説明

ポリエステルの製造方法

【課題】ポリエステルの生産性を高めつつ、ポリエステルの固有粘度、色調、ジエチレングリコール含量等の品質の経時的ばらつきを小さくする連続製法の提供。
【解決手段】芳香族ジカルボン酸又はその誘導体とジオール化合物とをエステル化反応器及び精留塔が設けられた反応装置にてエステル化反応させることによりポリエステル先駆体を形成し、次いでそのポリエステル先駆体を減圧下で重縮合させてポリエステルを連続的に製造する方法において、エステル化反応に供するジオール化合物と芳香族ジカルボン酸又はその誘導体のモル比(ジオール化合物/芳香族ジカルボン酸又はその誘導体)を1.15以上とし、精留塔へ留出するジオール化合物を含む成分の一定量を連続的にエステル化反応装置外へ取り出し、精留塔へ留出した残りのジオール化合物を含む成分をエステル化反応器へ戻すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステルを連続的に製造する方法に関するものであり、さらに詳しくはエステル化工程の安定化及びポリエステル品質の安定化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、中でもポリエチレンテレフタレートは優れた物理的、化学的性質を有するため、衣料用やタイヤコード等の産業用の繊維として、あるいはフィルムやエンジニアリングプラスチックとして各種の成型品に、さらには飲料や洗剤などを充填する容器としても幅広く用いられている。
【0003】
このような各種の用途に使用されるポリエステルの製造方法としては、一般に直接重合法又はエステル交換法が用いられる。近年では、原料入手の容易さから直接重合法が製造方法の主流になりつつある。また、ポリエステルの重合に際しては、従来は回分重合方式によるものが多かったが、近年では安価にポリエステルを製造するためにそのスケールメリットを活かして、連続重合方式への切り替えが進められてきている。
【0004】
そして更なる生産性向上のために、連続重合方式の改善に関する報告がなされている(例えば特許文献1及び2参照。)。また、生産性を高めつつポリエステルの品質を良好に保つ連続重合方法に関する報告がなされている(例えば特許文献3〜7参照。)。しかしながら、これらの方法では生産性を高めることは可能であるが、ポリエステルポリマーの品質の経時的なばらつきを小さくすることは不可能であり、ポリエステルポリマーの製造工程の主な問題をすべて解決するには至っていない。
【0005】
【特許文献1】特公平3−14052号公報
【特許文献2】特開2004−2901号公報
【特許文献3】特開2001−172378号公報
【特許文献4】特開平10−279677号公報
【特許文献5】特開平11−279834号公報
【特許文献6】特開平9−124784号公報
【特許文献7】特公昭59−48058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリエステルの生産性を高めつつ、ポリエステルの固有粘度、色調、ジエチレングリコール含量等の品質の経時的ばらつきを小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上に述べたような従来方法による問題点をまとめて解決するために鋭意検討を続けた結果、各工程から発生する留出グリコールを必ずしも工程外に設置した精留工程を含む回収工程を通さずに直接原料化しながら反応原料の成分を一定にして、しかも安定した品質のポリエステルを製造する方法について検討して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は「芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール化合物とをエステル化反応器及び精留塔が設けられたエステル化反応装置にてエステル化反応させることによりポリエステル先駆体を形成し、次いでそのポリエステル先駆体を減圧下で重縮合させてポリエステルを連続的に製造する方法において、エステル化反応に供するジオール化合物と芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体のモル比(ジオール化合物/芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体)を1.15以上とし、精留塔へ留出する水、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体、ジオール化合物及びポリエステル先駆体よりなる群中からジオール化合物を含む成分の一定量を連続的にエステル化反応装置外へ取り出し、精留塔へ留出した残りの水、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体、ジオール化合物及びポリエステル先駆体よりなる群中からジオール化合物を含む成分をエステル化反応器へ戻すことを特徴とするポリエステルの連続製造方法。」からなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施により、ポリエステルを連続重合方式で製造する場合に、生産性を高めつつ品質の経時的なばらつきを小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のポリエステルの連続製造方法においてポリエステルとは芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール化合物を反応させて得られるポリエステルを対象とし、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートである。従って芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としてはテレフタル酸又はこれらの低級脂肪族エステル、低級芳香族エステル、酸ハロゲン化化合物若しくは酸無水物等を用いるのが好ましい。より好ましくはメチルエステル又はフェニルエステルであり、更に好ましくはメチルエステルである。またジオール化合物としてはエチレングリコール、トリメチレングリコール又はテトラメチレングリコールなどのグリコールが好ましく選ばれる。好ましくは芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体がテレフタル酸であり、ジオール化合物がエチレングリコールであることが好ましい。
【0011】
ここで、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体の一部を例えば5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、p−β―ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ジフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸若しくはセバシン酸などの二官能性カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体で置き換えるか、またはジオール化合物の一部をヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ビス−β―ヒドロキシエトキシベンゼン、若しくはビスフェノールAなどの脂肪族、脂環族若しくは芳香族のジヒドロキシ化合物又はそのエステル形成性誘導体で置き換えた共重合ポリエステルであってもよい。
【0012】
また本発明のポリエステルは、上述のような芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール化合物とを、エステル化反応器及び精留塔を設けたエステル化反応装置にてエステル化反応させポリエステル先駆体を形成し、次いでそのポリエステル先駆体を減圧下で重縮合させる連続製造方法によって製造される。以下、本発明の連続製造方法を図面等を用いて説明する。以下、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としてはテレフタル酸、ジオール化合物としてはエチレングリコールを用いて説明するが、以下の説明により本発明は原料がテレフタル酸とエチレングリコールに限定されたり、温度・圧力等の反応条件がその記載のとおりに限定されるものではない。
【0013】
図1は本発明を説明する概念図の一つである。図1において、テレフタル酸1と、エチレングリコール2及び留出エチレングリコール貯槽6からのエチレングリコールを合わせたエチレングリコールを、エチレングリコール/テレフタル酸のモル比を一定にしてスラリー混合機3に供給して撹拌混合を行いスラリーとする。このスラリーをエステル化反応装置に送る。エステル化反応器A 4−1では撹拌下240〜295℃、常圧〜0.5MPaの加圧下の条件にてエステル化反応を行う。エステル化反応により水とポリエステル先駆体20−2が生成する。これら水、テレフタル酸、エチレングリコール及びポリエステル先駆体のうち低沸点成分は精留塔A 5−1に留出する。通常水は塔頂より分離され、エチレングリコールが精留塔の下部から回収できるように条件を設定する。その結果エステル反応器から精留塔に水、テレフタル酸、エチレングリコール及びポリエステル先駆体よりなる群中からエチレングリコールを含む成分が精留塔に留出される。エステル化反応器A 4−1でエステル化反応により生成した水は精留塔A 5−1の塔頂よりエステル化反応装置外へ留出水として分離される。エチレングリコールは精留塔A 5−1の下部より缶出液として分離され、予め設定した所定量を留出エチレングリコールA 18−1としてエステル化反応装置(精留塔A)から留出エチレングリコール貯槽6に連続的に一定量取り出し、残余をエステル化反応器A 4−1に戻す(回収エチレングリコールA 19−1)。エステル化反応器A 4−1内でほぼエステル化反応が完了したポリエステル低重合体(ポリエステル先駆体)20−2を次工程の重縮合反応器に送る。ポリエステル先駆体はその重合度が2〜10であることが生産性及び得られるポリエステルの品質の点から好ましい。より好ましい重合度範囲は4〜8である。ポリエステル先駆体の重合度を2〜10にすることは、精留塔からのエチレングリコールの取り出し量を一定量となるように制御することにより達成できる。
【0014】
この際にエステル化反応装置に設けた精留塔からエステル化反応装置外へ、そのエチレングリコールを取り出す単位時間当たりの量Wが下記式(1)を満たすように設定することが好ましい。
W≦W1−(Dp+1)/Dp×(W2/M2)×M1 (1)
[上記数式において、エステル化反応装置に供するジオール化合物の単位時間当たりの供給量をW1、分子量をM1、エステル化反応装置に供する芳香族ジカルボン酸の単位時間当たりの供給量をW2、分子量をM2、ポリエステル先駆体の重合度をDpとする。]
より好ましくは、
W1−2×(W2/M2)×M1<W
≦W1−(Dp+1)/Dp×(W2/M2)×M1 (2)
となるように設定する。
これらの数式の範囲を満たすとポリエステル先駆体の重合度を制御することができるので、得られるポリエスエテル中の固有粘度、色調、ジエチレングリコール量等の物性のばらつきが小さくなり好ましい。一方この数式の範囲を満たさないと重合度の変動が大きくなり、品質のバラツキが大きくなるので好ましくないことがある。以上述べたように、この数式を満たすように、予めエチレングリコールの取り出し量を制御する必要がある。
【0015】
重縮合反応器7、8、9では、250〜300℃、0.05〜60kPaの温度・圧力の範囲で反応を行い、ポリエステルポリマー(ポリエチレンテレフタレート17)を製造する。これらの重縮合反応器にはそれぞれ湿式凝縮器10、11、12が設置されており、重縮合反応により発生した留出エチレングリコールはここで凝縮され、それぞれ循環エチレングリコール貯槽13、14、15に蓄えられるとともに、循環エチレングリコールとして再び湿式凝縮器10、11、12に送られ、重縮合反応器からの留出エチレングリコールを凝縮させるための噴霧液として使用される。
【0016】
なおそれぞれの湿式凝縮器は配管により真空源に接続していることが好ましい。なかでも特に後期の重縮合反応器9では高真空度が要求される。重縮合反応器9に付帯する湿式凝縮器12での留出エチレングリコール中に含まれる水等の低沸点成分の蒸気圧に起因する圧力損失や、飛沫同伴して発生するポリエステル低重合体の各反応器(装置)や配管への付着を防止する目的で、製品ポリエステル中の構成成分量に等しいエチレングリコールに等しい量以下であって水分率が0.5%以下のエチレングリコール16を循環エチレングリコール貯槽15に添加するのも好ましい。
【0017】
