説明

ポリオレフィン系樹脂組成物及びその成形品並びに電線・ケーブル

【課題】難燃性ポリオレフィン系樹脂材料における、難燃剤の滲出や燃焼時の有毒ガスの発生などの諸問題を派生せず、難燃性に優れると共に、ポリオレフィン系樹脂の格別に優れた特性を発揮できるポリエチレン系樹脂材料を提供する。
【解決手段】エチレン、炭素−炭素二重結合を有するリン化合物、無水マレイン酸の繰り返し単位により構成され、Mwが、5,000〜500,000であるエチレン系二元及び/又は三元共重合体並びに他のポリオレフィン系樹脂及び/又は無機系難燃剤を成分とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂組成物及びその成形品並びに電線・ケーブルに関し、詳しくは、エチレン単量体と特定の炭素−炭素二重結合を有するリン含有単量体(以下、「ビニルリン化合物」と称す。)とのエチレン系二元ランダム共重合体及び/又は更に無水マレイン酸を共重合したエチレン系三元ランダム共重合体(以下、両共重合体を「エチレン系ランダム共重合体」と称す。)と、他のポリオレフィン系樹脂及び/又は無機難燃剤との、難燃性に優れたポリオレフィン系樹脂組成物、並びにそれから成るフィルム、シート、積層体、容器等の成形品、或いは電線・ケーブルに係るものである。
【背景技術】
【0002】
化学工業分野において最も主要なプラスチック工業のなかで、産業用資材としての基幹材料であるポリオレフィン系樹脂材料は多種多様化されて、各技術分野において汎用されている。特に、ポリエチレン系樹脂材料は、高密度ポリエチレンやLLDPEその他多数に多種化され、メタロセン系触媒の利用による高機能化、エラストマーやブロック共重合体等への多様化にも見られるように、ポリエチレン系樹脂の優れた特性を更に高め、或いは短所を改良して、フィルムやシートなどの基材、容器や繊維製品、土木建築資材や自動車用部材、或いは、電気・電子部品用材料等として広く重用されている。
かかる、ポリエチレン系樹脂に代表されるポリオレフィン系樹脂における僅かな欠点のひとつとして、樹脂材料のなかで比較的に、可燃性で燃焼し易く、その目安とされる酸素指数が比較的低く、ハロゲン化ビニル樹脂等に比して、ポリオレフィン系樹脂は空気中の酸素割合の約21%より大略小さい酸素指数の数値を呈している。そのために、技術分野によっては防災等の観点から、その難燃化の要望と必要性が高くなっている。
【0003】
従来から、基本的に樹脂材料を難燃化するためには、主に、難燃化剤の配合と樹脂自体の難燃化の方策が採用され、特に、難燃化剤の配合が広く使用されており、その代表例として、臭素系難燃剤やリン系難燃剤等の有機系難燃剤の配合が挙げられる。しかるに、有機系難燃剤を配合した樹脂組成物の場合には、有機系難燃剤がブリードアウト(製品表面への滲出)し、長期的には難燃性能が維持できないという問題を呈している。また、リン含有難燃剤では、加水分解により所定の難燃性を発現できないことがある。更に、有機系難燃剤には、ハロゲン系難燃剤が多く、燃焼時に有毒ガスが発生するという環境と安全面の難点を有している。
このような有機系難燃剤の難点を克服するために、ノンハロゲン系難燃剤として水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の無機系難燃剤を配合する方法等が提案されているが、無機系難燃剤では大量に配合しなければ難燃化性能が発揮されないという欠点を有しており、無機系難燃剤を大量に配合した難燃性樹脂組成物は、機械的強度や耐傷付き性等が低下するという問題点を抱えている。
更に、かかる機械的強度や耐傷付き性等を改良するために、直鎖状低密度ポリエチレンを無水マレイン酸で変性した重合体を、難燃性樹脂組成物に配合して各成分の相溶性等を改良した組成物が提案されているが、分散性や相溶性等の向上と難燃性のバランスが不充分である。
【0004】
一方、樹脂自体を難燃化する手法としては、例えば、重合体の骨格に直接ビニルリン化合物を導入した共重合体は以前からよく知られており、ハロゲン含有エチレン状不飽和単量体とビス(ヒドロカルビル)ビニルホスホネートとの共重合体(特許文献1)、或いはアクリロニトリル、塩化ビニリデン、酸基を含有する単量体と不飽和ホスホン酸エステルとの共重合体(特許文献2)、リン含有ビニル系単量体の単独重合体又は該リン含有ビニル系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル系単量体から選ばれた1種以上の単量体との共重合体(特許文献3)等が、難燃性に優れる重合体又は共重合体として提示されているが、これらはポリオレフィン系樹脂そのものを難燃化するものではないし、これらは主に乳化重合で製造されているが、エチレン単量体を用いた場合には、このような乳化重合でエチレン単独重合体又は共重合体を得ることは難しい。
また、オレフィン系樹脂に特定のリン化合物をグラフト変性した難燃性ポリオレフィン系樹脂も提案されているが(特許文献4)、樹脂組成物において分散性や相溶性及び接着性等の性能が不足しており、難燃化性能も充分とはいえない。
【0005】
以上において、概括したように、ポリオレフィン系樹脂材料の難燃化手法では、いずれの手法においても、充分な難燃化を図れば各種の問題や欠点を派生しており、また、難燃化処理により、ポリオレフィン系樹脂材料の本来の優れた各種の物性が損なわれがちで、充分な難燃化が達成され、従来の難燃化に伴う問題を派生せず、ポリオレフィン系樹脂材料の本来の優れた各種の物性も充分に発揮される樹脂材料は、未だ、見い出すことはできない。
【0006】
【特許文献1】特公昭55−49607号公報(特許請求の範囲及び第1頁右欄)
【特許文献2】特公昭56−45409号公報(特許請求の範囲及び第1頁右欄)
【特許文献3】特開2003−261875号公報(要約及び特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平11−171936号公報(要約及び特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
背景技術の末尾において記述したように、従来のポリオレフィン系樹脂材料の難燃化手法では、いずれの手法においても、充分な難燃化を図れば各種の問題や欠点を派生しており、また、難燃化処理により、ポリオレフィン系樹脂材料の本来の優れた各種の物性が損なわれがちで、充分な難燃化が達成され、従来の難燃化に伴う問題を派生せず、ポリオレフィン系樹脂材料の本来の優れた各種の物性も充分に発揮される樹脂材料は、未だ、見い出すことはできない。
よって、本発明は、かかる新規なポリオレフィン系樹脂材料の開発を成すことを、発明が解決すべき課題とするものである。
【0008】
ところで、本発明者らは、上記の発明の課題と同様な課題のもとに、難燃性が高く、ポリオレフィン系樹脂材料本来の格別に優れた特性を充分に発揮できる、新規なポリオレフィン系ポリマーの実現を目指して、ポリエチレンポリマーを直接に難燃化することを図り、そのようなポリマー構造について多面的に考察して、実験により実証を行った結果、ポリエチレン主鎖にビニルリン化合物を組み込む新規なポリエチレン系共重合体ポリマーを開発し、また、かかる新規なポリマーの他材料との相溶性等の性能を更に改良するために、かかるポリエチレン主鎖に更に無水マレイン酸単量体をも組み込む新規なポリエチレン系共重合体ポリマーをも開発して、本発明と同時期に特許出願をしたところである。
【0009】
しかして、本発明の発明者らは、前記の発明の課題を解決するために、上記の新規な二種のポリエチレン系共重合体の利用を図るべく、これら二種の新規なポリエチレン系共重合体の各々或いはそれらの組み合わせにおいて、併せて他のポリオレフィン系樹脂或いは無機系難燃剤を組み合わせる樹脂組成物材料を構成すれば、これら二種の新規なポリエチレン系共重合体の難燃性性能を充分に発揮させた上、更に、他のポリオレフィン系樹脂等との樹脂二成分ないし三成分としたことにより、ポリオレフィン系樹脂材料の本来の優れた各種の物性を損なうことなく、充分な難燃化が達成され、予期される以上にポリオレフィン系樹脂材料の本来の優れた各種の物性を充分に発揮させ得ることを認知することができ、それにより前記の発明の課題を充分に解決し得る、新たな本発明のポリオレフィン系樹脂組成物材料を開発するに至った。
【0010】
かくして、本発明における新規なポリオレフィン系樹脂組成物は、前記した本発明の関連発明における、ポリエチレン主鎖にビニルリン化合物を組み込む新規なエチレン系二元ランダム共重合体(D1)及び/又はポリエチレン主鎖にビニルリン化合物と無水マレイン酸を組み込む新規なエチレン系三元ランダム共重合体(D2)に、他のポリオレフィン系樹脂(E)及び/又は無機系難燃剤を組み合わせる組成物として、樹脂組成物材料を構成するものである。
具体的には、エチレン系二元ランダム共重合体(D1)は、下記式(I)で表される繰り返し単位(A)と、下記式(II)で表される繰り返し単位(B)により構成され、エチレン系三元ランダム共重合体(D2)は、下記式(I)で表される繰り返し単位(A)と、下記式(II)で表される繰り返し単位(B)及び下記式(III)で表わされる繰り返し単位(C)により構成される。
【0011】
【化1】

