説明

ポリウレタン成形材、その製造のための方法、およびその使用

本発明は、自動車内装領域での要求された用途のための、顕著な強度特性および高温安定性および高温光安定性を有する、光堅牢性で加水分解に安定なポリウレタン成形材に関し、この部品は、脂肪族および/または脂環式組成物からなる反応混合物から短い成形時間で経済的な反応射出成形法(RIM)またはキャスティング法で調製される。この目的のために、A1)i)ポリオールまたはポリオールの組合せ、およびii)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとする三量体および/またはビューレット構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとする三量体から形成されるOH末端三官能性プレポリマー、A2)ポリオールまたはポリオールの組合せ、A3)アミンおよび/またはヒドロキシル基を有する少なくとも、1つの二および/または三官能性鎖延長剤および/または架橋剤、A4)少なくとも1つのアミン触媒と組み合わせた少なくとも1つの有機金属化合物からなる触媒系、および任意選択で、A5)安定剤系、および任意選択で、A6)少なくとも1つの添加剤からなる組成物A)、ならびにまたB)i)10〜90重量%のイソホロンジイソシアネート(IPDI)および/またはメチレン−ビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)(H12 MDI)、およびii)10〜90重量%のビューレット構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとする三量体および/またはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとする三量体からなるイソシアネート組成物を反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題事項は、ポリウレタン成形部品、ならびにその製造およびその使用に関する。これらのポリウレタン成形部品は、特に、表面材料として、詳細には、自動車内装領域における使用向けの構造コンポーネントの表面被覆として使用するためのシート材料用に使用されることになる。
【0002】
ポリウレタン成形部品は、キャスティング法または反応射出成形(RIM)法を使用して、開放型または閉鎖型金型中の反応性混合物としてのポリウレタン系から製造し得る。
【0003】
生産性が向上し、製造コストの低い費用効果が高い方法を確実にするために、金型滞留時間を可能な限り短くすることを確実ならしめることが特に重要である。
【0004】
金型滞留時間は、材料組成物が、良好な脱型特性、および製品が変形および引裂きを受けることなく射出金型または流延金型から容易に取り出されることを保証するのに十分な初期強度に到達するのに要する時間として定義される。
【背景技術】
【0005】
ポリウレタンの製造における金型滞留時間を短縮するために、米国特許第4150206号および第4292411号には、アミン開始剤と鉛またはビスマス触媒の組合せから実質的になる特別の触媒系が記載されている。この特別な触媒系は、多様な全表皮発泡体およびエラストマーの多数のもの用として記載され、引用実施例での金型滞留時間は、数分の範囲内である。
【0006】
印刷書類であるEP−A0 690 085、およびUS−A5,502,147には、イソホロンジイソシアネート(IPDI)をベースとする代わりに、比較的反応性があるヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとするポリウレタン系が記載され、それを使用すると、印刷書類US−A4,772,639中の実施例によれば、3〜10分の金型滞留時間を必要とする系がもたらされる。
【0007】
欧州特許EP0 929 586B1には、イソシアネート成分IPDIをベースとするRIM法を使用して、経済的に許容できる金型滞留時間で成形ポリウレタンに加工することができ、窓枠での使用に適しているポリウレタンエラストマーが開示されている。これらのポリウレタンエラストマーは、比較的短い金型滞留時間以内で製造し得る。
【0008】
しかし、周知のポリウレタン系の機械特性ならびに光および温度安定性は、自動車内装領域での使用に不適切である場合が多い。
【0009】
自動車内装領域での使用向けの表面材料、特に構造コンポーネントの表面被覆としての使用向けのシート材料用の表面材料が満足しなければならない自動車業界の要求事項は、大きな材料強度、特に、大きな引張り強度および引き裂き伝播抵抗、ならびに大きな耐磨耗性である。加えて、触感、特に乾燥および皮革様手触り、ならびに高い耐光性および耐高温性は、自動車内装領域での使用で満足しなければならない基準である。部品が、120℃での熱い光、および数ヶ月にわたる日光シミュレーションに曝露されるエージング試験の間、例えば、色、光沢度、および表面のしぼの外観は、変化すべきでない。しぼ構造の光沢が、特別のエージングプロセス後に増加する場合、これは特に望ましくない。
