説明

ポリエステル組成物およびそれを用いたフィルム

【課題】 酸化チタンの分散性に優れ、カルボキシル末端基が低いポリエステル組成物およびそれを用いた太陽電池用途に適した白色ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから成るポリエステルであって、該ポリエステルが、平均粒径0.1〜1.0μm、比抵抗が7000〜10000Ω・cm、多価アルコールで0.05〜2重量%表面処理されたアナターゼ型酸化チタンを10〜60重量%含有し、かつ、カルボキシル末端基が50〜100eq/tであることを特徴とするポリエステル組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル組成物およびそれを用いたフィルムに関するものである。詳しくは、酸化チタンの分散性に優れ、カルボキシル末端基の低いポリエステル組成物であることから、白色ポリエステルフィルム、特に太陽電池用白色ポリエステルフィルムとして好適なポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンを含有せしめたポリエステル組成物および白色ポリエステルフィルムは、従来より種々提案されており、該フィルムの保持する優れた特性により、磁気記録カードや印画紙、X線増感紙、ラベルなど各種用途に広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アナターゼ型酸化チタンが含有されたポリエステルフィルムが記載されているものの、酸化チタンに表面処理を実施していないため酸化チタンの分散性が不十分である。また、特許文献2には、比抵抗値の高い酸化チタン粒子が記載されているが表面処理を実施していないため同様に酸化チタンの分散性に劣り、またカルボキシル末端基についてはまったく考慮されておらず太陽電池用白色ポリエステルフィルムとして使用する際に耐加水分解性に劣る。また、特許文献3ではアルミニウム化合物および/またはケイ素化合物で表面処理した酸化チタンを使用しているが、無機系の表面処理の場合、比抵抗値が高くなり、酸化チタンの分散性に劣り、またカルボキシル末端基について考慮されておらず太陽電池用途に使用する際に耐加水分解性に劣る。また、特許文献4には、酸化チタンのトリメチロールプロパンによる表面処理が記載されているが比抵抗について記載がなく、粒子の分散性に劣り、また、ポリエステル組成物のカルボキシル末端基について記載されていないため、上記同様に太陽電池用に使用する際に、耐加水分解性に劣る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−178224号公報
【特許文献2】国際公開第1998/00365号公報
【特許文献3】特開昭63−265948号公報
【特許文献4】特開2000−109659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記した従来の課題を解決し、酸化チタンの分散性に優れ、カルボキシル末端基の低いポリエステル組成物およびそれを用いたポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した本発明の目的は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから成るポリエステルであって、該ポリエステルが、平均粒径0.1〜1.0μm、比抵抗が7000〜10000Ω・cm、多価アルコールで0.05〜2.0重量%表面処理されたアナターゼ型酸化チタンを10〜60重量%含有し、かつ、カルボキシル末端基が50〜100eq/tであることを特徴とするポリエステル組成物によって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリエステル組成物はその特性から、酸化チタンの分散性に優れ、カルボキシル末端基の低いポリエステル組成物であることから、白色ポリエステルフィルム、特に太陽電池用白色ポリエステルフィルムとして好ましく用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
酸化チタンの結晶形態は、ルチル型とアナターゼ型の2種類の結晶形態が知られているが、本発明においては、樹脂の劣化が少なく、青み色調を有し、低い硬度を有するアナターゼ型である必要がある。