循環エチレングリコール貯槽15では液面高さが一定になるように、貯槽内の液が抜き出される。抜き出した液は循環エチレングリコール貯槽14に送られる。ここでその抜き出した液は、重縮合反応器8で発生した留出エチレングリコールと合わせて湿式凝縮器11の噴霧液として用いられる。その後、循環エチレングリコール貯槽14の液面高さが一定となるように貯槽内の液が抜き出され、循環エチレングリコール貯槽13に送られる。そして重縮合反応器7で発生した留出エチレングリコールと合わせて湿式凝縮器10の噴霧液として用いられる。さらにその後、循環エチレングリコール貯槽13の液面高さが一定となるように貯槽内の液を抜き出され、留出エチレングリコール貯槽6に送られる。
【0018】
ここで、湿式凝縮器10、11に対応する循環エチレングリコール貯槽13、14が循環エチレングリコール貯槽13の1槽に統一されていれば上記の操作は一回のみとなる。重縮合反応器が4槽以上ある場合には上記の操作を繰り返すことになる。また、本発明は主としてエステル化反応、特にエステル化反応装置に設置した精留塔に関するものであるので、重縮合反応器は例示のものに限定されることはない。例えば特開2004−2901号公報、特開2001−40080号公報、特開2000−136247号公報、特開2000−239368号公報,特開平10−95843号公報などで提示された重縮合反応器に置き換えても一向に差し支えない。また通常使われる竪型完全混合槽型重縮合器、横型重縮合器を用いても問題ない。
【0019】
エチレングリコール貯槽6に集められた留出エチレングリコールは、スラリー混合機3にテレフタル酸1とともに供給される。この時、エチレングリコールとテレフタル酸のモル比が常に一定になるように制御される。この制御系はエチレングリコールを基準にしてテレフタル酸を比例制御してもよいし、テレフタル酸を基準にしてエチレングリコールを比例制御してもよい。製品ポリエステルの生産量をできるかぎり一定に保つためには、テレフタル酸の供給量を基準にしてエチレングリコールを比例制御してモル比を一定に保つことが好ましい。本発明においては、エステル交換反応に供するジオール化合物と芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体のモル比(ジオール化合物/芳香族ジカルボン酸又はエステル形成性誘導体)を1.15以上にすることが必要である。より好ましくはそのモル比は1.35以上である。1.15未満の場合には良好なスラリーとすることができないので好ましくない。またこの比が1.15以上であると良好なスラリーとすることができ、エステル(交換)化反応が安定するので、得られるポリエステルの固有粘度、色調、ジエチレングリコール量等の物性のばらつきが小さくなり好ましい。なおこの比を1.15以上に保つためには、上述のようにスラリー混合機3に供給されるテレフタル酸の供給量を基準にしてエチレングリコールを比例制御する方法が通常採用される。留出エチレングリコール貯槽6からの留出エチレングリコール中には大きな異物やポリマーの変性物を含むことがあるので、これらを除去するために留出エチレングリコール貯槽6からスラリー混合機3の間にフィルターを設置することが好ましい。また、スラリー混合機3には緊急用として別のエチレングリコール供給ライン2を設置しておくことが望ましい。また留出エチレングリコール貯槽6とスラリー混合機3の間にバッファーとしてエチレングリコール貯槽を設置することは一向に差し支えない。この場合には、スラリー混合機3でのエチレングリコールとテレフタル酸のモル比を一定にするために、新たに設置したエチレングリコール貯槽の出側の流量を制御することになる。
【0020】
スラリー混合機3とエステル化反応器A 4−1の間にスラリー貯槽を設けておくことも一向に差し支えない。スラリー混合機では連続的又は不連続的に、エチレングリコール/テレフタル酸のモル比が一定になるようにスラリーを製造する。そして、そのモル比が一定に保たれたスラリーをスラリー貯槽に貯蔵しておき、一定量でエステル化反応装置に連続的に供給することが好ましい。
【0021】
ここで、請求項1にある「エステル化反応に供するジオール化合物と芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体のモル比」とは「スラリー混合機3からエステル化反応器A 4−1に供給されるジオール化合物と精留塔A 5−1下部からエステル化反応器に戻される回収エチレングリコールA 19−1とを合計した量」と「スラリー混合機3からエステル化反応器A 4−1に供給される芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体」の比である。
【0022】
また、請求項4にある「エステル化反応装置に供するジオール化合物の単位時間当たりの供給量W1」とはスラリー混合機3からエステル化反応装置に供給されるスラリー中に含まれるジオール化合物の量に等しく、「エステル化反応装置に供する芳香族ジカルボン酸の単位時間当たりの供給量W2」とはスラリー混合機3からエステル化反応装置に供給されるスラリー中に含まれる芳香族ジカルボン酸の量に等しい。
【0023】
図2は本発明を説明する別の概念図の一つである。図2の設備は図1の設備に比べてエステル化反応器が2槽あることに特徴がある。またエステル化反応器の数は2槽に限定されるものではなく必要に応じて2槽以上とすることができる。
【0024】
図2において、テレフタル酸1と、エチレングリコール2及び留出エチレングリコール貯槽6からのエチレングリコールを合わせたエチレングリコールを、エチレングリコール/テレフタル酸のモル比を一定にしてスラリー混合機3に供給して撹拌混合を行いスラリーとする。このスラリーをエステル化反応器A 4−1に送る。エステル化反応器A 4−1では撹拌下240〜295℃、常圧〜0.5MPaの加圧下の条件にてエステル化反応を行う。ついで得られた反応生成物20−1をエステル化反応器B 4−2に送り、ポリエステル先駆体20−2を製造する。エステル化反応器4−2では撹拌下240〜295℃、常圧〜0.5MPaの加圧下の条件にてさらにエステル化反応を行う。エステル化反応によりポリエステル先駆体と同時に水が生成する。これら水、テレフタル酸、エチレングリコール及びポリエステル先駆体のうち低沸点成分は精留塔A 5−1に留出する。通常水は塔頂より分離され、エチレングリコールが精留塔の下部から回収できるように条件を設定する。さらに具体的にはエステル化反応器B 4−2の温度はエステル化反応器A 4−1の温度以下に設定しても一向に差し支えないが、省エネルギーの観点からはエステル化反応器A 4−1の温度と同等かそれ以上に設定することが好ましい。エステル反応器から精留塔に水、テレフタル酸、エチレングリコール及びポリエステル先駆体よりなる群中からエチレングリコールを含む成分が精留塔に留出される。エステル化反応器4−1及び4−2でエステル化反応により生成した水は精留塔A 5−1の塔頂より留出水として分離される。エチレングリコールは精留塔A 5−1の下部より缶出液として分離され、予め設定した所定量を留出エチレングリコールA 18−1としてエステル化反応装置(精留塔A)から留出エチレングリコール貯槽6に連続的に一定量取り出し、残余をエステル化反応器A 4−1に戻す(回収エチレングリコールA 19−1)。エステル化反応器B 4−2内でほぼエステル化反応が完了したポリエステル低重合体(ポリエステル先駆体)20−2を次工程の重縮合反応器に送る。ポリエステル先駆体はその重合度が2〜10であることが生産性及び得られるポリエステルの品質の点から好ましい。より好ましい重合度範囲は4〜8である。ポリエステル先駆体の重合度を2〜10にすることは、精留塔からのエチレングリコールの取り出し量を一定量となるように制御することにより達成できる。ここでエステル化反応器が2槽になったことにより条件設定の幅が広がり、ポリエステル先駆体を安定して製造することができる。
【0025】
また図1に示した設備概念図と同様の理由により、この際にエステル化反応装置に設けた精留塔から該ジオール化合物を取り出す単位時間当たりの量Wが上記式(1)を満たすように設定することが好ましい。さらに好ましくは上記式(2)を満たすように設定する。
【0026】
重縮合反応器7、8、9では、250〜300℃、0.05〜60kPaの温度・圧力の範囲で反応を行い、ポリエステルポリマー(ポリエチレンテレフタレート17)を製造する。これらの重縮合反応器にはそれぞれ湿式凝縮器10、11、12が設置されており、重縮合反応により発生した留出エチレングリコールはここで凝縮され、それぞれ循環エチレングリコール貯槽13、14、15に蓄えられるとともに、循環エチレングリコールとして再び湿式凝縮器10、11、12に送られ、重縮合反応器からの留出エチレングリコールを凝縮させるための噴霧液として使用される。
【0027】
なおそれぞれの湿式凝縮器は配管により真空源に接続している。なかでも特に後期の重縮合反応器9では高真空度が要求される。重縮合反応器9に付帯する湿式凝縮器12での留出エチレングリコール中に含まれる水等の低沸点成分の蒸気圧に起因する圧力損失や、飛沫同伴して発生するポリエステル低重合体の各装置や配管への付着を防止する目的で、製品ポリエステル中の構成成分量に等しいエチレングリコールに等しい量以下であって水分率が0.5%以下のエチレングリコール16を循環エチレングリコール貯槽15に添加するのも好ましい。
【0028】
循環エチレングリコール貯槽15では液面高さが一定になるように、貯槽内の液が抜き出される。抜き出した液は循環エチレングリコール貯槽14に送られる。ここでその抜き出した液は、重縮合反応器8で発生した留出エチレングリコールと合わせて湿式凝縮器11の噴霧液として用いられる。その後、循環エチレングリコール貯槽14の液面高さが一定となるように貯槽内の液が抜き出され、循環エチレングリコール貯槽13に送られる。そして重縮合反応器7で発生した留出エチレングリコールと合わせて湿式凝縮器10の噴霧液として用いられる。さらにその後、循環エチレングリコール貯槽13の液面高さが一定となるように貯槽内の液を抜き出し、留出エチレングリコール貯槽6に送られる。
【0029】
ここで、湿式凝縮器10、11に対応する循環エチレングリコール貯槽13、14が循環エチレングリコール貯槽13の1槽に統一されていれば上記の操作は一回のみとなる。重縮合反応器が4槽以上ある場合には上記の操作を繰り返すことになる。また、本発明は主としてエステル化反応、特にエステル化反応装置に設置した精留塔に関するものであるので、重縮合反応器は例示のものに限定されることはない。例えば特開2004−2901号公報、特開2001−40080号公報、特開2000−136247号公報、特開2000−239368号公報、特開平10−95843号公報などで提示された重縮合反応器に置き換えても一向に差し支えない。また通常使われる竪型完全混合槽型重縮合器、横型重縮合器を用いても問題ない。
【0030】
エチレングリコール貯槽6に集められた留出エチレングリコールは、スラリー混合機3にテレフタル酸1とともに供給される。この時、エチレングリコールとテレフタル酸のモル比が常に一定になるように制御される。この制御系はエチレングリコールを基準にしてテレフタル酸を比例制御してもよいし、テレフタル酸を基準にしてエチレングリコールを比例制御してもよい。製品ポリエステルの生産量をできるかぎり一定に保つためには、テレフタル酸の供給量を基準にしてエチレングリコールを比例制御してモル比を一定に保つことが好ましい。図1に示した設備概念図と同様の理由により、これらの手法によりエステル交換反応に供するジオール化合物と芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体のモル比(ジオール化合物/芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体)を1.15以上にすることが本発明においては必要である。1.15未満の場合には良好なスラリーとすることができないので好ましくない。またこの比が1.15以上であると良好なスラリーとすることができ、エステル(交換)化反応が安定するので、得られるポリエステルの固有粘度、色調、ジエチレングリコール量等の物性のばらつきが小さくなり好ましい。なおこの比を1.15以上に保つためには、上述のようにスラリー混合機3に供給されるテレフタル酸の供給量を基準にしてエチレングリコールを比例制御する方法が通常採用される。留出エチレングリコール貯槽6からの留出エチレングリコール中には大きな異物やポリマーの変性物を含むことがあるので、これらを除去するために留出エチレングリコール貯槽6からスラリー混合機3の間にフィルターを設置することが好ましい。また、スラリー混合機3には緊急用として別のエチレングリコール供給ライン2を設置しておくことが望ましい。また留出エチレングリコール貯槽6とスラリー混合機3の間にバッファーとしてエチレングリコール貯槽を設置することは一向に差し支えない。この場合には、スラリー混合機3でのエチレングリコールとテレフタル酸のモル比を一定にするために、新たに設置したエチレングリコール貯槽の出側の流量を制御することになる。
【0031】
