説明

ポリオレフィンブロックコポリマー

α−オレフィンと第2のオレフィンとのブロックコポリマーが開示されている。ブロックコポリマーは、高度にアイソタクチックではないが、アイソタクチック連鎖を含有しており、狭い分子量分布を有している。これらのブロックコポリマーを調製する方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−オレフィンと第2のオレフィンとのブロックコポリマーに関する。このブロックコポリマーは、高度にアイソタクチックではないが、アイソタクチック連鎖を含有し、狭い分子量分布を有する。これらのブロックコポリマーの混合物について開示する。
【背景技術】
【0002】
α−オレフィンと第2のオレフィンとのコポリマーは、周知であり、それらの分子量分布、およびモノマー単位の立体規則性によってランダムであるかまたはブロックであるとして特徴付けられる。「立体規則性」とは、α−オレフィンの繰り返し単位が、アイソタクチック、シンジオタクチックまたはアタクチックの立体配置で存在するかどうかを意味する。これらの特性は、コポリマーの処理加工の可能性および物理特性に影響する。最終使用用途によって、異なる特性が望ましい。
【0003】
ポリマー鎖中のコモノマーの含量およびコモノマーの分布もまたコポリマーの特性に影響する。Macromolecules 31(1998)1で、R.KravchenkoおよびR.Waymouthは、アリールインデンジルコノセンをエチレン−プロピレン共重合用の触媒として検討している。彼らは、検討した非架橋型触媒によるコモノマーのランダムまたは若干ブロック性の結合(モノマー反応性比の積r12=1.0〜1.9)および架橋型触媒による交互の分布を報告している。彼らは、文献中で既に検討されている18種の他の触媒の一覧表を示している。13種のメタロセン触媒のいずれもブロックコポリマーを生じなかった(r12は非常に低い0.14から非常に高い1.5まで変化する)。チーグラー−ナッタ触媒の中で不均一チタン触媒はブロックコポリマーを生じたが、このブロックコポリマーは幅広い分子量分布を有している。r12>2.0と狭い分子量分布の両方を有するポリマーはなかった。
【0004】
M.Galimberti等は、Macromolecules 32(1999年)7968で、いくつかのエチレン−プロピレンブロックコポリマーを発表しているが、それらは完全にアイソタクチック(アイソタクチシティーインデックス=1.0)であった。米国特許第6,111,046号は、プロピレン連鎖がアタクチック構造を持ち、そのコポリマーが実質的に無定形であるようなエチレンとプロピレンとのコポリマーを提供している。米国特許第5,700,896号は、長いアイソタクチック連鎖を持つがランダムコポリマーであるコポリマーを提供している。
【0005】
米国特許第6,232,260号は、インデノインドリル配位子に基づく遷移金属触媒の使用を開示している。オレフィンの組合せを使用することができることが述べられてはいるが、実施例はすべてエチレンの重合またはエチレンの1−ブテンとの共重合である。ブロックコポリマーを形成できるという示唆もないし、立体化学制御の示唆もない。
【0006】
2001年5月17日に出願された、係属中の特許出願第09/859,332号は、2つの非架橋型インデノインドリル配位子を有する3〜5族の遷移金属触媒の存在下で、プロピレンを重合し、得られたポリプロピレンがアイソタクチックおよびアタクチックのステレオブロック連鎖を有する方法を開示している。コポリマーは調製されておらず、その方法が共重合に適するであろうという示唆は何ら示されていない。
【0007】
一般に、高度にアイソタクチック(アイソタクチシティーインデックス>0.90)なコポリマーは、実質的に結晶性である。結晶性は、剛性を増加させる一方で、多くの場合ポリマーの弾性特性を低下させる。反対に、タクティシティーの低い(アイソタクチシティーインデックス<0.40)コポリマーは、軟らかく、柔軟であるが強度が低く、粘着性の感触を有する。中間のタクティシティーを有するコポリマーは、高度にアイソタクチックなコポリマーの剛性と強度をかなり保持しているのに、高められた可撓性および低い度合いの粘着性を有している。
【0008】
