説明

ポリウレタン分解液及びポリウレタン分解液形成方法

【課題】ポリウレタンを分解して断熱性に優れ機械強度も高い再生ポリウレタンの製造にそのままで利用できるポリウレタン分解液を提供する。
【解決手段】メチレンジアニリン(MDA)の含有量が=3〜6質量%及びトルエンジアミン(TDA)の含有量が0〜0.3質量%であり、ウレタンフォームの分解剤の含有量が20〜50質量%であり、残部がウレタンフォームの分解物であるオリゴマー、液体状物質などからなるポリウレタン分解液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷蔵庫用断熱体ポリウレタンの再利用に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化,オゾン層破壊などの地球環境問題への意識の高まりとともに、近年廃棄物処理技術、特に廃プラスチックのリサイクル技術の研究開発が急速に進められている。廃プラスチックのリサイクル技術として化学的処理により原料として再生するケミカルリサイクルは資源の循環利用の観点から有用である。
【0003】
ポリウレタンのケミカルリサイクル技術の一つとしてグリコール分解法が知られている(特許文献1)。グリコール分解法は、廃ポリウレタンを過剰のジオール中で加熱混合することにより分解し、ポリオールを生成回収する方法である。このグリコール分解法においてはポリオール化合物とともに一級アミンを有する化合物、例えば、芳香族ジアミン類であるトルエンジアミン(TDA)およびメチレンジアニリン(MDA)等が生成する。
【0004】
グリコール分解法により得られた分解物(ポリオール)をポリウレタンの原料の一部としてポリウレタンを再形成する場合、分解物中の一級アミン類の量が重要になる。アミン類、例えばTDAおよびMDAはポリウレタンを形成する際の発泡,硬化速度に影響を及ぼすため、ウレタン原料中の量を一定にする必要がある。
【0005】
そこで、ポリウレタン分解物中の芳香族ジアミン類であるトルエンジアミン(TDA)およびメチレンジアニリン(MDA)をポリオールに変換する方法として、特許文献3〜6にアルキレンオキシドをアミンと反応させることによりアミンをポリオールに変換する方法が示されている。
【0006】
一方、廃棄冷蔵庫より回収したポリウレタンには、冷蔵庫の箱体用断熱材として用いられているウレタンフォームや冷蔵庫の扉用断熱材として用いられているウレタンフォームなどが混合している。一般に、冷蔵庫の断熱体はその使用する部分によりウレタンの形成方法が異なり、使用するポリオールの反応性も異なる。箱体用ウレタンフォームは冷蔵庫扉用ウレタンフォームと比べて、反応性の高いポリオールを用いることが多い。このため、冷蔵庫箱体用と扉用のウレタンを混合して分解したウレタン分解液を用いて冷蔵庫の箱体用断熱材を再形成する場合、分解液中のポリオールの反応性が低いことが問題である。
【0007】
よって、特許文献2〜5のいずれの方法においても、分解液をウレタン原料のポリオールとして用いて、冷蔵庫箱体用断熱材を形成するには、反応性が低く、ウレタン触媒を多く添加しなければならないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭53−029359号公報
【特許文献2】特開2002−212336号公報
【特許文献3】特開2002−241538号公報
【特許文献4】特開平7−309816号公報
【特許文献5】特開平7−224141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ポリウレタンを分解して断熱性に優れ機械強度も高い再生ポリウレタンの製造にそのままで利用できるポリウレタン分解液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、硬質ウレタンフォームを分解剤にて分解することにより得られる分解液に関し、メチレンジアニリン(MDA)の含有量が=3〜6質量%及びトルエンジアミン(TDA)の含有量が0〜0.3質量%であり、ウレタンフォームの分解剤の含有量が20〜50質量%であり、残部がウレタンフォームの分解物であるオリゴマー、液体状物質などからなるウレタン分解液を得ることである。
【0011】
本発明の分解液は、ウレタンフォーム形成に必要な成分例えば、ポリオール、水、発泡剤、ウレタン触媒、整泡剤、ポリイソシアネートと混合して通常の方法でウレタンフォームを形成することができる。本発明の分解液は適切な量のMDA及びTDAを含有するので、通常の量のウレタン触媒を用いても、断熱性に優れ、機械強度の高いウレタンフォームを形成することができる。本発明においてプレミックスポリオールとは、上述のように分解液、ポリオール、水、発泡剤、ウレタン触媒、整泡剤、ポリイソシアネート等を含む再生ウレタンフォーム製造用原料である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、分解液が適切な量のメチレンジアニリン(MDA)及びトルエンジアミン(TDA)を含むので、そのまま再生ウレタンフォームの製造に利用することができ、且つ断熱性が優れ機械強度の高いウレタンフォームを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明で使用されるポリウレタン分解装置の概略を示す構成図。
【図2】本発明で使用されるポリウレタン分解液回収装置の詳細を示す構成図。
【図3】4点注入により硬質ポリウレタンフォームを充填する外箱鉄板と内箱樹脂壁から成る冷蔵庫断熱箱体を示す斜視図。
【図4A】本発明のポリウレタン分解装置の押圧部の動作を説明する図で、ウレタンフォーム供給ゾーンZaの形成を示す図。
【図4B】本発明のポリウレタン分解装置の押圧部の動作を説明する図で、ウレタンフォーム加圧ゾーンZbの形成を示す図。
【図4C】本発明のポリウレタン分解装置の押圧部の動作を説明する図で、ウレタンフォームシールゾーンZcの形成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を、図面を用いて詳細に説明する。まず、図1により本発明のウレタン分解物を得ることができるポリウレタン分解装置を説明する。
【0015】
前記メチレンジアニリン及びトルエンジアミンはウレタンフォームを構成するイソシアネート(ポリメリックMDIとTDI)由来のもので、MDAは単一の化合物ではなく、分子量の異なる化合物の混合物であることが多い。
【0016】
また、MDA及びTDAはそれぞれの質量/(分解液質量−分解剤質量)×100で計算される。TDAは含まれない場合が有るが、含まれる場合でも、0.3質量%以下になるように調整される。
【0017】
分解対象の硬質ウレタンフォームは、自動車、建築物、冷蔵庫等に用いられる物で、特に、冷蔵庫の箱体断熱体、扉用断熱体等として用いられる硬質ウレタンフォームが処理対象となる。
【0018】