【化2】

(ここで、R1、R2は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基を表し、nは0〜4の整数である。)
【化3】

【0012】
そして、エチレン系二元ランダム共重合体(D1)においては、繰り返し単位(A)99.95〜50.0モル%と繰り返し単位(B)0.05〜50.0モル%により構成され、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定される重量平均分子量(Mw)が、5,000〜500,000である。
エチレン系三元ランダム共重合体(D2)においては、繰り返し単位(A)99.8〜85.0モル%と、繰り返し単位(B)0.1〜10.0モル%及び繰り返し単位(C)0.1〜5.0モル%により構成され、GPCで測定される重量平均分子量(Mw)が、5,000〜500,000であるエチレン系三元共重合体である。
また、樹脂系組成物においては、エチレン系二元ランダム共重合体(D1)及び/又はエチレン系三元ランダム共重合体(D2)が0.5〜95重量%、他のポリオレフィン系樹脂が5.0〜95重量%である。
【0013】
本発明の新規なポリオレフィン系樹脂組成物においては、更に無機系難燃剤を配合して、或いは無機系難燃剤を配合して、より難燃性を高めることもでき、他のポリオレフィン系樹脂(E)を個別に規定し、或いは他の成分として、変性ポリエチレン樹脂を配合して相溶性等をより高めることもできる。
具体的には、上記エチレン系二元共重合体(D1)及び/又はエチレン系三元共重合体(D2)に、又はそのポリオレフィン系樹脂組成物の100重量部に、無機系難燃剤30〜200重量部を混合し、無機系難燃剤が、水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウムであり、ポリオレフィン系樹脂(E)が、好ましくは密度0.86〜0.94g/cmのエチレン・α−オレフィン共重合体、低密度ポリエチレン、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体との共重合体からなる群から選ばれる、少なくとも一種のポリエチレン系樹脂であり、ポリオレフィン系樹脂組成物100重量部に、更に変性ポリエチレン樹脂0.1〜10重量部を配合する態様である。
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物の利用態様としては、その優れた性能を利用した成形品及び電線・ケーブルを好適に例示することができる。
【0014】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物においては、配合成分であるエチレン系の二元及び三元共重合体(D1,D2)は、エチレン重合体の骨格に直接リン化合物が導入されるために、従来のように難燃剤がブリードアウトする、或いは難燃剤が加水分解して所定の難燃性を発現できない、等という欠点がなく、長期的に安定した難燃効果を維持することができ、かつ、ポリエチレン樹脂に固有の、格別に優れた機械的特性、化学安定性、光学特性、電気特性及び成形加工性等の性能を発揮することができ、また、三元共重合体(D2)は第三成分の無水マレイン酸基が導入されることにより、他材料との接着性及びフィラーや他の樹脂類との分散性や相溶性等の性能を向上させることができる。
そして、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物においては、他のポリオレフィン系樹脂をも配合するので、ポリオレフィン系樹脂本来の優れた諸特性を充分に発揮することができ、更に、組成物が柔軟であり無機難燃剤等の受容性に富み、特に、電線・ケーブル等の成形品等に要求される耐傷付き性と引張強度等に対して優れた性能を呈するものである。
【0015】
なお、背景技術において前記したところの、ハロゲン化ビニル系重合体等の骨格にビニルリン化合物を導入して重合体の難燃化を成す従来の共重合体では、乳化重合法などで製造されているが、ポリエチレンの場合には、乳化重合法で重合体又は共重合体を得るのは困難であって、本発明の関連発明において初めて、ラジカル開始剤の存在下、又はイオン重合触媒の存在下で原料モノマーを重合することにより、オレフィン系重合体としてのポリエチレンの骨格に直接にビニルリン化合物を導入して重合体の難燃化を成す、新規な共重合体を製造することを実現するに至ったものである。
そして、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物においての主成分である新規なエチレン系二元及び三元共重合体は、先の段落0006に掲示した特許文献には記載されていず、その他の特許文献においても見い出すことはできない。
【0016】
以上において、本発明の創作の経緯と発明の基本的な構成と特徴について、概括的に記述したので、ここで本発明の全体的な構成を俯瞰すると、本発明は次の発明単位群からなるものである。[1]における発明が基本発明として構成され、[2]以下の各発明は、基本発明の実施の態様又は利用の態様を示すものである。なお、全発明単位をまとめて「本発明」と称している。
【0017】
[1]下記式(I)で表される繰り返し単位(A)99.95〜50.0モル%と、下記式(II)で表される繰り返し単位(B)0.05〜50.0モル%により構成され、GPCで測定される重量平均分子量(Mw)が、5,000〜500,000であるエチレン系共重合体(D1)、及び/又は下記式(I)で表される繰り返し単位(A)99.8〜85.0モル%と、下記式(II)で表される繰り返し単位(B)0.1〜10.0モル%及び下記式(III)で表わされる繰り返し単位(C)0.1〜5.0モル%により構成され、GPCで測定される重量平均分子量(Mw)が、5,000〜500,000であるエチレン系三元共重合体(D2)0.5〜95重量%、並びに(D1),(D2)以外の他のポリオレフィン系樹脂(E)5.0〜99.5重量%により構成されるポリオレフィン系樹脂組成物。
【0018】
【化4】

【化5】

(ここで、R1、R2は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基を表し、nは0〜4の整数である。)
【化6】

【0019】
[2][1]におけるポリオレフィン系樹脂組成物100重量部に、無機系難燃剤30〜200重量部を混合してなるポリオレフィン系樹脂組成物。
[3]式(I)で表される繰り返し単位(A)99.95〜50.0モル%と、式(II)で表される繰り返し単位(B)0.05〜50.0モル%により構成され、GPCで測定される重量平均分子量(Mw)が、5,000〜500,000であるエチレン系二元ランダム共重合体(D1)、及び/又は式(I)で表わされる繰り返し単位(A)99.8〜85.0モル%と、式(II)で表される繰り返し単位(B)0.1〜10.0モル%及び式(III)で表される繰り返し単位(C)0.1〜5.0モル%により構成され、GPCで測定される重量平均分子量(Mw)が、5,000〜500,000であるエチレン系三元ランダム共重合体(D2)100重量部に、無機系難燃剤30〜200重量部を混合してなるポリオレフィン系樹脂組成物。
[4]ポリオレフィン系樹脂(E)が、密度0.86〜0.94g/cmのエチレン・α−オレフィン共重合体、低密度ポリエチレン、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体との共重合体からなる群から選ばれる、少なくとも一種のポリエチレン系樹脂であることを特徴とする、[1]又は[2]におけるポリオレフィン系樹脂組成物。
[5]無機系難燃剤が、水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウムであることを特徴とする[2]又は[3]におけるポリオレフィン系樹脂組成物。
[6][1]〜[5]のいずれかにおけるポリオレフィン系樹脂組成物100重量部に、更に変性ポリエチレン樹脂を0.1〜10重量部配合してなるポリオレフィン系樹脂組成物。
[7][1]〜[6]のいずれかにおけるポリオレフィン系樹脂組成物を主材とする成形品。
[8][1]〜[6]のいずれかにおけるポリオレフィン系樹脂組成物を用いた電線・ケーブル。
【発明の効果】
【0020】
本発明の新規なポリオレフィン系樹脂組成物においては、エチレン重合体の骨格に直接にリン化合物がランダムに導入された新規なエチレン系共重合体を配合成分とするので、難燃性が格別に高くなると共に、従来のように、難燃剤のブリードアウトが起こらず、ハロゲン系難燃剤による燃焼時の有毒ガス発生の難点も無く、他のポリオレフィン系樹脂及び無機系難燃剤も併用するため、難燃性がより高く、ポリマー材料が柔軟で、無機難燃剤等の受容性に富み、ポリオレフィン系樹脂における格別に優れた機械的、化学的、光学的ないしは電気的な諸特性が損なわれることなく充分に発揮し得る材料である。
また、本発明はエチレン系三元共重合を配合成分とするので、第三成分の無水マレイン酸基が導入されることにより、他材料との接着性及びフィラーや他の樹脂類との分散性や相溶性等の特性を向上させることができる。
そして、長期的に安定でかつ効率的で持続的な難燃効果を呈することができ、表面の耐傷付性や機械的強度等に優れる各種の成形品や電線・ケーブル等において格別に有用である。電線・ケーブルに成形された場合には、柔軟であることから施工時の作業性に優れるという利点も有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以上においては、本発明における概略及び発明の基本的な構成及び特徴について記述したので、以下においては、本発明の全体を詳細に説明するために、発明の実施の形態を発明を実施するための最良の形態として、具体的に詳しく記述する。
【0022】
1.エチレン系二元共重合体(D1)
(1)エチレン系二元共重合体(D1)の構造
本発明のエチレン系二元共重合体(D1)は、下記式(I)及び(II)の繰り返し単位の(A)及び(B)から構成されるランダム二元共重合体であり、下記式(I)の繰り返し単位(A)の単量体はエチレンであり、下記式(II)の繰り返し単位(B)の単量体は、下記式(IV)の化学式で示される炭素−炭素二重結合を有するリン化合物である。
【化7】

