説明

ポリカーボネート樹脂成形体

【課題】 プライマーを用いることなく、硬度が高く、かつ密着性に優れたコーティング層を有するポリカーボネート樹脂成形体を安価に得ることを目的とする。
【解決手段】 (A)ポリカーボネート99.5〜60質量%及び(B)一般式(1)
【化1】


(式中、Xは
【化2】


で表わされる二価の基、Yは水素原子又は水酸基と反応する化合物の残基、nは重合度を示す。)
で表わされるフェノキシ樹脂及び一般式(2)
【化3】


(式中、X及びnは上記に同じ。)
で表わされるエポキシ樹脂から選ばれる一種以上の水酸基含有樹脂0.5〜40質量%からなる樹脂混合物を含む成形基体の表面に、オルガノシロキサン成分を含むコーティング剤により、コーティング層を設けたことを特徴とするポリカーボネート樹脂成形体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬度が高く、かつ密着性に優れたコーティング層を有するポリカーボネート樹脂成形体に関し、更に詳しくは、ポリカーボネートと水酸基含有樹脂からなる樹脂混合物を含む成形基体の表面に、オルガノシロキサン成分を含むコーティング剤により、コーティング層を設けてなる高硬度のポリカーボネート樹脂成形体に関するものである。
従って、このポリカーボネート樹脂成形体は、各種窓、例えば、住宅用窓、ショーウインド、車両用窓、車両用風防、遊戯機械のガラス代替、電気・電子、OA製品のハウジング、カバー、シート製品で傷つき防止等のためにコーティングを必要とする製品などに利用できる。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、透明性、衝撃性に優れる反面、傷つき性、紫外線に対する、劣化、黄変等の欠点を有している。
そのためコーティング処理を行い、それらの欠点をカバーしている。
コーティング処理において、特に硬さが要求される用途では、アルコキシシランの加水分解縮合物、更にはコロイダルシリカを併用したトップコート剤をプライマーを介して塗布することが一般的であるが、プライマーを使用しない場合には、密着力が全く得られず、容易に剥離する。
また、プライマーの使用により、コーティング処理が煩雑となり、コスト上昇に繋がるため、硬さと良好な密着性を有するプライマー不要のコーティング剤の開発が望まれている。
更に、プライマーを使用し、プライマー層に紫外線吸収剤を用いても、長期の屋外暴露により、ポリカーボネート樹脂が劣化し、界面での剥離が起きる。
従って、コーティング剤の更なる改良が求められている。
【0003】
従来より、プライマーを使用しない1コートタイプのコート剤がいくつか提案されているが、密着性付与のためにポリオール等の粘着性の物質を添加した場合には、十分な硬度が得られず、紫外線の照射により容易に硬化皮膜が剥離するという欠点がある(例えば、特許文献1〜2)。
また、シランカップリング剤として、アミノシランやエポキシシランの少なくとも1種をオルガノシロキサン系塗料に添加することにより、密着性が向上することが知られている(例えば、特許文献3)。
しかしながら、このコーティング層は、耐傷付き性及び耐久性の観点から、十分に満足し得るものではない。
【0004】
【特許文献1】特開平6−33013号公報
【特許文献2】特開平6−256718号公報
【特許文献3】特開平2000−272071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、プライマーを用いることなく、硬度が高く、かつ密着性に優れたコーティング層を有するポリカーボネート樹脂成形体を安価に得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ポリカーボネートと水酸基含有樹脂からなる樹脂混合物を含む成形基体の表面に、オルガノシロキサン成分を含むコーティング剤を用いて、コーティング層を設けることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、
1.(A)ポリカーボネート99.5〜60質量%及び(B)一般式(1)
【化1】

