説明

ポリオレフィン系樹脂発泡体とその製造方法

【課題】 柔軟性、クッション性に優れるとともに、良好な加工性、特に優れた切断加工性を有するポリオレフィン系樹脂発泡体を得る。
【解決手段】 (1)(A)ゴムと、(B)210℃、引取速度2.0m/minにおける溶融張力が3.0cN未満の(B−1)α−オレフィン系結晶性熱可塑性樹脂及び/又は(B−2)α−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂と、を含む混合物を、(C)架橋剤の存在下に動的に熱処理して得られる熱可塑性エラストマー組成物と、(2)ポリオレフィン系樹脂、(3)平均粒子径が0.1μm以上2.0μm未満の造核剤、を少なくとも含有するポリオレフィン系樹脂組成物を超臨界状態の二酸化炭素により発泡させてなるポリオレフィン系樹脂発泡体。発泡体の密度は例えば0.2g/cm3以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性、クッション性、加工性に優れたポリオレフィン系樹脂発泡体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器や情報機器等の内部絶縁体、緩衝材、防塵材、遮音材、断熱材、或いは食品包装材、衣用材、建材、自動車や家電製品等の内装部品や外装部品用等として発泡体(発泡成形品)が用いられている。このような発泡体には、部品として組み込まれる際にそのシール性等を確保するという観点から、柔軟性、クッション性及び断熱性等の特性が要求される。発泡体の材料としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂発泡体が知られているが、これらの発泡体は、柔らかさ、クッション性の点でも十分でないという問題があった。このような問題を解決する試みとして、発泡の倍率を高くしたり、ポリオレフィン系樹脂にゴム成分などを配合して素材自体を柔らかくすることが行われている。しかし、通常のポリエチレンやポリプロピレンでは高温時での張力、すなわち溶融張力が弱く、高発泡倍率を得ようとしても発泡時に気泡壁が破れてしまい、ガス抜けが生じたり、気泡の合一が生じたりして思うように発泡倍率の高い、柔らかい発泡体を得ることは困難であった。
【0003】
特開2004−250529号公報には、上記の問題を解決するため、ポリオレフィン系樹脂とゴム及び/又は熱可塑性オレフィン系エラストマーからなるポリマー成分と、パウダー粒子を含む、溶融張力が20cN以上のポリオレフィン系樹脂発泡体用組成物を発泡成形させてなるポリオレフィン系樹脂発泡体が開示されている。しかし、得られる発泡体の柔軟性、クッション性、切断加工性などの点で未だ改善の余地があった。
【0004】
また、近年、電子機器や情報機器の小型化が進み、これに伴って内部絶縁体や緩衝材等として用いられる発泡体も幅や厚みの小さいことが要求されるようになってきている。しかしながら、従来のポリオレフィン系樹脂材料からなる発泡体では、特に加工幅が狭い場合、圧縮した際の歪みが大きく、例えば打ち抜き加工時には、打ち抜き部位の気泡がつぶれて発泡体の形状が回復しにくくなり、打ち抜き部位の上端部が丸みを帯びたり、打ち抜き部位(端部)の厚みが薄くなるといういう問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−250529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、柔軟性、クッション性に優れるとともに、良好な加工性、特に優れた切断加工性を有するポリオレフィン系樹脂発泡体と、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討した結果、ゴムと特定物性のα−オレフィン系熱可塑性樹脂とを含む混合物を架橋剤の存在下に動的熱処理して得られる熱可塑性エラストマー組成物と、ポリオレフィン系樹脂と、特定粒径の造核剤とを少なくとも含有するポリオレフィン系樹脂組成物を特定条件で発泡させると、柔軟性、クッション性に優れるとともに、打ち抜き加工時に打ち抜き部位の気泡がつぶれにくく、加工時の形状回復性に優れる発泡体が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)(A)ゴムと、
(B)210℃、引取速度2.0m/minにおける溶融張力が3.0cN未満の(B−1)α−オレフィン系結晶性熱可塑性樹脂及び/又は(B−2)α−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂と、を含む混合物を、
(C)架橋剤の存在下に動的に熱処理して得られる熱可塑性エラストマー組成物と、
(2)ポリオレフィン系樹脂、
(3)平均粒子径が0.1μm以上2.0μm未満の造核剤、を少なくとも含有するポリオレフィン系樹脂組成物を超臨界状態の二酸化炭素により発泡させてなるポリオレフィン系樹脂発泡体を提供する。
【0009】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡体の密度は、例えば0.2g/cm3以下である。前記ゴム(A)として、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルゴム、及びクロロプレンゴムからなる群より選択された少なくとも一種を使用できる。また、前記ポリオレフィン系樹脂(2)として、210℃、引取速度2.0m/minにおける溶融張力が3.0cN以上の樹脂を使用できる。
【0010】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡体は、成分(1)〜(3)に加え、さらに(4)脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸金属石鹸から選ばれた少なくとも1つの脂肪族系化合物を含有するポリオレフィン系樹脂組成物を超臨界状態の二酸化炭素により発泡させてなるポリオレフィン系樹脂発泡体であってもよい。
【0011】
前記脂肪族系化合物(4)の含有量は、成分(1)と成分(2)の合計量100質量部に対して、例えば1〜5質量部である。脂肪族系化合物(4)として脂肪酸、脂肪酸アミドが挙げられる。好ましい脂肪酸アミドにはエルカ酸アミドが含まれる。
【0012】
本発明は、また、
(1)(A)ゴムと、
(B)210℃、引取速度2.0m/minにおける溶融張力が3.0cN未満の(B−1)α−オレフィン系結晶性熱可塑性樹脂及び/又は(B−2)α−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂と、を含む混合物を、
(C)架橋剤の存在下に動的に熱処理して得られる熱可塑性エラストマー組成物と、
(2)ポリオレフィン系樹脂、
(3)平均粒子径が0.1μm以上2.0μm未満の造核剤、を少なくとも含有するポリオレフィン系樹脂組成物を超臨界状態の二酸化炭素により発泡させることを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法を提供する。
【0013】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法において、成分(1)〜(3)に加え、さらに(4)極性官能基を有し且つ融点が50〜150℃の化合物であって、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸金属石鹸から選ばれた少なくとも1つの脂肪族系化合物を含有するポリオレフィン系樹脂組成物を超臨界状態の二酸化炭素により発泡させてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、柔軟性、クッション性に優れるとともに、加工性に優れる。特に、発泡倍率が高くても、打ち抜き加工時において打ち抜き部位の気泡がつぶれにくく、優れた形状回復性を有する。そのため、加工幅を極めて狭くできるとともに、厚みの選択幅を広く取ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、熱可塑性エラストマー組成物(1)と、ポリオレフィン系樹脂(2)と、平均粒子径が0.1μm以上2.0μm未満の造核剤(3)とを少なくとも含有するポリオレフィン系樹脂組成物を超臨界状態の二酸化炭素により発泡させてなるものである。
【0016】
[熱可塑性エラストマー組成物(1)]
熱可塑性エラストマー組成物(1)は、(A)ゴムと、(B)210℃、引取速度2.0m/minにおける溶融張力が3.0cN未満の(B−1)α−オレフィン系結晶性熱可塑性樹脂及び/又は(B−2)α−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂と、を含む混合物を、(C)架橋剤の存在下に動的に熱処理して得られる組成物である。
【0017】
[ゴム(A)]
ゴム(A)(以下、「(A)成分」ともいう)としては、広く一般に知られている各種のゴムを用いることができる。(A)成分の具体例としては、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)等の共役ジエン系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等を挙げることができる。これらを一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、共役ジエン系ゴム、エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムが好ましい。
【0018】
(共役ジエン系ゴム)
共役ジエン系ゴムは、共役ジエン系化合物を、下記(a)〜(d)成分を主成分とする触媒を使用して重合することにより得られるものであることが好ましい。なお、前記共役ジエン系化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。また、共役ジエン系ゴムの、1,4−シス結合含量は90%以上であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、3.5以下であることが好ましい。
【0019】
(a)成分:周期律表の原子番号57〜71にあたる希土類元素含有化合物、又はこれの化合物とルイス塩基との反応から得られる化合物(以下、「(a)希土類金属化合物」ともいう)
(b)成分:アルモキサン
(c)成分:AlR123(式中、R1〜R2は同一又は異なり、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子であり、R3は、炭素数1〜10の炭素原子を含む炭化水素基である。但し、R3は、前記R1又はR2と同一であっても異なっていてもよい)に対応する有機アルミニウム化合物
(d)成分:ハロゲン化ケイ素化合物及び/又はハロゲン化有機ケイ素化合物(以下、「(d)ケイ素化合物」ともいう)
【0020】
((a)希土類化合物)
(a)成分は、周期律表の原子番号57〜71にあたる希土類元素含有化合物又はこれらの化合物とルイス塩基との反応から得られる化合物である。好ましい希土類元素は、ネオジム、プラセオジム、セリウム、ランタン、ガドリニウムであり、更に好ましくはネオジムである。なお、二種以上の希土類元素を用いてもよい。希土類元素含有化合物は、カルボン酸塩、アルコキサイド、β−ジケトン錯体、リン酸塩、又は亜リン酸塩であることが好ましく、なかでも、カルボン酸塩、又はリン酸塩が更に好ましく、カルボン酸塩が特に好ましい。
【0021】
希土類元素のカルボン酸塩は、例えば、一般式(R23−CO23M(前記式中、Mは周期律表の原子番号57〜71にあたる希土類元素であり、R23は炭素数1〜20の炭化水素基(好ましくは、飽和又は不飽和の、直鎖状、分岐状、又は環状)であり、カルボキシル基は1級、2級、又は3級の炭素原子に結合している。)で表される。具体的には、オクタン酸、2−エチル−ヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフテン酸、バーサチック酸(シェル化学社製の商品名であって、カルボキシル基が3級炭素原子に結合しているカルボン酸)等を挙げることができる。なかでも、2−エチル−ヘキサン酸、ナフテン酸、バーサチック酸の塩が好ましい。
【0022】
希土類元素のアルコキサイドは、例えば、一般式(R24O)3M(前記式中、Mは周期律表の原子番号57〜71にあたる希土類元素であり、R24は炭素数1〜20の炭化水素基(好ましくは、飽和又は不飽和の、直鎖状、分岐状、又は環状)であり、アルコキシ基は1級、2級、又は3級の炭素原子に結合している)で表される。「R24O」で表されるアルコキシ基の例としては、2−エチル−ヘキシルアルコキシ基、オレイルアルコキシ基、ステアリルアルコキシ基、フェノキシ基、ベンジルアルコキシ基等を挙げることができる。なかでも、2−エチル−ヘキシルアルコキシ基、ベンジルアルコキシ基が好ましい。
【0023】
希土類元素の β−ジケトン錯体としては、希土類元素の、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、プロピオニルアセトン、バレリルアセトン、エチルアセチルアセトン錯体等を挙げることができる。なかでも、アセチルアセトン錯体、エチルアセチルアセトン錯体が好ましい。
【0024】
希土類元素のリン酸塩又は亜リン酸塩としては、希土類元素の、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ビス(1−メチルヘプチル)、リン酸ビス(p−ノニルフェニル)、リン酸ビス(ポリエチレングリコール−p−ノニルフェニル)、リン酸(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)、リン酸(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−p−ノニルフェニル 、ビス (2−エチルヘキシル )ホスフィン酸、ビス(1−メチルヘプチル)ホスフィン酸、ビス(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸、(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸、(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフィン酸等を挙げることができる。なかでも、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ビス(1−メチルヘプチル)2−エチルヘキシルホスホン酸モノ−2−エチルヘキシル、 ビス(2−エチルヘキシル)ホスフィン酸の塩が好ましい。以上、例示したなかでも、ネオジムのリン酸塩、又はネオジムのカルボン酸塩が特に好ましく、ネオジムの 2−エチル−ヘキサン酸塩、ネオジムの バーサチック酸塩等のカルボン酸塩が最も好ましい。