【化8】

(ここで、R1、R2は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基を表し、nは0〜4の整数である。)
【化9】

(ここで、R1、R2は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基を表し、nは0〜4の整数である。)
【0023】
ここで、R1、R2は同一でも異なってもよく、炭素数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6の直鎖状又は分岐状の炭化水素基であり、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。これらの中でもメチル基又はエチル基が好ましい。
また、nは0〜4の整数であり、CH=CH−(CH−は、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基等を包含するものであり、これらの中でもビニル基が好ましい。
【0024】
上記の繰り返し単位(B)の単量体としては、例えば、ジメチルビニルホスホナート、ジエチルビニルホスホナート、ジメチルアリルホスホナート、ジエチル3−ブテニルホスホナート、ジエチルアリルホスホナート、ジメチル3−ブテニルホスホナート等が挙げられ、これらの中でもジメチルビニルホスホナート、ジエチルビニルホスホナートが好ましい。
【0025】
本発明のエチレン系二元共重合体(D1)において、エチレン系共重合体の構成は、繰り返し単位(A)99.95〜50.0モル%と、繰り返し単位(B)0.05〜50.0モル%であり、好ましくは、繰り返し単位(A)99.9〜70.0モル%、繰り返し単位(B)0.1〜30.0モル%、より好ましくは、繰り返し単位(A)99.8〜90.0モル%、繰り返し単位(B)0.2〜10.0モル%である。
繰り返し単位(A)が99.95モル%を超えると難燃性の効果が乏しくなり、50.0モル%未満では製造が困難となる。また、繰り返し単位(B)が0.05モル%未満では難燃性の効果が乏しくなり、50.0モル%を超える場合は、製造が困難となる。
エチレン系共重合体を構成する繰り返し単位(A)及び(B)の量(モル%)は、当該共重合体の製造時に原料として使用されるそれぞれの単量体の量比を増減させることにより制御することができる。
【0026】
(2)エチレン系共重合体(D1)の分子量
本発明のエチレン系二元共重合体(D1)において、エチレン系共重合体の分子量としては、GPCで測定される重量平均分子量(Mw)が、5,000〜500,000の範囲、好ましくは10,000〜400,000、更に好ましくは15,000〜300,000の範囲である。
重量平均分子量(Mw)が5,000未満では、機械的強度が低下し、500,000を超える場合には加工性などに難点を有する惧れがある。
【0027】
上記のGPCの測定条件及び測定方法、並びに分子量計算方法は以下の通りである。
(i)測定条件
ーターズ社製150C型を使用して、下記の条件で測定を行い、重量平均分子量(Mw)を求めた。
カラム:Shodex HT−G(昭和電工(株)製)及び同・HT−806M(昭和 電工(株)製)×2本
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
温度:140℃
流量:1.0ml/分
注入量:300μl
(ii)サンプル調整
市販の4mlスクリュートップバイアル瓶に試料約3mg及び溶媒3.0mlを量り採り、センシュー科学製SSC−9300型撹拌機を用い、温度150℃で2時間振とうを行った。
(iii)分子量の計算
GPCクロマトデータは1点/秒の頻度でコンピュータに取り込み、森定雄著・共立出版(株)発行の「サイズ排除クロマトグラフィー」第4章の記載に従ってデータ処理を行い、Mw値を計算した。
(iv)カラムの較正
カラムの較正は、昭和電工(株)製単分散ポリスチレン(S−7300,S−3900,S−1950,S―1460,S−1010,S−565,S−152,S−66.0,S−28.5,S−5.05)、n−エイコサン及びn−テトラコンタンの各0.2mg/l溶液を用いて、一連の単分散ポリスチレンの測定を行い、それらの溶出ピーク時間と分子量の対数の関係を4次多項式でフィットしたものを較正曲線とした。
なお、ポリスチレンの分子量は、次式を用いてポリエチレンの分子量に換算した。 MPE=0.468×MPS
【0028】
(3)エチレン系共重合体(D1)の分子量の制御
本発明のエチレン系二元共重合体(D1)における、エチレン系共重合体の重量平均分子量(Mw)の制御(コントロール)は、ラジカル重合法による場合は、通例のラジカル重合法による低密度ポリエチレンを製造する方法で行われる。
例えば、「高圧法ポリエチレン技術史」石油化学工業協会・1998年3月・52〜55頁等に記載されるように、ラジカル重合法ポリエチレンは、管型反応器(チューブラーリアクター)と槽型反応器(オートクレーブリアクター)で製造されているが、管型反応器では、非常に高温・高圧となるため、槽型反応器に比して低分子成分が生成し易く、槽型反応器では、反応器内で強撹拌・混合が行われるために、ポリマーとラジカル開始剤、生長ラジカル末端の接触確率が高く、その結果ポリマーの連鎖移動反応が起き易く、高分子量成分や長鎖分岐が多くなる。しかしながら、これらの分子量分布の値は双方において殆ど差は無い。
【0029】
したがって、重量平均分子量(Mw)の制御は、これらの分子量分布の調整を行うことで制御され、一般的には重合温度と重合圧力の調整によって制御される。例えば、高分子量成分を減らすためには、平均分子量を同等に保ちながら分子量分布を狭くすることが肝要であって、反応温度分布を均一に保つ必要がある。このためには高圧下での低温反応を抑えることによって達成される。また、これらの反応条件は、反応開始剤を選択しても制御できる。更に、連鎖移動剤を選択し
て分子量分布を狭くすることも可能であり、活性化エネルギーの低い連鎖移動剤にすれば同じ運転条件でも分子量分布は狭くなる。
【0030】
また、イオン重合法では、一般的には(i)重合温度による調節、(ii) コモノマー量による調節、(iii) 触媒の構造による調節等によって、制御される。
重合温度の場合では低温で高分子量体が得られ、コモノマー量の場合では、 極性モノマー(ビニルリン化合物)の添加量を少なくすると分子量が上がる傾向を有する。更に、触媒の構造による場合には遷移金属の周りを嵩高い置換基で遮蔽することにより、高分子量体が得られる傾向があり、特にアリール基やアルコキシ基のような電子供与性置換基が遷移金属と相互作用可能となるように配位子を設計することにより、β−水素脱離が抑制され、高分子量体を得ることが可能である。
なお、本発明のエチレン系共重合体の融点は、通例では60℃〜135℃、好ましくは80℃〜135℃、より好ましくは90℃〜135℃の範囲である。
【0031】
(4)エチレン系共重合体(D1)の製造方法
本発明のエチレン系共重合体(D1)の製造方法は、好ましくは、ラジカル開始剤の存在下で製造されるラジカル重合法、或いはチーグラー系触媒等のイオン重合用触媒の存在下で製造されるイオン重合法などで製造される。
【0032】
(4−1)ラジカル重合法
(i)重合条件
本発明のエチレン系共重合体(D1)のラジカル重合法による製造方法は、ラジカル開始剤の存在下において、重合温度100〜300℃、好ましくは120〜280℃、より好ましくは、150〜250℃の範囲で重合される。
重合温度が100℃未満では、収率の低下や安定した製品を製造できない惧れがあり、300℃を超える場合には反応が安定せずに、分子量の大きい重合体を得ることが難しくなる。
また、重合圧力は50〜400MPa、好ましくは70〜350MPa、より好ましくは100〜300MPaの条件下であり、重合圧力が50MPa未満では充分な分子量のものが得られず加工性や物性の低下が生じ、400MPaを超える場合には安定的な製造運転が行い難い。
【0033】
(ii)重合操作
製造に際しては、基本的には通常の低密度ポリエチレンの製造設備及び技術を利用することができる。反応器の形式としては撹拌翼付のオートクレーブ型、又はチューブラー型のものを使用することができ、必要に応じて複数個の反応器を直列又は並列に接続して多段重合をすることもできる。更に、オートクレーブ型反応器の場合には、反応器内部を複数ゾーンに仕切ることにより、温度分布を設けたり、より厳密な温度制御をすることも可能である。このような操作によって、重量平均分子量(Mw)を制御することが可能である。
【0034】
(iii)ラジカル開始剤その他
重合にあたってはエチレンとビニルリン化合物とを圧縮機で圧縮して反応器へ導入し、別にラジカル開始剤を反応器へ導入して重合反応を行う。
ラジカル開始剤の添加量は、エチレン単量体及びビニルリン化合物の合計100重量部に対して、0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜3重量部、より好ましくは0.5〜2重量部の範囲であり、必要ならば、連鎖移動剤等を用いて、分子量調節などを行ってもよい。
【0035】
ラジカル開始剤としては、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジt−ブチルジパーオキシイソフタレート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレート、アセチルパーオキサイド、i−ブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、1,1−ビスt−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ビスt−ブチルパーオキシオクタン、2,2−アゾビスイソブチロニトリル等の有機過酸化物が挙げられる。
これらの中でも、半減期1分を得るための分解温度が、160〜200℃のものが好ましい。
【0036】
本発明のエチレン系共重合体(D1)のラジカル重合法として、上述の有機過酸化物をラジカル開始剤として使用する方法に加えて、例えば、Chemical Reviews,2001[101]3,689〜3,745頁や、高分子論文集,59巻4号・199〜211頁等に記載されているような遷移金属触媒によるリビングラジカル重合を挙げることができる。
【0037】
連鎖移動剤としては、水素、プロピレン、ブテン−1、C〜C20若しくはそれ以上の飽和脂肪族炭化水素又はハロゲン置換炭化水素、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロパラフィン類、クロロホルム、四塩化炭素、C〜C20若しくはそれ以上の飽和脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノール、C〜C20若しくはそれ以上の飽和脂肪族カルボニル化合物、例えばアセトン及びメチルエチルケトン、並びに芳香族化合物、例えばトルエン、ジエチルベンゼン及びキシレンのような化合物が挙げられる。
【0038】
(4−2)イオン重合法
(i)重合条件
本発明のエチレン系共重合体(D1)をイオン重合法によって製造する場合は、例えば、チーグラー系触媒等のイオン重合用触媒の存在下で、温度−50℃〜300℃、好ましくは0〜150℃、より好ましくは、50〜100℃の範囲で重合される。
重合温度が上記の下限未満では、収率の低下や安定した製品を製造できない惧れがあり、上限を超える場合には反応が安定せずに、分子量の大きい重合体を得ることが難しくなる。
また、重合圧力は、0より大きく100MPa以下の範囲内であり、好ましくは0.1MPa〜10MPaの範囲、より好ましくは0.2MPa〜5MPaの範囲である。
重合圧力が上記の下限未満では、充分な反応が起こらず、エチレンの重合が充分に進行せず、繰り返し単位(A)の割合が不足し、上記の上限を超える場合には反応が安定しなかったり、エチレンの重合活性が大きくなり過ぎて、繰り返し単位(B)の割合が不足する惧れが生じる。
(ii)重合触媒
【0039】
使用されるイオン重合用触媒としては、配位アニオン重合機構でオレフィン重合が進行するチーグラー系触媒が挙げられ、具体的には、結晶性TiCl−AlEtCl系等の初期チーグラー触媒やMgCl担持TiCl触媒、特開2000−319331号公報に開示されているバナジウム系触媒を例示することができる。この場合、特開平5−320256号公報等に開示されているように、繰り返し単位(B)の単量体の極性基と有機アルミニウム化合物を錯化させて共重合する方法が好ましい。
【0040】
また、チーグラー系触媒以外の触媒としては、特開昭61−278508号公報、特開平2−120304号公報等に開示されているステアリン酸CrやCr(アセチルアセトナート)とAlCl−AlEtClを組み合わせたCr系触媒等を例示することができ、メタロセン触媒としては、例えば、特開平6−172447号公報に記載されている成分(A):共役五員環を少なくとも1個有する周期表の第4〜6族遷移金属化合物と成分(B):有機アルミニウムオキシ化合物を組み合わせた触媒系を例示することができ、繰り返し単位(B)の単量体を等モル以上のトリアルキルアルミニウム化合物と予め接触させた後に共重合する方法が好ましい。成分(B)として有機アルミニウムオキシ化合物に代えて、成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物又はルイス酸や、固体酸、層状ケイ酸塩を使用することもできる。
【0041】
本発明のエチレン系共重合体(D1)を得るために好適に用いられるイオン重合用触媒としては、更に、少なくとも周期表第4〜10族金属に窒素原子、リン原子、酸素原子、イオウ原子が直接配位しており、かつ該原子に嵩高い置換基を有することを特徴とする、いわゆるポストメタロセン錯体と呼ばれる架橋型非メタロセン化合物(周期表第4族金属の化合物の例としては、N−N型配位子を持つビスアミド化合物やN−O型配位子を持つサリチルアルジミナト化合物、周期表第8〜10族金属の化合物の例としては、N−N型配位子を持つビスイミノ化合物やN−O型配位子を持つサリチルアルジミナト化合物、特表平10−513489号公報に記載されている下記(A)のようなNiやPd等の架橋型非メタロセン化合物)を例示することができる。
【化10】