(式中、Xは
【化2】

で表わされる二価の基、Yは水素原子又は水酸基と反応する化合物の残基、nは重合度を示す。)
で表わされるフェノキシ樹脂及び一般式(2)
【化3】

(式中、X及びnは上記に同じ。)
で表わされるエポキシ樹脂から選ばれる一種以上の水酸基含有樹脂0.5〜40質量%からなる樹脂混合物を含む成形基体の表面に、オルガノシロキサン成分を含むコーティング剤により、コーティング層を設けたことを特徴とするポリカーボネート樹脂成形体、
2.(A)成分のポリカーボネートの粘度平均分子量が、13,000〜50,000である上記1に記載のポリカーボネート樹脂成形体、
3.(B)成分の水酸基含有樹脂の重量平均分子量が、6,000〜70,000である上記1又は2に記載のポリカーボネート樹脂成形体、
4.コーティング剤が、一般式(3)
1−Si(OR23 (3)
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、又はアクリロキシ基、メタクリロキシ基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、メルカプト基、シアノ基、塩素原子及びフッ素原子から選ばれる1個以上の基もしくは原子で置換された炭素数1〜3のアルキル基を示し、R2は、炭素数が1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルコキシアルキル基、炭素数2〜5のアシル基を示し、3個のOR2は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表わされる化合物、上記一般式(3)で表わされる化合物の加水分解縮合物、一般式(4)
Si(OR34 (4)
(式中、R3は、炭素数が1〜5のアルキル基を示し、4個のOR3は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表わされる化合物、上記一般式(4)で表わされる化合物の加水分解縮合物及びコロイダルシリカから選ばれる一種以上の化合物を含む上記1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂成形体、
5. コーティング剤において、一般式(3)で表わされる化合物、一般式(3)で表わされる化合物の加水分解縮合物、一般式(4)で表わされる化合物、一般式(4)で表わされる化合物の加水分解縮合物及びコロイダルシリカから選ばれる一種以上の化合物由来のケイ素含有成分の含有量が、全固形分の75質量%以上である上記4に記載のポリカーボネート樹脂成形体、
6.コーティング剤が、アクリル系樹脂及び/又はメタクリル系樹脂を含む上記1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂成形体、
7.アクリル系樹脂又はメタクリル系樹脂が、主鎖中に紫外線吸収構造を含む上記6に記載のポリカーボネート樹脂成形体、
8.コーティング層の厚さが、0.5〜30μmである請求項1〜7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂成形体
に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
ポリカーボネートと水酸基含有樹脂からなる樹脂混合物を含む、アロイ化した成形基体の表面に、オルガノシロキサン成分を含むコーティング剤を用いてコーティング層を設けることにより、プライマーを用いることなく、硬度が高く、かつ密着性に優れたコーティング層を有するポリカーボネート樹脂成形体を得ることができ、プライマーを併用すると更に耐久性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリカーボネートと水酸基含有樹脂からなる樹脂混合物を含む成形基体において、(A)成分のポリカーボネートとしては、特に制限はなく種々のものを挙げることができる。
通常、二価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族ポリカーボネートを用いることができる。
二価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法又は溶融法、即ち、二価フェノールとホスゲンの反応、二価フェノールとジフェニルカーボネート等とのエステル交換法により反応させて製造されたものを用いることができる。
【0010】
二価フェノールとしては、様々なものを挙げることができるが、特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル及びビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等を挙げることができる。
【0011】
特に、好ましい二価フェノールとしては、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、特に、ビスフェノールAを主原料としたものである。
また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、又はハロホルメート等であり、具体的にはホスゲン、二価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネート等である。
この他、二価フェノールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン及びカテコール等を挙げることができる。
これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0012】
尚、ポリカーボネートは、分岐構造を有していてもよく、分岐剤としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α',α"−トリス(4−ビドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、トリメリット酸及びイサチンビス(o−クレゾール)等がある。
また、分子量の調節のためには、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール及びp−クミルフェノール等が用いられる。
