説明

ポリウレタン樹脂製造用のアミン触媒及びそれを用いたポリウレタン樹脂の製造方法

【課題】 アミン触媒の揮発による臭気問題がほとんど発生しない、機械物性の優れるポリウレタン樹脂を、成形性、生産性よく製造できる方法及び触媒を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)


[式中、Rは炭素数3〜18の直鎖又は分枝アルキレン基、脂環式アルキレン基であり、Rは炭素数が1〜4の直鎖又は分枝状のアルキル基である。]で示される化合物からなるアミン触媒の存在下、ポリオールとポリイソシアネートを反応させて、ポリウレタン樹脂を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質、硬質、半硬質、エラストマー等のポリウレタン樹脂製造用の触媒、及びそれを用いたポリウレタン樹脂又はポリウレタンフォームの製造方法に関する。更に詳しくは、揮発性のアミンをほとんど排出しないポリウレタン樹脂又はポリウレタンフォームを製造するための触媒及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂はポリオールとポリイソシアネートとを触媒及び必要に応じて発泡剤、界面活性剤、架橋剤等の存在下に反応させて製造される。従来このポリウレタン樹脂の製造に数多くの金属系化合物や第3級アミン化合物が触媒として用いられることが知られている。これら触媒は単独もしくは併用することにより工業的にも多用されている。
【0003】
これらの触媒のうち、とりわけ第3級アミン化合物は生産性、成形性に優れることよりポリウレタン樹脂製造用の第3級アミン触媒として広く用いられている。このような化合物としては、例えば、従来公知のトリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N−エチルモルフォリン、N,N−ジメチルエタノールアミン等の化合物が挙げられる。
【0004】
金属系触媒は生産性、成形性が悪化することより、ほとんどの場合第3級アミン触媒と併用されることが多く単独での使用は少ない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した第3級アミン触媒は一般に不快な臭気があり、また高い揮発性を有する。このためフォーム製造工程で種々の問題を引き起こす。例えば、
(1)自動車内におけるポリウレタンフォーム製品から排出される揮発性アミンの臭気問題、
(2)ポリウレタンフォーム中の揮発成分が自動車の窓ガラスに被着し窓ガラスを曇らせ商品価値を落とす原因となっている、いわゆるフォギングと呼ばれる問題、そして、
(3)ポリウレタン製品から排出される揮発性アミンによる他の材料への汚染問題、
等である。
【0006】
これら揮発性の第3級アミン触媒に対し、この問題を解決する方法として分子内にポリイソシアネートと反応し得る1級及び2級のアミノ基又はヒドロキシアルキル基を有するアミン触媒を使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0007】
これら特許文献によれば、これらの反応性基を有するアミン触媒は、ポリイソシアネートと反応した形でポリウレタン樹脂中に固定化されるため上記問題を回避できるとしているが、これらの触媒は流動性が低く、硬化時間が長いために生産性の点で難点がある。また、出来上がったフォームの機械物性を悪化させる点で難点がある。
【0008】
また、モノメチルアミンと1,6−ヘキサンジオールの縮合によって合成されるヒドロキシアルキル基を有するアミン触媒を使用する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
同特許文献によれば、これらのアミン触媒は揮発性が低いためにポリウレタン製造工程における作業環境を改善し、同時に従来のポリウレタンに比べて充填性が向上できるとしているが、これらの触媒は硬化時間が長く、フォームが依然として高密度であり、機械物性を悪化させるためにポリウレタンフォーム生産性の点で難点がある。
【0010】
【特許文献1】特開昭46−4846号公報
【特許文献2】特公昭61−31727号公報
【特許文献3】特公昭57−14762号公報
【特許文献4】特開平5−39338号公報
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、ポリウレタン樹脂の製造において、触媒として、本発明の上記一般式(1)で示されるアミン化合物を用いると、アミン触媒の揮発による臭気問題がほとんど発生しない、機械物性の優れるポリウレタン樹脂を、成形性、生産性よく製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下に示すとおりポリウレタン樹脂製造用のアミン触媒及びそれを用いたポリウレタン樹脂の製造方法である。
【0013】
[1]下記一般式(1)
【0014】
【化1】

(式中、Rは、各々独立して、炭素数3〜18の直鎖若しくは分枝状のアルキレン基、又は脂環式アルキレン基であり、Rは、各々独立して、炭素数が1〜4の直鎖又は分枝状のアルキル基である。)
で示される化合物からなるポリウレタン樹脂製造用のアミン触媒。
【0015】
[2]一般式(1)で示される化合物が、N,N’―ビス(4―ヒドロキシブチル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(5―ヒドロキシペンチル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(6―ヒドロキシヘキシル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(8―ヒドロキシオクチル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ビス(4―ヒドロキシブチル)―N,N’―ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ビス(5―ヒドロキシペンチル)―N,N’―ジエチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(6―ヒドロキシヘキシル)―N,N’―ジエチルエチレンジアミン、及びN,N’―ビス(8―ヒドロキシオクチル)―N,N’―ジエチルエチレンジアミンからなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物である上記[1]に記載のアミン触媒。