また、特開平10−298216号公報、特開平11−315109号公報、特開2000−336110号公報、特表2001−515930号公報、Chem.Commun.,2002,744〜745頁、特開2007−46032号公報、特開2007−77395号公報等に記載のある各種非メタロセン化合物も例示することができる。
これらのイオン重合用触媒は、無機酸化物やポリマー等を担体とする担持触媒として使用することができる。
【0042】
(ii)重合様式
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用し得る。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、溶液重合法、不活性溶媒を実質的に用いずにモノマーを溶媒として用いるバルク法、或いは実質的に液体溶媒を用いずに各モノマーをガス状に保つ気相法などが採用できる。また、重合方式としては、連続式重合と回分式重合に適用される。
スラリー重合の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。更には、塩化メチレンやクロロベンゼンのようなハロゲン化炭化水素溶媒を使用することもできる。重合活性を極度に損なわない限りはTHFや水といった含酸素溶媒を使用することもできる。また、分子量調節剤として補助的に水素等の連鎖移動剤を用いることができる。
【0043】
2.エチレン系三元共重合体(D2)
(1)エチレン系三元共重合体(D2)の構造
本発明のエチレン系三元共重合体(D2)は、繰り返し単位の(A),(B)及び(C)から構成されるランダム三元共重合体であり、下記式(I)の繰り返し単位(A)の単量体はエチレンであり、下記式(II)の繰り返し単位(B)の単量体は、下記式(IV)の化学式で示される炭素−炭素二重結合を有するリン化合物であり、下記式(III)の繰り返し単位(C)の単量体は無水マレイン酸である。
【0044】
【化11】

【化12】

(ここで、R1、R2は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基を表し、nは0〜4の整数である。)
【化13】