【0013】
また、本発明に用いるポリカーボネートとしては、テレフタル酸等の2官能性カルボン酸、又はそのエステル形成誘導体等のエステル前駆体の存在下でポリカーボネートの重合を行うことによって得られるポリエステル−ポリカーボネート等の共重合体、又は種々のポリカーボネートの混合物を用いることもできる。
【0014】
本発明のポリカーボネートと水酸基含有樹脂からなる樹脂混合物を含む成形基体においては、ポリカーボネートとして、ポリオルガノシロキサン含有芳香族ポリカーボネートを用いることができる。
ポリオルガノシロキサン含有芳香族ポリカーボネートは、ポリカーボネート部とポリオルガノシロキサン部を有するものであり、例えば、ポリカーボネートオリゴマーとポリオルガノシロキサン部を構成する末端に反応性基を有するポリオルガノシロキサンとを、塩化メチレン等の溶媒に溶解させ、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を加え、トリエチルアミン等の触媒を用い、界面重縮合反応することにより製造することができる。
ポリオルガノシロキサン含有芳香族ポリカーボネートは、例えば、特開平3−292359号公報、特開平4−202465号公報、特開平8−81620号公報、特開平8−302178号公報及び特開平10−7897号公報等に開示されている。
【0015】
ポリオルガノシロキサン含有芳香族ポリカーボネートのポリカーボネート部の重合度は、3〜100、ポリオルガノシロキサン部の重合度は2〜500程度のものが好ましく用いられる。
また、ポリオルガノシロキサン含有芳香族ポリカーボネートのポリオルガノシロキサンの含有量としては、通常0.1〜2質量%、好ましくは0.3〜1.5質量%の範囲である。
ポリオルガノシロキサン含有芳香族ポリカーボネートは、難燃性及び耐衝撃性の向上の観点から有用である。
ポリオルガノシロキサン含有芳香族ポリカーボネートにおいて、ポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等が好ましく、ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
【0016】
更に、本発明のポリカーボネートと水酸基含有樹脂からなる樹脂混合物を含む成形基体においては、ポリカーボネートとして、分子末端が炭素数10〜35のアルキル基を有するポリカーボネートを用いることができる。
ここで分子末端が炭素数10〜35のアルキル基を有するポリカーボネートは、ポリカーボネートの製造において、末端停止剤として、炭素数10〜35のアルキル基を有するアルキルフェノールを用いることにより得ることができる。
これらのアルキルフェノールとしては、デシルフェノール、ウンデシルフェノール、ドデシルフェノール、トリデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ペンタデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、ヘプタデシルフェノール、オクタデシルフェノール、ノナデシルフェノール、イコシルフェノール、ドコシルフェノール、テトラコシルフェノール、ヘキサコシルフェノール、オクタコシルフェノール、トリアコンチルフェノール、ドトリアコンチルフェノール及びペンタトリアコンチルフェノール等が挙げられる。
【0017】
これらのアルキルフェノールのアルキル基は、水酸基に対して、o−、m−、p−のいずれの位置であってもよいが、p−の位置が好ましい。
また、アルキル基は、直鎖状、分岐状又はこれらの混合物であってもよい。
この置換基としては、少なくとも1個が上記の炭素数10〜35のアルキル基であればよく、他の4個は特に制限はなく、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、ハロゲン原子又は無置換であってもよい。
【0018】
この分子末端が炭素数10〜35のアルキル基を有するポリカーボネートは、後述するポリカーボネート系のいずれの場合でもよく、例えば、二価フェノールとホスゲン又は炭酸エステル化合物との反応において、分子量を調節するために、これらのアルキルフェノールを末端封止剤として用いることにより得られるものである。
【0019】
例えば、塩化メチレン溶媒中において、トリエチルアミン触媒、上記炭素数が10〜35のアルキル基を有するフェノールの存在下、二価フェノールとホスゲン、又は、ポリカーボネートオリゴマーとの反応により得られる。
ここで、炭素数が10〜35のアルキル基を有するフェノールは、ポリカーボネートの片末端又は両末端を封止し、末端が変性される。
この場合の末端変性は、全末端に対して20%以上、好ましくは50%以上とされる。
即ち、他の末端は、水酸基末端、又は下記の他の末端封止剤を用いて封止された末端である。
【0020】
ここにおいて、他の末端封止剤として、ポリカーボネートの製造で常用されているフェノール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、p−ノニルフェノール、p−tert−アミルフェノール、ブロモフェノール及びトリブロモフェノール、ペンタブロモフェノール等を挙げることができる。
中でも、環境問題からハロゲンを含まない化合物が好ましい。
【0021】
また、高流動化のためには、芳香族ポリカーボネートの分子末端は、炭素数10〜35のアルキル基であるものが好ましい。
分子末端を炭素数10以上のアルキル基にすると、ポリカーボネートと水酸基含有樹脂との樹脂混合物の流動性が向上する。
しかし、分子末端が炭素数36以上のアルキル基では、耐熱性及び耐衝撃性が低下する。
【0022】
本発明に用いられるポリカーボネートの粘度平均分子量は、通常13,000〜50,000、好ましくは15,000〜40,000、更に好ましくは17,000〜30,000である。
粘度平均分子量が13,000以上であると、機械的物性が上昇し、50,000以下であると射出成形を容易に行うことができる。
【0023】
本発明のポリカーボネートと水酸基含有樹脂からなる樹脂混合物を含む成形基体において、(B)成分の水酸基含有樹脂としては、フェノキシ樹脂及びエポキシ樹脂を挙げることができる。
フェノキシ樹脂としては、例えば、一般式(1)
【化4】