本発明の分解液の製造に際しては、ウレタンフォームの加圧条件、加熱温度及び加熱時間を適切に管理することが必要で、これらの条件が不適切であると、MDA及びTDAの量が不適切となり、目的の分解液が得られなくなり、従って分解液を再生ウレタンフォームの原料としてそのまま用いることができない。
【0019】
ポリウレタン分解物中にトルエンジアミン(TDA)およびメチレンジアニリン(MDA)を一定量存在させることにより、ポリウレタンをグリコール分解させた後に、分解液を再度、化学反応させる処理工程を経ないでポリウレタンを再形成させることである。
【0020】
最も、本発明において、分解液中のMDA及びTDAの量が重要であるから、以下で説明する最も好ましいと考えられる押圧式分解装置による分解液出なくとも、その他の方法で得た分解液を混合して、適切なMDA及びTDAの含有量の分解液を調整すれば、再生ウレタンフォーム製造の原料として用いることができる。
【0021】
図1において、10は発泡ウレタンフィーダーで、その発泡ウレタン供給フィーダ10に供給用押出機11が接続され、その供給用押出機11の吐出口11dに反応管12が接続され、反応管12にバルブやギアポンプ等からなる圧力調整装置13を介して生成物回収装置14が接続されている。
【0022】
発泡ウレタン供給フィーダ10に投入される発泡ウレタンは冷蔵庫より回収されたポリウレタンで、粉砕して、常温で加圧圧縮されたもの等からなる。
【0023】
発泡ウレタン供給フィーダ10は、スクリューフィーダ、テーブルフィーダ、サークルフィーダ等を用いればよく、供給量が安定したものを選ぶ必要がある。供給量を測定して供給速度を自動調整するロスインウェイト方式の方がより好ましい。
【0024】
供給用押出機11は図示のようにシリンダー11c内に単軸のスクリュー11sを設けて形成される。単軸押出機を有効活用してウレタンを加圧する方法は追って説明する。
【0025】
供給用押出機11として、単軸押出機を用いた場合も、単軸押出機へのポリウレタン供給に押出機からなる供給フィーダ10を用い、ホッパ11hと供給用押出機11の接合部にあたる供給用押出機11のシリンダー11cに設けられた開口部11aの50%以上を占める面積が供給する原料に覆われない条件で材料を供給することが好ましい。
【0026】
供給する材料が少ない場合、開口部11aに供給された材料はすぐにシリンダー11cの吐出方向に送られて無くなるので、開口部11aは原料に覆われない。供給量を増加させると、開口部11aの吐出側が原料に覆われてくる。さらに、供給量を増加させると原料が徐々に開口部11aの全体に広がっていく。ブリッジのし易さは開口部11aに溜まった原料の重さに対して、開口部11aの壁面と原料の摩擦抵抗力が大きくなるほどブリッジし易くなる。したがって、開口部11aが完全に原料で塞がれて開口部11aの壁面と原料の接触面積が広くない状態を保って運転することが望ましい。
【0027】
供給用押出機11として、単軸押出機でポリマーを押し出す際、一般にはフィーダがなくても材料を供給可能である。しかし、とくに、発泡していて比重が軽く、形状がバラバラでブリッジし易い粉砕物などを供給する場合には上記のように供給フィーダ10を使用してシリンダー11cの開口部11aが完全に原料に満たされない状態にコントロールすることが有効である。
【0028】
この供給用押出機11の吐出口11dの近くには、すなわち、吐出口11dの上流側で、かつ発泡ウレタンで押出加圧され供給用押出機11内が原料でシールゾーンZcが形成されるより下流側に、ジオール等の分解剤を注入する分解剤注入部15が形成され、その分解剤注入部15に分解剤を加熱して供給する分解剤注入装置16が接続される。分解剤注入装置16は分解剤タンク17と分解剤タンク17と分解剤注入部15を結ぶ分解剤配管18と、分解剤配管18に接続され分解剤を加圧して供給する分解剤ポンプ19と、分解剤配管18内の分解剤を加熱するヒータ21とからなる。
【0029】
分解剤として用いは各種のグリコールを用いることができる。例えば、ジエチレングリコール,エチレングリコール,プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール,ポリオキシエチレングリコール,ポリオキシプロピレングリコール等の二価アルコール、1,2,6−ヘキサントリオール,グリセリン等の三価アルコール、及び、ポリエチレングリコール等の重合体が挙げられる。これらは、単独で用いても良く、または、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0030】
ポリウレタンの分解に用いる分解剤の量はポリウレタンを液状化でき、さらに、分解液を使用してウレタンフォームを再形成する際に、形成したウレタンフォームの特性が悪化しないようにする必要がある。具体的にはウレタン分解液中の20から50%を分解剤とすることができる。用いる分解剤の量が多いと、再形成するポリウレタン中のポリウレタン分解物の量が少なくなり、曲げ強度、断熱性が悪化する。また、分解剤の量が少ないとポリウレタンを充分に液体に分解することができない。
【0031】
分解剤を加熱せずに室温で押出機に供給し、その後、反応管の外部から加熱すると、生成物を得ることはできるが反応管内部に温度分布が発生する。すなわち、常温で分解剤を押出機に供給した場合、押出機または反応管の中で材料を加熱することになる。このとき、押出機や反応管の壁面から加熱することになるので温度分布が生じやすく、その結果、反応生成物が均一にならない問題がある。このため、未反応の固形分が生成物に含まれる問題が発生するので、分解剤を予め加熱しておくのが好ましく、予め加熱した分解剤を注入することで拡散を促進するとともに、温度を均一にすることが可能となる。
【0032】
供給用押出機11は、そのスクリュー11sがモータ20に、トルクセンサ22が設けられ、トルクセンサ22の検出値で分解剤注入装置16の分解剤ポンプ19が制御されるようになっている。
【0033】
ポリウレタンの分子鎖骨格は150℃〜200℃において主鎖の運動が見られる。150℃以上にすることで、押出機内でポリウレタンを圧縮することが可能である。一方、250℃よりも高温にするとウレタンがシリンダー表面で滑って強い力で材料を前に送ることができなくなり、結果として圧縮することができない問題がある。
【0034】
そこで、供給用押出機11から反応管12にいたるまでの装置構成において、供給ゾーンZaおよび加圧ゾーンZbの温度を、それぞれ100℃〜150℃及び150℃〜250℃とし、反応管12内の反応ゾーンZdの温度及び圧力を200℃〜280℃、圧力0.5MPa〜10MPa、反応時間5分〜20分を維持することで、供給と加圧と分解反応が可能である。すなわち独立した温度調整ゾーンZa、Zb、Zdを3つ以上もっている必要がある。
【0035】
図1に示す分解装置を用いてウレタンを分解することにより、分解液中のメチレンジアニリン(MDA)の量(質量/(分解液質量−分解剤質量)×100)を3〜6質量%にすることができる。
【0036】