スラリー混合機3とエステル化反応器A 4−1の間にスラリー貯槽を設けておくことも一向に差し支えない。スラリー混合機では連続的又は不連続的に、エチレングリコール/テレフタル酸のモル比が一定になるようにスラリーを製造する。そして、そのモル比が一定に保たれたスラリーをスラリー貯槽に貯蔵しておき、一定量でエステル化反応装置に連続的に供給することが好ましい。
【0032】
ここで、請求項1にある「エステル化反応に供するジオール化合物と芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体のモル比」とは「スラリー混合機3からエステル化反応器A 4−1に供給されるジオール化合物と精留塔A 5−1下部からエステル化反応器に戻される回収エチレングリコールA 19−1とを合計した量」と「スラリー混合機3からエステル化反応器A 4−1に供給される芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体」の比である。
【0033】
また、請求項4にある「エステル化反応装置に供するジオール化合物の単位時間当たりの供給量W1」とはスラリー混合機3からエステル化反応装置に供給されるスラリー中に含まれるジオール化合物の量に等しく、「エステル化反応装置に供する芳香族ジカルボン酸の単位時間当たりの供給量W2」とはスラリー混合機3からエステル化反応装置に供給されるスラリー中に含まれる芳香族ジカルボン酸の量に等しい。
【0034】
図3は本発明を説明する更に別の概念図の一つである。図3の設備は図1の設備に比べてエステル化反応装置(エステル化反応器、精留塔)が2組あることに特徴がある。またエステル化反応器、精留塔の組数は2組に限定されるものではなく必要に応じて2組以上とすることができる。
【0035】
図3において、テレフタル酸1と、エチレングリコール2及び留出エチレングリコール貯槽6からのエチレングリコールを合わせたエチレングリコールを、エチレングリコール/テレフタル酸のモル比を一定にしてスラリー混合機3に供給して撹拌混合を行いスラリーとする。このスラリーをエステル化反応器A 4−1に送る。エステル化反応器A 4−1では撹拌下240〜295℃、常圧〜0.5MPaの加圧下の条件にてエステル化反応を行う。ついで得られた反応生成物20−1をエステル化反応器B 4−2に送り、ポリエステル先駆体20−2を製造する。エステル化反応器B 4−2では撹拌下240〜295℃、常圧〜0.5MPaの加圧下の条件にてさらにエステル化反応を行う。エステル化反応により反応生成物やポリエステル先駆体と同時に水が生成する。これら水、テレフタル酸、エチレングリコール、反応生成物及びポリエステル先駆体のうち低沸点成分は精留塔A 5−1および精留塔B 5−2に留出する。通常水は塔頂より分離され、エチレングリコールが精留塔の下部から回収できるように条件を設定する。さらに具体的にはエステル化反応器B 4−2の温度はエステル化反応器A 4−1の温度以下に設定しても一向に差し支えないが、省エネルギーの観点からはエステル化反応器A 4−1の温度と同等かそれ以上に設定することが好ましい。その結果エステル化反応器から精留塔に水、テレフタル酸、エチレングリコール、反応生成物及びポリエステル先駆体よりなる群中からエチレングリコールを含む成分が精留塔に留出される。エステル化反応器4−1及び4−2で反応により生成した水は各々のエステル化反応装置に設置された精留塔A 5−1及び精留塔B 5−2の塔頂より留出水として分離される。エチレングリコールは精留塔A 5−1及び精留塔B 5−2の下部より缶出液として分離され、予め設定した所定量を留出エチレングリコールA 18−1および留出エチレングリコールB 18−2として留出エチレングリコール貯槽6に取り出し、残余をエステル化反応器A 4−1及びエステル化反応器B 4−2に戻す(回収エチレングリコールA 19−1及びB 19−2)。エステル化反応器B 4−2内でほぼエステル化反応が完了したポリエステル低重合体(ポリエステル先駆体)20−2を次工程の重縮合反応器に送る。ポリエステル先駆体はその重合度が2〜10であることが生産性及び得られるポリエステルの品質の点から好ましい。より好ましい重合度範囲は4〜8である。先駆体の重合度を2〜10にすることは、精留塔からのエチレングリコールの取り出し量を一定量となるように制御することにより達成できる。ここでエステル化反応装置が2組になったことにより条件設定の幅が広がり、ポリエステル先駆体を安定して製造することができる。具体的には2組のエステル化反応装置内の温度と圧力を変えることが容易にできるようになる。
【0036】
また図1に示した設備概念図と同様の理由により、この際にエステル化反応装置に設けた精留塔から該ジオール化合物を取り出す単位時間当たりの量Wが上記式(1)を満たすように設定することが好ましい。さらに好ましくは上記式(2)を満たすように設定する。
【0037】
重縮合反応器7、8、9では、250〜300℃、0.05〜60kPaの温度・圧力の範囲で反応を行い、ポリエステルポリマー(ポリエチレンテレフタレート17)を製造する。これらの重縮合反応器にはそれぞれ湿式凝縮器10、11、12が設置されており、重縮合反応により発生した留出エチレングリコールはここで凝縮され、それぞれ循環エチレングリコール貯槽13、14、15に蓄えられるとともに、循環エチレングリコールとして再び湿式凝縮器10、11、12に送られ、重縮合反応器からの留出エチレングリコールを凝縮させるための噴霧液として使用される。
【0038】
なおそれぞれの湿式凝縮器は配管により真空源に接続している。なかでも特に後期の重縮合反応器9では高真空度が要求される。重縮合反応器9に付帯する湿式凝縮器12での留出エチレングリコール中に含まれる水等の低沸点成分の蒸気圧に起因する圧力損失や、飛沫同伴して発生するポリエステル低重合体の各装置や配管への付着を防止する目的で、製品ポリエステル中の構成成分量に等しいエチレングリコールに等しい量以下であって水分率が0.5%以下のエチレングリコール16を循環エチレングリコール貯槽15に添加するのも好ましい。
【0039】
循環エチレングリコール貯槽15では液面高さが一定になるように、貯槽内の液が抜き出される。抜き出した液は循環エチレングリコール貯槽14に送られる。ここでその抜き出した液は、重縮合反応器8で発生した留出エチレングリコールと合わせて湿式凝縮器11の噴霧液として用いられる。その後、循環エチレングリコール貯槽14の液面高さが一定となるように貯槽内の液が抜き出され、循環エチレングリコール貯槽13に送られる。そして重縮合反応器7で発生した留出エチレングリコールと合わせて湿式凝縮器10の噴霧液として用いられる。さらにその後、循環エチレングリコール貯槽13の液面高さが一定となるように貯槽内の液が抜き出され、留出エチレングリコール貯槽6に送られる。
【0040】
ここで、湿式凝縮器10、11に対応する循環エチレングリコール貯槽13、14が循環エチレングリコール貯槽13の1槽に統一されていれば上記の操作は一回のみとなる。重縮合反応槽が4槽以上ある場合には上記の操作を繰り返すことになる。また、本発明は主としてエステル化反応、特にエステル化反応装置に設置した精留塔に関するものであるので、重縮合反応器は例示のものに限定されることはない。例えば特開2004−2901号公報、特開2001−40080号公報、特開2000−136247号公報、特開2000−239368号公報、特開平10−95843号公報などで提示された重縮合反応器に置き換えても一向に差し支えない。また通常使われる竪型完全混合槽型重縮合器、横型重縮合器を用いても問題ない。
【0041】
エチレングリコール貯槽6に集められた留出エチレングリコールは、スラリー混合機3にテレフタル酸1とともに供給される。この時、エチレングリコールとテレフタル酸のモル比が常に一定になるように制御される。この制御系はエチレングリコールを基準にしてテレフタル酸を比例制御してもよいし、テレフタル酸を基準にしてエチレングリコールを比例制御してもよい。製品ポリエステルの生産量をできるかぎり一定に保つためには、テレフタル酸の供給量を基準にしてエチレングリコールを比例制御してモル比を一定に保つことが好ましい。図1に示した設備概念図と同様の理由により、これらの手法によりエステル交換反応に供するジオール化合物と芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体のモル比(ジオール化合物/芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体)を1.15以上にすることが本発明においては必要である。1.15未満の場合には良好なスラリーとすることができないので好ましくない。またこの比が1.15以上であると良好なスラリーとすることができ、エステル(交換)化反応が安定するので、得られるポリエステルの固有粘度、色調、ジエチレングリコール量等の物性のばらつきが小さくなり好ましい。なおこの比を1.15以上に保つためには、上述のようにスラリー混合機3に供給されるテレフタル酸の供給量を基準にしてエチレングリコールを比例制御する方法が通常採用される。留出エチレングリコール貯槽6からの留出エチレングリコール中には大きな異物やポリマーの変性物を含むことがあるので、これらを除去するために留出エチレングリコール貯槽6からスラリー混合機3の間にフィルターを設置することが好ましい。また、スラリー混合機3には緊急用として別のエチレングリコール供給ライン2を設置しておくことが望ましい。また留出エチレングリコール貯槽6とスラリー混合機3の間にバッファーとしてエチレングリコール貯槽を設置することは一向に差し支えない。この場合には、スラリー混合機3でのエチレングリコールとテレフタル酸のモル比を一定にするために、新たに設置したエチレングリコール貯槽の出側の流量を制御することになる。
【0042】
スラリー混合機3とエステル交換反応器の間にスラリー貯槽を設けておくことも一向に差し支えない。スラリー混合機では連続的又は不連続的にエチレングリコール/テレフタル酸のモル比が一定になるようにスラリーを製造する。そして、そのモル比が一定に保たれたスラリーをスラリー貯槽に貯蔵しておき、一定量でエステル化反応装置に連続的に供給することが好ましい。
【0043】
ここで、請求項1にある「エステル化反応に供するジオール化合物と芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体のモル比」とは「スラリー混合機3からエステル化反応器A 4−1に供給されるジオールと精留塔A 5−1の下部からエステル化反応器A 4−1に戻されるジオール化合物19−1とを合計した量」と「スラリー混合機3からエステル化反応装置A 4−1に供給される芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体」の比である。
【0044】
また、請求項4にある「エステル化反応装置に供するジオール化合物の単位時間当たりの供給量W1」とはスラリー混合機3からエステル化反応装置に供給されるスラリー中に含まれるジオール化合物の量に等しく、「エステル化反応装置に供する芳香族ジカルボン酸の単位時間当たりの供給量W2」とはスラリー混合機3からエステル化反応装置に供給されるスラリー中に含まれる芳香族ジカルボン酸の量に等しい。
【0045】
本発明のポリエステルの製造方法を実施するにあたって、芳香族ジカルボン酸を用いる際にはエステル化反応は芳香族ジカルボン酸自身が触媒としての働きをするので、通常新たに触媒を添加する必要はない。反応速度を上げたい場合など必要に応じて触媒を添加しても良い。一方芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体を用いる際には、エステル化反応において触媒を添加することが通常行われる。またいずれの原料を用いた際にも重縮合段階においては触媒が用いられる。その重縮合触媒は、通常のポリエステル製造の際に用いられる触媒を本発明の製造方法においても用いることができる。具体的にはアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物等が挙げられ、より詳細には三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム、酢酸チタン、テトラアルコキシチタン等を挙げることができる。
【0046】
さらに本発明に用いるチタン化合物の重縮合触媒としては、下記一般式(I)で表されるチタン化合物、又は下記一般式(I)で表されるチタン化合物及び下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸若しくはその無水物とを反応させた生成物からなる群から選ばれた少なくとも一種を含むチタン化合物成分と、下記一般式(III)により表されるリン化合物から選ばれた少なくとも一種を含むリン化合物とを、チタン原子に対するリン原子のグラム当量比(P/Ti)が1〜15となる範囲で用いることもできる。
【0047】
【化1】