「ブロック性の」コポリマー、すなわち2.0を超えるr12値を有するコポリマーは、広範囲の他のポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィンエラストマーなどと高度に相容性である可能性を有する。その上、ブロック性のコポリマーは、高い熱特性を有することもできる。
【0009】
分子量分布(Mw/Mn)の狭いコポリマーが望ましく、多くの場合、広いMw/Mn値を有するポリマーと比較して改善された強度および力学特性を有するためである。
【0010】
この分野においてかなりの研究がなされたにもかかわらず、最大で2つの望ましい特徴を備えたコポリマーしか得られていない。3つの特徴、すなわち、ブロック性のコポリマーであって、狭い分子量分布を有し、高度にアイソタクチックではないが、比較的長いアイソタクチック連鎖を含有する立体規則性を有することをすべて備えたコポリマーが必要となっている。3つの特徴すべてを備えたコポリマーは、優れたエラストマー特性および熱可塑性エラストマー特性(高い引張り強さ、高い伸び、優れた弾性回復)および多数のオレフィンポリマーとの優れた相容性を有するはずである。
発明の概要
本発明は、α−オレフィンと第2のオレフィンとのブロックコポリマーに関する。そのブロックコポリマーは、0.40から0.90のアイソタクチシティーインデックスおよび6.0未満の分子量分布(Mw/Mn)を有する。さらに、該コポリマーは、十分なブロック性を有しており、オレフィンモノマーの反応性比の積(r12)は、2.0を超える。本発明のコポリマーは、優れたエラストマー特性および熱可塑性エラストマー特性を有しており、多数のオレフィンポリマーと相容する。
【0011】
また、共重合方法および該ポリオレフンブロックコポリマーと別のポリマーとの混合物が提供される。その共重合方法は、活性化剤と2つの非架橋型インデノインドリル配位子を有する3〜5族の遷移金属触媒との存在下で実施する。
発明の詳細な説明
共重合のための適当なα−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテン等のC3〜C20のα−オレフィンである。好ましいα−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンである。特に好ましいのはプロピレンである。第2のオレフィンは、第1のオレフィンとは異なるものである。適当な第2のオレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のC2〜C20のα−オレフィンである。好ましい第2のオレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンである。特に好ましいのは、エチレンである。α−オレフィンと第2のオレフィンの好ましい組合せは、プロピレンとエチレンである。第3のオレフィンも使用することができる。適当な第3のオレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のC2〜C20のα−オレフィンならびに1,5−ヘキサジエンおよび2,5−ノルボルナジエン等非の共役ジエンであり得る。好ましくは、該ブロックコポリマーは、60モル%を超えるプロピレン単位、より好ましくは80モル%を超えるプロピレン単位を含む。
【0012】
ポリマーまたはコポリマーのタクティシティーは、その特性に影響する。「タクティシティー」という用語は、ポリマーの立体化学的な配置を指す。例えば、隣接するモノマー単位は、同様のまたは反対の配置のいずれかをとることができる。すべてのモノマー単位が同様の配置をとる場合は、そのポリマーは、「アイソタクチック」である。隣接するモノマー単位が、反対の配置をとり、かつこの交互の配置がポリマー鎖全体に沿って続く場合、そのポリマーは、「シンジオタクチック」である。モノマー単位の配置が、ランダムである場合は、そのポリマーは、「アタクチック」である。2つの隣り合うモノマー単位、「ダイアード」が、同じ配置をとるとき、そのダイアードは、アイソタクチックまたは「メソ」(m)と呼ぶ。そのモノマー単位が反対の配置をとるときそのダイアードは、「ラセミ」(r)と呼ぶ。3つの隣接するモノマー単位、「トライアード」に対しては、3つの可能性がある。