説明

ポリウレタン弾性繊維を含む先染め織物およびその製造方法

【課題】ポリエステル/レーヨン混紡糸、ポリエステル/ウール混紡糸またはウール紡績糸の優れた風合いを損なうことなく、快適な着用感が得られるソフトなストレッチ性と寸法安定性を具備したポリウレタン弾性繊維を含む織物を提供する。
【解決手段】125〜135℃で染色されたポリエステル繊維と80〜100℃で染色されたレーヨン繊維またはウール繊維の混紡糸、または該ウール繊維の紡績糸、側鎖を有するポリエーテルジオール等のジアミン化合物からなるポリウレタン弾性繊維と該混紡糸または該紡績糸との複合糸を経糸および/または緯糸に用いて製織した先染め織物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウール、レーヨンの風合いを維持しつつ、ドレープ性、しなやかさに富み、着用快適なソフトなストレッチ性を有するポリウレタン弾性繊維を含む先染め織物に関する。さらに詳しくは、柔らかさ、膨らみ、反発性、肌触りといった風合いに優れ、ソフトなストレッチ性を発揮し、心地よい着用感、運動追従性に優れたポリウレタン弾性繊維を含む先染め織物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、婦人用スーツ、スラックス等のアウターウェア用織物素材においては、着用時の身体の各種運動に対する追従性を高め動き易くするためにストレッチ性を備えたものが好まれ使用されている。近年の市場の多様化に伴い、アウターウェア等に使用される織物においても、単なるストレッチ性のみならず、着用時の着心地の良さを体感できるソフトなストレッチ性、柔らかさ・膨らみ・反発性等の風合い、各種運動に対する追従性の良さ、着脱性の良さ等の快適性や機能性が要求されている。
【0003】
これまでにも、ポリエステル、レーヨン、ウールおよびポリウレタン弾性繊維等を組み合わせ混用した織物が提案されている(特許文献1、2参照)。
【0004】
ポリウレタン弾性繊維を含むポリエステル/レーヨン混織物、ポリエステル/ウール混織物、ウール織物等のストレッチ織物は、その染色加工において高温のヒートセット工程を通すことが一般的である。これは、生地の寸法安定性を高め、収縮率を低減させることにより、縫製時の型崩れや衣料製品の寸法変化を防止する目的で実施され、ポリウレタン弾性繊維を含むポリエステル/レ−ヨン混織物やポリエステル/ウール混織物等に特徴的な工程である。しかしながら、レーヨン及びウールは元来高温熱処理に適しておらず、高温の熱風を吹き付けるヒートセット工程を通した場合に、変質、変色を起こし、レーヨン及びウールが元来有している風合いを損なうという問題があった。
【0005】
また、レーヨン又はウールの風合い変化の影響を最小限にとどめるため、ヒートセットの最高温度を抑制した場合には、十分なヒートセット効果が得られず、寸法の不安定な生地が加工されることになり、再加工が生じて生産性の低下を招くことになるとともに、市場に流通した製品で生地の異常収縮による品質問題を引き起こす恐れがあった。
【特許文献1】特開2000−303326号公報
【特許文献2】特開2001−288635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ポリウレタン弾性繊維を含むポリエステル/レーヨン混織物、ポリエステル/ウール混織物またはウール織物の優れた風合いを損なうことなく、快適な着用感が得られるソフトなストレッチ性、風合い、寸法安定性を具備した織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、本発明のポリウレタン弾性繊維を含む先染め織物は、以下の構成を有する。
【0008】
すなわち、経糸および/または緯糸が、ポリエステル繊維/レーヨン繊維またはポリエステル繊維/ウール繊維の先染め混紡糸またはウール繊維の先染め紡績糸と、側鎖を有するポリエーテルジオール、ジイソシアネートおよび複数種のジアミン化合物からなるポリウレタン弾性繊維の複合糸で構成され、かつKES法によるTHV(Total Hand Value)が4以上である先染め織物である。
【0009】