【0009】
酸化チタンの平均粒子径は、0.1〜1.0μmであることが必要であり、好ましくは0.25〜0.85μm、より好ましくは0.4〜0.7μmである。0.1μm未満の場合は、均一に分散することが難しく、1.0μmより大きい場合は、成形品に粗大な突起が発生して、耐摩耗性を低下させる。
【0010】
酸化チタンの比抵抗は、7000〜10000Ω・cmであることが必要であり、好ましくは7500〜9500Ω・cm、より好ましくは8000〜9000Ω・cmである。7000Ω・cm未満の場合は、すなわちイオン性の不純物が多いということであり、酸化チタンが凝集しやすいため好ましくない。また、10000Ω・cmを超えるものはイオン性の不純物が極めて少ないことを意味するが、10000Ω・cmを超えるものを製造することは困難である。イオン性の不純物とは、主に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、リン化合物である。
【0011】
酸化チタンの比抵抗を上記範囲とする方法については特に限定されるものではないが、酸化チタンの粗大粒子の除去およびイオン性不純物の除去が同時にできるスーパーデカンターでの湿式分級が好ましく使用され、酸化チタンの凝集した粗大粒子の分散のためサンドミルでの湿式粉砕と組み合わせてスーパーデカンターでの湿式分級をそれぞれ3回以上繰り返すことがより好ましい。
【0012】
スーパーデカンターでの湿式分級処理条件についても特に限定されるものではないが、酸化チタンは、イオン性不純物の除去効率の点から水スラリーとすることが好ましく、濃度は10〜30%好ましく、ボール回転数は、3000〜5000rpm、バックドライブ回転数は、1500〜2000rpm、供給速度0.2〜0.6m3/hrで実施することが好ましい。また、スラリー温度は、イオン性不純物の除去効率の観点から高温が好ましく、分級の観点からは低温が好ましいため、両者を両立する温度として、スチーム等で加熱し、40〜60℃で実施することが好ましい。
【0013】
本発明における酸化チタンは、多価アルコールで表面処理することが必要である。多価アルコールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリプロパノールエタン、ペンタエリスリトール、および、ペンタエリトリット等が挙げられる。これらの中では、例えば融点が約60℃のトリメチロールプロパンに対して、トリメチロールエタンは、約200℃と融点が高いため酸化チタンへ表面処理を実施する際に計量性が高い粉体で取り扱うことができ、また、融点が高く分解温度も比較的高いため、表面処理効率が高く、後工程での分解を最小限にできるため、好ましく使用される。また、多価アルコールでの表面処理は、酸化チタンの表面の活性を低下させ、ポリエステル組成物のカルボキシル末端基の増加を抑える効果があり、この点においても表面処理効率が高いためトリメチロールエタンが更に好ましく使用される。これらの多価アルコールは単独で使用しても良いが、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0014】
該酸化チタンの多価アルコールでの表面処理量は、酸化チタンに対して0.05〜2.0重量%であること必要がある。粒子分散性の観点から好ましくは0.1〜1.0重量%、より好ましくは0.2〜0.5重量%である。0.05重量%未満の場合は、表面処理量が少なく酸化チタンに凝集が見られたり、ポリエステル組成物のカルボキシル末端基が高くなったりする。また、2.0重量%より多くてもそれ以上の分散性向上の効果は低く、コストアップになり、また酸化チタンの混練時に高温下で晒されることで分解して異物が発生したり、ポリエステル組成物およびフィルムの色調を悪化させることがある。
【0015】
酸化チタンへの多価アルコールでの表面処理方法は、特に限定されるものではないが、粉砕と表面処理が同時に行えるため、酸化チタン製造時の最終工程での乾式粉砕時に実施することが好ましい。乾式粉砕についても特に限定されるものではなく、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル、スネイルミル等が挙げられるが、粉砕能力が高く、均一に表面処理剤が被覆され易く、処理能力も高いことからジェットミルが好ましく使用される。この際、表面処理剤は、粉砕助剤としての効果も発現する。ジェットミルによる粉砕・表面処理条件は、高温、高圧下で実施することが好ましく、具体的にはエア温度250〜300℃、圧力4〜10kg/cm、風量5〜15m3/minが好ましい。