【0016】
[3]上記[1]又は[2]に記載のアミン触媒の存在下、ポリオールとポリイソシアネートを反応させるポリウレタン樹脂の製造方法。
【0017】
[4]上記[1]又は[2]に記載のアミン触媒の存在下、ポリオールとポリイソシアネートを発泡剤として水及び/又は低沸点化合物を用いて反応させることを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明のアミン触媒は、アミン触媒の揮発による臭気問題がほとんど発生しない、機械物性の優れるポリウレタン樹脂を、成形性、生産性よく製造することができるため、産業上に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
本発明のアミン触媒は、上記一般式(1)で示されるアミン化合物からなる。
【0021】
上記一般式(1)で示されるアミン化合物としては、具体的には、N,N’―ビス(4―ヒドロキシブチル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(5―ヒドロキシペンチル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(6―ヒドロキシヘキシル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(8―ヒドロキシオクチル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(12―ヒドロキシドデシル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(16―ヒドロキシヘキサデシル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ビス(4―ヒドロキシブチル)―N,N’―ジエチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(5―ヒドロキシペンチル)―N,N’―ジエチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(6―ヒドロキシヘキシル)―N,N’―ジエチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(8―ヒドロキシオクチル)―N,N’―ジエチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(12―ヒドロキシドデシル)―N,N’―ジエチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(16―ヒドロキシヘキサデシル)―N,N’―ジエチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(4―ヒドロキシブチル)―N,N’―ジブチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(5―ヒドロキシペンチル)―N,N’―ジブチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(6―ヒドロキシヘキシル)―N,N’―ジブチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(8―ヒドロキシオクチル)―N,N’―ジブチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(12―ヒドロキシドデシル)―N,N’―ジブチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(16―ヒドロキシヘキサデシル)―N,N’―ジブチルエチレンジアミン等が例示される。これらのうち、N,N’―ビス(4―ヒドロキシブチル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(5―ヒドロキシペンチル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(6―ヒドロキシヘキシル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(8―ヒドロキシオクチル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ビス(4―ヒドロキシブチル)―N,N’―ジエチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(5―ヒドロキシペンチル)―N,N’―ジエチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(6―ヒドロキシヘキシル)―N,N’―ジエチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(8―ヒドロキシオクチル)―N,N’―ジエチルエチレンジアミンが、触媒活性が高いため好ましい。更にこれらのうち、N,N’―ビス(4―ヒドロキシブチル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(5―ヒドロキシペンチル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミン及び、N,N’―ビス(6―ヒドロキシヘキシル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミンは触媒活性がより高いため特に好ましい。
【0022】