【化14】

(ここで、R1、R2は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基を表し、nは0〜4の整数である。)
なお、R1、R2の定義は、及び式(IV)のリン化合物の具体例は、本発明のエチレン系二元共重合体(D1)について段落0023及び0024において記載したとおりのものである。
【0045】
本発明のエチレン系三元共重合体の繰り返し単位(A)/(B)/(C)の構成割合は、繰り返し単位(A)99.8〜85.0モル%、/(B)0.1〜10モル%/(C)0.1〜5.0モル%、好ましくは(A)99.6〜90.0モル%/(B)0.2〜7.0モル%/(C)0.2〜3.0モル%、より好ましくは(A)99.4〜93.0モル%/(B)0.3〜5.0モル%/(C)0.3〜2.0モル%である。
(A)成分が99.8モル%を超え、(B)成分が0.1モル%未満、(C)成分が0.1モル%未満では、難燃性等の(B)成分及び(C)成分の性能が発揮されない惧れが生じる。また、(A)成分が85.0モル%未満、(B)成分が10モル%を超え、かつ(C)成分が5.0モル%を超えるものは製造が難しく、性状が安定したエチレン系三元共重合体が得られ難い。
なお、エチレン系三元共重合体を構成する繰り返し単位(A)、(B)及び(C)の量(モル%)は、当該共重合体の製造時に原料として使用されるそれぞれの単量体の量比を増減させることにより制御することができる。
【0046】
上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分からなるエチレン系三元共重合体の具体例としては、エチレン/ジエチルビニルホスホネート/無水マレイン酸共重合体、エチレン/ジメチルビニルホスホネート/無水マレイン酸共重合体、エチレン/ジエチルアリルホスホネート/無水マレイン酸共重合体、エチレン/ジメチルアリルホスホネート/無水マレイン酸共重合体、エチレン/ジエチル3−ブテニルホスホネート/無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0047】
(2)エチレン系三元共重合体の分子量
本発明のエチレン系三元共重合体の分子量としては、GPCで測定される重量平均分子量(Mw)が、5,000〜500,000の範囲、好ましくは10,000〜400,000、更に好ましくは15,000〜300,000の範囲である。
重量平均分子量(Mw)が5,000未満では、機械的強度が低下し、500,000を超える場合には加工性などに難点を有する惧れがある。
なお、本発明のエチレン系三元共重合体の融点は、通例では60℃〜135℃、好ましくは80℃〜135℃、より好ましくは90℃〜135℃の範囲である。
上記のGPCの測定条件及び測定方法、並びに分子量計算方法は、本発明のエチレン系二元共重合体(D1)について段落0027において記載したとおりのものである。
【0048】
(3)エチレン系三元共重合体(D2)の分子量の制御
本発明のエチレン系三元共重合体の重量平均分子量(Mw)の制御(コントロール)は、ラジカル重合法による場合とイオン重合法による場合共に、本発明のエチレン系二元共重合体(D1)について段落0028〜0030において記載したとおりの方法により行われる。
【0049】
(4)エチレン系三元共重合体(D2)の製造方法
本発明のエチレン系三元共重合体の製造は、本発明のエチレン系二元共重合体(D1)について段落0031〜0042において記載した方法に準じて同様に行われる。
【0050】
3.他のオレフィン系樹脂(E)
本発明の(D1),(D2)以外のポリオレフィン系樹脂(E)とは、イオン重合で製造される高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂若しくは直鎖状超低密度ポリエチレン樹脂等のイオン重合で製造されるポリエチレン樹脂(E1)、ラジカル重合で製造される低密度ポリエチレン等のエチレン(共)重合体(E2)や、ポリプロピレン単独重合体、プロピレンとα−オレフィンとの相互共重合体、ブテン−1樹脂等(E3)が挙げられる。特にポリエチレン系樹脂が、本発明のランダム二元又は三元エチレン共重合体と同質の樹脂であり、均一分散等の点から好ましい。
【0051】
(1)ポリエチレン樹脂(E1)
本発明で好ましく用いることのできるイオン重合で製造されるポリエチレン樹脂(E1)とは、JIS K6922−1(1997)の試験方法に基づいて測定した密度が0.860〜0.910g/cm未満、JIS K6922−1(1997)の試験法に基づいて条件D(温度190℃・荷重2.16kg)で測定したメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分のエチレン・α−オレフィン共重合体(エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム、エラストマー、直鎖状超低密度ポリエチレン等を包含する)、密度が0.910〜0.940g/cm未満、MFRが0.1〜100g/10分のエチレン・α−オレフィン共重合体(直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とも称す)、密度が0.940〜0.970g/cm、MFRが0.1〜100g/10分の範囲のエチレン単独重合体又はエチレン・α−オレフィン共重合体である高密度ポリエチレン樹脂が挙げられる。
【0052】
上記α−オレフィンとしては、直鎖又は分岐鎖状の炭素数3〜20のオレフィンが好ましく、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンを挙げることができる。また、それらを2種類以上組み合わせて使用しても良い。これら共重合体の中でも、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体が経済性の観点から好適である。
【0053】
本発明で用いることのできるイオン重合で製造されるポリエチレン樹脂(E1)を製造するためには、チーグラー系触媒、フィリップス触媒或いはシングルサイト系触媒を用いて重合温度と圧力等の重合条件、助触媒等を制御することにより好適に製造可能である。
また、ポリエチレン樹脂(E1)は、特に有機アルミニウムオキシ化合物とシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物によるオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られる共重合体である場合には、更に好適である。
【0054】
上記のイオン重合で製造されるポリエチレン樹脂(E1)は、特に製造触媒、プロセス等に限定されるものではなく、成書『ポリエチレン技術読本』(松浦一雄・三上尚孝編著、工業調査会刊行、2001年)の123〜160頁、163〜196頁等に記載されている方法により製造することが可能である。即ち、チーグラー系触媒、フィリップス触媒、シングルサイト系触媒等を用い、スラリー法、溶液法、気相法の各重合様式にて、各種重合器と重合条件等にて製造することが可能である。
【0055】
(2)ラジカル重合で製造されるエチレン(共)重合体(E2)
本発明で用いることのできるラジカル重合で製造されるエチレン(共)重合体(E2)とは、高圧ラジカル重合法によるエチレン単独重合体(低密度ポリエチレン樹脂)、エチレン・ビニルエステル共重合体及びエチレンとα,β−不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体との共重合体等が挙げられ、これら低密度ポリエチレン樹脂等は公知の高圧ラジカル重合法により製造され、チューブラー法、オートクレーブ法のいずれの方法で製造してもよい。
上記の低密度ポリエチレン樹脂は、密度が0.910〜0.935g/cm、MFRが0.1〜5.0g/10分の範囲のものが好適に使用される。
【0056】
エチレン・ビニルエステル共重合体は、エチレンを主成分とし、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニル等のビニルエステル単量体との共重合体である。これらの中でも特に好ましいものとしては、酢酸ビニルを挙げることができる。エチレン50〜99.5重量%、ビニルエステル0.5〜50重量%、他の共重合可能な不飽和単量体0〜49.5重量%からなる共重合体が好ましい。更にビニルエステル含有量は3〜20重量%、特に好ましくは5〜15重量%の範囲で選択される。
【0057】
エチレンとα,β−不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体との共重合体とは、エチレンとメタクリル酸との共重合体、エチレンとアクリル酸との共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体等のエチレンとα,β−不飽和カルボン酸との共重合体;エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体等のエチレン−(メタ)アクリル酸又はそのアルキルエステル共重合体;エチレン−無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、エチレン−無水マレイン酸−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−無水マレイン酸−アクリル酸エチル共重合体等の二元共重合体又は多元共重合体等が挙げられる。
【0058】
これらのコモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル等を挙げることができる。この中でも特に好ましいものとして(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等のアルキルエステルを挙げることができる。特に、(メタ)アクリル酸エステル含有量は3〜30重量%、好ましくは5〜20重量%の範囲である。
【0059】
(3)ポリプロピレン系樹脂等(E3)
本発明におけるポリプロピレン系樹脂等(E3)とは、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレン、ブテン−1等のα−オレフィンとのランダム共重合体、ブロック共重合体、ブテン−1樹脂、ポリエチレン系樹脂若しくはポリエチレン系エラストマーとポリプロピレン系樹脂との混合物、これらの混合物を動的架橋して得られるポリオレフィン系エラストマー(TPO)等を包含する。
【0060】
上記のポリオレフィン系樹脂(E)では、特に密度0.86〜0.94g/cmのエチレン・α−オレフィン共重合体、低密度ポリエチレン、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸又はその誘導体との共重合体の少なくとも一種のポリエチレン系樹脂が、柔軟性があり、大量に添加される無機系難燃剤の水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウムの受容性及び上記のエチレン系二元ランダム共重合体(D1)及び/又はエチレン系三元ランダム共重合体(D2)の柔軟性を損なわないこと、電線・ケーブルなどの製品に加工された場合にも柔軟性を維持しているため作業性(施工性)等に優れるものとなることから望ましいものである。特に、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、密度0.86〜0.94g/cmのエチレン・α−オレフィン共重合体が、難燃性と柔軟性等の性能を有し、難燃材料として効果的で好ましい。
【0061】
4.ポリオレフィン系樹脂組成物
(1)ポリオレフィン系樹脂組成物の基本構成
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、基本的に、ポリエチレン主鎖にビニルリン化合物を組み込む新規なエチレン系二元ランダム共重合体(D1)及び/又はポリエチレン主鎖にビニルリン化合物と無水マレイン酸を組み込む新規なエチレン系三元ランダム共重合体(D2)に、(D1)、(D2)以外の他のポリオレフィン系樹脂(E)及び/又は無機難燃剤を組み合わせる組成物として、樹脂組成物材料を構成するものである。
即ち、第一態様は、エチレン系二元ランダム共重合体(D1)及びエチレン系三元ランダム共重合体(D2)のいずれかと他のポリオレフィン系樹脂(E)との組み合わせ組成物、ないしは、エチレン系二元ランダム共重合体(D1)とエチレン系三元ランダム共重合体(D2)及び他のポリオレフィン系樹脂(E)の三成分組成物の三態様を成すものである。
【0062】
詳細には、段落0017等に記載したように、下記式(I)で表される繰り返し単位(A)99.95〜50.0モル%と、下記式(II)で表される繰り返し単位(B)0.05〜50.0モル%により構成され、GPCで測定される重量平均分子量(Mw)が、5,000〜500,000であるエチレン系共重合体(D1)、及び/又は下記式(I)で表される繰り返し単位(A)99.8〜85.0モル%と、下記式(II)で表される繰り返し単位(B)0.1〜10.0モル%及び下記式(III)で表わされる繰り返し単位(C)0.1〜5.0モル%により構成され、GPCで測定される重量平均分子量(Mw)が、5,000〜500,000であるエチレン系三元共重合体(D2)0.5〜95重量%、並びに(D1),(D2)以外の他のポリオレフィン系樹脂(E)5.0〜99.5重量%により構成されるポリオレフィン系樹脂組成物である。
【0063】
【化15】