【0025】
上記の希土類元素含有化合物を溶剤に容易に可溶化させるために用いられるルイス塩基は、希土類元素含有化合物1モルあたり、好ましくは0〜30モル、更に好ましくは1〜10モルの割合で用いられる。なお、ルイス塩基は、希土類元素含有化合物との混合物としても用いられる。ルイス塩基としては、例えば、アセチルアセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、チオフェン、ジフェニルエーテル、トリエチルアミン、有機リン化合物、1価又は2価のアルコールを挙げることができる。以上の(a)成分は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
((b)アルモキサン)
(b)成分は、下記式(1)又は(2)で表される構造の化合物である。また、ファインケミカル,23,(9),5(1994)、J.Am.Chem.Soc.,115,4971(1993)、J.Am.Chem.Soc.,117,6465(1995)で開示されているアルモキサンの会合体であってもよい。
【0027】
【化1】

【0028】
【化2】

【0029】
なお、前記式(1)及び(2)中、R25は 炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、nは2以上の整数である。また、R25としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、イソヘキシル、オクチル、イソオクチル基等を挙げることができる。なかでも、メチル、エチル、イソブチル、t−ブチル基が好ましく、メチル基が更に好ましい。また、nは2以上、好ましくは4〜100の整数である。(b)成分の具体例としては、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、n−プロピルアルモキサン、n−ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、t−ブチルアルモキサン、ヘキシルアルモキサン、イソヘキシルアルモキサン等を挙げることができる。
【0030】
(b)成分は、公知のいかなる技術を用いて製造したものであってもよい。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の有機溶媒中に、トリアルキルアルミニウム、又はジアルキルアルミニウムモノクロリドを加え、更に、水、水蒸気、水蒸気含有チッ素ガス、又は硫酸銅5水塩や硫酸アルミニウム16水塩等の結晶水を含む塩を加えて反応させることにより製造することができる。以上の(b)成分は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
((c)有機アルミニウム化合物)
(c)成分としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n− ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t− ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム、エチルアルミニウムジハライド、n−プロピルアルミニウムジハライド、イソブチルアルミニウムジハライド等を挙げることができる。なかでも、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。(c)成分は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
((d)ケイ素化合物)
(d)成分は、ハロゲン化ケイ素化合物、及び/又はハロゲン化有機ケイ素化合物である。ハロゲン化ケイ素化合物としては、例えば、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、四ヨウ化ケイ素、ヘキサクロロジシラン等を挙げることができる。
【0033】
また、ハロゲン化有機ケイ素化合物としては、例えば、トリフェニルクロロシラン、トリヘキシルクロロシラン、トリオクチルクロロシラン、トリブチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルクロロシラン、トリメチルブロモシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジヘキシルジクロロシラン、ジオクチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルジクロロシラン、フェニルトリシクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、トリクロロシラン、トリブロモシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、クロロメチルシラン、クロロメチルトリメチルシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、クロロメチルメチルジクロロシラン、クロロメチルトリクロロシラン、ジクロロメチルシラン、ジクロロメチルメチルジクロロシラン、ジクロロメチルジメチルクロロシラン、ジクロロテトラメチルジシラン、テトラクロロジメチルシラン、ビスクロロジメチルシリルエタン、ジクロロテトラメチルジシロキサン、トリメチルシロキシジクロロシラン、トリメチルシロキシジメチルクロロシラン、トリストリメチルシロキシジクロシラン等を挙げることができる。
【0034】
(d)成分としては、四塩化ケイ素、トリエチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルジクロロシラン、エチルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、トリクロロシラン、ジクロロテトラメチルジシラン、ジクロロテトラメチルジシロキサンが好ましく、四塩化ケイ素が更に好ましい。以上の(d)成分は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
(a)成分は、100gの共役ジエン系化合物に対して、0.0001〜1.0ミリモル用いることが好ましく、0.0005〜0.5ミリモル用いることが更に好ましい。0.0001ミリモル未満では、重合活性が低くなる傾向にある。一方、1.0ミリモル超であると、触媒濃度が高くなり、脱灰工程が必要となる傾向にある。
【0036】
(b)成分の使用量は、(a)成分に対するAlのモル比で表すことができる。(a)成分:(b)成分は、モル比で、1:1〜1:500とすることが好ましく、1:3〜1:250とすることが更に好ましく、1:5〜1:100とすることが特に好ましい。また、(a)成分:(c)成分は、モル比で、1:1〜1:300とすることが好ましく、1:3〜1:150とすることが更に好ましい。(a)成分:(d)成分は、モル比で、1:0.1〜1:30とすることが好ましく、1:0.2〜1:15とすることが更に好ましい。
【0037】
これらの触媒量や触媒構成成分比の範囲外では、高活性な触媒として作用し難く、又は触媒残渣除去する工程が必要になる場合がある。なお、(a)〜(d)成分以外に、重合体の分子量を調節する目的で、水素ガスを共存させて重合反応を行ってもよい。
【0038】
触媒成分として、(a)〜(d)成分以外に、必要に応じて、共役ジエン系化合物及び/又は非共役ジエン系化合物を、(a)成分1モルあたり、0〜50モルの割合で用いてもよい。この共役ジエン系化合物としては、重合用のモノマーと同じく、1,3−ブタジエン、イソプレン等を用いることができる。また、非共役ジエン系化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、トリイソプロペニルベンゼン、1,4−ビニルヘキサジエン、エチリデンノルボルネン等を挙げることができる。触媒成分として共役ジエン系化合物や非共役ジエン系化合物を併用することは必須ではないが、これを併用すると、触媒活性が一段と向上する利点がある。
【0039】
触媒は、例えば、溶媒に溶解した、(a)〜(d)成分、更に必要に応じて、共役ジエン系化合物及び/又は非共役ジエン系化合物を反応させることにより製造することができる。その際、各成分の添加順序は任意でよい。なお、各成分は、予め混合、反応、及び熟成させておくことが、重合活性の向上、重合開始誘導期間の短縮の意味から好ましい。熟成温度は、0〜100℃とすることが好ましく、20〜80℃とすることが更に好ましい。0℃未満では、十分に熟成が行われない傾向にある。一方、100℃超であると、触媒活性の低下や、分子量分布の広がりが起こる傾向にある。熟成時間は特に制限はなく、重合反応槽に添加する前にライン中で接触させることもできる。熟成時間は、0.5分以上あれば十分であり、数日間は安定である。
【0040】
(a)〜(d)成分を主成分とする触媒を使用して重合できる共役ジエン系化合物としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、ミルセン等を挙げることができる。なかでも、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエンが更に好ましい。これらの共役ジエン系化合物は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
共役ジエン系ゴムは、溶媒を用いて、又は無溶媒下で重合反応を行うことにより、製造することができる。重合溶媒としては、不活性な有機溶媒を用いることができる。このような有機溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭素数4〜10の飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭素数6〜20の飽和脂環式炭化水素;1−ブテン、2−ブテン等のモノオレフィン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロルエチレン、パークロルエチレン、1,2−ジクロルエタン、クロルベンゼン、ブロムベンゼン、クロルトルエン等のハロゲン化炭化水素を挙げることができる。
【0042】
重合温度は、通常、−30℃〜+200℃、好ましくは、0〜+150℃である。また、重合反応は、回分式でも、連続式でもよい。なお、重合溶媒を用いる場合、この溶媒中の単量体濃度は、通常、5〜50質量%、好ましくは7〜35質量%である。また、重合体の製造に際しては、触媒や重合体を失活させないために、重合系内に、酸素、水、又は炭酸ガス等の失活作用のある化合物の混入を極力なくすような配慮をすることが好ましい。
【0043】
(a)〜(d)成分を主成分とする触媒を用いると、1,4−シス結合含量が高く、かつ分子量分布がシャープな共役ジエン系ゴムを得ることができる。(a)〜(d)成分を主成分とする触媒を用いて得られる共役ジエン系ゴムの1,4−シス結合含量は、通常90%以上、好ましくは92%以上である。また、共役ジエン系ゴムの1,2−ビニル結合含量は、通常2.5%以下、好ましくは2.0%以下である。これらの範囲外では、機械的物性、ゴム弾性が低下する傾向にある。なお、共役ジエン系ゴムの1,4−シス結合含量等のミクロ構造は、触媒組成比、重合温度をコントロールすることによって容易に調整することができる。
【0044】
また、共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比であるMw/Mnは、好ましくは3.5以下、更に好ましくは3.3以下である。3.5超であると、ゴム弾性が低下する傾向にある。Mw/Mnは、(a)〜(d)成分のモル比をコントロールすることによって容易に調整することができる。共役ジエン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、好ましくは10〜100、更に好ましくは15〜90である。10未満であると、熱可塑性エラストマー組成物の機械的物性、ゴム弾性が低下する傾向にある。一方、100超であると、動的架橋時の加工性が低下する傾向にある。
【0045】
共役ジエン系ゴムの分子量は、広い範囲にわたって変化させることができる。共役ジエン系ゴムのGPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常、5万〜150万、好ましくは10万〜100万である。5万未満であると、熱可塑性エラストマー組成物の機械的物性、ゴム弾性が低下する傾向にある。一方、150万超であると、動的架橋時の加工性が低下する傾向にある。
【0046】
重合反応系に、必要に応じて、重合停止剤、重合体安定剤を加えるとともに、共役ジエン系重合体の製造における公知の脱溶剤を使用しつつ、乾燥操作を実施することによって、目的とする共役ジエン系ゴムを重合反応系から回収することができる。
【0047】
なお、前記触媒を用いて共役ジエン系化合物を重合し、引き続き、得られるポリマーの活性末端に、下記(e)〜(k)成分の群から選ばれた少なくとも一種の化合物を反応させる(以下、「変性」ともいう)ことが好ましい。これにより、分子量を増大した、又は分子鎖を分岐させた重合体を得ることができる。なお、この変性により、機械的物性、ゴム弾性が改良される。
【0048】