上記一般式(1)で示される化合物は文献既知の方法にて容易に製造できる。例えば、N,N’―ジメチルエチレンジアミンと対応するクロロアルキルアルコールを適当なモル比で加温し反応させることにより製造することができる。
【0023】
本発明のアミン触媒を用いたポリウレタン樹脂の製造方法は、ポリオールとポリイソシアネートとを、本発明のアミン触媒、及び必要に応じて発泡剤、界面活性剤、架橋剤等の存在下で反応させてポリウレタン樹脂製品を得る方法である。本発明の製造方法により得られる製品としては、発泡剤を用いて製造される軟質ポリウレタンフォーム及び硬質ポリウレタンフォーム、更に発泡剤を用いないエラストマー製品等が挙げられる。本発明の製造方法は、これらのうち、発泡剤を用いて製造される軟質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム及び硬質ポリウレタンフォームに好ましく適用される。
【0024】
本発明のアミン触媒をポリウレタン樹脂の製造に用いる際の使用量は、使用されるポリオールを100重量部としたとき、通常0.01〜20重量部の範囲であるが、好ましくは0.05〜10重量部の範囲である。
【0025】
本発明のアミン触媒は、ポリウレタン樹脂原料であるポリイソシアネートと反応し、ポリウレタン樹脂骨格中に固定化される。即ち、本発明の触媒を用いた場合、ポリウレタン樹脂製品では前述した種々の問題、例えば、揮発性アミンによる臭気やフォギング等を防止することが可能となる。
【0026】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法に使用されるポリオールとしては、従来公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、さらには含リンポリオールやハロゲン含有ポリオール等の難燃ポリオール等が使用できる。これらのポリオールは単独で使用することもできるし、適宜混合して併用することもできる。
【0027】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等)、アミン類(例えば、エチレンジアミン等)、アルカノールアミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン等)等の少なくとも2個以上の活性水素基を有する化合物を出発原料として、これらにアルキレンオキサイド類(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)を付加反応させることにより製造されたものが例示される(例えば、Gunter Oertel著、「Polyurethane Handbook」(1985年版) Hanser Publishers社(ドイツ)第42〜53頁に記載の方法参照)。
【0028】
ポリエステルポリオールとしては、二塩基酸とグリコールの反応から得られるもの、更には、ナイロン製造時の廃物、トリメチロールプロパン、ペンタエリストールの廃物、フタル酸系ポリエステルの廃物、廃品を処理し誘導したポリエステルポリオール等が例示される(岩田敬治著、「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社、117頁の記載参照)。
【0029】
ポリマーポリオールとしては、例えば、前記ポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等)をラジカル重合触媒の存在下に反応させた重合体ポリオールが挙げられる。
【0030】
難燃ポリオールとしては、例えば、リン酸化合物にアルキレンオキシドを付加して得られる含リンポリオール、エピクロルヒドリンやトリクロロブチレンオキシドを開環重合して得られる含ハロゲンポリオール、フェノールポリオール等が挙げられる。
【0031】
これらポリオールの分子量(Mw)は62〜15000の範囲のものが通常使用される。
【0032】
軟質ポリウレタンフォームには、分子量(Mw)が1000〜15000の範囲ものが通常使用されるが、好ましくは分子量(Mw)が3000〜15000の範囲のポリエーテルポリオール及びポリマーポリオールである。分子量(Mw)が3000より小さい場合、物性(弾力性)等が劣る場合があるため、3000以上のものが望ましい。さらに好ましくはポリエーテルポリオールとポリマーポリオールを併用して用いる軟質ポリウレタンフォームである。ポリマーポリオールは樹脂の強度(硬度、弾性)を上げる効果があり、分子設計(硬度、弾性)が容易になる。
【0033】
また、硬質ポリウレタンフォームには、分子量(Mw)が62〜8000範囲のものが通常使用されるが、好ましくは分子量(Mw)が62〜1500の範囲のポリエーテルポリオールである。硬質ポリウレタンフォーム用のポリオールとしては、官能基数が多く(4〜8)、低分子量のものが好まれる。
【0034】
本発明の製造方法に使用されるポリイソシアネートは、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフチレンジイシシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート及びこれらの混合体が挙げられる。TDIとその誘導体としては、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物又はTDIの末端イソシアネートプレポリマー誘導体を挙げることができる。MDIとその誘導体としては、MDIとその重合体のポリフェニル−ポリメチレンジイソシアネートの混合体、及び/又は末端イソシアネート基をもつジフェニルメタンジイソシアネート誘導体を挙げることができる。これらポリイソシアネートの内、TDIとMDIが好ましく使用される。
【0035】
本発明の製造方法において、ポリイソシアネートとポリオールの使用比率としては、特に限定されるものではないが、イソシアネートインデックス(イソシアネート基/イソシアネート基と反応しうる活性水素基)で表すと、軟質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォームの製造では一般に60〜130の範囲であり、硬質ポリウレタンフォーム及びウレタンエラストマーの製造においては一般に60〜400の範囲である。