ここで、反応管12内での反応温度は200℃〜280℃とすることが好ましい。反応温度を200℃より低くした場合、生成物の分解が遅く、目的とするポリオールは得られるが、反応が充分進まないことにより、残った固形分の成分が混入する、あるいは、分成形液中のMDAが少なく、メチレンジアニリン(MDA)の量(質量/(分解液質量−分解剤質量)×100)が3質量%未満となり、再フォーム化に際して、触媒量を増やさなければならない。よって、反応温度は200℃以上が好ましい。また、反応温度を280℃より高くすると生成物の分解が進みすぎてMDAの含有量が増え、メチレンジアニリン(MDA)質量/(分解液質量−分解剤質量)×100=6質量%以上となり、再フォーム化に際して発泡反応を制御することが困難となる。
【0037】
ここで、MDAとはメチレンジアニリンであり、4,4’−メチレンジアニリン及び2,4’−メチレンジアニリンを示す。MDA質量とは、4,4’−メチレンジアニリン、2,4’−メチレンジアニリン、それぞれの質量を合わせた値である。
【0038】
ポリウレタンのグリコール分解により生成するアミン類の大部分はポリウレタンを形成する原料であるイソシアネート(ポリメリックMDI(化式1)とTDI(式3))に由来する。すなわち、MDAは(式1)に示したポリメリックMDIに由来し、TDAは(式3)に示したTDIに由来する。
【0039】
一方、冷蔵庫用断熱材として使用されていた硬質ウレタンフォームはイソシアネートとポリオールの反応により形成されており、用いられるイソシアネートの大部分はポリメリックMDI(式1)である。よって、冷蔵庫より回収したポリウレタンの分解反応により生成するアミン類の大部分はポリメリックMDI由来のアミン(式2)である。ポリウレタンの原料に用いられているMDIの内訳はおおよそn=0が30−50%、n=1〜4が50−70%である。すなわち、nは0〜4であり、n=0の化合物と1〜4の化合物が混在する。本発明において、MDAが単一化合物でなく、nが0の化合物と、1〜4の化合物との混合物であることが重要で、単一のMDAを用いたとしても十分に断熱性及び機械的強度のある再生ウレタンフォームが得られないと言う問題がある。
【0040】
【化1】

【0041】
【化2】

【0042】
【化3】

【0043】
【化4】

【0044】
分解液中にはポリメリックMDI由来のアミンが含まれることが予想される。よって、分解液中にMDAを単にメチレンジアニリン(MDA)の量(質量/(分解液質量−分解剤質量)×100)が3〜6質量%になるように添加しただけでは本発明の効果は得られない。
【0045】
ついで、本発明のウレタン分解液を用いてウレタンフォームを形成する反応について説明する。本発明で用いる、廃棄冷蔵庫より回収したポリウレタンには、冷蔵庫の箱体用断熱材として用いられているウレタンフォームや冷蔵庫の扉用断熱材として用いられているウレタンフォームなどが混合している。一般に、冷蔵庫の断熱体はその使用する部分によりウレタンの形成方法が異なり、使用するポリオールの反応性も異なる。箱体用ウレタンフォームは冷蔵庫扉用ウレタンフォームと比べて、反応性の速いポリオールを用いることが多い。このため、ウレタン分解液を用いて冷蔵庫の箱体用断熱材を再形成する場合、分解液の反応性が低いことが問題である。
【0046】
すなわち、ウレタンフォームを形成する場合、ウレタン分解液がメチレンジアニリン(MDA)の量(質量/(分解液質量−分解剤質量)×100)が3質量%未満であると、分解液を用いて冷蔵庫箱体用断熱材を形成する場合、ウレタン形成用触媒の添加量を増やしただけでは冷蔵庫箱体用断熱材として充分な強度のウレタンフォームを形成することができない。
【0047】
また、ウレタン分解液がメチレンジアニリン(MDA)の量(質量/(分解液質量−分解剤質量)×100)が6質量%より大きいと、分解液を用いて冷蔵庫箱体用断熱材を形成する場合、ウレタン形成用触媒の添加量を減らしただけではウレタンフォームの形成反応を充分に制御することができず、冷蔵庫箱体用断熱材として充分な強度のウレタンフォームを形成することができない。MDAの量が3〜5.3質量%の範囲が好ましい。
【0048】
そこで、分解液中のポリメリックMDI由来のアミンの量を調整することにより、分解反応液の反応速度を調整し、分解液を用いてウレタンフォームを再形成する場合、ウレタンの強度を低下させることなく再形成が可能となる。このように、ポリメリックMDI由来のアミンの量を調整することができるのは本発明により、反応管内において、高温短時間でウレタン分解処理を行えるからであり、押出機に連結した反応管を有していない、押出機による連続分解装置、オートクレーブ等によるバッチ処理では昇温、降温に時間がかかる、均一な反応が難しい等から高温、短時間での処理は難しく、本発明と同様な分解液中のアミン量を有する分解液を得ることは困難である。
【0049】
分解液中のポリメリックMDI由来のアミンの量は分解装置の反応管の温度及び反応管内部での滞留時間により調整することが可能である。
【0050】
本発明の分解装置を使用しないでウレタン分解液を作成する場合、200℃以上の分解温度で分解したMDA含有量の多い分解液と200℃以下で形成したMDA含有量の少ない分解液をMDA含有量がメチレンジアニリン(MDA)が3〜6質量%になるように調合して使用することもできる。
【0051】
分解反応により生成するMDA等のアミン類はウレタンの熱分解反応により生じるイソシアネートやカルボジイミド等と反応することが予想される。よって、本発明で用いた図1の分解装置により高温、短時間で分解処理を行わない場合、MDA、TDAの含有量を、ぞれぞれ、メチレンジアニリン(MDA)が3〜6質量%、トルエンジアミン(TDA)が0〜0.3質量%、特に0.1〜0.3質量%にしても、再形成したウレタンフォームの特性は、本発明のウレタン分解液を用いて形成したウレタンフォームと同等の強度、熱伝導率を有してはいない。
【0052】
供給用押出機11および反応管12は耐圧設計された容器である必要がある。ここで供給用押出機11の吐出口11dの温度は、原料(発泡ウレタン)の軟化点温度以上、かつ軟化点+100℃以下で、かつ押出機吐出口の温度をA(℃)、分解剤の注入温度B(℃)、反応温度をC(℃)、原料の吐出量をWa(g/min),分解剤の注入量をWb(g/min)としたとき、すべての状態で比熱が1の場合に分解剤混合前の温度A,Bと混合後の温度C’には次のような関係がある。
【0053】
C’(Wa+Wb)=AWa+BWb …(1)
C’=(AWa+BWb)/(Wa+Wb) …(2)
C’の温度を目的とする反応温度Cに対して、C−50<C’<C+50の範囲にあることが好ましい。このC−50<C’<C+50に(2)式を代入し、
C−50<(AWa+BWb)/(Wa+Wb)<C+50 …(3)
(C−50)(Wa+Wb)<AWa+BWb<(C+50)(Wa+Wb)…(4)
(4)式の(C−50)(Wa+Wb)<AWa+BWbより、
(C−50)(Wa+Wb)−AWa<BWb …(5)
[(C−50)(Wa+Wb)−AWa]/Wb<B …(6)
(4)式のAWa+BWb<(C+50)(Wa+Wb)より、
