説明

ポリエステル樹脂水性分散体、それから得られる被膜、および該被膜を利用した包装袋

【課題】 ガラス転移温度の低い基材に対して、低温で造膜させた場合でも、密着性に優れ、かつ、耐ブロッキング性に優れた樹脂被膜を形成できるポリエステル樹脂水性分散体、それから得られる被膜、および、該被膜を利用した包装袋を提供する。
【解決手段】 数平均分子量が5000以上、ガラス転移温度が50℃以上であるポリエステル樹脂(A)と、数平均分子量が9000以上、ガラス転移温度が30℃以下であるポリエステル樹脂(B)とからなるポリエステル樹脂水性分散体であって、ポリエステル樹脂(A)はアルコール(イ)を用いて微分散されており、ポリエステル樹脂(B)は溶媒(ロ)を用いて微分散されており、ポリエステル樹脂固形分換算で(A)/(B)=80/20〜50/50(質量比)で混合し、40℃以上100℃未満の造膜温度で樹脂被膜の形成が可能なことを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種のポリエステル樹脂を特定の割合で含有しており、低い造膜温度で被膜を形成するポリエステル樹脂水性分散体、それから得られる被膜、および該被膜を利用した包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリエステル樹脂は、被膜形成用樹脂として、被膜の加工性、有機溶剤に対する耐性(耐溶剤性)、耐候性に優れており、PET、PBT、塩化ビニル、各種金属等の成形品やフィルムへの密着性に優れていることから、塗料、インキ、接着剤、コーティング剤等に用いる樹脂として大量に使用されている。
【0003】
一方で、近年、環境保護、消防法による危険物規制、職場環境の改善等の理由で、有機溶剤の使用を抑制する傾向にあり、前記の用途に使用できるポリエステル樹脂を、水性媒体に微分散させた、ポリエステル樹脂水性分散体を供給することが求められており、その開発が盛んにおこなわれている。
【0004】
例えば、特許文献1には、比較的酸価が低く、高分子量のポリエステル樹脂を水性媒体中に分散させたポリエステル樹脂水性分散体が提案され、かかる水性分散体を用いると基材に対する密着性、耐水性等の性能に優れた被膜を形成できることが記載されている。しかしながら、この文献に記載されたポリエステル樹脂水性分散体は、ポリエステル樹脂のカルボキシル基を塩基性化合物で中和することにより水性媒体中に分散させた、いわゆる自己乳化型のポリエステル樹脂水性分散体であり、ポリエステル樹脂を水性媒体中へ安定に分散させるために、使用するポリエステル樹脂は8mgKOH/g以上の酸価に相当する末端カルボキシル基を有している必要がある。その結果として、ポリエステル樹脂の分子量が制限され、被膜強度が不十分である、接着性が不足する場合がある等の問題があった。
【0005】
また、特許文献2には、より低酸価で高分子量のポリエステル樹脂を水性媒体中に分散させたポリエステル樹脂水性分散体が提案されている。この提案では確かに被膜強度が十分であり、また接着性に優れた被膜を形成することができるが、低温造膜性、耐ブロッキング性および低温ヒートシール性に関する別の新たな問題が生じた。すなわち、基材表面に被膜を造膜する場合、基材によっては低温で造膜させる必要があるが、低温で造膜するポリエステル樹脂水性分散体を選択した場合、当該分散体は必然的にガラス転移温度が低いポリエステル樹脂からなるため、耐ブロッキング性に劣る被膜となる。このようなことから、低温造膜性と耐ブロッキング性とを両立させることは困難であった。
【0006】
低温造膜性、耐ブロッキング性および低温ヒートシール性に優れた被膜を形成可能なポリエステル樹脂水性分散体については、例えば、特許文献3で提案されているが、100℃におけるポリエステル樹脂水性分散体の造膜についてしか検討されていない。非結晶PET(A−PET)、アクリル、ポリ乳酸(PLA)等はガラス転移温度が70℃前後とかなり低いものもあり、塗装やコーティングの基材としてこれらを用いる場合、ガラス転移温度よりも高い温度、例えば、100℃でポリエステル樹脂を造膜しようとすると基材が変形、収縮や破損等を起こしてしまう。
【特許文献1】特開2002−173582号公報
【特許文献2】国際公開第2004/037924号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2007/029728号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、ガラス転移温度が低い基材に対しても、基材を損傷することなく、低温造膜性、耐ブロッキング性および低温ヒートシール性に優れた被膜を形成可能なポリエステル樹脂水性分散体、それから得られる被膜、および該被膜を利用した包装袋を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は詳しくは、低温で造膜した場合でも被膜にクラックがなく、基材に対する密着性に優れ、かつ耐ブロッキング性に優れた樹脂被膜を形成でき、しかも低温でヒートシールした場合でも、接着性に優れる樹脂被膜を形成できるポリエステル樹脂水性分散体、それから得られる被膜、および該被膜を利用した包装袋を提供することを目的とする。
【0009】
本明細中、密着性とは、基材上に形成された樹脂被膜自体が基材に対して強固に付着、結合しうる特性をいうものとする。また、接着性とは、少なくとも1つの基材の表面に樹脂被膜が形成されている2つの基材を、被膜形成面が接触するように重ねてヒートシールしたとき、樹脂被膜が2つの基材を強固に連結、結合しうる特性をいうものとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記の課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
【0012】
(1) 数平均分子量が5000以上、ガラス転移温度が50℃以上であるポリエステル樹脂(A)と、数平均分子量が9000以上、ガラス転移温度が30℃以下であるポリエステル樹脂(B)とからなるポリエステル樹脂水性分散体であって、ポリエステル樹脂(A)は下記アルコール(イ)を用いて微分散されており、ポリエステル樹脂(B)は下記溶媒(ロ)を用いて微分散されており、ポリエステル樹脂固形分換算で(A)/(B)=80/20〜50/50(質量比)で混合し、40℃以上100℃未満の造膜温度で樹脂被膜の形成が可能なことを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体。
(イ) 沸点が150℃以下、水に対する溶解性が5g/L(20℃)以上であるアルコールの1種または2種以上からなる混合物
(ロ) 温度を40℃以下に保った状態でポリエステル樹脂(B)を10質量%以上溶解することができ、かつ沸点が150℃以下、水に対する溶解性が5g/L(20℃)以上である有機溶剤の1種または2種以上からなる混合物
(2) ポリエステル樹脂(A)、および/または、ポリエステル樹脂(B)はその末端にカルボキシル基を有しており、かつ、カルボキシル基の一部、または、全部が塩基性化合物で中和されていることを特徴とする(1)のポリエステル樹脂水性分散体。
(3) ポリエステル樹脂(A)の酸価が4〜40mgKOH/gであることを特徴とする(1)または(2)のポリエステル樹脂水性分散体。
(4) ポリエステル樹脂(B)の酸価が2〜10mgKOH/gであることを特徴とする(1)または(2)のポリエステル樹脂水性分散体。
(5) (1)〜(4)のポリエステル樹脂水性分散体から水性媒体を除去してなる被膜。
