説明

ポリオールと、少なくとも1種のポリマー性または非ポリマー性の他の分子部分、特にポリオルガノシロキサン型の分子部分をベースとするハイブリッド化合物、その製造方法、およびその用途

本発明は、少なくとも1つのポリオール部分(Po)(例えば、オリゴマーまたはポリマー)を有し、Poのヒドロキシル基の少なくとも1つが、多様な性質〔例えば、ポリマー性(例えば、ポリオルガノシロキサン、すなわちPOS)、炭化水素性、または無機性〕を有しうる少なくとも1種の部分Aで置換されている、新規なハイブリッド化合物に関する。Po部分とA部分との間の結合Roは、「クリック化学」を用いて得られ、式(II.1)または(II.2)(式中、Zは、-CH-または-N-を表す)に相当する。Aは、Poのさまざまなポリオール、ポリオルガノシロキサン(POS)、ポリアルキレングリコール、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、およびこれらの組合せ、加えて無機物質(例えば、シリカ)およびこれらの組合せを含む基から選択される。このハイブリッド成分は、乳化剤、特に化粧品のための乳化剤として使用することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのポリオール部分(Po)(例えば、オリゴマー性またはポリマー性部分)と、さまざまな性質、例えば、ポリマー性(例えば、ポリオルガノシロキサン:POS)、炭化水素性、または無機性のものであってよい少なくとも1種の部分Aとを有する新規なハイブリッド構造に関する。前述の部分Poと前述の部分Aとの間の結合は、「クリック化学」の呼び名で示される化学メカニズムによって得られる。このメカニズムでは、アジド(すなわちニトライド)反応性単位が、アルキニル型またはニトリル型の反応性単位と反応して、トリアゾール型またはテトラゾール型の連結ヒンジ(Ro)を形成する。
【0002】
本発明は、これらのハイブリッド構造を得るための方法、ならびにこれらの例えば両親媒性化合物としての適用にも関する。
【0003】
最後に、本発明は、アジド型および/またはアルキニル型および/またはニトリル型の官能基を有し、これらのハイブリッド構造の合成に関与するシントン(すなわち中間体生成物)にも関する。
【背景技術】
【0004】
本発明に包含されるポリオール〔部分(Po)〕は、より詳細には、しかし限定的ではなく、オリゴサッカライドまたはポリサッカライド(直鎖状、分岐、または環状)を含む。このオリゴサッカライドまたはポリサッカライドは、互いにオシド結合で連結された少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個のモノサッカライド単位で、少なくとも部分的にできている。
【0005】
ポリサッカライドであるこれらの特定のポリオールポリマーPoは、これらの物理化学的特性(親水性、加水分解性、生体吸収性など)、構造および性質の点で多くの可能性を提供するこれらの化学的複雑性、これらの高い利用可能性、およびこれらが天然に由来することなどの理由で非常に興味が持たれている。この天然に由来することにより、環境的および/または毒性学的および/または商業的な観点からこれらは特に魅力的である。したがって、ポリサッカライド(例えば、でんぷん製品およびこれらの誘導体またはセルロース製品およびこれらの誘導体など)の用途は非常に多い。
【0006】
POS(シリコーン類)は、多くの産業部門で非常に興味を持たれている別のクラスのポリマーを構成する。POSは容易に得られる原材料であるという事実に加えて、これらは、これらの疎水性の性質によっても特徴付けられる。
【0007】
これらから、ポリサッカライドとPOSとをベースとするハイブリッド構造を創造して、例えば、特に化粧品組成物(例えば、スキンケアのための組成物、日焼け防止または処置のための組成物、シャンプー組成物、ならびに、デオドラントおよび/または発汗抑制剤組成物など、とりわけ、例えば、「スティック」状、ゲルまたはローション形態の組成物)に使用することができる乳化性化合物を利用可能にするという考えにつながる。
【0008】
このポリサッカライド-POSシステムのこれらの特定のハイブリッド構造において、ポリサッカライド部分とPOS部分とにより、これらのそれぞれの利点が組み合わされる。
ポリサッカライド部分は、その多くのヒドロキシル基の存在により、疎水性媒体中でも親水性媒体中でも、強い分子内または分子間の相互作用に加わる。この分子認識型の性質により、ゲルタイプの構造を得ること、および/または極性の表面(例えば、繊維製品(すなわち綿)または髪など)との相互作用を促進することが可能になる。
【0009】
POS部分は、2つの主要な利点を与える。第一の利点は、このPOS部分を高反応性にし、存在する基材に応じた分子構造を取ることができる能力を与える柔軟性である。第二の利点は、とりわけ、このPOS部分の疎水性の性質によるものであり、低い表面エネルギー特性を与える。
【0010】
ハイブリッドポリサッカライド-POS構造を含有する市販用の製品の例として、名称「Wacker-Belsil(登録商標)SPG 128 VP」の下で流通しているものが挙げられる。これは、シクロペンタジメチルシロキサンであって、シロキシD単位の一部が、2つの酸素架橋を有する連結ヒンジによってケイ素に連結したポリグルコシド鎖で置換されていて、D単位の別の一部が、(CH2)w-CH3型(wは自然数である)のアルキル基で置換されているものである。
【0011】
本明細書において、POSのM、D、T、およびQ基を示すために、従来の命名法を参照する。参考文献として、NOLLによる「Chemistry and technology of silicones」(Chapter 1.1, pages 1-9, Academic Press, 1968 - 2nd edition)を挙げることができる。
【0012】
ハイブリッドポリサッカライド-POSシステムの合成は、ポリサッカライド部分をPOS部分に、主要なアプローチであるヒドロシリル化または縮合によって、グラフト化することにより行うことができることが知られている。
ヒドロシリル化ルートの実例として、例えば、2つの先行特許文献、すなわち欧州特許第0612759号および国際公開第2005/087843号が挙げられる。
【0013】
欧州特許第0612759号には、アルキル化されたモノ-またはポリ-サッカライド(1〜10モノサッカライド単位)とPOS(例えば、SiH基を有するジシロキサン)とを反応させることによって得られるグリコシド残基を有するオルガノシリコン化合物が記載されている。アルキニル基は、強酸の存在下、100℃にて、アルキルオキシエタノールを使用して、保護されていないオリゴサッカライドまたはポリサッカライドのアノマー位に直接導入される。ヒドロキシル化反応は、Speierの白金触媒を使用して、イソプロパノール中100℃にて行われる。実施例で得られているハイブリッド化合物は、以下の式に相当する。
H(C6H10O5)1.5-O-CH2CH2O-CH2-CH2-CH2-Si(CH3)2-O-Si(CH3)3
【0014】
国際公開第2005/087843号には、ポリオルガノシロキサン骨格およびグリコシド単位(モノ-および/またはポリサッカライド)を有するグラフトポリマーが記載されている。国際公開第2005/087843号には、特に、アリル単位で官能化されたセロビオースでグラフト化されたポリジメチルシロキサンの合成が記載されている。この合成のために、セロビオースは、アリルアミンによる反応を受ける。このアリルアミン単位の、セロビオースのアノマー炭素への結合の後に、アミン基および一部の第一級ヒドロキシル基は、アセチル化によって保護される。残ったヒドロキシル基は、それらの水素のトリメチルシリル単位による置換によって保護される。次いで、ジメチル水素シロキシ末端を有するポリジメチルシロキサンのヒドロシリル化反応が、カールシュテット白金(Karstedt platinum)の存在下、70℃にて行われる。その後、末端がジサッカライドセロビオースでグラフト化されたPOSの脱保護が、酸性媒体中のテトラヒドロフラン/メタノール混合液を用いて行われる。反応スキームは以下の通りである。
【化1】

【0015】
サッカライドの保護/脱保護が強いられることは、これらの公知のポリオルガノシロキサン/グリコシドグラフトポリマーおよびこれらを得るための製造法において相当不利である。
【0016】
ヒドロシリル化および縮合によるグラフト化以外については、米国特許第5428142号には、100℃、強酸媒体中におけるエステル化反応によって、ポリシロキサン鎖に結合したポリオキシエチレングラフトを、保護されていない糖のC1位の末端第一級アルコール基にグラフト化することが記載されている。
【0017】
「クリック化学」すなわちHuisgen反応と呼ばれる化学的な連結のメカニズムも知られている。HuisgenおよびSzeimies [(a) Huisgen, R.; Szeimies, G.; Moebius, L. Chem. Ber. 1967, 100, 2494、(b) Huisgen, R.; Knorr, R.; Moebius, L.; Szeimies, G. Chem. Ber. 1965, 98, 4014] は、アジド誘導体のアルキン誘導体への高温での1,3-双極子環状付加反応を最初に行った。この環状付加のための反応スキームは、以下の通りである。
【化2】

