説明

ポリカーボネート樹脂組成物及び成形体

【課題】高衝撃性、高流動性、高耐熱性及び高耐久性を有すると共に、難燃性に優れ、また、長期間使用しても、特性低下が少なく、マテリアルリサイクル性にも優れるポリカーボネート樹脂組成物、及びこのポリカーボネート樹脂組成物を用いた成形体を提供すること。
【解決手段】(A)芳香族ポリカーボネート樹脂60〜97質量%と(B)ポリ乳酸40〜3質量%からなる樹脂混合物100質量部、及び(C)窒素含有有機基を含むポリオルガノシロキサン0.2〜10質量部を含むポリカーボネート樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物及び成形体に関する。さらに詳しくは、高流動性を保有し、難燃性とのバランスに優れた、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形体に関する。さらに本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、OA機器、情報・通信機器、家庭電化機器などの電気・電子機器や、自動車分野、建築分野などに利用可能である。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート/ポリエステルアロイは、耐熱性、耐薬品性に優れており、特に自動車部品に多く用いられてきた。近年では軽量化の観点から更なる部品の薄肉化が要求されており、材料の流動性向上が求められている。さらに、製品の薄肉化に対応して、材料の高剛性化と高耐熱性及び難燃性が求められている。
ポリカーボネート/ポリエステルアロイであるポリカーボネート/ポリ乳酸アロイは、上記の特性だけでなく、ポリ乳酸が有する高流動性の特性からポリカーボネート(以下、PCと略記することがある。)の高流動化に有効である。
また、ポリ乳酸はその構造上、ポリカーボネートとアロイ化し燃焼させても有毒ガスの発生が少ないことが考えられ、環境面でも優れたポリカーボネートアロイが期待できる。
従来のPC/ポリエステルアロイは、耐熱性、耐薬品性に優れているものの、流動性に乏しく、PC樹脂の高流動化には一般的にスチレン系樹脂とのアロイや可塑剤の添加などが行なわれている(例えば、特許文献1参照)。
また、真珠光沢を有し、流動性と熱的・機械的物性の優れたPC/ポリ乳酸アロイが知られている(例えば、特許文献2参照)。このアロイは、高流動性、難燃性などにおいては向上が見られるもの、耐衝撃強度が低かったり、耐湿性や耐熱老化性といった耐久性が低く、長期の使用に問題が生じる場合もあり、さらにマテリアルリサイクル性にも乏しかった。
【0003】
さらに、PC樹脂は、自己消火性を有しているが、OA機器、情報・通信機器、家庭電化機器などの電気・電子分野においては、より高度の難燃性を要求される分野があり、各種難燃剤の添加により、その改善が図られている。
PC樹脂の難燃性を向上する手法として、ハロゲン化ビスフェノールA、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーなどのハロゲン系難燃剤が、難燃効率の点から酸化アンチモンなどの難燃助剤と共に用いられてきた。しかし、近年、安全性、廃棄・焼却時の環境への影響の観点から、ハロゲンを含まない難燃剤による難燃化方法が市場より求められている。
そのノンハロゲン系難燃剤として、有機リン系難燃剤、特に有機リン酸エステル化合物を配合したポリカーボネート樹脂組成物は、優れた難燃性を示すと共に可塑剤としての作用もあり、数多くの方法が提案されている。
【0004】
さらに、ポリカーボネート樹脂として、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を用い、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンを含有するポリカーボネート樹脂組成物からなる難燃性樹脂組成物も知られている(例えば、特許文献3参照)。この組成物は、ポリオルガノシロキサンの含有率が少量である特定範囲において優れた難燃性を示す組成物である。
また、透明性を損なうことなく難燃性を改良するために、有機アルカリ金属塩又は有機アルカリ土類金属塩、ポリオルガノシロキサンなどを使用する方法も知られている(例えば、特許文献4参照)が、いずれも、流動性をさらに向上させる必要がある。
ポリカーボネート樹脂の流動性を向上させるために、スチレン系樹脂や芳香族ポリエステル樹脂を用いた樹脂組成物が知られているが(例えば、特許文献5参照)、脂肪酸ポリエステル、さらにはポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を用いる高流動難燃ポリカーボネート樹脂組成物についての記載はない。
【0005】
【特許文献1】特公平7−68445号公報
【特許文献2】特開平7−109413号公報
【特許文献3】特開平8−81620号公報
【特許文献4】特開平8−176425号公報