【特許文献1】米国特許第4150206号
【特許文献2】米国特許第4292411号
【特許文献3】EP−A 0 690 085
【特許文献4】US−A 5,502,147
【特許文献5】US−A 4,772,639
【特許文献6】EP 0 929 586 B1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
出発点として従来技術を使用すると、本発明によって解決すべき課題は、特に費用効果が高く、所要金型滞留時間が短く、高い機械強度、ならびに高温および光安定性によって注目されるポリウレタン成形部品の製造を可能にするポリウレタン成形部品を製造するための方法を利用可能にすることである。これらのポリウレタン成形部品は、特に、表面材料として、詳細には、自動車内装領域における構造コンポーネントの表面被覆として使用するためのシート材料として使用されることになる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、
A)
A1)i)特に、650〜4000のモル質量を有するポリオールまたはポリオールの組合せ、およびii)特に、ポリオール(組合せ)とイソシアネートのモル比が3:1であるヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとする三量体および/またはビューレット構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとする三量体から形成されるOH末端三官能性プレポリマー、
A2)特に、650〜4000のモル質量を有するポリオールまたはポリオールの組合せ、
A3)NH、NHおよび/またはOH基を有する少なくとも1つの二および/または三官能性鎖延長剤および/または架橋剤、
A4)少なくとも1つのアミン触媒と組み合わせた少なくとも1つの有機金属化合物の触媒系、および任意選択で、
A5)安定剤系、および任意選択で、
A6)少なくとも1つの添加剤からなる組成物、
ならびに
B)i)10〜90重量%のイソホロンジイソシアネート(IPDI)および/またはメチレン−ビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)(H12 MDI)、およびii)10〜90重量%のビューレット構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとする三量体および/またはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとする三量体からなるイソシアネート組成物
をキャスティング法または反応射出成形法で反応させることによって脂肪族および/または脂環式ポリウレタン成形部品を形成する本発明に従って解決される。
【0012】
耐光性ポリウレタン成形部品または系を製造するために、好ましくは、脂肪族および/または脂環式ポリウレタン成分が使用されるのは、これらの製品が光に曝露された場合、ポリウレタン系中の芳香族成分によって製品の変色および黄色化がもたらされるからである。驚くべきことに、通常、脂肪族および/または脂環式イソシアネートをベースとするポリウレタンの機械特性は、芳香族イソシアネートをベースとするポリウレタンの機械特性よりも著しく劣るのであるが、本発明によるポリウレタンは、脂肪族および/または脂環式イソシアネートを使用したにも拘らず、特に良好な強度特性によって注目される。
【0013】
加えて、芳香族イソシアネートより常に反応性が低い脂肪族および/または脂環式イソシアネートの使用にも拘らず、金型滞留時間は非常に短い。
【0014】
ポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオール(A1i))をベースとして、ビューレット構造を有するHDIをベースとする三量体および/またはHDIをベースとする三量体(Alii))、ならびにアミンおよびOH成分を有する鎖延長剤および架橋剤(A3)を用いて製造されるOH末端三官能性プレポリマー(A1)と反応させられた、特別の組合せ、好ましくは、IBDIおよび/またはH12 MDI(Bi)と、ビューレット構造を有し、モル質量が478であるHDIをベースとする三量体および/またはモル質量が504であるHDIをベースとする三量体(Bii)との組合せは、特に高い強度特性、高い熱安定性、および60秒以下の金型滞留時間を有する成形部品をもたらす。
【0015】
好ましくは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)およびメチレン−ビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)(H12 MDI)は、成分Bi)として二者択一的に使用し得る。
【0016】
好ましくは、HDIをベースとする三量体、およびビューレット構造を有するHDIをベースとする三量体は、それぞれ成分Bii)およびAlii)として二者択一的に使用し得る。