(式中、Xは
【化5】

で表わされる二価の基、Yは水素原子又は水酸基と反応する化合物の残基、nは重合度を示す。)
で表わされるフェノキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、一般式(2)
【化6】

(式中、X及びnは上記に同じ。)
で表わされるエポキシ樹脂が挙げられる。
上記一般式(1)において、水酸基と反応する化合物としては、エステル、カーボネート、エポキシ基を有する化合物、カルボン酸無水物、酸ハライド、イソシアナート基を有する化合物等を挙げることができる。
エステルとしては、特に分子内エステルが好ましく、例えばカプロラクトン等が挙げられる。
上記一般式(1)で表わされるフェノキシ樹脂において、Yが水素原子である化合物は、二価のフェノール類とエピクロルヒドリンから容易に製造することができる。
また、Yが水酸基と反応する化合物の残基である化合物は、二価のフェノール類とエピクロルヒドリンから製造したフェノキシ樹脂と上記水酸基と反応する化合物を加熱下で混合することにより、容易に製造することができる。
上記一般式(2)で表わされるエポキシ樹脂は、二価のフェノール類とエピクロルヒドリンから容易に製造することができる。
二価フェノール類としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン又は4,4'−ジヒドロキシビフェニルが用いられる。
フェノキシ樹脂及びエポキシ樹脂として、市販品を用いることもできる。
フェノキシ樹脂(ビスフェノールA型)の市販品としては、PKHB(INCHEM社製、Mw=13,700)、PKHH(INCHEM社製、Mw=29,000)、PKFE(INCHEM社製、Mw=36,800)、YP−50(東都化成社製、Mw=43,500)等が挙げられる。
また、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型)の市販品としては、エピコート1256(ジャパンエポキシレジン社製、Mw=26,600)等が挙げられる。
【0024】
水酸基含有樹脂の重量平均分子量としては、通常6,000〜70,000、好ましくは10,000〜50,000、更に好ましくは10,000〜40,000である。
重量平均分子量が6,000以上であると、機械的物性が良好であり、70,000以下であると透明性が良好となる。
ポリカーボネートの粘度平均分子量が19,000以上で、水酸基含有樹脂の重量平均分子量が50,000以下であることが、透明性を維持する上で好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂成形体において、ポリカーボネートと水酸基含有樹脂の含有割合は、質量比で99.5:0.5〜60:40、好ましくは、99:1〜70:30、更により好ましくは、98.5:1.5〜80:20である。
【0025】
ポリカーボネートと水酸基含有樹脂からなる樹脂混合物を含む成形基体は、該ポリカーボネート及び水酸基含有樹脂からなる樹脂混合物と、必要の応じて用いられる各種添加剤を含む成形材料を調製し、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、プレス成形、射出成形、射出ブロー成形、ブロー成形、押出成形等の各種の成形方法で成形することによって得ることができ、三次元形状を有するものでもよい。
上記成形基体としては、板状、シート状、フィルム状成形体が好ましい。
また、必要に応じて用いられる各種添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、熱安定剤、無機フィラー、帯電防止剤、熱線遮蔽剤等が挙げられる。
【0026】
本発明で用いるコーティング剤には、一般式(3)
1−Si(OR23 (3)
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、又はアクリロキシ基、メタクリロキシ基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、メルカプト基、シアノ基、塩素原子及びフッ素原子から選ばれる1個以上の基もしくは原子で置換された炭素数1〜3のアルキル基を示し、R2は、炭素数が1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルコキシアルキル基、炭素数2〜5のアシル基を示し、3個のOR2は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表わされる化合物、上記一般式(3)で表わされる化合物の加水分解縮合物、一般式(4)
Si(OR34 (4)
(式中、R3は、炭素数が1〜5のアルキル基を示し、4個のOR3は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表わされる化合物、上記一般式(4)で表わされる化合物の加水分解縮合物及びコロイダルシリカから選ばれる一種以上の化合物を含むことができる。
上式中、R1の炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
炭素数2〜4のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基等が挙げられる。
各基及び/又は原子で置換された炭素数1〜3のアルキル基のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
2、R3の炭素数が1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
2の炭素数2〜5のアルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシエチル基等が挙げられる。
2の炭素数2〜5のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等が挙げられる。
一般式(3)で表わされる化合物の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等である。
一般式(4)で表わされる化合物の具体例としては、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラn−プロピルシリケート、テトラn−ブチルシリケート、テトラsec−ブチルシリケート、テトラt−ブチルシリケート等である。
コロイダルイシリカは、上記一般式(3)で表わされる化合物、一般式(3)で表わされる化合物の加水分解縮合物、一般式(4)で表わされる化合物、一般式(4)で表わされる化合物の加水分解縮合物100質量部に対し、通常、10〜150質量部、好ましくは10〜100質量部配合して用いることが好ましい。
【0027】
コーティング剤に用いることができる溶剤としては、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸エトキシエチル等が挙げられる。
これらは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明で用いるコーティング剤は、ポリカーボネート及び水酸基含有樹脂からなる樹脂混合物を含む成形体の表面硬度を長期間持続するために、上記の一般式(3)で表わされる化合物、一般式(3)で表わされる化合物の加水分解縮合物、一般式(4)で表わされる化合物、一般式(4)で表わされる化合物の加水分解縮合物及びコロイダルシリカから選ばれる一種以上の化合物の由来分の含有量が、全固形分の75質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上である。
ケイ素分の含有量が上記範囲内で他の樹脂や金属酸化物粒子、添加剤を添加することができる。
【0029】
他の樹脂としては、アクリル系樹脂及びその変性体、メタクリル系樹脂及びその変性体等が挙げられる。
これらの樹脂としては、例えば、一般式(5)
【化7】