[上記式中、R、R、R及びRはそれぞれ同一若しくは異なって、アルキル基又はフェニル基を示し、mは1〜4の整数を示し、かつmが2、3又は4の場合、2個、3個又は4個のR及びRは、それぞれ同一であっても異なっていてもどちらでもよい。]
【0048】
【化2】

[上記式中、nは2〜4の整数を表わす。]
【0049】
【化3】

[上記式中、R、R及びRは、同一又は異なって炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、Xは、−CH−又は―CH(Y)―を示す(Yは、ベンゼン環を示す)。]
【0050】
ここで、一般式(I)で表されるチタン化合物としては、具体的にはテトライソプロポキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラフェノキシチタン、オクタアルキルトリチタネート、又はヘキサアルキルジチタネートなどが好ましく用いられる。
【0051】
また、該チタン化合物と反応させる一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物としては、フタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、若しくはピロメリット酸又はこれらの無水物が好ましく用いられる。
【0052】
上記チタン化合物と芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させる場合には、溶媒に芳香族多価カルボン酸又はその無水物の一部又は全部を溶解し、この混合液にチタン化合物を滴下し、0〜200℃の温度で少なくとも30分間、好ましくは30〜150℃の温度で40〜90分間加熱することによって行われる。この際の反応圧力については特に制限はなく、常圧で十分である。
【0053】
なお、芳香族多価カルボン酸又はその無水物を溶解させる溶媒としては、エタノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ベンゼン又はキシレン等から所望に応じて1種以上を選ぶことができる。
【0054】
ここで、チタン化合物と芳香族多価カルボン酸又はその無水物との反応モル比には特に限定はないが、チタン化合物の割合が高すぎると、得られるポリエステルの色調が悪化したり、軟化点が低下したりすることがあり、逆にチタン化合物の割合が低すぎると重合反応が進みにくくなることがある。このため、チタン化合物と芳香族多価カルボン酸又はその無水物との反応モル比は、2/1〜2/5の範囲内とすることが好ましい。またこれ以外の条件によっても上記チタン化合物と芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させることができる条件であれば特に限定はない。
【0055】
本発明において重合触媒として用いる重合触媒系は、上記のチタン化合物成分と、前記一般式(III)により表されるリン化合物との未反応混合物から実質的になるものであり、該リン化合物としては、カルボメトキシメタンホスホン酸、カルボエトキシメタンホスホン酸、カルボプロポキシメタンホスホン酸、カルボプトキシメタンホスホン酸、カルボメトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、カルボエトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、カルボプロトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸若しくはカルボブトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸のジメチルエステル類、ジエチルエステル類、ジプロピルエステル類又はジブチルエステル類から選ばれることが好ましい。
【0056】
上記のリン化合物は、通常安定剤として使用されるリン化合物に比較して、チタン化合物又はチタン化合物成分(以下「チタン化合物等」と略称する。)との反応が比較的緩やかに進行するので、用いるリン化合物とチタン化合物等の量比と添加量を適正範囲に保つことにより、ポリエステル合成反応中におけるチタン化合物等の触媒活性持続時間が長く、結果として該チタン化合物のポリエステルへの添加量を少なくすることができ、また、本発明のように触媒に対し多量に安定剤を添加する場合であっても、ポリエステルの熱安定性を損ない難い特性を有している。
【0057】
上述のリン化合物とチタン化合物の量比は、チタン原子に対するリン原子のグラム当量比(P/Ti)が1以上15以下であり、好ましくは1以上13以下、より好ましくは1以上10以下である。この値が1未満の場合、得られるポリエステルの色調が黄味を帯びることがある。また15を越えるとポリエステルの生産性が劣り、所望の固有粘度のポリエステルを得ることができないこともある。また、添加量はチタン化合物等に含まれるチタン原子のミリグラム原子量値の、ポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体単位の総モル量値に対する百分比で表した時に2以上15以下であり、好ましくは2以上12以下であり、より好ましくは2以上10以下である。この値が2未満であるとポリエステルの生産性が劣り、また所望の固有粘度のポリエステルを得ることができないこともある。この値が15を越えると得られるポリエステルの熱安定性が不十分になり、このポリエステルを成形加工、例えば溶融紡糸、溶融フィルム成形、溶融ボトル成形などに供すると固有粘度が著しく低下して所望の機械的特性を有する成形加工製品が得られないことがある。
【0058】
又一方、本発明に用いるチタン化合物の重縮合触媒としては、下記一般式(I)で表されるチタン化合物と下記一般式(IV)で表されるリン化合物とをチタン原子に対するリン原子のグラム当量比(P/Ti)が1〜4となる範囲の組成で反応せしめたチタン/リン反応物を用いることもできる。
【0059】
【化4】

[上記式中、R、R、R及びRはそれぞれ同一若しくは異なって、アルキル基又はフェニル基を示し、mは1〜4の整数を示し、かつmが2、3又は4の場合、2個、3個又は4個のR及びRは、それぞれ同一であっても異なっていてもどちらでもよい。]
【0060】
【化5】

[上記式中、Rは炭素数2〜18のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であり、pは1又は2であって、pが1の時にqは0又は1、pが2の時にqは0である。]
【0061】
ここでチタン原子に対するリン原子のグラム当量比(P/Ti)が1より小さい場合、得られるポリエステルの色調が不良になり、かつその耐熱性が低下することがあり好ましくなく、4より大きい場合、ポリエステル生成反応に対する触媒活性が不十分になり好ましくない。チタン原子に対するリン原子のグラム当量比(P/Ti)は1.2〜3.5の範囲が好ましく、1.5〜3.0の範囲が更に好ましい。
【0062】
また、チタン化合物成分(I)とリン化合物成分(IV)との触媒調製は、グリコール中で加熱反応されている必要がある。グリコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等が挙げられる。又はこれらと他の化合物の混合溶媒であっても良い。具体的な反応方法としては例えばリン化合物(IV)からなる成分と、エチレングリコール又はエチレングリコールと他の化合物の混合溶液とを混合して、リン化合物成分の一部又は全部を溶媒中に溶解し、この混合液にチタン化合物成分(I)又はその溶液を滴下し、反応系を0℃〜200℃の温度に30分間以上、好ましくは60〜150℃の温度に40〜90分間、加熱することによって行われる。この反応において、反応圧力については格別の制限はなく、通常常圧下で行われる。
【0063】
ここで上記一般式(I)で表されるチタン化合物としては例えば、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラエトキシドなどのチタンテトラアルコキシドや、オクタアルキルトリチタネート、ヘキサアルキルジチタネート、アルキルチタネート等を挙げることができる。
【0064】
また上記式(IV)で表されるリン化合物としては式中のqが0の場合は、例えば、フェニルホスホン酸、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アントリルホスホン酸、2−カルボキシフェニルホスホン酸、3−カルボキシフェニルホスホン酸、4−カルボキシフェニルホスホン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸等を挙げることができるが、中でもモノアリールホスホン酸が好ましい。
【0065】
また、qが1の場合は例えば、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノトリメチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノヘキシルホスフェート、モノヘプチルホスフェート、モノノニルホスフェート、モノデシルホスフェート、モノドデシルホスフェート、モノフェニルホスフェート、モノベンジルホスフェート、モノ(4−ドデシル)フェニルホスフェート、モノ(4−メチルフェニル)ホスフェート、モノ(4−エチルフェニル)ホスフェート、モノ(4−プロピルフェニル)ホスフェート、モノ(4−ドデシルフェニル)ホスフェート、モノトリルホスフェート、モノキシリルホスフェート、モノビフェニルホスフェート、モノナフチルホスフェート、モノアントリルホスフェート等が挙げられる。
【0066】
上記一般式(I)で表されるチタン化合物は予め下記一般式(II)の多価カルボン酸及び/又はその無水物と反応させて使用する方法も好ましく用いられる。その場合、チタン化合物と多価カルボン酸及び/又はその無水物の反応モル比は2/1〜0.4/1の範囲が好ましい。特に好ましい範囲は1/1〜0.5/1である。
【0067】
【化6】

