説明

ポリイミド金属積層体、及びそれを用いたプリント配線板

【課題】耐熱性に優れた二層フレキシブル基板において、電子機器内に折り曲げた状態での接続信頼性に優れる、ポリイミド金属積層体及びそれを用いたプリント配線板を提供すること。
【解決手段】本発明のポリイミド金属積層体1は、非熱可塑性ポリイミドフィルム13と、非熱可塑性ポリイミドフィルム13の少なくとも一方の面上に設けられた接着性ポリイミド層14と、接着性ポリイミド層14上に設けられた金属層12とを備え、非熱可塑性ポリイミドフィルム13の弾性率が4GPa以下であり、接着性ポリイミド層14の厚みが1μm〜3μmであり、且つ、金属層12は、接着性ポリイミド層14と接する接触面の十点平均粗さRzが1.0μm以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線板などに使用されるポリイミド金属積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化とともに、小型化、高機能化などの技術進歩を求められ、それらを構成する電子部品にも電気特性、機械特性、耐熱性なども、より高性能なものを求められている。
【0003】
従来より、電子部品や半導体チップ等の実装面に回路を形成したプリント配線板が、電子部品や半導体チップ等を実装するために広く用いられている。これまで、一般的には金属箔と耐熱性フィルム(例えば、ポリイミドフィルム)とをエポキシ樹脂等の熱硬化性接着剤を介して積層した銅張積層板が使われてきた。こうした目的で使用される銅張積層板用材料は一般に三層フレキシブル基板と呼ばれる。
【0004】
しかし、三層フレキシブル基板は、接着剤としてエポキシ樹脂を用いるため耐熱性に問題があり、半田や超音波等を用いた基板上の電極と半導体チップとの接合工程等の高温を要する工程で問題が生じる問題があった。
【0005】
こうした問題を解決する手段として、エポキシ樹脂といった低耐熱性の熱硬化性接着剤等を使用することなく、ポリイミド層に金属層を形成する方法による種々の材料が上市されており、それらは上記の三層フレキシブル基板に対して、二層フレキシブル基板と呼ばれる。
【0006】
近年の電子機器の軽薄短小化、高機能化に伴い、プリント配線板の小型化、折り曲げやすさが強く望まれている。例えば、電子機器の1つである携帯電話において、ヒンジ部の繰り返し屈曲耐性に優れていることが求められており、カバーレイフィルムの弾性率と曲げ剛性を調節することにより、屈曲性の高いヒンジ部を用いた携帯電話が開示されている(特許文献1)。
【0007】
また、電子機器の軽薄短小化に伴い、電子機器内の空間を有効利用するため、プリント配線板を折り曲げた状態で電子機器内に組み込まれることが求められている。折り曲げやすいプリント配線板として、スティフネス値を調整した屈曲性のプリント配線板が開示されている(特許文献2)。
【0008】
しかしながら、折り曲げた状態で電子機器内に組み込まれたプリント配線板には、元に戻ろうとする反発力があり、プリント配線板の部品実装部、異方導電性フィルムを介した接合部の接続信頼性が不十分という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−261444号公報
【特許文献2】特開2007−208087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、耐熱性に優れた二層フレキシブル基板において、電子機器内に折り曲げた状態での接続信頼性に優れる、ポリイミド金属積層体及びそれを用いたプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明をなすに至っ
た。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0012】
本発明のポリイミド金属積層体は、非熱可塑性ポリイミドフィルムと、前記非熱可塑性ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面上に設けられた接着性ポリイミド層と、前記接着性ポリイミド層上に設けられた金属層とを備え、前記非熱可塑性ポリイミドフィルムの弾性率が4GPa以下であり、接着性ポリイミド層の厚みが1μm〜3μmであり、且つ、前記金属層は、前記接着性ポリイミド層と接する接触面の十点平均粗さRzが1.0μm以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明のポリイミド金属積層体においては、はぜ折り耐性試験値が1回以上であることが好ましい。
【0014】
本発明のプリント配線板は、上記ポリイミド金属積層体の金属層に回路を形成してなることを特徴とする。
【0015】
本発明のカバーレイ付プリント配線板は、上記プリント配線板と、前記プリント配線板の回路形成面上に設けられたカバーレイとを備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明のカバーレイ付プリント配線板においては、はぜ折り耐性試験値が4回以上であることが好ましい。
【0017】