その3つの隣接するモノマー単位が同じ配置をとる場合は、そのトラアイアードは、mmと称する。rrトライアードは、両方の隣と反対の配置をとる中央のモノマー単位を有する。2つの隣接するモノマー単位が同じ配置をとり、それが3番目のモノマーと異なる場合はそのトライアードはmrタクティシティーを有すると称する。その配置は、Macromolecules 6(1973)925およびそこに引用されている参考文献、ならびにPCT国際出願WO 00/01745に記載されているように、13C核磁気共鳴分光法により測定することができる。ポリマーの立体化学に関するさらなる情報は、G.OdianのPrinciples of Polymerization,2nd edition(1981),568〜580頁を参照されたい。
【0013】
モノマー単位の配置は、ポリマーの特性に影響する。例えば、高度にアイソタクチックなポリプロピレンは直ちに結晶構造を形成し、優れた耐薬品性および耐熱性を有する。アイソタクチックポリプロピレンとは違って、アタクチックポリプレンは、無定形である。それは、アイソタクチックポリプロピレンより耐薬品性および耐熱性が小さい。それは主として接着剤に使用される。
【0014】
ポリマーのタクティシティーを定量するには、トライアードの配置からアイソタクチシティーインデックスを計算する。「アイソタクチシティーインデックス」とは、同じ配置を有するトライアードを全トライアードの合計で除した量を意味する。したがって、アイソタクチシティーインデックス=mm/[mm+mr+rr]である。完全にアイソタクチックなコポリマーは1.0のアイソタクチシティーインデックスを有するであろう。アイソタクチシティーインデックスが0.90を超える場合、そのコポリマーは、高度にアイソタクチックである。完全にアタクチックなコポリマーは、0.25のアイソタクチシティーインデックスを有するであろう。本発明のコポリマーは、高度にアイソタクチックではなく、比較的長いアイソタクチック連鎖を含有する。アタクチック立体連鎖のブロックもまた存在し得る。そのコポリマーは、0.40から0.90、好ましくは0.45から0.80のアイソタクチシティーインデックスを有することを特徴とする。
【0015】
このコポリマーは、狭い分子量分布を有する。その分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定することができ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である。狭い分子量分布とは、Mw/ Mnが、6.0未満、好ましくは4.0未満であることを意味する。分子量分布は、靭性および処理加工可能性等のポリマー特性に影響する。
【0016】
2つのオレフィンの反応性は、それらのポリマー鎖中の分布に影響する。モノマー反応性比の積は、Macromolecules 15(1982)1150に記載されているように、13C核磁気共鳴分光法により測定することができる。例えば、エチレン−プロピレンのコポリマーについて、分析は、ダイアードが、PP、EEおよびPEに相当することを示す。モノマー反応性比の積は、そのダイアードから計算でき、r12=EE(PP/(PE/2)2)である。コモノマー連鎖の分布がランダムの場合、r12は、約1.0である。交互のコモノマー分布のr12は1.0未満であり、各コモノマーのブロックがあるコポリマーは、1.0を超えるr12を有する。r12が大きいほど、ブロックの連鎖は長い。本発明のコポリマーは、ブロックコポリマーであって、r12が、2.0を超え、好ましくは2.5を超える。
【0017】
当該ブロックコポリマーは、α−オレフィンを第2のオレフィンと活性化剤および3〜5族の遷移金属触媒の存在下で共重合することによって調製することができる。好ましい触媒は、インデノインドール化合物に由来する2つのインデノインドリル配位子を有する。「インデノインドール化合物」とは、インドール環およびインデン環の両方を有する有機化合物を意味する。おのおのからの5員環が縮合している、すなわちそれらは、2つの炭素原子を共有している。インデノインドリル配位子は相互の架橋はしていない。
【0018】
その触媒は、一般構造
【0019】
【化1】