【特許文献5】特開2003−147188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、高衝撃性、高流動性、高耐熱性及び高耐久性を有すると共に、難燃性に優れ、また、長期間使用しても、特性低下が少なく、マテリアルリサイクル性にも優れるポリカーボネート樹脂組成物、及びこのポリカーボネート樹脂組成物を用いた成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の割合の芳香族ポリカーボネート樹脂とポリ乳酸からなる樹脂混合物に、窒素含有有機基を含むポリオルガノシロキサンを所定の割合で配合したポリカーボネート樹脂組成物により、上記目的が達成できることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、以下のポリカーボネート樹脂組成物及び成形体を提供するものである。
1. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂60〜97質量%と(B)ポリ乳酸40〜3質量%からなる樹脂混合物100質量部、及び(C)窒素含有有機基を含むポリオルガノシロキサン0.2〜10質量部を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
2. (A)成分の芳香族ポリカーボネート樹脂が、芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体であるか又は芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含む芳香族ポリカーボネート樹脂である上記1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
3. (C)成分の窒素含有有機基を含むポリオルガノシロキサンが下記一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基から選ばれる炭素数1〜30の一価の有機基、R2は、R1又は−OR1で表されるオルガノオキシ基、R3は窒素原子を少なくとも1個含む一価の有機基である。複数のR1、R2及びR3は、それぞれにおいて同一でも異なっていてもよい。nは5〜100の整数を示す。)
で表される両末端に窒素含有有機基を有する構造のポリオルガノシロキサンである上記1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
4. 上記1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体。
【発明の効果】
【0010】
ポリ乳酸を配合することにより、PC樹脂組成物の高流動化が可能となり、この高流動化により、PC樹脂組成物の成形性が向上し、衝撃強度が増大する。また、ポリ乳酸の配合により耐湿性が向上するので、耐久性が増大し、マテリアルリサイクル性に優れるPC樹脂組成物となる。さらに、窒素含有有機基を含むポリオルガノシロキサンを配合することにより、高い難燃性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のPC樹脂組成物を構成する(A)成分の芳香族PC樹脂としては、特に制限はなく種々のものが挙げられる。通常、二価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族PC樹脂を用いることができる。すなわち、2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法あるいは溶融法、すなわち、二価フェノールとホスゲンの反応、2価フェノールとジフェニルカーボネートなどとのエステル交換法により反応させて製造されたものを使用することができる。芳香族PC樹脂は、他の熱可塑性樹脂に比べて、耐熱性、難燃性、耐衝撃性が良好であるために本発明樹脂組成物の主成分とする。
(A)成分の芳香族PC樹脂は、具体的には、一般式(2)
【0012】
【化2】

【0013】
で表わされる末端基を有するPC樹脂である。一般式(2)において、R4は炭素数1〜35のアルキル基であり、直鎖状のものでも分岐状のものでもよい。また、結合の位置は、p位、m位、o位のいずれでもよいが、p位が好ましい。aは0〜5の整数を示す。この芳香族PC樹脂の粘度平均分子量は、通常10,000〜40,000であり、耐熱性、難燃性及び耐衝撃性付与の面から、13,000〜30,000が好ましく、さらに好ましくは15,000〜24,000である。
なお、粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ型粘度計を用いて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度[η]を求め、[η]=1.23×10-5Mv0.83の式により算出した値である。
【0014】
上記一般式(2)で表される末端基を有する芳香族ポリカーボネートは、二価フェノールとホスゲン又は炭酸エステル化合物とを反応させることにより容易に製造することができる。すなわち、例えば、塩化メチレンなどの溶媒中において、トリエチルアミン等の触媒と特定の末端停止剤の存在下、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応により、又は二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応等によって製造される。
ここで、二価フェノールとしては、下記一般式(3)
【0015】
【化3】

【0016】