また、本発明のポリウレタン弾性繊維を含む先染め織物の製造方法は以下の構成を有する。
【0010】
すなわち、ポリエステル繊維を125〜135℃で染色する一方、レーヨン繊維またはウール繊維を80〜100℃でそれぞれ個別に染色し、次いで該ポリエステル繊維と該レーヨン繊維または該ウール繊維を混合して紡績することによってポリエステル繊維/レーヨン繊維の混紡糸またはポリエステル繊維/ウール繊維の混紡糸、または該ウール繊維を紡績することによって紡績糸とし、次いで該混紡糸または該紡績糸とポリウレタン弾性繊維を撚糸して複合糸とし、該複合糸を経糸および/または緯糸に用いて製織するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、従来のアウターウェア用ストレッチ織物よりも優れた風合いとストレッチ性を持ち、かつ寸法安定性にも優れた織物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の先染め織物は、先染め混紡糸または紡績糸と弾性繊維から構成されるものである。
【0013】
本発明において使用する先染め混紡糸は、ポリエステル繊維/レーヨン繊維の先染め混紡糸またはポリエステル繊維/ウール繊維の先染め混紡糸を使用する。ポリエステル繊維が含まれていることにより、コストダウン、熱セット性、強度、防皺性に優れたものとなる。レーヨン繊維またはウール繊維が含まれることにより、肌触りの良い風合い、発色性に優れたものとなる。また、ウール繊維単独の紡績糸を使用してもよい。
【0014】
先染め混紡糸の染色方法は、綿染めまたは糸染めのどちらでもよいが、経済性、品質等の面から綿染めが好ましく、特にトップ染めの方法が好ましく用いられる。
【0015】
ストレッチ性のある織物を得る方法として、ポリエステル繊維/レーヨン繊維の混紡糸またはポリエステル繊維/ウール繊維の混紡糸と、弾性繊維を複合する方法は知られているが、こうして得られた複合糸を製織した生機を125〜135℃で高温高圧染色すると、レーヨン繊維またはウール繊維の物理強度が低下したり、風合いが硬くなる問題がある。
【0016】
本発明においては、ポリエステル繊維を125〜135℃で染色し、レーヨン繊維またはウール繊維を80〜100℃でそれぞれ個別に温度を設定して染色する。その後、ポリエステル繊維とレーヨン繊維またはウール繊維を混合して紡績することによって、先染めされたポリエステル繊維/レーヨン繊維の混紡糸またはポリエステル繊維/ウール繊維の混紡糸とする。また、ウール繊維単独の紡績糸としてもよい。そして、得られた混紡糸または紡績糸とポリウレタン弾性繊維を撚糸して複合糸とし、その複合糸を経糸または緯糸、あるいは経糸と緯糸の両方に用いて生機を製織し、その生機に整理加工を施すことによって、従来のポリウレタン弾性繊維を含む織物よりも物理強力を向上させ、かつソフトな風合い、ソフトなストレッチ性を有する織物が得られる。
【0017】
本発明で使用される先染め混紡糸または紡績糸の番手は、綿番手の20番手から80番手が好ましく、特に30番手から60番手がより好ましく用いられる。
【0018】
ポリエステル繊維/レーヨン繊維またはポリエステル繊維/ウール繊維の混紡比率は、重量比で70/30〜30/70が好ましく用いられる。
【0019】
本発明で用いるポリウレタン弾性繊維は、織物加工時の熱処理で低温から高温の広範囲の温度領域の熱に曝されても劣化のない耐熱性を有し、かつ加工生地でソフトなストレッチ性、高回復性、柔らかな着用感とフィット感、さらには高い運動追従性を発揮するものであることが好ましい。かかるポリウレタン弾性繊維は、側鎖を有するポリエーテルジオール、ジイソシアネート化合物および複数種のジアミン化合物を反応させることにより得られるポリウレタンを紡糸して得られる。
【0020】