【0036】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法に使用される触媒は、上記した本発明のアミン触媒であるが、それ以外にも本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の触媒を併用して用いることができる。他の触媒としては、例えば、従来公知の有機金属触媒、第3級アミン触媒や第4級アンモニウム塩触媒等を挙げることができる。
【0037】
有機金属触媒としては、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等が挙げられる。
【0038】
第3級アミン触媒としては、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N−メチル−N’−(2−ジメチルアミノエチル)ピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ジメチルアミノプロピルイミダゾール等の第3級アミン化合物類が挙げられる。
【0039】
また、本発明のアミン触媒以外の反応性基を持つ第3級アミン触媒も使用でき、例えば、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルヘキサノールアミン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、ビス(ジメチルアミノプロピル)メチルアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、1−(2−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、3−キヌクリジノール等の第3級アミン化合物類が挙げられる。
【0040】
第4級アンモニウム塩触媒としては、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物、テトラメチルアンモニウム−2−エチルヘキサン酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類が挙げられる。
【0041】
これらのうち、本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、本発明のアミン触媒と特に好適に併用されるのは、有機金属触媒及び/又は第3級アミン触媒である。
【0042】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法に用いられる発泡剤は、水及び/又は低沸点有機化合物である。低沸点有機化合物としては、例えば、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類等の低沸点の有機化合物が挙げられる。炭化水素類としては、具体的には、公知のメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等が例示される。ハロゲン化炭化水素類としては、具体的には、公知のハロゲン化メタン、ハロゲン化エタン類、フッ素化炭化水素類(例えば、塩化メチレン、HCFC−141b、HFC−245fa、HFC−356mfc等)が例示される。これら発泡剤の使用においては、水と低沸点有機化合物をそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよいが、環境上特に好ましい発泡剤は水である。その使用量は目的とする製品の密度により変わり得るが、ポリオール100重量部に対して通常0.1重量部以上であり、好ましくは0.5〜10.0重量部の範囲である。
【0043】
本発明の製造方法において、必要であれば界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、従来公知の有機シリコーン系界面活性剤が好適なものとして挙げられ、その使用量は、ポリオール100重量部に対して通常0.1〜10重量部の範囲である。
【0044】
本発明の製造方法において、必要であれば架橋剤又は鎖延長剤を用いることができる。架橋剤又は鎖延長剤としては、特に限定するものではないが、例えば、低分子量の多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等)、低分子量のアミンポリオール類(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等)、又はポリアミン類(例えば、エチレンジアミン、キシリレンジアミン、メチレンビスオルソクロルアニリン等)が例示される。これらのうち、低分子量のアミンポリオール類が好ましく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが特に好ましい。
【0045】
本発明の製造方法においては、必要に応じて、着色剤、難燃剤、老化防止剤その他公知の添加剤等も使用できる。これらの添加剤の種類、添加量としては特に限定するものではなく、公知の形式と手順を逸脱しない通常使用される範囲で使用することができる。
【0046】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法にて製造される製品は種々の用途に使用できる。軟質ポリウレタンフォームでは、例えば、クッションとしてのベッド、カーシート、マットレス等が挙げられる。半硬質ポリウレタンフォームでは、例えば、自動車関連のインスツルメントパネル、ヘッドレスト、ハンドル等が挙げられる。硬質ポリウレタンフォームでは、例えば、冷凍庫、冷蔵庫、断熱建材等が挙げられる。エラストマー製品では、例えば、接着剤、床材、防水材等が挙げられる。
【0047】
以下、実施例、比較例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
調製例1.