(6) (5)の被膜を熱融着してなる包装袋。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、低温造膜性、耐ブロッキング性および低温ヒートシール性に優れる樹脂被膜を形成することができるため、特にA−PETシート等ガラス転移温度の低い基材に対するヒートシール剤のバインダー成分として好適であり、該被膜形成物は包装袋用途に好適で、産業上の利用価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、少なくとも、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とが特定の割合で水性媒体中に含有されてなる液状物である。
【0015】
本発明において、ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度は、50℃以上、特に50℃以上80℃以下であり、60℃以上75℃以下がより好ましい。ポリエステル樹脂(A)は、本発明のポリエステル樹脂水性分散体から得られる被膜において、主に耐ブロッキング性の向上に作用している成分であり、Tgが50℃未満では、耐ブロッキング性が低下する。
【0016】
ポリエステル樹脂(A)のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析により求められた数平均分子量は、5000以上が必要であり、6000以上が好ましい。数平均分子量が5000未満では、樹脂被膜が脆いため、低温造膜性(密着性)や接着性が不足する。また、水性分散体の安定性の観点から、通常、数平均分子量は、10000以下が好ましい。
【0017】
そのようなポリエステル樹脂(A)は、通常、酸価4〜40mgKOH/gを有し、特に10〜30mgKOH/gを有することが好ましい。
【0018】
ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度は30℃以下、特に−30℃以上30℃以下であり、−25℃以上25℃以下がより好ましい。ポリエステル樹脂(B)は、本発明のポリエステル樹脂水性分散体から得られる被膜において、主に低温造膜性と低温ヒートシール性の向上に作用している成分であり、ガラス転移温度が30℃を超えると、低温造膜性、または/および、低温ヒートシール性が低下する。
【0019】
ポリエステル樹脂(B)のGPCによる数平均分子量は9000以上が必要であり、10000以上が好ましい。数平均分子量が9000未満では、樹脂被膜のヒートシール性(接着性)が不足する。また、水性分散体の分散安定性の観点から、通常、数平均分子量は、25000以下が好ましい。
【0020】
そのようなポリエステル樹脂(B)は通常、酸価2〜10mgKOH/gを有し、特に4〜8mgKOH/gを有することが好ましい。
【0021】
本発明における樹脂被膜の造膜温度は40℃以上100℃未満とする必要があり、特に50℃〜80℃が好ましい。造膜温度が100℃を超えると、基材が著しく変形、収縮したり、破損したりするために、ガラス転移温度が低い基材を用いることができない。また、造膜温度が40℃未満では水性媒体の除去が不十分となり、樹脂被膜が得られない。
【0022】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体に含有されるポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との質量比率は、(A)/(B)の比が80/20〜50/50の範囲である必要があり、75/25〜55/45の範囲であることが好ましく、70/30〜60/40の範囲であることがより好ましい。ポリエステル樹脂(A)が80質量%を超える場合には、低温造膜性、および/または、低温ヒートシール性が低下し、逆に、ポリエステル樹脂(A)が50%質量未満の場合には、得られる樹脂被膜の耐ブロッキング性が低下してしまう。
【0023】
ポリエステル樹脂(A)、および、(B)はいずれも多塩基酸成分の1種類以上と多価アルコール成分の1種類以上とを重縮合させることや、重縮合後に多塩基酸成分で解重合すること、また、重縮合後に酸無水物を付加させること等、公知の方法によって製造することができる。このとき各種条件を調整することによって、樹脂のガラス転移温度、数平均分子量および酸価等を制御可能であり、結果としてポリエステル樹脂(A)および(B)を区別して製造可能となる。
【0024】
例えば、多塩基酸成分として芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸等が挙げられるが、多塩基酸成分中の脂肪族ジカルボン酸の割合を増やすと、樹脂のガラス転移温度は低下する。一方、脂肪族ジカルボン酸の割合を減らすと、樹脂のガラス転移温度は増大する。
【0025】
また、例えば、多価アルコール成分として脂肪族グリコール、脂環式グリコール、エーテル結合含有グリコール等が挙げられるが、多価アルコール成分中の長鎖エーテル結合含有グリコールの割合を増やすと、樹脂のガラス転移温度は低下する。一方、長鎖エーテル結合含有グリコールの割合を減らすと、樹脂のガラス転移温度は増大する。
【0026】
一方で、例えば、解重合のための多塩基酸成分の使用量を増大させると、樹脂の数平均分子量は低下し、酸価は増大する。一方、当該多塩基酸成分の使用量を減少させると、樹脂の数平均分子量は増大し、酸価は低下する。このとき、多塩基酸成分として3官能以上のものを用いると、2官能のものを用いる場合よりも、酸価の増大は顕著になる。
【0027】
ポリエステル樹脂(A)および(B)の製造に使用可能な多塩基酸成分、多価アルコール成分、ならびに、好ましい成分および樹脂組成について以下、説明する。なお、それらの説明は、特記しない限り、ポリエステル樹脂(A)および(B)の共通の説明として適用可能である。
【0028】
多塩基酸成分の具体例としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、水添ダイマー酸等、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、ダイマー酸等の飽和または不飽和の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、無水2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸等の脂環式ジカルボン酸類等が挙げられる。また、必要に応じて少量の5−ナトリウムスルホイソフタル酸や5−ヒドロキシイソフタル酸を用いることができる。
【0029】
3官能以上の多塩基酸も用いることができ、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等が含まれていてもよい。このような、3官能以上の多塩基酸は、樹脂被膜の加工性を良好に保つ点から、通常、多塩基酸成分中10モル%以下であり、5モル%以下がより好ましい。
【0030】
前記した多塩基酸成分の中でも、芳香族多塩基酸を用いることが好ましく、ポリエステル樹脂の多塩基酸成分中の含有割合は50モル%以上とすることが好ましく、60モル%以上がより好ましい。芳香族多塩基酸成分の割合を増すことにより、水性分散体から形成される樹脂被膜の加工性、耐水性、耐溶剤性等が向上する。芳香族多塩基酸としては、工業的に多量に生産されており、安価であることから、テレフタル酸やイソフタル酸が好ましい。
【0031】