(e)成分:R4nM’X4-n、M’X4、M’X3 、R4nM’(−R5COOR64-n 、又はR4nM’(−R5COR64-n に対応するハロゲン化有機金属化合物、ハロゲン化金属化合物、又は有機金属化合物(但し、R4、R5 は同一又は異なる、炭素数1〜20の炭化水素基、R6は側鎖にカルボニル基又はエステル基を含んでいてもよい、炭素数1〜20の炭化水素基、M’はスズ原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、又はリン原子、Xはハロゲン原子、nは0〜3の整数である。)
【0049】
(f)成分:分子中に、Y=C=Z結合を有するヘテロクムレン化合物(但し、Yは炭素原子、酸素原子、チッソ原子、又はイオウ原子、Zは酸素原子、チッソ原子、又はイオウ原子である)。
【0050】
(g)成分:分子中、下記一般式(3)で表される結合を含有するヘテロ3員環化合物(但し、下記一般式(3)中、Y’は、酸素原子、チッソ原子、又はイオウ原子である)。
【0051】
【化3】

【0052】
(h)成分:ハロゲン化イソシアノ化合物。
【0053】
(i)成分:R7−(COOH)m、R8(COX)m、R9−(COO−R10)、R11−OCOO−R12,R13−(COOCO−R14m、又は下記一般式(4)に対応するカルボン酸、酸ハロゲン化物、エステル化合物、炭酸エステル化合物、又は酸無水物(但し,R7〜R15は同一又は異なる、炭素数1〜50の炭化水素基、Xはハロゲン原子、mは1〜5の整数である)。
【0054】
【化4】

【0055】
(j)成分:R161M”(OCOR174-l、R181M”(OCO−R19−COOR204-1、又は 下記一般式(5)に対応するカルボン酸の金属塩(但し、R16〜R22は同一又は異なる、炭素数1〜20の炭化水素基、M”はスズ原子、ケイ素原子、又はゲルマニウム原子、lは0〜3の整数である)。
【0056】
【化5】

【0057】
(k)成分:アルコキシシリル基を持つ化合物。
【0058】
(e)成分のうち、M’がスズ原子である場合としては、例えばトリフェニルスズクロリド、トリブチルスズクロリド、トリイソプロピルスズクロリド、トリヘキシルスズクロリド、トリオクチルスズクロリド、ジフェニルスズジクロリド、ジブチルスズジクロリド、ジヘキシルスズジクロリド、ジオクチルスズジクロリド、フェニルスズトリクロリド、ブチルスズトリクロリド、オクチルスズトリクロリド、四塩化スズ等を挙げることができる。
【0059】
また、(e)成分のうち、M’がケイ素原子である場合としては 、例えばトリフェニルクロロシラン、トリヘキシルクロロシラン、トリオクチルクロロシラン、トリブチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジヘキシルジクロロシラン、ジオクチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、四塩化ケイ素等を挙げることができる。
【0060】
更に、(e)成分のうち、M’がゲルマニウム原子である場合としては、例えばトリフェニルゲルマニウムクロリド、ジブチルゲルマニウムジクロリド 、ジフェニルゲルマニウムジクロリド、ブチルゲルマニウムトリクロリド、四塩化ゲルマニウム等を挙げることができる。また、 (e)成分のうち、M’がリン素原子である場合としては 、例えば三塩化リン等を挙げることができる。なお、これらの(e)成分を任意の割合で併用してもよい。
【0061】
(f)成分のうち、Yが炭素原子、Zが酸素原子である化合物はケテン化合物であり、 Yが炭素原子、Zがイオウ原子である化合物はチオケテン化合物である。また、Yがチッ素原子、Zが酸素原子である化合物は イソシアナート化合物であり、Yがチッ素原子、Zがイオウ原子である化合物はチオイソシアナート化合物である。更に、YとZがいずれもチッ素原子である化合物はカルボジイミド化合物であり、YとZがいずれも酸素原子である化合物は二酸化炭素であり、Yが酸素原子、Zがイオウ原子である化合物は硫化カルボニルであり、YとZがいずれもイオウ原子である化合物は二硫化炭素である。但し、(f)成分はこれらの例示に限定されるものではない。
【0062】
ケテン化合物としては、例えばエチルケテン、ブチルケテン、フェニルケテン、トルイルケテン等を挙げることができる。チオケテン化合物としては、例えばエチレンチオケテン、ブチルチオケテン、フェニルチオケテン、トルイルチオケテン等を挙げることができる。イソシアナート化合物としては、例えば、フェニルイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメリックタイプのジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等を挙げることができる。チオイソシアナート化合物としては、例えばフェニルチオイソシアナート、2,4−トリレンジチオイソシアナート、ヘキサメチレンジチオイソシアナートと等を挙げることができる。カルボジイミド化合物としては、例えばN,N’−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−エチルカルボジイミド等を挙げることができる。
【0063】
(g)成分のうち、Y’が酸素原子である化合物はエポキシ化合物であり、Y’がチッ素原子である化合物はエチレンイミン誘導体であり、Y’がイオウ原子である化合物はチイラン化合物である。エポキシ化合物としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エポキシ化大豆油、エポキシ化天然ゴム等を挙げることができる。また、エチレンイミン誘導体としては、例えばエチレンイミン、プロピレンイミン、N−フェニルエチレンイミン、N−(β−シアノエチル)エチレンイミン等を挙げることができる。更に、チイラン化合物としては、例えばチイラン、メチルチイラン、フェニルチイラン等を挙げることができる。
【0064】
(h)成分であるハロゲン化イソシアノ化合物は、下記一般式(6)で表される構造を有する化合物である。(但し、下記一般式(6)中、Xはハロゲン原子である)。
【0065】
【化6】

【0066】
ハロゲン化イソシアノ化合物としては、例えば2−アミノ−6−クロロピリジン、2,5−ジブロモピリジン、4−クロロ−2−フェニルキナゾリン、2,4,5−トリブロモイミダゾール、3,6−ジクロロ−4−メチルピリダジン、3,4,5−トリクロロピリダジン、4−アミノ−6−クロロ−2−メルカプトピリミジン、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、6−クロロ−2,4−ジメトキシピリミジン、2−クロロピリミジン、2,4−ジクロロ−6−メチルピリミジン、4,6−ジクロロ−2−(メチルチオ)ピリミジン、2,4,5,6−テトラクロロピリミジン、2,4,6−トリクロロピリミジン、2−アミノ−6−クロロピラジン、2,6−ジクロロピラジン、2,4−ビス(メチルチオ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン、2−ブロモ−5−ニトロチアゾール、2−クロロベンゾチアゾール、2−クロロベンゾオキサゾール等を挙げることができる。
【0067】
(i)成分のうち、カルボン酸としては、例えば酢酸、ステアリン酸、アジピン酸、マレイン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、メリット酸、ポリメタクリル酸エステル化合物若しくはポリアクリル酸化合物の加水分解物又は部分加水分解物等を挙げることができる。
【0068】
(i)成分のうち、酸ハロゲン化物としては、例えば酢酸クロリド、プロピオン酸クロリド、ブタン酸クロリド、イソブタン酸クロリド、オクタン酸クロリド、アクリル酸クロリド、安息香酸クロリド、ステアリン酸クロリド、フタル酸クロリド、マレイン酸クロリド、オキサリン酸クロリド、ヨウ化アセチル、ヨウ化ベンゾイル、フッ化アセチル、フッ化ベンゾイル等を挙げることができる。
【0069】
(i)成分のうち、エステル化合物としては、例えば酢酸エチル、ステアリン酸エチル、アジピン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、安息香酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、フタル酸ジエチル、テレフタル酸ジメチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラオクチル、メリット酸ヘキサエチル、酢酸フェニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリイソブチルアクリレート等を挙げることができる。また、炭酸エステル化合物としては、例えば炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジヘキシル、炭酸ジフェニル等を挙げることができる。
【0070】
(i)成分のうち、酸無水物としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水イソ酪酸、無水イソ吉草酸、無水ヘプタン酸、無水安息香酸、無水ケイ皮酸等の分子間酸無水物や、前記一般式(5)で表される、無水コハク酸、無水メチルコハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水シトラコン酸、無水フタル酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体等の分子内酸無水物を挙げることができる。
【0071】
なお、(i)成分として例示した化合物は、本発明の目的を損なわない範囲で、例えばエーテル基、三級アミノ基等の非プロトン性の極性基を分子中に含むものであってもよい。また、(i)成分は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることもできる。更に、(i)成分は、フリーのアルコール基、フェノール基を含む化合物を不純物として含むものであってもよい。
【0072】
(j)成分のうち、「R16lM''(OCOR174-l」で表される化合物としては、例えば、トリフェニルスズラウレート、トリフェニルスズ−2−エチルヘキサテート、トリフェニルスズナフテート、トリフェニルスズアセテート、トリフェニルスズアクリレート、トリ−n−ブチルスズラウレート、トリ−n−ブチルスズ−2−エチルヘキサテート、トリ−n−ブチルスズナフテート、トリ−n−ブチルスズアセテート、トリ−n−ブチルスズアクリレート、トリ−t−ブチルスズラウレート、トリ−t−ブチルスズ−2−エチルヘキサテート、トリ−t−ブチルスズナフテート、トリ−t−ブチルスズアセテート、トリ−t−ブチルスズアクリレート、トリイソブチルスズラウレート、トリイソブチルスズ−2−エチルヘキサテート、トリイソブチルスズナフテート、トリイソブチルスズアセテート、トリイソブチルスズアクリレート、トリイソプロピルスズラウレート、トリイソプロピルスズ−2−エチルヘキサテート、トリイソプロピルスズナフテート、トリイソプロピルスズアセテート、トリイソプロピルスズアクリレート、トリヘキシルスズラウレート、トリヘキシルスズ−2−エチルヘキサテート、トリヘキシルスズアセテート、トリヘキシルスズアクリレート、トリオクチルスズラウレート、トリオクチルスズ−2−エチルヘキサテート、トリオクチルスズナフテート、トリオクチルスズアセテート、トリオクチルスズアクリレート、トリ−2−エチルヘキシルスズラウレート、トリ−2−エチルヘキシルスズ−2−エチルヘキサテート、トリ−2−エチルヘキシルスズナフテート、トリ−2−エチルヘキシルスズアセテート、トリ−2−エチルヘキシルスズアクリレート、トリステアリルスズラウレート、トリステアリルスズ−2−エチルヘキサテート、トリステアリルスズナフテート、トリステアリルスズアセテート、トリステアリルスズアクリレート、トリベンジルスズラウレート、トリベンジルスズ−2−エチルヘキサテート、トリベンジルスズナフテート、トリベンジルスズアセテート、トリベンジルスズアクリレートなどの前記式においてl=3である化合物;これらの化合物に対応するl=2又はl=1である化合物などが挙げられる。
【0073】
(j)成分のうち、「R18lM''(OCO−R19−COOR204-l」で表される化合物としては、例えば、ジフェニルスズビスメチルマレート、ジフェニルスズビス−2−エチルヘキシルマレート、ジフェニルスズビスオクチルマレート、ジフェニルスズビスベンジルマレート、ジ−n−ブチルスズビスメチルマレート、ジ−n−ブチルスズビス−2−エチルヘキシルマレート、ジ−n−ブチルスズビスオクチルマレート、ジ−n−ブチルスズビスベンジルマレート、ジ−t−ブチルスズビスメチルマレート、ジ−t−ブチルスズビス−2−エチルヘキシルマレート、ジ−t−ブチルスズビスオクチルマレート、ジ−t−ブチルスズビスベンジルマレート、ジイソブチルスズビスメチルマレート、ジイソブチルスズビス−2−エチルヘキシルマレート、ジイソブチルスズビスオクチルマレート、ジイソブチルスズビスベンジルマレート、ジイソプロピルスズビスメチルマレート、ジイソプロピルスズビス−2−エチルヘキシルマレート、ジイソプロピルスズビスオクチルマレート、ジイソプロピルスズビスベンジルマレート、ジヘキシルスズビスメチルマレート、ジヘキシルスズビス−2−エチルヘキシルマレート、ジヘキシルスズビスオクチルマレート、ジヘキシルスズビスベンジルマレート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスメチルマレート、ジ−2−エチルヘキシルスズビス−2−エチルヘキシルマレート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスオクチルマレート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスベンジルマレート、ジオクチルスズビスメチルマレート、ジオクチルスズビス−2−エチルヘキシルマレート、ジオクチルスズビスオクチルマレート、ジオクチルスズビスベンジルマレート、ジステアリルスズビスメチルマレート、ジステアリルスズビス−2−エチルヘキシルマレート、ジステアリルスズビスオクチルマレート、ジステアリルスズビスベンジルマレート、ジベンジルスズビスメチルマレート、ジベンジルスズビス−2−エチルヘキシルマレート、ジベンジルスズビスオクチルマレート、ジベンジルスズビスベンジルマレートなどのマレイン酸エステル塩化合物;及びこれらに対応するアジピン酸エステル塩化合物などが挙げられる。