【0018】
国際公開第03/101972号には、銅(I)触媒の存在下でのアジドとアルキンとの間の環状付加反応(いわゆる「Huisgen」反応)が記載されている。この反応は、位置特異的に、ほとんど完全に1,4-ジ置換1,2,3-トリアゾールを形成させることを可能にする。国際公開第03/101972号の図3Aおよび3Bに示されているように、この1,3-双極子環状付加反応により、例えば、一方にフェニル核、他方に不活性なまたは分岐状の環状分子(場合により不飽和であり、かつ場合によりヒドロキシルを有するもの)を含むハイブリッドシステム(すなわち、生成物1〜10)、ならびに、一方にプロパンジオール残基、他方に多環状ジヒドロキシ化合物を連結するトリアゾールヒンジを含むハイブリッドシステム(11)を得ることが可能になる。さらに、国際公開第03/101972号の図6〜8から、生物学的アミン分子〔例えば、エリスロマイシン(図6参照)〕、さらにポリアジド核またはポリアルシル核を有する分子(図7および8参照)も官能化することができるということになる。
【0019】
国際公開第03/101972号には、「クリック化学」環状付加反応によって、異なるポリオール部分、またはPOS、ポリアルキレングリコール、ポリアミド、ポリエステル、アルキル、アルケニル、アルキニル、もしくはアリール部分、ならびにこれらの組合せに連結したポリオール部分を有するハイブリッド化合物については記載がなく、シリカなどの無機物質に連結したポリオール部分を有するハイブリッド化合物についても記載されていない。
【0020】
国際公開第2005/118625号には、アミノ酸またはアミノ酸類似体からなる部分Bに、あるいはポリペプチドまたはポリペプチド類似体に相当する部分Cに、5員環1,2,3-トリアゾールヒンジによって連結された炭水化物に相当する部分Aを有するハイブリッドシステムを作り出すことを目指した、1,3-双極子環状付加の「クリック化学」の他の応用が記載されている。これらのハイブリッドシステムは、アセチレン基またはアジドで官能化された炭水化物と、アミノ酸または相当するアミドまたはアセチレン基で官能化されたポリペプチドとを反応させることによって得られる。国際公開第2005/118625号の記載において、炭水化物という用語(7頁第20行〜8頁第2行を参照)は、モノサッカライドとポリサッカライドとの両方を示し、ヒドロキシ基は水素、アミンもしくはチオール基、またはヘテロ原子の基によって置換されていてもよい。
この1,3-双極子付加反応は、サッカライドのヒドロキシ基をアセチル基で保護し、アミノ酸のアミン気をBoc基で保護し、かつ、テトラヒドロフラン溶媒媒体中、銅含有触媒およびジイソプロピルエチルアミンを使用することによって行われる。得られるこの擬似的なグリコアミノ酸およびグリコペプチドは、細菌性疾患の治療に用いることができる。
国際公開第2005/118625号に記載のシステムABまたはACにおいて、「炭水化物」部分AのBまたはCによる置換は、Aのアノマー炭素上だけで起こることに注目されたい。さらに、5員環環状1,2,3-トリアゾールヒンジはこのアノマー炭素に、スペーサー単位を全く含まずに共有結合によって直接連結される。最後に、システムABまたはACの合成に不可欠である、A、B、およびCの感受性の高い基(OH、アミン)の保護が強いられることは、特に工業的レベルでは極めて不利である。
【0021】
したがって、アジド誘導体とアルキン誘導体との銅の存在下での「クリック化学」すなわち1,3-双極子環状付加によるハイブリッドシステムの合成は、(ポリ)サッカライドポリオールとアミノ酸または(ポリ)ペプチドとの組合せに限定されていると結論づけることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】国際公開第03/101972号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/118625号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の重要な目的の1つは、「クリック化学」によって得られる他のハイブリッド化合物を提供することである。
【0024】
本発明の別の重要な目的は、少なくとも1種のトリアゾールまたはテトラゾール5員環ヒンジによって少なくとも1つの部分Aに連結されたポリオール部分Poをベースとする新規なハイブリッド化合物を提供することである。これらのハイブリッド化合物は、多くの用途、工業的(乳化剤)および生物学的な用途の両方において使用することができる。
【0025】
本発明の別の重要な目的は、(ポリマー)-ポリオール型の部分A、および/またはPOS、および/またはポリアルキレングリコール、および/またはポリアミン(ペプチド)、および/またはポリエステル、および/またはポリスチレン、および/またはアルキル、および/またはアルケニル、および/またはアルキニル、および/またはアリール、および/またはシリカなどの無機物の少なくとも1つに、「クリック化学」によって得られた5員環トリアゾールまたはテトラゾールヒンジで連結された、1つ以上の(ポリマー)-ポリオール(例えば、ポリサッカライド部分Po)を有するハイブリッド化合物を提供することである。
【0026】
本発明の別の重要な目的は、「クリック化学」により銅触媒を使用する、アジド誘導体またはニトリル誘導体のアルキン誘導体への1,3-双極子環状付加から誘導された少なくとも1種のヒンジで連結された、ハイブリッドポリサッカライド/POS化合物を提供することである。
【0027】
本発明の別の重要な目的は、(ポリマー)-ポリオール部分Po(例えば、ポリサッカライド)を1つ以上有するハイブリッド化合物を提供することである。これらの化合物は、反応試剤、特にポリサッカライドの保護/脱保護の煩雑な工程なしに合成することができる。
【0028】
本発明の別の重要な目的は、(ポリマー)-ポリオール(例えば、ポリサッカライド、部分Po)を1つ以上有するハイブリッド化合物を合成するための、反応試剤、特にポリサッカライドの保護/脱保護の煩雑な工程を含まない、簡易な方法を提供することである。
【0029】
本発明の別の重要な目的は、上述の目的において定義した通りのハイブリッド化合物を含有する、化粧品組成物、シャンプー組成物、および洗浄組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
これらの目的が、とりわけ本発明によって達成された。本発明は、まず第一に、少なくとも1つのポリオール部分(Po)を有するハイブリッド化合物Po - - Ro - - Aに関する。この場合において、Poの原子の少なくとも1つは、下記一般式(I)の少なくとも1種の基で置換されている。
【化3】

式中、
−Roは、下記式(II.1)または(II.2):
【化4】

〔式中、Zは、炭素原子(例えば、水素で置換されている炭素原子:式(II.1)および(II.2)では慣例により示していない)または窒素原子を表す〕
の連結ヒンジであり、
−ポリオール部分Poは、ポリマー性合成非サッカライドポリオール、または、少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個のモノサッカライド単位を有するサッカライド(水素化されたものかまたは水素化されていないもの)から選択され、
−Aは、無機または有機部分であり、場合によりポリマー性であり;かつ、ハイブリッド化合物1分子当たり複数のA部分が存在する場合には、A部分は、互いに同じであるかまたは異なり、有機部分Aは、
−合成ポリマー、そのコポリマー、またはこれらを得ることを可能にするモノマー単位、
−アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、およびこれらの組合せ、
−ならびにこれらの組合せ
を含む群から選択される化合物から選択されるかまたは誘導される。
【0031】
本発明の意味において、用語「ハイブリッド」は、同種のPo - - Ro - - A構造(PoはAと同じ)または異種のPo - - Ro - - A構造(PoはAと異なる)を示す。
Zが炭素原子を表す場合には、Zは、炭素原子の原子価を満たすために水素原子にも連結していることに注目すべきである。
【0032】
ポリオール部分(Po)のヒドロキシル官能基の少なくとも1つが、上述により定義した次の一般式(I):- - - Ro - - - Aを有する少なくとも1つの基で置換されていることが好ましい。
【0033】
本発明の実施態様M1によれば、本発明のハイブリッド化合物は、ヒンジRoまたは少なくとも1つのヒンジRoが、二価の連結基-L-によって、部分Poおよび/または部分Aに連結されていることを特徴とする。言い換えると、Lは、スペーサー単位である。
【0034】
有利には、Lは、例えば、炭化水素単位またはOもしくはSなどの原子である。本発明の意味において、用語「炭化水素単位」は、例えば、少なくとも1つの炭素原子および/または少なくとも1つの水素を有する単位を示す。これには、特に、「エステル」、「アミド」、「イミン」、結合などが含まれる。
【0035】
本発明の実施態様M2によれば、本発明のハイブリッド化合物は、いずれのヒンジRoも二価の連結基-L-によって部分Poに連結されておらず、かつ、ハイブリッド化合物が、アミノ酸、および/またはペプチド、および/またはこれらの類似体および/または誘導体を含まない少なくとも1つの部分Aを有していることを特徴とする。
【0036】
これらの新規なハイブリッド化合物は、許容可能なコストで容易に構築することができる。したがって、これらは工業的な使用に十分適し、多くの用途、特に両親媒性成分の部門の用途への道を開くものであり、特に、化粧品または洗剤の部門(例えば、美容ケア組成物、クリーム、ローション、ゲル、デオドラントおよび発汗抑制剤、石鹸組成物、シャンプー組成物、洗浄組成物など)において有用である。
【0037】
ポリサッカライド-Ro-POSの組合せおよびポリサッカライド-Ro-アルキルの組合せである特定のハイブリッド化合物は、特に工業的な要請、特にコスト、環境負荷、および使用に関連する要請に適合する点で特に興味が持たれる新規な構造群である。
【0038】
本発明は、上述したハイブリッド化合物を得るための新規な方法も目的とする。この方法は、
(i) 少なくとも1つの式(VII.1):-C≡E(式中、E = CHまたはNである)の反応性末端を有する少なくとも1つの反応性単位Xを含むシントンPo-Xを使用し、かつ/あるいは合成し;
(ii) 少なくとも1つの式(VII.2):-N3の反応性末端〔反応性末端(VII.2)は、反応性末端(VII.1)と反応し得る〕を有する少なくとも1つの反応性単位Yを含むシントンA-Yを使用し、かつ/あるいは合成し;