【0020】
を有しており、式中、Mは、3〜5族の遷移金属である。好ましくは、Mはジルコニウムである。インデノインドリル配位子、L1およびL2は、Mにπ結合している。L1およびL2は、同じであるかまたは異なるものでもよく、好ましくは次の代替構造:
【0021】
【化2】

【0022】
および
【0023】
【化3】

【0024】
を有する。R1は、好ましくは、アルキル、アリール、アラルキル、およびシリル基からなる群から選択される。例として、メチル、t−ブチル、フェニル、およびトリメチルシリル基がある。R2からR10は、同じまたは異なるものであり、好ましくは、水素、アルキル、アリール、アラルキル、シリル、ハロゲン、アルコキシ、アリールオキシ、シロキシ、チオエーテル、ニトロ、アミノ基および同種のものからなる群から選択される。
【0025】
その触媒は、2つの他の配位子、X1およびX2を有しており、それらは同じであるかまたは異なるものであってもよい。それらは、好ましくは、ハロゲン、アルコキシ、アリールオキシ、シロキシ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、およびヒドロカルビル基からなる群から選択される。ハロゲン等の置換活性配位子が特に好ましい。
【0026】
適当な触媒の例としては、ビス−(2−クロロ−5−フェニル−5,10−ジヒドロインデノ[1,2−b]インドリル)ジルコニウムジクロリド(構造I)、ビス−(5−フェニル−5,10−ジヒドロインデノ[1,2−b]インドリル)ジルコニウムジクロリド(構造II)、ビス−(5,8−ジメチル−5,10−ジヒドロインデノ[1,2−b]インドリル)ジルコニウムジクロリド(構造III)、およびビス−(5−トリメチルシリル−8−メチル−5,10−ジヒドロインデノ[1,2−b]インドリル)ジルコニウムジクロリド(構造IV)が挙げられる。より好ましい触媒は、ビス−(2−クロロ−5−フェニル−5,10−ジヒドロインデノ[1,2−b]インドリル)ジルコニウムジクロリド(構造I)である。
【0027】
【化4】

【0028】
当該触媒は、任意の知られている方法により調製することができる。米国特許第6,232,260号は、インデノインドール系触媒の調製方法を非常に詳細に教示している。例えば、触媒IIIは、次のスキームに従って製造することができる:
【0029】
【化5】