(式中、Zは水素原子又はメチル基、R4は炭素数2〜5のアルキレン基を示す。)
で表わされる繰り返し単位を有する化合物及び一般式(6)
【化8】

(式中、R5は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
で表わされる繰り返し単位を有する化合物である。
式中、R4の炭素数2〜5のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ペンチレン基等が挙げられる。
また、R5の炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
一般式(5)で表わされる繰り返し単位を形成する化合物の具体例としては、アクリル酸エチレングリコールモノエステル、メタクリル酸エチレングリコールモノエステル、アクリル酸ブチレングリコールモノエステル、メタクリル酸ブチレングリコールモノエステル等である。
一般式(6)で表わされる繰り返し単位を形成する化合物の具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等である。
また、アクリル系樹脂及びその変性体、メタクリル系樹脂及びその変性体と、上記一般式(3)で表わされる化合物におけるビニル基を有する化合物と反応させることにより、シロキサン結合を導入した化合物を用いることもできる。
【0030】
更に、トリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン等の紫外線吸収構造を含むモノマーを共重合した樹脂を用いることもできる。
上記モノマーとしては、一般式(7)
【化9】

(式中、R6は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を示し、R7は炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数1〜10のオキシアルキレン基を示し、R8は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。X1はエステル結合、アミド結合、エーテル結合又はウレタン結合を示し、pは0又は1を示す。)
で表わされる化合物及び一般式(8)
【化10】