(iii) 環状付加メカニズムによって、シントンPo-Xを、シントンA-Yと反応させて、少なくとも1つのポリオール部分(Po)を有し且つPoの少なくとも1つのヒドロキシル基が次の一般式(I’):- - - Ro - - - Aの少なくとも1つの基で置換されている少なくとも1種のハイブリッド化合物Po - - - Ro - - - A(式中、RoおよびAは、上述により定義した通りである)を得;
(iv) 場合により、Po - - - Ro - - - Aを反応混合物から分離して回収する
ことを特徴とする。
【0039】
このような方法は、その容易性、経済性、環境適合性、およびその方法により得ることが可能になる生成物の多様性により、特に有利である。
【0040】
変形態様では、シントンPo-XおよびシントンA-Yの代わりに、あるいはこれらと共に、複合シントンPo-XY(各シントンが、少なくとも1つの反応性単位Xおよび少なくとも1つの反応性単位Yを含むもの)および複合シントンA-XY(各シントンが、少なくとも1つの反応性単位Xおよび少なくとも1つの反応性単位Yを含むもの)を使用することができ、シントンPo-XYおよびA-XYは、互いにあるいはそれら自体と反応し得ることに注目すべきである。
【0041】
本発明は、
−少なくとも1つの式(VII.1.1):
-[L1]a-C≡E
(式中、E = CHまたはNであり、a = 0または1である)
の反応性末端を有する少なくとも1つの反応性単位Xを含み、前記末端が、残基Poに二価の炭化水素連結基である連結基L1によって連結されている、シントンPo-X;
−少なくとも1つの式(VII.2.1):
-[L2]a-N3
(式中、a = 0または1である)
の反応性末端を有する少なくとも1つの反応性単位Yを含み、前記末端が、残基Poに二価の炭化水素連結基である連結基L2によって連結されている、シントンPo-Y;
−少なくとも1つの式(VII.1.3):
-[L3]a-C≡E
〔式中、E = CHまたはNであり、a = 0または1である(a = 0である場合、Aはサッカライドまたはペプチドとは異なり、a = 1である場合、AはPDMSとは異なる)〕
の反応性末端を有する少なくとも1つの反応性単位Xを含み、前記末端が、残基Aに二価の炭化水素連結基である連結基L3によって連結されている、シントンA-X;
−少なくとも1つの式(VII.2.4):
-[L4]a-N3
〔式中、a = 0または1である(a = 0である場合、Aはサッカライドまたはペプチドとは異なる)〕
の反応性末端を有する少なくとも1つの反応性単位Yを含み、前記末端が、残基Aに二価の炭化水素連結基である連結基L4によって連結されている、シントンA-Y;
−反応性単位XおよびYが、シントンPo-XおよびPo-Yについて上述したものと同様に定義される、複合シントンPo-XY;および
−反応性単位XおよびYが、シントンA -XおよびA -Yについて上述したものと同様に定義される、複合シントンA-XY
にも関する。
【0042】
シントンPo-X、Po-Y、A-X、A-Yの上記の式(VII.1.1)、(VII.2.1)、(VII.1.3)、(VII.2.4)において、a = 0がである場合、連結基L1、L2、L3、L4(すなわちスペーサー基)は存在しないが、直接の原子価結合(例えば、共有結合)が存在する。
【0043】
これらのシントンは、有用であり、新規であり、前述した方法を実施するため、および本発明のハイブリッド化合物を得るための効果的な中間体生成物である。
【0044】
最後に、本発明は、これらのハイブリッド化合物およびこれらを含有する組成物の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0045】
[化合物Po - - Ro - - A]
式(II.1)または(II.2)の連結ヒンジRoは、本発明のハイブリッド化合物の核心である。
この連結ヒンジは、「クリック化学」反応の結果として得られる。すなわち、一方の、3つの窒素原子を有する反応性末端であるアジド誘導体と、他方の、アルキン誘導体(Z = C)またはニトリル誘導体(Z = N)との間の1,3-双極子環状付加反応により得られる。
【0046】
この連結ヒンジRoは、5員環の1,4-ジ置換(式II.1を参照)または1,5-ジ置換(式II.2を参照)トリアゾール(Z = C)またはテトラゾール(Z = N)複素環である。
部分Poまたは部分Aによって担われる基が、アジド型の反応性官能基であるか、アセチレン型またはニトリル型の反応性官能基であるか次第で、さまざまな構造のハイブリッド化合物が生成する。
【0047】
したがって、第一の構造では、式(II.1)および(II.2)の1位の窒素の遊離の原子価結合は、ヒンジRoをPoに連結し、式(II.1)および(II.2)の炭素または4位もしくは5位の原子Zの遊離の原子価結合は、ヒンジRoをAに連結する。
【0048】
第二の構造では、式(II.1)および(II.2)の1位の窒素の遊離の原子価結合は、ヒンジRoをAにに連結し、式(II.1)および(II.2)の炭素または4位もしくは5位の原子Zの遊離の原子価結合は、ヒンジRoをPoに連結する。
当然、本発明のハイブリッド化合物は、単一の連結ヒンジRoだけを有する化合物に限定されず、いくつかの多数の同一であるかまたは異なる連結ヒンジRoをそれぞれ有するハイブリッド化合物をも包含する。
いくつかの多数の同一であるかまたは異なる連結ヒンジRoを有するこれらの構造として、例えば、分岐の多架橋生成物、例えば、デンドリマー型、スター型、その他のものが挙げられる。
【0049】
特に、ヒンジRoまたは少なくとも1つのヒンジRoが部分Poに二価連結基-L-によって連結されている実施態様M1では、二価連結基-L-は、特に、シントンPo-X、Po-Y、A-X、A-Yの上記の式(VII.1.1)、(VII.2.1)、(VII.1.3)、(VII.2.4)において上述により定義した連結基L1、L2、L3、L4を有していてよい。言い換えると、Lはスペーサー単位である。とりわけ、相当するハイブリッド化合物の単純化した一般式は、Po---L1---Ro---L2---Po、Po---L1---Ro---L4---Po、Po---L2---Ro---L3---A、A---L3---Ro---L4---A(式中、L1、L2、L3、L4はスペーサー単位であり、互いに同じであるかまたは異なり、隔てられていてもひとまとめであってもよい)を含む群に属する。
【0050】
Aは、無機または有機部分であり、場合によりポリマー性であり;かつ、ハイブリッド化合物1分子当たり複数のA部分が存在する場合には、A部分は、互いに同じであるかまたは異なり、有機部分Aは、
−合成ポリマー、そのコポリマー、またはこれらを得ることを可能にするモノマー単位、
−アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、およびこれらの組合せ、
−ならびにこれらの組合せ
を含む群から選択される化合物から選択されるかまたは誘導される。
【0051】
部分Aの合成ポリマーは、平均モル質量が1000 g/molより大きい、好ましくは10000 g/molより大きい合成ポリマーであることが好ましい。
【0052】
実際には、Aは、
−合成ポリマー性非サッカライドポリオール、これらのコポリマー、またはこれらを得ることを可能にするモノマー単位(いくつかの詳細は、部分Poについて記述する);
−ポリオルガノシロキサン(POS)、これらのコポリマー、またはこれらを得ることを可能にするモノマー単位;
−ポリアルキレングリコール(あるいはアルキレンのポリオキシド)、好ましくはポリエチレングリコール(あるいはエチレンポリオキシド)および/またはポリプロピレングリコール(あるいはプロピレンポリオキシド)、および/またはポリテトラエチレングリコール、および/またはこれらのコポリマーもしくはコ-オリゴマー〔特に、これらのまたはポリプロピレングリコールとポリプロピレングリコールとの、ランダムもしくはブロックのコポリマーもしくはコ-オリゴマー(あるいはランダムもしくはブロックのエチレンおよびプロピレンポリオキシド)〕、これらのポリアルキレングリコールは、場合により、他の基で官能基化されているかあるいは他の基を官能基化していてよく〔例えば、アミン基で官能基化されているかあるいはアミン基を官能基化していてよく(Jeffamine類)〕、かつ/あるいは、場合により、少なくとも1つの末端がヒドロキシル基またはアルキル基(例えば、C1〜C30アルキル)によって末端化されていてもよい;
−ポリアミド、これらのコポリマー、またはこれらを得ることを可能にするモノマー単位;
−ポリエステル、これらのコポリマー、またはこれらを得ることを可能にするモノマー単位;
−ポリブタジエン、これらのコポリマー、またはこれらを得ることを可能にするモノマー単位;
−ポリスチレン、これらのコポリマー、またはこれらを得ることを可能にするモノマー単位;
−場合により、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、およびこれらの組合せ;
−シリカなどの無機物質;
−および、これらの組合せ
からなる群から選択される化合物から選択されるかまたは誘導される。
【0053】
この部分Aは、上述した基から選択されるポリマーまたはコポリマー、あるいは、直鎖もしくは分岐鎖、場合により架橋したものを有していることが好ましい。例えば、部分Aのモル質量は、好ましくは100以上であり、さらに好ましくは100〜50000である。
【0054】
本発明の好ましい実施態様では、部分Aは、シロキシ単位M、D、T、および/またはQを有する少なくとも1種のPOSを含み、好ましくはシロキシ単位MおよびD、場合によりTおよび/またはQを有する少なくとも1つのPOSを含み、さらに好ましくは、M(D)dM、M(D)d (T)tM、MQ(式中、d、tは0以上の有理数である)の型の少なくとも1つのPOSを含む。dは、例えば、1〜1,000,000であり、好ましくは1〜10,000であり、tは、例えば、0〜50、好ましくは0〜20である。
【0055】
実際に、これらのPOSは、例えば、α,ω官能性線状ポリシロキサンであるか、鎖中が官能化されているものである。これらのPOSは、さまざまな程度の分岐を有する構造であってよい。実際には、これらのPOSは、例えば、グリシジルエーテル官能基および/または水素を有している。
【0056】
本発明の特定の下位の実施態様では、ハイブリッド化合物Po - - Ro - - POSは、以下の式の少なくとも1種に相当する。
【化5】