[上記式中、nは2〜4の整数を表わす。]
【0068】
上述したようなチタン化合物とリン化合物を適正な組成比で反応させたチタン/リン化合物を添加する量は、この化合物中に含まれるチタン原子のミリグラム原子量値の、ポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体単位の総モル量値に対する百分比で表した時に2以上40以下、好ましくは2以上35以下、より好ましくは2以上30以下である。この値が2未満であるとポリエステルの生産性が劣り、また所望の固有粘度のポリエステルを得ることができないこともある。この値が40を越えると得られるポリエステルの熱安定性が不十分になり、このポリエステルを成形加工、例えば溶融紡糸、溶融フィルム成形、溶融ボトル成形などに供すると固有粘度が著しく低下して所望の機械的特性を有する成形加工製品が得られないことがある。
【0069】
上記の2種の触媒系は上述の手法により製造した後は、他の通常用いられる公知のポリエステル触媒と同様の量を用い、同様の操作にてポリエステル重縮合触媒として用いることができる。
【実施例】
【0070】
以下に実施例をあげて本発明を具体的に説明する。なお、実施例中の各値は以下の方法に従って求めた。また実施例・比較例において、「部」とは重量で表した割合を示すものとする。
(a)固有粘度
一定時間ごとにサンプリングしたポリエステル0.6gをオルトクロロフェノール50ml中に加熱溶解させた後、室温に冷却した。得られたポリエステル溶液の粘度を、オストワルド式粘度管を用いて35℃の温度条件で測定した。得られた溶液粘度の値から当該ポリエステルの固有粘度を求めた。サンプル10点の測定を行い、平均値と標準偏差を求めた。
【0071】
(b)色調(L値及びb値)
一定時間ごとにサンプリングしたポリエステル試料を290℃、真空下で10分間溶融し、これをアルミニウム板上で厚さ3.0±1.0mmのプレートに成形後ただちに氷水中で急冷した。該プレートを160℃、1時間乾燥結晶化処理後、色差計調整用の白色標準プレート上に置き、プレート表面のハンターL値及びb値をミノルタ社製ハンター型色差計CR−200を用いて測定した。L値は明度を示し、その数値が大きいほど明度が高いことを示し、b値はその値が大きいほど黄着色の度合いが大きいことを示す。サンプル10点の測定を行い、平均値と標準偏差を求めた。
【0072】
(c)末端カルボキシル基濃度
Mauriceらの方法[Anal.Chim.Acta,22,p363(1960)]によって測定したポリエステル試料10gあたりの当量数(eq/T)である。一定時間ごとにサンプリングしたサンプル10点の測定を行い、平均値と標準偏差を求めた。
【0073】
(d)ポリエステル中のジエチレングリコール(DEG)含有量
抱水ヒドラジンを用いて一定時間ごとにサンプリングしたポリエステル試料を分解し、この分解生成物中のジエチレングリコールの含有量をガスクロマトグラフィー(ヒューレットパッカード社製HP6850)を用いて測定し、重量%で表した。サンプル10点の測定を行い、平均値と標準偏差を求めた。
【0074】
(e)繊度斑
ポリエステル試料を160℃で4時間乾燥後、通常の溶融紡糸法にて長繊維状に成形してツェルベーガーウースター社製のUSTER TESTER4型を用い400m/minの走行速度で測定した。紡糸開始1時間後、1日後と2日後の値を求めた。
【0075】
(f)染斑
上述の手法によりポリエステル試料を長繊維状に成形して12ゲージ丸編機で30cm長の筒編みとし、染料(テラシールブルーGFL)を用い、100℃、40分染色し、均染性を目視判定した。紡糸開始1時間後、1日後と2日後の値を求めた。
レベル1:均一に染色されており、染斑がほとんど認められない。
レベル2:縞状あるいは斑点状の染斑が少し認められる。
レベル3:縞状あるいは斑点状の染斑が一面に認められる。
【0076】
(g)厚み斑
ポリエステル試料を乾燥後、内容積1.5リットルの中空容器状に成形してボトル胴部から50mm×50mmの大きさに切り出した試料の重量から厚み(μm)を求めた。この測定を成形工程の一定時間ごとにサンプリングした10本のボトルについて行い、平均値と標準偏差を求めた。
【0077】
(h)ヘーズ
ポリエステル試料を乾燥後、内容積1.5リットルの中空容器状に成形した。成形工程の一定時間ごとにサンプリングした中空容器の胴部から50mm×50mmの大きさに切り出した試料について、日本電色工業製Color and color difference meter MODEL1001DPにて測定した。結果を%単位で示した。
【0078】
(i)重合度
エステル化反応装置の試料をサンプリングし、Mauriceらの方法[Anal.Chim.Acta,22,p363(1960)]によりカルボキシル末端基量を測定した。次にヒドロキシル末端基量は試料をヘキサフルオロイソプロパノールに溶解し、この溶液について13C−NMRを用いて定量した。さらに両方の末端基量から数平均分子量を求め、重合度に換算した。
【0079】
[実施例1]
図1のポリエステル製造設備において、1の配管からテレフタル酸を単位時間あたり100部と、留出エチレングリコール貯槽6からエチレングリコールを単位時間あたり45部とを、スラリー混合機3に連続して供給して良好なスラリーを作成した。一方、エステル化反応器内のエチレングリコール/テレフタル酸のモル比を1.6になるように予めエステル化反応器にエチレングリコールを供給しておき、スラリー混合機3からエステル化反応器A 4−1に連続してスラリーを供給した。次に270℃、常圧でスラリーをエステル化反応させて、副生する水を精留塔の塔頂からエステル化反応装置外へ取り出して平均重合度7のポリエステル先駆体を得た。この時、精留塔A 5−1の下部からエステル化反応装置外へのエチレングリコールの取り出し量を単位時間あたり1.5部とした。そして精留塔下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液をエステル化反応器A 4−1へ戻した。
【0080】
この時、上記式(1)の右辺は下記のよう計算できる。すなわち上記式(1)は下記のように表されるので、Wは以下のように計算できる。
【数1】