【0074】
更に、(j)成分のうち、前記一般式(5)で表される化合物としては、例えばジフェニルスズマレート、ジ−n−ブチルスズマレート、ジ−t−ブチルスズマレート、ジイブチルスズマレート、ジイソプロピルスズマレート、ジヘキシルスズマレート、ジ−2−エチルヘキシルスズマレート、ジオクチルスズマレート、ジステアリルスズマレート、ジベンジルスズマレート、ジフェニルスズジアジテート、ジ−n−ブチルスズアジテート、ジ−t−ブチルスズアジテート、ジイソブチルスズアジテート、ジイソプロピルスズアジテート、ジヘキサシルスズジアセテート、ジ−2−エチルヘキシルスズアジテート、ジオクチルスズアジテート、ジステアリルスズアジテート、ジベンジルスズアジテート等を挙げることができる。
【0075】
(k)成分としては、エポキシ基及び/又はイソシアナート基を分子内に少なくとも1個有するアルコキシシラン化合物が好適に使用される。(k)成分の具体例としては、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランの縮合物、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジメトキシシランの縮合物等のエポキシ基含有アルコキシシラン;3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、(3−イソシアナートプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−イソシアナートプロピル)メチルジエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシランの縮合物、(3−イソシアナートプロピル)メチルジメトキシシランの縮合物等のイソシアナート基含有アルコキシシラン化合物を挙げることができる。
【0076】
(k)成分をポリマーの活性末端に反応させる際に、反応を促進させるために、反応系にルイス酸を添加することもできる。ルイス酸が触媒として作用してカップリング反応が促進され、変性ポリマーのコールドフローが改良されて、貯蔵安定性が向上するために好ましい。ルイス酸の具体例としては、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズビス−2−エチルヘキシルマレートアルキルマレート、ジオクチルスズビス−2−エチルヘキシルマレート、アルミニウムトリイソプロポキシド等を挙げることができる。
【0077】
(e)〜(k)成分(以下、「変性剤」ともいう)は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることもできる。ここで、(a)成分に対する変性剤の使用量は、モル比で、0.01〜200であることが好ましく、0.1〜150であることが更に好ましい。0.01未満であると反応が十分に進行しなくなる傾向にあり、また、機械的物性、ゴム弾性の改良効果が発現され難くなる傾向にある。一方、200超では物性改良効果は飽和しているために経済上好ましくなく、また場合によってはトルエン不溶分(ゲル)が生成し易くなる傾向にある。
【0078】
変性反応は、160℃以下、好ましくは−30〜130℃の温度で、撹拌下に、0.1〜10時間実施することが好ましく、0.2〜5時間実施することが更に好ましい。目的とする重合体は、変性反応が終了した後、触媒を不活性化させ、必要に応じて重合体安定剤を反応系に加え、共役ジエン系重合体の製造における公知の脱溶媒、乾燥操作により回収することができる。
【0079】
(エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム)
エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムは、エチレンに由来する構成単位(a1)と、α−オレフィンに由来する構成単位(a2)とを含む共重合ゴムであれば特に限定されない。従って、エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムは、構成単位(a1)と 構成単位(a2)とを含む二元共重合体の他に、他の単量体に由来する構成単位(a3)を更に含む三元共重合体であってもよい。更には、構成単位(a1)、及び構成単位(a2)を含むものであれば、4以上の異なる構成単位を含む多元共重合体であってもよい。なお、エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムに含まれる構成単位(a1)の割合は、全構成単位を100mol%とした場合に、35mol%以上であることが好ましい。構成単位(a1)の割合が35mol%未満であると、機械的強度が不十分となる傾向にある。なお、構成単位(a1)の割合が多過ぎる場合には、柔軟性が不十分となる傾向にある。従って、エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムに含まれる構成単位(a1)の割合は、全構成単位を100mol%とした場合に、40〜90mol%であることが更に好ましく、45〜85mol%であることが特に好ましい。
【0081】
構成単位(a2)を構成するα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、3−メチルブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン等を挙げることができる。なかでも、プロピレン、1−ブテン、1−オクテンが好ましい。これらのα−オレフィンを一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムに含まれる構成単位(a2)の割合は、全構成単位を100mol%とした場合に、5〜65mol%以上であることが好ましく、10〜45mol%であることが更に好ましく、15〜40mol%であることが特に好ましい。構成単位(a2)の割合が5mol%未満であると、所望とするゴム弾性を発揮し難くなる傾向にある。一方、構成単位(a2)の割合が65mol%超であると、耐久性が低下する傾向にある。
【0083】
エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムが、構成単位(a3)を含むものである場合に、この構成単位 (a3)を構成する単量体としては、非共役ジエン化合物を挙げることができる。非共役ジエン化合物の具体例としては、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘキサジエン等の直鎖の非環状ジエン化合物;5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、5,7−ジメチルオクタ−1,6−ジエン、3,7−ジメチル−1,7−オクタジエン、7−メチルオクタ−1,6−ジエン、ジヒドロミルセン等の分岐連鎖の非環状ジエン化合物;テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−2,5−ジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン等の脂環式ジエン化合物等を挙げることができる。なかでも、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンが好ましい。これらの非共役ジエン化合物を 一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0084】
エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムが、構成単位(a3)を含むものである場合に、このエチレン・α−オレフィン系共重合ゴムに含まれる構成単位(a3)の割合は、全構成単位を100mol%とした場合に、15mol%以下であることが好ましく、1〜12mol%であることが更に好ましい。構成単位(a3)の割合が15mol%超であると、耐久性が低下する傾向にある。
【0085】
また、エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムとして、これまで述べてきたエチレン・α−オレフィン系共重合ゴムの分子中の水素原子の一部が塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換されたハロゲン化共重合体を用いることもできる。
【0086】
さらに、エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムとして、これまで述べてきたエチレン・α−オレフィン系共重合ゴムに不飽和モノマーを重合して得られるグラフト重合体を用いることもできる。不飽和モノマーとしては、塩化ビニル;酢酸ビニル;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸誘導体;マレイン酸;無水マレイン酸、マレイミド、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸誘導体;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン化合物等を挙げることができる。
【0087】
エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムの、X線回折測定による結晶化度は、20%以下であることが好ましく、15%以下であることが更に好ましい。エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムの結晶化度が20%超であると、柔軟性が低下する傾向にある。
【0088】
エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムは、例えば、チーグラー・ナッタ触媒と、可溶性バナジウム化合物と、有機アルミニウム化合物とを含む溶媒からなる触媒の存在下で、エチレン、α−オレフィン及び非共役ジエン化合物を、必要に応じて分子量調節剤として水素を供給しつつ重合する方法等の、中・低圧法による重合方法により得ることができる。また、その重合は気相法(流動床又は撹拌床)、液相法(スラリー法又は溶液法)によって行うことができる。
【0089】
上記可溶性バナジウム化合物としては、例えば、VOCl3及びVCl4の少なくとも一方とアルコールとの反応生成物を用いることが好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−デカノール及びn−ドデカノール等を用いることができるが、これらのうち、炭素数3〜8のアルコールが好ましく用いられる。
【0090】
また、上記有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、ジイソブチルアルミニウムモノクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジクロリド、トリメチルアルミニウムと水との反応生成物であるメチルアルミノキサン等が挙げられる。これらのうち、特にエチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリドとトリイソブチルアルミニウムとの混合物、トリイソブチルアルミニウムとブチルアルミニウムセスキクロリドとの混合物が好ましく用いられる。
【0091】
さらに、上記溶媒としては、炭化水素が好ましく用いられ、これらのうち、特にn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、シクロヘキサンが好ましく用いられる。これらは1種単独であるいは2種以上を併用することができる。
【0092】
また、 エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムとして、これまで述べてきたエチレン・α−オレフィン系共重合ゴムに鉱物油系軟化剤が添加された油展ゴムを用いることもできる。このような油展ゴムは、取り扱いが容易なものである。従って、油展ゴムをエチレン・α−オレフィン系共重合ゴムとして用いると、熱可塑性エラストマー組成物の製造が容易になるため好ましい。なお、油展ゴムに含有されるエチレン・α−オレフィン系共重合ゴムの割合は、油展ゴム全体を100質量%とした場合に、20〜80質量%であることが好ましく、25〜75質量%であることが更に好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましい。
【0093】
エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムの極限粘度(デカリン溶媒中、135℃で測定)は、1.0dl/g以上であることが好ましい。エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムの極限粘度が1.0d1/g未満であると、例えば、エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムとして前述の油展ゴムを用いた場合に、熱可塑性エラストマー組成物から鉱物油系軟化剤がブリードアウトし、ゴム弾性が低下する傾向にある。一方、エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムの極限粘度が大き過ぎると、成形加工性が低下する傾向にある。従って、エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムの極限粘度は、2.0〜7.0dl/gであることが更に好ましく、3.0〜6.0dl/gであることが特に好ましい。
【0094】