〔式中、
−R2は、同じであるかまたは異なり、炭化水素基、好ましくはメチル基であり、
−R3は、同じであるかまたは異なり、式:-Ro - - Po(式中、RoおよびPoは、上述により定義した通りである)の基であり、
−R1は、同じであるかまたは異なり、R2基またはR3基であり、
−Rは、酸素原子を含む二価の基、好ましくは-O-基であり、
−mは、0とは異なる平均数であり、
−nは、0以上の平均数であり、
−kおよびlは、0以上の平均数であり、
−oおよびpは、同じであるかまたは異なり、0以上の平均数である〕
【0057】
好ましくは、
−m + nが、0〜1000000、好ましくは0〜10000であり、mのnに対する比が、1/1〜1/100、好ましくは1/20〜1/50であるか、あるいは、
−m + n + o + pが、0〜1000、好ましくは0〜300であり、n + oのm + pに対する比が、1/1〜1/100、好ましくは1/20〜1/50である。
【0058】
部分Aは、場合によって少なくとも1つのアルキルエーテル末端、例えばメチルエーテルを有していてもよい、ポリアルキレングリコール型の残基を含んでいてもよい。
ポリアルキレングリコールの例としては、ポリオキシエチレングリコール、モノアルキル(例えばメチル)エーテルポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、モノアルキル(例えばメチル)エーテルポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラエチレングリコールなどを挙げることができる。
【0059】
ポリアミドを、部分Aの構成要素とすることができる。ポリアミドの例としては、ポリアミド6-6、ポリアミド6、ポリアミド6モノアミン、ポリアミン6-10、ポリアミド12-12などを挙げることができる。
【0060】
ポリエステルを、部分Aの構成要素とすることができる。ポリエステルの例としては、ポリε-カプロラクトン、ポリ乳酸、エチレングリコールポリアジペート、ポリヒドロキシアルカノエートなどを挙げることができる。
【0061】
ポリスチレンを、部分Aの構成要素とすることができる。ポリスチレンの例としては、ヒドロキシテレケリックポリスチレンまたは単官能性ポリスチレンなどを挙げることができる。
【0062】
ポリブタジエンを、部分Aの構成要素とすることができる。ポリブタジエンの例としては、ヒドロキシテレケリックポリブタジエンなどを挙げることができる。
【0063】
アミノ酸およびペプチドを、部分Aの構成要素とすることができる。本発明の意味において、用語「ペプチド」は、とりわけ、オリゴペプチドおよびポリペプチド、あるいはタンパク質を示す。アミノ酸(天然のものかまたは合成のもの)の誘導体およびペプチドの誘導体(または類似体)も、本発明により部分Aとして対象とされる。
【0064】
ハイブリッド化合物Po-Ro-Aの部分Aの構成成分の一部とすることができる(コ)ポリマーはいずれも、線状または分岐状または架橋したホモポリマーであってよく、あるいは、線状または分岐状の、場合により架橋していてもよい、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであってよい。
Aが(コ) ポリマーである場合、ハイブリッド化合物の合成に用いるシントンA-XまたはA-Yが、完成した(コ)ポリマーを含んでいても、Po-XまたはPo-Yと反応した後で完成したポリマーを形成するように設計された未完成のモノマー、オリゴマー、またはポリマーを含んでいてもよいことが想定される。
【0065】
例えば、2〜50個の炭素原子、好ましくは4〜40個、より好ましくは4〜30個の炭素原子を有する、アルキル鎖、アルケニル鎖、またはアルキニル鎖を、部分Aの構成要素とすることができる。例としては、ブチル、オクチル、ドデシル、オクタデシル、エイコサンなどを挙げることができる。
【0066】
シリカは、部分Aの構成成分の一部とすることができる無機物質の例である。
【0067】
ポリオール部分Poについては、合成ポリマー性非サッカライドポリオール、および/または、少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個のモノサッカライド単位を含むサッカライド(水素化されたものかまたは水素化されていないもの)から選択される。
【0068】
合成ポリマー性非サッカライドポリオールは、特に、1000 g/molより大きな、好ましくは10000 g/molより大きなモル質量を有することができる。後者には、例えば、ポリビニルアルコール(水素化されたものかまたは水素化されていないもの)、ポリヒドロキシアルデヒドH-[CHOH]n-CHO、および/またはポリヒドロキシケトンH-[CHOH]n-CO-[CHOH]m-H(好ましくは少なくとも3個、より好ましくは少なくとも4個の炭素原子を有するもの)がある。合成ポリマー性非サッカライドポリオールは、好ましくは少なくとも3個、より好ましくは少なくとも4個、さらに好ましくは少なくとも10個のヒドロキシル単位を有する。これらは、好ましくは少なくとも3個、より好ましくは少なくとも4個、さらに好ましくは少なくとも10個の炭素原子を有する。これらが、部分Aの繰り返し単位を構成することができることに注目されたい。
【0069】
「サッカライド」(「炭化水素」とも呼ばれる)に関しては、本発明において、一般的な用語「サッカライド」は、モノサッカライド、ジサッカライド、オリゴサッカライド、およびポリサッカライド、ならびにこれらのサッカライドの全ての誘導体を包含することを明言しなければならない。
【0070】
サッカライド、その構造および式は、当業者に公知である。特に、サッカライドは、非還元性末端および還元性末端を有することが知られている。還元性末端は、「アノマー水酸基」の存在が関与しており、表記法において右側に位置する。サッカライドは、複数の-OH基を有することも知られている。本発明では、Poがサッカライドを含む場合には、サッカライドの炭素、より好ましくはヒンジRoとの結合に含まれる炭素は、「アノマー」炭素である。これは、他のサッカライド炭素の全てまたは一部がヒンジRoに連結される場合を除外するものではない。このことは、「非アノマー」炭素によって担われたこれらの基が、ハイブリッド化合物の合成中に保護を必要としない場合に、いっそう可能性がある。モノサッカライドは、単一のサッカライド単位(例えば、C5のペントースまたはC6のヘキソース)を含む分子であり、この型のいくつかの単位の間にグリコシド結合を全く含まない分子である。モノサッカライドには、とりわけ、アルドース、ジアルドース、アルドケトース、ケトース、およびジケトース、ならびにデオキシサッカライド、アミノサッカライド、および少なくとも潜在的にカルボニル基を含む前駆体から得られるこれらの誘導体が含まれる。
【0071】
モノサッカライドの例として、以下のサッカライドを挙げることができる:D-グルコース、フルクトース、ソルボース、マンノース、ガラクトース、タロース、アロース、グロース、イドース、グルコサミン、マンノサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸、ラムノース、アラビノース、ガラクツロン酸、フコース、キシロース、リキソース、リボース。
【0072】
ジサッカライドまたはオリゴサッカライドの例として、以下のサッカライドを挙げることができる:
−ジサッカライド:マルトース、ゲンチオビオース、ラクトース、セロビオース、イソマルトース、メリビオース、ラミナリビオース、キトビオース、キシロビオース、マンノビオース、ソフォロース、パラチノース;
−オリゴサッカライド:マルトトリオース、イソマルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、キシログルカン、マルトヘプタオース、マンノトリオース、マンニノトリオース、キトトリオース、一般的に、例えば、β-1-4-、α-1-4-、またはα-1-6-結合を有するジサッカライドまたはオリゴサッカライドなど。
【0073】
本発明のポリサッカライドは、線状であっても分岐状であってもよく、例えば、20個を超えるモノサッカライド残基、好ましくは30個を超えるモノサッカライド残基、より特に25〜100個のモノサッカライド残基を含むことができる。モノサッカライド残基は、互いに同じであってもことなっていてもよい。
【0074】
本発明のポリサッカライドは、線状モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-、オクタ-、ノナ-、またはデカ-サッカライド、好ましくはモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-サッカライド単位を含むことができる。ポリサッカライドは、これらの線状単位を、少なくとも2個、または少なくとも3個もしくは少なくとも4個、または少なくとも10個含み、ポリサッカライドポリマーの場合には顕著に多く含む。
【0075】
特定の変形態様において、本発明のポリサッカライドは、N-アセチル-ラクトサミン型の繰り返しサッカライド単位またはアセチル化サッカライド単位を含むことができる。
ポリサッカライドの例として、
−スターチ(好ましくは、少なくとも5つのデキストロース当量DEを有するもの)およびこれらの誘導体(例えば、マルトデキストリン、シクロデキストリン、およびグルコースシロップなど);
−ペクチン;
−セルロースおよびこれらの誘導体;
−ガラクトマンナン、例えば、グアーまたはキャロブポリマー、およびこれらの誘導体〔グアーまたはキャロブの巨大分子は、互いに(1-4)結合で連結されたモノマー性β-D-マンノース糖でできた主要な線状鎖と、このβ-D-マンノース糖に(1-6)結合で連結されたα-D-ガラクトース側鎖単位からなっている。天然のグアーは、特定の植物(例えば、Cyamopsis Tetragonalobus)の種子の胚乳から抽出される。〕;
−キチンおよびキトサン;
−細菌性多糖類;
−ヒアルウロン酸
も挙げることができる。
【0076】
特定の実施態様において、部分Poは、マルトデキストリンとは異なる。
【0077】
別の特定の実施態様において、部分Poは、シクロデキストリンとは異なる。
【0078】
別の特定の実施態様において、部分Poは、グルコースシロップとは異なる。
【0079】
別の特定の実施態様において、部分Poは、マルトデキストリン、および/またはシクロデキストリン、および/またはグルコースシロップとは異なる。
【0080】
ポリオール部分Poの構成成分の一部とすることができる、デンプン質またはセルロース系ポリサッカライドは、好ましくは天然由来のものであるが、合成経路から得られるものであってもよい。
【0081】
サッカライド誘導体としては、以下のものを特に挙げることができる。
−カルボニル基の還元により得られるもの(アルジトール);
−1つ以上の末端または非末端基を酸化して、例えばカルボン酸基またはカルボキシアルキル基(例えば、カルボキシメチル基)に変換することによって得られるもの;
−1つ以上の、例えばカルボン酸基、カルボキシアルキル基(例えば、カルボキシメチル基)、ヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシエチル基)、またはアルキル基(例えば、メチル基)をグラフト化することによって得られるもの;
−1つ以上のヒドロキシ基を、水素原子、アミン基、チオール基、または同様のヘテロ原子基で置換することによって得られるもの;
−水素化によって得られるもの;
−グリコシド、すなわち、少なくとも1つのサッカライドと少なくとも1つのアグリコン(非サッカライド化合物)とを有し、一方のサッカライドと他方の非サッカライド成分が互いに加水分解可能な結合によって連結されている化合物;
−ガラクトマンナンの誘導体、特に、天然のグアーまたはキャロブを加水分解することによって得られ、場合により化学的な修飾(誘導体化)によって得られる、グアーポリマーまたはキャロブポリマーの誘導体。
【0082】
誘導体化によって、上述したもの以外のサッカライド誘導体を化学的に修飾することができる。
【0083】
本発明の主要な利点は、その合成において、感受性の高い基、特に部分PoまたはAのサッカライド上の基の保護が必要とされないハイブリッド化合物を提示することである。
当然、このような保護は、例えば溶解性を改善するためになお行うことができる。
【0084】
[方法]
別の態様によれば、本発明は、ハイブリッド化合物、特に、上述したものなどの本発明のハイブリッド化合物を得るための方法に関する。
【0085】
本合成方法は、上述により定義したものである。この方法は、以下に、非限定的な説明として詳細に述べる4つの工程(i)、(ii)、(iii)、および(iv)を含む。
【0086】
[工程(i)および(ii):使用するシントン(synthon)]
より詳細には、出発シントン[Po-X]の場合、
1) 第一の可能性では、
−Poのアノマー炭素と反応した少なくとも1つのアミン基(例えば末端アミン基)を含むL1
−および/または、少なくとも1つのハロゲノ基(例えば、ブロモ基)を有する前駆体から、ハロゲノ基とPoのOH基との反応により誘導されたL1
を有するサッカライドを、Poが少なくとも1つ含む;
2) 第二の可能性では、カルボン酸系官能化基、カルボキシレート官能化基、無水物官能化基、チオール官能化基、イソシアネート官能化基、およびエポキシド官能化基を含む群に属する少なくとも1種の官能化基で官能化された残基(例えば、サッカライド)であって、
−Poの前記官能化基と反応した少なくとも1つのアミン基(例えば末端アミン基)を含むL1
−および/または、少なくとも1つのハロゲノ基(例えば、ブロモ基)を有する前駆体から、ハロゲノ基とPoの前記官能化基との反応により誘導されたL1
を有する残基を、Poが少なくとも1つ含む;
3) 第三の可能性では、第一の可能性と、第二の可能性とを組み合わせる。
有利には、このシントンPo-Xは、Poが例えば、少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個、さらに好ましくは少なくとも10個のモノマー単位を含むポリマーであることを特徴とすることができる。
【0087】
有利には、シントンPo-Xの合成は、以下の必須の下位工程:
a) Poがサッカライドである場合にはPoのアノマー炭素上のヒドロキシル基および/またはPoの官能化基からのヒドロキシル基と、過剰量の、反応性末端(好ましくは、少なくとも1つのアミン官能基(場合により末端のもの))を有する連結基L1の前駆体少なくとも1種との反応工程;
b) 前駆体の脱離工程
を含む。
【0088】
好ましい特徴によれば、L1は、-NH-(CH2)qに相当し、qは1以上であり、前駆体は:
NH2-[CH2]q-C≡E
に相当し、より好ましくはプロパルギルアミン:
NH2-[CH2]q-C≡CH
に相当する。
【0089】
より詳細には、出発シントン[A -X]の場合、
1) 第一の可能性では、
−Aのアノマー炭素上のOHと反応した少なくとも1つのアミン基(例えば末端アミン基)を有するL3
−および/または、少なくとも1つのハロゲノ基(例えば、ブロモ基)を有する前駆体から、ハロゲノ基とPoのOH基との反応により誘導されたL3
を有するサッカライドを、Aが少なくとも1つ含む;