側鎖を有するポリエーテルジオールは、その分子量が1500以上6000以下であることが好ましく、さらに好ましくは1800以上4000以下である。この範囲の分子量のポリエーテルジオールを用いることにより適度な強度、伸度を有するポリウレタン弾性繊維を得ることができる。また、側鎖を有することによって、弾性糸におけるポリマの結晶化が抑制され、ソフトストレッチ性を高めることができる。ここで、ポリエーテルジオールの側鎖はメチル基であることが好ましい。メチル基であれば立体障害も小さく糸の強度、特に破断強度への影響がほとんどないからである。側鎖にメチル基を有するポリエーテルジオールとしては、例えば、1,4−ブタンジオールとネオペンチルグリコールの共重合体、1,4−ブタンジオールと3−メチル−1,5−ペンタンジオールの共重合体、1,5−ペンタンジオールとネオペンチルグリコールの共重合体、1,5−ペンタンジオールと3−メチル−1,5−ペンタンジオールの共重合体、1,6−ヘキサンジオールとネオペンチルグリコールの共重合体、1,6−ヘキサンジオールと3−メチル−1,5−ペンタンジオールの共重合体、テトラヒドロフラン(以下、THFと略す)と3−メチルTHFの共重合体、THFと1,2−ジメチルTHFの共重合体、THFと1,3−ジメチルTHFの共重合体などのポリエーテルジオールが挙げられる。好ましくは、1,4−ブタンジオールとネオペンチルグリコールの共重合体、1,4−ブタンジオールと3−メチル−1,5−ペンタンジオールの共重合体、THFと3−メチルTHFの共重合体のポリエーテルジオールである。さらに好ましくは、メチル基による立体障害が小さい1,4−ブタンジオールと3−メチル−1,5−ペンタンジオールの共重合体、THFと3−メチルTHFの共重合体のポリエーテルジオールである。最も好ましくは、THFと3−メチルTHFの共重合体のポリエーテルジオールである。ここで、メチル基側鎖を有するモノマーの比率はモル比で5〜20モル%であることが好ましい。メチル基側鎖モノマーの比率があまり高いとポリウレタン弾性繊維の強度や日照に対する耐久性に劣るものとなり易い。メチル基側鎖モノマーの比率が低過ぎるとポリエーテルジオールに結晶性が発現してソフトストレッチ性に劣るものとなるので好ましくない。
【0021】
本発明においてはその良好な特性を損なわない程度であれば、他のポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオールなどを1種または2種以上混合してもよい。
【0022】
本発明において用いるジイソシアネート化合物は、芳香族ジイソシアネート化合物、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物いずれも用いることができる。またこれらを混合して用いても構わないが、活性水素との高い反応性を有する芳香族ジイソシアネート化合物を用いることが好ましい。この芳香族ジイソシアネート化合物として、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトベンゼン、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。これらの芳香族ジイソシアネート化合物を1種または2種以上混合して用いても構わないが、反応性や得られるポリウレタン糸の強伸度特性などから4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0023】
前述した側鎖を有するポリエーテルジオールとジイソシアネート化合物の混合比は、モル比で1:1.3から1:2.5の範囲であることが好ましい。特に好ましくは1:1.4から1:2.0の範囲である。この範囲であると高い強伸度を有し、かつ回復力にも優れたポリウレタン弾性繊維が得られる。またポリウレタン弾性繊維の製造工程に対しても悪影響を及ぼさない。
【0024】
また本発明においては、鎖伸長剤として複数種のジアミン化合物を用いる。エチレンジアミンと炭素数3〜5の分岐鎖状脂肪族系ジアミノ化合物をモル比98:2〜82:18で含むジアミン化合物を用いることが好ましい。複数種のジアミン化合物を用いることにより、ポリウレタン弾性繊維を伸長した際の結晶化を抑制でき、そして側鎖を有するポリエーテルジオールとの組合せにより、従来よりも格段にソフトストレッチ性を向上させることが可能となる。
【0025】
次に、複数種のジアミン化合物としては、エチレンジアミンと炭素数3〜5の分岐鎖状脂肪族系ジアミノ化合物とを含むものが好ましく、特に、分岐鎖状脂肪族系ジアミノ化合物として、1,2−ジアミノプロパン、2−メチル−1,3−ジアミノプロパン、及び1−メチル−1,3−ジアミノプロパンのうちの少なくとも1種以上を用いることが好ましい。