本発明においては、(A)成分として、エチレン・α−オレフィン系共重合ゴムを単独で用いるか、又は共役ジエン系ゴムとエチレン・α−オレフィン系共重合ゴムとを組み合わせて用いるのが特に好ましい。共役ジエン系ゴムとエチレン・α−オレフィン系共重合ゴムとを組み合わせて用いる場合、その比率は、例えば、前者/後者(質量比)=1/99〜99/1、好ましくは、前者/後者(質量比)=10/90〜90/10、さらに好ましくは、前者/後者(質量比)=20/80〜80/20程度である。
【0095】
[α−オレフィン系熱可塑性樹脂(B)]
本発明における熱可塑性エラストマー組成物は、210℃、引取速度2.0m/minにおける溶融張力が3.0cN未満の(B−1)α−オレフィン系結晶性熱可塑性樹脂及び/又は(B−2)α−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂(これらを、「α−オレフィン系熱可塑性樹脂(B)」と総称することがある)(以下、「(B)成分」ともいう)を含有する。
【0096】
α−オレフィン系結晶性熱可塑性樹脂(B−1)としては、α−オレフィンを主モノマー成分とする結晶性樹脂であれば特に限定されず、α−オレフィンの単独重合体であっても、α−オレフィンと他の単量体との共重合体であってもよい。また、これらの異なる二種以上の重合体及び/又は共重合体の混合物であってもよい。α−オレフィン系結晶性熱可塑性樹脂(B−1)としては、単量体構成単位全体に対して、α−オレフィンを80mol%以上(より好ましくは90mol%以上)含有するものであることが好ましい。
【0097】
α−オレフィン系結晶性熱可塑性樹脂(B−1)を構成するα−オレフィンとしては、エチレン、プロペン(プロピレン)、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン等の炭素数2〜12のα−オレフィンを挙げることができる。これらは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0098】
α−オレフィン系結晶性熱可塑性樹脂(B−1)が共重合体である場合、この共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。ただし、結晶性を有するために、ランダム共重合体では、α−オレフィンを除く構成単位の合計含量を、ランダム共重合体全体を100mol%とした場合に、15mol%以下(より好ましくは10mol%以下)とすることが好ましい。また、ブロック共重合体では、α−オレフィンを除く構成単位の合計含量を、ブロック共重合体を100mol%とした場合、40mol%以下(より好ましくは20mol%以下)とすることが好ましい。
【0099】
一方、α−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂(B−2)としては、α−オレフィンを主モノマー成分とする非晶性樹脂であれば特に限定されず、α−オレフィンの単独重合体であっても、α−オレフィンと他の単量体との共重合体であってもよい。また、これらの異なる二種以上の重合体及び/又は共重合体の混合物であってもよい。α−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂(B−2)としては、単量体構成単位全体に対して、α−オレフィンを50mol%以上(より好ましくは60mol%以上)含有するものであることが好ましい。
【0100】
α−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂(B−2)を構成するα−オレフィンとしては、炭素数3以上のα−オレフィンを用いることが好ましく、前記α−オレフィン系結晶性熱可塑性樹脂(B−1)における例示と同様な、炭素数3〜12のα−オレフィンを用いることが好ましい。
【0101】
α−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂(B−2)としては、アタクチックポリプロピレン、アタクチックポリ−1−ブテン等の単独重合体や、プロピレン(50mol%以上含有)と他のα−オレフィン(エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等)との共重合体、1−ブテン(50mol%以上含有)と他のα−オレフィン(エチレン、プロピレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等)との共重合体等を挙げることができる。
【0102】
α−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂(B−2)が共重合体である場合、この共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。但し、ブロック重合体の場合、主成分となる(前記共重合体ではプロピレン、1−ブテン)α−オレフィン単位は、アタクチック構造で結合している必要がある。また、前記α−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂(B−2)が、炭素数3以上の α−オレフィンとエチレンとの共重合体である場合、共重合体全体を100mol%とすると、α−オレフィン含量は、50%mol以上(より好ましくは60〜100mol%)であることが好ましい。
【0103】
α−オレフィン系熱可塑性樹脂(B)の210℃、引取速度2.0m/minにおける溶融張力は3.0cN未満(例えば0.1cN以上3.0cN未満、好ましくは0.2cN〜2.5cN)である。この溶融張力が3.0cNを超えると、良好な海島構造を形成した熱可塑性エラストマー組成物を得ることができず、好ましくない。
【0104】
前記α−オレフィン系結晶性熱可塑性樹脂(B−1)の1種又は2種以上とα−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂(B−2)の1種又は2種以上とを組み合わせて用いてもよい。
【0105】
本発明における熱可塑性エラストマー組成物(1)に含有される(A)成分と(B)成分の質量比は、(A)/(B)=95/5〜20/80であることが好ましく、(A)/(B)=95/5〜40/60であることが更に好ましく、(A)/(B)=95/5〜60/40であることが特に好ましい。(A)成分が20%未満、(B)成分が80%超であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性及びゴム弾性が低下傾向にある。従って、(A)成分が20% 以上、(B)成分が80%以下の熱可塑性エラストマー組成物を用いることにより、ゴム弾性及び柔軟性に優れた発泡体を得ることが可能となる。一方、(A)成分が95%超、(B)成分が5%未満であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の相構造(モルホロジー)が、動的架橋型熱可塑性エラストマー組成物の特徴である良好な海島構造(熱可塑性樹脂が海(マトリックス)、架橋したゴムの粒子が島(ドメイン))になり難く、流動性及び成形加工性が低下する傾向にある。
【0106】
本発明における熱可塑性エラストマー組成物(1)は、(A)成分と(B)成分を含む混合物が、架橋剤(C)の存在下に動的に熱処理されてなるものである。ここで、「動的に熱処理」するとは、剪断力を加えること、及び加熱することの両方行うことをいう。そして、このような動的な熱処理によって得られる熱可塑性エラストマー組成物は、具体的には、(B)成分を海相とし、この海相中に、(A)成分の粒子が島相として分散している、いわゆる海島構造を構成している。
【0107】
[架橋剤(C)]
動的熱処理に際して用いられる架橋剤(C)(以下、「(C)成分」ともいう)の種類は、特に限定されない。但し、(B)成分の融点以上の温度における動的熱処理により、少なくとも(A)成分を架橋し得る化合物であることが望ましい。
【0108】
(C)成分の具体例としては、有機過酸化物、フェノール樹脂、硫黄、硫黄化合物、p−キノン、p−キノンジオキシム誘導体、ビスマレイミド化合物、エポキシ化合物、シラン化合物、アミノ樹脂、ポリオール、ポリアミン、トリアジン化合物、金属石鹸等を挙げることができる。なかでも、有機過酸化物、フェノール樹脂が好ましい。これらを一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0109】
有機過酸化物としては、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン−3、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,2’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−イソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシド、p−メンタンパーオキシド、1,1−ビス (t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジラウロイルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジ(t−ブチルパーオキシ)パーベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等を挙げることができる。なかでも、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、 2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドが好ましい。これらを一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0110】
フェノール樹脂としては、例えば、下記一般式(7)で表されるp−置換フェノール系化合物、o−置換フェノール・アルデヒド縮合物、m−置換フェノール・アルデヒド縮合物、臭素化アルキルフェノール・アルデヒド縮合物等を挙げることができる。中でも、p−置換フェノール系化合物が好ましい。これらを一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0111】
【化7】

【0112】
前記一般式(7)中、Xはヒドロキシル基、ハロゲン化アルキル基、又はハロゲン原子であり、Rは炭素数1〜15の飽和炭化水素基であり、nは0〜10の整数である。なお、p−置換フェノール系化合物は、アルカリ触媒の存在下における、p−置換フェノールとアルデヒド(好ましくはホルムアルデヒド)との縮合反応により得ることができる。
【0113】
(C)成分の使用量は、熱可塑性エラストマー組成物(1)を製造するための混合物に含まれる(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.01〜20質量部とすることが好ましく、0.1〜15質量部とすることが更に好ましく、1〜10質量部とすることが更に好ましい。
【0114】
(C)成分 として有機過酸化物を使用する場合において、この有機過酸化物の使用量は、熱可塑性エラストマー組成物(1)を製造するための混合物に含まれる(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.05〜10質量部とすることが好ましく、0.1〜5質量部とすることが更に好ましい。有機過酸化物の使用量が10質量部超であると、架橋度が過度に高くなり、成形加工性が低下し、得られる熱可塑性エラストマー組成物の機械的物性が低下する傾向にある。一方、有機過酸化物の使用量が0.05質量部未満であると、架橋度が不足し、得られる熱可塑性エラストマー組成物(1)のゴム弾性及び機械的強度が低下する傾向にある。
【0115】
また、(C)成分 としてフェノール樹脂を使用する場合において、このフェノール樹脂の使用量は、熱可塑性エラストマー組成物(1)を製造するための混合物に含まれる(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.2〜10質量部とすることが好ましく、0.5〜5質量部とすることが更に好ましい 。フェノール樹脂の使用量が10質量部超であると、成形加工性が低下する傾向にある。一方、フェノール樹脂の使用量が0.2未満であると、架橋度が不足し、得られる熱可塑性エラストマー組成物(1)のゴム弾性及び機械的強度が低下する傾向にある。
【0116】
架橋剤とともに、架橋助剤及び/又は架橋促進剤を用いると、架橋反応を穏やかに行うことができ、均一な架橋を形成することができるために好ましい。架橋剤として有機過酸化物を用いる場合には、架橋助剤として、硫黄、硫黄化合物、(粉末硫黄、コロイド硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、表面処理硫黄、ジペンタメチレンチウラムテトラスフィド等)、オキシム化合物、(p−キノンオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンオキシム等)、多官能性モノマー類(エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−トルイレンビスマレイミド、無水マレイン酸、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリル酸亜鉛等)等を用いることが好ましい。なかでも、p,p’−ジベンゾイルキノンオキシム、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジビニルベンゼンが好ましい。これらを一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なお、N,N’−m−フェニレンビスマレイミドは、架橋剤としての作用を示すものであるため、架橋剤として単独で使用することができる。
【0117】
架橋剤として有機過酸化物を使用する場合における、架橋助剤の使用量は、混合物に含まれる(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、10質量部以下とすることが好ましく、0.2〜5質量部とすることがさらに好ましい。架橋助剤の使用量が10質量部超であると、架橋度が過度に高くなり、成形加工性が低下し、得られる熱可塑性エラストマー組成物の機械的物性が低下する傾向にある。