BWb<(C+50)(Wa+Wb)−AWa …(7)
B<[(C+50)(Wa+Wb)−AWa]/Wb …(8)
(6)、(8)式からC’の温度を目的とする反応温度Cに対して、C−50<C’<C+50の範囲にコントロールするためには、分解剤の注入温度Bは以下の条件
[(C−50)(Wa+Wb)−AWa]/Wb<B <[(C+50)(Wa+Wb)−AWa]/Wb …(9)
を満たせばよい。
【0054】
より正確にはWa,Wbに代わって各物質の熱容量を勘案した値Wa’、Wb’を用いた方が良い。すなわち
Wa’=Wa・Ca
Wb’=Wb・Cb
(Ca,Cbは各物質A,Bの熱容量)をWa,Wbに代わって用いる方がより好ましい。
【0055】
生成物回収容器14は、図2に示すように、反応管12で高温・高圧場で発泡ウレタンと分解剤とが反応して分解したモノマーを冷却するために、外周に冷媒で冷却するジャケット24を備え、内部に固形分(不純物)Sを捕捉してモノマーをろ過するフィルタ25が設けられ、下部に排出弁26が設けられる。また生成物回収容器14には、背圧弁27を介してトラッパー28が接続され、さらに熱交換器29を介してタンク30が接続され、そのタンク30に排気管31が接続される。
【0056】
背圧弁27は、生成物回収容器14内の圧力を一定に保つと共に一定圧以上のときにガスをトラッパー28に排気する。トラッパー28では、ガス中の固形分等を除去し、ガス分を熱交換器29に流す。熱交換器29では、ガスを冷却して凝縮性ガスを液化してタンク30に送る。タンク30では液分が回収され、不凝縮性ガスが排気管31から排気されるようになっている。また、生成物回収容器14には、生成物回収容器14内の圧力が異常上昇したときにガスを排出する安全弁32が接続される。
【0057】
さて、反応管12に接続した圧力調整装置13と生成物回収容器14を接続する配管33には、サンプリング器具34が設けられ、生成物回収容器14内には、可動式の未分解生成物回収容器40が設けられる。これらはどちらか一方あるいはその両方の設備を取り付けることにより、装置の稼働開始時または停止時に生成する目的とする物質以外のものを生成物回収容器14から除去することができるものである。
【0058】
サンプリング器具34は、配管33に接続されたフォルダ35と、そのフォルダ35に設けられたボール弁36と、フォルダ35内に移動自在に設けられ、先端部が半割にされたサンプリング管37と、フォルダ35とサンプリング管37間をシールし、サンプリング後にサンプリング管37でサンプリングした生成物を取り出すべくフォルダ35の後端部35aを開放するためのフォルダ固定兼軸シール継手38とからなる。フォルダ固定兼軸シール継手38は、後端部35aを、配管33に接続したフォルダ基部35bに締め付けて固定するネジ式タイプなどで構成される。
【0059】
このサンプリング器具34は、ボール弁36を介して配管33の流路にサンプリング管37の半割りにした先端を差し込み、配管33から流下する生成物を直接サンプリング管37に採取する。この際、フォルダ35は、サンプリング管37を差し込んだ時に内圧が上がって、このサンプリング管37が飛び出さないようにその圧力を保持し、サンプリング後は、サンプリング管37をボール弁36より後方に移動したのち、ボール弁36を閉じ、その後、フォルダ固定兼軸シール継手38にて後端部35aを開放することでサンプリング管37で採取した目的外の生成物または、生成物サンプルを取り出すことができる。
【0060】
可動式の未分解生成物回収容器40は、L字に曲がったアーム41にて生成物回収容器14の頂板に取り付けられており、アーム41が頂板にOリング等のシール装置42で、密閉性を損なうことなく回転自在に取り付けられている。
【0061】
次に、図1、図2に示した発泡ウレタン処理装置を用いた発泡ウレタン処理方法を説明する。
【0062】
上述したように供給フィーダ10から発泡ウレタンPが供給用押出機11に供給され、スクリュー11sの回転で供給ゾーンZaから加圧ゾーンZbに加熱されながら押し出される。ここで、供給ゾーンZaでの温度は100℃〜150℃、加圧ゾーンZbでの温度は150℃〜250℃となり、加圧ゾーンZbの下流側で、発泡ウレタンによりシールゾーンZcが形成され、そのシールゾーンZcの下流側の分解剤注入部15から分解剤注入装置16によりジオールなどの分解剤が注入されて発泡ウレタンと共に吐出口11dから反応管12内に流通される。
【0063】
反応管12内の反応ゾーンZdでは、温度が200℃〜300℃、圧力が0.5MPa〜10MPa,反応時間(滞留時間)5〜30分に維持されて発泡ウレタンが分解剤と分解反応してモノマーが生成され、圧力調整装置13から配管33を通して生成物回収容器14に回収される。
【0064】
このとき、分解剤注入装置16のヒータ21を設けた分解剤配管18の最下流部(押出機側)の配管壁に温度計(図示せず)を設けるとともに、供給用押出機11のシリンダー11cの温度を測定する。また、供給用押出機11の吐出口11dの付近にシリンダー11cの内部の温度を測定するセンサーを設け、混合物が目的の反応温度Cに近い温度となっていることを確認することにより、上記範囲内での吐出口の温度Aおよび分解剤の注入温度Bの温度調整をコントロールする。
【0065】
一般に押出機でポリマーを加工する際には軟化点または融点+50℃〜+100℃の温度範囲で溶融成形する。発泡ウレタンの温度(吐出口の温度A)は、この経験的な設定範囲に準じることが好ましい。
【0066】
供給用押出機11で発泡ウレタンをスクリュー11sの回転で押し出し反応管12でモノマー化する場合、生成物としてのモノマーは常温で液体となり、場合によっては気体となる場合もあり、反応管12内ではほぼ気体となっている。この場合、分解剤注入部15から分解剤を注入しても、シールゾーンZcが確実に形成されていないと、分解剤が供給用押出機11を逆流してしまい発泡ウレタンを押出すことが困難となる。
【0067】
そこで、本発明においては、供給用押出機11で発泡ウレタンを押し出す際に、あらかじめ発泡ウレタンのみを押し出して発泡ウレタンが分解剤注入部15に達した時のトルク値をトルクセンサ22で測定しておき、反応押出時に材料の供給を開始した後にトルクが上昇し、上記のようにポリウレタンのみ押し出したときに測定した特定のトルク値以上になったとき、分解剤注入部15から分解剤を注入することにより分解剤の逆流を防止できるようにしたものである。
【0068】
これを、図4A,4B,4Cにより説明すると、先ず押出開始時に、図4Aに示すように、ホッパ11hからの発泡ウレタンが供給用押出機11内に取り込まれ、スクリュー11sの回転で、供給ゾーンZaに供給され、その供給ゾーンZaで加熱溶融されながら押し出され、図4Bに示すように加圧ゾーンZbで発泡ウレタンが高温に加熱されると共に加圧され、その後、図4Cに示すように溶融した発泡ウレタンでシールゾーンZcが形成される。この際、発泡ウレタンの供給量が一定である場合、スクリュー11sにかかるトルクは、発泡ウレタンが供給ゾーンZaから加圧ゾーンZbに押し出されて行く間に上昇し、シールゾーンZcが形成されるとほぼ一定の値となる。