【0017】
プレポリマーA1およびイソシアネート組成物Bでは、モル質量504を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとする三量体の使用は、特に好ましいことになる。
【0018】
有用な実施形態では、
A1)全体の組成物Aの重量に対して20〜85重量%のプレポリマー、
A2)全体の組成物Aの重量に対して10〜70重量%のポリオールまたはポリオールの組合せ、
A3)全体の組成物Aの重量に対して5〜20重量%の鎖延長剤および/または架橋剤、
A4)全体の組成物Aの重量に対して0.01〜3.5重量%の触媒系、および/または
A5)全体の組成物Aの重量に対して0.2〜1.5重量%の安定剤系が使用される。
【0019】
イソシアネート組成物Bは、特に、25と35重量%の間のNCO含量を有し、好ましくは、
Bi)全体のイソシアネート組成物Bの重量に対して40〜80重量%、特に50〜75重量%のIPDIおよび/またはH12 MDIと、
Bii)特に、Bi):Bii)の重量比が2:1、好ましくは、2:1〜1.25:1である全体のイソシアネート組成物Bの重量に対して20〜60重量%、特に25〜50重量%のビューレット構造を有するHDIをベースとする三量体および/またはHDIをベースとする三量体とを含む。
【0020】
(Ali)および/またはA2)のポリオール単独またはポリオールの組合せとして、好ましくは、
−特にモル質量が800〜2000であるポリプロピレンエーテルポリオール、
−特にモル質量が2000〜4000である、ポリカプロラクトン(PCL)とポリテトラヒドロフラン(PTHF)のコポリマー、
−特にモル質量が650〜3000であるポリテトラヒドロフラン、
−特にモル質量が1000〜2000であるポリカーボネートジオール、および/または
−特にモル質量が1000〜2000であるブタンジオール、ヘキサンジオールおよび/またはネオペンチルグリコールをベースとするポリアジペートからなる群から選択されるものが使用される。
【0021】
長鎖ソフトセグメント構造に対しては、イソシアネートとの反応用の安定な混合物がまた、好ましくは、ポリエーテルおよび/またはポリエステルをベースとする二および/または三官能性ポリオールをさらに添加することによって得られる。
【0022】
好ましい実施形態では、速やかな硬化および短い金型滞留時間を保証するために、必要とされるポリウレタンの基礎構築ブロックは、HDIをベースとする三量体を上記のポリオールおよびポリオールの組合せと反応させることによる特別のOH末端三官能性プレポリマー(A1)の予備反応によって製造し得る。
【0023】
ポリオールまたはポリオールの組合せ(A2)を組成物Aに添加すると、ポリウレタン系およびポリウレタン成形部品の硬度が主として影響を受け、二官能性のポリオールの使用が、線状構造および反応生成物の優れた結晶性を得るために好ましい。モル質量が1000および2000であるポリプロピレンエーテルポリオール、モル質量が2000であるPCL−PTHFコポリマー、モル質量が2000であるポリテトラヒドロフラン、およびモル質量が2000であるネオペンチルグリコールアジペートが特に適していることが見出されている。
【0024】
低粘度という理由のために、ポリウレタン成形部品の製造において、ポリプロピレンエーテルポリオール、PCL−PTHFコポリマーおよびネオペンチルグリコールアジペートの群の2つのポリオールから好ましくは選択されるポリオール組成物(A2)を使用することによって、良好な加工性、および鎖延長剤および/または架橋剤の他のアミンおよびヒドロキシル基との良好な相容性が保証される。
【0025】
相メディエータとして、優れた均一性を保証し、貯蔵中に安定である混合物を製造するために構造の異なるポリエーテルおよびポリエステルポリオールと組み合わせて使用するのに適しているPCL−PTHFコポリマーの使用は、ポリオールの組合せ(Ali)および/またはA2)に対して特に有用である。
【0026】
特に有用な実施形態では、同じポリオールの組合せが、成分Ali)としても成分A2としても使用される。
【0027】
特に短い金型滞留時間、ならびに特に高い引張り強度、破壊時の伸び、および引き裂き伝播抵抗を保証するために、特に好ましい実施形態では、特にモル質量が2000であり、OH値が54であり、酸化プロピレン(PO)含量が100%であるポリプロピレンエーテルポリオール、および特にモル質量が2000であり、OH値が58であるPCL−PTHFコポリマーが、それぞれ成分Ali)およびA2として使用される。
【0028】
特に短い金型滞留時間、ならびに高い引張り強度、破壊時の伸び、および引き裂き伝播抵抗を保証するために、特にモル質量が2000であり、OH値が54であり、酸化プロピレン(PO)含量が100%であるポリプロピレンエーテルポリオール、および特にモル質量が2000であり、OH値が56であるポリテトラヒドロフラン(PTHF)が、それぞれ成分Ali)およびA2として使用されることが推奨される。