多価アルコール成分としては、例えば、脂肪族グリコール、脂環式グリコール、エーテル結合含有グリコール等を挙げることができる。脂肪族グリコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、1,2‐プロパンジオール、1,3‐プロパンジオール、1,4‐ブタンジオール、2‐メチル―1,3‐プロパンジオール、1,5‐ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6‐ヘキサンジオール、3‐メチル‐1,5‐ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2‐エチル‐2‐ブチルプロパンジオール等が挙げられる。脂環式グリコールの具体例としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。エーテル結合含有グリコールの具体例としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらには、2,2−ビス[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンのようなビスフェノール類(ビスフェノールA)のエチレンオキシド付加体、ビス[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホンのようなビスフェノール類(ビスフェノールS)のエチレンオキシド付加体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。このうち長鎖エーテル結合含有グリコールとしては、分子量500以上のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0032】
3官能以上の多価アルコールとして、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が含まれていてもよい。
【0033】
前記した多価アルコール成分の中でも、エチレングリコール又はネオペンチルグリコールが特に好ましく、ポリエステル樹脂のアルコール成分に占めるエチレングリコールとネオペンチルグリコールの合計の割合としては、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましい。エチレングリコールおよびネオペンチルグリコールは工業的に量産されているので安価であり、しかも樹脂被膜の諸性能にバランスがとれている。エチレングリコールは特に樹脂被膜の耐溶剤性を向上させ、ネオペンチルグリコールは特に樹脂被膜の耐候性を向上させる。エチレングリコール、ネオペンチルグリコールの個々の割合としては、アルコール成分中20〜80モル%とすることが好ましく、30〜70モル%がより好ましい。
【0034】
ポリエステル樹脂には、必要に応じて、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸やそのエステル形成性誘導体、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸等のモノカルボン酸、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール、ε−カプロラクトン、乳酸、β−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やそのエステル形成性誘導体が共重合されていてもよい。
【0035】
ポリエステル樹脂(A)と、ポリエステル樹脂(B)との、好ましい組成の組み合わせとして、以下に示す組み合わせが挙げられる。
[組み合わせ1]
ポリエステル樹脂(A)(芳香族ジカルボン酸、芳香族トリカルボン酸、脂肪族グリコール);
ポリエステル樹脂(B)(芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、芳香族トリカルボン酸、脂肪族グリコール)。
[組み合わせ2]
ポリエステル樹脂(A)(芳香族ジカルボン酸、芳香族トリカルボン酸、脂肪族グリコール);
ポリエステル樹脂(B)(芳香族ジカルボン酸、芳香族トリカルボン酸、脂肪族グリコール、長鎖エーテル結合含有グリコール)。
[組み合わせ3]
ポリエステル樹脂(A)(芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、芳香族トリカルボン酸、脂肪族グリコール);
ポリエステル樹脂(B)(芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、芳香族トリカルボン酸、脂肪族グリコール)。
[組み合わせ4]
ポリエステル樹脂(A)(芳香族ジカルボン酸、脂肪族グリコール);
ポリエステル樹脂(B)(芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、芳香族トリカルボン酸、脂肪族グリコール)。
[組み合わせ5]
ポリエステル樹脂(A)(芳香族ジカルボン酸、脂肪族グリコール);
ポリエステル樹脂(B)(芳香族ジカルボン酸、芳香族トリカルボン酸、脂肪族グリコール、長鎖エーテル結合含有グリコール)。
【0036】
上記の組み合わせの中でも、組み合わせ1〜3が好ましい。
【0037】
ポリエステル樹脂(A)、および/または、ポリエステル樹脂(B)は、末端にカルボキシル基を有することが好ましい。末端にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂であれば、水性分散体の製造時において、塩基性化合物を添加することにより、当該カルボキシル基の少なくとも一部、または、全部が中和されて、カルボキシルアニオンが生成し、このアニオン間の電気反発力によって、ポリエステル樹脂微粒子は凝集せず、安定に分散するため、界面活性剤を使用せずに、分散安定性の良好なポリエステル樹脂水性分散体が得られる。界面活性剤を使用した水性分散体からなる被膜は耐水性に劣る傾向にある。
【0038】
ポリエステル樹脂(A)、およびポリエステル樹脂(B)は、水性媒体中に分散されている。ここで、水性媒体とは、水を主成分とする液体からなる媒体であり、後述する塩基性化合物や有機溶剤を含有していてもよい。また、水性媒体の沸点は、低い造膜温度であっても、樹脂被膜から水性媒体を容易に揮散可能になるため、150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることが特に好ましい。
【0039】
ポリエステル樹脂(A)を用いた水性分散体を製造する際に使用する有機溶剤は、沸点が150℃以下、水に対する溶解性が5g/L(20℃)以上であるアルコール類(以下、アルコール(イ)と表記する)である必要がある。沸点が150℃より高くなると、樹脂被膜から該有機溶剤が完全に揮散しなくなり、できた被膜は脆く、密着性、接着性の劣るものとなる。水に対する溶解性が5g/L(20℃)未満であると、均一な水性分散体として得ることができなくなる。また、アルコール類でなければ、安定な水性分散体を得ることができなくなる。これらの条件を満たすものとして、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が好ましい。なお、該有機溶剤は2種以上を混合して使用してもよい。なお、用いるアルコールは、ポリエステル樹脂(A)を溶解することなく、膨潤させる程度のものでよい。
【0040】
ポリエステル樹脂(B)を用いる水性分散体を製造する際に使用する有機溶剤は、
温度を40℃以下に保った状態でポリエステル樹脂(B)を10質量%以上溶解することができ、かつ沸点が150℃以下、水に対する溶解性が5g/L(20℃)以上である有機溶剤(以下、有機溶剤(ロ)と表記する)である必要がある。沸点が150℃を超えると、後述するポリエステル樹脂(B)水性分散体の製造方法における、有機溶剤の完全な除去が非常に困難になり、安定な水性分散体を得ることができなくなる。水に対する溶解性が5g/L(20℃)未満であると、均一な水性分散体を得ることができなくなる。また、温度を40℃以下に保った状態でポリエステル樹脂(B)を10質量%未満しか溶解することができないならば、完成した水性分散体の固形分濃度を上げることが困難となり、非常に非実用的、かつ、非経済的なものとなる。これらの条件を満たすものとして、たとえば、メチルエチルケトン(以下、MEKと表記する)や、テトラヒドロフラン(以下、THFと表記する)等が好ましい。なお、該有機溶剤は2種以上を混合して使用してもよい。なお、MEKの沸点は80℃、THFの沸点は65℃である。