W=45−(7+1)×62×100/7/166=2.315(部/単位時間)
【0081】
このポリエステル先駆体に三酸化アンチモン0.044部と正燐酸0.001部と濃度10wt%の二酸化チタンのエチレングリコールスラリー3.4部を加えた後、重縮合反応器に送った。重縮合反応器7で275℃、6.9kPa、重縮合反応器8で280℃、0.7kPa、重縮合反応器9で284℃、0.2kPaで反応させてポリエステルを得た。さらにこのポリエステルをストランド状に抜き出して水冷した後、チップ状にカットしてポリエステルチップとした。
【0082】
チップを乾燥後288℃で紡糸口金から溶融吐出し冷却固化した紡出糸条に油剤を付与した。必要に応じてインターレース付与装置でインターレースを付与した後、室温に設定した一対の引取りローラーを介して未延伸糸を一旦ワインダーに巻き取った。次いで得られた未延伸糸を延伸速度1400m/分で90℃に加熱した予熱ローラー及び220℃に設定した非接触式ヒーターを経て2.5倍の延伸倍率で延伸して長繊維を得た。ポリエステル及び長繊維の品質を表1に示す。
【0083】
[実施例2]
図2のポリエステル製造設備において、1の配管からテレフタル酸を単位時間あたり100部と、留出エチレングリコール貯槽6からエチレングリコールを単位時間あたり48部とを、スラリー混合機3に連続して供給して良好なスラリーを作成した。一方、エステル化反応器A 4−1内のエチレングリコール/テレフタル酸のモル比を1.65になるように予めエステル化反応器A 4−1にエチレングリコールを供給しておき、さらにスラリー混合機3からエステル化反応器A 4−1に連続してスラリーを供給した。次に270℃、0.04MPaの加圧下でスラリーをエステル化反応させて、引続いて反応生成物をエステル化反応器B 4−2に送り273℃、常圧でさらにエステル化反応させた。エステル化反応で副生する水を精留塔の塔頂からエステル化反応装置外へ取り出して平均重合度5のポリエステル先駆体を得た。この時、精留塔A 5−1の下部からエステル化反応装置外へのエチレングリコールの取り出し量を単位時間あたり2.7部とした。そして精留塔下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液をエステル化反応器A 4−1へ戻した。
【0084】
このポリエステル先駆体に酢酸アンチモン0.036部と濃度20wt%の二酸化チタンのエチレングリコールスラリー1.7部を加えた後、重縮合反応器に送った。重縮合反応器7で275℃、6.9kPa、重縮合反応器8で280℃、0.7kPa、重縮合反応器9で284℃、0.2kPaで反応させてポリエステルを得た。
【0085】
さらに、このポリエステルを冷却固化させることなく、溶融状態のままで紡糸口金から吐出し、冷却固化した紡出糸条に油剤を付与し、3300m/分の速度で引取った。この糸条を孔径1.8mmの圧空吹き出し孔を有するインターレースノズルを通過させつつ空気交絡を施した。さらに糸条を延伸倍率1.60、第一ヒーター前半部温度550℃、第一ヒーター後半部温度350℃で厚み9mmのウレタンディスクを仮撚ディスクとして用い、速度800m/分で延伸仮撚加工した。ポリエステル及び長繊維の品質を表1に示す。
【0086】
[実施例3]
図3のポリエステル製造設備において、1の配管からテレフタル酸を単位時間あたり100部と、留出エチレングリコール貯槽6からエチレングリコールを単位時下あたり53部とを、スラリー混合機3に連続して供給して良好なスラリーを作成した。一方、エステル化反応器4−1内のエチレングリコール/テレフタル酸のモル比を1.5になるように予めエステル化反応器A 4−1にエチレングリコールを供給しておき、スラリー混合機3からエステル化反応器A 4−1に連続してスラリーを供給した。次に265℃、0.02MPaの加圧下でスラリーをエステル化反応させてエステル化反応で副生する水を精留塔A 5−1の塔頂からエステル化反応装置外へ取り出して平均重合度3のポリエステル先駆体を得た。この時、精留塔A 5−1の下部からエステル化反応装置外へのエチレングリコールの取り出し量を単位時間あたり1.6部とした。そして精留塔下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液をエステル化反応器A 4−1へ戻した。引続いて反応生成物をエステル化反応器B 4−2に送り270℃、常圧でさらにエステル化反応させた。エステル化反応で副生する水を精留塔B 5−2の塔頂から系外へ取り出して平均重合度7のポリエステル先駆体を得た。この時、精留塔B 5−2の下部からのエチレングリコールの取り出し量を単位時間あたり5.0部とした。そして精留塔下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液をエステル化反応器B 4−2へ戻した。
【0087】
このポリエステル先駆体に三酸化アンチモン0.040部と濃度20wt%の二酸化チタンのエチレングリコールスラリー1.7部を加えた後、重縮合反応器に送った。重縮合反応器7で275℃、6.9kPa、重縮合反応器8で280℃、0.7kPa、重縮合反応器9で284℃、0.2kPaで反応させてポリエステルを得た。
【0088】
さらにこのポリエステルを冷却固化させることなく溶融状態のままで紡糸口金から吐出し冷却固化した紡出糸条に油剤を付与し、3300m/分の速度で引取る。この糸条を孔径1.8mmの圧空吹き出し孔を有するインターレースノズルを通過させつつ空気交絡を施した。さらに糸条を、延伸倍率1.60、第一ヒーター前半部温度550℃、第一ヒーター後半部温度350℃で厚み9mmのウレタンディスクを仮撚ディスクとして用い、速度800m/分で延伸仮撚加工した。ポリエステル及び長繊維の品質を表1に示す。
【0089】
[実施例4]
図1のポリエステル製造設備において、1の配管からテレフタル酸を単位時間あたり100部と、留出エチレングリコール貯槽6からエチレングリコールを単位時間あたり52部とを、スラリー混合機3に連続して供給して良好なスラリーを作成した。一方、エステル化反応器内のエチレングリコール/テレフタル酸のモル比を1.5になるように予めエステル化反応器にエチレングリコールを供給しておき、スラリー混合機3からエステル化反応器A 4−1に連続してスラリーを供給した。次に275℃、常圧でスラリーをエステル化反応させて、副生する水を精留塔の塔頂からエステル化反応装置外へ取り出して平均重合度6のポリエステル先駆体を得た。この時、精留塔A 5−1の下部からエステル化反応装置外へのエチレングリコールの取り出し量を単位時間あたり8.4部とした。そして精留塔下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液をエステル化反応装器A 4−1へ戻した。
【0090】
このポリエステル先駆体に三酸化アンチモン0.044部と正燐酸0.001部と濃度10wt%の二酸化チタンのエチレングリコールスラリー3.4部を加えた後、重縮合反応器に送った。重縮合反応器7で275℃、6.9kPa、重縮合反応器8で280℃、0.7kPa、重縮合反応器9で284℃、0.2kPaで反応させてポリエステルを得た。さらにこのポリエステルをストランド状に抜き出して水冷した後、チップ状にカットしてポリエステルチップとした。チップを乾燥後288℃で紡糸口金から溶融吐出し冷却固化した紡出糸条に油剤を付与した。必要に応じてインターレース付与装置でインターレースを付与した後、室温に設定した一対の引取りローラーを介して未延伸糸を一旦ワインダーに巻き取った。次いで得られた未延伸糸を延伸速度1400m/分で90℃に加熱した予熱ローラーおよび220℃に設定した非接触式ヒーターを経て2.5倍の延伸倍率で延伸して長繊維を得た。ポリエステル及び長繊維の品質を表1に示す。
【0091】
[実施例5]
図2のポリエステル製造設備において、1の配管からテレフタル酸を単位時間あたり100部と、留出エチレングリコール貯槽6からエチレングリコールを単位時間あたり55部とを、スラリー混合機3に連続して供給して良好なスラリーを作成した。一方、エステル化反応器内のエチレングリコール/テレフタル酸のモル比を1.60になるように予めエステル化反応器にエチレングリコールを供給しておき、スラリー混合機3からエステル化反応器A 4−1に連続してスラリーを供給した。次に272℃、0.04MPaの加圧下でスラリーをエステル化反応させて、引続いて反応生成物をエステル化反応器B 4−2に送り276℃、常圧でさらにエステル化反応させた。エステル化反応で副生する水を精留塔の塔頂からエステル化反応装置外へ取り出して平均重合度6のポリエステル先駆体を得た。この時、精留塔A 5−1の下部からエステル化反応装置外へのエチレングリコールの取り出し量を単位時間あたり11.0部とした。そして精留塔下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液をエステル化反応器A 4−1へ戻した。
【0092】
このポリエステル先駆体に酢酸アンチモン0.036部と濃度20wt%の二酸化チタンのエチレングリコールスラリー1.7部を加えた後、重縮合反応器に送った。重縮合反応器7で275℃、6.9kPa、重縮合反応器8で280℃、0.7kPa、重縮合反応器9で284℃、0.2kPaで反応させてポリエステルを得た。
【0093】
さらにこのポリエステルを冷却固化させることなく溶融状態のままで紡糸口金から吐出し冷却固化した紡出糸条に油剤を付与し、3300m/分の速度で引取る。この糸条を孔径1.8mmの圧空吹き出し孔を有するインターレースノズルを通過させつつ空気交絡を施した。さらに糸条を延伸倍率1.60,第一ヒーター前半部温度550℃,第一ヒーター後半部温度350℃で厚み9mmのウレタンディスクを仮撚ディスクとして用い、速度800m/分で延伸仮撚加工した。ポリエステル及び長繊維の品質を表1に示す。
【0094】
[実施例6]
・チタン化合物の調製
エチレングリコール919部と酢酸10部とを混合して、この混合物にチタンテトラブトキシド71部をゆっくり添加してチタン化合物の透明なエチレングリコール溶液を調製した。この溶液のチタン濃度を、蛍光X線を用い測定したところ、1.02%であった。
【0095】
・リン化合物の調製
エチレングリコール537部を攪拌しながら100℃まで加熱した。その温度に達したとき、これにモノブチルホスフェート28.3部を添加して、加熱攪拌しながら溶解させた。
【0096】
・触媒の調製
前記のように調製したリン化合物液を70℃の温度にコントロールし、その中に前記のように調製したチタン化合物液をゆっくり添加した。添加量はチタン原子に対するリン原子のグラム当量比が2.0になるように調整した。そして70℃で1時間反応させた。得られた反応生成物はエチレングリコールに不溶であり微細な析出物として存在していた。
本反応析出物を分析するために、得られた反応溶液のサンプルを孔径5μmのフィルターで濾過してその反応析出物を固体として捕集し、これを水洗・乾燥した。この固形物をエネルギー分散型X線マイクロアナライザー(株式会社堀場製作所製EMAX−7000)で分析したところ、チタン濃度は17.0%,リン濃度は21.2%であり、チタン原子に対するリン原子のグラム当量比(P/Ti)は1.9であった。
【0097】
・ポリエステルの製造
図1のポリエステル製造設備において、1の配管からテレフタル酸を単位時間あたり100部と、留出エチレングリコール貯槽6からエチレングリコールを単位時間あたり45部とを、スラリー混合機3に連続して供給して良好なスラリーを作成した。一方、エステル化反応器内のエチレングリコール/テレフタル酸のモル比を1.6になるように予めエステル化反応器にエチレングリコールを供給しておき、スラリー混合機3からエステル化反応器A 4−1に連続してスラリーを供給した。次に270℃、常圧でスラリーをエステル化反応させて、副生する水を精留塔の塔頂からエステル化反応装置外へ取り出して平均重合度7のポリエステル先駆体を得た。この時、精留塔A 5−1の下部からエステル化反応装置外へのエチレングリコールの取り出し量を単位時間あたり1.5部とした。そして精留塔下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液をエステル化反応器A 4−1へ戻した。
【0098】
このポリエステル先駆体に前述のように調製した触媒の固形物0.0088と濃度10wt%の二酸化チタンのエチレングリコールスラリー3.4部を加えた後、重縮合反応器に送った。重縮合反応器7で275℃、6.9kPa、重縮合反応器8で280℃、0.7kPa、重縮合反応器9で284℃、0.2kPaで反応させてポリエステルを得た。さらにこのポリエステルをストランド状に抜き出して水冷した後、チップ状にカットしてポリエステルチップとした。
【0099】
チップを乾燥後288℃で紡糸口金から溶融吐出し冷却固化した紡出糸条に油剤を付与した。必要に応じてインターレース付与装置でインターレースを付与した後、室温に設定した一対の引取りローラーを介して未延伸糸を一旦ワインダーに巻き取った。次いで得られた未延伸糸を延伸速度1400m/分で90℃に加熱した予熱ローラー及び220℃に設定した非接触式ヒーターを経て2.5倍の延伸倍率で延伸して長繊維を得た。ポリエステル及び長繊維の品質を表1に示す。このポリエステル中のTi元素は13ppm,P元素は16ppmであった。
【0100】
[実施例7]
・チタン化合物の調製
無水トリメリット酸2部をエチレングリコール98部に混合したエチレングリコール溶液にテトラブトキシチタンを無水トリメリット酸に対するモル比が0.5となるように添加した。そしてこの混合物を常圧下で80℃に保持して60分間反応せしめ、その後室温まで冷却して生成物をその10倍量のアセトンで再結晶させ、析出物を濾過して取り出し、100℃で2時間乾燥して目的のチタン化合物を調製した。
【0101】
・ポリエステルの製造
図1のポリエステル製造設備において、1の配管からテレフタル酸を単位時間あたり100部と、留出エチレングリコール貯槽6からエチレングリコールを単位時間あたり45部とを、スラリー混合機3に連続して供給して良好なスラリーを作成した。一方、エステル化反応器内のエチレングリコール/テレフタル酸のモル比を1.6になるように予めエステル化反応器にエチレングリコールを供給しておき、スラリー混合機3からエステル化反応器A 4−1に連続してスラリーを供給した。次に270℃、常圧でスラリーをエステル化反応させて、副生する水を精留塔の塔頂から系エステル化反応装置へ取り出して平均重合度7のポリエステル先駆体を得た。この時、精留塔A 5−1の下部からエステル化反応装置外へのエチレングリコールの取り出し量を単位時間あたり1.5部とした。そして精留塔下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液をエステル化反応器A 4−1へ戻した。
【0102】
このポリエステル先駆体に前述のように調製した触媒の固形物0.018部とトリエチルホスホノアセテート0.040部と濃度10wt%の二酸化チタンのエチレングリコールスラリー3.4部を加えた後、重縮合反応器に送った。この触媒固形物のチタン原子に対するリン原子のグラム当量比(P/Ti)は5.0であった。引き続き重縮合反応器7で275℃、6.9kPa、重縮合反応器8で280℃、0.7kPa、重縮合反応器9で284℃、0.2kPaで反応させてポリエステルを得た。さらにこのポリエステルをストランド状に抜き出して水冷した後、チップ状にカットしてポリエステルチップとした。
【0103】
チップを乾燥後288℃で紡糸口金から溶融吐出し冷却固化した紡出糸条に油剤を付与した。必要に応じてインターレース付与装置でインターレースを付与した後、室温に設定した一対の引取りローラーを介して未延伸糸を一旦ワインダーに巻き取った。次いで得られた未延伸糸を延伸速度1400m/分で90℃に加熱した予熱ローラー及び220℃に設定した非接触式ヒーターを経て2.5倍の延伸倍率で延伸して長繊維を得た。ポリエステル及び長繊維の品質を表1に示す。ポリエステル中のTi元素は15ppm,P元素は48ppmであった。
【0104】
[比較例1]
実施例1において、精留塔下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液をエステル化反応器へ戻すことを精留塔A 5−1の下部からエステル化反応器A 4−1へ単位時間あたり1.9部を戻すことに変更した。更に精留塔下部からのエチレングリコールの取り出し量を単位時間あたり1.5部とすることを精留塔下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液を留出エチレングリコール貯槽6へ取り出すことに変更する以外は実施例1と全く同様にしてポリエステル及び長繊維を得た。ポリエステル及び長繊維の品質を表2に示す。
【0105】
[比較例2]
実施例2において、精留塔A 5−1の下部からのエチレングリコールの取り出し量を単位時間あたり2.7部とする代わりに、精留塔A 5−1の下部からエステル化反応器A 4−1へ単位時間あたり2.5部のエチレングリコールを戻した。また精留塔下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液をエステル化反応器A 4−1へ戻すことに代えて、精留塔下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液を留出エチレングリコール貯槽6へ取り出すことにした。これらの変更以外は実施例2と全く同様にしてポリエステル及び長繊維を得た。ポリエステル及び長繊維の品質を表2に示す。
【0106】