【0026】
第1のジアミン化合物として好ましいエチレンジアミンは、得られるポリウレタン弾性繊維の破断強度および耐熱性を格段に向上させる。第2のジアミン化合物として好ましい炭素数3〜5の分岐鎖状脂肪族系ジアミノ化合物としては、例えば、1,2−ジアミノプロパン、2−メチル−1,3−ジアミノプロパン、1−メチル−1,3−ジアミノプロパンなど、1つのメチル側鎖を有するジアミン化合物が好ましい。立体障害も小さく、耐熱性への影響がほとんどないことから、1,2−ジアミノプロパンが最も好ましい。ジアミン化合物と分岐鎖状脂肪族系ジアミノ化合物との比率は、モル比で98:2〜82:18の範囲とすることが好ましい。より好ましくは95:5〜85:15の範囲である。この範囲は、耐熱性を損なわず、かつポリウレタン弾性繊維を伸長した際の結晶化を抑制するために好適であり、布帛にしても従来にないソフトな着用感、フィット感を実現することができる。
【0027】
本発明におけるポリウレタン弾性繊維の繊度、断面形状などは特に限定されるものではない。例えば糸の断面は円形であっても扁平であってもよい。また、本発明の糸は各種安定剤や顔料などを含有していてもよい。例えば、耐酸化防止剤などとして、いわゆるBHT(ジブチルヒドロキシトルエンの略)や住友化学(株)製の“スミライザーGA−80”(登録商標)などをはじめとするヒンダードフェノール系薬剤、各種チヌビンをはじめとするベンゾトリアゾール系薬剤、住友化学(株)製の“スミライザーP−16”(登録商標)をはじめとするリン系薬剤、ヒンダードアミン系薬剤、さらに酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラックをはじめとする無機顔料、ステアリン酸マグネシウムをはじめとする金属石鹸、銀や亜鉛やこれらの化合物などを含む殺菌剤、消臭剤、また、シリコーン、鉱物油などの滑剤、硫酸バリウム、酸化セリウム、ベタインやリン酸系などをはじめとする各種の帯電防止剤などが含まれたり、またポリマと反応して含まれていてもよい。
【0028】
そして特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるには、酸化窒素捕捉剤、例えば日本ヒドラジン(株)製のHN−150、熱酸化安定剤、光安定剤などを使用することが有効である。これらの添加方法も特に限定されずスタティックミキサー方式など従来公知の方法が適用できる。
【0029】
本発明におけるポリウレタン弾性繊維の紡糸は、湿式紡糸法でも行うことができるが、紡糸速度をより速くすることのできることから、乾式紡糸法で行うことが好ましい。
【0030】
本発明におけるポリウレタン弾性繊維の繊度は、22デシテックス以上117デシテックス以下が好ましく、特に22デシテックス以上78デシテックス以下が好ましく用いられる。
【0031】
本発明においてポリウレタン弾性繊維は、前述のポリエステル繊維/レーヨン繊維またはポリエステル繊維/ウール繊維の先染め混紡糸またはウール紡績糸と複合される。複合糸にする方法としては、本発明の効果が発揮され易い撚糸、空気交絡、カバリング、コアヤーン等のいずれの方法であってもよいが、効果を最大限に発揮させるものとして、紡績糸2本と弾性繊維の3本の繊維を実撚りで撚糸する方法が好ましい。また、織物組織のバリエーションとしては、ポリウレタン弾性繊維をそのまま裸糸として経糸または緯糸として用いてもよいし、また、他の綿、ウール、麻等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリプロピレン、レーヨン等の合成繊維又は再生繊維等と複合糸にして経糸又は緯糸に用いてもよい。
【0032】
本発明の織物は、前記複合糸を経糸または緯糸の一部または全部に使用して製織されたもの、経糸または緯糸のいずれかに弾性繊維を用い、他方にポリエステル繊維/レーヨン繊維またはポリエステル繊維/ウール繊維の混紡された混紡糸またはウール単独の紡績糸を使用したものなど、いずれであってもよい。また、ポリエステル繊維とレーヨン繊維またはウール繊維が混紡された混紡糸またはウール紡績糸と弾性繊維に加えて、他の天然繊維、再生繊維、合成繊維を使用してもよい。