2) 第二の可能性では、カルボン酸系官能化基、カルボキシレート官能化基、無水物官能化基、チオール官能化基、イソシアネート官能化基、およびエポキシド官能化基を含む群に属する少なくとも1種の官能化基で官能化された残基(例えば、サッカライド)であって、
−Aの前記官能化基と反応した少なくとも1つのアミン基(例えば末端アミン基)を含むL3
−および/または、少なくとも1つのハロゲノ基(例えば、ブロモ基)を有する前駆体から、ハロゲノ基とAの前記官能化基との反応により誘導されたL3
を有する残基を、Aが少なくとも1つ含む;
3) 第三の可能性では、水素および少なくとも1つのエチレン性不飽和を有する基を含む群に属する少なくとも1種の官能化基で官能化された残基(例えば、POS)であって、
Aの前記官能化基と反応した少なくとも1つのエチレン性不飽和を有する基(例えば末端基)を少なくとも1つ含むL3
を有する残基を、Aが少なくとも1つ含む;
4) 第四の可能性では、第一の可能性〜第三の可能性を組み合わせる。
【0090】
有利には、Aがポリオールを有する場合、このシントンA-Xは、前記ポリオールが例えば、少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個、さらに好ましくは少なくとも10個のモノマー単位を有するポリマーであることを特徴とする。
【0091】
シントンA-Xの合成は、有利には、以下の必須の下位工程:
a) アノマー炭素上のヒドロキシル基および/またはAの官能化基と、過剰量の、Aと反応することができる反応性末端(好ましくは、少なくとも1つのアミン官能基(場合により末端のもの)および/または少なくとも1つのハロゲノ基)を有する連結基L3の前駆体少なくとも1種との反応工程;
b) 前駆体の脱離工程
を含む。
【0092】
好ましい特徴によれば、L3は、-NH-(CH2)qに相当し、qは1以上であり、前駆体は:
NH2-[CH2]q-C≡E
に相当し、より好ましくはプロパルギルアミン:
NH2-[CH2]q-C≡CH
に相当する。
【0093】
この好ましい特徴の変形態様では、連結基L3の前駆体は、特に、アクリロニトリル、プロパルギルアルコール、またはモノプロパルギルトリエチレングリコールである。
AがPOSを含む場合、A-Xの合成は、Polymer 44(2003) 6449-6455の「Telechelic polydimethylsiloxane with terminal acetylenic groups prepared by phase transfer catalysis」に記載された通りに実施することができる。
【0094】
より詳細には、出発シントン[Po-Y]の場合、
1) 第一の可能性では、
−Poのアノマー炭素と反応した少なくとも1つのアミン基(例えば末端アミン基)を含むL2
−および/または、少なくとも1つのハロゲノ基(例えば、ブロモ基)を有する前駆体から、ハロゲノ基とPoのアノマーOH基との反応により誘導されたL2
を有するサッカライドを、Poが少なくとも1つ含む;
2) 第二の可能性では、カルボン酸系官能化基、カルボキシレート官能化基、無水物官能化基、チオール官能化基、イソシアネート官能化基、およびエポキシド官能化基を含む群に属する少なくとも1種の官能化基で官能化された残基(例えば、サッカライド)であって、
−Poの前記官能化基と反応した少なくとも1つのアミン基またはヒドロキシル基(例えば末端基)を含むL2
−および/または、少なくとも1つのハロゲノ基(例えば、ブロモ基)を有する前駆体から、ハロゲノ基とPoの前記官能化基との反応により誘導されたL2
を有する残基を、Poが少なくとも1つ含む;
3) 第三の可能性では、第一の可能性と、第二の可能性とを組み合わせる。
有利には、このシントンPo-Yは、Poが、例えば、少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個、より好ましくは10個のモノマー単位を有するポリマーであることを特徴とすることができる。
【0095】
シントンPo-Yの合成は、有利には、以下の必須の下位工程:
a) アノマー炭素上のヒドロキシル基および/またはPoの官能化基と、過剰量の、Poと反応することができる反応性末端(好ましくは、少なくとも1つのアミン官能基(場合により末端のもの)および/または少なくとも1つのヒドロキシ基および/または少なくとも1つのハロ基)を有する連結基L2の前駆体少なくとも1種との反応工程;
b) 前駆体の脱離工程
を含む。
【0096】
例えば、連結基L2の前駆体は、特に、
H2N(CH2CH2O)3(CH2)N3、H2NCH(COOH)(CH2)2N3、またはHO(CH2)6N3
であってよい(より詳細には、JACS 2005, 127, p. 14942-14949、およびJACS 2004, 126, 10598-10602を参照)。
【0097】
より詳細には、出発シントン[A-Y]の場合、
1) 第一の可能性では、
−Aのアノマー炭素上のOHと反応した少なくとも1つのアミン基(例えば末端アミン基)を有するL4
−および/または、少なくとも1つのハロゲノ基(例えば、ブロモ基)を有する前駆体から、ハロゲノ基とAのOH基との反応により誘導されたL4
を有するサッカライドを、Aが少なくとも1つ含む;
2) 第二の可能性では、カルボン酸系官能化基、カルボキシレート官能化基、無水物官能化基、チオール官能化基、イソシアネート官能化基、およびエポキシド官能化基を含む群に属する少なくとも1種の官能化基で官能化された残基(例えば、POS)であって、
−Aの前記官能化基と反応した少なくとも1つのアミン基(例えば末端アミン基)を含むL4
−および/または、前駆体NaN3から、NaN3とエポキシド型のAの官能化基との反応により誘導されたL4
−および/または、Aの前記官能化基と反応した少なくとも1つのハロゲノ基(例えば、ブロモ基)を含むL4
を有する残基を、Aが少なくとも1つ含む;
3) 第三の可能性では、水素および少なくとも1つのエチレン性不飽和を有する基を含む群に属する少なくとも1種の官能化基で官能化された残基(例えば、POS)であって、
Aの前記官能化基と反応した少なくとも1つのエチレン性不飽和を有する基(例えば末端基)を少なくとも1つ含むL4
を有する残基を、Aが少なくとも1つ含む;
4) 第四の可能性では、第一の可能性〜第三の可能性を組み合わせる。
【0098】
有利には、AがPoとは異なるポリオールを含有する場合、このシントンA-Yは、Aが例えば、少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個、さらに好ましくは少なくとも10個のモノマー単位を有するポリマーであることを特徴とする。
【0099】
シントンA-Yの合成は、有利には、以下の必須の下位工程:
a) アノマー性ヒドロキシル基および/またはAの官能化基と、過剰量の、Aと反応することができる反応性末端(好ましくは、少なくとも1つのアミン官能基(場合により末端のもの)および/または少なくとも1種のハロゲノ基)を有するかまたは有さない連結基L4の前駆体少なくとも1種との反応工程;
b) 前駆体の脱離工程
を含む。
【0100】
好ましい特徴によれば、A-Yは、前駆体NaN3と反応したエポキシド型の官能化基を有するA部分から得られる。
この好ましい特徴の範囲では、連結基L4の前駆体は、例えば、特に、アクリロニトリル、プロパルギルアルコール、またはモノプロパルギルトリエチレングリコールであってよい。
【0101】
AがPOSを含む場合、A-Xの合成は、Polymer 44(2003) 6449-6455、「Telechelic polydimethylsiloxane with terminal acetylenic groups prepared by phase transfer catalysis」に記載された通りに実施することができる。
【0102】
より特に、出発シントンPo-XYおよびA-XYの場合、Po-X、Po-Y、A-X、およびA-Yについて上述した構造および合成の記述を参照されたい。
【0103】
[工程(iii):付加環化]
本発明による方法の核心である付加環化メカニズム(工程(iii))は、シントンPo-XまたはA-Yと、アジド反応性VII.2単位との反応、および、シントンA-YまたはPo-Xと、アセチレン性もしくはニトリル反応性単位VII.1(「クリック化学」)との、銅(I)触媒下、好ましくは水性、水性有機性、または有機性の媒体中での、1,3-双極子付加環化のメカニズムである。
このメカニズムは、容易性、操作者および環境に対する無害性、および低コストなどの点で特に魅力的である。
【0104】
変形態様では、シントンPo-XおよびシントンA-Yの代わり、あるいはシントンPo-XおよびシントンA-Yに加えて、複合シントンPo-XY(それぞれ少なくとも1つの反応性単位Xと少なくとも1つの反応性単位Yとを有するシントン)、および複合シントンA-XY(それぞれ少なくとも1つの反応性単位Xと少なくとも1つの反応性単位Yとを有するシントン)を使用して、これらのシントンPo-XYとシントンA-XYとを互いに反応可能にすることができることに注目すべきである。
【0105】
本明細書において定義した本発明の意味の範囲内において、表現「オーダーの」は、例えば、およそ10%の不確かさが考慮された値を意味する。
【0106】
より詳細には、付加環化工程(iii)は、シントンPo-Xおよび/またはシントンA-Yを溶解または膨潤させることができる水性、水性アルコール性、または有機性の媒体中、系内のCu++をCu+に還元する少なくとも1種の還元剤の存在下で、イオン化形態(好ましくはCu++)の金属触媒を少なくとも1種使用して実施することができる。この還元剤は、アスコルべート、キノン、ヒドロキノン、ビタミンK1、グルタチオン、システイン、Fe2+、Co2+、電位の印加、Cu、Al、Be、Co、Cr、Fe、Mg、Mn、Ni、およびZnを含む群の金属、ならびにこれらの混合からなる群から好ましくは選択される。
【0107】
実際に、イオン化形態(好ましくはCu++)の金属触媒Cuは、有利には、塩(理想的には硫酸塩)の形態をとり、より好ましくは、少なくとも1種の有機酸(理想的にはアルコルビン酸)の塩と、少なくとも1種のアルカリ金属(理想的にはNa)とを含む活性化剤少なくとも1種を含む。したがって、例えば、CuSO4/アルコルビン酸ナトリウムのシステムが非常に好適である。
【0108】
さらに、付加環化工程(iii)は、その温度が20〜100℃、好ましくは50〜80℃にある反応媒体中で、0.1〜20時間、好ましくは0.5〜15時間、より好ましくは1〜8時間行うことが好ましい。
反応媒体の加熱は、任意の適切な手段で行う。例えば、マイクロ波の照射は、加熱手段として有利である。
有利には、付加環化工程(iii)の反応媒体は、水性、水性有機性、または有機性の媒体であって、好ましくは
−極性非プロトン性溶媒、好ましくは、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、メチルエチルケトン、またはブタノン、
−極性プロトン性溶媒、好ましくは、メタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、またはt-ブタノール(t-BuOH)、
−非極性溶媒、好ましくは、トルエン、ヘキサン、またはキシレン、
−水、
−およびこれらの混合物
から選択される少なくとも1種の溶媒を含有する。
【0109】
[工程(iv):分離]
場合によるハイブリッド化合物Po - - - Ro - - - Aの反応媒体からの分離工程(iv)は、特に
−少なくとも1回のクロマトグラフィー、好ましくは、第一の極性溶媒と少なくとも1種の第二のより極性が低い極性溶媒との混合液(例えば、アセトニトリルと水との混合液など)を含有する溶離液を使用する少なくとも1回のシリカゲルクロマトグラフィーを行う工程、
−および/または、少なくとも1回蒸発させて生成物を乾燥する工程
を実施することを含むことができる。
これらの態様のもう1つでは、本発明は、上述により定義した本発明の方法の記述の通りのシントンPo-X、PO-Y、A-X、A-Y、PO-XY、およびA-XYに関する。
【0110】
本発明は、上述したハイブリッド化合物または上述した方法によって得られる生成物としてのハイブリッド化合物の、
−洗剤/界面活性剤組成物、
−シャンプー組成物、
−石鹸組成物、
−洗浄/洗濯用組成物、
−化粧品組成物
を含む群から選択される組成物中の成分としての使用にも関する。
【0111】
上述した組成物はさらに、本発明の別の主題を構成する。
特に、これらの組成物は、本発明のハイブリッド化合物を含有するエマルション、好ましくは水中油型のエマルションであってよい。
【0112】
本発明のハイブリッド化合物は、特に、オイルの形態で提供することができる。これらは、媒体中で分散形態または可溶化形態で、例えば、10〜90重量%の濃度で提供することもできる。媒体は、有利には、ポリマーの溶媒、例えば、場合により揮発性のシリコーン化合物、例えば、線状または環状のポリジメチルオルガノシロキサン(例えば、シクロペンタシロキサン、ジシロキサン、線状ジメチコーン、またはトリメチルシロキシフェニルジメチコーン、または混合物など)であってよい。
【0113】
本発明のハイブリッド化合物は、特に、エマルションを調製または安定化するための乳化剤または共乳化剤として使用することができる。これらの化合物は、例えば、その1つの相がシリコーンオイルであるエマルションに使用することができる。ポリオルガノシロキサン(例えばシクロペンタシロキサン)中の溶液の形態で提供する場合は、これらの化合物は油中水型またはシリコーン中油型のエマルションのための乳化剤として使用することができる。これらの化合物は、配合中のいくつかの化合物を相溶化するために使用することもできる。これらの化合物は、別の化合物を析出させるための補助剤あるいは別の化合物の析出の引金として使用することもできる。これらの化合物は、粒子、例えば、顔料の分散物の調製または安定化のための分散剤または共分散剤として使用することもできる。
【0114】
本発明のハイブリッド化合物は、特に、洗浄を意図するものか否かにかかわらず、皮膚、および/または髪、および/または唇のケアのための、例えば、スキンケアクリームまたはミルクまたはオイル、日焼け防止クリームまたはミルクまたはオイル、シャンプー、コンディショナー、シャワーゲル、メイクアップ組成物、口紅、またはデオドラントなどの化粧品配合物中に使用または含有させることができる。特に、本発明のハイブリッド化合物は、低い刺激性、特に生分解性、または生体吸収性を要する用途、快適な感触を与える用途、および/または良好に広がる性質を与える用途に有利である。
【0115】
本発明の他の詳細は、例示として以下に提供する実施例に照らしてより明確に理解されるであろう。
【実施例】
【0116】
以下の実施例中のハイブリッド化合物は、「クリック化学」メカニズムによる、オリゴオルガノシランまたはポリオルガノシロキサン、より特に、オリゴサッカライド基(構造A、B、Cを参照)で修飾されたトリメチルシリル末端(MD10M)を有するポリジメチルシロキサン(PDMS)、ならびに、アルキル鎖(構造Dを参照)で修飾されたオリゴサッカライドである。
【0117】
[構造No.A]:PDMS型[MD10(セロビオースで修飾されたもの)M]
【0118】
[構造No.B]:PDMS型[MD10(オリゴキシログルカンで修飾されたもの)M]
【化6】