【0029】
短い金型滞留時間、ならびに特に高い引張り強度、破壊時の伸び、および引き裂き伝播抵抗を保証するために、特にモル質量が2000であり、OH値が58であるPCL−PTHFコポリマー、および特にモル質量が2000であり、OH値が55であるネオペンチルグリコールアジペートが、それぞれ成分Ali)およびA2として好ましくは使用される。
【0030】
使用される鎖延長剤および/または架橋剤(A3)は、好ましくは、ブタンジオール、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミンおよび/またはヘキサメチレンジアミンからなる群から選択され、単独または相互に組み合わせた、モル質量が60〜250であるものである。
【0031】
アミン基は、ポリウレタンの反応性に対して顕著な影響を及ぼす。イソシアネートとの反応では、系で架橋剤の量が多いと、混合物が過度に速やかにゲル化し、深い流路を有する金型を完全に充填できないという欠点になる。
【0032】
結果として、ヒドロキシルおよびアミン基の組合せが好ましくは使用される。アミン基を有する成分の含量は、好ましくは、鎖延長剤および架橋剤の合計に対して1〜40重量%の範囲内である。
【0033】
好ましく使用される触媒系(A4)は、アミン触媒、特にトリエチレンジアミンおよび/またはジメチルアミノプロピル尿素と組み合わせた、ビスマス、スズ、ジルコニウムおよび/またはカリウム化合物などの有機金属化合物からなる群から選択されるものである。
【0034】
好ましく使用される安定剤系(A5)は、酸化防止剤、UV吸収剤および/または光安定剤からなる群から選択されるものである。
【0035】
光、酸素および熱による劣化に対する良好な耐性を保証するために、好ましく添加される安定剤系(A5)は、光安定剤と組み合わせた酸化防止剤とUV吸収剤とを含む。好ましい酸化防止剤は、置換フェノール型および/または脂肪族または芳香族有機ホスフィット型のものであり、好ましい光安定剤は、置換脂環式アミンの型のものであり、好ましいUV吸収剤は、ベンゾトリアゾール型のものである。
【0036】
任意選択で、添加剤(A6)、特に水吸収剤、例えば、ゼオライト、アンチブロッキング剤および/または金型内部離型剤が、組成物Aに添加し得る。
【0037】
組成物AおよびBは、好ましくは、95と115の間のNCO指数を有し、好ましくは、40℃と60℃の間の温度で加工され、60℃と120℃の間の温度、特に80℃と100℃の間の温度まで予熱された金型中に流延または射出される。
【0038】
加えて、本発明によって解決すべき課題、すなわち、高温安定性および光安定性によって注目され、短い金型滞留時間を保証しつつ、特に高い費用効果で調製され得るポリウレタン成形部品を利用可能にすることは、請求項10の特徴によって解決される。
【0039】
上記のポリウレタン成形部品は、好ましくは、シート材料、特に、詳細には自動車内装領域における構造コンポーネントの表面被覆としての形態で使用される。
【0040】
加えて、本発明はまた、組成物Aと組成物Bとを含み、組成物Aが以下の成分:
A1)
i)特に、650〜4000のモル質量を有し、特に、100〜500のOH値を有するポリオールまたはポリオールの組合せ、および
ii)特に、ポリオール(組合せ)とイソシアネートのモル比が3:1であるヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとする三量体および/またはビューレット構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとする三量体から形成されるOH末端三官能性プレポリマー、
A2)特に、650〜4000のモル質量を有するポリオールまたはポリオールの組合せ、
A3)NH、NHおよび/またはOH基を有する少なくとも1つの二および/または三官能性鎖延長剤および/または架橋剤、および
A4)少なくとも1つのアミン触媒と組み合わせた少なくとも1つの有機金属化合物の触媒系、および任意選択で
A5)安定剤系、および任意選択で
A6)少なくとも1つの添加剤からなり、
イソシアネート組成物Bが以下の成分:
i)10〜90重量%のイソホロンジイソシアネート(IPDI)および/またはメチレン−ビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)(H12 MDI)、および
ii)10〜90重量%のビューレット構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとする三量体および/またはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとする三量体からなるイソシアネート組成物からなるポリウレタン系に関する。
【0041】
好ましい実施形態は、組成物AおよびBについて上記の明細事項を有する。
【0042】
