説明

ポリエステルの製造方法

【課題】
製造バッチ内およびバッチ間で粒子が均一生成し、製糸・製膜時に安定した成形性および安定した品質のポリエステルの製造方法を提供する。
【解決手段】
アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物から選ばれた少なくとも一種の金属のグリコール可溶性塩を添加して微粒子を含有するポリエステルを製造するに際して、エステル化またはエステル交換反応終了から重縮合反応開始までの任意の段階で、金属のグリコール可溶性塩に起因する微粒子が存在し、ポリマの溶液ヘイズが生成するポリエステルの目標溶液ヘイズの0.3〜2.0倍であるポリエステルペレットを生成するポリエステル量に対して0.3〜5.0重量%添加するポリエステルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製糸・製膜時に安定した成形性および安定した品質を与えるポリエステルの製造方法に関し、さらに詳しくはバッチ重合において製造するに際して、バッチ内およびバッチ間で粒子を均一に生成させることができるポリエステルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレートで代表されるポリエステルは、その機能性の有用さから繊維やフィルム等の成形物として多目的に使用されている。これらポリエステルは、その成形性、例えば製糸、製膜時の延伸性や工程通過性等を向上させるため、無機粒子としてはチタン、シリカ、カオリン、タルク等を添加したポリエステルが提案されている。しかし、チタンでは隠蔽力が大きすぎること、その他粒子では粒子分散性が悪い、製造コストが高いこと等の問題があるため、高光沢度が要求される用途には殆ど実用化されていないのが現状である。
【0003】
一方、上述のように無機粒子をポリエステルに含有させるのではなく、ポリエステルの製造過程でアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を添加して微粒子を生成させる内部粒子法が知られている。その内部粒子法により得られるポリエステルは、無機粒子を添加したポリエステルと比較して、内部粒子量および内部粒子径のコントロールが難しいこと、内部粒子が粗大化し易く、均一生成させ難いことから、製糸、製膜時の工程通過性が十分でない、品質変動が大きい等、実用面での問題が多かった。
【0004】
これら問題に対して、内部粒子を微細化、均一化する方法としては、例えば、カルシウム化合物とリン化合物の添加タイミングや添加量を制限する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、添加するアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を水存在化の溶液として添加する方法が提案されている(特許文献2参照)。しかし、これら方法では内部粒子の微細化、均一化効果は不十分であった。
【0005】
さらには、粒状ポリエステルを反応系内に添加する方法が提案されている(特許文献3参照)。この方法は、添加した粒状ポリエステルが反応系内で溶融する際、気泡を発することによる分散効果で内部粒子が粗大化することなく微細化、均一化できるという方法である。内部粒子の生成には、特許文献1、2記載の金属化合物の添加条件等が重要であることはもちろんであるが、さらに重要なのは内部粒子が反応生成される前に存在している内部粒子の核である。バッチ重合の場合、重縮合反応装置内に前バッチのポリマが残存しているが、このポリマが内部粒子の生成に大きく関与する。残存しているポリマ中の内部粒子が分散核剤的な働きをして、生成される内部粒子の状態を決定するからである。それ故、残存している前バッチのポリマ中の内部粒子の状態や残存しているポリマの量は粒子生成の極めて重要な因子である。従って、単に粒状のポリエステルを添加するだけでは内部粒子の微細化には不十分であり、また、触媒、添加物等の製造条件やポリマ品質特性が全く異なる粒状のポリエステルを添加した場合には、逆に内部粒子が粗大粒子化したり、他のポリマ品質特性が悪化してしまうことも十分に考えられる方法である。
【特許文献1】特開昭55−131015号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開昭55−78017号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開昭62−161822号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、バッチ重合においてポリエステルを製造するに際して、バッチ内およびバッチ間で粒子を均一生成させ、製糸・製膜時に安定した成形性および安定した品質を得ることができるポリエステルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術では解決できなかった課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明のポリエステルの製造方法は、テレフタル酸またはその誘導体を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分にアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物から選ばれた少なくとも一種の金属のグリコール可溶性塩を添加して微粒子を含有するポリエステルを製造するに際して、エステル化またはエステル交換反応終了から重縮合反応開始までの任意の段階で、金属のグリコール可溶性塩に起因する微粒子を含有し、かつポリマの溶液ヘイズが製造するポリエステルの目標溶液ヘイズの0.3〜2.0倍であるポリエステルペレットを製造するポリエステル量に対して0.3〜5.0重量%添加するポリエステルの製造方法である。