【0030】
触媒は、活性化する。適当な活性化剤としては、アルモキサン、アルキルアルミニウム、ハロゲン化アルキルアルミニウム、ホウ素またはアルミニウムの陰イオン化合物、トリアルキルホウ素およびトリアリールホウ素化合物等が挙げられる。実例としては、メチルアルモキサン(MAO)、ポリマーMAO(PMAO)、エチルアルミノキサン、ジイソブチルアルミノキサン、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミナート、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルボラート、トリ−n−オクチルボラート等、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0031】
活性化剤の選択は、使用する触媒および望ましいコポリマーの特性を含む多数の要因に依存する。例えばプロピレンのエチレンとの共重合においては、ビス(2−クロロ−5−フェニル−5,10−ジヒドロインデノ[1,2−b]インドリル)ジルコニウムジクロリドを触媒として、MAOを活性化剤として使用するときは、製造されるコポリマーは、トリイソブチルアルミニウムおよびトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートの組合せを活性化剤として使用して調製したコポリマーより高度のアイソタクチシティーインデックスおよび長いブロック連鎖を有する。
【0032】
場合によっては、触媒は、担体上に固定する。その担体は、好ましくは無機の酸化物および塩化物、ならびに有機ポリマー樹脂等の多孔質材である。好ましい無機酸化物としては、2、3、4、5、13、または14族元素の酸化物を含む。好ましい担体として、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、塩化マグネシウム、および架橋ポリスチレンが挙げられる。
【0033】
多くのタイプの重合法を使用することができる。その方法は、気相、バルク、溶液、またはスラリー中で実施することができる。その重合は、広い温度範囲にわたって遂行することができる。好ましくは、その温度は、約0℃から約150℃の範囲である。より好ましい範囲は、約25℃から約100℃までの範囲である。
【0034】
これらのコポリマーの独特の構造が、それらを優れた混合成分とする。比較的長いアイソタクチック連鎖が、他のポリマーおよびコポリマーとの相容性を高め、混合物に改良された衝撃強さ、剛性、透明度等の高められた特性を与えるはずである。そのコポリマーは、任意のいくつかの付加または縮合ポリマーまたはコポリマー、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、EPDM、ポリアミドまたはポリカーボナートなどと混合することができる。好ましくは、その混合物は、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはLLDPE等とのものである。これらについて、好ましい混合物は、ポリプロピレンとのものであり、特に好ましい混合物は、アイソタクチックポリプロピレンとのものである。
【0035】
以下の実施例は、本発明を説明するに過ぎない。当業者であれば、本発明の精神および特許請求の範囲内の多くの変更に気付くであろう。
【実施例】
【0036】
実施例A
触媒I:ビス(2−クロロ−5−フェニル−5,10−ジヒドロインデノ[1,2−b]インドリル)ジルコニウムジクロリドの調製
100mlの丸底フラスコ中で、50mlのエタノール、4mlのH2SO4、5.09グラムの5−クロロ−1−インダノン(0.0306モル)および6.74グラムのN,N−ジフェニルヒドラジンヒドロクロリド(0.0306モル)を混合し、4時間加熱還流させた。冷却すると反応混合物から茶色の固体が単離され、エタノールにより再結晶すると、7.55グラムのインデノインドール生成物を生じた(収率72%)。
【0037】
乾燥窒素雰囲気の下で、2.37グラム(0.0075モル)の2−クロロ−5−フェニル−5,10−ジヒドロインデノ[1,2−b]インドールを、40mlのヘキサン中でスラリー化した。そのスラリーに5.6mlのn−ブチルリチウムのシクロヘキサン中2.0Mの溶液を加えた。その混合物を、窒素雰囲気の下、室温で67時間攪拌した。その結果得られた黄色の固体を濾過し、ヘキサンで洗浄し、真空下で乾燥した(1.8グラム、収率67%)。
【0038】
上記のリチウム塩(0.9グラム、0.0028モル)を、4mlのトルエンと0.5mlのジエチルエーテル中に溶解した。ジルコニウムクロリド(0.34グラム、0.0014モル)を、10mlのジエチルエーテルと4mlのトルエン中でスラリー化した。リチウム塩溶液を、25℃の乾燥窒素雰囲気の下でそのスラリーにゆっくりと加えた。その混合物を次に25℃で40時間攪拌した。得られたオレンジ色の固体を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空下で乾燥した(0.72グラム、収率58%)。
実施例B
不活性雰囲気のドライボックス中で、実施例Aの触媒1の5mgを、トルエン中のMAOの10重量%の溶液の1.9mlおよび3.0mlのトルエンと混合することによって、触媒と活性化剤との溶液を調製した。その溶液は、重合反応器に添加する前に30分間静置したままにした。
実施例C
不活性雰囲気のドライボックス中で、実施例Aの触媒1の5mgを、12mgのトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、1.5mlのトリイソブチルアルミニウム(ヘプタン中25重量%)および3.5mlのトルエンと混合することによって、触媒と活性化剤との溶液を調製した。その溶液は、重合反応器に添加する前に30分間静置したままにした。
実施例1〜9
コポリマーの調製
1リットルのステンレス製の攪拌反応器中で共重合を実施した。反応器中に、室温で、乾燥した酸素を含まないプロピレンの400mlを仕込んだ。続いてトリイソブチルアルミニウムの25重量%の0.8mlのヘプタン(400ml)中の溶液を加え、50mlのイソブタンを含む反応器中に流し込んだ。所望のプロピレン/エチレン比を与えるために、エチレンガスを加えて、反応器の圧力を表1に示すように20、40、または60psigに上昇させた。重合は、表1示すように実施例BまたはCによる触媒溶液の1.0mlを加え、続いて50mlのイソブタンを流し込むことにより開始した。エチレンは、反応器圧力を維持するために必要に応じて供給し、温度は25℃に維持した。15分の重合の後、反応器の排気弁を開けて残留モノマーおよびイソブタンを除去した。ポリマーを反応器から取り出し、一晩1リットルのメタノール中に漬け、濾過して乾燥した。表1に共重合条件およびポリマーの特性を示す。
【0039】
【表1】