[比較例3]
実施例3において、精留塔A 5−1の下部からのエチレングリコールの取り出し量を単位時間あたり1.6部として、精留塔A 5−1の下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液をエステル化反応器A 4−1へ戻すことを、精留塔A 5−1の下部からのエチレングリコールを単位時間あたり1.5部エステル化反応器A 4−1へ戻し、精留塔A 5−1の下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液を留出エチレングリコール貯槽6に抜き出すことに変更する。更に精留塔B 5−2の下部からのエチレングリコールの取り出し量を単位時間あたり5.0部として精留塔B 5−2の下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液をエステル化反応器B 4−2へ戻すことを精留塔5−2の下部からエチレングリコールを単位時間あたり5.0部をエステル化反応器B 4−2へ戻し精留塔B 5−2の下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液をエチレングリコール貯槽6に抜き出すことに変更した。これらの変更以外は実施例3と全く同様にしてポリエステル及び長繊維を得た。ポリエステル及び長繊維の品質を表2に示す。
【0107】
[比較例4]
実施例5において、精留塔A 5−1の下部からエチレングリコールを全く取り出さないこと以外は実施例5と全く同様にしてポリエステルを合成した。固有粘度の低いポリエステルしか得られず長繊維に加工成形することができなかった。
【0108】
[実施例8]
図2のポリエステル製造設備において、1の配管からテレフタル酸を単位時間あたり100部と、留出エチレングリコール貯槽6からエチレングリコールを単位時間あたり48部とを、スラリー混合機3に連続して供給して良好なスラリーを作成した。一方、エステル化反応器内のエチレングリコール/テレフタル酸のモル比を1.55になるように予めエステル化反応器A 4−1にエチレングリコールを供給しておいてスラリー混合機3からエステル化反応器A 4−1に連続してスラリーを供給した。次に265℃、常圧でスラリーをエステル化反応させて、引続いて反応生成物をエステル化反応器B 4−2に送り270℃、常圧でさらにエステル化反応させた。エステル化反応で副生する水を精留塔の塔頂からエステル化反応装置外へ取り出して平均重合度6のポリエステル先駆体を得た。この時、精留塔A 5−1の下部からエステル化反応装置外へのエチレングリコールの取り出し量を単位時間あたり4.0部とした。そして精留塔下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液をエステル化反応器A 4−1へ戻した。
【0109】
このポリエステル先駆体にトリメチルリン酸のエチレングリコール溶液(リン濃度(リン元素が溶液に占める重量割合)5.5wt%)0.043部と二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液(二酸化ゲルマニウム濃度1wt%)0.95部とを加えた後、重縮合反応器に送った。重縮合反応器7で275℃、6.9kPa、重縮合反応器8で280℃、0.7kPa、重縮合反応器9で284℃、0.2kPaで反応させてポリエステルを得た。生成したポリエステルを重縮合反応器9の底部に設けた抜き出し口からストランド状に抜き出して水冷した後、チップ状にカットしてポリエステルチップとした。
【0110】
得られたポリエステルチップを攪拌流動式結晶化機で結晶化させた後、窒素流通下140℃で乾燥させ、続いて充填塔式固相重合塔に移し窒素流通下215℃で固相重合してチップ状のポリエチレンテレフタレートを製造した。
【0111】
得られたポリエチレンテレフタレートチップを真空乾燥機にて160℃で乾燥させた後、射出成形機(名機製作所社製M−100DM)にてシリンダー温度275℃、スクリュー回転数160rpm、一次圧時間3.0秒、金型温度10℃、サイクル30秒で外形約28mm、内径約19mm、長さ136mm、重量約56gの円筒状のプリフォームを射出成形した。
【0112】
引続いて、口栓部結晶化装置(赤外線ヒーター)にて160℃、1分間の条件でプリフォームのボトル口部相当部分のみを結晶化させた。その後、プリフォームの表面温度約110℃に赤外線ヒーターで予熱し、ブロー圧力5〜40kg/cm、金型温度150℃に設定したブロー成形機にて延伸ブロー成形し、胴部平均肉厚330μm、内容積約1.5リットルのボトルを成形した。固相重合後のポリエステル及びボトルの品質を表3に示す。
【0113】
[実施例9]
図1のポリエステル製造設備において、1の配管からテレフタル酸を単位時間あたり100部と、留出エチレングリコール貯槽6からエチレングリコールを単位時間あたり45部とを、スラリー混合機3に連続して供給して良好なスラリーを作成した。一方、エステル化反応器内のエチレングリコール/テレフタル酸のモル比を1.4になるように予めエステル化反応器A 4−1にエチレングリコールを供給しておいてスラリー混合機3からエステル化反応器A 4−1に連続してスラリーを供給した。次に265℃、常圧でスラリーをエステル化反応させて、副生する水を精留塔の塔頂からエステル化反応装置外へ取り出して平均重合度6のポリエステル先駆体を得た。この時、精留塔A 5−1の下部からエステル化反応装置外へのエチレングリコールの取り出し量を単位時間あたり1.3部とした。そして精留塔下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液をエステル化反応器A 4−1へ戻した。
【0114】
このポリエステル先駆体にトリメチルリン酸のエチレングリコール溶液(リン濃度(リン元素が溶液に占める重量割合)5.5wt%)0.038部と二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液(二酸化ゲルマニウム濃度1wt%)0.97部とを加えた後、重縮合反応器に送った。重縮合反応器7で275℃、6.9kPa、重縮合反応器8で278℃、0.7kPa、重縮合反応器9で280℃、0.2kPaで反応させてポリエステルを得た。生成したポリエステルを重縮合反応器9の底部に設けた抜き出し口からストランド状に抜き出して水冷した後、チップ状にカットしてポリエステルチップとした。
【0115】
得られたポリエステルチップを攪拌流動式結晶化機で結晶化させた後、窒素流通下140℃で乾燥させ、続いて充填塔式固相重合塔に移し窒素流通下215℃で固相重合してチップ状のポリエチレンテレフタレートを製造した。
【0116】
得られたポリエチレンテレフタレートチップを真空乾燥機にて160℃で乾燥させた後、射出成形機(名機製作所社製M−100DM)にてシリンダー温度275℃、スクリュー回転数160rpm、一次圧時間3.0秒、金型温度10℃、サイクル30秒で外形約28mm、内径約19mm、長さ136mm、重量約56gの円筒状のプリフォームを射出成形した。
【0117】
引続いて、口栓部結晶化装置(赤外線ヒーター)にて160℃,1分間の条件でプリフォームのボトル口部相当部分のみを結晶化させた。その後、プリフォームの表面温度約110℃に赤外線ヒーターで予熱し、ブロー圧力5〜40kg/cm、金型温度150℃に設定したブロー成形機にて延伸ブロー成形し、胴部平均肉厚330μm、内容積約1.5リットルのボトルを成形した。固相重合後のポリエステル及びボトルの品質を表3に示す。
【0118】
[実施例10]
図2のポリエステル製造設備において、1の配管からテレフタル酸を単位時間あたり100部と、留出エチレングリコール貯槽6からエチレングリコールを単位時間あたり52部とを、スラリー混合機3に連続して供給して良好なスラリーを作成した。一方、エステル化反応器内のエチレングリコール/テレフタル酸のモル比を1.65になるように予めエステル化反応器A 4−1にエチレングリコールを供給しておいてスラリー混合機3からエステル化反応器A 4−1に連続してスラリーを供給した。次に265℃、常圧でスラリーをエステル化反応させて、引続いて反応生成物をエステル化反応器B 4−2に送り268℃、常圧でさらにエステル化反応させた。エステル化反応で副生する水を精留塔の塔頂からエステル化反応装置外へ取り出して平均重合度6のポリエステル先駆体を得た。この時、精留塔A 5−1の下部からエステル化反応装置外へのエチレングリコールの取り出し量を単位時間あたり8.3部とした。そして精留塔下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液をエステル化反応器A 4−1へ戻した。
【0119】
このポリエステル先駆体にトリメチルリン酸のエチレングリコール溶液(リン濃度(リン元素が溶液に占める重量割合)5.5wt%)0.043部と二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液(二酸化ゲルマニウム濃度1wt%)0.95部とジエチレングリコール溶液0.2部を加えた後、重縮合反応器に送った。重縮合反応器7で275℃,6.9kPa、重縮合反応器8で280℃、0.7kPa、重縮合反応器9で284℃、0.2kPaで反応させてポリエステルを得た。生成したポリエステルを重縮合反応器9の底部に設けた抜き出し口からストランド状に抜き出して水冷した後、チップ状にカットしてポリエステルチップとした。
【0120】
得られたポリエステルチップを攪拌流動式結晶化機で結晶化させた後、窒素流通下140℃で乾燥させ、続いて充填塔式固相重合塔に移し窒素流通下215℃で固相重合してチップ状のポリエチレンテレフタレートを製造した。
【0121】
得られたポリエチレンテレフタレートチップを真空乾燥機にて160℃で乾燥させた後、射出成形機(名機製作所社製M−100DM)にてシリンダー温度275℃、スクリュー回転数160rpm、一次圧時間3.0秒、金型温度10℃,サイクル30秒で外形約28mm、内径約19mm、長さ136mm、重量約56gの円筒状のプリフォームを射出成形した。
【0122】
引続いて、口栓部結晶化装置(赤外線ヒーター)にて160℃、1分間の条件でプリフォームのボトル口部相当部分のみを結晶化させた。その後、プリフォームの表面温度約110℃に赤外線ヒーターで予熱し、ブロー圧力5〜40kg/cm、金型温度150℃に設定したブロー成形機にて延伸ブロー成形し、胴部平均肉厚330μm、内容積約1.5リットルのボトルを成形した。固相重合後のポリエステル及びボトルの品質を表3に示す。
【0123】
[実施例11]
・ポリエステルの製造
図1のポリエステル製造設備において、1の配管からテレフタル酸を単位時間あたり100部と、留出エチレングリコール貯槽6からエチレングリコールを単位時間あたり45部とを、スラリー混合機3に連続して供給して良好なスラリーを作成した。一方、エステル化反応器内のエチレングリコール/テレフタル酸のモル比を1.4になるように予めエステル化反応器A 4−1にエチレングリコールを供給しておいてスラリー混合機3からエステル化反応器A 4−1に連続してスラリーを供給した。次に265℃,常圧でスラリーをエステル化反応させて、副生する水を精留塔の塔頂からエステル化反応装置外へ取り出して平均重合度6のポリエステル先駆体を得た。この時、精留塔5の下部からエステル化反応装置外へのエチレングリコールの取り出し量を単位時間あたり1.3部とした。そして精留塔下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液をエステル化反応器A 4−1へ戻した。
【0124】
このポリエステル先駆体に実施例6にて調製した触媒の固形物0.0061部を加えた後、重縮合反応器に送った。重縮合反応器7で275℃、6.9kPa、重縮合反応器8で278℃、0.7kPa、重縮合反応器9で280℃、0.2kPaで反応させてポリエステルを得た。生成したポリエステルを重縮合反応器9の底部に設けた抜き出し口からストランド状に抜き出して水冷した後、チップ状にカットしてポリエステルチップとした。
【0125】
得られたポリエステルチップを攪拌流動式結晶化機で結晶化させた後、窒素流通下140℃で乾燥させ、続いて充填塔式固相重合塔に移し窒素流通下215℃で固相重合してチップ状のポリエチレンテレフタレートを製造した。
【0126】
得られたポリエチレンテレフタレートチップを真空乾燥機にて160℃で乾燥させた後、射出成形機(名機製作所社製M−100DM)にてシリンダー温度275℃、スクリュー回転数160rpm、一次圧時間3.0秒、金型温度10℃、サイクル30秒で外形約28mm、内径約19mm、長さ136mm、重量約56gの円筒状のプリフォームを射出成形した。
【0127】
引続いて、口栓部結晶化装置(赤外線ヒーター)にて160℃,1分間の条件でプリフォームのボトル口部相当部分のみを結晶化させた。その後、プリフォームの表面温度約110℃に赤外線ヒーターで予熱し、ブロー圧力5〜40kg/cm、金型温度150℃に設定したブロー成形機にて延伸ブロー成形し、胴部平均肉厚330μm、内容積約1.5リットルのボトルを成形した。固相重合後のポリエステル及びボトルの品質を表3に示す。なお、ポリエステル中のTi元素は9ppm,P元素は11ppmであった。
【0128】
[実施例12]
・ポリエステルの製造
図1のポリエステル製造設備において、1の配管からテレフタル酸を単位時間あたり100部と、留出エチレングリコール貯槽6からエチレングリコールを単位時間あたり45部とを、スラリー混合機3に連続して供給して良好なスラリーを作成した。一方、エステル化反応器内のエチレングリコール/テレフタル酸のモル比を1.4になるように予めエステル化反応器A 4−1にエチレングリコールを供給しておいてスラリー混合機3からエステル化反応器A 4−1に連続してスラリーを供給した。次に265℃,常圧でスラリーをエステル化反応させて、副生する水を精留塔の塔頂からエステル化反応装置外へ取り出して平均重合度6のポリエステル先駆体を得た。この時、精留塔5の下部からエステル化反応装置外へのエチレングリコールの取り出し量を単位時間あたり1.3部とした。そして精留塔下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液をエステル化反応器A 4−1へ戻した。
【0129】
このポリエステル先駆体に実施例7にて調製した触媒の固形物0.011部とトリエチルホスホノアセテート0.024部を加えた後、重縮合反応器に送った。この触媒固形物のチタン原子に対するリン原子のグラム当量比(P/Ti)は5.0であった。引き続き重縮合反応器7で275℃、6.9kPa、重縮合反応器8で278℃、0.7kPa、重縮合反応器9で280℃、0.2kPaで反応させてポリエステルを得た。生成したポリエステルを重縮合反応器9の底部に設けた抜き出し口からストランド状に抜き出して水冷した後、チップ状にカットしてポリエステルチップとした。
【0130】
得られたポリエステルチップを攪拌流動式結晶化機で結晶化させた後、窒素流通下140℃で乾燥させ、続いて充填塔式固相重合塔に移し窒素流通下215℃で固相重合してチップ状のポリエチレンテレフタレートを製造した。
【0131】
得られたポリエチレンテレフタレートチップを真空乾燥機にて160℃で乾燥させた後、射出成形機(名機製作所社製M−100DM)にてシリンダー温度275℃、スクリュー回転数160rpm、一次圧時間3.0秒、金型温度10℃、サイクル30秒で外形約28mm、内径約19mm、長さ136mm、重量約56gの円筒状のプリフォームを射出成形した。
【0132】
引続いて、口栓部結晶化装置(赤外線ヒーター)にて160℃,1分間の条件でプリフォームのボトル口部相当部分のみを結晶化させた。その後、プリフォームの表面温度約110℃に赤外線ヒーターで予熱し、ブロー圧力5〜40kg/cm、金型温度150℃に設定したブロー成形機にて延伸ブロー成形し、胴部平均肉厚330μm、内容積約1.5リットルのボトルを成形した。固相重合後のポリエステル及びボトルの品質を表3に示す。なお、ポリエステル中のTi元素は9ppm,P元素は29ppmであった。
【0133】
[比較例5]
実施例8において、精留塔A 5−1の下部からのエチレングリコールの取り出し量を単位時間あたり4.0部として、精留塔下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液をエステル化反応器A 4−1へ戻すことを、精留塔A 5−1の下部からのエチレングリコール4.0部をエステル化反応器A 4−1へ戻し、精留塔A 5−1の下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液を留出エチレングリコール貯槽6に取り出すことに変更する以外は実施例6と全く同様にして固相重合後のポリエステル及びボトルを得た。固相重合後のポリエステル及びボトルの品質を表3に示す。
【0134】
[比較例6]
実施例9において、精留塔5の下部からのエチレングリコールの取り出し量を単位時間あたり1.3部として、精留塔下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液をエステル化反応装置へ戻すことを、精留塔5の下部からのエチレングリコール1.3部をエステル化反応装置へ戻し、精留塔5の下部の液レベルが常時一定となるように余剰の精留塔下部液を留出エチレングリコール貯槽に取り出すことに変更する以外は実施例7と全く同様にして固相重合後のポリエステル及びボトルを得た。固相重合後のポリエステル及びボトルの品質を表3に示す。
【0135】
【表1】

