説明

ポリクロロプレンラテックス組成物およびその製造方法並びにそれを用いた水性接着剤組成物

【課題】 初期接着力や常態接着力、耐水性に優れ、かつ機械的安定性の良好な水性接着剤用のポリクロロプレンラテックス組成物とその製造方法、それを用いた水性接着剤組成物を提供する。
【解決手段】 クロロプレン単量体100質量部またはクロロプレン及びクロロプレンと共重合可能な単量体の合計100質量部を、特定構造を有するノニオン乳化剤0.5〜15質量部の存在下に0〜20℃で乳化共重合したポリクロロプレンラテックス組成物およびこれを用いた水性接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリクロロプレンラテックス組成物およびその製造方法、それを用いた水性接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリクロロプレンをベースとした接着剤は有機溶剤型が主流であった。しかし、有機溶剤型の接着剤は環境汚染などの観点から、脱有機溶剤化の要求が高まっている。
【0003】
脱有機溶剤化の手段としては、有機溶剤型の接着剤をラテックス接着剤に代替する方法が有効と考えられており、各種ポリマーを使用したラテックス接着剤の検討が盛んに行われている。
【0004】
ポリクロロプレンラテックスを利用した接着剤は、接合する被着体の双方に塗布し、これらの接着剤層を乾燥した後に貼り合わせることにより、貼り合わせ直後から高い接着力を発現するという特徴を有している。この特徴から、水性コンタクト型接着性としての利用を期待されている反面、有機溶剤型の接着剤と比較して初期接着強度、耐水性等の接着性能が劣り、この改良が課題とされてきた。
【0005】
ポリクロロプレンラテックスを利用した接着剤としては、クロロプレン単量体を不飽和カルボン酸、ポリビニルアルコール、連鎖移動剤の存在下で重合して得られるポリクロロプレンラテックス接着剤の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平06−287360号公報(第2頁;請求項1、第3〜6頁;製造例1〜8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
初期接着力や常態接着力、耐水性に優れ、かつ機械的安定性の良好な水性接着剤用のポリクロロプレンラテックス組成物とその製造方法、それを用いた水性接着剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特定のノニオン乳化剤の存在下で、0〜20℃で乳化重合して得られたポリクロロプレンラテックス組成物及びこれを用いた水性接着剤組成物により、上記課題を解決することができる。
【発明の効果】
【0008】
ポリクロロプレンラテックス組成物は、初期接着力や常態接着力、耐水性に優れかつ機械的安定性の良好な水性接着剤組成物を得ることができる。得られた水性接着剤組成物は、合板などの木材接着、紙材、布、ジャージ、皮製品、靴部品、合成樹脂、発泡樹脂シート、鋼板、セメント基質等の接着に特に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
クロロプレン単量体は、2−クロロ−1,3ブタジエンである。クロロプレンと共重合可能な単量体は、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸、アクリル酸のエステル類、メタクリル酸のエステル類、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられ必要に応じて2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、接着強度を向上させる効果が高いという観点からエチレン性不飽和カルボン酸単量体を用いることが好ましい。
【0010】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸等が挙げられ、必要に応じて2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸を使用することが好ましく、特にメタクリル酸を使用することが好ましい。
【0011】
クロロプレンと共重合可能な単量体を添加する際には、全単量体中に10質量%以下の範囲で添加することが好ましく、5質量%以下の範囲がより好ましい。添加量が10質量%を越える場合には、水性接着剤組成物の接着耐水性が悪くなる場合がある。
【0012】
本発明におけるノニオン乳化剤は、一般式(化3)で表される化合物である。
【0013】
【化3】

(式中、Rは置換していてもよいベンゼン環およびナフタレン環から選ばれた少なくとも1個以上を有するアリール基を示す。Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示す。nは1〜200の整数を示す。)
【0014】
置換基Rの具体例としては、例えば、次の(I)〜(XIII)で表される構造のものがあげられる。また、これらの置換基は混合された物であってもよい。
【化4】