【0016】
また、リン元素を酸化チタンに対して300〜700ppm含有せしめることが好ましい。より好ましくは350〜650ppm、更に好ましくは400〜600ppmである。これは、酸化チタンの焼成中にルチル型に転位するのを防止だけでなく、ポリエステル組成物を製造する際に、カルボキシル末端基が高くなるのを防ぐ効果がある。
【0017】
本発明におけるポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸あるいはそのジアルキルエステル等の二官能成分とグリコール成分を主原料として重縮合反応によって製造されるポリエステルである。特に、このうちポリエチレンテレフタレートを主体とするものが好ましく、製造方法としては、芳香族ジカルボン酸のジアルキルエステルを主原料としたものと芳香族ジカルボン酸を主原料としたものが好ましい。
【0018】
該ポリエステルは、共重合成分として20モル%以下を他のジカルボン酸やグリコール成分で置き換えてもかまわない。かかる共重合成分の例として、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸成分、およびテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリオキシアルキレングリコール、p−キシリレングリコール、1、4−ヘキサンジメタノール、5−ナトリウムスルホレゾルシン等のジオール成分が挙げられる。また、必要に応じて耐熱安定剤や、抗酸化剤、帯電防止剤の添加物を加えてもかまわない。
【0019】
本発明における酸化チタンのポリエステル組成物に対する含有量は10〜60重量%である必要があり、好ましくは20〜55重量%、より好ましくは30〜50重量%である。含有量が10重量%未満ではポリエステルフィルムとした際に、十分な白色度が得られず、ポリエステル組成物のマスターバッチとして使用する場合は十分な高濃度マスターでないので製造コストが高くなる。一方60重量%を越えるとポリエステル組成物の溶融時の濾過圧力が高くなり、ポリエステルフィルムとする際に通過させるポリマーフィルターでの濾過圧力が高く、また濾過圧力変動も大きくなる。ポリエステル組成物のマスターバッチとして使用する場合も濾過圧力の上昇速度が速く、酸化チタンの分散性が劣るため好ましくない。
【0020】
ポリエステル組成物に酸化チタンを含有せしめる手段は特に限定されるものではなく、ポリエステル組成物の重合工程の途中で酸化チタンを添加してもよく、あるいは、ポリエステル組成物のペレットと酸化チタンを混練してもよいが、高濃度で分散させるためには混練が好ましい。
【0021】
本発明において酸化チタンをポリエステルに混練分散するための混練機としては、混練用のロータやブレードを持つ押出機、同方向あるいは異方向回転型の二軸混練押出機、一軸型のコンティニュアスニーダーなどの連続式混練、また三本ロール、バンバリミキサ、ヘンシェルミキサ、ニーダなどの回分式混練機等が使用される。中でも強いせん断力をかけながら連続的に混練できることから同方向回転型の連続式二軸混練押出機が好適に使用される。
【0022】
連続式二軸混練押出機を用いた混練条件は、特に限定されないが、酸化チタン粒子は粉体で、溶融したポリエステルにサイドフィーダーを使用して添加することが好ましい。また、ポリエステルと酸化チタンの合計吐出量Qとスクリューの回転数Nsとの比(Q/NS)は、0.5〜1.0、樹脂温度は260〜285℃で混練することが好ましい。
【0023】
本発明のポリエステル組成物は、カルボキシル末端基が50〜100eq/tである必要がある。好ましくは、50〜85eq/t以下、更に好ましくは50〜70eq/t以下である。100eq/tを超えるとカルボキシル末端基が多いことによって、太陽電池用途に使用した際に耐加水分解性が劣り、50eq/t未満とすることは、生産性も考慮した生産量および高濃度酸化チタンとした場合に製造が困難である。