【0033】
織物の組織としては、カシドス、カシミヤ、ツイル、平、サテン、アムンゼン、二重織物などあり、特に限定されるものではないが、婦人用アウターウェアー向けとしては、ツイル組織又はツイル変化組織、及び平組織が好ましい。
【0034】
以上のように、かくして得られた先染め糸を用いた織物は、KES(Kawabata Evaluation System)法によるTHV(Total Hand Value)が4以上を有する。
【0035】
本発明においてTHV(Total Hand Value)を算出するには、KES KN−101W式を用いて、基本力学量であるLT(引っ張り硬さ)、WT(引っ張り仕事量)、RT(引っ張り回復性)、EM(伸び率)、B(曲げ剛性)、2HB(曲げ回復性)、G(せん断剛性)、2HG(φ=0.5°におけるせん断回復性)、2HG5(φ=5°におけるせん断回復性)、LC(圧縮硬さ)、WC(圧縮仕事量)、RC(圧縮回復性)、MIU(平均摩擦係数)、MMD(摩擦係数の平均偏差)、SMD(表面粗さ)、T(初期荷重0.5gf/cmにおける厚さ)、W(単位面積当たりの重量)などからHV(Hand Value)を算出し、得られたHV(Hand Value)をKN−301 WINTER−THV式によってTHV(Total Hand Value)に変換することができる。
【0036】
本発明においてTHV(Total Hand Value)が4未満であると、ポリエステル/レーヨン混またはポリエステル/ウール混の先染め織物が元来有する柔らかさ、膨らみ、反発性等の風合いとソフトなストレッチ性、高回復性、柔らかな着用感、着脱性の良さが損なわれる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例における各特性の測定方法は次のとおりである。
【0038】
[風合い試験法]
KES KN−101W式、KN−301 WINTER−THV式を用い、Men’s WINTER SUIT法によって測定した。(N数は1で測定した。)
[伸長回復率]
JIS L 1096「一般織物試験方法(B−1法)」に準じて測定した。(N数は3で測定した。)
[洗濯試験]
JIS L 0217「繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその表示方法(103法)」に準じて測定した。(N数は1で測定した。)
[実施例1]
THFと3−メチルTHFの共重合体であるポリエーテルジオール(保土ヶ谷化学(株)製PTG−L3500、分子量3500、3−メチルTHFの比率が約15モル%)と、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを、1:1.85のモル比で窒素気流下、90℃、無溶媒の条件で4時間反応させた。反応後の残存イソシアネート基は1.80重量%であった。
【0039】
得られたイソシアネート末端ウレタンプレポリマ585gを、1225gのジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略す)に溶解し、しかる後に、6.38gのエチレンジアミンと1.39gの1,2−ジアミノプロパンと0.92gのジエチルアミンとの混合液を160gのDMAcで希釈した鎖伸長剤溶液を、40℃で添加し撹拌することにより粘調な重合体溶液を製造した。得られた重合体溶液(ポリウレタン濃度30重量%)の溶液粘度を落球式粘度計で測定したところ40℃で1300ポイズであった。
【0040】
次に、この重合体溶液を紡糸溶液として乾式紡糸し、ゴデローラで引き取った後、通常の厚紙管に巻き取り、50デシテックス/4フィラメントの弾性糸を製造した。この際、巻き取り速度を毎分660m/分とし、ゴデローラと巻き取り機との間における速度比を1.19とした。
【0041】
一方、ポリエステル繊維綿を分散染料でパッケージ染色機を用いて130℃で染色し、レーヨン繊維綿を反応染料でパッケージ染色機を用いて80℃で染色した後、通常の混紡方法によりポリエステル/レーヨン(混紡率=65重量%/35重量%)の混紡糸(1/40番手)を得た。
【0042】