【化16】

(ここで、R1、R2は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基を表し、nは0〜4の整数である。)
【化17】

【0064】
(2)ポリオレフィン系樹脂組成物の配合組成
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物の配合量は、エチレン系ランダム共重合体(D)(D1又はD2のみ、或いはD1とD2)0.5〜95重量%とポリオレフィン系樹脂(E)5〜99.5重量%の範囲、好ましくはエチレン系ランダム共重合体(D)1〜90重量%と、ポリオレフィン系樹脂(E)成分99〜10重量%、更に好ましくはエチレン系ランダム共重合体(D)5〜80重量%、ポリオレフィン系樹脂(E)成分95〜20重量%の範囲で選択される。
エチレン系ランダム共重合体(D)が0.5重量%未満、ポリオレフィン系樹脂(E)が99.5重量%を超える場合には、難燃効果や接着効果等のエチレン系ランダム共重合体(D)の難燃の向上効果が望めない。また、ポリオレフィン系樹脂(E)が5重量%未満、エチレン系ランダム共重合体(D)が95重量%を超える場合には、ポリオレフィン樹脂(E)の性能が発揮されない惧れが生じる。
【0065】
(3)ポリオレフィン系樹脂組成物の他の態様
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物の第二の態様は、エチレン系二元ランダム共重合体(D1)及び/又はエチレン系三元ランダム共重合体(D2)のいずれかと無機難燃剤との組み合わせ組成物、ないしは、エチレン系二元ランダム共重合体(D1)及び/又はエチレン系三元ランダム共重合体(D2)と他のポリオレフィン系樹脂(E)と無機難燃剤との組み合わせ組成物であり、これら共重合体又は組成物100重量部に無機系難燃剤30〜200重量部を配合するポリオレフィン系樹脂組成物である。
無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化スズの水和物、ホウ砂等の無機金属化合物の水和物、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム−カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。上記の中では、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイトからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属化合物、特に水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛及び水酸化マグネシウムが難燃効果に優れており、経済的にも有利である。これらの中でも水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムが好ましく、特に合成または天然の水酸化マグネシウムが好ましい。
なお、上記の難燃剤は1種のみでも用いられるが、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
これら無機系難燃剤を使用する場合、その表面を、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、有機ボラン、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸又はそれらの金属塩、パラフィン、ワックス、又はそれらの変性物等で処理を行なうことが望ましい。
これら無機系難燃剤の粒径は、平均粒径が20μm以下、好ましくは10μm以下とされる。上記の無機系難燃剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対して、30〜200重量部であるが、好ましくは50〜180重量部、更に好ましくは、60〜150重量部の範囲で使用される。配合量が30重量部未満では、難燃効果の向上が不充分であり、200重量部を超える量を配合した場合には、耐衝撃強度の低下等の機械的強度や可撓性及び加工性が低下するばかりでなく、耐摩耗性が著しく低下し、かつ低温特性が悪化する。
【0067】
また、難燃助剤として、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、リン酸カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、二硫化モリブデン、粘土、赤リン、ケイソウ土、カオリナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、タルク、シリカ、ホワイトカーボン、ゼオライト、ハイドロマグネサイト、メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、リン酸ジメラミン、ピロリン酸メラミン、ピロリン酸ジメラミン、ポリリン酸メラミン、エチレンジアミンリン酸塩、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネレート、シリコーン、加熱膨張黒鉛等を併用しても良い。これら難燃助剤は上記の無機系難燃剤100重量部に対して50重量部まで配合することが望ましい。
【0068】
(4)変性ポリエチレン樹脂の配合
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物、特に無機系難燃剤を配合した組成物では、充分に分散性や相溶性が発揮されない場合や、更に分散性や相溶性を高める場合には、変性ポリエチレン樹脂を、樹脂成分100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜7重量部、更に好ましくは1〜5重量部を配合してもよい。配合量が0.1重量部未満では効能が発揮されず、10重量部以上を加えてもそれ以上の効能の向上が望めない。
【0069】
変性ポリエチレン樹脂とは、ポリエチレン樹脂にα,β−不飽和ジカルボン酸又は無水物を変性グラフトをしたポリエチレン樹脂であって、α,β−不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フラン酸、クロトン酸、ビニル酢酸、ペンテン酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸又は無水物、或いはそれらの金属塩等が挙げられる。これらの中でもカップリング効果等が優れることから無水マレイン酸が最も好ましい。
ここで変性とは、溶媒の存在下又は不存在下においてラジカル発生剤を使用し、α,β−不飽和ジカルボン酸又は酸無水物基を有する化合物と上記ポリエチレン樹脂を反応させることをいう。ポリエチレン樹脂中のα,β−不飽和ジカルボン酸又は無水物を有する化合物の量はポリエチレン樹脂100重量%に対して、0.001〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%がよい。α,β−不飽和ジカルボン酸又は無水物を有する化合物の量が0.001重量%よりも少なければ引張強度等の力学的特性が悪化し、10重量%より多ければ変性されるポリエチレン樹脂が過度の架橋又は分解を起こし、成形性が悪化する。
【0070】
上記の変性ポリエチレン樹脂は、ベース樹脂のポリオレフィン系樹脂(D)と良好な相溶性を有し、かつ無機系難燃剤とのカップリング効果が著しく、難燃性樹脂組成物の機械的強度の向上や燃焼時の炭化層(チャー)の形成を促し、難燃性を向上させる役割として用いられる。
【0071】
(4)ポリオレフィン系樹脂組成物の利用の態様その他
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物の利用の態様としては、その組成物を使用した成形品であり、押出成形、射出成形、吹込成形、回転成形、圧縮成形等の成形方法よって、フィルム、シート、発泡体、フィラメント、繊維、不織布、織布、袋、容器、電線、ケーブル等の成形品に成形されて活用され得るものである。