上記のポリウレタン系は、好ましくは、DIN/ISO527−3による引張り強度が、10MPa超、好ましくは、15MPa超であり、および/またはDIN/ISO527−3による破壊時の伸びが、170%超、好ましくは、190%超であり、および/またはDIN/ISO13937による引き裂き伝播抵抗が、5N/mm超、好ましくは、7N/mm超である。
【0043】
この型のポリウレタン系を使用することによって、有利には、衛生および医療用途のための成形部品、不織布またはシート材料を製造し得る。
【0044】
本発明によるポリウレタン成形部品およびポリウレタン系では、特に引張り強度、引き裂き伝播抵抗および耐磨耗性に関して高い値が得られる。RIMシート材料に関する自動車業界の要求事項に従って行われた、120℃での熱および熱い光に対する曝露でのエージング挙動を調査する試験では、表面のしぼ構造の変化は全く見られなかった。加えて、表面の光沢の増加を観察することも可能ではなかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明の特に好ましい実際の例を以下で説明することにする。
【0046】
試験用のシート材料を製造するために、2つの反応性組成物AおよびBを製造した:
【0047】
組成物A:
Al)ポリオール(組合せ)およびHDIをベースとする三量体から形成されるOH末端プレポリマー
A2)ポリオール(組合せ)
A3)鎖延長剤および架橋剤
A4)触媒系
A5)安定剤系
【0048】
組成物B:
Bi)IPDIまたはH12 MDI
Bii)HDIをベースとする三量体またはビューレット構造を有するHDIをベースとする三量体
IPDI:イソホロンジイソシアネート、モル質量222、NCO含量37.6%(Vestanat IPDI、デグッサ)
12 MDI:メチレン−ビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)、モル質量262(Desmodur W、バイエル)
HDIをベースとする三量体:ヘキサメチレンジイソシアネートをベースとする三量体、モル質量504、NCO含量22%、三官能性(Tolonate HDT、ローディア)
ビューレット構造を有するHDIをベースとする三量体:モル質量が478、NCO含量が22%、三官能性であるビューレット構造を有するヘキサメチレンジイソシアネートをベースとする三量体(Tolonate HDB、ローディア)
【0049】
キャスティング法での使用では、高速攪拌装置で組成物AおよびBを40℃の温度で5秒間混合し、次いで、80℃の温度まで加熱された開放型金型中に流延する。60秒後、成形されたシート材料を金型から取り出し、まだ熱い内に、引張りおよび横方向曲げ試験にかけて初期強度および熱間脆性を試験する。
【0050】
RIM(反応射出成形)法での使用では、高圧ミキサーを使用して高圧系で組成物AおよびBを60℃の温度で混合し、100℃の温度まで加熱された閉鎖型金型中に射出する。50秒後、成形されたシート材料をキャスティング法で使用されたのと同一の仕方で初期強度を試験する。
【0051】
以下の表に列挙した組成物AおよびBをキャスティング法で反応させた。
【0052】
表1:実施例で使用されたプレポリマー(A1)
【表1】

【0053】
三官能性OH末端プレポリマーの製造
(A1):1つまたは複数のポリオールとHDIをベースとするポリオールとを、80℃の温度で3時間、反応器中で攪拌しながら反応させた。
ポリオール1(A1i)、A2):ポリプロピレンエーテルポリオール、モル質量1000、OH値110、酸化プロピレン(PO)含量100%、(Desmophen1110、バイエル)
ポリオール2(A1i)、A2):ポリプロピレンエーテルポリオール、モル質量2000、OH値54、PO含量100%、(Desmophen3600、バイエル)
ポリオール3(A1i)、A2):ポリカプロラクトン(PCL)−ポリテトラヒドロフラン(PTHF)コポリマー、モル質量2000、OH値58、PO含量100%、(Capa7201、Interox)
ポリオール4(A1i)、A2):ポリテトラヒドロフラン、モル質量2000、OH値56(PTHF、BASF)
ポリオール5(A1i)、A2):ネオペンチルグリコールアジペート、モル質量2000、OH値55(Desmophen2028、バイエル)
【0054】
表2:実施例で使用されたイソシアネート組成物B
【表2】

【0055】
表3:実施例
【表3】

【0056】
安定剤系(A5)
酸化防止剤
UV吸収剤
光安定剤
【0057】
表4:比較例(従来技術)
【表4】

【0058】
表5:反応性および物理特性
【表5】

【0059】
従来技術による比較例(実施例6および7)では、本発明によるポリウレタン成形部品と比較して、顕著により長い金型滞留時間、顕著により低い強度特性、ならびにより低い耐熱性および高目の温度での光に対するより低い色堅牢度が、測定された。
【0060】