で表される化合物が挙げられる。ここで、R5及びR6は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を示し、同一でも異なっていてもよい。Z1は単結合、炭素数1〜20のアルキレン基又は炭素数2〜20のアルキリデン基、炭素数5〜20のシクロアルキレン基又は炭素数5〜20のシクロアルキリデン基、あるいは−SO2−、−SO−、−S−、−O−、−CO−結合を示す。好ましくは、イソプロピリデン基である。b及びcは0〜4の整数で好ましくは0である。
【0017】
上記一般式(3)で表される二価フェノールとしては、4,4'−ジヒドロキシジフェニル;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド;ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等を挙げることができる。なかでも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が好ましい。これらの二価フェノールはそれぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
二価フェノールとしては、上記二価フェノール一種を用いたホモポリマーでも、二種以上を用いたコポリマーであってもよい。さらに、多官能性芳香族化合物を上記二価フェノールと併用して得られる熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネートであってもよい。
【0018】
炭酸エステル化合物としては、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネートやジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネートが挙げられる。
末端停止剤としては、一般式(2)で表される末端基が形成されるフェノール化合物、すなわち、下記一般式(4)で表されるフェノール化合物を使用すればよい。
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、R4は炭素数1〜35のアルキル基を示し、aは0〜5の整数を示す。)
このフェノール化合物としては、フェノール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、p−ノニルフェノール、ドコシルフェノール、テトラコシルフェノール、ヘキサコシルフェノール、オクタコシルフェノール、トリアコンチルフェノール、ドトリアコンチルフェノール、テトラトリアコンチルフェノール、p−tert−ペンチルフェノール等を挙げることができる。これらは一種でもよく、二種以上を混合したものでもよい。これらの中では、環境面から、ハロゲン原子を含まない化合物が好ましい。また、これらのフェノール化合物には、必要に応じて他のフェノール化合物等を併用しても差し支えない。
なお、上記の方法によって製造される芳香族ポリカーボネートは、実質的に分子の片末端又は両末端に上記一般式(2)で表される末端基を有するものである。
【0021】
(A)成分の芳香族PC樹脂としては、芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体(以下、芳香族PC−POS共重合体と略記する場合もある。)であるか又は芳香族PC−POS共重合体を含む芳香族PC樹脂であることが、耐熱性、難燃性及び耐衝撃性の向上の点から好ましい。この観点から芳香族PC−POS共重合体としては、ポリオルガノシロキサンがポリジメチルシロキサン(以下、PDMSと略記する場合もある。)であるPC−PDMS共重合体が好ましく、PDMSの鎖長(n)が15〜350である芳香族PC−PDMS共重合体がより好ましく、PDMSの鎖長(n)が30〜150の芳香族PC−PDMS共重合体が難燃性の点からさらに好ましい。
芳香族PC−POS共重合体におけるポリオルガノシロキサン部(セグメント)は、芳香族PC−POS共重合体基準で0.2〜10質量%であることが好ましく、(A)成分と(B)成分の合計量基準で0.1〜5質量%であることが好ましい。
芳香族PC−POS共重合体は、下記一般式(5)
【0022】
【化5】

【0023】
(式中、R7は炭素数1〜35のアルキル基を示し、dは0〜5の整数を示す。)
で表わされる末端基を有し、例えば、特開昭50−29695号公報、特開平3−292359号公報、特開平4−202465号公報、特開平8−81620号公報、特開平8−302178号公報及び特開平10−7897号公報に開示されている共重合体を挙げることができ、R4で示される炭素数1〜35のアルキル基は、直鎖状のものでも分岐状のものでもよく、結合の位置は、p位、m位、o位のいずれでもよいが、p位が好ましい。
芳香族PC−POS共重合体として、好ましくは、一般式(6)で表される構造単位からなるポリカーボネート部と一般式(7)で表される構造単位からなるポリオルガノシロキサン部(セグメント)を分子内に有する共重合体を挙げることができる。
【0024】
【化6】

【0025】