特に、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物においては、耐傷付き性や引張強度等が要求される電線・ケーブルに好適であり、更に、無機系難燃剤を配合した組成物を使用した壁紙材、化粧材、電線・ケーブルは、柔軟性に富むために、作業性や施工性に優れるものである。
【0072】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物においては、他の性能を付加する等のために、他の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、中和剤、発泡剤、架橋剤、核剤、加工助剤、有機充填剤、水分吸収剤、無機充填剤等の添加剤を配合しても差し支えない。
【実施例】
【0073】
[測定方法]
(1)密度
JIS K6922−1(1997)の試験方法に基づいて測定した。
(2)メルトフローレート(MFR)
JIS K6922−1(1997)の試験法に基づいて条件D(温度190℃・荷重21.18N)で測定した。
(3)融点
JIS K7121(1987)の手法に則り、パーキンエルマー社製DSC−7AのDSC測定装置を用いて、融解ピーク温度を測定した。
(4)重量平均分子量(Mw)
段落0027に前記した方法による。
(5)エチレン系共重合体の13C−NMRスペクトル
試料0.3gをNMRの試料管に量り取り、オルトジクロロベンゼン2.3mlを加え、130℃で加熱溶解した後、重ベンゼン0.5mlを加えた。Varian社製Inova500分光計を用いて13C−NMRスペクトルを測定した。共鳴周波数125.7Hz、パルス繰り返し時間は16.3秒、フリップ角は90゜、積算回数は約2,000回、測定温度は130℃である。化学シフトの基準は、重ベンゼンのシグナルを128.0ppmとした。
(6)エチレン系共重合体の赤外吸収スペクトル
試料を180℃で融解させ、0.05mm厚のフィルムを圧縮成形法で作成し、日本分光(株)製FT/IR−6100で透過法赤外吸収スペクトルを測定した。
(7)リン単量体単位の含有量
試料0.1〜0.2gに硫酸と過酸化水素水を加え湿式分解を実施した後、溶液中のリンをJOBIN−YVON社製のJY−46Pを用いて、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析法により測定した。
(8)酸素指数(OI)
180℃の温度で、3mmのシートを圧縮(プレス)成形にて作成し、幅6.5mm×長さ150mmの試験片を切削して得た。得られた試験片をJIS K−7201の手法に則り、酸素指数を測定した。
酸素測定装置を用い、試験片の燃焼時間が3分以上継続して燃焼するか、着炎後の燃焼長さが50mm以上に燃え続けるのに必要な最低酸素流量の測定によって酸素指数を求めた。
OI(%)={[O]/([O]+[N])}×100
[O]:酸素の流量L/分
[N]:窒素の流量L/分
【0074】
[製造例1]
(エチレン系二元ランダム共重合体樹脂(D1)の製造)
容積4Lで2ゾーンに分割されたオートクレーブ型反応器を使用し、予めジエチルビニルホスホネート(DEVP)とエチルベンゼン(EB)を、DEVP:EB=2:1の割合でタンク内で充分に混合し、均一な溶液として高圧ポンプで第2圧縮機の上流に注入した。DEVP溶液はエチレンと共に昇圧して反応器の第1ゾーンにフィードした。反応器入口におけるエチレンモノマーの温度は35℃であり、エチレン流量45kg/hr、DEVPの注入量は1.4L/hrとした。一方、ラジカル開始剤としてt−ブチルパーオキシピバレートをイソパラフィンに12.6g/Lとなるように濃度を調製しながら溶解し、0.107L/hrで反応器の第1ゾーンに注入し、重合温度205℃・重合圧力140MPaの条件で重合を行った。生成したエチレン系二元ランダム共重合体は、高圧分離器及び低圧分離器にて未反応モノマーと分離し、押出機を用いてペレット化して、試料を得た(D1)。
得られたポリマーを13C−NMRにかけて、エチレン系共重合体の構造を確認した。一般的なラジカル法低密度ポリエチレンには見られない16.7ppm、28.3ppm、29.6ppm、37,5ppm、61.2ppmにDEVP由来のシグナルを観察できた。エチレン系二元ランダム共重合体の推定構造を図1に示し、NMRでの測定結果を図2に示す。図2のチャート記載の数値は、図1の化学構造の各炭素に帰属される。
また、得られたポリマーの赤外吸収スペクトルには、1030cm−1、1070cm−1、1250cm−1付近に、P=O基に基づくピークが認めらる。図4に赤外吸収スペクトルを示す。
上記で得られたポリマーを、ICP発光分析装置で、DEVP由来単位の含有量を測定したところ1.0モル%であり、190℃・2.16kg荷重で測定したMFRは、1.4g/10分、融点は106℃、密度0.923g/cmであり、重量平均分子量(Mw)は49,000であった。この共重合体の酸素指数(OI)は19.5%であった。
また、参考例として高圧低密度ポリエチレンの単独重合体を製造し、その酸素指数等を測定した。また、NMRの測定結果を図3に、赤外吸収スペクトルを図5に示す。これらの結果を表1に示した。
【0075】
[製造例2]
(エチレン系三元ランダム共重合体樹脂(D2)の製造)
容積4Lで2ゾーンに分割されたオートクレーブ型反応器を使用し、開始剤としてt−ブチルパーオキシピバレートをイソパラフィンに12.6g/lとなるように溶解し、0.107・l/hrで反応器の第1ゾーンに注入した。一方、ジエチルビニルホスホネート(DEVP)と無水マレイン酸及びエチルベンゼンを、DEVP:無水マレイン酸:エチルベンゼン=2:0.5:1の割合でタンク内で充分混合して均一な溶液とした後、高圧ポンプで第2段圧縮機の上流に注入し、エチレンと共に所定の圧力に昇圧し、反応器の第1ゾーンにフィードした。反応器入り口におけるエチレンモノマーの温度は約35℃であり、エチレン流量45kg/hr、コモノマーの注入量は1.5・l/hrとし、重合温度205℃・重合圧力140MPaの条件で重合した。
生成した共重合体(D2)は、高圧分離器と低圧分離器にて未反応モノマーを分離し、押出機を用いペレット化し測定サンプルに供した。
得られたポリマー中の無水マレイン酸量は上記のIR測定法に従い算出した結果、無水マレイン酸量は0.3モル%であった。また、得られたポリマーをICP発光分析法により、DEVP由来単位の含有量を同定したところ、1.0モル%だった。190℃・2.16kg荷重で測定したMFRは3.4g/10minであり、重量平均分子量(Mw)は25,000、密度は0.913g/cm3融点は103℃であった。この重合体の酸素指数(OI)は19.5であった。これらの結果を表1に示した。
【0076】
【表1】

【0077】
[実施例1]
上記で製造したエチレン系二元ランダム共重合体樹脂(D1)を80重量%、ポリオレフィン系樹脂(E1)として、高密度ポリエチレン(MFR0.7g/10min、密度0.963g/cm、銘柄:ノバテックHD HB439R、日本ポリエチレン(株)製、HDPEと称す)を20重量%、押出機を用いて温度200℃にて溶融混練し、ペレット状のポリオレフィン系樹脂組成物を得た。
得られたポリオレフィン系樹脂組成物のMFRは0.8g/10min、密度 は0.931g/cm、酸素指数は19.0であった。
【0078】
[実施例2]
上記で製造したエチレン系三元ランダム共重合体樹脂(D2)を用い、実施例1に記載の方法に同じにて実施して、ペレット化し物性を測定した。得られたポリオレフィン系樹脂組成物のMFRは0.6g/10min、密度は0.923g/cm、酸素指数は19.5であった。
【0079】
[比較例1,2]
ポリオレフィン系樹脂(E1)として、高密度ポリエチレン(MFR0.7g/10min、密度0.963g/cm、銘柄:ノバテックHD HB439R、日本ポリエチレン(株)製、HDPEと称す)及び(E2)として直鎖状低密度ポリエチレン(MFR2.1g/10min、密度0.920g/cm、銘柄:ノバテックLL F30HG 日本ポリエチレン(株)製、LLDPEと称する)のみを用いて物性を測定した。これらの結果を表2にまとめた。
【0080】
【表2】