【0118】
架橋剤としてフェノール樹脂を用いる場合には、架橋促進剤として、金属ハロゲン化物(塩化第一スズ、塩化第二鉄等)、有機ハロゲン化物(塩素化ポリプロピレン、臭化ブチルゴム、クロロプレンゴム等)等を用いると、架橋速度を調節することができるために好ましい。また、架橋促進剤のほかに、酸化亜鉛等の金属酸化物やステアリン酸等の分散剤を使用することがさらに望ましい。
【0119】
(軟化剤)
熱可塑性エラストマー組成物(1)には、軟化剤をさらに含有させることが好ましい。軟化剤を含有させることにより、加工性、柔軟性を向上させることができる。軟化剤としては、ゴム製品に一般的に用いられる軟化剤を好適に用いることができる。
【0120】
軟化剤の具体例としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系物質;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール類;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油;トール油、蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸又はその金属塩;石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル化合物;マイクロクリスタリンワックス、サブ(ファクチス)、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコール、液状ポリイソプレン、液状ポリブテン、液状エチレン・α−オレフィン系共重合体等を挙げることができる。なかでも、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系の鉱物油、液状ポリイソプレン、液状ポリブテン、液状エチレン・α−オレフィン系共重合体が好ましく、パラフィン系鉱物油、液状ポリイソプレン、液状ポリブテン、液状・α−オレフィン系共重合体がさらに好ましい。
【0121】
軟化剤の含有割合は、(A)成分100質量部に対して、0〜200質量であることが好ましく、0〜150質量部であることがさらに好ましく、0〜100質量部であることが特に好ましい。軟化剤の含有割合が、(A)成分100質量部に対して200質量部超であると、(B)成分との混練時に分散不良を起こす場合がある。
【0122】
また、熱可塑性エラストマー組成物(1)のメルトフローレート(以下、「MFR」ともいう)は、230℃、98N荷重の条件下において、0.1〜100g/10min、好ましくは1.0〜50g/10min、より好ましくは2.0〜40g/10minである。熱可塑性エラストマー組成物(1)のMFRが100g/10min超であると、発泡させた場合に、発泡倍率が低く、独立した気泡が形成されにくく、また、形成される気泡の形状が均一になりにくくなる。一方、熱可塑性エラストマー組成物(1)のMFRが0.1g/10min未満であると、各種発泡体の製造方法による加工性等が不十分となる場合がある。従って、そのMFRが所定の数値範囲内である熱可塑性エラストマー組成物(1)を用いることにより、高発泡倍率で、独立気泡性が高く、発泡気泡形状が均一である発泡体を得ることが可能となる。
【0123】
更に、熱可塑性エラストマー組成物(1)の硬度(デュロA)は、90以下、好ましくは85以下、より好ましくは80以下である。熱可塑性エラストマー組成物の硬度(デュロA)が90超であると、発泡させた場合に、得られる発泡体の柔軟性が劣る。従って、その硬度(デュロA)が所定の数値以下である熱可塑性エラストマー組成物(1)を用いることにより、柔軟性に優れた発泡体を得ることが可能となる。
【0124】
熱可塑性エラストマー組成物(1)は、(A)成分と(B)成分を含有する混合物を(C)成分の存在下に動的に熱処理することにより得ることができる。動的に熱処理される混合物を調製するに際しては、(A)成分、(B)成分はそのまま用いてもよいし、それぞれ同一又は異なる添加剤(後述する添加剤等)などを含む組成物として調製したものを用いてもよい。(A)成分の形状は、ベール形状、クラム形状、ペレット形状、粉体状(ベール状ゴム又はクラム状ゴムの粉砕品を含む)の何れであったもよい。また、形状の異なる複数の(A)成分を組み合わせて用いてもよい。
【0125】
動的に熱処理するために用いる装置としては、溶融混練装置等を好適例として挙げることができる。この溶融混練装置による処理は、連続式及びバッチ式の何れの方式でもよい。溶融混練装置の具体例としては、開放型のミキシングロール、非開放型のバンバリーミキサー、一軸押出機、二軸押出機、連続式混練機、加圧ニーダー等を挙げることができる。これらのうち、経済性、処理効率等の観点から、一軸押出機、二軸押出機、連続式混練機等の連続式の溶融混練装置を用いることが好ましい。また、型式が同一の又は異なる連続式の溶融混練装置を二台以上組み合わせて用いてもよい。
【0126】
二軸押出機のL/D比(スクリュー有効長さLと外径Dとの比)は、30以上であることが好ましく、36〜60であることがさらに好ましい。また、二軸押出機としては、例えば、二本のスクリューが噛み合うもの、噛み合わないもの等の任意の二軸押出機を使用することができるが、二本のスクリューの回転方向が同一方向でスクリューが噛み合うものがより好ましい。このような二軸押出機としては、例えば、商品名「PCM」(池貝社製)、商品名「KTX」(神戸製鋼所社製)、商品名「TEX」(日本製鋼所社製)、商品名「TEM」(東芝機械社製)、商品名「ZSK」(ワーナー社製)等を挙げることができる。
【0127】
連続式混練機のL/D比(スクリュー有効長さLと外径Dとの比)は、5以上であることが好ましく、10以上であることがさらに好ましい。このような連続式混練機としては、商品名「ミクストロンKTX・LCM・NCM」(神戸製鋼所社製)、商品名「CIM・CMP」(日本製鋼所社製)等を挙げることができる。
【0128】
動的に熱処理するに際しての処理温度は、120〜350℃とすることが好ましく、150〜290℃とすることがさらに好ましい。処理時間は、20秒間〜320分間とすることが好ましく、30秒間〜25分間とすることがさらに好ましい。また、負荷する剪断力は、ずり速度で10〜20000/secとすることが好ましく、100〜10000/secとすることがさらに好ましい。
【0129】
熱可塑性エラストマー組成物(1)を用いてポリオレフィン系樹脂組成物を調製する際の該熱可塑性エラストマー組成物(1)の形状は特に限定されず、ペレット形状、粉体状等の何れであってもよい。
【0130】
[ポリオレフィン系樹脂(2)]
ポリオレフィン系樹脂(2)としては、ポリオレフィン系結晶性樹脂、ポリオレフィン系非晶質樹脂、これらの混合物の何れも用いることができる。ポリオレフィン系結晶性樹脂、ポリオレフィン系非晶質樹脂としては、前記α−オレフィン系熱可塑性樹脂(B)の項で例示した樹脂を使用できる。
【0131】
ポリオレフィン系樹脂(2)の210℃、引取速度2.0m/minにおける溶融張力は特に限定されないが、3.0cN以上(例えば3.0〜50cN程度)であることが好ましく、5.0cN以上(例えば5.0〜50cN程度)であることが更に好ましく、8.0cN以上(例えば8.0〜50cN程度)であることが特に好ましい。ポリオレフィン系樹脂(2)の前記溶融張力が3.0cN未満の場合には、ポリオレフィン系樹脂組成物を発泡させた場合に、発泡倍率が低く、独立した気泡が形成されにくく、また、形成される気泡の形状が均一になりにくくなる。そのため、高発泡倍率で、独立気泡性が高く、発泡気泡形状が均一である発泡体を得るためには、ポリオレフィン系樹脂(2)の前記溶融張力を3.0cN以上とすることが好ましい。
【0132】
ポリオレフィン系樹脂(2)の使用量は、前記熱可塑性エラストマー組成物(1)100質量部に対して、例えば10〜200質量部、好ましくは20〜100質量部である。ポリオレフィン系樹脂(2)の使用量が、前記熱可塑性エラストマー組成物(1)100質量部に対して10質量部未満の場合には、発泡時にガスが抜けやすくなるため高発泡倍率の発砲体を得がたく、また、200質量部を超えると、クッション性が低下しやすい。
【0133】
ポリオレフィン系樹脂(2)を用いてポリオレフィン系樹脂組成物を調製する際の該ポリオレフィン系樹脂(2)の形状は特に限定されず、ペレット形状、粉体状等の何れであってもよい。
【0134】
[造核剤(3)]
本発明におけるポリオレフィン系樹脂組成物は、平均粒子径が0.1μm以上2.0μm未満の造核剤(3)を含有する。造核剤としては、例えば、タルク、シリカ、アルミナ、マイカ、チタニア、酸化亜鉛、ゼオライト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム等の酸化物、複合酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属水酸化物等を用いることができる。これらの造核剤を含有させることにより、セル径を容易に調整することができ、適度な柔軟性を有するとともに、切断加工性に優れた発泡体を得ることができる。
【0135】
造核剤(3)の平均粒子径は、好ましくは0.3μm以上1.5μm以下であり、特に0.4μm以上1.2μm以下が好ましい。造核剤(3)の平均粒子径が0.1μm未満であると、造核剤として十分機能しない。造核剤(3)の平均粒子径が2.0μm以上では、造核剤(3)がセル(気泡)の壁を突き破り、高発泡倍率が得られない。
【0136】
造核剤の平均粒子径は、レーザー回折式の粒度分布測定法により測定することができる。例えば、LEEDS & NORTHRUP INSTRUMENTS 社製「MICROTRAC MT−3000」により、試料の分散希釈液から測定(AUTO測定モード)することができる。
【0137】
造核剤(3)の使用量は、ポリオレフィン系樹脂組成物中のポリマー全量[ゴム(A)とα−オレフィン系熱可塑性樹脂(B)とポリオレフィン系樹脂(2)の総量]100質量部に対して、好ましくは0.5〜150質量部、さらに好ましくは2〜140質量部、特に好ましくは3〜130質量部である。造核剤の使用量が少なすぎると、造核剤の効果が得られにくく、逆に多すぎると、発泡が阻害されやすい。造核剤は、ポリオレフィン系樹脂(2)等を用いてマスターバッチとして成型機に添加することもできる。なお、造核剤(3)は、必要に応じて熱可塑性エラストマー組成物(1)の調製時に添加しておいてもよい。
【0138】
[脂肪族系化合物(4)]
本発明におけるポリオレフィン系樹脂組成物は、成分(1)〜(3)に加え、さらに(4)極性官能基を有し融点が50〜150℃の化合物である、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸金属石鹸から選ばれた少なくとも1つの脂肪族系化合物を含有していてもよい。この脂肪族系化合物(4)は結晶性が高く、ポリオレフィン系樹脂に添加すると樹脂表面に強固な膜を形成するので、得られる樹脂発泡体を打ち抜き加工する際、セルを形成する樹脂壁面同士が互いにブロッキングすることを防ぐ働きをするためか、発泡体の気泡がつぶれにくくなり、形状回復性が向上し、打ち抜き加工性がより向上する。
【0139】
上記脂肪族系化合物(4)としては、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸金属石鹸から選ばれた少なくとも1つを使用できる。極性の高い官能基を含むものが、ポリオレフィン系樹脂に相溶しにくいため、樹脂表面に析出しやすく、上記の効果を発揮しやすい。上記脂肪族系化合物(4)の融点は、成形温度を下げ、ポリオレフィン系樹脂組成物の劣化を抑制する、耐昇華性を付与する等の観点から、50〜150℃であり、好ましくは70〜100℃である。
【0140】
上記脂肪酸としては、炭素数18〜38程度(より好ましくは、18〜22)のものが好ましく、具体的には、例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などが挙げられる。中でも、ベヘニン酸が特に好ましい。脂肪酸アミドとしては、脂肪酸部分の炭素数が18〜38程度(より好ましくは、18〜22)の脂肪酸アミドが好ましく、モノアミド、ビスアミドの何れであってもよい。具体的には、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどが挙げられる。中でも、エルカ酸アミドが特に好ましい。また、脂肪酸金属石鹸としては、上記脂肪酸のアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、バリウム、亜鉛、鉛の塩などが挙げられる。脂肪族系化合物(4)としては、特に脂肪酸、脂肪酸アミドが好ましい。
【0141】
上記脂肪族系化合物(4)の含有量は、成分(1)と成分(2)の合計量100質量部に対して、例えば1〜5質量部であり、好ましくは1.5〜3.5質量部、より好ましくは2〜3質量部である。脂肪族系化合物(4)の含有量が1質量部未満では樹脂表面に十分な量の成分(4)が析出せず、打ち抜き加工性向上の効果が得られにくくなる。また、5質量部を超える場合には、樹脂が可塑化し押出機内で十分な圧力を保つことができず、二酸化炭素などの発泡剤の樹脂への含有量が低下して、高い発泡倍率が得られず十分な発泡体密度を有する発泡体が得られにくくなる。
【0142】
本発明におけるポリオレフィン系樹脂組成物には、さらに必要に応じて、各種の添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、例えば、発泡剤、滑剤、収縮防止剤、老化防止剤、熱安定剤、HALS等の耐光剤、耐候剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤、銅害防止剤等の安定剤、防菌剤、防かび剤、分散剤、可塑剤、難燃剤、粘着付与剤、カーボンブラック、有機顔料等の着色剤、充填剤、イソブチレン・イソプレン共重合体、シリコーンゴム等のゴム、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂等を挙げることができる。なお、これらの添加剤は、必要に応じて熱可塑性エラストマー組成物(1)の調製時に添加しておいてもよい。