ここで、R8及びR9は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を示し、同一でも異なっていてもよい。R10〜R13は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を示し、好ましくはメチル基である。R10〜R13はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。R14は脂肪族又は芳香族を含む二価の有機残基を示し、好ましくは、o−アリルフェノール残基、p−ヒドロキシスチレン残基またはオイゲノール残基である。
2は単結合、炭素数1〜20のアルキレン基又は炭素数2〜20のアルキリデン基、炭素数5〜20のシクロアルキレン基又は炭素数5〜20のシクロアルキリデン基、あるいは−SO2−、−SO−、−S−、−O−、−CO−結合を示す。好ましくは、イソプロピリデン基である。e及びfは0〜4の整数で好ましくは0である。mは1〜500の整数で、好ましくは5〜300、より好ましくは15〜200、さらに好ましくは30〜150である。
【0026】
芳香族PC−POS共重合体は、例えば、予め製造されたポリカーボネート部を構成するポリカーボネートオリゴマー(以下、PCオリゴマーと略称する。)と、ポリオルガノシロキサン部(セグメント)を構成する末端にo−アリルフェノール基、p−ヒドロキシスチレン基、オイゲノール残基等の反応性基を有するポリオルガノシロキサンとを、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等の溶媒に溶解させ、二価フェノールの苛性アルカリ水溶液を加え、触媒として、第三級アミン(トリエチルアミン等)や第四級アンモニウム塩(トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等)を用い、一般式(8)
【0027】
【化7】

【0028】
(式中、R7は炭素数1〜35のアルキル基を示し、dは0〜5の整数を示す。)
で表されるフェノール化合物からなる一般の末端停止剤の存在下、界面重縮合反応することにより製造することができる。このフェノール化合物としては、上記一般式(4)の例示化合物と同様のものが挙げられる。
芳香族PC−POS共重合体の製造に使用されるPCオリゴマーは、例えば、塩化メチレンなどの溶媒中で、二価フェノールとホスゲン又は炭酸エステル化合物等のカーボネート前駆体とを反応させることによって容易に製造することができる。ここで、二価フェノールとしては、上記一般式(3)の例示化合物と同様のものを用いることができ、なかでも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が好ましい。
上記PCオリゴマーは、例えば、塩化メチレン等の溶媒中において、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応により、又は二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応等によって製造される。
【0029】
また、炭酸エステル化合物としては、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネートやジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネートを挙げることができる。
芳香族PC−POS共重合体の製造に供されるPCオリゴマーは、上記の二価フェノール一種を用いたホモポリマーであってもよく、又二種以上を用いたコポリマーであってもよい。さらに、多官能性芳香族化合物を上記二価フェノールと併用して得られる熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネートであってもよい。
その場合、分岐剤(多官能性芳香族化合物)として、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α',α''−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1−[α−メチル−α−(4'−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α',α'−ビス(4''−ヒドロキシルフェニル)エチル]ベンゼン、フロログルシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)等を使用することができる。
【0030】
芳香族PC−POS共重合体は、上記のようにして製造することができるが、一般に芳香族ポリカーボネートが副生し、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含む芳香族ポリカーボネートとして製造される。
なお、上記の方法によって製造される芳香族PC−POS共重合体は、実質的に分子の片方又は両方に上記一般式(5)で表される芳香族末端基を有するものである。
【0031】
本発明のPC樹脂組成物で用いる(B)成分のポリ乳酸は、PC樹脂組成物に高流動性を付与することにより、外観の良好な成形体を得るために配合する。(B)成分のポリ乳酸は、通常ラクタイドと呼ばれる乳酸の環状二量体から開環重合により合成され、その製造方法は、米国特許第1,995,970号明細書、米国特許第2,362,511号明細書、米国特許第2,683,136号明細書等に開示されている。