本発明におけるポリエステル組成物の固有粘度は、得られるフィルムの強度、加工性等の点で、0.40dl/g以上が好ましく、より好ましくは0.45〜0.7dl/gである。
【0024】
本発明の製造方法から得られるポリエステル組成物は、ポリエステルフィルムに成型することができる。ポリエステルフィルムは、未延伸のシート状でもよいし、一軸または二軸に延伸された延伸フィルムであってもよい。また、製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、以下の製法をあげることができる。すなわち、ポリエステル組成物を乾燥後、溶融押出しして未延伸シートとし、続いて二軸延伸、熱処理しフィルムにする。二軸延伸は縦、横逐次延伸あるいは二軸同時延伸のいずれでもよく、延伸倍率は、通常、縦、横それぞれ2〜5倍が適当である。また、二軸延伸後、さらに縦、横方向のいずれかに再延伸してもよい。
【0025】
この際、本発明のポリエステル組成物、フィルムは特に限定されないが、炭酸カルシウム粒子、凝集シリカ粒子、コロイダルシリカ粒子や蛍光増白剤、末端封鎖剤を目的に応じて添加しても良い。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
なお、物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
【0027】
(1)酸化チタンの平均粒子径
酸化チタン粒子を、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製LA950)を用いて粒度分布の測定を行う。測定温度25℃、純水溶媒の循環速度1.2L/minの条件下、酸化チタンを光線透過率80〜90%になるように添加し、測定した等価球形分布における積算体積分率50%の粒子径を平均粒子径とした。
【0028】
(2)酸化チタンの比抵抗
ビーカー(300ml)に純水180gと酸化チタン20gを秤量しガラス棒で十分に攪拌、分散させる。この際使用する純水は比抵抗が25×10Ω・cm以上のものを使用する。次に該分散液を電熱器上で5分間煮沸する。煮沸後、室温まで冷却し該分散液の重量を200g(±0.1g以内)となるように純水を追加する。該分散液を18℃に調整後、電気伝導度計(東亜電波(株)製CM−30S)にて測定し指示値を読む。次式によって指示値を比抵抗に換算する。
比抵抗(Ω・cm)=1/R×10
R:試料の電気伝導度計指示値(μS/cm)
(3)ポリエステル組成物の固有粘度
25℃のオルトクロロフェノールで溶解後、酸化チタンを遠心沈降後上澄み液を採取し、0.1g/cc濃度で測定した。
【0029】
(4)酸化チタン、ポリエステル組成物の金属元素量
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所社製、MESA−500W型)で、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属元素、リン元素、チタン元素を測定し、あらかじめ求めた検量線より求めた。
【0030】
(5)ポリエステル組成物のカルボキシル末端基量
Mauriceの方法に準じた。ポリエステル組成物2gをo−クレゾール/クロロホルム(重量比7/3)50mlに溶解し、遠心沈降後の上澄み液を採取した。該上澄み液を、N/20−NaOHメタノール溶液によって滴定し、カルボキシル末端基量として当量/ポリエステル1tの値で示した。
【0031】
(6)ポリエステル組成物中のポリマー濾過性(ろ圧ΔP)
ポリエステル組成物中の粗大粒子量の指標として、富士フィルター製フジメルトスピニングテスター(MST−C400)を用いて濾過圧力を測定した。ポリエステル組成物のチップをあらかじめ145℃で7.5時間乾燥後、メルトスピニングテスターのシリンダー温度290℃で、濾過面積2.5cmのフィルタ−目開き20μm焼結繊維フィルター、吐出量14.4g/minの条件下測定し、初期圧力と3時間後圧力との差を濾過圧力ΔPとして判定した。ΔPが1MPa以下を合格○、1MPaを超えるものを×とした。
【0032】
(7)ポリエステルフィルムの白色度
日立自記分光光度計EPE−2を用いてタングステン光源で測定した450nmおよび550nmのフィルム各反射率R450およびR550から次式によって算出した。
白度(%)=4R450−3R550