500mlの三口フラスコに、N,N’−ジメチルエチレンジアミン(東京化成工業(株)社製)25g、6−クロロヘキサノール(東京化成工業(株)社製)48.5g、トリエチルアミン(和光純薬(株)社製)、1,4−ジオキサン(キシダ化学(株)社製)25gを仕込んだ。窒素置換後、撹拌下に105℃まで昇温した。9時間熟成反応を行った後、析出したトリエチルアミンの塩酸塩を炉別除去した。ろ液より減圧下、未反応のトリエチルアミン及び1,4−ジオキサンを除去した。更に反応液を減圧蒸留に掛けることでN,N’−ビス(6−ヒドロキシヘキシル)−N,N’−ジメチルエチレンジアミン36.7gを得た。GC分析したところ、純度94%であった。これを触媒Aとする。
【0049】
調製例2.
500mlの三口フラスコに、N,N’−ジメチルエチレンジアミン(東京化成工業(株)社製)40g、4−クロロブタノール(東京化成工業(株)社製)88.7g、トリエチルアミン(和光純薬(株)社製)82.6gを仕込んだ。窒素置換後、撹拌下に105℃まで昇温した。9時間熟成反応を行った後、ジオキサンを添加し析出したトリエチルアミンの塩酸塩を炉別除去した。ろ液より減圧下、未反応のトリエチルアミン及び1,4−ジオキサンを除去した。更に反応液を減圧蒸留に掛けることでN,N’−ビス(4−ヒドロキシブチル)−N,N’−ジメチルエチレンジアミン36.5gを得た。GC分析したところ、純度86%であった。これを触媒Bとする。
【0050】
実施例1〜実施例2及び比較例1〜比較例4.
調製例1及び調製例2で調製したアルカノールアミンを用いて半硬質ポリウレタンフォームを製造した例を実施例として、それ以外の各種の架橋剤乃至触媒を用いて半硬質ポリウレタンフォームを製造した例を比較例として、以下に示す。
【0051】
表1に示した本発明のアミン触媒及び市販の第3級アミン触媒を用いて、以下に示す評価を実施した。
【0052】
【表1】

表1中、触媒略号Fは、下記一般式(2)で表されるモノメチルアミンと1,6−ヘキサンジオールの縮合アミンを表す。
【0053】
【化2】

(式中、nは平均重合度2.7を表す。)
表2に示した原料配合比にてプレミックスAを調合した。
【0054】
【表2】

プレミックスA 102.8gを300mlポリエチレンカップに取り、表1に示す本発明のアルカノールアミン又は各種の触媒を、各々反応性が下記のゲルタイムで約45秒となる量添加し、25℃に温度調整した。別容器で25℃に温度調整したイソシアネート液を、イソシアネートインデックス[=イソシアネート基/OH基(モル比)×100)]が105となる量、プレミックスAのカップの中に入れ、素早く攪拌機にて6000rpmで5秒間攪拌した。混合攪拌した混合液を40℃に温度調節した2リットルのポリエチレンカップに移し発泡中の反応性を測定した。このときのフォームの反応性及び成形性を調べた。
【0055】