【0069】
ただし、押出初期においては、反応管12内に発泡ウレタンが充満されていないので、反応管12内に発泡ウレタンを充満し、その後、分解剤注入部15を開放し、発泡ウレタンが分解剤注入部15に流入したときのトルク値を求めておけば、そのトルク値よりシールゾーンZcが形成されたことがわかり、その時点で分解剤を注入することで、逆流を防止できる。
【0070】
また供給用押出機11に投入される発泡ウレタンの量が変動し、スクリュー11sにかかるトルクが設定値より少なくなった場合には、分解剤の注入を停止することで、逆流を防止できる。
【0071】
また、分解装置の立ち上げ時には反応管12からは、反応が不十分な生成物が吐出されるため、まず圧力が上昇し、その後十分に反応した生成物が吐出されるため圧力が低下して一定値に達する。この時点から目的とする生成物が生成されるため、それまでは可動式の未分解生成物回収容器40を、アーム41にて配管33の直下に位置させ、反応が不十分な生成物を回収することで、未反応生成物などの混入を防止することができる。また十分に反応した生成物が吐出された後は、可動式の未分解生成物回収容器40を移動させて、目的とする生成物を生成物回収容器14に回収する。
【0072】
この際に、サンプリング器具34にて、生成物を直接サンプリングすることで生成物が未反応か十分反応しているかを的確に確認できる。
【0073】
ここで、本発明のモノマー化とは、ポリウレタンの化学原料に戻すことを言う。ポリウレタンの原料には液体状物質のものやオリゴマーを用いる場合も有り、ここでのモノマー化は必ずしもポリマーの繰り返し最小単位を表すモノマーに戻すことに限らず、液体状物質やオリゴマーを得ることを含む。
【0074】
生成物回収容器14内に排出されたモノマーは、ジャケット24で冷却されて液化すると共にこれを保温し、フィルタ25を通し、排出弁26から次工程に最適な条件で排出される。
【0075】
このように処理装置の稼働開始時および停止時には反応管12の内部の条件が安定せず、完全に分解していない生成物が吐出され、生成物回収容器14の密閉性を犠牲にせずに完全に分解していない生成物を除くために生成物回収容器14内で動かすことができる可動式の未分解生成物回収容器40を設けることで、反応が十分に行われたモノマーを得ることが可能となる。
【0076】
またサンプリング器具34と可動式の未分解生成物回収容器40は、反応管12の内部の圧力を測定する圧力測定装置(図示せず)で得た測定値を基に制御されるようになっている。特に廃棄物を処理する場合は、供給物の性状にばらつきがあるので、運転中に生成物の状態をチェックする必要がある。そのため密閉された生成物回収容器14から密閉状態を維持したままサンプルを取り出す方法は有効である。
【0077】
[実施例]
以下、本発明の実施例を説明する。
【0078】
実施例1
図1に示した処理装置で発泡ウレタンを処理した。
【0079】
供給用押出機11はシリンダー径20mm、長さL/直径D=25の押出機を用い、供給ゾーンZaおよび加圧ゾーンZbのシリンダー温度はそれぞれ160℃、170℃とした。
【0080】
原料として用いた発泡ウレタンは、冷蔵庫箱体及び扉用断熱体に用いられている発泡ウレタンで、粉砕して常温で加圧圧縮されたものであるが、密度は0.1程度である。固化していないので簡単にくずれて粉末状になる。5mmのメッシュでふるいにかけて、ふるいを通過した発泡ウレタンを用いた。スケールアップでより大型の押出機を用いる場合は粉砕サイズを大きくすることが可能である。また、スクリュー11sの回転速度は60rpmとして実験を行った。
【0081】
供給用押出機11のホッパ11hへの発泡ウレタンPの供給はフィーダ10を用い、ホッパ部へは発泡ウレタンPを定量的に供給した。また、フィーダ10にはアジテータを取り付けて攪拌し、ポリウレタンの粉末がブリッジして供給用押出機11への供給が不安定になることを防止した。さらにフィーダ10から供給するポリウレタンの量は供給用押出機11の供給部におけるホッパ内で回転するスクリュー11sの表面を完全に覆わない範囲で供給した。ここでは2g/minのポリウレタンをホッパに供給した。
【0082】
このとき、分解剤注入部15の穴を開放した状態であらかじめポリウレタンのみを押し出し、押出を始めてからポリウレタンが穴から排出された時、すなわちポリウレタンが分解剤注入部15に達した時のトルク値をトルクセンサ22で求めた結果、2.0N・mであった。そこで、トルクセンサ22で、材料の供給時のトルクをモニタリングし、供給を開始した後にトルクが上昇してトルク値が2.0N・m以上になってから分解剤注入部15から分解剤を注入開始させるように分解剤ポンプ19を制御した。
【0083】
これにより、トルク値が2.0N・m以上となったときにはシールゾーンZcが形成され、分解剤を注入しても分解剤の逆流が生じないことが確かめられた。
【0084】
分解剤注入部15では、注入するノズルには内部で球が動く逆止弁(図示せず)を用いた。これはポリウレタンが逆流して分解剤(ジエチレングリコール)の分解剤配管18に詰まることを予防するためである。また、逆止弁の弁として動く球のストロークは短い方が反応が速く、逆流を防げるので、本実験においては1mmとした。
【0085】
また、球から供給用押出機11のシリンダー11cの内面までの距離も短いほうが同様に逆止弁の反応が速い。逆止弁の動きが悪い場合には、トルクが十分にあがっていない段階でも分解剤が漏れ出る可能性がありその場合は材料が滑って原料が供給できなくなる可能性がある。球の位置ができるだけシリンダー11cの内面に近くなるように設計することにより、逆止弁の動きを俊敏にして逆流しにくい構造とすることができる。また、注入開始時には圧力調整装置13は閉じた状態とし、注入した液体や気体が気散しないように運転した。
【0086】
次に反応管12の内部の温度を220〜280℃とした。反応管12の容積は100mlとした。すなわち、ポリウレタンとジエチレングリコール混合物の比重を1.0と仮定した場合に、反応条件における滞留時間が10分程度となるようにした。このさらに下流側には圧力調整装置13としてバルブを設けた。バルブの出口温度は220℃とした。
【0087】
これは分解に用いるジエチレングリコールの沸点以下とすることにより、バルブ内で相転移が起こって流れが制御できなくなることを防止するためである。このバルブを開閉することにより反応管12の内部の圧力を1〜3MPaの範囲で制御した。
【0088】
さらに圧力調整装置13に配管33を介して接続した生成物回収容器14のジャケット24に冷媒を流すことにより生成物回収容器14内を冷却し、生成物の蒸気が発生しないようにした。ここでは0℃の冷媒を用いた。また、安全弁32は、生成物回収容器14内が1MPa以上に加圧されることがないようにした。
【0089】
特に可燃性のガスが排出されて生成物回収容器14内の圧力が高くなり爆発の危険性があるため、この安全弁32により、生成物回収容器14の耐圧よりも低い圧力に保つことが可能となる。