【0040】
比較例1および比較例6は、プロピレンのホモポリマーである。実施例2および3は、重複する重合であり、本発明が再現性のあることを示している。実施例2〜5および7〜9は、3つの望ましい特性を備えたコポリマー、すなわち、2.0を超えるr12、狭い分子量分布および高度にアイソタクチックではないが比較的長いアイソタクチック連鎖を含有する立体規則性のすべてを備えたブロックコポリマーの形成を示している。実施例2〜5および7〜9はまた、ホモポリマーの製品と比較すると、高められた生産性および一層高い分子量を示している。
実施例10および11
12が2.0を超える単一のコポリマーは、比較的長いブロックを有する。各々のr12が約1.0のランダムコポリマーの混合物であって、2.0を超えるr12値を有するコポリマーの組成物は可能である。従来のチーグラー−ナッタポリマーは、それらが基本的にランダムポリマーの混合物であるために、一般に高いr12値を有するものと考えられている。本発明のコポリマーが、単なるランダムコポリマーの混合物ではないことを証明するために、分別の検討を行った。これらのコポリマーが単なるランダムコポリマーの混合物である場合は、その画分のr12は、約1.0であるものと予想される。他方では、それらがかなりのブロック性を有するコポリマーである場合は、その画分は、2.0を超えるr12を有するはずである。
実施例10
実施例3のコポリマーを、圧縮成形してほぼ75〜100ミクロンの厚さのフィルムとし、ほぼ12mm平方の断片に切断した。これらの断片の5グラムを、次に、400mlのヘキサンを含有するフラスコ中で、室温で50分間攪拌した。不溶性物質を網目スクリーン上に集め、乾燥した。ヘキサン可溶性コポリマーをメタノール中で沈澱させて乾燥した。全体の回収率は96%であった。ヘキサン不溶性の画分は、もとのポリマー重量の53%を示し、以下の特性:Mw=404,000;Mw/Mn=3.8;結合したエチレン=10.3モル%;r12=3.6、を有していた。ヘキサンに可溶性の画分は、もとのポリマー重量の43%を示し、以下の特性:Mw=257,000;Mw/Mn=3.9;結合したエチレン=12.4モル%;r12=3.1、を有していた。
【0041】
この手順により、コポリマーは、異なる分子量およびコモノマー濃度を有する画分に分離された。これらの画分のそれぞれは、ポリマー組成物全体にわたるコモノマー結合のブロック性を示す高いr12を有していた。
実施例11
実施例4のコポリマーを、圧縮成形してほぼ75〜100ミクロンの厚さのフィルムとし、ほぼ12mm平方の断片に切断した。これらの断片の5グラムを、次に、400mlのヘキサンを含有するフラスコ中で、室温で90分間攪拌した。不溶性物質を網目スクリーン上に集め、乾燥した。ヘキサン可溶性コポリマーをメタノール中で沈澱させて乾燥した。全体の回収率は90%であった。ヘキサン不溶性の画分は、もとのポリマー重量の22%を示し、以下の特性:Mw=459,000;Mw/Mn=3.5;結合したエチレン=12.5モル%;r12=4.0、を有していた。ヘキサンに可溶性の画分は、もとのポリマー重量の68%を示し、以下の特性:Mw=287,000;Mw/Mn=4.0;結合したエチレン=22.0モル%;r12=3.0、を有していた。
【0042】
この手順により、コポリマーは、異なる分子量およびコモノマー濃度を有する画分に分離された。これらの画分のそれぞれは、2.0を超えるr12を有しており、ポリマー組成物全体にわたるコモノマー結合のブロック性を示した。
【0043】
かくして、実施例10および11により、コポリマーは、異なる分子量およびコモノマー含量のランダムコポリマーの単なる組合せではないことが立証された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−オレフィンと第2のオレフィンとの繰り返し単位を含むブロックコポリマーであって、以下の特性:
(a)0.40から0.90のアイソタクチシティーインデックス、
(b)6.0未満の分子量分布、および
(c)2.0を超えるr12(但し、r12は、前記α−オレフィンと第2のオレフィンの反応性比の積である)
を示すコポリマー。
【請求項2】
前記α−オレフィンが、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンからなる群から選択される請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
前記第2のオレフィンが、前記α−オレフィンとは異なるものであって、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンからなる群から選択される請求項1に記載のコポリマー。
【請求項4】
第3の繰り返し単位をさらに含む請求項1に記載のコポリマー。
【請求項5】
前記α−オレフィンが、プロピレンである請求項2に記載のコポリマー。
【請求項6】
前記第2のオレフィンが、エチレンである請求項3に記載のコポリマー。
【請求項7】
前記第2のオレフィンが、エチレンである請求項5に記載のコポリマー。
【請求項8】
60モル%を超えるプロピレンの繰り返し単位を含む請求項7に記載のコポリマー。
【請求項9】
80モル%を超えるプロピレンの繰り返し単位を含む請求項8に記載のコポリマー。
【請求項10】
請求項1に記載のコポリマーと別のポリマーとを含む混合物。
【請求項11】
前記別のポリマーが、ポリプロピレンである請求項10に記載の混合物。
【請求項12】
以下の特性:
(a)0.45から0.80のアイソタクチシティーインデックス、
(b)4.0未満の分子量分布、および
(c)2.5を超えるr12
を示す請求項1に記載のコポリマー。
【請求項13】
活性化剤および2つの非架橋型インデノインドリル配位子を有する3〜5族の遷移金属触媒の存在下でα−オレフィンを第2のオレフィンと共重合するステップを含む方法であって、得られるブロックコポリマーが、アイソタクチックおよびアタクチックのステレオブロック連鎖を有する方法。
【請求項14】
前記触媒が、一般構造
【化1】