本発明のカバーレイ付プリント配線板においては、前記カバーレイの弾性率が4GPa以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐熱性に優れた二層フレキシブル基板において、電子機器内に折り曲げた状態での接続信頼性に優れる、ポリイミド金属積層体及びそれを用いたプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係るポリイミド金属積層体の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、耐熱性に優れ、折り曲げた状態での接続信頼性に優れるポリイミド金属積層体、およびそれを用いたプリント配線板に関するものである。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本実施の形態に係るポリイミド金属積層体の積層構造について説明する。図1(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係るポリイミド金属積層体の断面模式図である。図1(a)に示すように、本実施の形態に係るポリイミド金属積層体1は、ポリイミド層11と、このポリイミド層11の一方の主面上に設けられた金属層12とを備える。ポリイミド層11は、非熱可塑性ポリイミドフィルム13と、この非熱可塑性ポリイミドフィルム13と金属層12との間に設けられ、非熱可塑性ポリイミドフィルム13及び金属層12を接着する接着性ポリイミド層14とを含む。なお、図1(b)に示すように、ポリイミド層11の他方の主面上にさらに金属層15を設ける構成としてもよい。この場合においては、ポリイミド層11は、非熱可塑性ポリイミドフィルム13と金属層15との間に設けられ、非熱可塑性ポリイミドフィルム13と金属層15とを接着する接着性ポリイミド層16を含む。
【0022】
このように、本実施の形態に係るポリイミド金属積層体においては、ポリイミド層11の片面又は両面に金属層12、15が設けられ、ポリイミド層11は、非熱可塑性ポリイミドフィルム13と金属層12とを熱圧着可能な接着性ポリイミド層14及び非熱可塑性ポリイミドフィルム13と金属層15とを熱圧着可能な接着性ポリイミド層16を含む。そして、非熱可塑性ポリイミドフィルム13と金属層12、15が接着性ポリイミド層14、16を介して結合された積層体となっている。
【0023】
(非熱可塑性ポリイミドフィルム)
非熱可塑性ポリイミドフィルムとしては、公知のあらゆるポリイミド又はポリイミド前駆体であるポリアミド酸をイミド化したポリイミドを適用することができる。本発明に用いられるポリアミド酸は、通常、テトラカルボン酸二無水物の少なくとも1種と、ジアミンの少なくとも1種とを実質的等モル量、有機溶媒中に溶解、反応させて得ることができる。
【0024】
ポリアミド酸のイミド化には、熱キュア法およびケミカルキュア法のいずれかを用いる。熱キュア法は、脱水閉環剤等を作用させずに、加熱だけでイミド化反応を進行させる方法である。また、ケミカルキュア法は、ポリアミド酸有機溶媒溶液に、無水酢酸等の酸無水物に代表される化学的転化剤(脱水剤)と、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジン等の第三級アミン類等に代表される触媒とを作用させる方法である。ケミカルキュア法と熱キュア法を併用することも出来る。イミド化の反応条件は、ポリアミド酸の種類、フィルムの厚さ、熱キュア法及び/又はケミカルキュア法の選択等により変動し得る。
【0025】
非熱可塑性ポリイミドフィルムにおけるテトラカルボン酸二無水物成分としては、従来公知のものを使用することができる。具体的には、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸−1,4−フェニレンエステル、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、オキシジフタル酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸等の酸二無水物があげられる。熱膨張係数やガラス転移温度等の耐熱性の観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸−1,4−フェニレンエステル二無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。また、各々のテトラカルボン酸二無水物を単独で用いても、併用して用いてもよい。弾性率の観点から、ピロメリット酸二無水物を使用することがより好ましい。
【0026】
非熱可塑性ポリイミドフィルムにおけるジアミン成分としては、従来公知のものを使用することができる。例えば、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、2,2−ジメチル−4,4−ジアミノビフェニル、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン等があげられる。各々のジアミンを単独で用いても、併用してもよい。熱膨張係数やガラス転移温度等の耐熱性の観点、弾性率の観点から、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを併用することが好ましい。
【0027】
非熱可塑性ポリイミドフィルムに特に好ましい酸二無水物成分とジアミン成分との組み合わせは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)からなる群から選ばれた少なくとも一つの酸二無水物と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び/又はパラフェニレンジアミンとの組み合わせである。これらのモノマーを組み合わせて合成したポリイミドは適度な弾性率、寸法安定性、低吸水率等の優れた特性を発現し、本発明に係るポリイミド金属積層体に用いるのに好適である。