【0041】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体において、ポリエステル樹脂(A)、およびポリエステル樹脂(B)を含むポリエステル樹脂の含有率としては、成膜方法、被コーティング物の種類、目的とする樹脂被膜の厚さや性能等により適宜選択でき、特に限定されるものではないが、コーティングの際に適度な粘性を保ちかつ良好な被膜形成能を発現させる点で、水性分散体全量に対して1〜50質量%が好ましく、5〜45質量%がより好ましく、10〜40質量%が特に好ましい。
【0042】
水性分散体中におけるポリエステル樹脂の粒子径は、特に限定されないが、保存安定性を良好に保つ点から、各々の体積平均粒子径は500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることが特に好ましい。
【0043】
次に、本発明のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法について説明する。
【0044】
用いるポリエステル樹脂は、溶媒中で攪拌できるものであれば、どのような形状のものを用いてもよく、ペレット形状であっても良いし、シート状、粒状、塊状や、サイコロ状に切断したものでもよい。
【0045】
まず、ポリエステル樹脂(A)水性分散体の製造方法としては、酸価が4〜40mgKOH/gのポリエステル樹脂(A)、アルコール(イ)、水、塩基性化合物を40℃〜100℃で加熱攪拌することで製造できる。詳しくは、ポリエステル樹脂(A)、アルコール(イ)を混合すると、ポリエステル樹脂(A)は、アルコール(イ)に膨潤した状態となり、水、塩基性化合物を加え、40℃〜100℃で加熱攪拌することで、徐々に、粒径が細かくなり、更に攪拌を続けることで微分散できる。必要に応じて、未分散物や凝集物をろ過して取り除くことにより、沈殿物や相分離等の見られない、均一な状態のポリエステル樹脂(A)水性分散体が得られる。
【0046】
ポリエステル樹脂(B)水性分散体の製造方法としては、酸価が2〜10mgKOH/gのポリエステル樹脂(B)を使用し、ポリエステル樹脂を有機溶剤(ロ)に溶解させる工程(溶解工程)、有機溶剤(ロ)に溶解したポリエステル樹脂溶液を塩基性化合物とともに水に分散させる工程(転相乳化工程)、得られた分散体から、有機溶剤(ロ)を除去する工程(脱溶剤工程)の3工程で製造することで製造することができる。必要に応じて、未分散物や凝集物をろ過して取り除くことにより、沈殿物や相分離等の見られない、均一な状態のポリエステル樹脂(B)水性分散体が得られる。
【0047】
本発明において、転相乳化とは、ポリエステル樹脂の有機溶剤溶液に、この溶液に含まれる有機溶剤量を超える量の水を添加して、系を有機溶剤相からO/Wエマルション分散系に変化させることができることを意味する。
【0048】
転相乳化工程は40℃以下で行い、30℃以下で行うことが好ましく、20℃以下で行うことがさらに好ましく、15℃で行うことをが特に好ましい。40℃以下で転相乳化工程を行うことにより、得られる水性分散体の体積平均粒径が小さくなり、貯蔵安定性の優れた水性分散体を得ることができる。また、脱溶剤工程の際に、水性分散体が凝集することによって生じるポリエステル樹脂の沈殿の生成を抑えることができ、その結果、収率が向上し経済的である。
【0049】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、ポリエステル樹脂(A)水性分散体と、ポリエステル樹脂(B)水性分散体を使用し、これらを所定の割合で攪拌混合することにより製造できる。混合は、一般的な攪拌装置を使用して、容易におこなうことができる。
【0050】
ポリエステル樹脂(A)水性分散体、ポリエステル樹脂(B)水性分散体のいずれにおいても、用いる塩基性化合物としては、低い造膜温度であっても、樹脂被膜から水性媒体を、容易に揮散可能になるため、沸点が150℃以下、さらには100℃以下の有機アミン、あるいはアンモニアが好ましい。なかでもアンモニア、トリエチルアミン等が最も好ましい。塩基性化合物の使用量としては、ポリエステル樹脂中に含まれるカルボキシル基の量に応じて、少なくともこれを部分中和し得る量、すなわち、カルボキシル基に対して0.4〜20倍当量が好ましく、0.6〜15倍当量がより好ましく、0.8〜10倍当量が特に好ましい。塩基性化合物の使用量を前記範囲とすることで、保存安定性が特に良好なポリエステル樹脂水性分散体を得ることができる。
【0051】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体には、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、防カビ剤、防腐剤等の各種薬剤や、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料あるいは染料や、ポリビニルアルコールやポリエチレンオキシド等の水溶性高分子が添加されていてもよい。また、水や有機溶剤を添加することにより、粘度調整や基材への濡れ性の調整等をすることもできる。
【0052】
次に、本発明のポリエステル樹脂水性分散体の使用方法について説明する。
本発明の樹脂水性分散体は、被膜形成能に優れているので、ディッピング法、はけ塗り法、スプレーコート法、カーテンフローコート法等の公知の成膜方法により各種基材表面に均一にコーティングし、加熱処理に供することにより水性媒体を除去して、均一な樹脂被膜を各種基材表面に密着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。また、樹脂被膜の厚さとしては、その用途や目的によって適宜選択されるものであるが、0.1〜30μmが好ましく、0.3〜10μmがより好ましい。
【0053】
被膜形成物の基材としては、熱可塑性樹脂フィルム、アルミ箔およびその積層体等が挙げられる。本発明はA−PET、アクリル、PLA等、ガラス転移温度の低い基材に対して特に有用であるが、これらの基材のみに限定するものではない。
【0054】
本発明のポリエステル樹脂水性分散体からなる被膜を基材に形成し、得られた2枚の被膜形成物を、被膜形成面が接触するように重ねて、公知の方法で熱融着(ヒートシール)させることにより、低温で熱融着した場合でも接着性に優れる包装袋が得られる。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明する。
(1)ポリエステル樹脂の構成
1H−NMR分析(バリアン社製、300MHz)より求めた。また、1H−NMRスペクトル上に帰属、定量可能なピークが認められない構成モノマーを含む樹脂については、封管中230℃で3時間メタノール分解をおこなった後に、ガスクロマトグラム分析に供し、定量分析をおこなった。
(2)ポリエステル樹脂の数平均分子量
数平均分子量は、GPC分析(島津製作所製の送液ユニットLC−10ADvp型および紫外−可視分光光度計SPD−6AV型を使用、検出波長:254nm、溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)により求めた。
(3)ポリエステル樹脂のガラス転移温度
ポリエステル樹脂10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製DSC7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定をおこない、得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値を求め、これをガラス転移温度とした。
(4)ポリエステル樹脂の酸価
ポリエステル樹脂0.5gを50mlの水/ジオキサン=1/9(体積比)に溶解し、クレゾールレッドを指示薬として、KOHで滴定をおこない、中和に消費されたKOHのmg数を、ポリエステル樹脂1gあたりに換算した値を酸価として求めた。