開環重合によらず、直接脱水重縮合によりポリ乳酸を製造する場合には、乳酸類を、好ましくは有機溶媒、特に、フェニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水縮合し、特に好ましくは、共沸により留出した溶媒から水を除き、実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻す方法によって重合することにより、本発明に適した重合度のポリ乳酸が得られる。
原料の乳酸類としては、L−及びD−乳酸、又はその混合物、乳酸の二量体であるラクタイドのいずれも使用することができる。
ポリ乳酸の製造に際し、適当な分子量調節剤、分岐剤、その他の改質剤などを配合することもできる。また、乳酸類は、単独又は二種以上を使用することができ、さらに得られたポリ乳酸を二種以上混合し使用してもよい。
【0032】
本発明で用いる(B)成分のポリ乳酸としては、天然物由来のポリ乳酸が、環境面(CO2の低減が可能)、流動性及び熱的・機械的物性の点で優れている。ポリ乳酸は分子の大きいものが好ましく、重量平均分子量3万以上のものがさらに好ましい。
本発明のPC樹脂組成物において、(A)成分の芳香族PC樹脂と(B)成分のポリ乳酸との含有割合は、質量比で97:3〜60:40の範囲であることを要し、好ましくは95:5〜60:40の範囲、より好ましくは95:5〜70:30の範囲である。
(B)成分の含有割合が3質量%以上であると、配合効果が得られ、また、40質量%以下であると、本発明のPC樹脂組成物における、耐湿性、耐衝撃性、難燃性及び耐熱性が良好となる。
【0033】
本発明のPC樹脂組成物で用いる(C)成分の窒素含有有機基を含むポリオルガノシロキサンとしては、例えば、下記一般式(1)
【化8】

【0034】
で表される両末端に窒素含有有機基を有する構造のポリオルガノシロキサンが挙げられる。上記一般式(1)において、R1は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基から選ばれる炭素数1〜30の一価の有機基、R2は、R1又は−OR1で表されるオルガノオキシ基、R3は窒素原子を少なくとも1個含む一価の有機基である。複数のR1、R2及びR3は、それぞれにおいて同一でも異なっていてもよい。nは5〜100の整数を示す。
1で示されるアルキル基は炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜15のものであり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基及び各種ドデシル基などが挙げられる。R1で示されるシクロアルキル基は、炭素数3〜30のものであり、例えば、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基などが挙げられる。
1で示されるアリール基は炭素数6〜30、好ましくは炭素数6〜15のものであり、例えば、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基及び2−ヒドロキシエトキシフェニル基などが挙げられる。
1で示されるアラルキル基は炭素数7〜30、好ましくは炭素数7〜15のものであり、例えば、アラルキル基としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルイソプロピル基、2−フェニルイソプロピル基、フェニル−t−ブチル基、α−ナフチルメチル基、1−α−ナフチルエチル基、2−α−ナフチルエチル基、1−α−ナフチルイソプロピル基、2−α−ナフチルイソプロピル基、β−ナフチルメチル基、1−β−ナフチルエチル基、2−β−ナフチルエチル基、1−β−ナフチルイソプロピル基及び2−β−ナフチルイソプロピル基などが挙げられる。
【0035】
2で示される、R1又は−OR1で表されるオルガノオキシ基のR1の具体例としては、上述したものと同様のものが挙げられる。R3で示される窒素原子を少なくとも1個含む一価の有機基としては、アミノ基、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、N−(β−アミノエチル)イミノプロピル基、アミノフェノキシメチル基などが挙げられる。
上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンとしては、R1がメチル基、R2がメチル基とエトキシ基及びR3がアミノプロピル基であるポリオルガノシロキサン、R1がメチル基とフェニル基、R2がメチル基とメトキシ基及びR3がアミノプロピル基であるポリオルガノシロキサンなどが挙げられる。
この(C)成分は、得られるPC樹脂組成物の耐衝撃性や難燃性をさらに向上させる作用を有している。(C)成分の窒素含有有機基を含むポリオルガノシロキサンの配合量は、(A)成分と(B)成分の合計量100質量部に対して0.2〜10質量部であることを要し、好ましくは0.3〜8質量部、さらに好ましくは2〜6質量部である。(C)成分の配合量が0.2質量部以上であると、耐衝撃性や難燃性が良好となり、また、(C)成分の配合量が10質量部以下であると本発明のPC樹脂組成物の耐熱性が良好である。
【0036】