【0028】
ポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒が挙げられる。また、これらの溶媒を単独あるいは、混合して使用することもできる。
【0029】
非熱可塑性ポリイミドフィルムには、公知の方法で無機あるいは有機物のフィラー、有機リン化合物等の滑剤や酸化防止剤を添加することが出来る。
【0030】
また、非熱可塑性ポリイミドフィルムの表面は、プラズマ処理やコロナ処理や、サンドブラスト処理などといった公知慣用の処理がされていてもよい。
【0031】
また、非熱可塑性ポリイミドフィルムの弾性率は、折り曲げやすさの観点から4GPa以下が好ましい。弾性率が4GPa以下であることにより、非熱可塑性ポリイミドフィルムが折り曲げやすい状態となり、折り曲げた状態での接続信頼性が良好となる。また弾性率は好ましくは3.8GPa以下である。また、非熱可塑性ポリイミドフィルム走行時の扱い易さの観点から3.0GPa以上が好ましい。
【0032】
また、非熱可塑性ポリイミドフィルムとして市販のポリイミドフィルムも使用できる。例えば、ユーピレックス(登録商標)S、ユーピレックス(登録商標)SGA、ユーピレックス(登録商標)SN(宇部興産社製、商品名)、カプトン(登録商標)H、カプトン(登録商標)V、カプトン(登録商標)EN(東レ・デュポン社製、商品名)、アピカル(登録商標)AH、アピカル(登録商標)NPI、アピカル(登録商標)NPP、アピカル(登録商標)HP、アピカル(登録商標)FPI(社カネカ製、商品名)等があげられる。
【0033】
非熱可塑性ポリイミドフィルムの厚みは、2μm〜125μmであることが好ましい。さらに折り曲げやすく、且つハンドリングし易いという観点から5μm〜50μmが好ましい。
【0034】
(接着性ポリイミド層)
接着性ポリイミド層は、可溶性ポリイミド溶液を塗布した後、加熱により溶媒を乾燥させるか、またはポリアミド酸溶液を塗布し加熱により溶媒を乾燥させた後、加熱もしくは加熱とイミド化触媒の併用によりアミド酸部位を閉環イミド化することで得られる。塗布後の工程が溶媒の乾燥だけでよいため厚み精度を出し易いという観点から、可溶性ポリイミド溶液を用いることが好ましい。
【0035】
可溶性ポリイミドの構造は、金属層(金属箔)と加熱加圧下で接着できるものなら、特に制限はなく公知慣用のものが使用できるが、銅箔との密着性の観点から、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3,5−ジアミノ安息香酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを成分に含む構造であることが好ましい。異なる2種類以上のテトラカルボン酸二無水物成分及び/又はジアミン成分を用いる場合は、それより得られる可溶性ポリイミドはランダム構造であってもブロック構造であってもよい。また、それらポリマーの末端はモノアミンまたは酸無水物で封止されていてもよい。本発明において、「可溶性」とは、溶解した時に塗布剤として使用可能な溶媒に室温20℃〜100℃の温度範囲において1質量%以上溶解することをいう。
【0036】
また、ポリアミド酸の構造は、それをイミド化したポリイミドが金属箔と加熱加圧下で接着できるものなら、特に制限はなく公知慣用のものが使用できる。イミド化には加熱キュア法または、加熱キュア法とケミカルキュア法の併用により行われる。異なる2種類以上のテトラカルボン酸二無水物成分及び/又はジアミン成分を用いる場合は、それより得られるイミド化後のポリイミドはランダム構造であってもブロック構造であってもよい。また、それらポリマーの末端はモノアミンまたは酸無水物で封止されていてもよい。
【0037】
接着性ポリイミド層に用いられる可溶性ポリイミド溶液又はポリアミド酸溶液には、非熱可塑性ポリイミドフィルムとの密着力向上などの目的でアルキル化メラミン樹脂やアルキル化尿素樹脂の加えても良く、また物性を損なわない範囲で他の耐熱性樹脂、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニルスルフィド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステル、シアネートエステル等を適当量配合することも可能である。
【0038】
また、物性を損なわない範囲で、添加剤として、脱水剤、シリカ等のフィラー、及びシランカップリング剤やチタネートカップリング剤等の表面改質剤をさらに加えてもよい。それらフィラー類は、予め上記の表面改質剤で処理されていてもよい。
【0039】
また、上記接着性ポリイミド層のガラス転移温度は、TMAで測定した場合に183℃以上であることが好ましい。プリント配線板では、配線との接続に半田が一般的に使用される。共晶半田の融点は183℃であることから、接着性ポリイミド層のガラス転移温度はそれ以上であることが好ましい。また半田の融点より10℃以上高いことがより好ましく、接着性ポリイミド層のガラス転移温度は200℃以上であることがより好ましい。生産性の観点から200℃以上、300℃以下であることが更に好ましい。
【0040】