(5)水性分散体の固形分濃度
水性分散体を約1g秤量(Xgとする)し、これを150℃で2時間乾燥した後の残存物(固形分)の質量を秤量し(Ygとする)、次式により固形分濃度を求めた。
固形分濃度(質量%)=Y/X ×100
(6)水性分散体の体積平均粒径
水性分散体を0.1%に水で希釈し、日機装製、MICROTRAC UPA(モデル9340−UPA)を用いて体積平均粒径を測定した。
(7)水性分散体中の有機溶剤の含有率
島津製作所社製、ガスクロマトグラフGC−8A[FID検出器使用、キャリアーガス、窒素、カラム充填物質(ジーエルサイエンス社製):PEG−HT(5%)−UNIPORT HP(60/80メッシュ)、カラムサイズ:直径3mm×3m、資料投入温度(インジェクション温度):150℃、カラム温度:60℃、内部標準物質:n‐ブタノール]を用い、水性分散体を直接装置内に投入して有機溶剤の含有率を求めた。検出限界は0.01質量%であった。
(8)水性分散体の安定性
50mlのガラス製サンプル瓶に、水性分散体30mlを入れ、25℃で2日間静置した後の外観、および、状態の変化を目視にて観察し、下記の基準で水性分散体の安定性を評価した。
○:外観、状態に変化なし。
×:相分離、沈澱発生、ゲル状態が認められる。
(9)樹脂被膜の厚さ
厚み計(ユニオンツール社製、MICROFINE)を用いて、基材の厚みを予め測定しておき、水性分散体を用いて基材上に樹脂被膜を形成した後、この樹脂被膜を有する基材の厚みを同様の方法で測定し、その差を樹脂被膜の厚さとした。
(10)低温造膜性(外観)
水性分散体をA−PETシート(ミネロン化成工業社製、ミネロンA−PET、ガラス転移温度73℃、厚さ0.3mm)上に、卓上型コーティング装置(安田精機製、フィルムアプリケータNo.542−AB型、バーコータ装着)を用いてコーティングした後、30℃、40℃、60℃、80℃、120℃の各温度に設定された熱風乾燥機中で1分間乾燥させることにより膜厚が1μmの樹脂被膜を形成した。樹脂被膜を目視にて観察し、クラックなどが見られず、かつ透明な樹脂被膜を形成しているか否かにより以下のように分類し、○を合格と判定した。
○:クラックなどが見られず、かつ透明
×:クラックなどが見られる、および/または、不透明
(11)低温造膜性(密着性)
前記(10)と同様に被膜を形成した。次いで、JIS Z1522に規定された粘着テープ(幅18mm)を、端部を残して樹脂被膜に貼りつけ、その上から消しゴムでこすって十分に接着させた後に、粘着テープの端部をフィルムに対して直角としてから瞬間的に引き剥がした。この引き剥がした粘着テープ面を表面赤外分光装置(パーキンエルマー社製SYSTEM2000、Ge60°50×20×2mmプリズムを使用)で分析することにより、粘着テープ面に樹脂被膜が付着しているか否かにより以下のように分類し、○を合格と判定した。
○:粘着テープ面に樹脂被膜に由来するピークが認められない。
×:粘着テープ面に樹脂被膜に由来するピークが認められる。
(12)樹脂被膜の耐ブロッキング性
前記(10)と同様にして、A−PETシート上に膜厚が1μmの樹脂被膜を形成した後、被膜形成面に別のA−PETシートを重ねた状態で500Paの荷重をかけ、38℃の雰囲気下で24時間放置後、25℃まで冷却した後、2枚のA−PETシートを手で剥がし、容易にA−PETシートを剥がすことができるか否かにより以下のように分類し、○を合格と判定した。
○:容易に剥がすことができ、全く融着跡が認められない。
△:剥がす際にやや抵抗はあるが、融着跡は認められない。
×:剥がす際にかなりの抵抗があり、融着跡が認められる。
(13)低温ヒートシール性
前記(10)と同様にして、A−PETシート上に膜厚が1μmの樹脂被膜を形成させた後、2枚の樹脂被膜形成A−PETシートを、コート面同士が接触するように重ねて、ヒートプレス機(シール圧0.2MPaで30秒間)にて65℃でプレスした。このサンプルを25mm幅で切り出し、1日後、引張試験機(インテスコ株式会社製インテスコ精密万能材料試験機2020型)を用い、引張速度200mm/分、引張角度180度で被膜の剥離強度を測定することでヒートシール性を評価した。剥離強度0.03N/25mm以上が実用性のある強度である。
【0056】
実施例、および比較例で用いたポリエステル樹脂は、以下のようにして得た。
【0057】
[ポリエステル樹脂P−1の製造例]
テレフタル酸2907g、イソフタル酸1246g、エチレングリコール1133g、ネオペンチルグリコール1614gからなる混合物をオートクレーブ中で、260℃で4時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで、触媒として三酸化アンチモン1.8gを添加し、系の温度を280℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、6時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、270℃になったところでトリメリット酸105gを添加し、250℃で2時間撹拌して、解重合反応をおこなった。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出した。これを室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1〜6mmの分画を採取し、粒状のポリエステル樹脂P−1を得た。得られたポリエステル樹脂P−1の数平均分子量は9000、ガラス転移温度は68℃、酸価は16mgKOH/gであった。その結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
[ポリエステル樹脂P−2の製造例]
テレフタル酸4153g、エチレングリコール388g、1,2−プロパンジオール2568gからなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で4時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート3.4gを添加し、系の温度を230℃に降温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、2時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を230℃に保ったまま、無水トリメリット酸144gを添加し、230℃で2時間撹拌して、解重合反応をおこなった。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出した。これを室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1〜6mmの分画を採取し、粒状のポリエステル樹脂P−2を得た。得られたポリエステル樹脂P−2の数平均分子量は7000、ガラス転移温度は83℃、酸価は23mgKOH/gであった。その結果を表1に示す。
【0060】
[ポリエステル樹脂P−3の製造例]
テレフタル酸2492g、イソフタル酸623g、セバシン酸1263g、エチレングリコール1311g、ネオペンチルグリコール1315gからなる混合物をオートクレーブ中で、250℃で4時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで、触媒として酢酸亜鉛二水和物3.3gを添加した後、系の温度を270℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、265℃になったところで無水トリメリット酸38gを添加し、265℃で2時間攪拌して解重合反応をおこなった。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出した。これを室温まで冷却し、シート状のポリエステル樹脂P−3を得た。得られたポリエステル樹脂P−3の数平均分子量は18000、ガラス転移温度は19℃、酸価は6mgKOH/gであった。その結果を表1に示す。