【化5】

【化6】

【0015】
これらの構造式中、R、R、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を示す。Rは炭素数1〜6のアルキル基またはアルケニル基、もしくは水酸基を示す。
【0016】
一般式(化3)で表されるノニオン乳化剤は、例えば、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルクレジルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルクレジルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルクレジルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルヒドロキシフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルヒドロキシフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルヒドロキシフェニルエーテル、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンヒドロキシナフチルエーテル、ポリオキシエチレンクレジルナフチルエーテル等があり、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル及びポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルが好ましい。
【0017】
これらのノニオン乳化剤においても、HLB値が9以上のものがよく、好ましくは12以上18以下の範囲のものがよい。この範囲を外れると単量体の重合が安定に行われなくなる場合がある。ノニオン乳化剤を2種類以上併用する場合は、その平均値が前記の範囲にあることが好ましい。
【0018】
ノニオン乳化剤のHLB値とは、米国ICI社のグリフィン氏により考案された親水性、疎水性のバランスを示す指標であり、一般式(数1)で算出される1〜20の数値である。HLB値が高いほど親水性が高いことを表し、HLB値が低いほど親油性が高いことを表す。
【0019】
【数1】

【0020】
ノニオン乳化剤の添加量は、単量体100質量部に対して0.5〜15質量部であり、好ましくは、1〜7質量部がよい。0.5質量部に満たない場合は、ポリクロロプレンラテックス組成物の重合が困難になる恐れがあり、15質量部を越えると、水性接着剤組成物の接着耐水性が悪くなる場合がある。
【0021】
ポリクロロプレンラテックス組成物には、貯蔵安定剤を用いることができる。貯蔵安定剤は、ポリクロロプレンラテックス組成物の貯蔵安定性をよりよくする目的で使用されるものであり、芳香族スルフォン酸ホルマリン縮合物の金属塩が用いられる。芳香族スルフォン酸ホルマリン縮合物の金属塩としては、例えば、β−ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩等があり、そのうちで好ましいのはナトリウム塩またはカリウム塩が好適に用いられる。
【0022】
貯蔵安定剤の添加量は、クロロプレン単量体100質量部またはクロロプレンおよびクロロプレンと共重合可能な単量体の合計100質量部に対して0.05〜0.5質量部、好ましくは0.08〜0.4質量部である。0.5質量部を越えて貯蔵安定剤を配合してしまうと、ポリクロロプレンラテックス組成物の機械的安定性が悪くなる恐れがある。
【0023】
ポリクロロプレンラテックス組成物は、クロロプレン単量体または、クロロプレン及びクロロプレンと共重合可能な単量体を、上記のノニオン乳化剤、触媒、連鎖移動剤その他の添加剤等の存在下、水溶液中で乳化重合して得られるものである。この乳化重合に使用される純水の量は特に限定するものではないが、通常、クロロプレン単量体100質量部または、クロロプレン及びクロロプレンと共重合可能な単量体100質量部あたり50〜300質量部を使用すればよい。
【0024】
触媒は、例えば、過硫酸カリウム等の無機酸化物、ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類等の有機過酸化物等を挙げることができる。これらの触媒の中でも、安定した重合を行う上で過硫酸カリウムを使用することが好ましい。触媒の濃度は、0.1〜5質量%の水溶液で使用することが好ましい。また、触媒の活性を高めるために、亜硫酸ソーダ、亜硫酸水素ソーダ、亜硫酸カリウム、酸化鉄(II)、アントラキノンβスルフォン酸ソーダ、フォルムアミジンスルフォン酸、L−アスコルビン酸等を添加してもよい。
【0025】
連鎖移動剤は、クロロプレン重合体の製造に一般的に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、n−ドデシルメルカプタンやt−ドデシルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドやジエチルキサントゲンジスルフィド等のジアルキルキサントゲンジスルフィド類、ヨードホルム等の公知の連鎖移動剤を使用することができる。
【0026】
重合温度は、0〜20℃の範囲であることが必要であり、5〜18℃の範囲で重合を行うことが好ましい。20℃を越えると水性接着剤組成物の接着強度が低くなる場合がある。
【0027】
ポリクロロプレンラテックス組成物のトルエン不溶のゲル分含有率は、特に制限されるものではなく、要求特性に応じて任意に変えることができる。水性接着剤組成物の初期接着強度がより重視される場合は、ゲル含有率を60質量%以下に抑えることが好ましい。水性接着剤組成物の耐熱性能が重視される場合は、ゲル含有率を20質量%以上とすることが好ましい。
【0028】
ポリクロロプレンラテックス組成物のゲル分含有率は、乳化重合を行う際の、連鎖移動剤の使用とその使用量、重合温度及び重合率等を制御することによって任意に制御することができる。
【0029】
ポリクロロプレンラテックス組成物の最終重合率は、60質量%以上とすることが好ましく、80質量%以上とすることがより好ましい。
【0030】
ポリクロロプレンラテックス組成物の固形分濃度は、40〜65質量%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは45〜60質量%の範囲である。より高い固形分濃度とすることにより、乾燥速度が速く、初期接着性により優れたラテックスとなる。なお固形分濃度については、重合時のモノマーと水の比率によっても調整できるが、重合後に濃縮を行い調整することが可能である。濃縮の方法としては、減圧濃縮等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0031】