本発明のPC樹脂組成物は、上記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分と、さらに必要に応じてその他の成分を配合し、溶融混錬することによって得ることができる。
この配合、混錬は、通常用いられている方法、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等を用いる方法により行うことができる。
なお、溶融混錬に際しての加熱温度は、通常220〜260℃の範囲で選ばれる。
本発明は、上記PC脂組成物からなる成形体をも提供する。本発明のPC樹脂組成物の成形温度は、通常240〜320℃の範囲で選ばれる。
【実施例】
【0037】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
製造例1[PC−PDMS1;PC−PDMS共重合体の製造]
(1)PCオリゴマーの製造
400Lの5質量%水酸化ナトリウム水溶液に、60kgのビスフェノールAを溶解させ、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。次いで、室温に保持したこのビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を138L/時間の流量で、また、塩化メチレンを69L/時間の流量で、内径10mm、管長10mの管型反応器にオリフィス板を通して導入し、これにホスゲンを並流して10.7kg/時間の流量で吹き込み、3時間連続的に反応させた。ここで用いた管型反応器は二重管となっており、ジャケット部分には冷却水を通して反応液の排出温度を25℃に保った。また、排出液のpHは10〜11となるように調整した。
このようにして得られた反応液を静置することにより、水相を分離、除去し、塩化メチレン相(220L)を採取して、PCオリゴマー(濃度317g/L)を得た。ここで得られたPCオリゴマーの重合度は2〜4であり、クロロホーメイト基の濃度は0.7モル/Lであった。
(2)反応性PDMSの製造
1,483gのオクタメチルシクロテトラシロキサン、96gの1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン及び35gの86質量%硫酸を混合し、室温で17時間攪拌した。その後、オイル相を分離し、25gの炭酸水素ナトリウムを加え1時間攪拌した。
濾過した後、150℃、3torr(400Pa)で真空蒸留し、低沸点物を除きオイルを得た。60gの2−アリルフェノールと0.0014gの塩化白金−アルコラート錯体としてのプラチナとの混合物に、上記で得られたオイル294gを90℃の温度で添加した。この混合物を90〜115℃の温度に保ちながら3時間攪拌した。
生成物を塩化メチレンで抽出し、80質量%の水性メタノールで3回洗浄し、過剰の2−アリルフェノールを除いた。その生成物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で115℃に加熱して溶剤を留去した。得られた末端フェノールPDMSは、NMRの測定により、ジメチルシラノオキシ単位の繰り返し数は30であった。
【0038】
(3)ポリカーボネート−ポリジメチルシロキサンビスフェノールAポリカーボネート樹脂(PC−PDMS共重合体)の製造
上記(2)で得られた反応性PDMS182gを塩化メチレン2Lに溶解させ、上記(1)で得られたPCオリゴマー10Lを混合した。そこへ、水酸化ナトリウム26gを水1Lに溶解させたものと、トリエチルアミン5.7mlを加え、500rpmで室温にて1時間攪拌し、反応させた。
反応終了後、上記反応系に、5.2質量%の水酸化ナトリウム水溶液5LにビスフェノールA600gを溶解させたもの、塩化メチレン8L及びp−tert−ブチルフェノ−ル96gを加え、500rpmで室温にて2時間攪拌し、反応させた。
反応後、塩化メチレン5Lを加え、さらに、水5Lで水洗、0.03モル/L水酸化ナトリウム水溶液5Lでアルカリ洗浄、0.2モル/L塩酸5Lで酸洗浄、及び水5Lで水洗2回を順次行い、最後に塩化メチレンを除去し、フレーク状のPC−PDMS共重合体を得た。得られたPC−PDMS共重合体を120℃で24時間真空乾燥した。粘度平均分子量は17,000であり、PDMS含有率は4.0質量%であった。なお、粘度平均分子量及びPDPS含有率は下記の方法により求めた。
【0039】
(a)粘度平均分子量(Mv)
ウベローデ型粘度計にて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度[η]を求めた後、次式にて算出した。
[η]=1.23×10-5Mv0.83
(b)PDMS含有率
1H−NMRで1.7ppmに見られるビスフェノールAのイソプロピルのメチル基のピークと、0.2ppmに見られるジメチルシロキサンのメチル基のピークとの強度比を基に求めた。
【0040】
製造例2[PC−PDMS2;PC−PDMS共重合体の製造]
製造例1(2)において、2−アリルフェノールの使用量を15g、及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの使用量を37.6gとした以外は、製造例1(2)と同様にして末端フェノールPDMSを得た。得られた末端フェノールPDMSは、NMRの測定により、ジメチルシラノオキシ単位の繰り返し数は120であった。