次に、同様の操作にて、60℃に温度調節した図1に示す迷路状の溝を内部に施したモールド(内寸法、295×305×25mmのアルミ製)内に、図1中のPourの位置に混合液を入れ、蓋をして発泡成形を行った。発泡したフォームは、図1に示したモールドの迷路状の溝に沿って広がり(図1中のAで示した網掛け部分)、迷路を通り抜けて、図1中のBで示した網掛け部分まで広がっていく。混合開始から3分後にフォームを脱型し、フォームの流動性を評価した。
【0056】
次に、同じ操作にて全フォーム密度が40kg/m前後になるように、60℃に温度調節したモールド(内寸法、295×305×25mmのアルミ製)内に混合液を入れ、蓋をして発泡成形を行った。混合開始から1分後にフォームを脱型し、フォームの硬化時間を測定した。それらの結果を表3にあわせて示す。
【0057】
【表3】

なお、各測定項目の測定方法は以下のとおりである。
【0058】
(1)反応性の測定項目
クリームタイム:発泡開始時間、フォームが上昇開始する時間を目視にて測定
ゲルタイム:反応が進行し液状物質より、樹脂状物質に変わる時間を測定
ライズタイム:フォームの上昇が停止する時間を目視にて測定
コア密度:出来上がったフォームの中心部分(7cm×7cm×10cm)の重量を測定して密度を算出した。
【0059】
(2)成形性
2Lのポリエチレンカップ中に作成したフォームの収縮の有無からフォームの成形性を評価した。
【0060】
○:フォームの収縮がほとんど無い。
【0061】
△:フォームの多少の収縮が有る。
【0062】
×:フォームの収縮が大きい。
【0063】
(3)流動性
発泡したフォームが図1に示したモールドの迷路状の溝に沿ってどのくらい成形性良く広がったかを調べた。フォーム全体(図1中、A及びBで示した網掛け部分)の重量に対する、図1のBで示した迷路を通り抜けたフォームの重量の割合、すなわち、[Bで示した網掛け部分の重量]÷[A及びBで示した網掛け部分の合計重量]×100(重量%)の値によって流動性を評価した。数値が大きいほどフォームが流動性良く広がったことを表す。
【0064】
(4)硬化時間
混合開始から1分後にフォームを脱型し、その15秒後から15秒ごとにフォームに加重を掛け、フォームを変形させた。混合開始からフォームの加圧による変形がなくなった時間を硬化時間とした。
【0065】
表3から明らかなとおり、実施例1及び実施例2は本発明のアルカノールアミンを用いた例であるが、得られるポリウレタンフォームは、フォームの流動性が良く、フォームを低密度化させ、硬化時間が早い、つまりトータルコストメリットがあり、生産性が高い。
【0066】
これらに対し、比較例1及び比較例4はそれぞれ、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン及びモノメチルアミンと1、6−ヘキサンジオールの縮合アミンを用いた例であるが、得られるポリウレタンフォームは、硬化時間が遅く、生産性が低い。比較例2及び比較例3はそれぞれ、3,3’−イミノビス(N,N−ジメチル−1−プロパンジアミン)及びN,N’−ビスヒドロキシエチル−N,N’−ジメチルエチレンジアミンを用いた例であるが、得られるポリウレタンフォームは、フォームの流動性が悪く、生産性が低い。
【0067】
実施例3及び比較例5〜比較例6.