【0061】
[ポリエステル樹脂P−4の製造例]
テレフタル酸1163g、イソフタル酸1412g、セバシン酸1920g、1,4−ブタンジオール2740gからなる混合物をオートクレーブ中で、220℃で4時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート2.6gを添加した後、系の温度を230℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに縮重合反応を続け、4時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を230℃に保ったままトリメリット酸47gを添加し、230℃で2時間攪拌して解重合反応をおこなった。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出した。これを室温まで冷却し、シート状のポリエステル樹脂P−4を得た。得られたポリエステル樹脂P−4の数平均分子量は17000、ガラス転移温度は−25℃、酸価は6mgKOH/gであった。その結果を表1に示す。
【0062】
[ポリエステル樹脂P−5の製造例]
テレフタル酸2077g、イソフタル酸2077g、エチレングリコール1358g、ネオペンチルグリコール1510g、ポリテトラフラン1000が1125gからなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で4時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート12.8gを添加した後、系の温度を250℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後に系を窒素ガスで常圧にし、トリメリット酸32gを添加し、250℃で2時間攪拌して解重合反応をおこなった。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出した。これを室温まで冷却し、シート状のポリエステル樹脂P−5を得た。得られたポリエステル樹脂P−5の数平均分子量は11000、ガラス転移温度は14℃、酸価は6mgKOH/gであった。その結果を表1に示す。
【0063】
[ポリエステル樹脂P−6の製造例]
テレフタル酸2907g、イソフタル酸1246g、エチレングリコール1133g、ネオペンチルグリコール1614gからなる混合物をオートクレーブ中で、260℃で4時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで、触媒として三酸化アンチモン1.8gを添加し、系の温度を280℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、6時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、270℃になったところでイソフタル酸125g、トリメリット酸105gを添加し、250℃で2時間撹拌して、解重合反応をおこなった。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出した。これを室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1〜6mmの分画を採取し、粒状のポリエステル樹脂P−6を得た。得られたポリエステル樹脂P−6の数平均分子量は3000、ガラス転移温度は65℃、酸価は32mgKOH/gであった。その結果を表1に示す。
【0064】
[ポリエステル樹脂P−7の製造例]
テレフタル酸2492g、イソフタル酸623g、セバシン酸1263g、エチレングリコール1311g、ネオペンチルグリコール1315gからなる混合物をオートクレーブ中で、250℃で4時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで、触媒として酢酸亜鉛二水和物3.3gを添加した後、系の温度を270℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、265℃になったところでイソフタル酸125g、無水トリメリット酸38gを添加し、265℃で2時間攪拌して解重合反応をおこなった。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出した。これを室温まで冷却し、シート状のポリエステル樹脂P−7を得た。得られたポリエステル樹脂P−7の数平均分子量は5000、ガラス転移温度は17℃、酸価は22mgKOH/gであった。その結果を表1に示す。
【0065】
[ポリエステル樹脂P−8の製造例]
テレフタル酸2907g、イソフタル酸664g、セバシン酸707g、エチレングリコール1133g、ネオペンチルグリコール1614gからなる混合物をオートクレーブ中で、260℃で4時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで、触媒として三酸化アンチモン1.8gを添加し、系の温度を280℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、6時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、270℃になったところでトリメリット酸105gを添加し、250℃で2時間撹拌して、解重合反応をおこなった。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に樹脂を払い出した。これを室温まで十分に冷却した後、クラッシャーで粉砕し、篩を用いて目開き1〜6mmの分画を採取し、粒状のポリエステル樹脂P−8を得た。得られたポリエステル樹脂P−8の数平均分子量は8000、ガラス転移温度は40℃、酸価は15mgKOH/gであった。その結果を表1に示す。
【0066】
[ポリエステル樹脂P−9の製造例]
テレフタル酸1744g、イソフタル酸1744g、アジピン酸584g、エチレングリコール1210g、ネオペンチルグリコール1484gからなる混合物をオートクレーブ中で、240℃で4時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで、触媒として酢酸亜鉛二水和物3.3gを添加した後、系の温度を265℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとした。この条件下でさらに重縮合反応を続け、4時間後に系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、260℃になったところで無水トリメリット酸38gを添加し、260℃で2時間撹拌して、解重合反応をおこなった。その後、系の圧力を徐々に減じて30分後に13Paとし、その後1時間脱泡をおこなった。次いで系を窒素ガスで加圧状態にしてストランド状に払出し、水冷後、カッティングしてペレット状(直径約3mm、長さ約3mm)のポリエステル樹脂P−9を得た。得られたポリエステル樹脂P−9の数平均分子量は15000、ガラス転移温度は41℃、酸価は6mgKOH/gであった。その結果を表1に示す。
【0067】
[ポリエステル樹脂水性分散体E−1の製造例]