接着性ポリイミド層の厚みは、品質の観点から、1μm以上が好ましい。また、熱ロールラミネート又はダブルベルトプレスによって金属層と接着させる際、ロール及びベルトにある傷、歪み等の欠点がポリイミド金属積層体に転写され、ポリイミド金属積層体に欠点が現れることを避けるという点から1μm以上が好ましい。また多層ポリイミド層としての耐熱性の観点から、接着性ポリイミド層の厚みは3μm以下が好ましい。プリント配線板では、配線との接続に半田が一般的に使用され、半田ごてが用いられる。半田ごての温度は300℃以上であり、プリント配線板には300℃以上の耐熱性が求められている。接着性ポリイミド層が厚いと、ガラス転移温度以上の温度で接着性ポリイミド層の軟化により、回路の沈み込み等が発生するため、接着性ポリイミド層は薄い方が回路沈み込み抑制の観点から好ましい。接着性ポリイミド層の厚みは、1μm以上3μm以下が好ましい。
【0041】
(金属層)
ポリイミド金属積層体に用いられる金属層としては、本発明の目的に適う限り、公知の金属箔、合金箔が適用可能であるが、配線形成性の観点から、電解銅箔、圧延銅箔、キャリア付銅箔が好ましい。さらに、柔軟性つまり折り曲げた状態での接続信頼性の観点から、厚さ18μm以下の銅箔が好ましい。銅箔表面には、粗化処理、ニッケルや亜鉛など公知のメッキ処理、クロメート処理、アルミニウムアルコラート処理、アルミニウムキレート処理、シランカップリング剤処理等の表面処理を行ってもよい。
【0042】
ポリイミド金属積層体の接着性ポリイミド層と接する金属層は、折り曲げの際に、金属層と接着性ポリイミド層と接する接触面12a、15a(図1(a)、(b)参照)における金属層の粗化されている部分に応力集中が働き、この部分を起点として金属層の破断が発生する。このため、金属層の破断を避けるという点から、金属層の接着性ポリイミド層と接する接触面の十点平均粗さが1.0μm以下となることが好ましい。また、より金属層の破断を防ぎ、折り曲げた状態での接続信頼性を向上させるという点から、金属層の粗化処理を行わない、もしくは粗化処理を最低限にするという観点から、0.7μm以下となることがさらに好ましい。
【0043】
また、折り曲げの際には、ポリイミド金属積層体、及びプリント配線板は回路面を内側にあるいは外側に曲げられるため、金属層の接着性ポリイミド層と接しない非接触面12b、15b(図1(a)、(b)参照)にもと同様に曲げ応力が発生する。よって、金属層の接着性ポリイミド層と接しない非接触面の粗度も、接着性ポリイミド層と接する面同様小さい方が好ましい。粗度が原因で断線が発生することを防ぐ目的から十点平均粗さは2.0μm以下が好ましい。
【0044】
また、本実施の形態に係るポリイミド金属積層体1においては、金属層と接着性ポリイミド層とを積層するため、金属層の粗度が接着性ポリイミド層の金属層と接する接触面14a、16a(図1(a)、(b)参照)側に保持されると考えられる。よって、ポリイミド金属積層体から、金属層を除去し、接着性ポリイミド層の金属層と接する接触面側の粗度を測定することで、接着性ポリイミド層と接していた面の金属層の粗度とすることができる。
【0045】
(ポリイミド金属積層体)
本実施の形態に係るポリイミド金属積層体は、ポリイミド層の片面または両面に金属層があり、ポリイミド層は非熱可塑性ポリイミドフィルムと接着性ポリイミド層とを含む。そして、非熱可塑性ポリイミドフィルムと金属層とが接着性ポリイミド層を介して結合されたポリイミド金属積層体である。本実施の形態に係るポリイミド金属積層体は、はぜ折り耐性試験値が1回以上である。
【0046】
上記の通り、はぜ折り耐性試験値が良好であることから、フレキシブルプリント配線板の両面に電子部品を実装する際に、はぜ折り部に荷重がかかることで回路に異常が生じることを避けることができる。また、上記の通り、はぜ折り耐性を有することから、小型の電子機器内にフレキシブル配線板を組み込むことができる。
【0047】
なお、「はぜ折り耐性」とは、ポリイミド金属積層体を180°折り曲げてその折り曲げ部に荷重をかけ、その後ポリイミド金属積層体を開いて折り曲げ部を逆方向に180°折り曲げて折り曲げ部に荷重かける。この操作を1回のはぜ折り耐性試験とし、その回数をはぜ折り耐性試験値として数えた。
【0048】
本実施の形態に係るポリイミド金属積層体の製造方法としては、例えば、加熱処理後に熱圧着可能な接着性ポリイミド層となるポリアミド酸溶液または可溶性ポリイミド溶液を非熱可塑性ポリイミドフィルム上に塗布し、加熱処理を行って得た多層ポリイミドフィルムに金属箔(以下「金属層」ともいう)を貼り合わせる方法がある。
【0049】
上記方法では、加熱処理後に熱圧着可能な接着性ポリイミド層となるポリアミド酸溶液または可溶性ポリイミド溶液の非熱可塑性ポリイミドフィルム上への塗布は、特に限定されないが、ダイコート法、ナイフコート法、グラビアコート法、コンマコーター、3本リバースコーター、スロットダイコーター、リップコーター、クローズドエッジダイ等、公知慣用の方法によって行うことができる。ポリアミド酸溶液や可溶性ポリイミド溶液には吸湿し易い塗布溶剤が用いられるため、液を密閉系で用いて吸湿を抑えることができ、塗工中に液性変化が少ないという観点から、スロットダイコーターやリップコーターやクローズドエッジダイコーターが特に好ましい。その後、加熱処理を行って多層ポリイミドフィルムが得られる。
【0050】
多層ポリイミドフィルムとして、非熱可塑性ポリイミドフィルムの両面に、加熱処理後に熱圧着可能な接着性ポリイミド層となるポリアミド酸溶液または可溶性ポリイミド溶液を塗布し、加熱処理すると両面接着性多層ポリイミドフィルムが得られる。そのような両面接着性多層ポリイミドフィルムを得るには、上記のような方法にて両面それぞれに加熱処理後に熱圧着可能な接着性ポリイミド層となるポリアミド酸溶液または可溶性ポリイミド溶液を塗布した後、両面をまとめて乾燥してもよいし、あるいは、片面塗布後にその面がタックフリーとなる程度まで乾燥後さらに反対面を塗布してから両面合わせて乾燥してもよいし、あるいは、塗布と乾燥を片面ずつ逐次で行ってもよい。また、両面に形成される接着性ポリイミド樹脂層の組成は同じでも、異なっていてもよい。また、それぞれの膜厚は同じでも異なっていてもよい。接着性ポリイミド樹脂層の厚みは1μm〜3μmが好適に利用できる。