【0143】
[ポリオレフィン系樹脂発泡体]
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、前記成分(1)、(2)及び(3)を少なくとも含有するポリオレフィン系樹脂組成物を超臨界状態の二酸化炭素で発泡させることにより得られる。本発明では、発泡剤として二酸化炭素を用いるので、発泡体の素材として用いるゴム、α−オレフィン系熱可塑性樹脂やポリオレフィン系樹脂への含浸量が多く、また含浸速度も速い。また、超臨界状態の二酸化炭素を用いるので、樹脂への溶解度がより増大し、高濃度の混入が可能であるとともに、急激な圧力降下時に高濃度なため気泡核の発生が多くなり、その気泡核が成長してできる気泡の密度が気孔率が同じであっても他の状態の場合より大きくなるため、微細な気泡を得ることができる。なお、二酸化炭素の臨界温度は31℃、臨界圧力は7.4MPaである。
【0144】
ポリオレフィン系樹脂組成物の調製は、慣用の溶融混練装置、例えば、開放型のミキシングロール、非開放型のバンバリーミキサー、一軸押出機、二軸押出機、連続式混練機、加圧ニーダーなどを用いて行うことができる。
【0145】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体の製造は、前記ポリオレフィン系樹脂組成物を用いて発泡成形できる方法であれば特に限定されず、バッチ方式、連続方式等の何れの方式で行ってもよい。
【0146】
バッチ方式でポリオレフィン系樹脂発泡体を製造する例を以下に示す。まず、前記ポリオレフィン系樹脂組成物を単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して押し出すことにより、発泡体成形用樹脂シートを作製する。あるいは、前記ポリオレフィン系樹脂組成物を、ローラ、カム、ニーダ、バンバリ型等の羽根を設けた混練機を使用して均一に混練しておき、熱板のプレスなどを用いて所定の厚みにプレス加工することにより、発泡体成形用樹脂シートを作製する。こうして得られた発泡体成形用樹脂シート(未発泡シート)を高圧容器中に入れて、超臨界状態の二酸化炭素を注入し、前記未発泡シート中に二酸化炭素を含浸させる。十分に二酸化炭素を含浸させた時点で圧力を解放し(通常、大気圧まで)、シートを構成する樹脂中に気泡核を発生させる。気泡核はそのまま室温で成長させてもよいが、場合によっては加熱することによって成長させてもよい。加熱の方法としては、ウォーターバス、オイルバス、熱ロール、熱風オーブン、遠赤外線、近赤外線、マイクロ波などの公知乃至慣用の方法を採用できる。このようにして気泡を成長させた後、冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化することによりポリオレフィン系樹脂発泡体を得ることができる。なお、発泡に供する成形体はシート状物に限らず、用途に応じて種々の形状のものを使用できる。また、発泡に供する成形体は押出成形、プレス成形のほか、射出成形等の他の成形法により作製することもできる。
【0147】
次に、連続方式でポリオレフィン系樹脂発泡体を製造する例を以下に示す。前記ポリオレフィン系樹脂組成物を単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して混練しながら、超臨界状態の二酸化炭素を注入し、十分に二酸化炭素を樹脂中に含浸させた後、押し出すことにより圧力を解放し(通常、大気圧まで)、場合によっては加熱することによって気泡を成長させる。気泡を成長させた後、冷水などにより急激に冷却し、形状を固定化することによりポリオレフィン系樹脂発泡体を得ることができる。なお、発泡成形は、押出機のほか射出成形機などを用いて行うこともできる。発泡体の形状は特に限定されず、シート状、角柱状、円筒状、異型状等の何れであってもよい。
【0148】
超臨界状態の二酸化炭素を発泡に供する成形体又は樹脂混練物に含浸させるときの圧力は、操作性等を考慮して適宜選択できるが、例えば7.4MPa以上(例えば7.4〜100MPa程度)、好ましくは8MPa以上(例えば8〜50MPa程度)である。圧力が7.4MPaより低い場合には、二酸化炭素の超臨界状態が保持できず、発泡時の気泡成長が著しく、気泡径が大きくなりすぎることが多い。これは、圧力が低いとガスの含浸量が高圧時に比べて相対的に少なく、気泡核形成速度が低下して形成される気泡核数が少なくなるため、1気泡あたりのガス量が逆に増えて気泡径が極端に大きくなるからである。また、7.4MPaより低い圧力領域では、含浸圧力を少し変化させるだけで気泡径、気泡密度が大きく変わるため、気泡径及び気泡密度の制御が困難になりやすい。
【0149】
ガス含浸工程における温度は、α−オレフィン系熱可塑性樹脂やポリオレフィン系樹脂の種類等によって異なり、広い範囲で選択できるが、操作性等を考慮した場合、例えば31〜350℃程度である。二酸化炭素の超臨界状態を保持するため、含浸時の温度は32℃以上、特に40℃以上が好ましい。例えば、シート状などの未発泡成形物に不活性ガスを含浸させる場合の含浸温度は、バッチ式では32〜200℃程度、好ましくは40〜200℃程度である。また、ガスを含浸させた溶融ポリマーを押し出して発泡と成形とを同時に行う場合の含浸温度は、連続式では60〜350℃程度が一般的である。
【0150】
前記減圧工程において、減圧速度は、特に限定されないが、均一な微細気泡を得るため、好ましくは5〜20GPa/秒程度である。また、前記加熱工程における加熱温度は、例えば、40〜250℃程度、好ましくは60〜250℃程度である。
【0151】
こうして得られるポリオレフィン系樹脂発泡体は高発泡倍率で、独立気泡性が高く、発泡気泡形状が均一であり、柔軟性、クッション性に優れ、表面外観も良好である。ポリオレフィン系樹脂発泡体の密度は、例えば0.2g/cm3以下(0.01〜0.2g/cm3程度)であり、好ましくは0.02〜0.15g/cm3、さらに好ましくは0.03〜0.12g/cm3の範囲である。また、このポリオレフィン系樹脂発泡体は、気泡構造が変形・収縮しにくいので押圧したときの歪回復性が良好であるだけでなく、造核剤の粒径が小さいため、極めて微細な気泡を形成できるとともに、造核剤が気泡壁を突き破ることを防止できるので、例えば打ち抜き加工した際には、打ち抜き部位の気泡がつぶれにくく、切断加工等の加工時の形状回復性に優れるという特徴を持っている。
【0152】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体の形状や大きさは特に限定されないが、上記のように切断加工性に優れているため、特にシート状の発泡体として有用である。本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体がシート状である場合、その厚みは、例えば0.1〜5.0mmの広い範囲で選択できるが、特に0.2〜3.0mm程度の薄いシート状物であっても加工性に優れた発泡シートとして好適に使用できる。
【0153】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、例えば、電子機器や情報機器等の内部絶縁体、緩衝材、防塵材、遮音材、断熱材、或いは食品包装材、衣用材、建材、自動車や家電製品等の内装部品や外装部品用等として利用できる。
【実施例】
【0154】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0155】
製造例及び実施例で用いた原料及び添加剤は以下の通りである。
<ブタジエンゴム>
ムーニー粘度(ML1+4,100℃)=39、1,4−シス結合含量=97.0%、1,2−ビニル結合含量=1.2%、分子量分布(Mw/Mn)=2.8
<EPDMゴム>
エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体、エチレン含量=66%、プロピレン含量=29.5%、5−エチリデン−2−ノルボルネン含量=4.5%、135℃のデカリン溶媒中の極限粘度=4.7dl/g。この三元共重合体ゴムのポリマー溶液に鉱物油系軟化剤(商品名「ダイアナプロセスオイルPW−90」、出光興産社製)を添加し、その後に脱溶媒することにより、本製造例で用いた油展ゴムを調製した。なお、上記三元共重合体ゴム100部に対する上記鉱物油系軟化剤の油展量は100部である。
<熱可塑性樹脂(商品名「ノバテック BC06C」)>
結晶性プロピレン・エチレンブロック共重合体、日本ポリプロ社製、密度=0.90g/cm3、MFR(温度230℃、荷重21.2N)=60g/10分、実測溶融張力(温度210℃、引取速度2.0m/min)=0.5cN
<熱可塑性樹脂(商品名「ノバテック FA3EB」)>
結晶性ポリプロピレン重合体、日本ポリプロ社製、密度=0.90g/cm3、MFR(温度230℃、荷重21.2N)=10.5g/10分、実測溶融張力(温度210℃、引取速度2.0m/min)=1.3cN
<パラフィン系鉱物油>
水素添加パラフィン系鉱物油、商品名「ダイアナプロセスオイルPW−90」、出光興産社製、流動点=−15℃、動粘度(40℃)=95.54cSt
<老化防止剤>
ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、商品名「イルガノックス1010」、チバスペシャルティケミカルズ社製
<架橋剤>
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、商品名「パーヘキサ25B−40」、日本油脂社製
<架橋助剤>
ジビニルベンゼン、純度81%、新日鐵化学社製
<熱可塑性樹脂(商品名「ニューストレン SH9000」)>
結晶性ポリプロピレン、日本ポリプロ社製、密度=0.90g/cm3、MFR(温度230℃、荷重21.2N)=0.3g/10分、実測溶融張力(温度210℃、引取速度2.0m/min)=20.0cN、溶融張力カタログ値(温度230℃)=20.0cN
<滑剤>
商品名「ポリスレンEE15Z」、永和化成社製
<造核剤>
水酸化マグネシウム、平均粒子径0.8μm、商品名「MGZ−1」、堺化学工業社製
<カーボンブラック>
商品名「旭♯35」、旭カーボン社製
【0156】
熱可塑性樹脂の溶融張力の測定は下記の条件で行った。
測定装置:東洋精機製作所製、メルトテンションテスターII型
測定温度:210℃
オリフィス径:2mmφ
押出速度:10.0mm/min
引取速度:2.0m/min
【0157】
製造例1
ブタジエンゴム36部、油展EPDM40部、熱可塑性樹脂(商品名[ノバテック BC06C」)14部、パラフィン系鉱物油10部、及び老化防止剤0.2部をヘンシェルミキサーで混合した後、予め160℃に加熱した加圧型ニーダー(容量10リットル、モリヤマ社製)に投入した。熱可塑性樹脂が溶融して各成分が均一に分散するまで40rpm(ずり速度200/sec)で15分間混練することにより、溶融状態の混練物を得た。得られた溶融状態の混練物を、フィーダールーダー(モリヤマ社製)を使用してペレット化した。ペレット化した混練物100.2部、架橋剤1.0部、及び架橋助剤1.0部をヘンシェルミキサーに投入し、30秒間混合した。この後、二軸押出機(同方向完全噛み合い型スクリュー、スクリューフライト部の長さ(L)とスクリュー直径(D)との比(L)/(D)=33.5、商品名「PCM45」、池貝社製)を使用し、180℃、滞留時間1分30秒、300rpm、ずり速度400/secの処理時間で動的熱処理を行いながら押し出して、ペレット状物(熱可塑性エラストマー組成物(イ))を得た。
【0158】
製造例2
製造例1で得られたペレット状物100部とカーボンブラック25部を、予め160℃に加熱した加圧型ニーダー(容量10リットル、モリヤマ社製)に投入した。熱可塑性エラストマー組成物が溶融して各成分が均一に分散するまで40rpm(ずり速度200/sec)で15分間混練することにより、溶融状態の混練物を得た。得られた溶融状態の混練物を、フィーダールーダー(モリヤマ社製)を使用してペレット化して熱可塑性エラストマー組成物(ロ)を得た。
【0159】
製造例3
油展EPDM90部、熱可塑性樹脂(商品名[ノバテック FA3EB」)10部、及び老化防止剤0.2部をヘンシェルミキサーで混合した後、予め160℃に加熱した加圧型ニーダー(容量10リットル、モリヤマ社製)に投入した。熱可塑性樹脂が溶融して各成分が均一に分散するまで40rpm(ずり速度200/sec)で15分間混練することにより、溶融状態の混練物を得た。得られた溶融状態の混練物を、フィーダールーダー(モリヤマ社製)を使用してペレット化した。ペレット化した混練物100.2部、架橋剤1.0部、及び架橋助剤1.0部をヘンシェルミキサーに投入し、30秒間混合した。この後、二軸押出機(同方向完全噛み合い型スクリュー、スクリューフライト部の長さ(L)とスクリュー直径(D)との比(L)/(D)=33.5、商品名「PCM45」、池貝社製)を使用し、220℃、滞留時間1分30秒、400rpm、ずり速度400/secの処理時間で動的熱処理を行いながら押し出して、ペレット状物(熱可塑性エラストマー組成物(ハ))を得た。
【0160】
製造例4
製造例3で得られたペレット状物100部とカーボンブラック25部を、予め160℃に加熱した加圧型ニーダー(容量10リットル、モリヤマ社製)に投入した。熱可塑性エラストマー組成物が溶融して各成分が均一に分散するまで40rpm(ずり速度200/sec)で15分間混練することにより、溶融状態の混練物を得た。得られた溶融状態の混練物を、フィーダールーダー(モリヤマ社製)を使用してペレット化して熱可塑性エラストマー組成物(ニ)を得た。
【0161】
実施例1