ポリウレタン弾性糸1本とトップ染めのポリエステル/レーヨン混紡糸2本と計3本を用い、リング式撚糸機でドラフト3.5倍、撚数680回/m(S)、撚止めセット93℃×20分の条件で加工した複合糸を得た。
【0043】
この複合糸を経糸と緯糸に用い、経糸密度65本/インチ、緯糸密度50本/インチ、織組織2/1ツイル、エアージェットルームにて生機製織した。
【0044】
得られた生機をリラックス精練(110℃×30分)、乾燥(120℃×15分)、ヒートセット(160℃×1分)の順に整理仕上げを行い、経糸密度79本/インチ、緯糸密度74本/インチになるように仕上げた。
【0045】
[実施例2]
ウール繊維綿を酸性染料でパッケージ染色機を用いて90℃で染色した後、通常の紡績方法でウール紡績糸2/72番手を得た。このウール紡績糸2本と実施例1で用いたポリウレタン弾性糸の33デシテックス/3フィラメント1本の計3本を用い、リング式撚糸機でドラフト3.5倍、撚数850回/m(S)、撚止めセット85℃×20分の条件で加工した複合糸を得た。
【0046】
この複合糸を経糸と緯糸に用い、経糸密度66本/インチ、緯糸密度50本/インチ、織組織2/1ツイル、エアージェットルームにて生機製織した。
【0047】
得られた生機を実施例1と同様に整理仕上げを行い、経糸密度82本/インチ、緯糸密度65本/インチになるように仕上げた。
【0048】
[比較例1]
ポリテトラメチレンエーテルグリコールとジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートとからのプレポリマーを、鎖伸長剤としてエチレンジアミンを用いて鎖伸長反応させて製得造されたポリウレタンを、通常の方法で乾式紡糸して製造されたポリウレタン弾性繊維の44デシテックス/4フィラメントを使用した以外は実施例1に従って織物を仕上げた。
【0049】
実施例1で得られた先染め織物は、比較例1で得られたものに比較して、ポリエステル/レーヨン混織物の優れた風合いを有し、伸縮特性と寸法安定性にも優れたものであった。
【0050】
結果を表1に示す。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸および/または緯糸が、ポリエステル繊維/レーヨン繊維またはポリエステル繊維/ウール繊維の先染め混紡糸またはウール繊維の先染め紡績糸と、側鎖を有するポリエーテルジオール、ジイソシアネートおよび複数種のジアミン化合物からなるポリウレタン弾性繊維との複合糸で構成され、かつKES法によるTHV(Total Hand Value)が4以上であることを特徴とするポリウレタン弾性繊維を含む先染め織物。
【請求項2】
該ポリエステル繊維が短繊維であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン弾性繊維を含む先染め織物。
【請求項3】
該レーヨン繊維が短繊維であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレタン弾性繊維を含む先染め織物。
【請求項4】
ポリエステル繊維を125〜135℃で染色する一方、レーヨン繊維またはウール繊維を80〜100℃でそれぞれ個別に染色し、次いで該ポリエステル繊維と該レーヨン繊維または該ウール繊維を混合して紡績することによってポリエステル繊維/レーヨン繊維の混紡糸またはポリエステル繊維/ウール繊維の混紡糸、または該ウール繊維を紡績することによって紡績糸とし、次いで側鎖を有するポリエーテルジオール、ジイソシアネートおよび複数種のジアミン化合物からなるポリウレタン弾性繊維を該混紡糸または該紡績糸と撚糸して複合糸とし、該複合糸を経糸および/または緯糸に用いて製織することを特徴とするポリウレタン弾性繊維を含む先染め織物の製造方法。

【公開番号】特開2008−179908(P2008−179908A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13427(P2007−13427)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(502179282)オペロンテックス株式会社 (100)
【Fターム(参考)】