【0090】
また、安全弁32よりも低い圧力で作動する背圧弁27を取り付けその下流にトラッパー28と熱交換器29を接続することにより、生成物回収容器14で冷却しきれない溶媒を回収するようにした。
【0091】
さらに、生成物回収容器14内で図2の矢印に示す方向に動かせる可動式の未分解生成物回収容器40により立ち上げ時に反応が十分進んでない生成物を回収し、またサンプリング器具34にて生成物サンプルを採取した。
【0092】
この可動式の未分解生成物回収容器40とサンプリング器具34の作動は、反応管12の内部の圧力を測定する圧力測定装置(図示せず)でその圧力をモニタして行った。
【0093】
すなわち、立ち上げ時は材料の充満が進むと共に圧力が上昇する。その後、化学反応が進んで材料の粘度が低下する結果、圧力も低下し、一定値に達する。圧力が一定に達する時点までに排出される目的外の生成物を、サンプリング器具34または可動式の未分解生成物回収容器40で回収することにより、運転が不安定な状態で吐出されるオーバーフローを分離した。このとき、圧力測定装置で得た測定値からサンプリング器具34または可動式の未分解生成物回収容器40をコントロールするようにした。
【0094】
反応管12内の圧力が一定になったのちは、可動式の未分解生成物回収容器40での回収をやめ、生成物を生成物回収容器14内に導入し、フィルタ25にて生成物から固形分の不純物Sを取除いた。またフィルタ25によるろ過を実施する場合には生成物回収容器14内の生成物の温度を70℃以上に加温するようにした。
【0095】
この装置を用いて得られた分解液をGCにて定量分析し、分解液中のジエチレングリコール、2.1wt%の(MDA)メチレンジアニリン量を求め、メチレンジアニリン(MDA)を算出した。
【0096】
ついで、分解液20部、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドを付加したペンタエリスリトール(ポリオールA)40部(質量部、以下同じ)、トリレンジアミン系ポリオール(ポリオールD)15部、トリエチレンジアミン系ポリオール(ポリオールE)15部、トリエタノールアミン(ポリオールF)10部の混合ポリオール100部を用いて、水1.8部、シクロペンタン15.3部、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、N,N′,N′′−トリス(3−ジエチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジンの混合物3.0部、整泡剤2.5部からなるプレミックスポリオールとポリメチレンポリフェニルジイソシアネートを使用して、高圧発泡機によって図2に示す外箱鉄板と内箱樹脂壁から成る冷蔵庫箱体に充填し、断熱箱体を得た。その際、自由発泡時のポリウレタンフォーム量に対して110%の混合液を40℃に加熱し、発泡した。図3に4点注入により硬質ポリウレタンフォームを充填する外箱鉄板と内箱樹脂壁から成る冷蔵庫箱体及び、特性評価用に採取したフォームを示す。
【0097】
形成したポリウレタンの曲げ強度はウレタン注入口から少なくとも500mm以上離れたウレタン充填された断熱材部分から、80mm×250mm×20〜25mmのウレタンフォームを採取し、送り速度10mm/minで負荷し、フォーム折損時の荷重をフォームの巾と厚さの2乗で除した値である。
【0098】
形成したポリウレタンの熱伝導率は、ウレタン注入口から少なくも500mm以上離れたウレタンフォームにおいて、200mm×200mm×20〜25mmのウレタンフォームを、英弘製機社製HC−073型(熱流計法、平均温度10℃)を用いて評価した。
反応管内部の温度または分解剤の量を変えて、ウレタンを分解して得られた試料1〜5及び、得られた試料1〜5を用いて形成したウレタンフォームの特性を表にそれぞれ示す。
【0099】
比較例1
比較として、分解剤の量を1500gとして分解した試料6はメチレンジアニリン(MDA)が4.1質量%、トルエンジアミン(TDA)が0.18質量%であった。実施例1と同様な配合からなるプレミックスポリオールを用いて再形成したポリウレタンは実施例1、実施例5に比べ断熱性は悪化していないが、ジエチレングリコール由来の構造による影響により、曲げ強度が低い。
【0100】
分解剤の量を200gとして分解した試料7は分解液中に未分解のポリウレタンが含まれており、除去装置により未分解成分を除いて得られた分解液中のポリウレタン分解物の含有量が少なく、分解剤のジエチレングリコールが63%含まれており、曲げ強度が低く、熱伝導率が高いことが予想されるため、ポリウレタンの再形成は行わなかった。
【0101】
比較例2
比較として、反応管内部の温度を300℃として分解した試料8はメチレンジアニリン(MDA)が6.6質量%、トルエンジアミン(TDA)が0.41質量%であった。同様の操作を繰り返して分解液を作成した。
【0102】
ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、N,N′,N′′−トリス(3−ジエチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジンの混合物2.5部以外は実施例1と同様な配合からなるプレミックスポリオールを用いて再形成したポリウレタンは実施例に比べ熱伝導率が高く、曲げ強度が低い。この際の反応はポリオールの反応性が高く、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、N,N′,N′′−トリス(3−ジエチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジンの混合物からなる触媒を実施例1の2.5/3倍使用しなければ同様な密度のウレタンを得ることができなかった。
【0103】
反応管内部の温度を180℃として分解した試料9は分解液中に未分解のポリウレタンが含まれており、除去装置により未分解成分を除いて得られた分解液中のポリウレタン分解物の含有量が少なく、分解剤のジエチレングリコールが65%含まれており、曲げ強度が低く、熱伝導率が高いことが予想されるため、ポリウレタンの再形成は行わなかった。
【0104】
比較例3
オートクレーブを用いて反応容器内の温度を260℃で10分間保持した後、降温させて形成した試料10はメチレンジアニリン(MDA)が6.4質量%、トルエンジアミン(TDA)が0.42質量%であった。
【0105】
ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、N,N′,N′′−トリス(3−ジエチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジンの混合物2.6部以外は実施例1と同様な配合からなるプレミックスポリオールを用いて再形成したポリウレタンは実施例に比べ熱伝導率が高く、曲げ強度が低い。
【0106】