(8)ポリエステルフィルムの隠蔽性
マクベス社透過濃度計TD−504で、フィルムの可視光線透過濃度を測定し、隠蔽性とした。ここでいう透過濃度は次式より算出した。
【0033】
O・D=−log(T/100)
ここで、O・D:透過濃度(−)
T:可視光透過率(%)
(9)ポリエステルフィルムの光沢度
JIS Z84741に従い、60度鏡面光沢を測定し、フィルムの光沢度を測定した。
【0034】
(10)ポリエステルフィルムの色調
フィルムを東京電色(株)製「TC−1800MKII」を用いてJIS Z−8722の方法に準じて、透過法によるL値、b値を測定した。
【0035】
(11)耐加水分解性
85℃−85%RHの雰囲気にフィルムをエージングし、ASTM−D61Tによりシートの破断伸度を測定し、エージングなしの破断伸度を100%にしたときの比(保持率)で比較し下記の基準で判定した。
エージング時間:0hr(100%)、3000hr
・ :保持率が60%以上
○:保持率が50%以上〜60%未満
△:保持率が40%以上〜50%未満
×:保持率が40%未満
実施例1
(酸化チタンの製造)
イルメナイト鉱を粉砕し、硫酸で溶解させながらチタン成分と硫酸とを反応させて、硫酸チタニル(TiOSO)を生成させ、静置分級、濾過した後、硫酸チタニルを加熱加水分解し含水酸化チタン(TiO(OH)2)を生成する。該含水酸化チタンを、酸化チタンに対してリン元素として500ppmとなるように五酸化二リンを添加し、ロータリーキルンを用いて950℃で10時間加熱焼成して、得られた二酸化チタン粒子を水スラリーとし、サンドミルで湿式粉砕し、粗粒と金属イオンを除去するための遠心分離の工程では、遠心分離器としてスーパーデカンター(トモエ製P−3000)を使用し湿式分級を実施した。該湿式分級は、酸化チタンの15%水スラリーを、ボール回転数4000rpm、バックドライブ回転数1800rpm、供給速度0.4m3/hr、温度45℃で実施し、酸化チタンの比抵抗値が9000Ω・cmとなるまで、サンドミルでの湿式粉砕、スーパーデカンターでの湿式分級を3回繰り返して実施した。その後、脱水・洗浄、150℃で乾燥後、トリメチロールエタンを酸化チタンに対して0.2重量%添加し、ジェットミルを用いて酸化チタンを50kg/hrで供給、エア温度270℃、圧力6.5kg/cm、風量10m3/minで乾式粉砕することで平均粒径0.5μm、比抵抗値9000Ω・cm、リン元素500ppmのアナターゼ型酸化チタンを得た。
【0036】
(無粒子 ポリエステル組成物Aの製造)
反応開始モル比1.15のテレフタル酸、エチレングリコールを140〜260℃で水を留出させながらエステル化反応を行う。エステル化反応が終了した後、常圧下、三酸化アンチモンをアンチモン元素として200ppm、酢酸マグネシウム・4水和物をマグネシウム元素として60ppm、さらにトリメチルフォスフェートをリン元素として15ppmとなる量添加し、反応系を常圧から100Paまで徐々に下げ、290℃まで昇温して重縮合反応を終了させポリエステル組成物Aを得た。ポリエステル組成物の特性は、固有粘度0.62dl/gであり、カルボキシル末端基30eq/tであった。
【0037】
(酸化チタン含有ポリエステル組成物Bの製造)
未乾燥ポリエステル組成物Aを50kg/hr、酸化チタンを粉体でサイドフィーダーより50kg/hrとなるように供給し、合計100kg/hr(Q)で46mmφのL/D45の同方向ベント式二軸混練機を用いて、スクリュー回転数200rpm(Ns)、Q/Ns=0.5で樹脂温280℃、真空度5kPaAで押し出しポリエステル組成物Bを得た。ポリエステル組成物Bの特性を表1に示すが、カルボキシル末端基も低く、濾過圧力も低いことから酸化チタンの分散性は良好であった。
【0038】
(凝集シリカ含有ポリエステル組成物Cの製造)
反応開始エチレングリコールモル比1.85のジメチルテレフタレート、エチレングリコールをエステル交換触媒として酢酸マンガンをマンガン元素として130ppm、三酸化アンチモンをアンチモン元素として400ppmとなるように加え、140〜220℃でメタノールを留出させ、エステル交換反応を終了させた。次いで、系内に平均粒径が3.6μm、吸油量が220ml/100gの凝集シリカを、6重量部およびリン酸をリン元素として80ppm(対凝集シリカ)を、エチレングリコールスラリーとして、添加した。反応系を常圧から100Paまで徐々に下げ、290℃まで昇温して重縮合反応を終了させポリエステル組成物Cを得た。ポリエステル組成物の特性は、固有粘度0.60dl/gであり、カルボキシル末端基15eq/tであった。