【0081】
[実施例3]
エチレン系二元ランダム共重合体樹脂(D1)100重量部に、水酸化マグネシウム(銘柄:キスマー5J 協和化学工業(株)製)100重量部を混合し、竪型定量供給機と連続混練装置及びベント式押出機で構成されたナカタニ機械(株)製NCM型50mmニーダー式押出機(L/D=20)にて、190℃の温度で溶融ストランドを押出し、水槽にて冷却後、カッターを用いて造粒した。得られた組成物の酸素指数、及び引張破壊伸びを測定し、結果を表3に示した。
【0082】
[実施例4]
エチレン系二元ランダム共重合体樹脂(D1)50重量%とエチレン−アクリル酸エチル共重合体(MFR0.8g/10min、アクリル酸エチル含有量15重量%、銘柄:レクスパールEEA A1150 日本ポリエチレン(株)製、EEAと称す)(E3)50重量%とからなる樹脂成分100重量部に、水酸化マグネシウム(銘柄:キスマー5J 協和化学工業(株)製)50重量部を混合し、実施例3のナカタニ機械(株)製NCM型50mmニーダー式押出機(L/D=20)にて、190℃の温度で溶融ストランドを押出し、水槽にて冷却後、カッターを用いて造粒した。得られた組成物の酸素指数及び引張破壊伸びを測定し、結果を表3に示した。
【0083】
[実施例5〜7、比較例3〜6]
実施例4に準拠して、樹脂の配合比と無機系難燃剤の配合量等を変更して、評価した結果を表3に示した。
【0084】
【表3】

【0085】
[実施例8]
エチレン系二元ランダム共重合体樹脂(D1)80重量%とポリプロピレン重合体(MFR(230℃・2.16kg)0.8g/10min、銘柄:ノバテックPP EC−9 日本ポリプロ(株)製、PPと称す)(E4)20重量%とからなる樹脂成分100重量部に、水酸化マグネシウム(銘柄:キスマー5J 協和化学工業(株)製)100重量部を混合し、実施例3のナカタニ機械(株)製NCM型50mmニーダー式押出機(L/D=20)にて、190℃の温度で溶融ストランドを押出し、水槽にて冷却後、カッターを用いて造粒した。得られた組成物の酸素指数(OI)を測定した結果、33%であった。
【0086】
[比較例7]
ポリプロピレン重合体(MFR(230℃・2.16kg)0.8g/10min、銘柄:ノバテックPP EC−9 日本ポリプロ(株)製、PPと称す)(E4)100重量部に、水酸化マグネシウム(銘柄:キスマー5J 協和化学工業(株)製)100重量部を混合し、実施例3のナカタニ機械(株)製NCM型50mmニーダー式押出機(L/D=20)にて、190℃の温度で溶融ストランドを押出し、水槽にて冷却後、カッターを用いて造粒した。得られた組成物の酸素指数(OI)を測定した結果、24%であった。
【0087】
[実施例9]
エチレン系三元ランダム共重合体(D2)50重量%、ポリオレフィン系樹脂(E3)50重量%で構成される樹脂成分100重量部に、無水マレイン酸で変性した変性ポリエチレン樹脂(銘柄:アドテックス L6100M 日本ポリエチレン(株)製)5重量部と、水酸化マグネシウム(銘柄:キスマー5J 協和化学工業(株)製)200重量部を混合し、実施例3のナカタニ機械(株)製NCM型50mmニーダー式押出機(L/D=20)にて、190℃の温度で溶融ストランドを押出し、水槽にて冷却後、カッターを用いて造粒した。得られた組成物の酸素指数は、38%、引張破壊伸びは550%であった。
【0088】
[実施例の結果の考察]
製造例1〜2おけるNMRスペクトル、IRスペクトルの各データ及びICP発光分析の結果により、本発明の新規なエチレン系二元及び三元共重合体のポリマー構造が、先の式(I),(II)及び(III)の繰り返し単位を有するランダム構造を成していることが実証されている。また、本発明のエチレン系二元及び三元共重合体の重量平均分子量(Mw)が5,000〜500,000の範囲にあることも実証されている。
そして、実施例1,2と比較例1,2の対比により各実施例の難燃性が高いことが示されている。実施例3は、比較例5に比して、難燃性及び引張破壊伸びが大幅に向上していることを示している。実施例4は、比較例6に比して、無機系難燃剤の配合量が半分量の50重量部に関わらず、難燃性が高く、かつ無機系難燃剤の配合量が少ないので引張破壊伸びが非常に高く、柔軟性を有していることを示している。実施例5、6は、比較例6と同量の無機系難燃剤が配合されたものであるが、難燃性と引張破壊伸びが優れている。特に、実施例6は、無水マレイン酸基を有したエチレン系三元ランダム共重合体を使用しているため、引張破壊伸びが格別に高く、柔軟性に富んでいることを示している。実施例7は、樹脂成分100重量に対して無機難燃剤を200重量部配合したものであるが、無水マレイン酸基を有したエチレン系三元ランダム共重合体を使用しているめ難燃性と引張破壊伸びが格別に高く、無機難燃剤の受容性が高いことを示している。
比較例3,4は、無機系難燃剤を300重量部配合した組成物であり、当然に難燃性が高いものの、引張破壊伸びが大幅に低下し、脆化し易いものであった。
実施例8は比較例7に比して難燃性に優れ、実施例9は難燃性と引張破壊伸びに格別に優れている。
したがって、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、難燃性が高いと共に、ポリエチレン系樹脂材料本来の格別に優れた特性を充分に発揮できる、新規な組成物材料であることが明確に実証されている。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】エチレン−ジエチルビニルホスホナートランダム共重合体の13C−NMRスペクトルの帰属ピークの化学構造式を表す。
【図2】製造例1で得られたエチレン−ジエチルビニルホスホナートランダム共重合体の13C−NMRスペクトルを示す。
【図3】参考例のエチレン単独重合体の13C−NMRスペクトルを示す。
【図4】製造例1で得られたエチレン−ジエチルビニルホスホナートランダム共重合体の赤外吸収スペクトルを示す。
【図5】参考例のエチレン単独重合体の赤外吸収スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される繰り返し単位(A)99.95〜50.0モル%と、下記式(II)で表される繰り返し単位(B)0.05〜50.0モル%により構成され、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定される重量平均分子量(Mw)が、5,000〜500,000であるエチレン系二元ランダム共重合体(D1)、及び/又は下記式(I)で表される繰り返し単位(A)99.8〜85.0モル%と、下記式(II)で表される繰り返し単位(B)0.1〜10.0モル%及び下記式(III)で表わされる繰り返し単位(C)0.1〜5.0モル%により構成され、GPCで測定される重量平均分子量(Mw)が、5,000〜500,000であるエチレン系三元ランダム共重合体(D2)0.5〜95重量%、並びに(D1),(D2)以外の他のポリオレフィン系樹脂(E)5.0〜99.5重量%により構成されるポリオレフィン系樹脂組成物。
【化1】

【化2】

(ここで、R1、R2は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基を表し、nは0〜4の整数である。)
【化3】

【請求項2】
請求項1に記載されたポリオレフィン系樹脂組成物100重量部に、無機系難燃剤30〜200重量部を混合してなるポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項3】
式(I)で表される繰り返し単位(A)99.95〜50.0モル%と、式(II)で表される繰り返し単位(B)0.05〜50.0モル%により構成され、GPCで測定される重量平均分子量(Mw)が、5,000〜500,000であるエチレン系二元ランダム共重合体(D1)、及び/又は式(I)で表される繰り返し単位(A)99.8〜85.0モル%と、式(II)で表される繰り返し単位(B)0.1〜10.0モル%及び式(III)で表わされる繰り返し単位(C)0.1〜5.0モル%により構成され、GPCで測定される重量平均分子量(Mw)が、5,000〜500,000であるエチレン系三元ランダム共重合体(D2)100重量部に、無機系難燃剤30〜200重量部を混合してなるポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項4】
ポリオレフィン系樹脂(E)が、密度0.86〜0.94g/cmのエチレン・α−オレフィン共重合体、低密度ポリエチレン、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体との共重合体からなる群から選ばれる、少なくとも一種のポリエチレン系樹脂であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載されたポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項5】
無機系難燃剤が、水酸化マグネシウム及び/又は水酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載されたポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載されたポリオレフィン系樹脂組成物100重量部に、更に変性ポリエチレン樹脂を0.1〜10重量部配合してなるポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載されたポリオレフィン系樹脂組成物を主材とする成形品。
【請求項8】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載されたポリオレフィン系樹脂組成物を用いた電線・ケーブル。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−102553(P2009−102553A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277029(P2007−277029)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】