この末端フェノールPDMSを用い、製造例1(3)と同様にしてPC−PDMS共重合体を得、同様の測定を行ったところ、粘度平均分子量は17,000であり、PDMS含有率は4.0質量%であった。
【0041】
製造例3[ポリオルガノシロキサンAの製造:両末端アミノ変性PDMS]
撹拌機、還流冷却器、温度計を備えた5リットルのガラスフラスコ中に1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン248g(1mol)及びオクタメチルシクロテトラシロキサン4440g(15mol)を混合し、アルカリ触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの10質量%メタノール溶液13gを添加後、90℃で10時間攪拌した。反応物を150℃まで加熱し3時間加熱後、140℃減圧下で低沸点物を除き、濾過することにより無色透明のオイルを得た。この生成物の粘度は100mm2/s(25℃)、屈折率は1.4067(25℃)であった。得られた両末端アミノ変性PDMSは、アミン当量測定による、ジメチルシラノオキシ単位の繰り返し数は約60であった。
なお、粘度の測定条件はJIS Z 8803に準拠した。屈折率はアッベ屈折率計(株式会社アタゴ製)を用いて測定した。アミン当量は自動滴定装置TS−980(平沼産業株式会社製)を用いて測定した。
【0042】
製造例4[ポリオルガノシロキサンBの製造:側鎖アミノ変性PDMS]
撹拌機、還流冷却器、温度計を備えた2リットルのガラスフラスコ中に下記一般式(9)
【0043】
【化9】

【0044】
(式中、nは3〜8の整数を示す。)
で表される3−アミノプロピルメチルシロキサン環状物117g、オクタメチルシクロテトラシロキサン740g(10mol)及び1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシロキサン32.4gを混合し、アルカリ触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの10%メタノール溶液2.6gを添加後、80℃で10時間攪拌した。反応物を150℃まで加熱し3時間加熱後、140℃減圧下で低沸点物を除き、濾過することにより無色透明のオイルを得た。この生成物の粘度は70mm2/s(25℃)、屈折率は1.4150(25℃)であった。得られた側鎖アミノ変性PDMSは、アミン当量測定による、ジメチルシラノオキシ単位の繰り返し数が約50、3−アミノプロピルメチルシラノオキシ単位の繰り返し数が約5であった。粘度、屈折率、アミン当量については製造例3と同様に測定した。
【0045】
製造例5[ポリオルガノシロキサンCの製造]
撹拌機、還流冷却器、温度計を備えた2リットルのガラスフラスコ中に3−アミノプロピルトリエトキシシラン356g(1.6mol)、α,ω―ジヒドロキシポリジメチルシロキサン1200g(0.4mol)を混合し、115℃で4時間攪拌した。反応物を110℃、4kPa下で低沸点物を除き、濾過することで無色透明のオイルを得た。この生成物の粘度は64mm2/s(25℃)、屈折率は1.4076(25℃)であった。得られた両末端アミノPDMSは、アミン当量測定による、ジメチルシラノオキシ単位の繰り返し数は約40であった。粘度、屈折率、アミン当量については製造例3と同様に測定した。
【0046】
製造例6[ポリオルガノシロキサンDの製造]
撹拌機、還流冷却器、温度計を備えた2リットルのガラスフラスコ中に3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン308g(1.6mol)、α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン1200g(0.4mol)を混合し、115℃で4時間攪拌した。反応物を110℃、4kPa下で低沸点物を除き、濾過することで無色透明のオイルを得た。この生成物の粘度は67mm2/s(25℃)、屈折率は1.4074(25℃)であった。得られた両末端アミノPDMSは、アミン当量測定による、ジメチルシラノオキシ単位の繰り返し数は約40であった。粘度、屈折率、アミン当量については製造例3と同様に測定した。
【0047】
製造例7[ポリオルガノシロキサンEの製造:両末端エポキシ変性PDMS]
撹拌機、還流冷却器、温度計を備えた2リットルのガラスフラスコ中にアリルグリシジルエーテル62.7g、及び溶媒としてトルエン375gを混合し、付加反応触媒としてビニルシロキサン配位塩化白金酸の1質量%トルエン溶液を0.23g添加後、80〜90℃でα、ω−ジヒドロジメチルポリシロキサン(重合度40)737g(1mol)を3時間かけて滴下した。反応物を90℃で3時間熟成後、赤外線吸収スペクトルにてSi−Hの吸収がないことを確認し、100℃減圧下で低沸点物を除き、濾過することにより淡黄色透明のオイルを得た。この生成物の粘度は60mm2/s(25℃)、屈折率は1.4110(25℃)であった。得られた両末端エポキシ変性PDMSは、エポキシ当量測定による、ジメチルシラノオキシ単位の繰り返し数が約40であった。粘度、屈折率については製造例3と同様に測定した。エポキシ当量については自動滴定装置TS−980(平沼産業株式会社製)を用いて測定した。
【0048】