(式中、R9は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を示し、R10は水素原子又は炭素数1〜6の炭素水素基を示し、R11は炭素数1〜10のアルキレン基又は炭素数1〜10のオキシアルキレン基を示し、R12は炭素数1〜8のアルキレン基、アミノ基を有する炭素数1〜8のアルキレン基又はヒドロキシ基を有する炭素数1〜8のアルキレン基を示し、R13は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。X2はエステル結合、アミド結合、エーテル結合又はウレタン結合を示し、qは0又は1、rは0又は1を示す。)
で表わされる化合物が挙げられる。
式中、R6の炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
8及びR13の炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
6の炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキソキシ基等が挙げられる。
12の炭素数1〜8のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等が挙げられる。
7及びR11の炭素数1〜10のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基等が挙げられる。
7及びR11の炭素数1〜10のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基等が挙げられる。
9のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が挙げられる。
10の炭素数1〜6の炭素水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
12のアミノ基を有する炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、アミノメチレン基、アミノエチレン基、アミノプロピレン基、アミノブチレン基、アミノへキシレン基、アミノオクチレン基などが挙げられる。
12のヒドロキシ基を有する炭素数1〜8のアルキレン基としては、炭素数1〜10のオキシアルキレン基としては、例えば、ヒドロキシメチレン基、ヒドロキシエチレン基、ヒドロキシプロピレン基、ヒドロキシブチレン基、ヒドロキシへキシレン基、ヒドロキシオクチレン基などが挙げられる。
上記紫外線吸収構造を含む樹脂としては、ヒドロキシベンゾフェノン構造を有する水分散ミクロゲル(固形分30質量%)として、ULS−383MG〔一方社油脂工業(株)製〕、又ベンゾトリアゾール構造を有する水分散ミクロゲル(固形分30質量%)として、ULS−1383MG〔一方社油脂工業(株)製〕及びULS−1385MG〔一方社油脂工業(株)製〕等がある。
また、アクリル系樹脂及びその変性体、メタクリル系樹脂及びその変性体等をプライマーとして用いることもできる。
【0031】
また、本発明で用いるコーティング剤には、芳香族系ジイソシアネート、脂肪族系ジイソシアネート、脂環式系ジイソシアネート、イソシアネート基とシラン基を有する化合物のブロック化イソシアナートを用いることができる。
芳香族系ジイソシアネート、脂肪族系ジイソシアネート、脂環式系ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
イソシアネート基とシラン基を有する化合物としては、例えば、一般式(9)
OCN−R14−Si(OR153 (10)
(式中、R14は炭素数1〜10のアルキレン基又は他の二価の有機基を示し、R15は、炭素数が1〜5のアルキル基を示し、3個のOR15は互いに同一でも異なっていてもよい。)
で表わされる化合物が挙げられる。
14の炭素数1〜10のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基等が挙げられる。
15の炭素数が1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
一般式(9)で表わされる化合物の具体例としては、γ−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン等である。
これらのブロック化イソシアナートは、上記イソシアネート系化合物とブロック化剤を反応させることにより容易に得ることができる。
ブロック化剤としては、通常、オキシム系化合物(例えば、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム)、β−ジカルボニル化合物(例えば、マロン酸ジエチル)、アルコ−ル(例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール)、フェノール類(例えば、フェーノール、クレゾール、エチルフェノール)、イミン(例えば、1,2,4−トリアゾール、3,5−ジメチルピラゾール)、アミン(例えば、ジイソプロピルアミン)、ラクタム、(例えば、カプロラクタム)等を用いることができる。
更に、本発明で用いるコーティング剤には、イソシアネート基とシラン基を有する化合物を、ブロック化せずに用いることもできる。
本発明で用いるコーティング剤には、耐紫外線性を向上させるために、金属酸化物粒子を含有させることができる。
この金属酸化物粒子としては、チタン、セリウム、亜鉛等の酸化物を挙げることができ、粒子径は、好ましくは1〜300μm、より好ましくは1〜200μmである。
更に、本発明に係るコーティング剤には、必要に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、帯電防止剤等を添加することもできる。
【0032】
本発明のポリカーボネート樹脂成形体は、上記コーティング剤を、例えば、スプレー、浸漬、カーテンフロー、ロールコーティング、バーコート、スピンコート等の方法で成形基体の表面に塗工し、硬化させてコーティング層を設けることにより得ることができる。