[式中、Mは、3〜5族の遷移金属であり;X1およびX2は、同一または異なるものであって、ハロゲン、アルコキシ、アリールオキシ、シロキシ、ジアルキルアミノおよびヒドロカルビル配位子からなる群から選択され;L1およびL2は、同一または異なるものであって、
【化2】

および
【化3】

(但し、R1は、アルキル、アリール、アラルキル、およびシリル基からなる群から選択され;R2からR10は、同一または異なるものであって、水素、アルキル、アリール、アラルキル、シリル、ハロゲン、アルコキシ、アリールオキシ、シロキシ、チオエーテル、ニトロ、ジアルキルアミノ、およびジアリールアミノ基からなる群から選択される)からなる群から選択される]を有する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記重合を、約0℃から150℃の範囲内の温度で実施する請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記コポリマーが、以下の特性:
(a)0.40から0.90のアイソタクチシティーインデックス、
(b)6.0未満の分子量分布、および
(c)2.0を超えるr12(但し、r12は、前記α−オレフィンおよび第2のオレフィンの反応性比の積である)
を有する請求項13に記載の方法。
【請求項17】
一般構造
【化4】

を有する触媒およびアルモキサン活性化剤の存在下でα−オレフィンを第2のオレフィンと共重合するステップを含む方法であって、得られるコポリマーが、アイソタクチックおよびアタクチックのステレオブロック連鎖を有する前記方法。
【請求項18】
請求項13に記載の方法により調製されたコポリマー。
【請求項19】
請求項18に記載のコポリマーと別のポリマーとの混合物。
【請求項20】
前記別のポリマーが、ポリプロピレンである請求項19に記載の混合物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−オレフィンと第2のオレフィンおよび第3のオレフィンとの繰り返し単位を含むブロックコポリマーであって、以下の特性:
(a)0.40から0.90のアイソタクチシティーインデックス、
(b)6.0未満の分子量分布、および
(c)2.0を超えるr12(但し、r12は、前記α−オレフィンと第2のオレフィンの反応性比の積である)
を示すコポリマー。
【請求項2】
プロピレンが60モル%を超え、第2のオレフィンの繰り返し単位を含むブロックコポリマーであって、以下の特性:
(a)0.40から0.90のアイソタクチシティーインデックス、
(b)6.0未満の分子量分布、および
(c)2.0を超えるr12(但し、r12は、プロピレンと第2のオレフィンの反応性比の積である)
を示すコポリマー。
【請求項3】
80モル%を超えるプロピレンの繰り返し単位を含む請求項2記載の共重合体。
【請求項4】
請求項2記載の共重合体と第2のポリマーを含む混合物。
【請求項5】
第2のポリマーがポリプロピレンである請求項4記載の混合物。
【請求項6】
以下の特性:
(a)0.45から0.80のアイソタクチシティーインデックス、
(b)4.0未満の分子量分布、および
(c)2.5を超えるr12
を示す請求項2に記載のコポリマー。

【公表番号】特表2006−503125(P2006−503125A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−527560(P2004−527560)
【出願日】平成15年6月5日(2003.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/017589
【国際公開番号】WO2004/014972
【国際公開日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【出願人】(501391331)エクイスター ケミカルズ、 エルピー (30)
【氏名又は名称原語表記】Equistar Chemicals,LP
【Fターム(参考)】