【0051】
加熱処理方法としては、非熱可塑性ポリイミドフィルムの片面に塗布する場合は、通常のロール搬送のドライヤーが使用できる。また、非熱可塑性ポリイミドフィルムの両面に塗布する場合はフローティングドライヤーが好適である。
【0052】
加熱処理は塗布膜中に残存する溶媒量が所定量に減少するまで行う。熱圧着可能な接着性ポリイミド層内の残存溶媒量は、金属箔と積層させる際、あるいは、ポリイミド金属積層体からなるプリント配線板をはんだ耐熱試験に供した場合に発泡を防ぐという観点から、残存溶媒量が加熱処理後膜の質量に対して1質量%以下が好ましい。
【0053】
上記の多層ポリイミドフィルムを用いたポリイミド金属積層体は、多層ポリイミドフィルムの片側または両側に金属層を重ね、公知の加熱及び/又は加圧を伴った方法により、多層ポリイミドフィルムと金属層とを積層することで得ることができる。積層方法は単板プレスによるバッチ処理、熱ロールラミネートあるいはダブルベルトプレスによる連続処理等公知の方法を用いることができる。長尺を得る場合には、均一な圧力を掛けられる点でダブルベルトプレスを用いることが好ましく、特に、加熱オイルや加熱ガスといった熱媒を用いてベルトを加圧する方式のダブルベルトプレスがより均一な圧の印加が可能という点で好ましい。
【0054】
本実施の形態に係るポリイミド金属積層体は、フレキシブルプリント配線板製造に用いることができる。それらプリント配線板を製造する際の積層方法における加熱方式は特に限定されるものではなく、例えば、熱循環方式、熱風加熱方式、誘導加熱方式等、所定の温度で加熱し得る従来公知の方式を採用した加熱手段を用いることができる。同様に、上記積層方法における加圧方式も特に限定されるものではなく、例えば、油圧方式、空気圧方式、ギャップ間圧力方式等、所定の圧力を加えることができる従来公知の方式を採用した加圧手段を用いることができる。
【0055】
(プリント配線板)
本発明に係るプリント配線板は、上記ポリイミド金属積層体をサブトラクティブ法等によって回路を形成することによって得ることができる。サブトラクティブ法とは、通常フォトレジスト層を金属層上に形成し、このフォトレジスト層を選択露光及び現像処理することで配線状にパターニングし、パターニングしたフォトレジスト層をエッチングマスクとして金属層をエッチング処理し、その後にフォトレジスト層を完全に除去する方法をとる。ここで、フォトレジストとしては液状あるいはドライフィルムレジストが用いられ、エッチング液としては、塩化鉄系、塩化銅系、過酸系等の溶液が用いられる。
【0056】
本発明に係るプリント配線板は、上記ポリイミド金属積層体より形成されてなるプリント配線板と、プリント配線板の回路上に設けられたカバーレイを備えることが好ましい。このように、カバーレイを備えることにより、回路を保護することができる。
【0057】
(カバーレイ)
本発明に係るカバーレイは、ポリイミドフィルムに接着剤を積層したものを用いることができる。接着剤層を介してプリント配線板の回路面を保護するものであればよい。上記接着剤としては、アクリル系、エポキシ系、ポリイミド系等を用いることができる。また、カバーレイ用のインクをプリント配線板の回路面に塗布して乾燥する方法を用いてもよい。
【0058】
本発明に係るカバーレイは折り曲げ易さの観点から、弾性率4GPa以下であることが好ましい。弾性率が4GPa以下であることにより、カバーレイが折り曲げやすい状態となり、折り曲げた状態での接続信頼性が良好となる。また弾性率は好ましくは3.5GPa以下がより好ましい。また、回路保護の点から1GPa以上が好ましい。
【0059】
なお、本発明に係るカバーレイ付プリント配線板は、電子機器への組み込み方法の自由度の点から、はぜ折り耐性試験値が4回以上であることが好ましい。通常カバーレイを保護膜として積層すると、剛直性によるカバーレイ自体の破断し易さのため、はぜ折り耐性試験値が悪くなる。しかしながら、上記のようにカバーレイの弾性率が4GPa以下の場合には、カバーレイを付けたプリント配線板におけるはぜ折り耐性試験値も良好な値となり、折り曲げた時の接続信頼性を向上させることができる。
【0060】
(十点平均粗さRz)
本発明で言う、十点平均粗さRzとは、JIS B0601:1982に記載の方法で測定したものを意味する。
【0061】
(実施例)
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において十点平均粗さRz、弾性率、厚み、はぜ折り耐性試験、及び耐熱性測定は次のようにして行った。
【0062】
[十点平均粗さRz測定]
JIS B0601:1982に記載の十点平均粗さRzを、サーフコーダ(小坂研究
所社製、SE−30D)で測定した。
【0063】
[弾性率測定]
弾性率の測定は、以下のように実施した。試験片サンプルを幅10mm、長さ320mmにカットし、23±2℃、湿度50±5RH%に調湿された環境内24時間以上調湿後、テンシロン(エー・アンド・デイ社製)にて、3MPa以上のAir圧力で試験片サンプルを挟んでサンプルセットした。チャック間距離は250mmに調整した。その後0.3Nをかけた状態から25mm/分の引張速度で測定を行い、測定機と接続したパーソナルコンピューターはサンプリング間隔20μmでサンプリングを行った。測定本数は5本とし、弾性率を求めた。弾性率の算出方法は、引張伸度0.4%〜1.0%間の傾きを計算することにより算出し、平均値を求めた。