製造例1で得られた熱可塑性エラストマー組成物(イ)70部と、熱可塑性樹脂(商品名「ニューストレン SH9000」)30部、滑剤(ステアリン酸モノグリセリド1部にポリエチレン10部を配合したマスターバッチ)10部、造核剤(平均粒子径0.8μmの水酸化マグネシウム)10部を二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後、ペレット状に切断して成形した。このペレットを単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気中、14MPa(注入後:18MPa)の圧力で二酸化炭素を注入した。二酸化炭素を十分飽和させた後、ダイから押出し、シート状の発泡体(厚み2.0mm)を得た。
【0162】
実施例2
製造例2で得られた熱可塑性エラストマー組成物(ロ)93.3部と、熱可塑性樹脂(商品名「ニューストレン SH9000」)39部、滑剤(ステアリン酸モノグリセリド1部にポリエチレン10部を配合したマスターバッチ)1部、造核剤(平均粒子径0.8μmの水酸化マグネシウム)10部を二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後、ペレット状に切断して成形した。このペレットを単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気中、14MPa(注入後:18MPa)の圧力で二酸化炭素を注入した。二酸化炭素を十分飽和させた後、ダイから押出し、シート状の発泡体(厚み2.4mm)を得た。
【0163】
実施例3
製造例3で得られた熱可塑性エラストマー組成物(ハ)62部と、熱可塑性樹脂(商品名「ニューストレン SH9000」)38部、滑剤(ステアリン酸モノグリセリド1部にポリエチレン10部を配合したマスターバッチ)10部、造核剤(平均粒子径0.8μmの水酸化マグネシウム)10部を二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後、ペレット状に切断して成形した。このペレットを単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気中、14MPa(注入後:18MPa)の圧力で二酸化炭素を注入した。二酸化炭素を十分飽和させた後、ダイから押出し、シート状の発泡体(厚み2.0mm)を得た。
【0164】
実施例4
製造例3で得られた熱可塑性エラストマー組成物(ハ)62部と、熱可塑性樹脂(商品名「ニューストレン SH9000」)38部、滑剤(ステアリン酸モノグリセリド1部にポリエチレン10部を配合したマスターバッチ)0.8部、造核剤(平均粒子径0.8μmの水酸化マグネシウム)8部、カーボンブラック11部を二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後、ペレット状に切断して成形した。このペレットを単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気中、14MPa(注入後:18MPa)の圧力で二酸化炭素を注入した。二酸化炭素を十分飽和させた後、ダイから押出し、シート状の発泡体(厚み2.1mm)を得た。
【0165】
実施例5
製造例3で得られた熱可塑性エラストマー組成物(ハ)50部と、熱可塑性樹脂(商品名「ニューストレン SH9000」)50部、滑剤(ステアリン酸モノグリセリド1部にポリエチレン10部を配合したマスターバッチ)1.2部、造核剤(平均粒子径0.8μmの水酸化マグネシウム)8.4部、カーボンブラック9.5部を二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後、ペレット状に切断して成形した。このペレットを単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気中、14MPa(注入後:18MPa)の圧力で二酸化炭素を注入した。二酸化炭素を十分飽和させた後、ダイから押出し、シート状の発泡体(厚み2.3mm)を得た。
【0166】
実施例6
製造例3で得られた熱可塑性エラストマー組成物(ハ)33部と、熱可塑性樹脂(商品名「ニューストレン SH9000」)51部、滑剤(ステアリン酸モノグリセリド1部にポリエチレン10部を配合したマスターバッチ)10部、造核剤(平均粒子径0.8μmの水酸化マグネシウム)10部、カーボンブラック6部、及びエルカ酸アミド(融点83℃)2部を二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後、ペレット状に切断して成形した。このペレットを単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気中、14MPa(注入後:18MPa)の圧力で二酸化炭素を注入した。二酸化炭素を十分飽和させた後、ダイから押出し、シート状の発泡体(厚み2.0mm)を得た。
【0167】
実施例7
製造例3で得られた熱可塑性エラストマー組成物(ハ)33部と、熱可塑性樹脂(商品名「ニューストレン SH9000」)51部、滑剤(ステアリン酸モノグリセリド1部にポリエチレン10部を配合したマスターバッチ)10部、造核剤(平均粒子径0.8μmの水酸化マグネシウム)10部、カーボンブラック6部、及びベヘニン酸(融点77℃)2部を二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後、ペレット状に切断して成形した。このペレットを単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気中、14MPa(注入後:18MPa)の圧力で二酸化炭素を注入した。二酸化炭素を十分飽和させた後、ダイから押出し、シート状の発泡体(厚み2.0mm)を得た。
【0168】
比較例1
熱可塑性エラストマー組成物(ニ)[商品名「エクセリンク3701B」、JSR社製、ポリプロピレン(PP)とエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン三元共重合体(EPT)とのブレンド物(TPO)(カーボンブラックを16.7質量%含む)]50部と、熱可塑性樹脂(商品名「ニューストレン SH9000」)50部、滑剤(ステアリン酸モノグリセリド1部にポリエチレン10部を配合したマスターバッチ)10部、造核剤(平均粒子径0.8μmの水酸化マグネシウム)10部を二軸混練機にて、200℃の温度で混練した後、ストランド状に押出し、水冷後、ペレット状に切断して成形した。このペレットを単軸押出機に投入し、220℃の雰囲気中、14MPa(注入後:18MPa)の圧力で二酸化炭素を注入した。二酸化炭素を十分飽和させた後、ダイから押出し、シート状の発泡体(厚み2.3mm)を得た。
【0169】
評価試験
実施例及び比較例で得られたシート状の発泡体について、両面のスキン層を除去し、厚み約1.0mmの発泡シートとして、密度、切断加工性及び50%圧縮歪回復率を下記の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0170】
[発泡体密度]
シート状の発泡体を100mm×100mmサイズに打ち抜き、試験片とした。試験片の寸法をノギスにて測定した後、電子天秤にて質量を測定し、次式により密度を求めた。 密度(g/cm3)=試験片の質量(g)/試験片の体積(cm3
【0171】
[切断加工性−1]
シート状の発泡体(70mm×220mmサイズ)をポリプロピレン製の板上に載置し、1.8mmのスペーサーを挟んで固定した2枚の加工刃(商品名「NCA07」、厚さ0.7mm、刃先角度43°、(株)ナカヤマ製)を押し込んで発泡体を打ち抜いた(切断した)。切断幅は2.5mmに設定した。打ち抜いて2時間後に発泡体を目視及びデジタルマイクロスコープで観察し、発泡体の打ち抜き部位のつぶれが小さいもの(発泡体の打ち抜き部位(端部)とその他の部位とで厚みにほとんど差がないもの)を「○」(図1参照)、発泡体の打ち抜き部位(端部)のつぶれが大きいもの(発泡体の打ち抜き部位の上端部が丸みを帯び、打ち抜き部とその他の部位とで厚みに大きな差があるもの)を「×」(図2参照)と評価した。
【0172】
[切断加工性−2]
シート状の発泡体(70mm×220mmサイズ)をポリプロピレン製の板上に載置し、1.8mmのスペーサーを挟んで固定した2枚の加工刃(商品名「ANG790」、厚さ0.7mm、刃先角度90°、(株)ナカヤマ製)を押し込んで発泡体を打ち抜いた(切断した)。切断幅は2.5mmに設定した。打ち抜いて2時間後に発泡体を目視及びデジタルマイクロスコープで観察し、上記切断加工性−1と同様にして評価した。
【0173】
[50%圧縮歪回復率]
23℃、50%RH雰囲気下で、シート状の発泡体の試験片(30mm×30mmサイズ)を、2枚の圧縮板を用いて試験片の厚さの50%まで圧縮し、所定温度(23℃又は40℃)にて24時間保持した後、試験片を圧縮状態から解放し、その直後の試験片の厚みを測定し、下記式により50%圧縮歪回復率を算出した。
50%圧縮歪回復率(%)={1−[解放後の試験片の厚み(mm)−試験片の初めの厚み(mm)]/[50%圧縮時における試験片の厚み(mm)−試験片の初めの厚み(mm)]}×100
【0174】
【表1】

【0175】
表1より明らかなように、実施例の発泡体は比較例の発泡体と比較して、50%圧縮歪回復率が高く、切断加工性に優れる。また、実施例6及び7に示されるように、特定の脂肪族化合物を配合して得られる発泡体では、気泡壁同士がブロッキングしにくくなり、打ち抜き加工した際に、気泡が潰れたままとなりにくく、より厳しい加工試験である切断加工性−2(刃先角度が90°)においても良好な加工性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】実施例の切断加工性の評価試験において、評価が「○」である場合の打ち抜き後の発泡体の状態を示すデジタルマイクロスコープ写真である。
【図2】実施例の切断加工性の評価試験において、評価が「×」である場合の打ち抜き後の発泡体の状態を示すデジタルマイクロスコープ写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)(A)ゴムと、
(B)210℃、引取速度2.0m/minにおける溶融張力が3.0cN未満の(B−1)α−オレフィン系結晶性熱可塑性樹脂及び/又は(B−2)α−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂と、を含む混合物を、
(C)架橋剤の存在下に動的に熱処理して得られる熱可塑性エラストマー組成物と、
(2)ポリオレフィン系樹脂、
(3)平均粒子径が0.1μm以上2.0μm未満の造核剤、を少なくとも含有するポリオレフィン系樹脂組成物を超臨界状態の二酸化炭素により発泡させてなるポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項2】
密度が0.2g/cm3以下である請求項1記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項3】
前記ゴム(A)が、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン・α−オレフィン系共重合ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルゴム、及びクロロプレンゴムからなる群より選択された少なくとも一種である請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂(2)の210℃、引取速度2.0m/minにおける溶融張力が3.0cN以上である請求項1〜3の何れかの項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項5】
成分(1)〜(3)に加え、さらに(4)極性官能基を有し且つ融点が50〜150℃の化合物であって、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸金属石鹸から選ばれた少なくとも1つの脂肪族系化合物を含有するポリオレフィン系樹脂組成物を超臨界状態の二酸化炭素により発泡させてなる請求項1〜4の何れかの項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項6】
脂肪族系化合物(4)の含有量が、成分(1)と成分(2)の合計量100質量部に対して、1〜5質量部である請求項5記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項7】
脂肪族系化合物(4)が脂肪酸又は脂肪酸アミドである請求項5又は6記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項8】
脂肪酸アミドがエルカ酸アミドである請求項7記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項9】
(1)(A)ゴムと、
(B)210℃、引取速度2.0m/minにおける溶融張力が3.0cN未満の(B−1)α−オレフィン系結晶性熱可塑性樹脂及び/又は(B−2)α−オレフィン系非晶質熱可塑性樹脂と、を含む混合物を、
(C)架橋剤の存在下に動的に熱処理して得られる熱可塑性エラストマー組成物と、
(2)ポリオレフィン系樹脂、
(3)平均粒子径が0.1μm以上2.0μm未満の造核剤、を少なくとも含有するポリオレフィン系樹脂組成物を超臨界状態の二酸化炭素により発泡させることを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項10】
成分(1)〜(3)に加え、さらに(4)極性官能基を有し且つ融点が50〜150℃の化合物であって、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸金属石鹸から選ばれた少なくとも1つの脂肪族系化合物を含有するポリオレフィン系樹脂組成物を超臨界状態の二酸化炭素により発泡させる請求項9記載のポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−291337(P2007−291337A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26043(P2007−26043)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】