ジャケット付きの、密閉が可能なガラス容器(内容量2l)と、攪拌機(東京理化器械社製、MAZELA NZ−1200)を用いて、ポリエステル樹脂P−1を300g、イソプロピルアルコールを180g、トリエチルアミンを10g、蒸留水を510g、ガラス容器内に仕込み、攪拌翼(3枚プロペラ)の回転速度を300rpmに保って攪拌しながら、ジャケット内に熱水を通して加熱した。次いで、系内温度を71〜75℃に保ってさらに1時間分散工程をおこなった。その後、ジャケット内に冷水を通し、回転速度を200rpmに下げて攪拌しつつ、25℃まで冷却した。得られた水性分散体を、1000メッシュのステンレス製フィルターで濾過し、ポリエステル樹脂水性分散体E−1を得た。得られたポリエステル樹脂水性分散体E−1の固形分濃度は30質量%、体積平均粒径は150nm、有機溶剤の含有率は18質量%であった。また、ポリエステル樹脂水性分散体E−1を25℃で2日間静置した際の、水性分散体の安定性は良好であった。その結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
[ポリエステル樹脂水性分散体E−2の製造例]
ポリエステル樹脂をP−2に、また、イソプロピルアルコールを220g、トリエチルアミンを12g、蒸留水を468gに変更すること以外は、E−1と同様の方法で、ポリエステル樹脂水性分散体E−2を得た。得られたポリエステル樹脂水性分散体E−2の固形分濃度は30質量%、体積平均粒径は21nm、有機溶剤の含有率は22質量%であった。また、ポリエステル樹脂水性分散体E−2を25℃で2日間静置した際の、水性分散体の安定性は良好であった。その結果を表2に示す。
【0070】
[ポリエステル樹脂水性分散体E−3の製造例]
ジャケット付きガラス容器(内容量2l)にポリエステル樹脂P−3を400gとMEKを600g投入し、ジャケットに60℃の温水を通して加熱しながら、攪拌機(東京理化器械社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂を溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂溶液1000gを得た。つぎに、ジャケットに冷水を通して系内温度を13℃に保ち、回転速度600rpmで攪拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン24gを添加し、続いて100g/minの速度で13℃の蒸留水を1106g添加して転相乳化をおこなった。ついで、得られた水性分散体のうち、1600gを2lのフラスコに入れ、常圧下で蒸留をおこなうことで有機溶剤を留去した。蒸留は留去量が630gになったところで終了し、室温まで冷却後、ポリエステル樹脂水性分散体を攪拌しながら、28質量%アンモニア水1.3gを添加した。その後、1000メッシュのステンレス製フィルターで濾過し、濾液の固形分濃度を測定すると31.0質量%であった。この濾液を攪拌しながら蒸留水を添加し固形分濃度を調整し、ポリエステル樹脂水性分散体E−3を得た。得られたポリエステル樹脂水性分散体E−3の固形分濃度は30質量%、体積平均粒径は147nm、有機溶剤の含有率は0.03質量%であった。また、ポリエステル樹脂水性分散体E−3を25℃で2日間静置した際の、水性分散体の安定性は良好であった。その結果を表2に示す。
【0071】
[ポリエステル樹脂水性分散体E−4の製造例]
ポリエステル樹脂をP−4に、また、トリエチルアミンを64g、蒸留水を1066gに変更すること以外はE−3と同様の方法で、ポリエステル樹脂水性分散体E−4を得た。得られたポリエステル樹脂水性分散体E−4の固形分濃度は30質量%、体積平均粒径は97nm、有機溶剤の含有率は0.04質量%であった。また、ポリエステル樹脂水性分散体E−4を25℃で2日間静置した際の、水性分散体の安定性は良好であった。その結果を表2に示す。
【0072】
[ポリエステル樹脂水性分散体E−5の製造例]
ポリエステル樹脂をP−5に、また、転相乳化時に加える塩基性化合物として28質量%アンモニア水7.0gに、蒸留水を1123gに変更すること以外はE−3と同様の方法で、ポリエステル樹脂水性分散体E−5を得た。得られたポリエステル樹脂水性分散体E−5の固形分濃度は30質量%、体積平均粒径は101nm、有機溶剤の含有率は0.03質量%であった。また、ポリエステル樹脂水性分散体E−5を25℃で2日間静置した際の、水性分散体の安定性は良好であった。その結果を表2に示す。
【0073】
[ポリエステル樹脂水性分散体E−6の製造例]
ポリエステル樹脂をP−6に、また、トリエチルアミンを21g、蒸留水を499gに変更すること以外は、E−1と同様の方法で、ポリエステル樹脂水性分散体E−6を得た。得られたポリエステル樹脂水性分散体E−6の固形分濃度は30質量%、体積平均粒径は50nm、有機溶剤の含有率は18質量%であった。また、ポリエステル樹脂水性分散体E−6を25℃で2日間静置した際の、水性分散体の安定性は良好であった。その結果を表2に示す。
【0074】
[ポリエステル樹脂水性分散体E−7の製造例]
ポリエステル樹脂をP−7に、また、トリエチルアミンを32g、蒸留水を1099gに変更すること以外はE−3と同様の方法で、ポリエステル樹脂水性分散体E−7を得た。得られたポリエステル樹脂水性分散体E−7の固形分濃度は30質量%、体積平均粒径は60nm、有機溶剤の含有率は0.01質量%以下であった。また、ポリエステル樹脂水性分散体E−7を25℃で2日間静置した際の、水性分散体の安定性は良好であった。その結果を表2に示す。
【0075】
[ポリエステル樹脂水性分散体E−8の製造例]
ポリエステル樹脂をP−8に変更すること以外は、E−1と同様の方法で、ポリエステル樹脂水性分散体E−8を得た。得られたポリエステル樹脂水性分散体E−8の固形分濃度は30質量%、体積平均粒径は150nm、有機溶剤の含有率は18質量%であった。また、ポリエステル樹脂水性分散体E−8を25℃で2日間静置した際の、水性分散体の安定性は良好であった。その結果を表2に示す。
【0076】
[ポリエステル樹脂水性分散体E−9の製造例]
ポリエステル樹脂をP−9に、また、トリエチルアミンを13g、蒸留水を1117gに変更すること以外はE−3と同様の方法で、ポリエステル樹脂水性分散体E−9を得た。得られたポリエステル樹脂水性分散体E−9の固形分濃度は30質量%、体積平均粒径は144nm、有機溶剤の含有率は0.01質量%以下であった。また、ポリエステル樹脂水性分散体E−9を25℃で2日間静置した際の、水性分散体の安定性は良好であった。その結果を表2に示す。
【0077】
[ポリエステル樹脂水性分散体E−10の製造例]
仕込む有機溶剤をイソプロピルアルコールから1−ヘキサノールに変更すること以外はE−1と同様の方法で、ポリエステル樹脂水性分散体E−10を得た。得られたポリエステル樹脂水性分散体E−10の固形分濃度は30質量%、体積平均粒径は135nm、有機溶剤の含有率は18質量%であった。また、ポリエステル樹脂水性分散体E−10を25℃で2日間静置した際の、水性分散体の安定性は良好であった。その結果を表2に示す。
【0078】
[ポリエステル樹脂水性分散体E−11の製造例]
仕込む有機溶剤をイソプロピルアルコールから1−オクタノールに変更すること以外はE−1と同様の方法で分散工程をおこなったが、ポリエステル樹脂は分散しなかった。すなわち、E−11は、有機溶剤(イ)として水への溶解性が5g/L(20℃)未満である、1−オクタノール(水への溶解性:0.5g/L(20℃)以下)を用いたため、均一な水性分散体を得ることができなかった。
【0079】
[ポリエステル樹脂水性分散体E−12の製造例]
仕込む有機溶剤をイソプロピルアルコールからジクロロメタンに変更すること以外はE−1と同様の方法でポリエステル樹脂水性分散体E−12を得た。得られたポリエステル樹脂水性分散体E−12の固形分濃度は30質量%、体積平均粒径は600nm、有機溶剤の含有率は18質量%であった。しかしながら、E−12は、有機溶剤(イ)としてアルコールではないジクロロメタン(ハロゲン化炭化水素)を用いたため、25℃で2日間静置すると、ゲル状態になり、安定な水性分散体を得ることはできなかった。その結果を表2に示す。
【0080】
[ポリエステル樹脂水性分散体E−13の製造例]
