宜決定されるが、ポリイミド複合管状物を電子写真画像形成装置の機能性ベルトに使用する場合、ポリイミド管状物の肉厚(層厚み)は0.02〜0.30mm程度とするのが一般的であり、特に定着ベルトである場合は、0.05〜0.15mmの範囲とするのが好適である。また、その外径もポリイミド複合管状物の具体的用途に応じて適宜決定されるが、ポリイミド複合管状物を電子写真画像形成装置の機能性ベルトに使用する場合、直径が10〜1000mm程度とするのが一般的であり、特に定着ベルトである場合は、直径が30〜300mmの範囲とするのが好適である。
【0030】
[ポリイミド管状物の芯体への外挿]
本発明方法では、ポリイミド管状物を芯体に外挿し、芯体に外挿したポリイミド管状物の外周面にシリコーンゴム溶液の塗膜を形成するが、ポリイミド管状物の芯体への外挿は、例えば、上端部をテーパー加工したパイプ状の芯体の上端より挿入することによって行うことができる。ここでの芯体とは、後記にて説明する環状ノズルを備えた塗布装置に組み込まれるものであり、通常、アルミニウム、ステンレス、ゴム、プラスチック等の材質からなる円筒体若しくは円柱体である。また、芯体の外径(直径)に関しては、外挿するポリイミド管状物に歪みが発生するのを防止する観点から、外挿するポリイミド管状物の内径に対して、所定のクリアランスが必要であり、クリアランスが0mmよりも大きく0.1 mm以下となる寸法関係とするのが好ましい。
【0031】
[シリコーンゴム層の形成]
図2(a)は本発明方法で使用する環状ノズルを備えた塗布装置の一例の模式図、図2(b)は図2(a)中の環状ノズルの模式断面図である。また、図3は本発明のポリイミド複合管状物の一例の断面模式図である。
【0032】
図2において、8は貯蔵タンク、7はギアポンプ(押出しポンプ)、6は混合ミキサー、4はシリコーンゴム溶液の塗膜(被膜)、及び9a、9bはシリコーンゴム溶液(以下、単に「ゴム溶液」ともいう)である。ゴム溶液9a、9bをギアポンプ(押出しポンプ)7にて混合ミキサー6に圧送する。混合ミキサー6内ではゴム溶液9a、9bの流れを乱流させることで、ゴム溶液を混合することができる。混合されたゴム溶液を分岐ユニット5で経路の配管に分岐させ、環状ノズル1に導く。分岐ユニット5は、ゴム層の形成を行なうポリイミド複合管状物の径によって異なるが、2〜100の分岐数から好適な数を選択できる。分岐数が多ければ、それだけ精密な吐出ができるが、コストの問題もあり、4〜50の範囲が好ましい。
【0033】
環状ノズル1は芯体2と同心に配置されており、環状ノズル1の吐出口1aは、芯体2の外周面(ポリイミド管状物3の外周面)から一定のクリアランスを空けて配置されている。環状ノズル1と芯体2とはこれらが芯体2の軸心方向に相対移動するように、少なくとも一方が芯体2の軸心方向に移動可能に構成されている。吐出口1aと芯体2の外周面(ポリイミド管状物3の外周面)との離間距離(クリアランス)を一定に保つ制御精度に優れ、また、相対移動のための構成を簡単にできることから、環状ノズル1を固定し、芯体2を芯体2の軸心方向に移動させる場合が多い。
【0034】
なお、吐出口1aは環状ノズル1の全周にわたり形成されており、また環状ノズルには、1箇所以上の供給口から前記溶液を供給することが好ましい。吐出口1aとポリイミド管状物3の外周面との離間距離(クリアランス)は、形成すべきシリコーンゴム層の厚みに応じて設定されるが、通常、0.05mm〜3mmの範囲内から選択される。
【0035】
本発明方法においては、ギアポンプ7におけるシリコーンゴム溶液の押し出し速度と、環状ノズル1と芯体2の相対移動における移動速度を制御し、環状ノズル1の吐出口1aから所定量のゴム溶液を押し出し、芯体2に外挿したポリイミド管状物3の外周面に所定の厚みでゴム溶液9a、9bの塗膜(被膜)4を形成する。すなわち、吐出口1aと芯体2の外周面(ポリイミド管状物3の外周面)との離間距離(クリアランス)を、形成すべきゴム層の厚みに応じた一定距離に設定し、環状ノズル1の吐出口1aの大きさ、吐出口1aからのゴム溶液の吐出速度(ギアポンプ7のゴム溶液の押し出し速度)、及び環状ノズル1と芯体2の相対移動での移動速度を調整することで、ゴム溶液の塗膜(被膜)4を所定厚みに高い精度で形成することができる。