【0064】
[厚み測定]
接着性ポリイミド樹脂層の厚みは、多層ポリイミドフィルムの厚みを測定後、非熱可塑性ポリイミドフィルムの厚みを引くことで求めた。測定は、接触式膜厚計(ミツトヨ社製:ライトマチックVL−50AS、測定力0.26N)で測定した。厚みは、幅方向5cm間隔で測定し、平均値を求めた。
【0065】
[はぜ折り耐性試験]
(ポリイミド金属積層体のはぜ折り耐性試験)
ポリイミド金属積層体の片面にライン100μm、スペース100μmの回路を形成し、反対面の金属層をエッチングで除去したはぜ折り耐性試験片と、回路面と反対側の銅箔を全て残したはぜ折り耐性試験片を形成した。試験片の回路パターンは、JIS C 6471に決められた耐折性試験用試料を参考に、100μm幅、長さ110mmの6本の回路が、ライン100μm、スペース100μmで平行になるようにした。また、両端の回路を引き伸ばして回路抵抗測定用の直径3mmの電極を設け、一箇所でも回路に異常があれば、1回の抵抗値測定で変化が捉えられるパターンとした。はぜ折り耐性試験片を幅10mm、長さ13cmにカットし、試験片の長手方向の中心部ではぜ折りした。始めに回路面を内側にしてはぜ折りし、1kgの重りを5秒載せた。その後、回路面を外側にしてはぜ折り部が重なるようにはぜ折りし、1kgの重りを5秒載せた。上記操作を1回のはぜ折り耐性試験とし、試験後の回路の抵抗値を測定した。抵抗値の測定は、試験サンプルをはぜ折り部で折り曲げた状態で実施した。回路抵抗値変化のあった時を回路破断とみなし、直前の回数まではぜ折り耐性があるとした。回路面と反対側の金属層をエッチングで除去した試験片、回路面と反対側の金属層を全て残した試験片のはぜ折り耐性回数の少ない方をはぜ折り耐性回数とした。また、はぜ折り耐性試験時の荷重は、参考文献(COF実装の高密度化における材料・工法の問題点とその対策)のスズめっきCOFテープの180°折り曲げ性評価を参考にして1kgfとした。
【0066】
(カバーレイ付きプリント配線板のはぜ折り耐性試験)
また、上記を同様の方法で、ポリイミド金属積層体の片面にライン100μm、スペース100μmの回路を形成し、回路形成面の反対面の金属層をエッチングで除去した試験片と、回路形成面と反対側の銅箔を全て残した試験片とを形成した。さらに試験片の両面にカバーレイを160℃ 40分 4MPa 真空下の条件で積層し、カバーレイ付きはぜ折り耐性試験片を作成した。カバーレイ付きはぜ折り耐性試験片を幅10mm、長さ13cmにカットし、試験片の長手方向の中心部ではぜ折りした。始めに回路面を内側にしてはぜ折りし、1kgの重りを5秒載せた。その後、回路面を外側にしてはぜ折り部が重なるようにはぜ折りし、1kgの重りを5秒載せた。上記操作を1回のはぜ折り耐性試験とし、試験後のカバーレイ外観を観察、回路の抵抗値を測定した。抵抗値の測定は、試験サンプルをはぜ折り部で折り曲げた状態で実施した。4回のはぜ折り耐性試験を実施し、カバーレイ外観異常、回路抵抗値変化のないものを○、カバーレイ外観異常、回路抵抗値変化のあったものを×とした。
【0067】
[耐熱性]
ポリイミド金属積層体の片面にライン100μm、スペース100μmの回路を形成し、100μmの回路の先に、直径3mmの電極を形成した。回路面と反対側の銅箔を全て残した耐熱性試験片を作成した。直径3mmの電極に350℃に加熱したはんだごてを10秒押し当てて、外観を観察した。試験は10個の電極で実施した。全電極で異常無しを○とし、1箇所でも異常があれば×とした。
【0068】
[熱圧着可能なポリアミド酸ワニスの合成]
ステンレス容器に攪拌器、窒素ガス導入管を取り付け、窒素ガス気流中で反応させた。
N−メチル−2−ピロリドン中に1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物をモル比1:0.998の割合で加え、N−メチル−2−ピロリドンに対する固形分濃度を14質量%として攪拌した。これにN−メチル−2−ピロリドンとメシチレンを質量比10:6の割合で加え、固形分濃度10質量%の熱圧着可能なポリアミド酸ワニスを得た。
【0069】
[実施例1]
バックアップロールを有するクローズドエッジダイコーター(井上金属工業社製)を用いて、非熱可塑性ポリイミドフィルム(カネカ社製、アピカル10NPI)の両面に上記の条件で合成した熱圧着可能なポリアミド酸ワニスを、予備乾燥後の塗布膜厚みが片面あたり3.5μmになるように、ライン速度14m/minで片面ずつ塗布し、150℃で予備乾燥した。さらに溶剤を揮発させるため、ロールtoロール式遠赤外線加熱炉を用い、温度295℃、ライン速度3m/minで乾燥した。得られた多層ポリイミドフィルムの厚みを測定し、非熱可塑性ポリイミドフィルムの分を差し引いたところ、熱圧着可能な接着性ポリイミド層の厚みは、片面2.5μmであった。その後、ダブルベルトプレス機(加圧媒体:加熱オイル)を用いて、最高温度を330℃に設定し、5MPaの圧力、3m/分の速度で多層ポリイミドフィルムの両面に銅箔(三井金属鉱業社製:NA−DFF(12μm厚)、接着性ポリイミド層と接する側のRzは0.6μm)を積層し、ポリイミド銅箔積層体Aを得た。
【0070】
ポリイミド銅箔積層体Aに上記方法に基づき回路を形成し、カバーレイ(ニッカン工業社製、CISV1215)を用いて、カバーレイ付きプリント配線板Bを形成した。
【0071】
上記試験方法に基づいて行った試験結果に用いた非熱可塑性ポリイミドフィルム、カバーレイの弾性率測定結果、耐熱性試験結果、はぜ折り耐性試験結果を下記表1に示す。