仕込む有機溶剤をMEKからN−メチルピロリドンに変更すること以外はE−3と同様の方法でポリエステル樹脂水性分散体E−13を得た。得られたポリエステル樹脂水性分散体E−13の固形分濃度は30質量%、体積平均粒径は1100nm、有機溶剤の含有率は15質量%であった。しかしながら、E−13は、有機溶剤(ロ)として沸点が150℃より高い、N−メチルピロリドン(沸点:202℃)を用いたため、水性分散体の製造工程のうち、脱溶剤工程において有機溶剤の完全な除去をおこなうことができず、25℃で2日間静置すると、ゲル状態になり、安定な水性分散体を得ることはできなかった。その結果を表2に示す。
【0081】
[ポリエステル樹脂水性分散体E−14の製造例]
仕込む有機溶剤をMEKからトルエンに変更すること以外はE−3と同様の方法で転相乳化工程をおこなったが、ポリエステル樹脂は分散しなかった。すなわち、E−14は、有機溶剤(ロ)として水への溶解性が5g/L(20℃)未満である、トルエン(水への溶解性:4.5g/L(20℃))を用いたため、均一な水性分散体を得ることはできなかった。その結果を表2に示す。
【0082】
[ポリエステル樹脂水性分散体E−15の製造例]
仕込む有機溶剤をMEKからイソプロピルアルコールに変更してE−3と同様の方法で溶解工程をおこなったが、ポリエステル樹脂はほとんど溶解しなかった。すなわち、E−15は、有機溶剤(ロ)としてポリエステル樹脂を10質量%未満でしか溶解することができない、イソプロピルアルコール(ポリエステル樹脂の溶解性:1質量%以下)を用いたため、均一な水性分散体を得ることはできなかった。その結果を表2に示す。
【0083】
実施例1
ポリエステル樹脂(A)水性分散体としてE−1を、ポリエステル樹脂(B)水性分散体としてE−3を用い、E−1 70gに、E−3 30gを添加し、室温下で約5分間攪拌混合することにより、ポリエステル樹脂水性分散体混合物M−1を得た。
得られたポリエステル樹脂水性分散体混合物M−1について、厚さ0.3mmのA−PETシート(ミネロン化成工業社製、ミネロンA−PET、ガラス転移温度73℃、)上に、卓上型コーティング装置(安田精機製、フィルムアプリケータNo.542−AB型、バーコータ装着)を用いてコーティングした後、60℃に設定された熱風乾燥機中で1分間乾燥させることにより膜厚が1μmの樹脂被膜を形成した。各種特性評価をおこなった結果を表3に示す。
【0084】
【表3】

【0085】
実施例2〜実施例6
表3に示すポリエステル樹脂(A)水性分散体、ポリエステル樹脂(B)水性分散体の配合にした以外は、実施例1と同様にして、各種特性評価をおこなった。その結果を表3に示す。
【0086】
実施例7、実施例8
A−PETシートにコーティング後の乾燥温度をそれぞれ40℃、80℃とした以外は、実施例1と同様にして、各種特性評価をおこなった。その結果を表3に示す。
【0087】
比較例1〜比較例8
表3に示すポリエステル樹脂(A)水性分散体、ポリエステル樹脂(B)水性分散体の配合にした以外は、実施例1と同様にして、各種特性評価をおこなった。その結果を表3に示す。
【0088】
比較例9、比較例10
A−PETシートにコーティング後の乾燥温度をそれぞれ30℃、120℃とした以外は、実施例1と同様にして、各種特性評価をおこなった。その結果を表3に示す。
【0089】
実施例において、本発明のポリエステル樹脂水性分散体は、常温での保存安定性が十分であり、ガラス転移温度の低い基材(A−PETシート;ガラス転移温度73℃)に対して、低温造膜性に優れ、水性分散体から得られる樹脂被膜は、耐ブロッキング性、低温ヒートシール性に優れていることがわかる。
【0090】
比較例1は、ポリエステル樹脂(B)の数平均分子量が本発明の範囲を下回っているため、低温造膜性や低温ヒートシール性に劣る被膜であった。
【0091】
比較例2は、ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度が本発明の範囲を上回っているため、低温造膜性や低温ヒートシール性に劣る被膜であった。
【0092】
比較例3は、ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量が本発明の範囲を下回っているため、低温造膜性や低温ヒートシール性に劣る被膜であった。
【0093】
比較例4は、ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度が本発明の範囲を下回っているため、耐ブロッキング性に劣る被膜であった。
【0094】
比較例5は、ポリエステル樹脂水性分散体E−10の製造時に、有機溶剤(イ)として沸点が150℃より高い、1−ヘキサノール(沸点:157℃)を用いたため、水性媒体の除去が不十分であり、良好な樹脂被膜が得られなかった。
【0095】
比較例6は、ポリエステル樹脂(A)の含有率が本発明の範囲を上回っているため、低温造膜性や低温ヒートシール性に劣る被膜であった。
【0096】
比較例7、比較例8は、ポリエステル樹脂(B)の含有率が本発明の範囲を上回っているため、耐ブロッキング性に劣る被膜であった。
【0097】
比較例9は、A−PETシートにコーティングした後の乾燥温度が低すぎるために、水性媒体の除去が不十分であり、良好な樹脂被膜が得られなかった。
【0098】
比較例10は、A−PETシートにコーティングした後の乾燥温度が高すぎるために、基材であるA−PETが著しく変形、収縮してしまい、良好な樹脂被膜が得られなかった。












【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が5000以上、ガラス転移温度が50℃以上であるポリエステル樹脂(A)と、数平均分子量が9000以上、ガラス転移温度が30℃以下であるポリエステル樹脂(B)とからなるポリエステル樹脂水性分散体であって、ポリエステル樹脂(A)は下記アルコール(イ)を用いて微分散されており、ポリエステル樹脂(B)は下記溶媒(ロ)を用いて微分散されており、ポリエステル樹脂固形分換算で(A)/(B)=80/20〜50/50(質量比)で混合し、40℃以上100℃未満の造膜温度で樹脂被膜の形成が可能なことを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体。
(イ) 沸点が150℃以下、水に対する溶解性が5g/L(20℃)以上であるアルコールの1種または2種以上からなる混合物
(ロ) 温度を40℃以下に保った状態でポリエステル樹脂(B)を10質量%以上溶解することができ、かつ沸点が150℃以下、水に対する溶解性が5g/L(20℃)以上である有機溶剤の1種または2種以上からなる混合物
【請求項2】
ポリエステル樹脂(A)、および/または、ポリエステル樹脂(B)はその末端にカルボキシル基を有しており、かつ、カルボキシル基の一部、または、全部が塩基性化合物で中和されていることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂水性分散体。
【請求項3】
ポリエステル樹脂(A)の酸価が4〜40mgKOH/gであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂水性分散体。
【請求項4】
ポリエステル樹脂(B)の酸価が2〜10mgKOH/gであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂水性分散体。
【請求項5】
請求項1〜4に記載のポリエステル樹脂水性分散体から水性媒体を除去してなる被膜。
【請求項6】
請求項5に記載の被膜を熱融着してなる包装袋。















【公開番号】特開2009−221316(P2009−221316A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66085(P2008−66085)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】