【0036】
例えば、電子写真画像形成装置における定着ベルト用の複合管状物を製造する場合、ポリイミド管状物の外周面に設けるゴム層の厚みは一般的には100〜400μm程度であり、このような厚みのゴム層を形成する場合、ゴム溶液の粘度等によっても異なるが、環状ノズル1の吐出口1aからのゴム溶液の吐出量は1〜200g/分の範囲から選択し、環状ノズル1と芯体2の相対移動での移動速度は100〜5000mm/分の範囲から選択するのが好ましい。ここで、環状ノズル1と芯体2の相対移動での移動速度とは、両者の相対速度の大きさを指す。例えば、芯体2を芯体2の一方の軸心方向に500mm/分で移動させ、他方の軸心方向に環状ノズル1を100mm/分で移動させる実施態様においては、相対移動での移動速度は600 mm/分であり、芯体2を芯体2の一方の軸心
方向に800mm/分で移動させ、環状ノズル1を静止させる実施態様においては、相対移動での移動速度は800mm/分である。
【0037】
また、ゴム溶液の吐出量は、単位時間あたり、被膜成形に必要な最低量より0重量%を越え50重量%以下の範囲で多く吐出することが好ましい。より好ましくは、単位時間あたり、被膜成形に必要な最低量より5重量%を越え30重量%以下の範囲で多く吐出する。被膜成形に必要な最低量よりも多く吐出しない場合は、被膜にカスレやムラが発生することがあり、被膜成形に必要な最低量より50重量%を越えて多く吐出すると、被膜の厚みが必要以上に大きくなり、好ましくない。
【0038】
環状ノズルからシリコーンゴム溶液を吐出し、シリコーンゴム溶液の塗膜(被膜)をポリイミド管状物の外周面へ形成する前に、ポリイミド管状物の表面には、必要に応じて、シリコーンゴム溶液の塗膜(被膜)と該管状物の密着性を向上させるためのプライマーを塗布してもよい。プライマーとしては、本発明の効果を損なわないものであれば限定されない。
【0039】
本発明で使用するシリコーンゴムは、特に限定されるものではないが、液状のものが好適に用いられ、例えば、市販されている熱硬化性シリコーンゴム(シリコーンRTVゴム)等のシリコーンゴムが挙げられる。かかる液状のシリコーンゴムは溶剤、粘度調整剤を加え、粘度を調整することができる。粘度調整剤としては、トルエン等を使用することができる。なお、本発明でいう「シリコーンゴム溶液」とは、溶剤を含まなくても液状を呈する液状シリコーンゴムも含む概念であり、シリコーンゴムを主体成分とする塗工可能な液状物を総称するものである。また、本発明におけるシリコーンゴム層にはその物性を損なわない程度に、シリコーン系又はフッ素系の各有機化合物、カップリング剤、滑剤、酸化防止剤、その他の添加剤を含有してもよく、このような添加剤をシリコーンゴム層に含有させる場合、シリコーンゴム溶液にこれらの添加剤が適当量配合される。
【0040】
上記の環状ノズルを備えた塗布装置を用いて、ゴム溶液の塗膜(被膜)4を形成した後は、芯体2とポリイミド管状物3を分離し、ポリイミド管状物3の外周面の塗膜(被膜)4を加熱してシリコーンゴム層を形成し、目的の複合管状物を完成させる。ここでの分離は、芯体の壁に小さな貫通孔を予め設けておき、この孔に空気を圧送してその圧力でポリイミド管状体を芯体から剥離させる方法等により行うことができる。
【0041】
本発明では、上記のように、ポリイミド管状物3を芯体2から分離した状態で、塗膜(被膜)4を加熱する。この時の加熱は、温度50〜200℃の範囲が好適であり、また、2段階の加熱により1次加硫(1次硬化)と2次加硫(ポスト加硫、2次硬化)を行うのが好ましい。具体的には、管状物を60〜200℃の温度で1〜30分間程度加熱して1次加硫し、その後、320〜450℃で5〜60分間程度加熱して2次加硫する条件が挙げられる。ポリイミド管状物3を芯体2から分離した状態でポリイミド管状物3の外周面に形成されたシリコーンゴム溶液の塗膜(被膜)4が加熱硬化されることで、芯体2の熱変形、膨張、収縮等の影響を受けることなく乾燥、硬化して、シリコーンゴム層10が形成され(図3参照)、シリコーンゴム層は硬化形成される間に縮小が起こらないことから、厚みの均一性及び表面平滑性の高いゴム層が形成される。具体的には、例えば、外径が20〜1000mm、長さが100〜1000mmの複合管状物を作製した場合に、厚みの変動は±10%の範囲内(好ましくは±5%の範囲内)に抑えられる。また、表面の平滑性は、表面粗さが1μm以下(好ましくは0.5μm以下)に抑えられる。