コーティング層の厚みは、通常0.5〜30μm、好ましくは1〜20μm、より好ましくは1.5〜15μmである。
厚みが0.5μm以上であると、十分な硬度が発現し、30μm以上であると剥離し易い。
本発明に係るコーティング剤は、通常の熱硬化型のオルガノシロキサン系コーティング剤と同様の条件で塗工し、硬化することができる。
本発明に係るコーティング剤の硬化温度としては、通常80〜130℃、好ましくは90〜130℃である。
ブロック化イソシアネート基を有する化合物を含むコーティング剤の場合、硬化温度としては、脱ブロック化に必要な温度以上で硬化させ、ブロック化剤の種類に応じ、通常100℃〜ポリカーボネートのガラス転移温度Tgを超えない範囲で硬化を行い、好ましくは100〜140℃、より好ましくは100〜130℃で硬化を行うのがよい。
【0033】
本発明のポリカーボネート樹脂成形体は、各種窓、例えば、住宅用窓、ショーウインド、車両用窓、車両用風防、遊戯機械のガラス代替、電気・電子、OA製品のハウジング、カバー、シート製品で傷つき防止等のためにコーティングを必要とする製品などに利用できる。
【実施例】
【0034】
次に、本発明を実施例及び比較例により、更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0035】
(A)成分〔ポリカーボネート(PC)〕として、PC−1;FN1900(出光興産(株)製、Mv=19,600)及びPC−2;FN2200(出光興産(株)製、Mv=21,600)を用いた。
上記ポリカーボネートの粘度平均分子量の測定及び分析は下記のようにして行なった。
〔粘度平均分子量(Mv)〕
ウベローデ型粘度計を用いて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度[η]を求め、[η]=1.23×10-5Mv0.83の式により算出した。
【0036】
(B)成分において、フェノキシ樹脂(ビスフェノールA型)として、B−1;PKHB(INCHEM社製、Mw=13,700)、B−2;PKFE(INCHEM社製、Mw=36,800)及びB−3;YP−50(東都化成社製、Mw=43,500)を用いた。
また、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型)として、B−4;エピコート1256(ジャパンエポキシレジン社製、Mw=26,600)、B−5;エピコート1010(ジャパンエポキシレジン社製、Mw=5,600)を用いた。
上記フェノキシ樹脂及びエポキシ樹脂の重量平均分子量の測定及び分析は下記のようにして行なった。
〔分子量測定〕
GPCカラム:TOSOH TSK−GEL MULTIPORE HXL−M
Shodex KF801
溶媒:THF(テトラヒドロフラン)、温度:40℃、流速:1ml/min
検出器:RI、注入濃度:0.1質量%、注入量:100μl
分子量換算:Universal Calibration法
上記条件で測定し、PS(ポリスチレン)換算で分子量を算出した後、Universal Calibration法にて、以下の式を用いPC(ポリカーボネート)換算で分子量を算出した。
logMpc=〔(1/1+apc)log(Kps/Kpc)〕+〔(1+aps)/(1+apc)〕×logMps
ここで、apc=0.70、aps=0.72、Kpc=3.85×10-4、Kps=1.22×10-4(参考:サイズ排除クロマトグラフィー、森定雄著、共立出版株式会社)である。
【0037】
コーティング剤として、下記のようにして製造したコーティング剤(C−1〜C−5)を用いた(表1参照)。
〔コーティング剤の製造〕
表1の仕込み量に従い、下記の操作によりコーティング剤を調製した。
A液:2−メトキシエタノール及び酢酸メチルを、水分散ミクロゲルULS383MG(一方社製)の存在下又は不存在下で容器に加え、攪拌しながらテトラメトキシシランを滴下し、続いて20質量%のp−トルエンスルホン酸メタノール溶液を滴下し、室温で30分攪拌した。
B液:メチルトリメトキシシラン
C液:γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン
B液に対し、A液を滴下し、室温で2時間攪拌後、2日間静置した。
C液を添加する場合は、塗布直前にC液を混合し、直ちに塗布を行った。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例1〜6及び比較例1〜2
上記ポリカーボネート及び水酸基含有樹脂を表2に示す割合で配合後、二軸押し出し機で280℃でペレット化し、120℃で4時間以上乾燥した。
その後、東芝機械製射出成形機IS150Eを用いて、成形温度270℃、金型温度80℃で、150×150×3mmのテストプレートを射出成形した。
このプレート(成形基体)に、表2に示すコーティング剤をバーコーターを用い、塗膜の厚みが4μmとなるように塗布後、120℃で1時間加熱し、コーティング剤を硬化させた。
この試料について、下記の試験法に従い、密着性及び傷付き性の評価を行なった。
これらの評価結果を表2に示す。
【0040】
〔密着性試験1:初期密着性〕
初期密着性は、コーティング剤を塗布し、硬化した後、温度23℃、相対湿度50%で24時間放置したテストプレートを用いた。
JIS K5400に準じ、1mm間隔で縦横11本、計100個の碁盤目を作り、ニチバン製セロテープを接着した後、90度方向に急激に剥がした。
被膜が剥離せずに残った桝目の数を「残存桝目数/100」で表わした。
〔密着性試験2:耐久試験後の密着性〕
下記の条件に曝した後、上記密着試験1により評価した。
(耐湿試験後の密着性)
95℃、相対湿度50%の高温高湿槽に300時間保持した後、23℃、相対湿度50%下で24時間放置し、上記密着試験を実施した。
(耐候試験後の密着性)
サンシャインウェザーメータ−(スガ試験機製、サンシャイン・スーパー・ロングライフ・ウエザーメーター、ブラックパネル63℃、相対湿度50%)を用い、500時間後に取り出し、密着試験を実施した。
〔傷つき性評価:テーパー摩耗試験〕
スチールウール#0000を用い、荷重4.9N、20mm/secで10往復し、傷の付かないものを良好とした。
【0041】
【表2】