【0009】
本発明のポリエステルの製造方法において、前記の製造するポリエステルおよび添加するポリエステルに含有するグリコール可溶性金属塩の金属元素がLi、Na、Ca、SrおよびBaから選ばれた少なくとも一種であり、かつ同一の金属元素であることが好ましい態様である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法により得られたポリエステルは、従来の製造方法で得られたポリエステルに比べて、製造バッチ内およびバッチ間で粒子が均一に生成し、製糸・製膜時に安定した成形性および安定した品質を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のポリエステルの製造方法の基本工程は、テレフタル酸またはその誘導体を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分にアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物から選ばれた少なくとも一種の金属のグリコール可溶性塩を添加して微粒子を含有するポリエステルを製造するに際して、エステル化またはエステル交換反応終了から重縮合反応開始までの任意の段階で、金属のグリコール可溶性塩に起因する微粒子が存在し、ポリマの溶液ヘイズが製造するポリエステルの目標溶液ヘイズの0.3〜2.0倍であるポリエステルペレットを製造するポリエステル量に対して0.3〜5.0重量%添加するものである。
【0012】
本発明においてポリエステルとは、テレフタル酸またはその誘導体とエチレングリコールを主たる構成成分とするが、その一部をイソフタル酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、5−ナトリウムイソフタル酸等の2官能性カルボン酸、またはその誘導体と置き換えてもよい。
【0013】
また、ジオール成分として、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキ酸ジメタンノール、1,4−ビスオキシエトキシベンゼン、ビスフェノールA、ポリオキシエチレングリコール等で置き換えてもよい。
【0014】
アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物のグリコール可溶性金属塩としては、Li、Na、Ca、SrおよびBaの酢酸塩、炭酸塩、水酸化物、塩化物等が挙げられる。これら金属化合物の添加量は、製造するポリエステルに対して0.03〜0.25重量%の範囲が好ましい。0.03重量%未満だと内部粒子量が少なくなるため粗大粒子化し易くなり、0.25重量%を越えても粗大粒子が生成し易くなり好ましくない。
【0015】
リン化合物としては、リン酸、亜リン酸、リン酸のメチルエステル、リン酸のフェニルエステル等が使用できるが、特にリン酸が好ましく用いられる。リン化合物を添加する場合は、添加するアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物のグリコール可溶性金属塩の量に対して0.04〜0.40倍の範囲の量を添加するのが好ましい。
【0016】
これらグリコール可溶性金属塩、リン化合物はテレフタル酸またはその誘導体とエチレングリコールとのエステル化反応系あるいはエステル交換反応系に添加するが、特にエステル化反応系には反応が実質的に終了した段階、即ち該反応率が95%以上の段階で添加すれば、内部粒子の粗大粒子化を抑制でき好ましい。
【0017】
内部粒子は、グリコール可溶性金属塩とエステル化またはエステル交換反応生成物とが反応して生成するため、グリコール可溶性金属塩の添加方法や添加する際のエステル化またはエステル交換反応生成物の反応率、温度等の条件設定は重要である。
【0018】
さらに、バッチ重合における内部粒子の生成には、重縮合反応装置内に残存している前バッチのポリマ中の内部粒子が分散核剤的な働きをするため重要となる。残存ポリマ中に存在する内部粒子の粒子径や量が変動すると生成した内部粒子の粒子径や量も変動してしまう。そのため、安定した内部粒子を得るためには、反応系内に核となる安定した内部粒子を存在させておく必要がある。
【0019】
本発明において、安定した内部粒子を存在させておく手段として、金属のグリコール可溶性塩に起因する微粒子を含有し、かつポリマの溶液ヘイズが製造するポリエステルの目標溶液ヘイズの0.3〜2.0倍であるポリエステルペレットを添加するが、そのポリエステルペレットは次の方法で製造することができる。
【0020】
すなわち、テレフタル酸またはその誘導体を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分にアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物、三酸化アンチモン等を添加して常法にてポリエステルを製造する。この添加するポリエステルペレットには、金属のグリコール可溶性塩に起因する微粒子を存在させる必要があり、さらには製造するポリエステルと添加するポリエステルペレットに含有するグリコール可溶性金属塩が同一の金属元素のものである方が、より内部粒子を安定的に生成させることができるので好ましい。添加するポリエステルペレットへのアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物のグリコール可溶性金属塩の添加量は、製造するポリエステルと同一の範囲であることが好ましく、さらには製造するポリエステルと同一の製造方法で製造したポリエステルペレットを用いるのが好ましい。
【0021】