ポリクロロプレンラテックス組成物の重合率を調整するためには、目的とする重合率に達した時に、重合禁止剤を添加して重合を停止させればよい。重合禁止剤としては、例えば、チオジフェニルアミン、ジエチルハイドロキシルアミン、ハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ハイドロキノンメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2−メチレンビス(6−t−4−メチルフェノール)、4,4−ブチレンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等を使用することができる。
【0032】
ポリクロロプレンラテックス組成物には、PHを調整するために、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の塩基性物質、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、りん酸3ナトリウム、りん酸水素2ナトリウム、りん酸3カリウム、りん酸水素2カリウム、クエン酸3カリウム、クエン酸水素2カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、4硼酸ナトリウム等の弱酸塩類を添加してもよい。
【0033】
PH調整剤の添加方法は特に制限を受けるものではなく、PH調整剤粉末を直接添加または水で任意の割合に希釈して添加することができる。PH調整剤の添加するタイミングも特に限定するものでは無く、重合開始前や重合終了後に添加することができる。
【0034】
ポリクロロプレンラテックス組成物には、アニオン乳化剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルや1:2モル型脂肪族アルカノールアミド等のノニオン乳化剤、ポバール等の分散助剤を添加することができる。添加するタイミングとしては特に限定するものでは無く、重合開始前、途中または終了後に添加することが可能である。
【0035】
水性接着剤組成物は、ポリクロロプレンラテックス組成物と、粘着付与樹脂や金属酸化物等を混合して得られるものである。混合装置は特に限定されるものではなく、スリーワンモーター、ホモジナイザーメディアミル、コロイドミル等の公知の装置を使用できる。
【0036】
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン酸エステル樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、テルペンフェノール樹脂やロジン酸エステル樹脂のエマルジョンが水性接着剤組成物の初期接着力や耐水性を発現させる上で好ましい。
【0037】
粘着付与樹脂の添加量(固形分換算)は、ポリクロロプレンラテックス組成物の固形分100質量部に対して、10〜100質量部が好ましく、20〜70質量部が特に好ましい。100質量部を越えて粘着付与樹脂を添加してしまうと、得られる水性接着剤組成物の皮膜形成が阻害される恐れがある。
【0038】
金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム及び酸化鉄等を挙げることができる。酸化亜鉛、酸化チタンが接着剤組成物の耐水性を向上させる上で好ましく、特に酸化亜鉛の使用が好ましい。
【0039】
金属酸化物の添加量は、ポリクロロプレンラテックス組成物の固形分100質量部に対して、0.2〜6.0質量部が好ましく、特に0.5〜3.0質量部が好ましい。6.0質量部を越えて金属酸化物を添加してしまうと、得られる水性接着剤組成物の初期接着力が悪くなる恐れがある。
【0040】
水性接着剤組成物には、炭酸カルシウム、シリカ、タルクやクレー等の無機充填剤、ジブチルフタレートやプロセスオイルなどの可塑剤・軟化剤、ポリアクリル酸ナトリウム、水溶性ポリウレタン、メチルセルロース等の増粘剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、1:2モル型脂肪族アルカノールアミド、1:1モル型ジエタノールアミン、ポリオキシエチレンステアレート、ポバール等の乳化剤、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、エチレンチオウレア、テトラチウラムジスルフィド等の加硫促進剤、防腐剤、各種老化防止剤、紫外線吸収剤や酸化防止剤等を必要に応じて任意に配合することができる。
【0041】
水性接着剤組成物は、紙、木材、布、皮、ジャージ、革、レザー、ゴム、プラスチック、フォーム、陶器、ガラス、モルタル、セメント材料、セラミック、金属などの同種、あるいは異種の接合接着用として好適である。
接着時の施工方法に関しては、刷毛塗り、コテ塗り、スプレー塗布、ロールコーター塗布などが可能である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。なお、以下の実施例において部及び%は、特に断りのない限り質量基準である。ノニオン乳化剤、貯蔵安定剤、ポリビニルアルコール、粘着付与樹脂及び金属酸化物は、後述したものを使用した。
【0043】
(実施例1)
(ポリクロロプレンラテックス組成物の調整)
内容量3リットルの反応器を用い、窒素気流下で、純水100部及びノニオン乳化剤(1)5.0部を添加して溶解させた後、攪拌しながらクロロプレン単量体100部及びn−ドデシルメルカプタン0.1部を加えた。これを15℃に保持しながら亜硫酸ナトリウムと過硫酸カリウムを開始剤として用い、最終重合率が92%に達したところで、重合禁止剤としてチオジフェニルアミンの乳濁液を加えて重合を停止し、ポリクロロプレンラテックスを得た。
【0044】
このポリクロロプレンラテックスに、20%ジエタノールアミンを12部添加してPHを中性になるように調整した後、減圧下で水分を蒸発させて濃縮を行い、固形分濃度が55%となるように調整して、ポリクロロプレンラテックス組成物を得た。
【0045】
得られたポリクロロプレンラテックス組成物について、以下の測定を行い、結果を表1に示した。
〔機械的安定性〕
JISK6828に準拠して、マロン式試験装置を使用し、50gのラテックスに荷重10kg、回転数1000rpmのせん断力を加えて測定した。生成した凝固物を乾燥計量し、一般式(数2)により評価した。
【0046】
【数2】