調製例1及び調製例2で調製したアルカノールアミンを用いて軟質HRポリウレタンフォームを製造した例を実施例として、それ以外の各種の架橋剤乃至触媒を用いて軟質HRポリウレタンフォームを製造した例を比較例として、以下に示す。
【0068】
表4に示した原料配合比にてプレミックスBを調合した。
【0069】
【表4】

プレミックスB 447.4gを2Lポリエチレンカップに取り、表2に示す本発明のアルカノールアミン又は各種の触媒を、各々反応性が下記のゲルタイムで約60秒となる量添加し、25℃に温度調整した。別容器で25℃に温度調整したイソシアネート液を、イソシアネートインデックス[=イソシアネート基/OH基(モル比)×100)]が105となる量、プレミックスBのカップの中に入れ、素早く攪拌機にて6000rpmで4秒間攪拌した。混合攪拌した混合液を40℃に温度調節した2リットルのポリエチレンカップに移し発泡中の反応性を測定した。このときのフォームの反応性を調べた。
【0070】
次に、同様の操作にて、混合攪拌した混合液を60℃に温度調節したモールド(内寸法、35×35×10cmのアルミ製)内に入れ発泡成形を行った。混合液を入れた時点から10分後にフォームを脱型した。成型したフォームを用いてフォームのコア密度、機械強度(硬度、伸び、引っ張り強度、引き裂き強度及び湿熱永久圧縮歪)、及び臭気を調べた。それらの結果を表5にあわせて示す。
【0071】
【表5】

なお、各測定項目の測定方法は以下のとおりである。
【0072】
(1)反応性の測定項目
クリームタイム:発泡開始時間、フォームが上昇開始する時間を目視にて測定
ゲルタイム:反応が進行し液状物質より、樹脂状物質に変わる時間を測定
ライズタイム:フォームの上昇が停止する時間を目視にて測定。
【0073】
(2)モールドフォームのコア密度
モールド成型フォームの中心部を21×21×6cmの寸法にカットし、寸法、重量を正確に測定してコア密度を算出した。
【0074】
(3)フォームの硬度(CLD)
JIS K6401−1980に準じて測定した。
【0075】
(4)フォームの伸び
JIS K7311−1995に準じて測定した。
【0076】
(5)フォームの引張り強度
JIS K7311−1995に準じて測定した。
【0077】
(6)フォームの引裂き強度
JIS K7311−1995に準じて測定した。
【0078】
(7)湿熱永久圧縮歪
JIS K6401−1980に準じて50℃×22hr、湿度95%、50%圧縮の湿熱永久圧縮歪(ウェットセット)を測定した。
【0079】
(8)フォームの臭気
フォームコア密度を測定したフォームから5×5×5cm寸法のフォームをカットしマヨネーズ瓶の中に入れて蓋をした後、10人のモニターにそのフォームの臭いを嗅いで貰い、臭いの強さを測定した。
【0080】
○:殆ど臭い無し
△:微かに臭気あり
×:強い臭気有り
実施例3は本発明の触媒を用いた例であるが、コア密度が低密度化する。また、フォームの伸び率が高く、引っ張り強度が高い。加えて湿熱耐久性が良く、フォームのアミン臭気がない。
【0081】
これに対し、比較例5はモノメチルアミンと1、6−ヘキサンジオールの縮合アミンを用いた例であるが、コア密度が高密度化するため生産性が悪く、フォームの機械強度も悪い。比較例6はHR処方で汎用的に使用される分子内に反応性基を持たない3級アミン触媒の例であるが、フォームに不快なアミン臭気がある。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施例で用いたモールド(内寸法、295×305×25mmのアルミ製)の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは、各々独立して、炭素数3〜18の直鎖若しくは分枝状のアルキレン基、又は脂環式アルキレン基であり、Rは、各々独立して、炭素数が1〜4の直鎖又は分枝状のアルキル基である。)
で示される化合物からなるポリウレタン樹脂製造用のアミン触媒。
【請求項2】
一般式(1)で示される化合物が、N,N’―ビス(4―ヒドロキシブチル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(5―ヒドロキシペンチル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(6―ヒドロキシヘキシル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(8―ヒドロキシオクチル)―N,N’―ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ビス(4―ヒドロキシブチル)―N,N’―ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ビス(5―ヒドロキシペンチル)―N,N’―ジエチルエチレンジアミン、N,N’―ビス(6―ヒドロキシヘキシル)―N,N’―ジエチルエチレンジアミン、及びN,N’―ビス(8―ヒドロキシオクチル)―N,N’―ジエチルエチレンジアミンからなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であることを特徴とする請求項1に記載のアミン触媒。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のアミン触媒の存在下、ポリオールとポリイソシアネートを反応させることを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のアミン触媒の存在下、ポリオールとポリイソシアネートを発泡剤として水及び/又は低沸点化合物を用いて反応させることを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−108131(P2009−108131A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279244(P2007−279244)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】