【0039】
(ポリエステルフィルムの製造)
ポリエステル組成物A(無粒子)、B(酸化チタン含有)、C(凝集シリカ含有)を67:28:5の比率でフィルムに配合して使用した。これらの原料については、減圧乾燥機にて乾燥し、押出機に供給した。ポリエステル組成物は押出機にて280℃で溶融状態とし、ギヤポンプおよびフィルタを介した後、Tダイに供給しシート状に成形した後、表面温度20℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化した。得られたキャストフィルムは、90℃に設定したロール群で加熱し、縦方向に3.2倍延伸後、テンターに導き、100℃の熱風で予熱後、横方向に3.7倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で200℃の熱風にて熱処理を行い、室温まで徐冷後、巻き取った。得られたフィルムの厚みは、50μmでフィルム中の酸化チタン含有量は14重量%であった。ポリエステルフィルムの特性を表2に示した。フィルムの白色度、隠蔽性、光沢度、色調、耐加水分解性ともに良好であった。
【0040】
実施例2〜3、6〜13
酸化チタンの平均粒径、表面処理剤の種類、表面処理量、リン量およびポリエステル組成物の酸化チタン含有量を表1に示す条件に変更した以外は実施例1と同様の方法でポリエステル組成物、フィルムを得た。結果を表1、2に示す。
【0041】
実施例4
酸化チタンの製造において、サンドミルでの湿式粉砕、スーパーデカンターによる湿式分級処理を1回に変更し、スーパーデカンターでの湿式分級条件で酸化チタンスラリー温度を20℃とする以外は実施例1と同様の方法でポリエステル組成物、フィルムを得た。結果を表1、2に示す。
【0042】
実施例5
酸化チタンの製造において、サンドミルでの湿式粉砕、スーパーデカンターによる湿式分級処理を5回に変更し、スーパーデカンターでの湿式分級条件で酸化チタンスラリー温度を55℃とする以外は実施例1と同様の方法でポリエステル組成物、フィルムを得た。結果を表1、2に示す。
【0043】
比較例1〜3、5〜10
酸化チタンの結晶形態、平均粒径、表面処理剤の種類、表面処理量およびポリエステル組成物の酸化チタン含有量を表1に示す条件に変更した以外は実施例1と同様の方法でポリエステル組成物、フィルムを得た。結果を表1、2に示す。
【0044】
比較例4
サンドミルでの湿式粉砕を1回、スーパーデカンターによる湿式分級処理を実施しないこと以外は実施例1と同様の方法でポリエステル組成物、フィルムを得た。結果を表1、2に示すが、カルボキシル末端基およびろ圧共に高く、フィルムの耐加水分解性が劣るものであった。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから成るポリエステルであって、該ポリエステルが、平均粒径0.1〜1.0μm、比抵抗が7000〜10000Ω・cm、多価アルコールで0.05〜2.0重量%表面処理されたアナターゼ型酸化チタンを10〜60重量%含有し、かつ、カルボキシル末端基が50〜100eq/tであることを特徴とするポリエステル組成物。
【請求項2】
多価アルコールがトリメチロールエタンであり、リン元素を酸化チタンに対して300〜700ppm含有することを特徴とする請求項1記載のポリエステル組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載のポリエステル組成物からなる白色ポリエステルフィルム。
【請求項4】
請求項3記載の白色ポリエステルフィルムが、太陽電池用白色ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2011−68756(P2011−68756A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220426(P2009−220426)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】