【0042】
ここで、「厚みの変動」とは、シリコーンゴム層が形成されたポリイミド管状物の総厚みの変動であって、マイクロメータなどを用いて、周方向4点(90°間隔)、長さ方向50mm間隔での総厚みの測定値から求めることができ、総厚みの測定値のおよその平均値に対する、各測定値と該およその平均値との差の割合を百分率で表したものである。なお、シリコーンゴム層の厚みも、マイクロメータなどを用いて、周方向4点(90°間隔)、長さ方向50mm間隔での、シリコーンゴム層が形成されたポリイミド管状物の総厚みの測定値から、シリコーンゴム層を形成する前のポリイミド管状物単体の同測定点での厚みの測定値を差し引くことにより、求めることができる。
【0043】
また、「表面粗さ」は、シリコーンゴム層の外側表面のRa(中心線平均粗さ)での測定値であり、例えば表面粗さ測定機器(東京精密社製、サーフコム550A等)により測定することができる。
【0044】
[フッ素樹脂層の形成]
本発明では、ポリイミド複合管状物のトナーに対する離型性をさらに向上させるために、上記のように形成されるシリコーンゴム層の外周面にさらにフッ素樹脂層を形成することができる。
【0045】
フッ素樹脂としては、四フッ化エチレン樹脂(PTEF)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)、四フッ化エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、三フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)等が好適であり、また、フッ素樹脂層にはカーボン、金属等の導電材を含有させた導電性フッ素樹脂を用いることができる。なお、上記フッ素樹脂層には、シリカ、炭化珪素、ガラスビーズ、架橋シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾクアナミン樹脂等の粉末を分散させて耐摩耗性を向上させることができる。また、前述のポリイミド管状体に配合する導電性物質を配合することもできる。フッ素樹脂層の厚みは、耐摩耗性とフッ素樹脂層の成膜性の観点から、一般的には1〜50μmの範囲内であり、好ましくは5〜30μmの範囲内である。
【0046】
フッ素樹脂層の形成は、フッ素樹脂を適当な有機溶媒に溶解させた樹脂溶液、水や有機溶媒またはこれらの混合溶媒にフッ素樹脂粒子を分散させた分散液等のフッ素樹脂含有液をシリコーンゴム層の表面にスプレー法、ディッピング法等で塗工し、得られた塗膜を加熱して硬化(焼成)することによって形成することができる。フッ素樹脂層に必要に応じて配合される添加剤は塗工液の調製段階で塗工液中に配合することができる。また、フッ素樹脂液は市販品をそのまま、或いは、水や有機溶媒等で希釈して使用することができる。
【0047】
フッ素樹脂液から形成された塗膜の加熱温度は特に限定はされないが、一般的には320〜450℃程度であり、通常、5〜60分間程度加熱をすればフッ素樹脂が硬化(焼成)してフッ素樹脂層が得られる。また、シリコーンゴム層の形成を上述のシリコーンゴム溶液の塗膜の2段階の加熱によって行うようにし、1段目の加熱によって1次加硫(1次硬化)して得られたシリコーンゴムの1次硬化層の外周面にフッ素樹脂液の塗膜を形成することで、2段目の加熱によって、シリコーンゴム層の2次硬化とフッ素樹脂の硬化(焼成)が同時に成されて、シリコーンゴム層上にフッ素樹脂層を形成することもできる。かかるシリコーンゴム層とフッ素樹脂層の同時形成を行うことで、シリコーンゴム層とフッ素樹脂層間の密着性が向上し、機械的強度、真円度等の点でより有利なポリイミド複合管状物を得ることができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