【0119】
[構造No.C]:PDMS型[M(オリゴキシログルカンで修飾されたもの)D10M(オリゴキシログルカンで修飾されたもの)]
【化7】

【0120】
[構造No.D]:アルカン(C18H38)で修飾されたオリゴキシログルカン
【化8】

【0121】
[実験の項]
本項では、上述した構造A、B、およびCを得ることを可能にする実験工程を記述する。これらの工程は、
−糖類の末端アルキン誘導体の合成、
−ポリオルガノシロキサンまたはポリアルカンのベース上でのアジド誘導体の合成、
−1,3-双極子環状付加反応または「クリック化学」反応による縮合
を含む。
【0122】
[シントンの合成]
工程(i):糖類の末端アルキン誘導体の合成(シントンPo-X):
【0123】
[構造A]
N-アセチル-N-プロパルギル-β-D-グルコピラノシル-(1→4)-β-D-グルコピラノシルアミン(2)
【化9】

15 gのセロビオース(1)(43.8 mmol)および62.3 mLのプロパルギルアミン(908 mmol、21当量)を250 mLのフラスコに入れる。
この反応媒体を、周囲温度にて40時間、磁気によって継続的に撹拌する。最初、溶液は不均一であり、16時間経過後には均一になる。この反応の進行は、薄層クロマトグラフィー(CH3CN/H2O:7:3 v/v)でモニターする。
反応媒体を、蒸発させて乾燥し、MeOHとトルエンとの(1:1 v/v)混合液で共蒸留させて、黄色固体を得る。
この固体を、MeOHおよびAc2Oの溶液(5:1 v/v)300 mlを添加することによって、選択的にN-アセチル化する。この溶液を、周囲温度にて1晩、磁気により継続的に撹拌する。溶液は完全に均一になる。蒸発させて乾燥し、MeOH/トルエン混合液(1:1 v/v)で共蒸発させた後、凍結乾燥させ、化合物(2)を白色固体として得る(15.2 g、36.1 mmol、83%)。
マススペクトル(ESI):m/z = 444.07 [M+Na]+
1H NMR (400 MHz、D2O、298K)
δ(ppm) = 2.28 (s, 0.8H, 回転異性体, CH3 (Ac)); 2.22 (s, 2.2H, 回転異性体, CH3 (Ac)); 3.14- 4.18 (m, 14H, H-2,3,4,5,6a,6bGlcI and GlcII and NCH2)); 4.41 (d, 1H, J1-2 = 7.91 Hz, H-1GlcII(β)); 5.04 (d, 1H, 回転異性体, J1-2 = 8.68 Hz, H-1GlcI(β)); 5.50 (d, 1H, 回転異性体, J1-2 = 8.86 Hz, H-1GlcI(β))。
13C NMR (100 MHz、D2O、298K)
δ(ppm) = 18.8, 19.3 (回転異性体, CH3 (Ac)); 27.8, 30.5 (回転異性体, NCH2); 57.6, 58.3 (C-6GlcI and GlcII); 67.2-79.4 (C-2,3,4,5GlcI and GlcII); 84.1 (C-1GlcI); 100.2 (C-1GlcII); 172.3, 173.5 (回転異性体, C=O (Ac))。
IR (KBr):3391 (O-H)、1645 cm-1 (C=O)。
【0124】
[構造B、C、D]
N-アセチル-N-プロパルギル-β-D-オリゴキシログルコシルアミン((6)、(7)、(8))(シントンPo-X)
【化10】

2 gの混合物(3)、(4)、および(5)(1.58 mmol)(それぞれの比は、0.15/0.35/0.50)、2 mLのプロパルギルアミン(31.2 mmol、19.7当量)、および3 mLのMeOHを、25 mLのフラスコに入れる。
この反応媒体を、周囲温度にて3日間、磁気によって継続的に撹拌する。溶液は非常に粘性であり、色は橙色である。この反応の進行は、薄層クロマトグラフィー(CH3CN/H2O:7:3 v/v)でモニターする。
次いで、この溶液を、MeOHおよびCH2Cl2の1:2 v/vの割合の混合液60 mLで希釈する。白色の沈殿が自発的に生じる。この溶液を10分撹拌する。溶液を濾過し、白色固体をMeOH/CH2Cl2の1:2 v/v混合液60 mLで洗浄する。
次いで、この固体を、MeOHおよびAc2Oの20:1 v/vの割合の溶液400 mL中に入れることによって、N-アセチル化する。反応媒体を、周囲温度にて1日間、磁気によって継続的に撹拌する。溶液は、わずかに不透明なままである。TLC(CH3CN/H2O:7:3 v/v)上の移動は、非N-アセチル化生成物と比較して有意な違いを全く示さない。
この化合物(6)、(7)、および(8)を濃縮し、凍結乾燥させる。綿のような白色粉末の形態を有しする(2 g、1.48 mmol、94%)。
マススペクトル(MALDI-TOF):
(6) m/z = 1163.87 [M+Na]+
(7) m/z = 1325.87 [M+Na]+
(8) m/z = 1487.84 [M+Na]+
1H NMR (400 MHz、D2O、298K)
δ(ppm) = 2.17, 2.23 (s, CH3 (Ac)); 3.20 - 4.50 (m, H-2,3,4,5,6Glc,Gal and Xyl); 4.60 - 4.90 (d and m, H-1Glc and Gal); 5.18, 5.02 (d, H-1Xyl); 5.44 (d, J1-2 = 8.61, H-1Glc 1β)。
IR (KBr):3402 (O-H)、1645 cm-1 (C=O)。
【0125】
工程(ii):末端アジド誘導体の合成:
【0126】
[構造A, B]
1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-(1'-アジド-2'-ヒドロキシルメトキシプロピル)トリシロキサン(10)(シントンA-Y)
【化11】

トリシロキサン(9)(12 g、35.7 mmol)を、60 mLのイソプロピルアルコール(IPA)で希釈し、次いで、5当量のナトリウムアジド(11.5 g、178.5 mmol)、40 mLの蒸留水、および20 mLの氷酢酸を添加して、pH約6にする。
この反応媒体を50℃にて4時間撹拌する。反応は、TLC(9:1 v/vのトルエン/EtOAc)でモニターする。
反応媒体を、ジエチルエーテル(200 mL)で希釈し、NaHCO3飽和溶液(2×100 mL)、水(100 mL)で連続的に抽出する。有機相を回収し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させて乾燥させて、化合物(10)(13.5 g、定量的収率)を、淡黄色オイルの形態で得る。これは、次の反応に用いるために十分純度が高い。
マススペクトル(ESI):m/z = 380 [M+H]+
1H NMR (300 MHz、CDCl3、298K)
δ(ppm) = -0.01 (s, 3H, SiCH3); 0.06 (m, 18H, 2 x Si(CH3)3); 0.42 (m, 2H, SiCH2(α)); 1.57 (m, 2H, SiCH2CH2(β)); 2.57 (bs, 1H, OH); 3.40 (m, 6H, CH2OCH2 and CH2N3); 3.90 (m, 1H, CHOH)
13C NMR (75 MHz、D2O、298K)。
δ(ppm) = -0.2 (SiCH3); 2.0 (Si(CH3)3); 13.7 (SiCH2(α)); 23.4 (SiCH2CH2(β)); 53.8 (CH2N3); 69.9 (CHOH); 71.9, 74.4 (CH2OCH2)。
IR (KBr):3432 (O-H)、2957および2871 (C-H)、2102 (N3)、1258 (C-O)、1076および1053 cm-1 (Si-O)。
【0127】
[構造C]
α,ω-ジ-[1-アジド-2-プロパノール-3-(オキシプロピル)]ポリジメチルシロキサン (12)(シントンA-Y)
【化12】

平均DPが10であるポリオルガノシロキサン(11)(2 g、1.81 mmol)を、13 mLのイソプロピルアルコール(IPA)中に希釈した後、5当量のナトリウムアジド(1.93 g、9.07 mmol)、3.9 mLの蒸留水、および3.3 mLの氷酢酸を添加して、pHを約6にする。
この反応媒体を50℃にて7時間撹拌する。反応は、1H NMRによって追跡し、出発物質が実質的に完全に消費された時に終了させる。
反応媒体を、ジエチルエーテル(30 mL)で希釈し、水(10 mL)で抽出する。有機相を回収し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させて乾燥させて、化合物(12)(1.95 g、89%)を、無色オイルの形態で得る。これは、次の反応に用いるために十分純度が高い。
1H NMR (300 MHz、CDCl3、298K)
δ(ppm) = 0.05 (m, 72H, 12 x Si(CH3)2); 0.51 (m, 4H, 2x SiCH2(α)); 1.58 (m, 4H, 2x SiCH2CH2(β)); 3.33-3.43 (m, 12H, 2x CH2OCH2 and CH2N3); 3.91 (m, 2H, 2x CHOH)。
13C NMR (75 MHz、CDCl3、298K)
δ(ppm) = -0.3, 1.2, 1.4 (Si(CH3)2); 14.3 (SiCH2(α)); 23.5 (SiCH2CH2(β)); 53.7 (CH2N3); 69.9 (CHOH); 71.9, 74.5 (CH2OCH2)。
IR (KBr):3415 (O-H)、2962および2874 (C-H)、2104 (N3)、1261 (C-O)、1034および1070 cm-1 (Si-O)。
【0128】
[構造D]
1-アジド-オクタデカン(14)(シントンA-Y)
【化13】