【0072】
ポリイミド銅箔積層体Aのはぜ折り耐性試験において、回路面と反対側の金属層をエッチングで除去した試験片は、8回のはぜ折り耐性試験後に回路断線が発生した。回路面と反対側の金属層を全て残した試験片は、2回のはぜ折り耐性試験後に回路断線が発生した。回路面と反対側の銅箔の有無に関わらず、1回のはぜ折り耐性試験値を示した。
【0073】
カバーレイ付きプリント配線板Bを用いたカバーレイ付きプリント配線板はぜ折り耐性試験において、回路面と反対側の金属層をエッチングで除去した試験片、回路面と反対側の金属層を全て残した試験片ともに、4回のはぜ折り耐性試験後、カバーレイ外観異常なし、回路抵抗値変化なしと、回路面と反対側の銅箔の有無に関わらず、良好なはぜ折り耐性を示した。
【0074】
[実施例2]
接着性ポリイミド層の厚みを片面3.0μmに、銅箔の厚みを9μm(接着性ポリイミド層と接する側のRzは0.6μm)に変更した以外は実施例1と同じ条件で、ポリイミド銅箔積層体Cとカバーレイ付きプリント配線板Dを得た。
【0075】
上記試験方法に基づいて行った試験結果に用いた非熱可塑性ポリイミドフィルム、カバーレイの弾性率測定結果、耐熱性試験結果、はぜ折り耐性試験結果を下記表1に示す。
【0076】
ポリイミド銅箔積層体Cのはぜ折り耐性試験において、回路面と反対側の金属層をエッチングで除去した試験片は、3回のはぜ折り耐性試験後に回路断線が発生した。回路面と反対側の金属層を全て残した試験片は、2回のはぜ折り耐性試験後に回路断線が発生した。回路面と反対側の銅箔の有無に関わらず、1回のはぜ折り耐性試験値を示した。
【0077】
カバーレイ付きプリント配線板Dを用いたカバーレイ付きプリント配線板はぜ折り耐性試験において、回路面と反対側の金属層をエッチングで除去した試験片、回路面と反対側の金属層を全て残した試験片ともに、4回のはぜ折り耐性試験後、カバーレイ外観異常なし、回路抵抗値変化なしと、回路面と反対側の銅箔の有無に関わらず、良好なはぜ折り耐性を示した。
【0078】
[実施例3]
接着性ポリイミド層の厚みを片面1.0μmに、銅箔の厚みを9μm(接着性ポリイミド層と接する側のRzは0.6μm)に変更した以外は実施例1と同じ条件で、ポリイミド銅箔積層体Eとカバーレイ付きプリント配線板Fを得た。
【0079】
上記試験方法に基づいて行った試験結果に用いた非熱可塑性ポリイミドフィルム、カバーレイの弾性率測定結果、耐熱性試験結果、はぜ折り耐性試験結果を下記表1に示す。
【0080】
ポリイミド銅箔積層体Eのはぜ折り耐性試験において、回路面と反対側の金属層をエッチングで除去した試験片は、5回のはぜ折り耐性試験後に回路断線が発生した。回路面と反対側の金属層を全て残した試験片は、2回のはぜ折り耐性試験後に回路断線が発生した。回路面と反対側の銅箔の有無に関わらず、1回のはぜ折り耐性試験値を示した。
【0081】
カバーレイ付きプリント配線板Fを用いたカバーレイ付きプリント配線板はぜ折り耐性試験において、回路面と反対側の金属層をエッチングで除去した試験片、回路面と反対側の金属層を全て残した試験片ともに、4回のはぜ折り耐性試験後、カバーレイ外観異常なし、回路抵抗値変化なしと、回路面と反対側の銅箔の有無に関わらず、良好なはぜ折り耐性を示した。
【0082】
[実施例4]
接着性ポリイミド層の厚みを片面1.5μmに、銅箔の厚みを9μm(接着性ポリイミド層と接する側のRzは0.6μm)に変更した以外は実施例1と同じ条件で、ポリイミド銅箔積層体Gとカバーレイ付きプリント配線板Hを得た。
【0083】
上記試験方法に基づいて行った試験結果に用いた非熱可塑性ポリイミドフィルム、カバーレイの弾性率測定結果、耐熱性試験結果、はぜ折り耐性試験結果を下記表1に示す。
【0084】
ポリイミド銅箔積層体Gのはぜ折り耐性試験において、回路面と反対側の金属層をエッチングで除去した試験片は、5回のはぜ折り耐性試験後に回路断線が発生した。回路面と反対側の金属層を全て残した試験片は、2回のはぜ折り耐性試験後に回路断線が発生した。回路面と反対側の銅箔の有無に関わらず、1回のはぜ折り耐性試験値を示した。
【0085】
カバーレイ付きプリント配線板Hを用いたカバーレイ付きプリント配線板はぜ折り耐性試験において、回路面と反対側の金属層をエッチングで除去した試験片、回路面と反対側の金属層を全て残した試験片ともに、4回のはぜ折り耐性試験後、カバーレイ外観異常なし、回路抵抗値変化なしと、回路面と反対側の銅箔の有無に関わらず、良好なはぜ折り耐性を示した。
【0086】
[実施例5]
接着性ポリイミド層の厚みを片面2.5μmに、銅箔の厚みを9μm(接着性ポリイミド層と接する側のRzは0.6μm)に変更した以外は実施例1と同じ条件で、ポリイミド銅箔積層体Iとカバーレイ付きプリント配線板Jを得た。
【0087】
上記試験方法に基づいて行った試験結果を用いた非熱可塑性ポリイミドフィルム、カバーレイの弾性率測定結果、耐熱性試験結果、はぜ折り耐性試験結果を表1に示す。
【0088】
ポリイミド銅箔積層体Iのはぜ折り耐性試験において、回路面と反対側の金属層をエッチングで除去した試験片は、3回のはぜ折り耐性試験後に回路断線が発生した。回路面と反対側の金属層を全て残した試験片は、2回のはぜ折り耐性試験後に回路断線が発生した。回路面と反対側の銅箔の有無に関わらず、1回のはぜ折り耐性試験値を示した。
【0089】
カバーレイ付きプリント配線板Jを用いたカバーレイ付きプリント配線板はぜ折り耐性試験において、回路面と反対側の金属層をエッチングで除去した試験片、回路面と反対側の金属層を全て残した試験片ともに、4回のはぜ折り耐性試験後、カバーレイ外観異常なし、回路抵抗値変化なしと、回路面と反対側の銅箔の有無に関わらず、良好なはぜ折り耐性を示した。