【0047】
〔ゲル含有量〕
ラテックス試料を凍結乾燥後精秤し、Aとした。これをトルエンに溶解(0.6%に調製)し、遠心分離機を使用した後、200メッシュの金網を用いてゲルを分離した。ゲル分を風乾後110℃雰囲気下で、1時間乾燥し、精秤してBとした。これらについて、一般式(数3)により算出した。結果を表1に示した。
【0048】
【数3】

【0049】
(水性接着剤組成物の調整)
表1に示した処方で水性接着剤組成物を調整した。得られた水性接着剤組成物について、以下の測定を行い、結果を表1に示した。
〔初期接着強度〕
帆布(25×150mm)2枚各々に、300g(固形分)/mの接着剤組成物を刷毛で塗布し、80℃雰囲気下9分間乾燥し、室温で1分間放置後に塗布面を張り合わせハンドローラーで圧締した。圧締10分間後、引張り試験機を用い、引張り速度200mm/minで180°剥離強度を測定した。
〔常態接着強度〕
初期接着強度試験と同一の条件で帆布2枚を張り合わせ、圧締7日後、引張り試験機を用い、引張り速度200mm/minで180°剥離強度を測定した。
〔接着耐水性〕
初期接着強度試験と同一の条件で帆布2枚を張り合わせ、圧締7日後、水中に2日間浸漬し、引張り試験機を用い、引張り速度200mm/minで180°剥離強度を測定した。
【0050】
(実施例2)
実施例1のポリクロロプレンラテックス組成物の調整において、重合させる単量体をクロロプレン単量体97部、メタクリル酸3部に変更して実施例1と同様にサンプルを作成したものである。実施例1と同様に評価を行い、結果を表1に示した。
【0051】
(実施例3)
実施例1のポリクロロプレンラテックス組成物の調整において、重合させる単量体をクロロプレン単量体97部、メタクリル酸3部に変更するとともに、貯蔵安定剤(1)0.3部を添加して実施例1と同様にサンプルを作成したものである。実施例1と同様に評価を行い、結果を表1に示した。
【0052】
(実施例4)
実施例1のポリクロロプレンラテックス組成物の調整において、重合させる単量体をクロロプレン単量体97部、メタクリル酸3部に変更するとともに、貯蔵安定剤(2)0.3部を添加して実施例1と同様にサンプルを作成したものである。実施例1と同様に評価を行い、結果を表1に示した。
【0053】
(実施例5)
実施例1のポリクロロプレンラテックス組成物の調整において、重合させる単量体をクロロプレン単量体97部、メタクリル酸3部に変更するとともに、ノニオン乳化剤(2)1.0質量部と、貯蔵安定剤(1)0.3部を添加して実施例1と同様にサンプルを作成したものである。実施例1と同様に評価を行い、結果を表1に示した。
【0054】
(実施例6)
実施例1のポリクロロプレンラテックス組成物の調整において、重合させる単量体をクロロプレン単量体97部、メタクリル酸3部に変更するとともに、n−ドデシルメルカプタンの量を0.2質量部に変更し、貯蔵安定剤(1)0.3部を添加して重合温度10℃で実施例1と同様にサンプルを作成したものである。実施例1と同様に評価を行い、結果を表1に示した。
【0055】
(比較例1)
実施例1のポリクロロプレンラテックス組成物の調整において、重合させる単量体をクロロプレン単量体97部、メタクリル酸3部に変更するとともに、n−ドデシルメルカプタンの量を0.3質量部にし、貯蔵安定剤(1)0.3部を添加して重合温度50℃で実施例1と同様にサンプルを作成したものである。実施例1と同様に評価を行い、結果を表1に示した。
【0056】
(比較例2)
実施例1のポリクロロプレンラテックス組成物の調整において、重合させる単量体をクロロプレン単量体97部、メタクリル酸3部に変更するとともに、n−ドデシルメルカプタンの量を0.3質量部にし、ノニオン乳化剤(1)の配合量を20.0部に変更し、貯蔵安定剤(1)0.3部を添加して実施例1と同様にサンプルを作成したものである。実施例1と同様に評価を行い、結果を表1に示した。
【0057】
(比較例3)
実施例1のポリクロロプレンラテックス組成物の調整において、重合させる単量体をクロロプレン単量体97部、メタクリル酸3部に変更するとともに、ノニオン乳化剤(1)をポリビニルアルコール5.0部に変更して実施例1と同様にサンプルを作成したものである。実施例1と同様に評価を行い、結果を表1に示した。
【0058】
【表1】