1-ブロモ-オクタデカン(13)(1 g、3 mmol)を、10 mLのDMFで希釈した後、2当量のNaN3(390 mg、6 mmol)を添加する。反応混合物を、磁気によって撹拌しながら、50℃にて2時間加熱する。反応は、TLC(溶離液=石油エーテル)でモニターする。
減圧下でDMFを除去した後、残渣を20 mLのCH2Cl2で希釈し、10 mLの水で抽出する。有機相を回収し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させて乾燥させて、化合物(14)(885 mg、定量的収率)を、無色液体として得る。この生成物は、次の反応に直接用いるために十分純度が高い。
1H NMR (300 MHz、CDCl3、298K)
δ(ppm) = 0.85 (t, 3H, JH18-H17 = 6Hz, CH3); 1.10-1.32 (m, 30H, 15x CH2); 1.55 (q, 2H, JH18-H17 = 6Hz, CH3CH2); 3.22 (t, 2H, JH1-H2 = 7.5Hz, CH2N3)。
13C NMR (75 MHz、CDCl3、298K)
δ(ppm) = 14.1 (CH3); 22.7, 26.7, 28.9, 29.2, 29.4, 29.5, 29.6, 29.7, 31.9 (CH2); 51.5 (CH2N3)。
IR (KBr):2942および2855 (C-Hアルカン)、2096 cm-1 (N3)。
【0129】
工程(iii)および(iv):「クリック化学」による縮合化合物
【0130】
4-[N-アセチル-N-(β-D-グルコピラノシル-(1→4)-β-D-グルコピラノシル)-アミノメチル]-1-[1’-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-(2’-ヒドロキシルメトキシプロピル)トリシロキサン)]-1H-[1,2,3]-トリアゾール(15)
【化14】

アスコルビン酸ナトリウム(0.1当量、4.7 mg、24μmol)および0.1Mの濃度に新たに溶解した硫酸銅溶液(0.01当量、24μL、2.4μmol)を、末端アルキン(2)(100 mg、237μmol)ならびに0.6 mLの水および1 mLのiPrOH中のアジドトリシロキサン誘導体(10)(1.1当量、99 mg、261μmol)を含むセロビオース誘導体の溶液に添加した。
この溶液を、密封した管内で50℃に加熱し、1時間激しく撹拌する。反応は、TLC(CH3CN/H2O:7:3 v/v)でモニターする。
次いで、媒体をMeOH(5 mL)で希釈し、シリカの存在下で蒸発させて乾燥する。
残渣をシリカゲルのカラム上に置く。シリカゲルによる迅速なクロマトグラフィー(アセトニトリル/水:9:1 v/v)による精製の後、化合物(15)が、凍結乾燥後に白色粉末の形態で、89%の収率(168 mg、210μmol)で得られる。
マススペクトル(ESI):m/z = 823.46 [M+Na]+
1H NMR (400 MHz、CD3OD、298K)
δ(ppm) = 0.04 (s, 3H, SiCH3); 0.10 (m, 18H, 6x Si(CH3)3; 0.49 (m, 2H, SiCH2(α)); 1.61 (m, 2H, SiCH2CH2(β)); 2.08, 2.22 (2x s, 3H, 回転異性体, CH3 (Ac)); 3.25-3.89 (m, 15H, H-2,3,4,5,6a,6bGlcI and GlcII and CH2OCH2); 4.09 (m, 1H, CHOH); 4.40 (m, 1H, CH(OH)CH2N); 4.44 (d, 1H, J1-2 = 7.88 Hz, H-1GlcII(β)); 4.56 (m, 1H, CH(OH)CH2N); 4.62 (m, 2H, 回転異性体, CH2N(Ac)); 5.00 (d, 0.18H, 回転異性体, J1-2 = 8.21 Hz, H-1GlcI(β)); 5.66 (d, 0.82H, 回転異性体, J1-2 = 9.20 Hz, H-1GlcI(β)); 7.86, 8.02 (s, 1H, H-5triazole)。
13C NMR (100 MHz、CD3OD、298K)
δ(ppm) = 0.0 (SiCH3); 2.1 (Si(CH3)3); 14.7 (SiCH2(α)); 22.1(CH3 (Ac)); 24.6 (SiCH2CH2(β)); 37.5 (CH2N(Ac)); 54.7 (CH(OH)CH2SiN); 61.9, 62.6 (C-6GlcI and GlcII); 70.5, 71.5, 72.1, 73.3, 73.4, 75.0, 75.4, 76.6, 78.0, 78.3, 78.9, 80.0 (C-2,3,4,5GlcI and GlcII, CH2OCH2, CHOH); 88.9 (C-1GlcI); 104.7 (C-1GlcII); 126.1 (C-5triazole), 146.4 (C-1triazole), 174.5 (C=O (NAc))。
【0131】
4-[N-アセチル-N-(β-D-オリゴキシログルコシル)-アミノエチル]-1-[1’-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル- 3-(2’-ヒドロキシルメトキシプロピル)トリシロキサン)]-1H-[1,2,3]-トリアゾール((16)、(17)、(18))
【化15】

アスコルビン酸ナトリウム(1当量、1.6 g、8.1 mmol)および1Mの濃度に新たに溶解した硫酸銅溶液(0.5当量、4.04 mL、4.04 mmol)を、末端アルキン(6)(DP7)、(7)(DP8)、および(8)(DP9)(10.9 g、8.1 mmol)ならびに120 mLの水および180 mLのiPrOH中のアジドトリシロキサン誘導体(10)(1.5当量、8.4 g、12.1 mmol)を含むオリゴキシルグルカン誘導体溶液に添加した。
この溶液を、1Lフラスコ中で50℃に加熱し、1時間撹拌する。反応は、TLC(CH3CN/H2O:7:3 v/v)でモニターする。
次いで、媒体をMeOH(25 mL)で希釈し、シリカの存在下で蒸発させて乾燥する。残渣をシリカゲルのカラム上に置く。シリカゲルによる迅速なクロマトグラフィー(アセトニトリル/水:8:2 v/v)による精製の後、化合物(16)、(17)、および(18)を含有するフラクションが、銅(II)による汚染により青みがかった色で識別されて観察される。次いで、これらのフラクションを合わせて、キレート樹脂を充填したカラム(Dowex M4195、予めNH4OHの2M溶液で処理し、蒸留水でpHが7に達するまで洗浄したもの)に通して濃縮する。化合物(16)、(17)、および(18)を、カラムに水を通すことによって回収する。化合物(16)、(17)、および(18)は、その溶液の無色である外観および導電性の測定によって示される通り、完全に汚染物が除去されている。
化合物(16)、(17)、および(18)は、凍結乾燥後に白色粉末の形態で、87%の収率(12 g、7 mmol)で得られる。
マススペクトル(MALDI-TOF):
(6) m/z = 1561.51 [M+Na, H2O]+
(7) m/z = 1705.60 [M+Na]+
m/z = 1723.57 [M+Na, H2O]+
(8) m/z = 1867.67 [M+Na]+
1H NMR (400 MHz、D2O、298K)
δ(ppm) = -0.01 (m, 21H, SiCH3 and 6x Si(CH3)3); 0.35 (m, 2H, SiCH2(α)); 1.63 (m, 2H, SiCH2CH2(β)); 2.12, 2.28 (2x s, 3H, 回転異性体, CH3 (Ac)); 3.29-3.89 (m, H-2,3,4,5,6a,6b H-2,3,4,5,6Glc, Gal and Xyl and CH2OCH2); 4.09 (m, 1H, CHOH); 4.40-4.88 (m, CH(OH)CH2N, CH(OH)CH2N, CH2N(Ac), H-1Glc and Gal); 5.09, 4.97 (d, H-1Xyl); 5.45 (m, H-1Glc 1β); 7.86, 7.94 (s, 1H, H-5triazole)。
【0132】
4-[N-アセチル-N-(β-D-オリゴキシログルコシル) -アミノエチル]-1-[α,ω-ジ-1-(プロパノール-3-(オキシプロピル) ポリジメチルシロキサン)]-1H-[1,2,3]-トリアゾール(19)
【化16】

アスコルビン酸ナトリウム(2当量、73.4 mg、370μmol)および1Mの濃度に新たに溶解した硫酸銅溶液(1当量、185μL、185μmol)を、末端アルキン(6)(DP7)、(7)(DP8)、および(8)(DP9)(2当量、500 mg、370μmol)ならびに3 mLの水および5 mLのiPrOH中の平均DP 10のポリオルガノシロキサン誘導体(12)(220 mg、185μmol)を含むオリゴキシルグルカン誘導体溶液に添加した。
この溶液を、密封した管内で50℃に加熱し、1時間激しく撹拌する。反応は、TLC(CH3CN/H2O:7:3 v/v)でモニターする。
次いで、媒体をMeOH(25 mL)で希釈し、シリカの存在下で蒸発させて乾燥する。
残渣をシリカゲルのカラム上に置く。シリカゲルによる迅速なクロマトグラフィー(アセトニトリル/水:8:2 v/v)による精製の後、多数の縮合生成物および構造不明の化合物を含む化合物(19)が、凍結乾燥後に白色粉末の形態で、81%の質量収率(583 mg)で得られる。
1H NMR (300 MHz、D2O、298K)
δ(ppm) = -0.07 (m, 57H, ~9.5x Si(CH3)2); 0.35 (m, 4H, 2x SiCH2(α)); 1.49 (m, 4H, 2x SiCH2CH2(β)); 2.03, 2.18 (2x s, 回転異性体, CH3 (Ac)); 3.05-4.88 (m, H-2,3,4,5,6Glc, GaI and Xyl and CH2OCH2Si, CHOHSi, CH(OH)CH2N, CH(OH)CH2N, CH2N(Ac), H-1Glc and Gal); 4.97-5.09 (m, H-1Xyl); 5.32 (m, H-1Glc Iβ); 7.82, 7.93 (s, 1H, H-5triazole)。
IR (KBr):3383 (OH)、2961 (C-H) 、1644 (C=O) 、1261 (C-O) 、1044および1090 cm-1 (Si-O)。
【0133】
4-[N-アセチル-N-(β-D-オリゴキシログルコシル)-アミノメチル]-1-(1-オクタデカン)-1H-[1,2,3]-トリアゾール((20)、(21)、および(22))
【化17】

アスコルビン酸ナトリウム(1当量、29 mg、150μmol)および1Mの濃度に新たに溶解した硫酸銅溶液(0.5当量、75μL、75μmol)を、末端アルキン(6)(DP7)、(7)(DP8)、および(8)(DP9)(200 mg、150μmol)ならびに1.5 mLの水および3 mLのiPrOH中の1-アジド-オクタデカン (14)(1.1当量、48 mg、160μmol)を含むオリゴキシルグルカン誘導体溶液に添加した。
この溶液を、密封した管内で50℃に加熱し、1時間激しく撹拌する。反応は、TLC(CH3CN/H2O:7:3 v/v)でモニターする。
次いで、反応混合物をMeOH(10 mL)で希釈し、シリカの存在下で蒸発させて乾燥する。残渣をシリカゲルのカラム上に置く。シリカゲルによる迅速なクロマトグラフィー(アセトニトリル/水:8:2 v/v)による精製の後、化合物(20)、(21)、および(22)が、凍結乾燥後に白色粉末の形態で、81%の収率(180 mg、121μmol)で得られる。
1H NMR (400 MHz、D2O、298K)
δ(ppm) = 0.76 (m, 3H, CH3); 1.10-1.32 (m, 30H, 15xCH2); 1.63 (m, 2H, CH3CH2); 1.90, 2.08 (2xs, 3H, 回転異性体, CH3 (Ac.)); 3.12-4.86 (m, H-2,3,4,5,6Glc, Gal and Xyl); 4.75 (m, H-1Glc and Gal); 5.08 (d, H-1Xyl); 7.77, 7.90 (s, 1H, H-5triazole)。
IR (KBr):3402 (O-H)、2921、2851 cm-1 (C-H)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド化合物Po - - Ro - - Aであって、少なくとも1つのポリオール部分(Po)を有し、Poの原子の少なくとも1つが、下記一般式(I):
【化1】