【0090】
[比較例1]
接着性ポリイミド層の厚みを片面3.1μmに変更した以外は実施例1と同じ条件で、ポリイミド銅箔積層体Kとカバーレイ付きプリント配線板Lを得た。
【0091】
上記試験方法に基づいて行った試験結果に用いた非熱可塑性ポリイミドフィルム、カバーレイの弾性率測定結果、耐熱性試験結果、はぜ折り耐性試験結果を下記表1に示す。耐熱性試験において、10電極中1電極で、電極のずれが発生し、耐熱性に劣る結果となった。
【0092】
[比較例2]
接着性ポリイミド層の厚みを片面0.9μmに変更した以外は実施例1と同じ条件で、ポリイミド銅箔積層体Mとカバーレイ付きプリント配線板Nを得た。ポリイミド銅箔積層体Mの銅箔をエッチングすると、接着性ポリイミド層にボイドが見られ、良好なプリント配線板を得られなかった。上記試験方法に基づいて行った試験結果に用いた非熱可塑性ポリイミドフィルム、カバーレイの弾性率測定結果、耐熱性試験結果を下記表1に示す。
【0093】
[比較例3]
銅箔を(日本電解社製:USLPSE(12μm厚)、接着性ポリイミド層と接する側のRzは1.6μm)に変更した以外は実施例1と同じ条件で、ポリイミド銅箔積層体Oとカバーレイ付きプリント配線板Pを得た。
【0094】
上記試験方法に基づいて行った試験結果を用いた非熱可塑性ポリイミドフィルム、カバーレイの弾性率測定結果、耐熱性試験結果、はぜ折り耐性試験結果を下記表1に示す。
【0095】
ポリイミド銅箔積層体Oのはぜ折り耐性試験において、回路面と反対側の金属層をエッチングで除去した試験片は、3回のはぜ折り耐性試験後に回路断線が発生した。回路面と反対側の金属層を全て残した試験片は、1回のはぜ折り耐性試験後に回路断線が発生した。
【0096】
カバーレイ付きプリント配線板Pを用いたカバーレイ付きプリント配線板はぜ折り耐性試験において、回路面と反対側の金属層を全て残した試験片に、4回のはぜ折り耐性試験後、回路断線が発生した。
【0097】
【表1】

【0098】
表1に示すように、本実施の形態に係るポリイミド金属積層体は、良好な耐熱性及びはぜ折り耐性を示した(実施例1〜実施例5)。一方、接着性ポリイミド層の厚みが大きい場合には、耐熱性が低下した(比較例1)。これは、ガラス転移温度以上の温度で接着性ポリイミド層の軟化により、回路の沈み込み等が発生したためと考えられる。また、接着性ポリイミド層の厚みが小さい場合には、ポリイミド金属積層体にボイドが生じたため、良好なポリイミド金属積層体は得られなかった(比較例2)。さらに、金属層の表面粗さが大きい場合には、ポリイミド金属積層体のはぜ折り耐性回数及びカバーレイ付きプリント配線板のはぜ折り耐性試験結果が悪化した(比較例3)。これは、金属層の粗化されている部分に応力集中が働き、金属層の破断が発生したためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明のポリイミド金属積層体及びプリント配線板は、耐熱性及びはぜ折り耐性に優れるので、高密度配線や高信頼性のフレキシブルプリント配線板やICパッケージ基板等の配線基材に好適である。また、フレキシブルプリント配線板は、小型電子機器用途に好適である。
【符号の説明】
【0100】
1 ポリイミド金属積層体
11 ポリイミド層
12、15 金属層
12a、14a、15a、16a 接触面
12b、15b 非接触面
13 非熱可塑性ポリイミドフィルム
14、16 接着性ポリイミド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非熱可塑性ポリイミドフィルムと、前記非熱可塑性ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面上に設けられた接着性ポリイミド層と、前記接着性ポリイミド層上に設けられた金属層とを備え、前記非熱可塑性ポリイミドフィルムの弾性率が4GPa以下であり、接着性ポリイミド層の厚みが1μm〜3μmであり、且つ、前記金属層は、前記接着性ポリイミド層と接する接触面の十点平均粗さRzが1.0μm以下であることを特徴とするポリイミド金属積層体。
【請求項2】
はぜ折耐性試験値が1回以上であることを特徴とする請求項1記載のポリイミド金属積層体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のポリイミド金属積層体の金属層に回路を形成してなることを特徴とするプリント配線板。
【請求項4】
請求項3に記載のプリント配線板と、前記プリント配線板の回路形成面上に設けられたカバーレイとを備えたことを特徴とするカバーレイ付プリント配線板。
【請求項5】
はぜ折り耐性試験値が4回以上であることを特徴とする請求項4記載のカバーレイ付プリント配線板。
【請求項6】
前記カバーレイの弾性率が4GPa以下であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のカバーレイ付きプリント配線板。

【図1】
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【公開番号】特開2012−6200(P2012−6200A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142817(P2010−142817)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】