【0136】
【表2】

【0137】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の製造方法により固有粘度、色調等の品質のばらつきの少ないポリエステルが製造することができる。故に、所望の物性を持つポリエステルを長時間安定に製造することができその工業的な意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明のポリエステルの連続製造方法を実施するための第一の概念図である。
【図2】本発明のポリエステルの連続製造方法を実施するための第二の概念図である。
【図3】本発明のポリエステルの連続製造方法を実施するための第三の概念図である。
【符号の説明】
【0140】
1 テレフタル酸
2 エチレングリコール
3 スラリー混合機
4−1 エステル化反応器A
4−2 エステル化反応器B
5−1 精留塔A
5−2 精留塔B
6 留出エチレングリコール貯槽
7〜9 重縮合反応器
10〜12 湿式凝縮器
13〜15 循環エチレングリコール貯槽
16 エチレングリコール
17 ポリエチレンテレフタレート
18−1 留出エチレングリコールA
18−2 留出エチレングリコールB
19−1 回収エチレングリコールA
19−2 回収エチレングリコールB
20−1 反応生成物
20−2 ポリエステル先駆体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール化合物とをエステル化反応器及び精留塔が設けられたエステル化反応装置にてエステル化反応させることによりポリエステル先駆体を形成し、次いでそのポリエステル先駆体を減圧下で重縮合させてポリエステルを連続的に製造する方法において、エステル化反応に供するジオール化合物と芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体のモル比(ジオール化合物/芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体)を1.15以上とし、精留塔へ留出する水、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体、ジオール化合物及びポリエステル先駆体よりなる群中からジオール化合物を含む成分の一定量を連続的にエステル化反応装置外へ取り出し、精留塔へ留出した残りの水、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体、ジオール化合物及びポリエステル先駆体よりなる群中からジオール化合物を含む成分をエステル化反応器へ戻すことを特徴とするポリエステルの連続製造方法。
【請求項2】
芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体がテレフタル酸でありジオール化合物がエチレングリコールである請求項1記載のポリエステルの連続製造方法。
【請求項3】
ポリエステル先駆体の重合度が2〜10である請求項1又は2記載のポリエステルの連続製造方法。
【請求項4】
エステル化反応装置に設けた精留塔からエステル化反応装置外へジオール化合物を取り出す単位時間当たりの量Wが下記式(1)を満たす請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエステルの連続製造方法。
W≦W1−(Dp+1)/Dp×(W2/M2)×M1 (1)
[上記数式において、エステル化反応装置に供するジオール化合物の単位時間当たりの供給量をW1、分子量をM1、エステル化反応装置に供する芳香族ジカルボン酸の単位時間当たりの供給量をW2、分子量をM2、ポリエステル先駆体の重合度をDpとする。]
【請求項5】
ポリエステル先駆体を減圧下で重縮合させる時の触媒として、下記一般式(I)で表されるチタン化合物、又は下記一般式(I)で表されるチタン化合物及び下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸若しくはその無水物とを反応させた生成物からなる群から選ばれた少なくとも一種を含むチタン化合物成分と、下記一般式(III)により表されるリン化合物から選ばれた少なくとも一種を含むリン化合物とを、チタン原子に対するリン原子のグラム当量比(P/Ti)が1〜15となる範囲で用いる請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエステルの連続製造方法。
【化1】

[上記式中、R、R、R及びRはそれぞれ同一若しくは異なって、アルキル基又はフェニル基を示し、mは1〜4の整数を示し、かつmが2、3又は4の場合、2個、3個又は4個のR及びRは、それぞれ同一であっても異なっていてもどちらでもよい。]
【化2】

[上記式中、nは2〜4の整数を表わす。]
【化3】

[上記式中、R、R及びRは、同一又は異なって炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、Xは、−CH−又は―CH(Y)−を示す(Yは、ベンゼン環を示す)。]
【請求項6】
ポリエステル先駆体を減圧下で重縮合させる時の触媒として、上記一般式(I)で表されるチタン化合物と下記一般式(IV)で表されるリン化合物を、チタン原子に対するリン原子のグラム当量比(P/Ti)が1〜4となる範囲でグリコール中にて加熱することにより得られた析出物を用いる請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエステルの連続製造方法。
【化4】

[上記式中、Rは炭素数2〜18のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であり、pは1又は2であって、pが1の時にqは0又は1、pが2の時にqは0である。]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−188576(P2006−188576A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−536(P2005−536)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】