〔式中、
−Roは、下記式(II.1)または(II.2):
【化2】

(式中、Zは、炭素原子または窒素原子を表す)
の連結ヒンジであり、
−ポリオール部分Poは、ポリマー性合成非サッカライドポリオール、または、少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個のモノサッカライド単位を有するサッカライド(水素化されたものかまたは水素化されていないもの)から選択され、
−Aは、無機または有機部分であり、場合によりポリマー性であり;かつ、ハイブリッド化合物1分子当たり複数のA部分が存在する場合には、A部分は、互いに同じであるかまたは異なり、有機部分Aは、
−合成ポリマー、そのコポリマー、またはこれらを得ることを可能にするモノマー単位、
−アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、およびこれらの組合せ、
−ならびにこれらの組合せ
を含む群から選択される化合物から選択されるかまたは誘導される〕
の少なくとも1種の基で置換されている、ハイブリッド化合物。
【請求項2】
ポリオール部分(Po)の少なくとも1つのヒドロキシル基が次の一般式(I):- - - Ro - - - A(請求項1で定義した通りのもの)で置換されていることを特徴とする、請求項1に記載のハイブリッド化合物。
【請求項3】
ヒンジRoまたは複数のヒンジRoの少なくとも1つが、部分Poおよび/または部分Aに、二価の連結基-L-〔Lは好ましくは、炭化水素単位または原子(例えばOまたはSなど)である〕によって連結されていることを特徴とする、請求項1に記載のハイブリッド化合物。
【請求項4】
ヒンジRoがいずれも、部分Poと二価の連結基-L-によって連結されておらず、前記ハイブリッド化合物が、アミノ酸および/もしくはペプチドならびに/またはこれらの類似体および/もしくは誘導体を含まない少なくとも1つの部分Aを有することを特徴とする、請求項1に記載のハイブリッド化合物。
【請求項5】
部分Aが、
−合成ポリマー性非サッカライドポリオール、これらのコポリマー、またはこれらを得ることを可能にするモノマー単位;
−ポリオルガノシロキサン(POS)、これらのコポリマー、またはこれらを得ることを可能にするモノマー単位;
−ポリアルキレングリコール(あるいはアルキレンポリオキシド)、好ましくはポリエチレングリコール(あるいはエチレンポリオキシド)および/またはポリプロピレングリコール(あるいはプロピレンポリオキシド)、および/またはポリテトラエチレングリコール、および/またはコポリマーもしくはコ-オリゴマー〔特に、これらのまたはポリプロピレングリコールとポリプロピレングリコールとの、ランダムもしくはブロックのコポリマーもしくはコ-オリゴマー(あるいはランダムもしくはブロックのエチレンおよびプロピレンポリオキシド)〕、これらのポリアルキレングリコールは、場合により、他の基で官能基化されているかあるいは他の基を官能基化していてよく〔例えば、アミン基で官能基化されているかあるいはアミン基を官能基化していてよく(Jeffamine類)〕、かつ/あるいは、場合により、少なくとも1つの末端がヒドロキシル基またはアルキル基(例えば、C1〜C30アルキル)によって末端化されていてもよい;
−ポリアミド、これらのコポリマー、またはこれらを得ることを可能にするモノマー単位;
−ポリエステル、これらのコポリマー、またはこれらを得ることを可能にするモノマー単位;
−ポリブタジエン、これらのコポリマー、またはこれらを得ることを可能にするモノマー単位;
−ポリスチレン、これらのコポリマー、またはこれらを得ることを可能にするモノマー単位;
−場合により、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、およびこれらの組合せ;
−シリカ以外の無機物質;
−および、これらの組合せ
からなる群から選択される化合物から選択されるかまたは誘導されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のハイブリッド化合物。
【請求項6】
式(II.1)および(II.2)の1位の窒素の遊離原子価結合がヒンジRoをPoに連結し、式(II.1)および(II.2)の4位または5位の炭素または原子Zの遊離原子価結合がヒンジRoをAに連結していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のハイブリッド化合物。
【請求項7】
式(II.1)および(II.2)の1位の窒素の遊離原子価結合がヒンジRoをAに連結し、式(II.1)および(II.2)の4位または5位の炭素または原子Zの遊離原子価結合がヒンジRoをPoに連結していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のハイブリッド化合物。
【請求項8】
ポリオール部分Poまたはポリオール(部分Aに含まれ得るポリオール)が、
−合成ポリマー性非サッカライドポリオール、
−および/または、少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個のモノサッカライド単位を含むサッカライド(水素化されたものかまたは水素化されていないもの)
から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のハイブリッド化合物。
【請求項9】
Aが、シロキシ単位M、D、T、および/またはQを有する少なくとも1種のPOS〔好ましくはシロキシ単位MおよびD、場合によりTおよび/またはQを有する少なくとも1種のPOS、さらに好ましくは、M(D)dM型、M(D)d (T)tM型、MQ型(式中、d、tは0以上の有理数である)の少なくとも1種のPOS〕を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のハイブリッド化合物。
【請求項10】
下記式:
【化3】

〔式中、
−R2は、同じであるかまたは異なり、炭化水素基、好ましくはメチル基であり、
−R3は、同じであるかまたは異なり、式:-Ro - - Po(式中、RoおよびPoは、請求項1〜7のいずれか一項で定義した通りである)の基であり、
−R1は、同じであるかまたは異なり、R2基またはR3基であり、
−Rは、酸素原子を含む二価の基、好ましくは-O-基であり、
−mは、0とは異なる平均数であり、
−nは、0以上の平均数であり、
−kおよびlは、0以上の平均数であり、
−oおよびpは、同じであるかまたは異なり、0以上の平均数である〕
の少なくとも1種に相当することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のハイブリッド化合物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のハイブリッド化合物を特に合成するための方法であって、
(i) 少なくとも1つの式(VII.1):-C≡E(式中、E = CHまたはNである)の反応性末端を有する少なくとも1つの反応性単位Xを含むシントンPo-Xを使用し、かつ/あるいは合成し;
(ii) 少なくとも1つの式(VII.2):-N3の反応性末端〔反応性末端(VII.2)は、反応性末端(VII.1)と反応し得る〕を有する少なくとも1つの反応性単位Yを含むシントンA-Yを使用し、かつ/あるいは合成し;
(iii) 環状付加メカニズムによって、シントンPo-Xを、シントンA-Yと反応させて、少なくとも1つのポリオール部分(Po)を有し且つPoの少なくとも1つのヒドロキシル基が次の一般式(I’):- - - Ro - - - Aの少なくとも1つの基で置換されている少なくとも1種のハイブリッド化合物Po - - - Ro - - - A(式中、RoおよびAは、請求項1〜10のいずれか一項で定義した通りである)を得;
(iv) 場合により、Po - - - Ro - - - Aを反応混合物から分離して回収する
ことを特徴とする、方法。
【請求項12】
環状付加工程(iii)を、シントンPo-Xおよび/またはシントンA-Yを溶解または膨潤させることができる水性、水性アルコール性、または有機性の媒体中、系内のCu++をCu+に還元する少なくとも1種の還元剤の存在下で、イオン化形態(好ましくはCu++)の金属触媒を少なくとも1種使用して行うことを特徴とする方法であって、前記還元剤が、アスコルべート、キノン、ヒドロキノン、ビタミンK1、グルタチオン、システイン、Fe2+、Co2+、電位の印加、Cu、Al、Be、Co、Cr、Fe、Mg、Mn、Ni、およびZnを含む群の金属、ならびにこれらの混合からなる群から好ましくは選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記反応媒体が、
−極性非プロトン性溶媒、好ましくは、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、アセトン、メチルエチルケトン、またはブタノン、
−極性プロトン性溶媒、好ましくは、メタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、またはt-ブタノール(t-BuOH)、
−非極性溶媒、好ましくは、トルエン、ヘキサン、またはキシレン、
−水、
−およびこれらの混合物
から選択される少なくとも1種の溶媒を含有することを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
場合によるPo - - - Ro - - - Aの反応混合物からの分離工程(iv)が、特に
−少なくとも1回のクロマトグラフィー、好ましくは、第一の極性溶媒と第二のより極性が低い極性溶媒少なくとも1種との混合液(例えば、アセトニトリルと水との混合液など)を含む溶離液を使用する少なくとも1回のシリカゲルクロマトグラフィーを行う工程、
−および/または、少なくとも1回蒸発させて生成物を乾燥する工程
を含むことを特徴とする、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの式(VII.1.1):
-[L1]a-C≡E
(式中、E = CHまたはNであり、a = 1である)
の反応性末端を有する少なくとも1つの反応性単位Xを含み、前記末端が、二価の炭化水素連結基であるL1によって残基Poに連結されていることを特徴とする、シントンPo-X。
【請求項16】
1) 第一の可能性として、
−Poのアノマー炭素と反応した少なくとも1つのアミン基(例えば末端アミン基)を含むL1
−および/または、少なくとも1つのハロゲノ基(例えば、ブロモ基)を有する前駆体から、ハロゲノ基とPoのOH基との反応により誘導されたL1
を有するサッカライドを、Poが少なくとも1つ含むこと;
2) 第二の可能性として、カルボン酸系官能化基、カルボキシレート官能化基、無水物官能化基、チオール官能化基、イソシアネート官能化基、およびエポキシド官能化基を含む群に属する少なくとも1種の官能化基で官能化された残基(例えば、サッカライド)であって、
−Poの前記官能化基と反応した少なくとも1つのアミン基(例えば末端アミン基)を含むL1
−および/または、少なくとも1つのハロゲノ基(例えば、ブロモ基)を有する前駆体から、ハロゲノ基とPoの前記官能化基との反応により誘導されたL1
を有する残基を、Poが少なくとも1つ含むこと;または
3) 第三の可能性として、第一の可能性と、第二の可能性との組み合わせ
を特徴とする、請求項15に記載のシントンPo-X。
【請求項17】
Poがポリマーであることを特徴とする、請求項15または16に記載のシントンPo-X。
【請求項18】
請求項15で定義した通りの反応性単位Xを少なくとも1つ含み、少なくとも1つの式(VII.2.1):
-[L2]a-N3
(式中、a = 1である)
の反応性末端を有する少なくとも1つの反応性単位Yを含み、前記末端が、二価の炭化水素連結基であるL2によって残基Poに連結されていることを特徴とする、複合シントンPo-XY(式中、Poは請求項1、4、または8で定義した通りである)。
【請求項19】
請求項1〜10のいずれか一項に記載されているかまたは請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法によって得られるハイブリッド化合物の、
−洗剤/界面活性剤組成物、
−シャンプー組成物、
−石鹸組成物、
−洗浄/洗濯用組成物、
−化粧品組成物
を含む群から選択される組成物中の成分としての使用。
【請求項20】
請求項19に記載の使用により得られる組成物。
【請求項21】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のハイブリッド化合物を含有するかまたは請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法によって得られる、エマルション、好ましくは水中油型エマルション。

【公表番号】特表2009−537484(P2009−537484A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510443(P2009−510443)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054702
【国際公開番号】WO2007/132005
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(508339035)
【出願人】(500174661)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク−セ・エン・エール・エス− (54)
【Fターム(参考)】