オートクレーブを用いて反応容器内の温度を260℃で10分間保持した後、降温させて形成した試料11はメチレンジアニリン(MDA)が7.1質量%、トルエンジアミン(TDA)が0.38質量%であった。このようにオートクレーブを用いると、MDA及びTDAの生成量が多くなる。同様の操作を繰り返して分解液を作成した。
【0107】
ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、N,N′,N′′−トリス(3−ジエチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジンの混合物2.0部以外は実施例1と同様な配合からなるプレミックスポリオールを用いて再形成したポリウレタンは実施例に比べ熱伝導率が高く、曲げ強度が低い。その理由は、MDA及びTDAが多いからである。
【0108】
この際の反応はポリオールの反応性が高く、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、N,N′,N′′−トリス(3−ジエチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジンの混合物からなる触媒を実施例1の2/3に減らさなければ、同様な密度のウレタンを得ることができなかった。
【0109】
比較例4
パイレックス(登録商標)製反応容器を用いて反応容器内の温度を180℃で360分間保持した後、降温させて形成した試料12はメチレンジアニリン(MDA)が2.2質量%、トルエンジアミン(TDA)が0.08質量%であった。同様の操作を繰り返して分解液を作成した。このように、ガラス容器を用いた時は温度、圧力が上げられないため、MDA,TDAの生成量が少ない。
【0110】
ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、N,N′,N′′−トリス(3−ジエチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジンの混合物7.0部以外は実施例1と同様な配合からなるプレミックスポリオールを用いて再形成したポリウレタンは実施例に比べ熱伝導率が高く、曲げ強度が低い。
【0111】
この際の反応はポリオールの反応性が低く、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、N,N′,N′′−トリス(3−ジエチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジンの混合物からなる触媒を実施例1の7/3倍使用しなければ同様な密度のウレタンを得ることができなかった。
【0112】
比較例5
実施例1で用いた押出機(但し、反応管12は持たない)において、シリンダー径20mm、L/D=35とし、シールゾーンZcの先を延長した。Zcの温度を280℃とした。実施例1で使用した反応管を取り外し、直接、圧力調整装置13に接続した。他の点は実施例1と同様にし、ポリウレタンを分解した。得られた分解液中のMDAが7.3質量%、TDAが0.45質量%であった。
【0113】
ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、N,N′,N′′−トリス(3−ジエチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジンの混合物2.0部以外は実施例1と同様な配合からなるプレミックスポリオールを用いて再形成したポリウレタンは実施例に比べ熱伝導率が高く、曲げ強度が低い。この際の反応はポリオールの反応性が高く、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミン、N,N′,N′′−トリス(3−ジエチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジンの混合物からなる触媒を実施例1の2/3に減らさなければ同様な密度のウレタンを得ることができなかった。
【0114】
比較例6
比較例5で使用した装置を用いてZcの温度を260℃とした。得られた分解液中には未分解のポリウレタンが含まれており、除去装置により未分解成分を除いて得られた分解液中のポリウレタン分解物の含有量が少なく、分解剤のジエチレングリコールが65%含まれていた。実施例1と同様な配合からなるプレミックスポリオールを用いて再形成したポリウレタンは実施例1、実施例5に比べ断熱性は悪化していないが、ジエチレングリコール由来の構造による影響により、曲げ強度が低い。
【0115】
比較例7
オートクレーブを用いて製造した分解液(試料10)を10部、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドを付加したペンタエリスリトール(ポリオールA)40部(質量部、以下同じ)、トリレンジアミン系ポリオール(ポリオールD)15部、トリエチレンジアミン系ポリオール(ポリオールE)15部、トリエタノールアミン(ポリオールF)10部の混合ポリオール100質量部以外は実施例1と同様な配合からなるプレミックスポリオールを用いて再形成したポリウレタンは実施例に比べ熱伝導率が高く、曲げ強度が低い。
【0116】
実施例2
オートクレーブで製造した分解液(試料10)とガラス容器を用いて製造した分解液(試料12)を1:1で混合し、分解液中のMDA含有量をメチレンジアニリン(MDA)=4.3質量%、トルエンジアミン(TDA)=0.25質量%とした場合、実施例1と同様に形成したウレタンフォームの特性は比較例1〜5と比べて良好であった。
【0117】
【表1】

【0118】
表1から明らかなように、実施例1及び2の場合、分解液のMDA及びTDAが適正な範囲になるため、その分解液を用いて製造した再生ウレタンフォームは断熱性が優れ(熱伝導性が小さい)、機械的強度(曲げ強度)が高い。
【0119】
比較例1の試料No.6の場合は、MDA量、TDA量が適正値にあるが、分解液中の分解剤量が多すぎて、再生ウレタンフォームの機械的強度が低い。その他の比較例の試料は、MDA及びTDAの量が適正範囲にないため、機械的強度または断熱性のいずれかまたは両方が劣る。
【0120】
実施例2に示したように、図1の分解装置を用いないで製造した分解液を適宜混合し、MDA及びTDAの量並びに分解剤含有量が適切な範囲になるようにした混合分解液でも、再生ウレタンフォームは機械的強度及び断熱性が満足できる特性を持っている。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明のポリウレタン分解液は、硬質ウレタンフォームの再生にそのまま適用することができ、硬質ウレタンフォームのリサイクルに好適で、自動車、建材、冷蔵庫等の断熱材であるポリウレタンフォームの廃棄物処分の負荷軽減に有効である。
【符号の説明】
【0122】