【0059】
表1中、ノニオン乳化剤(1)は日本乳化剤株式会社製Newcol714(ポリオキシアルキレンジスチリルフェニルエーテル乳化剤HLB=15.0)、ノニオン乳化剤(2)は第一工業製薬株式会社製ノイゲンEA−197(ポリオキシアルキレンジスチリルフェニルエーテル乳化剤HLB=17.5)である。貯蔵安定剤(1)は花王株式会社製デモールNL(βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)、貯蔵安定剤(2)は第一工業製薬株式会社製ラベリンFD−40(βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)である。ポリビニルアルコールは株式会社クラレ製PVA−203であり、粘着付与樹脂は荒川化学工業株式会社製タマノールE−100(テルペンフェノール樹脂エマルジョン、固形分50%)、金属酸化物は大崎工業株式会社製AZ−SW(酸化亜鉛エマルジョン、固形分50%)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(化1)で表されるノニオン乳化剤の存在下で、0〜20℃の温度範囲で乳化重合して得られたポリクロロプレンラテックス組成物。
【化1】

(式中、Rは置換していてもよいベンゼン環およびナフタレン環から選ばれた少なくとも1個以上を有するアリール基を示す。Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示す。nは1〜200の整数を示す。)
【請求項2】
クロロプレン単量体100質量部または、クロロプレン及びクロロプレンと共重合可能な単量体の合計100質量部に対して、ノニオン乳化剤0.5〜15質量部を存在させて得られた請求項1に記載したポリクロロプレンラテックス組成物。
【請求項3】
一般式(化1)中のRが、スチレン構造を一つ以上含むアリール基である請求項1または2に記載したポリクロロプレンラテックス組成物。
【請求項4】
ポリクロロプレンラテックス組成物を乳化重合する際に、さらに貯蔵安定剤を0.05〜0.5質量部含有した請求項1〜3のいずれか一項に記載したポリクロロプレンラテックス組成物。
【請求項5】
クロロプレンと共重合可能な単量体として、エチレン性不飽和カルボン酸を0.3〜10質量%含有した請求項2〜4のいずれか一項に記載したポリクロロプレンラテックス組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載したポリクロロプレンラテックス組成物と、粘着付与樹脂とを含有してなる水性接着剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載したポリクロロプレンラテックス組成物と、粘着付与樹脂と、金属酸化物とを含有してなる水性接着剤組成物。
【請求項8】
クロロプレン単量体100質量部または、クロロプレン及びクロロプレンと共重合可能な単量体を、一般式(化2)で表されるノニオン乳化剤0.5〜15質量部の存在下で、0〜20℃で乳化重合するポリクロロプレンラテックス組成物の製造方法。
【化2】


【公開番号】特開2006−160804(P2006−160804A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350724(P2004−350724)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】