実施例1〜6及び比較例1〜5
(A)〜(C)成分を表1に示す配合割合で、及び安定剤としてリン系酸化防止剤(旭電化社製、商品名PEP36)及びフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガノックス1076)をそれぞれ(A)〜(C)成分の合計100質量部に対して0.1質量部配合し、ベント式二軸押出成形機(機種名:TEM35、東芝機械社製)に供給し、260℃で溶融混錬し、ペレット化した。
得られたペレットを80℃で10時間乾燥した後、成形温度260℃、金型温度80℃で射出成形して、試験片を作製した。得られた試験片を用いて、それぞれの性能を下記の各種評価試験によって評価した。その評価結果を表1に示す。
【0049】
用いた配合成分及び性能評価方法を下記に示す。
[配合成分]
(A)成分
PC:芳香族ポリカーボネート樹脂;タフロンA1900(出光興産社製、粘度平均分子量=19,500)
PC−PDMS1:粘度平均分子量=17,000、PDMS含有量=4質量%、PDMS鎖長(n)=30(製造例1参照)
PC−PDMS2:粘度平均分子量=17,000、PDMS含有量=4質量%、PDMS鎖長(n)=120(製造例2参照)
(B)成分
ポリ乳酸1:レイシアH−400(三井化学社製、分子量MFR(190℃、21.2N)=3)
ポリ乳酸2:レイシアH−100(三井化学社製、分子量MFR(190℃、21.2N)=8)
(C)成分
シリコーンA:両末端アミノシリコーン(製造例3参照)
シリコーンB:側鎖アミノシリコーン(製造例4参照)
シリコーンC:両末端アミノシリコーン(製造例5参照)
シリコーンD:製造例6参照
シリコーンE:両末端エポキシシリコーン(製造例7参照)
【0050】
[性能評価方法]
(1)アイゾット(IZOD)衝撃強度
ASTM D256に準拠し、試験片として肉厚3.18mmのものを用い、23℃において測定した。
(2)熱歪温度(HDT)(高荷重)
JIS K 7191−1996に準拠し、荷重1.83MPaで測定した。この値は耐熱性の目安となるものであり、樹脂組成物の使用目的にもよるが、通常100℃以上が実用上好ましい。
(3)流動性(SFL)
成形温度260℃、金型温度80℃、肉厚2mm、幅10mm、射出圧力7.85MPaで測定した。
(4)酸素指数(LOI)
JIS K 7201に準拠して測定した。
【0051】
【表1】

【0052】
表1から、実施例1〜6のPC樹脂組成物は、高耐衝撃性、高難燃性及び高流動性を有することがわかる。また、芳香族PC樹脂としてPC−PDMSを含むものを使用すると耐衝撃性や難燃性が増大する。これに対して、芳香族PC樹脂とポリ乳酸の配合比率が請求項1の範囲外であると、流動性や耐熱性が低いことが、比較例4、5の評価結果からわかる。また、ポリオルガノシロキサンの配合量が請求項1の範囲外であると、衝撃強度、難燃性又は耐熱性が低いことが比較例1、2の評価結果からわかる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、高衝撃性、高流動性、高耐熱性及び高耐久性を有すると共に、難燃性に優れ、また、長期間使用しても、特性低下が少なく、マテリアルリサイクル性にも優れるPC樹脂組成物を得ることができ、このPC樹脂組成物は、OA機器、情報・通信機器、家庭電化機器などの電気・電子機器や、自動車分野、建築分野などに利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂60〜97質量%と(B)ポリ乳酸40〜3質量%からなる樹脂混合物100質量部、及び(C)窒素含有有機基を含むポリオルガノシロキサン0.2〜10質量部を含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分の芳香族ポリカーボネート樹脂が、芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体であるか又は芳香族ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体を含む芳香族ポリカーボネート樹脂である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
(C)成分の窒素含有有機基を含むポリオルガノシロキサンが下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基から選ばれる炭素数1〜30の一価の有機基、R2は、R1又は−OR1で表されるオルガノオキシ基、R3は窒素原子を少なくとも1個含む一価の有機基である。複数のR1、R2及びR3は、それぞれにおいて同一でも異なっていてもよい。nは5〜100の整数を示す。)
で表される両末端に窒素含有有機基を有する構造のポリオルガノシロキサンである請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体。

【公開番号】特開2008−37965(P2008−37965A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212465(P2006−212465)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】