プレポリマーのために、成分Ali)およびA2)としてポリプロピレンエーテルポリオールおよびPCL−PTHFコポリマーを含み、イソシアネート組成物BとしてIPDI(Bi))およびHDI(Bii))をベースとする三量体を含み、成分Alii)としてHDIをベースとする三量体を含むポリウレタン成形部品の一実施形態では、金型滞留時間が、特に短く、引張り強度、破壊時の伸び、および引き裂き伝播抵抗が特に大きい。
【0061】
プレポリマーのために、成分Ali)およびA2としてポリプロピレンエーテルポリオールおよびポリテトラヒドロフラン(PTHF)を含み、イソシアネート組成物BとしてIPDI(Bi))およびHDI(Bii))をベースとする三量体を含み、成分Alii)としてHDIをベースとする三量体を含むポリウレタン成形部品の他の実施形態では、金型滞留時間が、特に短く、引張り強度、破壊時の伸び、および引き裂き伝播抵抗が大きい。
【0062】
プレポリマーのために、成分Ali)およびA2としてPCL−PTHFコポリマーおよびネオペンチルグリコールアジペートを含み、イソシアネート組成物BとしてH12 MDI(Bi))およびHDI(Bii))をベースとする三量体を含み、成分Alii)としてHDIをベースとする三量体を含むポリウレタン成形部品のさらなる他の実施形態では、金型滞留時間が短く、引張り強度、破壊時の伸び、および引き裂き伝播抵抗が特に大きい。
【0063】
プレポリマーのために、成分Ali)およびA2)としてポリプロピレンエーテルポリオールおよびPCL−PTHFコポリマーを含み、イソシアネート組成物BとしてIPDI(Bi))、およびビューレット構造を有するHDIをベースとする三量体(Bii)を含み、成分A1i))としてHDIをベースとする三量体を含むポリウレタン成形部品のさらなる他の実施形態では、金型滞留時間が短く、引張り強度、破壊時の伸び、および引き裂き伝播抵抗が特に大きい。
【0064】
ポリオール成分がH12 MDIまたはIPDIのみと、または適切な三量体と組み合わせて反応するポリウレタン系を使用すると、大きい機械強度および高い耐熱性および高い色堅牢度などの本発明によるポリウレタン成形部品の特別な特性プロフィルを実現することも、短い金型滞留時間におけるかかる部品の高い費用効果での製造を実現することも可能ではなかった。
【0065】
加えて、高目の温度における機械特性および光に対する色堅牢度の評価でも、比較混合物の顕著な欠点が明らかになった。従来技術で製造されたシート材料では、特に、引張り強度および引き裂き伝播抵抗は、本発明による反応系で得られたもののわずか50%〜60%に値にしか到達しなかった。
【0066】
比較混合物のシート材料を120℃で熱い光に曝露しならエージングすると、表面光沢が顕著に増加したが、本発明によるシート材料では、光沢度およびしぼ安定性は全く変化しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャスティング法または反応射出成形法で脂肪族および/または脂環式ポリウレタン成形部品を製造するための方法であって、
A)
A1)i)ポリオールまたはポリオールの組合せ、およびii)ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとする三量体および/またはビューレット構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとする三量体から形成されるOH末端三官能性プレポリマー、
A2)ポリオールまたはポリオールの組合せ、
A3)アミンおよび/またはヒドロキシル基を有する少なくとも1つの二および/または三官能性鎖延長剤および/または架橋剤、
A4)少なくとも1つのアミン触媒と組み合わせた少なくとも1つの有機金属化合物の触媒系、および任意選択で、
A5)安定剤系、および任意選択で、
A6)少なくとも1つの添加剤
からなる組成物、ならびに
B)i)10〜90重量%のイソホロンジイソシアネート(IPDI)および/またはメチレン−ビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)(H12 MDI)、およびii)10〜90重量%のビューレット構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとする三量体および/またはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)をベースとする三量体からなるイソシアネート組成物
を反応させる方法。
【請求項2】
A1)全体の組成物Aの重量に対して20〜85重量%のプレポリマー、
A2)全体の組成物Aの重量に対して10〜70重量%のポリオールまたはポリオールの組合せ、
A3)全体の組成物Aの重量に対して5〜20重量%の鎖延長剤および/または架橋剤、
A4)全体の組成物Aの重量に対して0.01〜3.5重量%の触媒系、および/または
A5)全体の組成物Aの重量に対して0.2〜1.5重量%の安定剤系
が使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
B)使用されるイソシアネート組成物が、