また、添加するポリエステルペレットは、以下の方法により求められる溶液ヘイズ、すなわちポリマ中の内部粒子の分散状態、量等の生成状態の指標が、製造するポリエステルの目標溶液ヘイズの0.3〜2.0倍、好ましくは0.6〜1.5倍とする必要がある。0.3倍未満だと核となる内部粒子が少なすぎて粗大粒子化し、2.0倍を超えると内部粒子の生成量が多くなりすぎて、いずれの場合においても製造したポリエステルの溶液ヘイズが高く、また、バッチ間の溶液ヘイズバラツキが大きくなり好ましくない。
【0022】
この溶液ヘイズは、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の添加量、添加時の温度、重縮合反応時の減圧速度、金属化合物とリン化合物の添加間隔等の条件変更を単独または併用して任意に変更することができる。溶液ヘイズの目標は、ポリエステルの用途目的によって任意に設定することができるが、5〜40%の範囲であることが好ましい。5%未満だと内部粒子量が少なすぎて成形品の表面摩擦特性が高く、製糸、製膜時の工程通過性が悪くなり、40%を超えると内部粒子量が多くなりすぎて成形品の表面光沢性が低下し好ましくない。
【0023】
ポリエステルペレットの添加量は、製造するポリエステルの量に対して0.3〜5.0重量%、好ましくは0.6〜3.0重量%とする必要がある。0.3重量%未満だと核となる内部粒子が少なすぎて粗大粒子化し、3.0重量%を超えると内部粒子の生成量が多くなりすぎて、いずれの場合においても合成したポリエステルの溶液ヘイズが高く、また、バッチ間の溶液ヘイズのバラツキが大きくなり好ましくない。
【0024】
一方でバッチ重合の場合、重縮合反応装置内に前バッチのポリマが残存しているが、このポリマは熱劣化を受け、一部の内部粒子が破壊されているため、この残存ポリマ量を調整しても本製造方法と同様の効果を得ることはできない。
【0025】
本製造方法においては、製造バッチ内およびバッチ間で内部粒子を均一生成させることができるのはもちろんであるが、生産開始時にはより効果が発現できる。すなわち、生産開始時は重縮合反応装置内が空の状態で核となる内部粒子が全く存在していないからである。通常の場合、生産開始当初の数バッチは内部粒子が粗大粒子化し、溶液ヘイズが異常に高くなるため、製品に不向きとなる。本製造方法を採用すると生産開始直後のバッチから内部粒子が均一化して溶液ヘイズが安定するため、早期の製品化が可能となる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を挙げて本発明のポリエステルの製造方法について詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の各特性値は、次の方法で測定したものである。
(1)溶液ヘイズ
ポリマ2.7gを精秤し、これにフェノール/四塩化エタン(6/4重量比)の混合
溶媒を20ml加え、100℃で30分撹拌してポリマを溶解する。このポリマ溶
液を室温で1時間放置し、冷却する。ポリマ溶液を10mmのガラス製セルに入れ、
スガ試験機(株)製の直読ヘーズコンピューター(HGM−2DP)を用いてポリ
マ溶液の溶液ヘイズ(濁り度)を測定した。
【0027】
同一製造条件下で連続製造した時の連続10バッチの溶液ヘイズ平均値が、目標溶
液ヘイズの±1.5%以内であり、かつ標準偏差が1.5%以内であれば実使用上問
題ないレベルといえる。
(2)粗大粒子
ポリマ10mgを270℃に加熱したプレート上でプレパラート内にはさみ、溶融
プレスする。このサンプルを接眼10倍、対物10倍の偏光板を挿入した顕微鏡で
内部粒子中の粗大粒子の大きさを観察する。
【0028】
同一製造条件下で連続製造した時の連続10バッチの5μm以上の粒子数平均値が
5個以下であれば実使用上問題ないレベルといえる。
【0029】
[実施例1]
ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびそのオリゴマーが存在するエステル化反応装置にテレフタル酸とエチレングリコールのスラリー(エチレングリコール/テレフタル酸のモル比は1.2)を3時間連続的に供給した。スラリー供給中はエステル化反応装置に0.2MPaの圧力を加え、250℃でエステル化反応を行い、反応時間4時間でエステル化反応率97.5%のオリゴマーを得た。次いで製造されるポリエステルの目標とした溶液ヘイズ15.0%に対して1.0倍、すなわち溶液ヘイズ15.0%のポリエステルペレットを製造されるポリエステルに対して1.0重量%の量を重縮合反応装置に添加した。エステル化反応装置に仕込んだ分のエステル化反応物を重縮合反応装置に移し、三酸化アンチモンの濃度1.5重量%のエチレングリコールスラリーを三酸化アンチモンが得られるポリエステルに対して0.03重量%、酢酸カルシウムの濃度4.5重量%のエチレングリコール溶液を酢酸カルシウムが得られるポリエステルに対して0.08重量%添加した。9分後、リン酸を得られるポリエステルに対して0.01重量%添加した。その後、常圧から徐々に減圧し、240℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、0.1kPa以下の高真空を維持して3時間、固有粘度が0.66になるまで重縮合反応を行い、反応生成物をストランド状に押しだし、カッティングしてポリエステルペレットを得た。本製造条件下で連続10バッチ製造した時の溶液ヘイズの平均値と目標溶液ヘイズとの差は+0.1%、標準偏差は0.55%、粗大粒子数の平均値は1.5個といずれも良好で問題ない結果であった。結果を表1に示す。
【0030】
[実施例2〜5]
添加するポリエステルペレットの溶液ヘイズを表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルを製造した。製造した連続10バッチの溶液ヘイズの平均値と目標溶液ヘイズとの差、標準偏差、粗大粒子数平均値はいずれも良好で問題ない結果であった。結果を表1に示す。