実施例1
N−メチル−2−ピロリドン786.9gにカーボンブラック(三菱化学社製MA−100)30.0gをボールミルで室温(25℃)にて12時間混合した。得られたカーボンブラック分散液に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)133.9gとp−フェニレンジアミン(PDA)49.2gとを室温(25℃)にて溶解し、重合させた。重合反応により増粘した溶液を、60℃で、スリーワンモーター(新東科学(株)製、FBL300)により回転速度5rpmにて18時間撹拌することにより150Pa・sの粘度のカーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液を得た。
【0050】
この溶液を内径68 mm、長さ500 mmのドラム金型内周面に、塗布ノズルを介して金型を回転させながら塗布し、金型を1500rpmで10分間回転させて遠心成形により、厚さ約500μmの均一な展開層を得た。熱風を均等に循環させた150℃の乾燥炉内で250rpmでドラム金型を回転させながら、30分間加熱した。さらに金型を回転させながら2℃/minの速度で350℃まで昇温し、そのまま30分加熱を続け、イミド化を進行させた。室温に冷却した後金型内面より剥離し、厚さ75 μmのポリイミ
ド管状物を得た。
【0051】
外径67.8mm、長さ600mmのアルミニウムからなる円柱状の芯体の外周にポリイミド管状物を装着した。その外表面にプライマー(東レ・ダウコーニング社製シリコーン溶液、製品名DOW CORNING TORAY DY 39-067)をはけ塗りし、150℃で5分乾燥させ
た。図2の環状塗布装置において、ノズル開口幅1.0mmの吐出口を有する内径68.6mm、クリアランス0.2mmの環状ノズルを設置し、ついでシリコーンゴム(東レ・ダウコーニング社製、DOW CORNING TORAY DY 35-2083 Aおよび同B)2液をそれぞれ貯蔵
タンクに投入した。押出しポンプ((株)日本省力技術研究所製、MGP−X030)にて、2液を1:1の割合で混合ミキサーにて混合しながら、環状ノズルへ送液した。その後、環状ノズルを静止させたままで、押出しポンプの押出しスピードと芯体の上昇速度を制御し(押出しポンプの押出し目盛:230、芯体の上昇速度:1000mm/分)、環状ノズルから所定量のシリコーンゴム溶液を押し出し(吐出量:43.5g/分)、ポリイミド管状物の外面に200μmの厚みでシリコーンゴムを被膜形成した。環状塗布装置から芯体をシリコーンゴム被膜の形成されたポリイミド管状物とともに取り外し、芯体と管状物とを分離した。その後、管状物を150℃の温度で5分間加熱して一次加硫し、ポリイミド管状物の外面に200μmの厚みでシリコーンゴムが形成された管状物を得た。さらに、離型層としてシリコーンゴムの外表面にフッ素樹脂(三井・デュポンフロロケミカル(株)製、EM−560CL、化学名:PFA(パーフルオロエチレンプロピレン共重合体))をスプレーコート法にて被膜形成し、350℃の温度で30分間加熱して、シリコーンゴムのポスト加硫(2次加硫)とフッ素樹脂の焼成を行い、ポリイミド/シリコーンゴム/フッ素樹脂の3層構造の複合管状物(内径68mm、管壁の平均厚み285μm)を得た。
【0052】
前述の測定方法と同様に、前述の機器を用いて、シリコーンゴム層の厚み、シリコーンゴム層が形成された2層構造の管状物の厚みの変動値、及び3層構造の複合管状物の管壁の厚みとその変動値、ならびに複合管状物の表面粗さを測定したところ、シリコーンゴム層の厚みは188〜208μmで、シリコーンゴム層が形成された2層構造の管状物の厚みの変動値は−6%〜+4%、3層構造の複合管状物の管壁厚みは273〜293μmで、該厚みの変動値は−6%〜+4%であった。また、フッ素樹脂層外表面の表面粗さは0.16μmであった。