i)全体のイソシアネート組成物Bの重量に対して40〜80重量%、特に50〜75重量%のIPDIおよび/またはH12 MDI、および
ii)全体のイソシアネート組成物Bの重量に対して20〜60重量%、特に25〜50重量%のビューレット構造を有するHDIをベースとする三量体および/またはHDIをベースとする三量体
からなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ポリオール単独としてまたはポリオールの組合せとして、A1i)および/またはA2)が使用され、それが、モル質量650〜4000を有するポリプロピレンエーテルポリオール、ポリカプロラクトン(PCL)とポリテトラヒドロフラン(PTHF)のコポリマー、ポリテトラヒドロフラン、ポリカーボネートジオールならびに/またはブタンジオール、ヘキサンジオールおよび/もしくはネオペンチルグリコールをベースとするポリアジペートからなる群から選択される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
単独のまたは相互に組み合わせた鎖延長剤および/または架橋剤としてA3)が使用され、それが、モル質量60〜250を有するブタンジオール、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミンおよび/またはヘキサメチレンジアミンからなる群から選択される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
触媒系としてA4)が使用され、それが、アミン触媒、特にトリエチレンジアミンおよび/またはジメチルアミノプロピル尿素と組み合わせた有機金属化合物、特に、ビスマスおよび/またはスズおよび/またはジルコニウムおよび/またはカリウム化合物からなる群から選択される、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
安定剤系としてA5)が使用され、その少なくとも1つが、酸化防止剤、UV吸収剤および/または光安定剤からなる群から選択される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
使用される添加剤としてA6)が、水吸収剤、アンチブロッキング剤および/または金型内部離型剤である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
95と115の間のNCO指数を有する組成物AおよびBが、40℃と60℃の間の温度で加工され、次いで、60℃と120℃の間の温度、特に80℃と100℃の間の温度まで加熱された金型中に流延または射出される、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法を使用することによって得られるポリウレタン成形部品。
【請求項11】
金型滞留時間が、60秒以下、好ましくは、50秒以下であり、DIN/ISO527−3による引張り強度が、10MPa超、好ましくは、15MPa超であり、および/またはDIN/ISO527−3による破壊時の伸びが、170%超、好ましくは、190%超であり、および/またはDIN/ISO13937による引き裂き伝播抵抗が、5N/mm超、好ましくは、7N/mm超である、請求項10に記載のポリウレタン成形部品。
【請求項12】
シート材料、特に、詳細には自動車内装領域における構造コンポーネントの表面被覆としての、請求項10または11に記載のポリウレタン成形部品の使用。
【請求項13】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の組成物AおよびBを含むポリウレタン系。
【請求項14】
金型滞留時間が、60秒以下、好ましくは、50秒以下であり、DIN/ISO527−3による引張り強度が、10MPa超、好ましくは、15MPa超であり、および/またはDIN/ISO527−3による破壊時の伸びが、170%超、好ましくは、190%超であり、および/またはDIN/ISO13937による引き裂き伝播抵抗が、5N/mm超、好ましくは、7N/mm超である、請求項13に記載のポリウレタン系。
【請求項15】
衛生および医療用途のための成形部品、不織布またはシート材料の製造における、請求項13または14に記載のポリウレタン系の使用。

【公表番号】特表2009−532538(P2009−532538A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503442(P2009−503442)
【出願日】平成19年3月3日(2007.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001842
【国際公開番号】WO2007/115611
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508300079)ジョンソン コントロールス インテリアース ゲーエムベーハー ウント コムパニー カーゲー (1)
【Fターム(参考)】