【0042】
表2から、比較例1は、コーティング層と成形基体との初期密着度が低く、コーティング層が剥がれ、成形基体が傷つき、比較例2は、コーティング層の強度が不足し、コーティング層のみならず成形基体が傷ついた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係るポリカーボネート樹脂成形体は、硬度が高く、かつ密着性に優れたコーティング層を有するため、各種窓、例えば、住宅用窓、ショーウインド、車両用窓、車両用風防、遊戯機械のガラス代替、電気・電子、OA製品のハウジング、カバー、シート製品で傷つき防止等のためにコーティングを必要とする製品などに利用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリカーボネート99.5〜60質量%及び(B)一般式(1)
【化1】

(式中、Xは
【化2】

で表わされる二価の基、Yは水素原子又は水酸基と反応性を有する化合物の残基、nは重合度を示す。)
で表わされるフェノキシ樹脂及び一般式(2)
【化3】

(式中、X及びnは上記に同じ。)
で表わされるエポキシ樹脂から選ばれる一種以上の水酸基含有樹脂0.5〜40質量%からなる樹脂混合物を含む成形基体の表面に、オルガノシロキサン成分を含むコーティング剤により、コーティング層を設けたことを特徴とするポリカーボネート樹脂成形体。
【請求項2】
(A)成分のポリカーボネートの粘度平均分子量が、13,000〜50,000である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂成形体。
【請求項3】
(B)成分の水酸基含有樹脂の重量平均分子量が、6,000〜70,000である請求項1又は請求項2に記載のポリカーボネート樹脂成形体。
【請求項4】
コーティング剤が、一般式(3)
1−Si(OR23 (3)
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、又はアクリロキシ基、メタクリロキシ基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、メルカプト基、シアノ基、塩素原子及びフッ素原子から選ばれる1個以上の基もしくは原子で置換された炭素数1〜3のアルキル基を示し、R2は、炭素数が1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルコキシアルキル基、炭素数2〜5のアシル基を示し、3個のOR2は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表わされる化合物、上記一般式(3)で表わされる化合物の加水分解縮合物、一般式(4)
Si(OR34 (4)
(式中、R3は、炭素数が1〜5のアルキル基を示し、4個のOR3は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表わされる化合物、上記一般式(4)で表わされる化合物の加水分解縮合物及びコロイダルシリカから選ばれる一種以上の化合物を含む請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂成形体。
【請求項5】
コーティング剤において、一般式(3)で表わされる化合物、一般式(3)で表わされる化合物の加水分解縮合物、一般式(4)で表わされる化合物、一般式(4)で表わされる化合物の加水分解縮合物及びコロイダルシリカから選ばれる一種以上の化合物由来のケイ素含有成分の含有量が、全固形分の75質量%以上である請求項4に記載のポリカーボネート樹脂成形体。
【請求項6】
コーティング剤が、アクリル系樹脂及び/又はメタクリル系樹脂を含む請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂成形体。
【請求項7】
アクリル系樹脂又はメタクリル系樹脂が、主鎖中に紫外線吸収構造を含む請求項6に記載のポリカーボネート樹脂成形体。
【請求項8】
コーティング層の厚さが、0.5〜30μmである請求項1〜7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂成形体。


【公開番号】特開2006−70065(P2006−70065A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251657(P2004−251657)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】