1…ウレタン注入ヘッド、2…ウレタン注入口、3…断熱箱体、4…外箱鉄板、5…内箱樹脂壁、6…特性評価サンプル採取位置、10…発泡ウレタンフィーダー、11…供給用押出機、11a…開口部、11c…シリンダー、11d…吐出口、11h…ホッパ、11s…スクリュー、12…反応管、13…圧力調整装置、14…生成物回収装置、15…分解剤注入部、16…分解剤注入装置、17…分解剤タンク、18…分解剤配管、19…分解剤ポンプ、20…モータ、21…ヒータ、22…トルクセンサ、24…ジャケット、25…フィルタ、26…排出弁、27…背圧弁27、28…トラッパー、29…熱交換器、30…タンク、31…排気管、32…安全弁、34…サンプリング器具、40…生成物回収容器、35…フォルダ、36…ボール弁、37…サンプリング管、38…フォルダ固定兼軸シール継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチレンジアニリン(MDA)の含有量が3〜6質量%及びトルエンジアミン(TDA)の含有量が0〜0.3質量%であり、ウレタンフォームの分解剤の含有量が20〜50質量%であり、残部がウレタンフォームの分解物であるオリゴマー、液体状物質であるポリウレタン分解液。
【請求項2】
前記トルエンジアミンの含有量が、0.1〜0.3質量%である請求項1に記載のポリウレタン分解液。
【請求項3】
前記分解剤がジエチレングリコールであることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン分解液。
【請求項4】
前記メチレンジアニリンが(式2)で示される化合物である(但し、nは0〜4であり、n=0の化合物と1〜4の化合物が混在する)ことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリウレタン分解液。
【化1】

【請求項5】
前記トルエンジアミンが(式4)で示される化合物であることを特徴とする請求項1又は3に記載のポリウレタン分解液。
【化2】

【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の分解液を含むプレミックスポリオール。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の分解液を用いて形成した再生ポリウレタンフォームを有する断熱箱体。
【請求項8】
前記再生ウレタンフォームの曲げ強度が0.4MPa以上および熱伝導率が18.6mW/m・K以下であることを特徴とする請求項7に記載のポリウレタンフォームを有する冷蔵庫断熱箱体。
【請求項9】
オートクレーブで分解して得たウレタンフォーム分解液とガラス容器で分解して得たウレタンフォーム分解液を混合して得た、メチレンジアニリン(MDA)の含有量が=3〜6質量%及びトルエンジアミン(TDA)の含有量が0〜0.3質量%であり、ウレタンフォームの分解剤の含有量が20〜50質量%であり、残部がウレタンフォームの分解物であるオリゴマー、液体状物質を含むポリウレタン分解液。
【請求項10】
分解剤が、ジオールまたはヒドロキシル基を二つ以上持つポリオールであり、生成物として得られるモノマーがヒドロキシル基を二つ以上持つポリオールである請求項1又は9に記載のポリウレタン分解液。
【請求項11】
発泡ウレタンを供給用押出機に投入し、該供給用押出機内のスクリューで発泡ウレタンを押し出しながら加圧すると共に発泡ウレタンを加熱し、供給用押出機に接続した分解剤注入装置から分解剤を高温高圧の発泡ウレタンに注入し、その後前記供給用押出機から反応管に流通させて発泡ウレタンを高温高圧場を利用してモノマー化して、メチレンジアニリン(MDA)の含有量が3〜6質量%、トルエンジアミン(TMA)の含有量が0〜0.3質量%、分解剤が20〜50質量%、残部ポリウレタンの分解物であるポリオール、オリゴマー、液体を含む分解物を製造することを特徴とするポリウレタンの分解液の製造方法。
【請求項12】
発泡ウレタンを分解処理する前に、あらかじめ発泡ウレタンを供給用押出機に投入し、
前記供給用押出機に接続された前記分解剤注入装置の分解剤注入部に到達する時点の前記スクリューのトルク値を測定しておき、発泡ウレタンをモノマー化する際に、前記測定したトルク値以上になってから、前記分解剤注入装置よりあらかじめ加熱した分解剤を注入する請求項11に記載のポリウレタンの分解液の製造方法。
【請求項13】
前記反応管でモノマー化された発泡ウレタンのモノマーを、圧力調整装置を通して減圧した後、生成物回収容器内に導入し、その生成物回収容器により圧力を調整しながら分解処理されたモノマーを回収する請求項11または12に記載のポリウレタンの分解液の製造方法。
【請求項14】
前記生成物回収容器内には、可動式の未分解生成物回収容器を備え、前記圧力調整装置から前記生成物回収容器に導入される生成物を可動式の未分解生成物回収容器で選択的に回収して、十分反応していない生成物を採取する請求項11〜13のいずれかに記載のポリウレタンの分解液の製造方法。
【請求項15】
前記圧力調整装置から前記生成物回収容器に生成物を排出する配管には、サンプリング
器具が設けられ、そのサンプリング器具で、前記圧力調整装置から排出される生成物を採
取する請求項11〜14のいずれかに記載のポリウレタンの分解液の製造方法。
【請求項16】
分解剤が、ジオールまたはヒドロキシル基を二つ以上持つポリオールであり、生成物として得られるモノマーがヒドロキシル基を二つ以上持つポリオールである請求項11〜15のいずれかに記載のポリウレタンの分解液の製造方法。
【請求項17】
前記反応管の出口に圧力調整装置が接続され、その圧力調整装置に、生成物を冷却して回収する生成物回収容器が接続され、その生成物回収容器内に、十分反応していない生成物を採取する可動式の未分解生成物回収容器が設けられる請求項11〜16のいずれかに記載のポリウレタンの分解液の製造方法。
【請求項18】
前記圧力調整装置から前記生成物回収容器に生成物を排出する配管には、前記圧力調整装置から排出される生成物を採取するサンプリング器具が設けられる請求項11〜17のいずれかに記載のポリウレタンの分解液の製造方法。
【請求項19】
前記反応菅の反応ゾーンZdの温度が220〜280℃、圧力が0.5〜10MPa、反応時間(滞留時間)が5〜30分であることを特徴とする請求項11に記載のポリウレタンの分解液の製造方法。
【請求項20】
前記メチレンジアニリンが(式2)で示される化合物である(但し、nは0〜4であり、n=0の化合物と1〜4の化合物が混在する)ことを特徴とする請求項11〜18のいずれかに記載のポリウレタンの分解液の製造方法。
【化3】

【請求項21】
前記トルエンジアミンが(式4)で示される化合物であることを特徴とする請求項11〜18のいずれかに記載のポリウレタンの分解液の製造方法。
【化4】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公開番号】特開2013−53260(P2013−53260A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193569(P2011−193569)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】