【0031】
[実施例6〜9]
添加するポリエステルペレットの量を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルを製造した。製造した連続10バッチの溶液ヘイズの平均値と目標溶液ヘイズとの差、標準偏差、粗大粒子数平均値はいずれも良好で問題ない結果であった。結果を表1に示す。
【0032】
[実施例10〜13]
添加するポリエステルペレットの溶液ヘイズと量を表1、表2のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルを製造した。製造した連続10バッチの溶液ヘイズの平均値と目標溶液ヘイズとの差、標準偏差、粗大粒子数平均値はいずれも良好で問題ない結果であった。結果を表1、表2に示す。
【0033】
[実施例14〜19]
添加する金属化合物の種類、量、添加するポリエステルペレットの溶液ヘイズと量を表2のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルを製造した。製造した連続10バッチの溶液ヘイズの平均値と目標溶液ヘイズとの差、標準偏差、粗大粒子数平均値はいずれも良好で問題ない結果であった。結果を表2に示す。
【0034】
[実施例20]
重縮合反応装置内に残存ポリマが全くない状態から実施例1と同様の方法でポリエステルを製造した。製造した連続10バッチの溶液ヘイズの平均値と目標溶液ヘイズとの差、標準偏差、粗大粒子数平均値はいずれも良好で問題ない結果であった。結果を表2に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
[比較例1、2]
添加するポリエステルペレットの溶液ヘイズを表3のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルを製造した。製造した連続10バッチの溶液ヘイズの平均値が高くなったため、目標溶液ヘイズとの差が大きくなった。また、標準偏差も大きく、粗大粒子数平均値も多くなり品位が劣る結果となった。結果を表3に示す。
【0038】
[比較例3、4]
添加するポリエステルペレットの量を表3のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルを製造した。製造した連続10バッチの溶液ヘイズの平均値が高くなったため、目標溶液ヘイズとの差が大きくなった。また、標準偏差も大きく、粗大粒子数平均値も多くなり品位が劣る結果となった。結果を表3に示す。
【0039】
[比較例5]
添加するポリエステルペレットに使用される金属化合物の種類を酢酸Liに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルを製造した。製造した連続10バッチの溶液ヘイズの平均値が大幅に低くなったため、目標溶液ヘイズとの差が大きくなった。また、粗大粒子数平均値も多くなり品位が劣る結果となった。結果を表3に示す。
【0040】
[比較例6〜9]
添加する金属化合物の量、目標溶液ヘイズ、添加するポリエステルペレットの溶液ヘイズ等を表2のように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルを製造した。製造した連続10バッチの溶液ヘイズの平均値と目標溶液ヘイズとの差、標準偏差、粗大粒子数平均値いずれも悪化し品位が劣る結果となった。結果を表3に示す。
【0041】
[比較例10]
ポリエステルペレットを添加しない以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルを製造した。製造した連続10バッチの溶液ヘイズの平均値と目標溶液ヘイズとの差、標準偏差、粗大粒子数平均値いずれも大幅に悪化し品位が劣る結果となった。結果を表3に示す。
【0042】
[比較例11、12]
重縮合反応装置内に残存ポリマが全くない状態から、かつ、ポリエステルペレットを添加せずに表3に示す製造条件でポリエステルを製造した。製造した連続10バッチの溶液ヘイズの平均値と目標溶液ヘイズとの差、標準偏差、粗大粒子数平均値いずれもさらに大幅に悪化し品位が劣る結果となった。結果を表3に示す。
【0043】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸またはその誘導体を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分に、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物から選ばれた少なくとも一種の金属のグリコール可溶性塩を添加して微粒子を含有するポリエステルを製造するに際して、エステル化またはエステル交換反応終了から重縮合反応開始までの任意の段階で、金属のグリコール可溶性塩に起因する微粒子を含有し、かつポリマの溶液ヘイズが製造するポリエステルの目標溶液ヘイズの0.3〜2.0倍であるポリエステルペレットを、製造するポリエステルに対して0.3〜5.0重量%添加することを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項2】
製造するポリエステルおよび添加するポリエステルペレットに含有するグリコール可溶性金属塩の金属元素がLi、Na、Ca、SrおよびBaから選ばれた少なくとも一種であり、かつ同一の金属元素であることを特徴とする請求項1記載のポリエステルの製造方法。

【公開番号】特開2010−84004(P2010−84004A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254336(P2008−254336)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】