【0053】
この3層構造の複合管状物を管形状を保ったまま、350mmの長さに切断し、レーザープリンター(日本ヒューレット・パッカード(株)製、HP3500)の定着ユニットに定着ベルトとして装着し、カラー画像として画像を得、評価を行なった。
画質の評価は、
5:定着ムラなどの不具合がなく、画像が極めて良好で鮮明である。
4:定着ムラなどの不具合がなく、画像が良好で鮮明である。
3:定着ムラなどの不具合がなく、画像は良好であるが、あまり鮮明ではない。
2:定着ムラなどの不具合はないが、画像が鮮明ではない。
1:定着ムラなどの不具合が見られる。
の5段階で行った。その結果、評価は5であり、定着ムラのない、極めて鮮明で良好な画像を得ることができた。
【0054】
比較例1
実施例1と同様の方法により得られたポリイミド管状物(厚さ75mm、内径68mm、長さ500mm)を円柱状の芯体(外径67.8mm)に外挿し、その外周面に、実施例1と同じシリコーンゴム溶液(東レ・ダウコーニング社製、DOW CORNING TORAY DY 35-2083 Aおよび同Bの2液を混合したもの)をスパイラル状に塗布した。該スパイラル状の
塗布は、図1に示す円筒状金型内面に塗布ノズルを介してポリイミド前駆体溶液を塗布する方法と同様の方法であって、ポリイミド管状物の外周面に塗布ノズルを介してシリコーンゴム溶液が塗布されるように塗布ノズルを配置して塗布する方法によって行い、ポリイミド管状物の外面に約200μmの厚みでシリコーンゴム層を被膜形成した。その結果、得られた2層構造の複合管状物は、シリコーンゴム被膜に目視でわかるほどの凹凸が形成され、定着ベルトとして明らかに不適切なものであり、該スパイラル状の塗布方法は、定着ベルトとして使用するための、厚みの均一性及び表面平滑性が良好なポリイミド複合管状物を得るための方法として使用し得ないことが示された。
【符号の説明】
【0055】
1 環状ノズル
1a 吐出口
2 芯体
3 ポリイミド管状物
4 塗膜(被膜)
5 分岐ユニット
6 混合ミキサー
7 ギアポンプ(押出しポンプ)
8 貯蔵タンク
9a、9b シリコーンゴム溶液
10 シリコーンゴム層
11 円筒状金型
12 前駆体溶液
13 塗布ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材としてのポリイミド管状物と、該ポリイミド管状物の外周面に積層されたシリコーンゴム層とを有するポリイミド複合管状物であって、
前記シリコーンゴム層は、芯体を内包しない、中空のポリイミド管状物の外周面上に形成されたシリコーンゴム溶液の塗膜を加熱硬化して形成されたものであり、
当該複合管状物は、外径が20〜1000mm、長さが100〜1000mmであり、
シリコーンゴム層の厚みの変動が±10%の範囲内であり、かつ、シリコーンゴム層の表面粗さ(中心線平均粗さ)が1μm以下であることを特徴とする、ポリイミド複合管状物。
【請求項2】
シリコーンゴム層にフッ素樹脂層がさらに積層されたポリイミド複合管状物であって、
前記フッ素樹脂層は、芯体を内包しない、中空のポリイミド管状物の外周面に積層されたシリコーンゴム層上に形成されたフッ素樹脂液の塗膜を加熱硬化して形成されたものである、請求項1記載のポリイミド複合管状物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−224090(P2012−224090A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−151556(P2012−151556)
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【分割の表示】特願2008−205756(P2008−205756)の分割
【原出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】